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発明の名称 楽音発生装置および楽音発生処理のプログラム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−187949(P2007−187949A)
公開日 平成19年7月26日(2007.7.26)
出願番号 特願2006−7039(P2006−7039)
出願日 平成18年1月16日(2006.1.16)
代理人 【識別番号】100090619
【弁理士】
【氏名又は名称】長南 満輝男
発明者 安藤 仁
要約 課題
自然楽器から発生される微妙で複雑な楽音を電子的に発生する。

解決手段
CPU1は、鍵盤6の押鍵によって発生される音高やベロシティを含む楽音情報を入力したときは、プログラムメモリ3から読み出したその楽音情報の音高の倍音成分に対するエンベロープデータおよびレベル値に基づいて、押鍵されていない倍音成分の音高の楽音情報を生成し、押鍵によって入力された楽音情報および生成した倍音成分の楽音情報を音源8に出力して発音させる。
特許請求の範囲
【請求項1】
夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力する情報入力手段と、
前記各音高に対応するエンベロープデータおよび発生すべき楽音の振幅を表すレベル値を予め記憶している記憶手段と、
前記情報入力手段によって第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を前記記憶手段から読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成する情報生成手段と、
前記情報入力手段によって入力された第1の楽音情報および前記情報生成手段によって生成された第2の楽音情報を音源手段に出力して発音させる情報出力手段と、
を備えた楽音発生装置。
【請求項2】
前記情報生成手段は、第1の楽音情報の音高の倍音成分が既に発音中である場合には、当該発音中の倍音成分のエンベロープデータに前記記憶手段から読み出した当該倍音成分のレベル値を加算して第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の楽音発生装置。
【請求項3】
前記情報生成手段は、第1の楽音情報の倍音成分が所定の音域以上である場合には、前記記憶手段から読み出した当該倍音成分のエンベロープデータに第1の楽音情報のベロシティを乗算して第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の楽音発生装置。
【請求項4】
前記情報生成手段は、発音中の音高に対して効果音を付加する特定の操作子の演奏によって発生された第1の楽音情報が前記情報入力手段から入力されたときに、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を前記記憶手段から読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の楽音発生装置。
【請求項5】
前記情報生成手段は、第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音が既に発音中である場合には、当該発音中の各倍音に一致する音高に対応するレベル値を前記記憶手段から読み出し、当該読み出された各倍音のレベル値を発音中の一致する倍音のレベル値に加算することを特徴とする請求項4に記載の楽音発生装置。
【請求項6】
夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力する情報入力手段と、
任意の2つの操作子に対応する2つの音高の和成分および差成分に対するレベル値を予め記憶している記憶手段と、
2つ以上の操作子の操作によって前記情報入力手段から2つ以上の音高の第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された音高における任意の2つの音高の和成分および差成分を算出し、当該算出した和成分および差成分のエンベロープデータに対して前記記憶手段から読み出したレベル値をそれぞれ乗算して第2の楽音情報を生成する情報生成手段と、
前記情報入力手段によって入力された第1の楽音情報および前記情報生成手段によって生成された第2の楽音情報を音源手段に出力して発音させる情報出力手段と、
を備えた楽音発生装置。
【請求項7】
前記情報生成手段は、算出した和成分および差成分の中に同一の音高を有する2つ以上の成分がある場合には、当該同一の音高に対する各レベル値を加算して1つの成分にすることを特徴とする請求項6に記載の楽音発生装置。
【請求項8】
前記情報生成手段は、算出した和成分および差成分の音高が既に発音中である場合には、当該発音中の音高のエンベロープデータに前記記憶手段から読み出した各成分に対するレベル値を加算して第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項6に記載の楽音発生装置。
【請求項9】
夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力するステップAと、
前記ステップAによって第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を予め記憶している記憶手段から当該一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成するステップBと、
前記ステップAによって入力された第1の楽音情報および前記ステップBによって生成された第2の楽音情報を合成して音源手段に出力して発音させるステップCと、
をコンピュータに実行させる楽音発生処理のプログラム。
【請求項10】
前記ステップBは、第1の楽音情報の音高の倍音成分が既に発音中である場合には、当該発音中の倍音成分のエンベロープデータに前記記憶手段から読み出した当該倍音成分のレベル値を加算して第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項9に記載の楽音発生処理のプログラム。
【請求項11】
前記ステップBは、第1の楽音情報の倍音成分が所定の音域以上である場合には、前記記憶手段から読み出した当該倍音成分のエンベロープデータに第1の楽音情報のベロシティを乗算して第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項9に記載の楽音発生処理のプログラム。
【請求項12】
前記ステップBは、発音中の音高に対して効果音を付加する特定の操作子の演奏によって発生された第1の楽音情報が前記情報入力手段から入力されたときに、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を前記記憶手段から読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項9に記載の楽音発生処理のプログラム。
