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発明の名称 共鳴音音像生成装置および記憶媒体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−193129(P2007−193129A)
公開日 平成19年8月2日(2007.8.2)
出願番号 特願2006−11469(P2006−11469)
出願日 平成18年1月19日(2006.1.19)
代理人 【識別番号】100084870
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 香樹
発明者 和泉沢 玄 / 藤田 明裕
要約 課題
弦共鳴音の複雑な音像感を再現できるようにする。

解決手段
共鳴音発生部15は、複数の弦共鳴回路をグルーピングした弦共鳴回路群15−1〜15−nを有する。各弦共鳴回路は音名毎の倍音に相当する共振周波数を有するデジタルフィルタである。押鍵時に楽音信号が入力されると、該楽音信号によって弦共鳴音信号が畳み込み演算部に入力され、予め測定したインパルス応答が畳み込まれる。畳み込まれた弦共鳴音信号は加算器20で合成されて出力される。各弦共鳴回路群のそれぞれの出力信号には、同一空間内においてアコースティックピアノの駒上を想定した互いに異なる音源位置からのインパルス応答が畳み込まれる。
特許請求の範囲
【請求項1】
楽音の各倍音に対応した弦共鳴音信号を発生する複数の共鳴音発生手段と、
前記共鳴音発生手段で発生された弦共鳴音信号のそれぞれに、同一空間における異なる音源位置からのインパルス応答を畳み込む畳み込み演算手段と、
前記畳み込み演算手段の出力を合成して出力する加算手段とを具備したことを特徴とする共鳴音音像生成装置。
【請求項2】
前記共鳴音発生手段が、楽音の発音指示に応答して前記弦共鳴音信号を発生することを特徴とする請求項1記載の共鳴音音像生成装置。
【請求項3】
前記共鳴音発生手段を任意の数だけ含むグループを形成するとともに、
前記各グループに含まれる各共鳴音発生手段の出力を合成する加算手段を備え、該加算手段の出力を前記畳み込み演算手段の入力とするように構成したことを特徴とする請求項1または2記載の共鳴音音像生成装置。
【請求項4】
ダンパー操作子が操作されたときに、前記加算手段から合成された弦共鳴音信号を外部のサウンドシステムに供給するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共鳴音音像生成装置。
【請求項5】
予め前記インパルス応答を測定するための音源位置が、アコースティックピアノの響板における複数の位置を想定して設定されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共鳴音音像生成装置。
【請求項6】
前記音源位置が、前記響板上に配置される駒上における複数の位置を想定して設定されたものであることを特徴とする請求項5記載の共鳴音音像生成装置。
【請求項7】
前記共鳴音発生手段はデジタルフィルタを有しており、そのインパルス応答が、倍音の振動波形を1自由度粘性減衰系モデルで模擬したものであり、
前記デジタルフィルタで使用されるフィルタ係数が、
1自由度粘性減衰系モデルの振る舞いを決めるためのモデルパラメータとして質量、減衰固有振動数、および減衰率を与えて、該モデルの運動方程式の係数となる粘性係数と剛性係数を求め、
前記モデルの運動方程式をラプラス変換し、s表現の伝達関数式を得ると共に、これに求めた粘性係数、剛性係数及び質量を代入し、双一次変換を行って、z表現のフィルタ係数を求め、
前記質量は任意の値とし、前記減衰固有振動数は模擬しようとする倍音の振動数であり、前記減衰率は倍音の減衰を指数関数で近似したときの指数として、その値を求めることによって決定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の共鳴音音像生成装置。
【請求項8】