【請求項13】
前記ステップBは、第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音が既に発音中である場合には、当該発音中の各倍音に一致する音高に対応するレベル値を前記記憶手段から読み出し、当該読み出された各倍音のレベル値を発音中の一致する倍音のレベル値に加算することを特徴とする請求項12に記載の楽音発生処理のプログラム。
【請求項14】
夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力するステップAと、
2つ以上の操作子の操作によって前記情報入力手段から2つ以上の音高の第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された音高における任意の2つの音高の和成分および差成分を算出し、任意の2つの操作子に対応する2つの音高の和成分および差成分に対するレベル値を予め記憶している記憶手段から読み出したレベル値を、当該算出した和成分および差成分のエンベロープデータに対してそれぞれ乗算して第2の楽音情報を生成するステップBと、
前記ステップAによって入力された第1の楽音情報および前記ステップBによって生成された第2の楽音情報を音源手段に出力して発音させるステップCと、
をコンピュータに実行させる楽音発生処理のプログラム。
【請求項15】
前記ステップBは、算出した和成分および差成分の中に同一の音高を有する2つ以上の成分がある場合には、当該同一の音高に対する各レベル値を加算して1つの成分にすることを特徴とする請求項14に記載の楽音発生処理のプログラム。
【請求項16】
前記ステップBは、算出した和成分および差成分の音高が既に発音中である場合には、当該発音中の音高のエンベロープデータに前記記憶手段から読み出した各成分に対するレベル値を加算して第2の楽音情報を生成することを特徴とする請求項14に記載の楽音発生処理のプログラム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音発生装置および楽音発生処理のプログラムに関し、特に、アコーステック楽器から発生されるような楽音を電子的に発生する楽音発生装置および楽音発生処理のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子的に楽音を発生する従来の電子鍵盤楽器においては、予め演奏された楽音の音高に対応した波形を記憶し、その記憶した波形を演奏に応じて順次読み出して楽音を発生している。複数の音高が演奏された場合には、対応する複数の波形を読み出して合成し、合成した波形に基づいて楽音を発生している。波形の合成方法についてはいくつか提案がなされている。
【0003】
ある提案の電子楽器においては、押鍵された鍵が一旦離鍵された後に、再度同一鍵が押鍵される連打の処理を行うようになっている。(特許文献1参照)
そのために、(a)新たに押鍵された鍵と同一鍵の楽音が先の押鍵により既に楽音発生チャネルに割り当てられているか否かを検出する連打検出手段、(b)新たな押鍵によって発音されるべき楽音の第1の発音量又はその発音量に相当する値と、先の押鍵により既に発音発生チャネルに割り当てられた同一鍵による新たな押鍵により発音されるべき時点に対応する楽音の第2の発音量又はその発音量に相当する値とを検知する検知手段、および(c)この検知手段により検知された第1および第2の発音量又はそれらの発音量に相当する値に基づき合成発音量又は合成発音量に相当する値を演算して、連打検出手段により連打が検出される場合に、先の押鍵又は新たな押鍵のいずれか優先して発音させる側の発音発生チャネルの発音量又はその発音量に相当する値に変更する手段を備えた構成になっている。
あるいは、(a)新たに押鍵された鍵と同一鍵の楽音が先の押鍵により既に楽音発生チャネルに割り当てられているか否かを検出する連打検出手段、(b)新たな押鍵によって発音されるべき楽音の第1の発音量又はその発音量に相当する値と、先の押鍵により既に発音発生チャネルに割り当てられた同一鍵による新たな押鍵により発音されるべき時点に対応する楽音の第2の発音量又はその発音量に相当する値とを検知する検知手段、および(c)この検知手段により検知された第1および第2の発音量又はそれらの発音量に相当する値に基づき残存発音量又は残存発音量に相当する値を演算して、連打検出手段により連打が検出される場合に、先の押鍵による楽音発生チャネルの発音量又は発音量に相当する値に変更する変更手段を備えた構成になっている。
【0004】
また、他の提案の電子楽器においては、非常にゆっくり鍵が押鍵された場合に、その鍵に対する発音を行わずに、ダンパだけを外すことにより実現可能な特殊演奏を自然楽器と同じように行うことができるようになっている。(特許文献2参照)
そのために、楽音の発生を指示するために操作される演奏操作手段と、この演奏操作手段の操作時に加えられる操作タッチを検出し、各操作毎に操作タッチに対応したタッチデータを出力するタッチデータ発生手段と、タッチデータの大きさが所定値以下である第1の楽音に関しては、通常の発音処理を行わずに、他の第2の楽音が発生されていることを条件に、その第2の楽音の共鳴音として第1の楽音を発生させる楽音制御手段を備えた構成になっている。
あるいは、楽音の発生を指示するために操作される演奏操作手段と、この演奏操作手段の操作時に加えられる操作タッチを検出し、各操作毎に操作タッチに対応したタッチデータを出力するタッチデータ発生手段と、タッチデータの大きさが所定値以下である第1の楽音に関しては、通常の発音処理を行わずに、第1の楽音と同じ音が減衰発音中であることを条件に、その減衰発音を持続させる楽音制御手段を備えた構成になっている。
【0005】
また、他の提案の発音指示装置においては、ピアノ等のアコースティク楽器にみられる共鳴音の発生現象を再現するようになっている。(特許文献3参照)
そのために、入力された発音指示情報により楽音の発音開始を検知するとともに、入力された消音指示情報によりその楽音の発音終了を検知して、その楽音が発音中であることを認識する発音認識手段と、発音認識手段が発音中であることを認識している場合に、発音指示情報が新たに入力された時、発音中であることを認識しているその楽音に対応する発音指示情報と、新たに入力された発音指示情報との双方に基づく共鳴音の発生を指示する共鳴音発音指示手段と、共鳴音発音指示手段により発音が指示された共鳴音の発音中に、共鳴音に係わる2つの発音指示情報のうち、先に入力された発音指示情報に係る楽音の発音が認識されかつ後に入力された発音指示情報に対応する消音指示が入力された場合には共鳴音の発音を継続し、後に入力された発音指示情報に係る楽音の発音が認識されかつ先に入力された発音指示情報に対応する消音指示が入力された場合には共鳴音の消音を指示する共鳴音消音指示手段と、を有する構成になっている。
この場合において、共鳴音発音指示手段は、2つの音高の双方に基づく共鳴音、又は、2つの音高の共通倍音に対応する音高の共鳴音の発生を指示する。
【0006】
【特許文献1】特開平1−235998号公報
【特許文献2】特開平6−118956号公報
【特許文献3】特開平9−134171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1ないし特許文献3に記載された技術は、押鍵された鍵が1つであるか若しくは2つであるかの違い、又は、2つの鍵が押鍵された場合に、その2つの鍵が同一の鍵であるか若しくは異なる鍵であるかの違いはあるが、押鍵された鍵に対する処理という点では共通している。上記特許文献1ないし特許文献3以外の従来技術においても、電子鍵盤楽器あるいは電子管楽器や電子弦楽器などのように、複数の操作子である鍵盤、鍵、弦の操作に応じて電子的に楽音を発生する楽音発生装置においては、実際に操作された操作子に対する処理を様々な態様で行う構成になっている。
【0008】
一方、実際のアコーステックピアノなどの鍵盤楽器においては、実際に押鍵された鍵による楽音の発生のほかに、下記のような楽音が発生する。
(1)発音中の音の振動によって響板が共振することで発生する楽音
(2)押鍵された鍵に対応する弦振動の倍音、発音中の音の和および差関係によって、押鍵されていない弦が共振することで発生する楽音
(3)ピアノ構造内での音の反射や残響によって発生する楽音
(4)ペダルが踏まれた場合に、ダンパが開放されて、現在発音中の音の倍音成分などが共振することで発生する楽音
アコーステックピアノだけでなく他のアコーステック管楽器やアコーステック弦楽器などの自然楽器においても同様に、実際に操作された操作子による楽音の発生のほかに、上記のような楽音が発生する。すなわち、管楽器やパイプオルガンの場合には、管の共振によって微妙で複雑な楽音を発生する。一方、弦楽器の場合には、鍵盤楽器と同様に、演奏された弦以外の他の弦の共振によって微妙で複雑な楽音を発生する。
しかしながら、従来の電子楽器などの楽音発生装置では、このような自然楽器から発生される微妙で複雑な楽音を実現するような構成にはなっていない。
本発明は、このような従来の課題を解決するためのものであり、自然楽器から発生される微妙で複雑な楽音を電子的に発生する楽音発生装置および楽音発生処理のプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の楽音発生装置は、夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段(実施形態においては、図1の鍵盤6に相当する)のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力する情報入力手段(実施形態においては、図1のCPU1に相当する)と、各音高に対応するエンベロープデータおよび発生すべき楽音の振幅を表すレベル値を予め記憶している記憶手段(実施形態においては、図1のプログラムメモリ3に相当する)と、情報入力手段によって第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を記憶手段から読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成する情報生成手段(実施形態においては、図1のCPU1に相当する)と、情報入力手段によって入力された第1の楽音情報および情報生成手段によって生成された第2の楽音情報を音源手段(実施形態においては、図1の音源8に相当する)に出力して発音させる情報出力手段と、を備えた構成になっている。
【0010】
請求項1の楽音発生装置において、請求項2に記載したように、情報生成手段は、第1の楽音情報の音高の倍音成分が既に発音中である場合には、当該発音中の倍音成分のエンベロープデータに記憶手段から読み出した当該倍音成分のレベル値を加算して第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【0011】
請求項1の楽音発生装置において、請求項3に記載したように、情報生成手段は、第1の楽音情報の倍音成分が所定の音域(実施形態においては、図1の鍵盤6のA6の音高に相当する)以上である場合には、記憶手段から読み出した当該倍音成分のエンベロープデータに第1の楽音情報のベロシティを乗算して第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【0012】
請求項1の楽音発生装置において、請求項4に記載したように、情報生成手段は、発音中の音高に対して効果音を付加する特定の操作子(実施形態においては、図1のペダル7に相当する)の演奏によって発生された第1の楽音情報が情報入力手段から入力されたときに、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を記憶手段から読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【0013】
請求項4の楽音発生装置において、請求項5に記載したように、情報生成手段は、第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音が既に発音中である場合には、当該発音中の各倍音に一致する音高に対応するレベル値を記憶手段から読み出し、当該読み出された各倍音のレベル値を発音中の一致する倍音のレベル値に加算するような構成にしてもよい。
【0014】
請求項6に記載の楽音発生装置は、夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段(実施形態においては、図1の鍵盤6に相当する)のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力する情報入力手段(実施形態においては、図1のCPU1に相当する)と、任意の2つの操作子に対応する2つの音高の和成分および差成分に対するレベル値を予め記憶している記憶手段(実施形態においては、図1のプログラムメモリ3に相当する)と、2つ以上の操作子の操作によって情報入力手段から2つ以上の音高の第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された音高における任意の2つの音高の和成分および差成分を算出し、当該算出した和成分および差成分のエンベロープデータに対して記憶手段から読み出したレベル値をそれぞれ乗算して第2の楽音情報を生成する情報生成手段(実施形態においては、図1のCPU1に相当する)と、情報入力手段によって入力された第1の楽音情報および情報生成手段によって生成された第2の楽音情報を音源手段(実施形態においては、図1の音源8に相当する)に出力して発音させる情報出力手段と、を備えた構成になっている。
【0015】