電子鍵盤楽器に組み込まれ、前記発音指示は、キー情報に含まれるキーオンデータであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の共鳴音音像生成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された共鳴音音像生成装置の加算手段で合成されたれた弦共鳴音信号の波形データを記憶した記憶媒体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴音音像生成装置および記憶媒体に関し、特に、アコースティックピアノでダンパーペダルを操作したとき等に生じる弦共鳴音に音像感を与えることができる共鳴音音像生成装置および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックピアノでは、弦を押さえているダンパーをダンパーペダルで弦から外す操作を行い、実際に弾かれた弦だけでなく他の全ての弦を共鳴によって振動させる演奏手法がとられる。電子ピアノや電子オルガン等の電子楽器においては、このダンパーペダル操作による弦共鳴音を模擬する機能が要求される。
【0003】
この弦共鳴音を模擬するために、例えば、通常の楽音をリバーブと呼ばれる残響付加回路に入力し、ダンパーペダルを踏み込んだ時に残響付加回路の出力に基づく残響音を発生させることが行われている。
【0004】
また、アコースティックピアノの音をダンパーペダルを操作した状態で発生させ、その音を録音し、さらに録音された音からピアノの倍音成分のみを除去して共鳴音成分を生成し、この共鳴音成分の波形データをメモリに記憶しておき、ダンパーペダルが踏み込まれたときに、通常の楽音とともにこの波形データに基づく共鳴音を発生させることも行われている。
【0005】
特開平09−127941号公報には、基準音による共鳴音を伴う楽音から該基準音を除いた楽音の波形データを記憶する共鳴音メモリを備え、ダンパーペダルによる指示に応じて、前記共鳴音メモリから読み出された波形データの振幅を制御するようにした電子楽器が提案されている。
【特許文献1】特開平09−127941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記残響付加回路を用いた方法では、ある程度の拡がり感を持った残響音が得られるが、その音像感は単一であり、アコースティックピアノのような複雑な動きを伴う音像感を得ることは難しかった。また、録音されたアコースティックピアノの共鳴音からピアノの倍音成分のみを除去した共鳴音成分を使用する方法では、録音時の音像感は再現できるが、音像感を変更することはできないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、アコースティックピアノのような複雑な音像感を有する共鳴音を再現できるとともに、多様な音響空間を想定して音像感を変更することができる共鳴音音像生成装置および記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決し、目的を達成するための本発明は、楽音の各倍音に対応した弦共鳴音信号を発生する複数の共鳴音発生手段と、前記共鳴音発生手段で発生された弦共鳴音信号のそれぞれに、同一空間における異なる音源位置からのインパルス応答を畳み込む畳み込み演算手段と、前記畳み込み演算手段の出力を合成して出力する加算手段とを具備した点に第1の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記共鳴音発生手段を任意の数だけ含むグループを形成するとともに、前記各グループに含まれる各共鳴音発生手段の出力を合成する加算手段を備え、該加算手段の出力を前記畳み込み演算手段の入力とするように構成した点に第2の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、ダンパー操作子が操作されたときに、前記加算手段から合成された弦共鳴音信号を外部のサウンドシステムに供給するように構成した点に第3の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、予め前記インパルス応答を測定するための音源位置が、アコースティックピアノの響板上または駒上における複数の位置を想定して設定されたものであるる点に第4の特徴がある。
【0012】
さらに、本発明は、前記共鳴音発生手段がデジタルフィルタを有しており、そのインパルス応答が、倍音の振動波形を1自由度粘性減衰系モデルで模擬したものである点に第5の特徴がある。
【0013】
また、さらに本発明は、上記第1〜第5の特徴を有する共鳴音音像生成装置で作成された弦共鳴音信号を記憶した記憶媒体に第6の特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