請求項6の楽音発生装置において、請求項7に記載したように、情報生成手段は、算出した和成分および差成分の中に同一の音高を有する2つ以上の成分がある場合には、当該同一の音高に対する各レベル値を加算して1つの成分にするような構成にしてもよい。
【0016】
請求項6の楽音発生装置において、請求項8に記載したように、情報生成手段は、算出した和成分および差成分の音高が既に発音中である場合には、当該発音中の音高のエンベロープデータに記憶手段から読み出した各成分に対するレベル値を加算して第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【0017】
請求項9に記載の楽音発生処理のプログラムは、夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段(実施形態においては、図1の鍵盤6に相当する)のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力するステップAと、ステップAによって第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を予め記憶している記憶手段(実施形態においては、図1のプログラムメモリ3に相当する)から当該一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成するステップBと、ステップAによって入力された第1の楽音情報およびステップBによって生成された第2の楽音情報を合成して音源手段(実施形態においては、図1の音源8に相当する)に出力して発音させるステップCと、をコンピュータ(実施形態においては、図1のCPU1に相当する)に実行させる構成になっている。
【0018】
請求項9の楽音発生処理のプログラムにおいて、請求項10に記載したように、ステップBは、第1の楽音情報の音高の倍音成分が既に発音中である場合には、当該発音中の倍音成分のエンベロープデータに記憶手段から読み出した当該倍音成分のレベル値を加算して第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【0019】
請求項9の楽音発生処理のプログラムにおいて、請求項11に記載したように、ステップBは、第1の楽音情報の倍音成分が所定の音域(実施形態においては、図1の鍵盤6のA6の音高に相当する)以上である場合には、前記記憶手段から読み出した当該倍音成分のエンベロープデータに第1の楽音情報のベロシティを乗算して第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【0020】
請求項9の楽音発生処理のプログラムにおいて、請求項12に記載したように、ステップBは、発音中の音高に対して効果音を付加する特定の操作子(実施形態においては、図1のペダル7に相当する)の演奏によって発生された第1の楽音情報が情報入力手段から入力されたときに、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を記憶手段から読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【0021】
請求項12の楽音発生処理のプログラムにおいて、請求項13に記載したように、ステップBは、第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音が既に発音中である場合には、当該発音中の各倍音に一致する音高に対応するレベル値を記憶手段から読み出し、当該読み出された各倍音のレベル値を発音中の一致する倍音のレベル値に加算するような構成にしてもよい。
【0022】
請求項14に記載の楽音発生処理のプログラムは、夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段(実施形態においては、図1の鍵盤6に相当する)のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力するステップAと、2つ以上の操作子の操作によって情報入力手段から2つ以上の音高の第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された音高における任意の2つの音高の和成分および差成分を算出し、任意の2つの操作子に対応する2つの音高の和成分および差成分に対するレベル値を予め記憶している記憶手段(実施形態においては、図1のプログラムメモリ3に相当する)から読み出したレベル値を、当該算出した和成分および差成分のエンベロープデータに対してそれぞれ乗算して第2の楽音情報を生成するステップBと、ステップAによって入力された第1の楽音情報および前記ステップBによって生成された第2の楽音情報を音源手段(実施形態においては、図1の音源8に相当する)に出力して発音させるステップCと、をコンピュータ(実施形態においては、図1のCPU1に相当する)に実行させる。
【0023】
請求項14の楽音発生処理のプログラムにおいて、請求項15に記載したように、ステップBは、算出した和成分および差成分の中に同一の音高を有する2つ以上の成分がある場合には、当該同一の音高に対する各レベル値を加算して1つの成分にするような構成にしてもよい。
【0024】
請求項14の楽音発生処理のプログラムにおいて、請求項16に記載したように、ステップBは、算出した和成分および差成分の音高が既に発音中である場合には、当該発音中の音高のエンベロープデータに記憶手段から読み出した各成分に対するレベル値を加算して第2の楽音情報を生成するような構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の楽音発生装置および楽音発生処理のプログラムによれば、自然楽器から発生される微妙で複雑な楽音を電子的に発生できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の楽音発生装置の実施形態について電子鍵盤楽器を例に採って、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態における電子鍵盤楽器のシステム構成を示すブロック図である。図1において、CPU1は、システムバス2を介して、プログラムメモリ3、ワークメモリ4、MIDIインタフェース(I/F)5、鍵盤6、ペダル7、スイッチ部8、音源9に接続され、これら各部との間でコマンドおよびデータの授受を行って全体を制御する。プログラムメモリ3は、CPU1によって実行される楽音発生処理のプログラム、各楽器の音色に対応する波形データ、および、詳細については後述するが、複数の音高に対するエンベロープデータのパラメータおよびレベル値などを予め記憶している。ワークメモリ4は、CPU1によって処理されるデータを一時的に記憶するメモリであり、各種のレジスタ、フラグ、ポインタのエリアが設けられている。MIDIインタフェース5は、外部のMIDI機器との間でMIDIデータを送受信する。鍵盤6は、複数の操作子である88鍵を備えており、各鍵の演奏に応じて音高、音長、ベロシティを含む楽音情報をCPU1に入力する。ペダル7は、操作に応じて発音中の楽音に対して効果音を付加する操作子である。スイッチ部8は、電源スイッチ、スタート/ストップスイッチ、音色設定スイッチなど種々のスイッチで構成されている。音源9は、CPU1からの発音指令(ノートオン)、音高、音長、ベロシティ、波形データに応じて、楽音信号を生成して発音回路10に出力し、CPU1の消音指令(ノートオフ)および音高に応じて、発音中の発音回路10の出力を停止する。発音回路10は、D/A変換回路、フィルタ回路、増幅回路など(図示せず)を備え、音源9から入力される楽音信号に対して、デジタルからアナログに変換する信号変換処理、不要な高域成分を除去するフィルタ処理、増幅処理などを施してスピーカ(図示せず)から発音させる。
【0027】
次に、プログラムメモリ3に記憶されている図2ないし図8のマップ(又は、テーブル)形式のデータ、および、ワークメモリ4に一時的に記憶される図9のデータについて説明する。
図2は、鍵盤6の各鍵の押鍵に応じて発生される音高N(A0、A#0、B0、C1…C8)に対するエンベロープデータのパラメータ(note_on_env_N)である。具体的には、図2(1)は各鍵の音量のエンベロープデータのパラメータであり、図2(2)は各鍵の音色のエンベロープデータのパラメータである。各音高のエンベロープデータのパラメータは、発音開始時のレベルL1および立ち上がりの傾斜R1、および、消音開始時のレベルL2および立ち下がりの傾斜R2で構成されている。すなわち、任意の音高Nのエンベロープデータのパラメータは、音量パラメータの項および音色パラメータの項からなる下記の式で表される。
note_on_env_N=
note_env_DCA_LN,note_env_DCF_RN
【0028】
図3は、各鍵の音高の波形データを記憶しているプログラムメモリ3のアドレスを示す図である。図4は、押鍵により発生される音高のレベル(振幅)に対する2倍音、3倍音、4倍音、5倍音などの倍音成分Nのレベル値(note_ratio_N)を示す図である。押鍵された鍵の基音の周波数をfとすると、2倍音、3倍音、4倍音、5倍音…m倍音の周波数は、2f、3f、4f、5f…mfである。例えば、基音C1の鍵が押鍵された場合には、C1の周波数は「32.7032Hz」であるので、C1を基音とした場合に、2倍音、3倍音、4倍音、5倍音、…8倍音、…16倍音、…32倍音の周波数および音高は下記の音高になる。
基音: 32.7032Hz:C1
2倍音: 65.4064Hz:C2
3倍音: 98.1096Hz:G2
4倍音: 130.8128Hz:C3
5倍音: 163.5160Hz:E3
8倍音: 261.6256Hz:C4
16倍音: 523.2512Hz:C5
32倍音:1046.5024Hz:C6
なお、アコーステックピアノの場合、C6以上の高い音域においては、ダンパすなわち振動に対する制動がない。このため、C6以上の音高については、発音の持続が長いという特徴がある。
【0029】
押鍵されていない音高で倍音を発生させる倍音成分のエンベロープデータのパラメータがプログラムメモリ3に記憶されているが、その構成は図2と同じであるので図面は省略する。各倍音成分のエンベロープデータのパラメータは、発音開始時のレベルL1および立ち上がりの傾斜R1、および、消音開始時のレベルL2および立ち下がりの傾斜R2で構成されている。すなわち、任意の倍音成分Nのエンベロープデータのパラメータは、音量パラメータの項および音色パラメータの項からなる下記の式で表される。
baion_env_N=
baion_env_DCA_LN,baion_env_DCF_RN
【0030】
図5ないし図9は、複数の鍵が押鍵された場合に、その中の任意の2つの音高の和成分および差成分に関するデータを示し、プログラムメモリ3のエリアに記憶されている。図5は、複数の鍵が押鍵されている場合、その中の2つの音高の周波数の和成分を示す図である。図6は、複数の鍵が押鍵されている場合、その中の2つの音高の周波数の和成分のレベル値を示す図である。図7は、複数の鍵が押鍵されている場合、その中の2つの音高の周波数の差成分を示す図である。図8、複数の鍵が押鍵されている場合、その中の2つの音高の周波数の差成分のレベル値を示す図である。図9は、複数の鍵が押鍵された場合の和成分および差成分のレベルを発音音高ごとに、一時的に格納するワークメモリ4のエリアを示す図である。
【0031】
次に、この実施形態における電子鍵盤楽器の楽音発生処理の動作について、上記したプログラムメモリ3およびワークメモリ4のデータ、並びに、図10ないし図18に示すCPU1のフローチャートに基づいて説明する。CPU1は、割り込み処理又はルーチン処理によって楽音発生処理を実行するが、ここではルーチン処理による動作を説明する。
【0032】
図10は、CPU1のメインルーチンのフローチャートである。所定のイニシャライズ(ステップSA1)の後、スイッチ部8における各スイッチのオン・オフを検出するスイッチ処理(ステップSA2)、鍵盤6の押鍵・離鍵を検出する鍵盤処理(ステップSA3)、ペダル7のオン・オフを検出するペダル処理(ステップSA4)、その他の処理(ステップSA5)を繰り返し実行する。
【0033】
図11は、図10のステップSAの鍵盤処理のフローチャートである。この処理では、発音処理(ステップSB1)、倍音生成処理(ステップSB2)、消音処理(ステップSB3)を実行する。
図12は、ステップSB1の発音処理のフローチャートである。押鍵があるか否かを判別し(ステップSC1)、押鍵がない場合にはこのフローチャートを終了して図11のフローチャートに戻るが、押鍵があったときは、押鍵の音高に対応した押鍵フラグおよびノートオンをワークメモリ4のレジスタに格納する(ステップSC2)。そして、押鍵のベロシティおよびノートオンに対する音高に基づいて発音処理を開始し(ステップSC3)、ノートオンに対する音高に対応する波形データのアドレスを図3に示したプログラムメモリ3の対応するエリアから読み出して、図2に示したプログラムメモリ3の対応するエリアの中から、そのアドレスに対応する発音のエンベロープデータの取り込みを開始する(ステップSC4)。そして、図11のフローチャートに戻る。
【0034】
図13は、図11のステップSB3の消音処理のフローチャートである。離鍵があるか否かを判別し(ステップSD1)、離鍵がない場合にはこのフローチャートを終了して図11のフローチャートに戻るが、離鍵があったときは、離鍵の音高に対応した押鍵フラグおよびノートオンをオフにする(ステップSD2)。そして、該当する発音中の音高を消音処理して(ステップSD3)、ノートオンに対する音高に対応する波形データのアドレスを図3から読み出して、図2の中からそのアドレスに対応する消音のエンベロープデータの取り込みを開始する(ステップSD4)。そして、図11のフローチャートに戻る。