第1〜第5の特徴を有する本発明によれば、弦共鳴音信号に異なるインパルス応答を畳み込んで出力されるので、この弦共鳴音信号によって形成される弦共鳴音の音像が、インパルス応答測定時の各音源位置に定位される。したがって、各共鳴音発生手段または各グループから発生される弦共鳴音信号毎で異なる音像位置が得られ、複雑な動きを伴う音像感を得ることができる。また、インパルス応答測定時の音源を選択することにより任意の音像感を得ることができる。
【0015】
第2の特徴によれば、畳み込み演算手段の数を減らして、全体の構成を簡略化することができる。
【0016】
第3の特徴によれば、ダンパーペダルなどダンパー操作子の操作時に弦共鳴音を発することができる。
【0017】
第4の特徴によれば、アコースティックピアノの弦の位置に関連した弦共鳴音の音像感を得ることができる。
【0018】
第5の特徴によれば、1自由度粘性減衰系モデルのパラメータを適宜設定することにより、任意の振動波形を再現して所望の共鳴音を発生させることができる。
【0019】
第6の特徴によれば、例えば、電子ピアノ用の楽音として共鳴音を発生する際に、音像感を付与した波形データを記憶した波形メモリを実装することにより、発音される共鳴音に容易に音像感を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図2は本発明の一実施形態に係る共鳴音音像生成装置を含む電子ピアノのハードウェア構成を示すブロック図である。なお、このハードウェア構成は、以下の第2実施形態および第3実施形態に共通である。同図において、CPU1は、システムバス2を介して図中に示した各部を制御する。システムバス2は、アドレスバス、データバスおよび制御信号ラインからなる。ROM3はCPU1において用いられるプログラムを記憶するプログラムメモリ3aや少なくとも音色データを含む各種データを記憶するデータメモリ3bを有している。RAM4はCPU1による制御において発生する各種のデータ等を一時的に記憶する。
【0021】
電子ピアノには、操作パネル(以下、単に「パネル」と呼ぶ)5、MIDIインタフェース6、およびダンパーペダル(以下、単に「ペダル」と呼ぶ)7が設けられる。パネル5は、発生すべき楽音の音色を選択する音色スイッチ5aを含む各種状態設定のためのスイッチ等によって構成され、このパネル5から設定された情報はCPU1に供給される。ペダル7は該ペダル7の操作(踏込)状態を検出して、そのペダル情報をCPU1に供給するペダルセンサ7aを含んでいる。ペダルセンサ7aは、可変抵抗器であり、この可変抵抗による電圧の変動などをペダル7の踏み込み量として検出する。検出されたペダル7の踏み込み量データは、CPU1に送られる。CPU1は踏み込み量データを受けた場合、RAM4上に共鳴設定フラグを「1」に設定する。そして、この踏み込みが無くなれば、踏み込み量が「0」としてCPU1に送られ、RAM4上の共鳴設定フラグは、「0」に設定される。
【0022】
鍵盤8はA0〜C8までの88鍵からなる鍵盤回路であり、図示しない鍵盤スキャン回路によって押鍵データ(キー情報)が検出される。各鍵にはそれぞれタッチセンサつまりキースイッチ8aが設けられる。キースイッチ8aは、演奏者の鍵盤8に対する演奏操作を検出して、押鍵された鍵の音高を示すキーコードKCや、押鍵・離鍵に対応して楽音の発生・消音タイミングを指示するキーオンKON・キーオフKOFF、押鍵速度に対応するキータッチKTなどのキー情報を出力する。キースイッチ8aから出力される情報はシステムバス2を介してCPU1に供給される。
【0023】
楽音発生部9は、同時に複数の発音を行なうため時分割制御されるチャンネルを備えたトーンジェネレータであり、複数のチャンネルすべての出力信号を累算して出力する。楽音発生部9では、押鍵操作により、いずれかのチャンネルが割り当てられ、該チャンネルにおいて押鍵操作に対応する楽音が生成される。
【0024】
波形メモリ10には、楽音情報の波形データが記憶されており、楽音発生部9は、波形メモリ10に記憶されている波形データを読み出し、該波形データに基づいて楽音信号を生成する。前記楽音発生部9は、波形メモリ10から鍵操作に対応して波形データを読み出すものであり、音色スイッチ5aによって設定された音色の波形データを、キーオンに応答して読み出す。読出アドレスの歩進はキーコードKCに対応した速度で行なわれる。すなわち、キーコードKCに対応する読出レートで波形データを読み出す。
【0025】