【0035】
図14ないし図17は、図11のステップSB2の倍音生成処理のフローチャートである。図14において、新たな発音があるか否かを判別し(ステップSE1)、新たな発音がない場合には図11のフローチャートに戻るが、新たな発音があったときは、既に発音している音高すなわち過去の音高があるか否かを判別する(ステップSE2)。発音している過去の音高がある場合には、新たなノートオンに対応するエンベロープデータと過去のノートオンに対応するエンベロープデータとが閾値(Note_On_min)以上であるか否かを判別する(ステップSE3)。これらのエンベロープデータが閾値より小さい場合には、今回の発音に含まれる倍音の音高と過去の発音の音高とが一致するか否かを判別する(ステップSE4)。両者の音高が一致する場合には、今回の発音の倍音成分のレベル値を、プログラムメモリ3のエリアである図4から読み出して、一致した過去の発音のエンベロープデータに加算して発音処理を行う(ステップSE5)。この場合の倍音成分N(2倍音、3倍音、4倍音、5倍音など)のレベル値をnote_ratio_Nとすると、発音のエンベロープデータNOTE_ON_ENVは、下記の演算式で表される。
NOTE_ON_ENV=
(1+note_ratio_N)×NOTE_ON_ENV
【0036】
ステップSE5の後、又は、ステップSE2において、既に発音している音高がない場合、若しくは、ステップSE4において、今回の発音に含まれる倍音の音高と過去の発音の音高とが一致しない場合には、今回の発音の倍音の音高でA6以上の音域のものがあるか否かを判別する(ステップSE6)。A6以上の音域のものがある場合には、A6以上の倍音を図2に示したプログラムメモリ3のエリアから読み出した倍音用エンベロープデータと今回の発音のベロシティとに基づき発音処理を行う(ステップSE7)。今回の発音のベロシティをVELとし、プログラムメモリ3のエリアから読み出したA6以上の倍音用エンベロープデータをbaionとすると、発音のエンベロープデータbaion_ENVは、下記の演算式で表される。
baion_ENV=baion×VEL
ステップSE7の後、又は、ステップSE6においてA6以上の音域のものがない場合には図11のフローチャートに戻る。
【0037】
一方、ステップSE3において、新たなノートオンに対応するエンベロープデータと過去のノートオンに対応するエンベロープデータとが閾値以上である場合には、図15のフローチャートにおいて、今回の発音の音高とエンベロープデータをワークメモリ4に格納し(ステップSE8)、発音中の音高とエンベロープデータをワークメモリ4に格納する(ステップSE9)。次に、格納された音高の中から2つの音高を取り出す(ステップSE10)。そして、2つの音高の和に対するレベル値を図6に示したプログラムメモリ3の対応するエリアの中から求める(ステップSE11)。次に、図5に示したプログラムメモリ3の対応するエリアの中から読み出した2つの音高の和成分とステップSE11で求めたエンベロープデータを、図9の対応するワークメモリ4のエリアに格納する(ステップSE12)。そして、2つの音高の組合せについて格納が全て終了したか否かを判別し(ステップSE13)、格納が全て終了していない場合には、組合せの異なる2つの音高を取り出す(ステップSE14)。そして、ステップSE11からステップSE13までのループを繰り返す。
【0038】
ステップSE13において、2つの音高の組合せについて格納が全て終了したときは、図16のフローチャートにおいて、格納された音高の中から2つの音高を取り出す(ステップSE15)。そして、2つの音高の差に対するレベル値を図8に示したプログラムメモリ3の対応するエリアの中から求める(ステップSE16)。次に、図7に示したプログラムメモリ3の対応するエリアの中から読み出した2つの音高の差成分と、ステップSE16で求めたエンベロープデータとを、図9の対応するワークメモリ4のエリアに格納する(ステップSE17)。そして、2つの音高の組合せについて格納が全て終了したか否かを判別し(ステップSE18)、格納が全て終了していない場合には、組合せの異なる2つの音高を取り出す(ステップSE19)。そして、ステップSE16からステップSE18までのループを繰り返す。
【0039】
ステップSE18において、2つの音高の組合せについて格納が全て終了したときは、格納された和成分および差成分で同一の音高があるか否かを判別する(ステップSE20)。同一の音高がある場合には、いずれかひとつの成分のレベル値に他の成分のレベル値を加算する(ステップSE21)。そして、レベル値を加算したひとつの成分を残して他の同一音高の成分を消去する(ステップSE22)。
【0040】
ステップSE2の後、又は、ステップSE20において、格納された和成分および差成分で同一の音高がない場合には、図17のフローチャートにおいて、格納された和成分および差成分の音高は発音中であるか否かを判別する(ステップSE23)。発音中である場合には、その発音中の音のエンベロープデータを対応する和成分および差成分のレベル値で変更する(ステップSE24)。すなわち、ワークメモリ4のエリアである図9から読み出した和成分および差成分のレベル値で変更する。この場合において、読み出した和成分のレベル値をplus_ratio_Nとし、差成分のレベル値をminus_ratio_Nとすると、発音中の音のエンベロープデータであるNOTE_ON_ENVの和成分および差成分は、下記の演算式によって変更される。
和成分:NOTE_ON_ENV=
(1+plus_ratio_N)×NOTE_ON_ENV
差成分:NOTE_ON_ENV=
(1+minus_ratio_N)×NOTE_ON_ENV
【0041】
次に、変更したエンベロープデータで発音中の音に対する発音処理を行う(ステップSE25)。ステップSE25の後、又は、ステップSE23において、格納された和成分および差成分の音高が発音中でない場合には、該当する和成分および差成分を対応する倍音のエンベロープデータで発音する(ステップSE26)。そして、図11のフローチャートに戻る。倍音のエンベロープデータをbaion_ENVとすると、発音のエンベロープデータENVの和成分および差成分は、下記の演算式で表される。
和成分:ENV=baion_ENV×plus_ratio_N
差成分:ENV=baion_ENV×minus_ratio_N
【0042】