楽音信号は、共鳴回路11を通し、その出力を加算器11Aで通常音と加算される。その後、DA変換器12でアナログ信号に変換され、サウンドシステム13に入力される。サウンドシステム13は、アンプやスピーカ等から構成されており、DA変換器12の出力信号を電子ピアノの出力として外部に発音させる。
【0026】
本実施形態の電子ピアノは、ペダル7を操作したときに、アコースティックピアノでダンパーペダルを操作したときと同様の共鳴音を発生する。特に、アコースティックピアノにおける共鳴音の音像感を再現する。アコースティックピアノでは、響板に平行な面を一杯に使って多数の弦を張ってあり、各弦毎に固有の音像を形成する。したがって、本実施形態の電子ピアノにおいては、この音像を再現してアコースティックピアノと同様の残響音を発生させる。
【0027】
具体的には、各音名に対応した弦共鳴回路の出力に対して同一空間の異なる位置からのインパルス応答を各々畳み込んで加算する。
【0028】
図3は、インパルス応答を測定する装置の一例を示す図である。図3において、空間50は、例えば、ピアノ教室を想定したものであり、この空間50に複数のインパルス発生位置51−1〜51−nを設定する。インパルス発生位置51−1〜51−nはアコースティックピアノ(グランドピアノを想定)の駒に沿って配置する。インパルス発生位置51−1〜51−nにはインパルス発生源としてのスピーカ52が置かれる。そして、演奏者の位置にダミーヘッド53を配置する。ダミーヘッド53は演奏者の頭部模型の両耳位置に配置されたマイクロフォン53L,53Rを有する。マイクロフォン53L,53Rはインパルス応答つまり検出レベルと検出タイミングとを記録するレコーダ53に接続される。
【0029】
図3に示すように構成されたインパルス応答測定装置において、インパルス発生位置51−1〜51−nのそれぞれの位置にスピーカ52を順に配置してこのスピーカ52からインパルスを発生させる。ダミーヘッド53は、インパルス発生位置51−1〜51−nのそれぞれから発生されるインパルスによってインパルス発生位置51−1〜51−nのそれぞれに応じたインパルス応答を検出する。
【0030】
上述のようにして測定されたインパルス応答を使って共鳴音音像生成装置を実現する。図1は、共鳴音音像生成装置の要部機能を示すブロック図である。同図において、共鳴音発生部15には、複数の弦共鳴回路群15−1、15−2、15−3、……、15−nが設けられる。さらに各弦共鳴回路群15−1〜15−nには、複数の弦共鳴回路16−1、16−2、16−3、……、16−mが設けられる(弦共鳴回路群15−1についてのみ図示しているが他の弦共鳴回路群15−2〜15−nも同様に構成される)。各弦共鳴回路16−1〜16−mはそれぞれ各音名毎の弦共鳴音を構成する倍音の周波数に相当する共振周波数を出力する。この例では、複数の音名、例えばA0からC1までの共鳴音信号を出力する弦共鳴回路を1群とする弦共鳴回路を構成している。弦共鳴回路の例は後述する。
【0031】
弦共鳴回路群は鍵盤8の全ての鍵に対応した数を設けてもよいが、必ずしも全ての鍵に対応した数でなくてもよい。アコースティックピアノにおいては、ダンパーペダルによって制動を受ける音名が、A0〜F6までの69鍵である。したがって、少なくともこの69鍵に対応した共鳴回路を設ければよい。また、ピアノ以外の他の楽器の楽音を模擬する場合はA0〜F6の範囲に限らない。
【0032】
弦共鳴回路群15−1の弦共鳴回路16−1〜16−mの出力を合成する加算器17が設けられる。加算器17の出力側には畳み込み演算部18−1が設けられる。同様に、弦共鳴回路群15−2〜15−nにも出力側に畳み込み演算部18−2、18−3、……、18−nがそれぞれ接続される。畳み込み演算部18−1〜18nには、それぞれインパルス応答記憶部19−1、19−2、19−3、……、19−nが接続される。インパルス応答記憶部19−1〜19−nには、インパルス発生位置51−1〜51−nから発せられたインパルスに対するダミーヘッド53でのインパルス応答がそれぞれ記憶される。畳み込み演算部18−1〜18−nの出力側には加算器20が設けられる。
【0033】
弦共鳴回路群15−1〜15−nの入力側には、楽音発生部21が接続される。楽音発生部21は各音名毎の波形データを記憶する波形メモリと音源とからなる。楽音発生部21と共鳴音発生部15との間には、ゲート22が設けられる。ゲート22は、キースイッチ8aからキーオンKONが入力されたときに開かれる。
【0034】
加算器20の出力側には、出力ゲート23を設ける。この出力ゲート23は、ペダル7の踏み込み量を検出するペダルセンサ7aの出力が、ペダルオンを示す基準値以上になったときに開かれる。なお、出力ゲート23はペダル7の踏み込み量に応じてレベルを調整する乗算器とすることができる。出力ゲート23つまり乗算器には、ペダルセンサ7aの出力に応じた乗算係数が入力される。
【0035】
図17は、弦共鳴回路の構成を示すブロック図である。弦共鳴回路に楽音発生部21からの波形データを入力することにより、共鳴音波形データを得る。弦共鳴回路は、音名毎に、各音名の楽音を構成するn個の倍音の周波数に相当する共振周波数を発生するn個のフィルタ回路を備える。図17は音名A0およびB0に対応する部分を示す。共鳴回路161は、A0の基音に相当する共振周波数を発生するフィルタFA0−1と、n個の倍音に相当する共振周波数を発生するフィルタFA0−2〜FA0−nとを有する。同様に共鳴回路162は、B0の基音に相当する共振周波数を発生するフィルタFB0−1と、n個の倍音に相当する共振周波数を発生するフィルタFB0−2〜FB0−nとを有する。加算器163,164は共鳴回路161および共鳴回路162の出力をそれぞれ合成する。また、加算器165は、共鳴回路161,162を含む、全ての音名に対応して設けられる図示しない共鳴回路の出力を合成する。
【0036】
上記構成において、楽音発生部21から、楽音信号(波形データ)が入力されると、各弦共鳴回路は入力波形データに基づいて弦共鳴音信号を発生する。楽音発生部21は、キースイッチ8aから供給されるキーオンKON等のキー情報と音色スイッチaから入力される音色情報とに従って波形データを音源に読み込んで楽音情報を生成する。生成された楽音信号は、ゲート22を介して各弦共鳴回路群15−1ないし15−nに入力される。
【0037】
例えば、楽音発生部21からA0の通常音の波形データが入力されると、弦共鳴回路群の各弦共鳴回路(フィルタ回路)が、入力された波形データに応答して基音または各倍音の弦共鳴音信号を出力する。但し、例えば音名A0に関して言えば、入力されたA0の波形データに対してA0用の弦共鳴回路のみが応答するのではなく、A0の基音および各倍音周波数と同じ共振周波数か、これらから少しずれた共振周波数を有する、他の音名用のフィルタも応答して弦共鳴音信号を出力する。例えば、A4の基音(440Hz)に近似するA3の第2倍音(441Hz)のフィルタ特性を持つ弦共鳴回路からも弦共鳴音信号が出力される。
【0038】
つまり、入力された楽音信号の倍音の周波数に対応した共振周波数を持つ共鳴回路は振幅が大きい弦共鳴音信号を発生し、信号の倍音の周波数とは異なる共振周波数を持つ共鳴回路は振幅が小さい弦共鳴音信号を発生する。即ち倍音の周波数と共振周波数が近ければ近いほど、その共鳴回路の出力の振幅は大きくなり、離れていれば離れているほど、その共鳴回路の出力の振幅は小さくなる。
【0039】
複数の楽音が発生した場合、例えばC3とG3の鍵が強く押された場合、C3の強打に応じた楽音信号と、G3の強打に応じた楽音信号を読み出し、それらを加算した楽音信号を各共鳴回路群15−1〜15−nに送出する。例えばC3とG3の強打に応じた波形を加算したものが入力されると、C3とG3の強打波形の倍音周波数に近い共振周波数の共鳴回路からは、振幅が大きい弦共鳴音信号が発生し、C3とG3の強打波形の倍音周波数から離れた共振周波数の共鳴回路からは、小さな振幅の弦共鳴音信号が発生する。
【0040】
弦共鳴音信号は加算器(例えば、弦共鳴回路群15−1では加算器17)で加算されて、対応する畳み込み演算部18−1〜18−nに供給されてインパルス応答を各々畳み込まれる。弦共鳴音信号は畳み込み演算部18−1〜18−nでインパルス応答を畳み込まれた後、加算器20に入力されて加算されて出力される。合成された弦共鳴音信号はDA変換され、サウンドシステム13に供給される。
【0041】
なお、インパルス応答は左右のマイクロフォン53L,53Rそれぞれについて測定された値であるので、左右それぞれのインパルス応答を畳み込み演算するために、畳み込み演算手段は各弦共鳴回路群毎に2系列設けられる。また、入力される楽音波形は、モノラル音のものであってもよいし、ステレオ音のものであってもよい。
【0042】