図18は、図10のメインルーチンにおけるステップSA4のペダル処理のフローチャートである。ペダルがオンされたか否かを判別し(ステップSF1)、オンされない場合にはメインルーチンに戻るが、オンされたときはペダルフラグがオンであるか否かを判別する(ステップSF2)。ペダルフラグがオフの場合には、フラグをオンにして(ステップSF3)、メインルーチンに戻る。ステップSF2において、ペダルフラグがオンの場合には、発音中の音高でエンベロープデータが閾値を超えるものの、ノートおよびエンベロープデータをワークメモリ4に格納する(ステップSF4)。さらに、格納されたノートの倍音成分に対応するnoteNの倍音レベル値(note_ratio_N)をワークメモリ4に格納する(ステップSF5)。次に、格納された倍音成分に対応する音高は発音中であるか否かを判別し(ステップSF6)、発音中である場合には、発音中の音高のエンベロープデータに対応する倍音成分のレベル値を加算して発音処理を行う(ステップSF7)。発音する倍音成分NOTE_ON_ENVは、下記の演算式で表される。
NOTE_ON_ENV=
(1+note_ratio_N)×NOTE_ON_ENV
ステップSF7の後、又は、ステップSF6において、格納された倍音成分に対応する音高は発音中でない場合には、倍音成分の音高をレベル値およびエンベロープデータに基づき発音する(ステップSF8)。そして、メインルーチンに戻る。
【0043】
以上のように、上記実施形態によれば、CPU1は、鍵盤6の押鍵によって発生される音高やベロシティを含む楽音情報を入力したときは、各鍵の音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を予め記憶しているプログラムメモリ3から、押鍵によって入力された音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を読み出し、その各倍音を音高とするとともに、読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて、押鍵されていない各倍音の音高の楽音情報を生成し、押鍵によって入力された楽音情報および生成した倍音成分の楽音情報を音源8に出力して発音させる。
例えば、CPU1は、過去の押鍵によって入力された楽音情報の音高の倍音が既に発音中である場合には、その発音中の倍音のエンベロープデータにプログラムメモリ3から読み出したその倍音のレベル値を加算して楽音情報を生成する。
したがって、弦振動の倍音レベルを制御することにより、自然楽器としての鍵盤楽器から発生される微妙で複雑な楽音を電子的に発生することができる。
【0044】
あるいは、CPU1は、鍵盤6の押鍵によって発生された音高やベロシティを含む楽音情報の倍音が、鍵盤6のA6の音高以上である場合には、プログラムメモリ3から読み出したその倍音の音高に対応するエンベロープデータに、押鍵によって発生された楽音情報のベロシティを乗算して、押鍵によって発生された楽音情報に合成するための楽音情報を生成する。
したがって、A6の音高以上にはダンパがないアコーステックピアノのような自然楽器から発生される特徴的な楽音を電子的に発生することができる。
【0045】
あるいは、CPU1は、鍵盤6の押鍵によって発生される音高やベロシティを含む楽音情報によって発音中の音高に対して、効果音を付加するペダルの演奏がされたときに、押鍵によって入力された音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を読み出し、その各倍音を音高とするとともに、読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて、押鍵されていない各倍音の音高の楽音情報を生成し、押鍵によって入力された楽音情報および生成した倍音成分の楽音情報を音源8に出力して発音させる。
したがって、アコーステックピアノにおけるペダル開放による倍音音高の弦の共振で発生される楽音を電子的に発生することができる。
さらにこの場合において、CPU1は、押鍵によって入力された音高の各倍音が既に発音中である場合には、その発音中の各倍音に一致する音高に対応するレベル値をプログラムメモリ3から読み出し、読み出された各倍音のレベル値を発音中の一致する倍音のレベル値に加算する。
したがって、倍音音高の弦の共振で発生される楽音が発音中の場合に、ペダル開放による倍音音高が発生したときの微妙で複雑な楽音を電子的に発生することができる。
【0046】
また、上記実施形態によれば、プログラムメモリ3は、任意の2つの鍵に対応する2つの音高の和成分および差成分に対するレベル値を予め記憶している。CPU1は、鍵盤6の2つ以上の鍵の押鍵によって楽音情報が入力されたときは、入力された音高における任意の2つの音高の和成分および差成分を算出し、その算出した和成分および差成分のエンベロープデータに対して、プログラムメモリ3から読み出したレベル値をそれぞれ乗算して、入力された楽音情報に合成するための楽音情報を生成する。
したがって、弦振動の倍音レベルを制御することにより、自然楽器としての鍵盤楽器から発生される微妙で複雑な楽音を電子的に発生することができる。
【0047】
さらに具体的には、CPU1は、算出した和成分および差成分の中に同一の音高を有する2つ以上の成分がある場合には、その同一の音高に対する各レベル値を加算して1つの成分にする。
したがって、同一の音高によって音源8の複数の発音チャンネルを使用する必要がない。
あるいは、CPU1は、算出した和成分および差成分の音高が既に発音中である場合には、その発音中の音高のエンベロープデータに、プログラムメモリ3から読み出した各成分に対するレベル値を加算して、入力された楽音情報に合成するための楽音情報を生成する。
したがって、倍音音高の弦の共振で発生される楽音が発音中の場合に、倍音音高が発生したときの微妙で複雑な楽音を電子的に発生することができる。
【0048】
なお、上記実施形態の変形例として、下記の構成にすることもできる。
(1)プログラムメモリ3にマップ形式のデータでパラメータを予め記憶する構成にしたが、CPUの処理速度に余裕がある場合には、倍音成分のレベル値については、押鍵の際にCPUの演算によって算出する構成にしてもよい。
(2)全ての音高に対するデータをプログラムメモリ3に記憶する構成にしたが、電子鍵盤楽器のシステムの規模や処理速度などに応じて、一部の音高や音域に対するデータをプログラムメモリ3に記憶して、残りのデータについてはCPUの演算によって算出する構成にしてもよい。
(3)押鍵された楽音情報に付加される倍音、和成分、差成分についてのピッチは音高でなく実ピッチで行ってもよい。
(4)押鍵による通常発音のエンベロープデータと倍音成分のエンベロープデータとを別個に用意して記憶する構成にしたが、通常発音と倍音成分の波形データ自体を別個に記憶する構成にしてもよい。
(5)実施形態においては88鍵の鍵盤を備えた電子鍵盤楽器について説明したが、さらに鍵数の多い電子鍵盤楽器に拡張して倍音数を増やした構成にしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、自然楽器であるアコースティクピアノを想定した電子鍵盤楽器を例に採って本発明の楽音発生装置を説明したが、本発明の適用範囲はアコースティクピアノに対応する構成の電子鍵盤楽器に限定されるものではない。例えば、オルガンやチェンバロなどの他の鍵盤楽器に対応する構成の電子鍵盤楽器にも本発明を適用できることは言うまでもない。また、電子管楽器や電子弦楽器のように、電子的に楽音を発生させる楽音発生装置にも適用できる。自然楽器の管楽器においても、鍵の操作とブローの強さなどによって楽器本体が共振することによって、様々な倍音成分が発生する。また、自然楽器の弦楽器においても、鍵盤楽器と同じように、ある1つの弦の演奏に応じて演奏されていない他の弦および楽器本体が共振することによって、様々な倍音成分が発生する。したがって、電子管楽器や電子弦楽器に本発明を適用することにより、これらの自然楽器から発生される微妙で複雑な楽音を電子的に発生することができる。
【0050】
また、上記実施形態においては、プログラムメモリ3にあらかじめ記憶されている楽音発生処理のプログラムをCPU1が実行する装置の発明について説明したが、フレキシブルディスク(FD)、CD、メモリカードなどの外部記憶媒体に記憶された演奏処理のプログラム、又は、MIDIインタフェース5又は他の通信手段によって、外部からダウンロードした演奏処理のプログラムをワークメモリ4あるいは別途設けたフラッシュROMやハードディスクなどの不揮発性メモリにインストールして、CPU1がそのプログラムを実行する構成も可能である。この場合には、プログラムの発明および記憶媒体の発明を実現できる。
【0051】
すなわち、本発明の楽音発生処理のプログラムは、
夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力するステップAと、2つ以上の操作子の操作によって前記情報入力手段から2つ以上の音高の第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された音高における任意の2つの音高の和成分および差成分を算出し、任意の2つの操作子に対応する2つの音高の和成分および差成分に対するレベル値を予め記憶している記憶手段から読み出したレベル値を、当該算出した和成分および差成分のエンベロープデータに対してそれぞれ乗算して第2の楽音情報を生成するステップBと、前記ステップAによって入力された第1の楽音情報および前記ステップBによって生成された第2の楽音情報を音源手段に出力して発音させるステップCと、
をコンピュータに実行させる。
【0052】
前記ステップBは、第1の楽音情報の音高の倍音成分が既に発音中である場合には、当該発音中の倍音成分のエンベロープデータに前記記憶手段から読み出した当該倍音成分のレベル値を加算して第2の楽音情報を生成する。
【0053】
前記ステップBは、第1の楽音情報の倍音成分が所定の音域以上である場合には、前記記憶手段から読み出した当該倍音成分のエンベロープデータに第1の楽音情報のベロシティを乗算して第2の楽音情報を生成する。
【0054】
前記ステップBは、発音中の音高に対して効果音を付加する特定の操作子の演奏によって発生された第1の楽音情報が前記情報入力手段から入力されたときに、当該入力された第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音に一致する音高に対応するエンベロープデータおよびレベル値を前記記憶手段から読み出し、当該各倍音を音高とするとともに読み出されたエンベロープデータおよびレベル値に基づいて第2の楽音情報を生成する。
さらにこの場合において、前記ステップBは、第1の楽音情報の音高を基音とした場合の各倍音が既に発音中である場合には、当該発音中の各倍音に一致する音高に対応するレベル値を前記記憶手段から読み出し、当該読み出された各倍音のレベル値を発音中の一致する倍音のレベル値に加算する。
【0055】
また、本発明の楽音発生処理のプログラムは、
夫々異なる音高に対応する複数の操作子を有する演奏手段のいずれかの操作子の演奏によって発生される第1の楽音情報を入力するステップAと、2つ以上の操作子の操作によって前記情報入力手段から2つ以上の音高の第1の楽音情報が入力されたときは、当該入力された音高における任意の2つの音高の和成分および差成分を算出し、任意の2つの操作子に対応する2つの音高の和成分および差成分に対するレベル値を予め記憶している記憶手段から読み出したレベル値を、当該算出した和成分および差成分のエンベロープデータに対してそれぞれ乗算して第2の楽音情報を生成するステップBと、前記ステップAによって入力された第1の楽音情報および前記ステップBによって生成された第2の楽音情報を音源手段に出力して発音させるステップCと、をコンピュータに実行させる。
【0056】
前記ステップBは、算出した和成分および差成分の中に同一の音高を有する2つ以上の成分がある場合には、当該同一の音高に対する各レベル値を加算して1つの成分にする。
【0057】
前記ステップBは、算出した和成分および差成分の音高が既に発音中である場合には、当該発音中の音高のエンベロープデータに前記記憶手段から読み出した各成分に対するレベル値を加算して第2の楽音情報を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態における電子鍵盤楽器のシステム構成を示すブロック図。
【図2】図1の鍵盤の各鍵の押鍵に応じて発生される音高に対するエンベロープデータのパラメータを示す図。
【図3】図1の鍵盤の各鍵の音高の波形データを記憶しているプログラムメモリのアドレスを示す図。
【図4】押鍵により発生される音高のレベルに対する2倍音、3倍音、4倍音、5倍音などの倍音成分のレベル値を示す図。
【図5】複数の鍵が押鍵されている場合に、その中の2つの音高の周波数の和成分を示す図。
【図6】複数の鍵が押鍵されている場合に、その中の2つの音高の周波数の和成分のレベル値を示す図。
【図7】複数の鍵が押鍵されている場合、その中の2つの音高の周波数の差成分を示す図。
【図8】複数の鍵が押鍵されている場合、その中の2つの音高の周波数の差成分のレベル値を示す図。
【図9】複数の鍵が押鍵された場合の和成分および差成分のレベルを発音音高ごとにストアするワークメモリ4のエリアを示す図。
【図10】図1におけるCPUのメインルーチンのフローチャート。
【図11】図10における鍵盤処理のフローチャート。
【図12】図11における発音処理のフローチャート。
【図13】図11における消音処理のフローチャート。
【図14】図11における倍音生成処理のフローチャート。
【図15】図14に続く倍音生成処理のフローチャート。
【図16】図15に続く倍音生成処理のフローチャート。
【図17】図16に続く倍音生成処理のフローチャート。
【図18】図10におけるペダル処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
1 CPU
3 プログラムメモリ
4 ワークメモリ
5 MIDIインタフェース
6 鍵盤
7 ペダル
8 スイッチ部
9 音源
10 発音回路




 

 


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