図4は、電子ピアノの全体処理を示すフローチャートである。ステップS1では、CPU1、RAM4、音源LSI(DSP)等を初期化する。ステップS2では、パネル5のスイッチ等の状態を読み込んで対応の処理を行うパネルイベント処理を行う。ステップS3では、キースイッチ8aの出力に基づいて通常音の楽音信号を発生する鍵盤イベントを実行する。鍵盤イベントにはキータッチKTに応じたエンベロープの設定も含まれる。
【0043】
ステップS4では、ペダルセンサ7aの出力に対応したペダルイベント処理が行われる。なお、ペダルイベント処理には、ペダル(ダンパーペダル)以外のペダルの処理を含むことができる。ステップS5では、その他の処理が行われる。
【0044】
図5は、鍵盤イベント処理(ステップS3)の詳細を示すフローチャートである。ステップS30ではキーオンKONの有無により鍵盤8のオンイベントの有無つまり押鍵の有無を判断する。オンイベントならばステップS31に進み、キー情報に応じて通常音信号発生のための通常音波形データを読み出す。この通常音波形データは通常音波形メモリ(図示しない)として波形メモリ10に設けられる領域に格納されている。ステップS32では、読み出した通常音波形データを音源LSIにロードして通常音波形信号を出力させる。
【0045】
一方、ステップS30でオンイベントと判断されなかった場合は、ステップS33に進み、キーオフKOFFの有無により鍵盤8のオフイベントの有無つまり離鍵の有無を判断する。オフイベントならばステップS34に進み、ペダル7が操作されているか、つまりペダルセンサ7aの出力がペダルオン基準値以上か否かを判断する。ペダル7がオン操作されていれば、発音中の音を維持する(消音処理を行わない)。ペダル7がオン操作されていなければ、ステップS35に進んで音源LSIにリリーススピードをロードして消音処理を行う。つまりリリーススピードに従って、徐々に楽音信号のレベルを低下させていく。
【0046】
図6は、ペダルイベント処理(ステップS4)の詳細を示すフローチャートである。ステップS40では、ペダル7がオン操作されたか否か、つまりペダルセンサ7aの出力がゼロから変化したか否かを判断する。ペダル7が操作されたのであればステップS41に進み、ペダルセンサ7aの出力値に応じた乗算係数でゲート22を制御する。
【0047】
ペダル7がオン操作されたのでなければ、ステップS42に進んでペダル7がオフ操作されたか否か、つまりペダルセンサ7aの出力がゼロに下がったか否かを判断する。ペダル7がオフ操作されたのであれば、ステップS43でゲート22のレベルをゼロまで低下させる。
【0048】
ペダル7のオフ操作でなければ、ステップS42からステップS44に移行し、ペダル7以外のペダルが操作されたか否かが判断される。ステップS44が肯定であれば、ステップS45で、操作されたペダルの種類に応じた処理を行う。
【0049】
前記弦共鳴回路群15−1〜15−nの各弦共鳴回路16−1〜16−m、……は、各音名の楽音を構成する複数個の倍音の周波数に相当する共振周波数を発生する同数個のフィルタ回路からなる。例えば、弦共鳴回路16−1はA0の基音に相当する共振周波数を発生するフィルタ回路であり、弦共鳴回路16−2はA0の2倍音に相当する共振周波数を発生するフィルタ回路である。
【0050】
次に、弦共鳴回路の各フィルタの設計について述べる。フィルタとして、IIRフィルタを用いるのが好適であり、各倍音周波数に相当する入力周波数に応答して急峻に出力が立ち上がる特性に設計される。つまり、フィルタのインパルス応答は、倍音の振動波形を模擬するものであって、1自由度粘性減衰系モデルで再現できるものとする。1自由度粘性減衰系モデルのため、質量、減衰固有振動数、および減衰率をモデルパラメータとし、これに基づいて1自由度粘性減衰系モデルの運動方程式の係数となる粘性係数と剛性係数とを求める。さらに前記運動方程式をラプラス変換し、s表現の伝達関数式を得る。そして、この伝達関数式に粘性係数、剛性係数および質量を代入し、双一次変換を行ってz表現のフィルタ係数を求める。
【0051】
前記質量は任意の値とし、前記減衰固有振動数は模擬しようとする倍音の振動数であり、前記減衰率は倍音の減衰を指数関数で近似したときの指数としてフィルタ係数を求める。
【0052】
1つのフィルタは、倍音の時間変動を模擬するように設計されるが、共振周波数や振幅の時間変動を十分に模擬すると回路規模が大きくなりすぎるので、概略模擬できるものとする。
【0053】
図7は、1自由度粘性減衰系モデルを示す模式図である。1自由度粘性減衰系モデルは、ばね(剛性係数)K、質量M、およびダッシュポット(粘性係数)Cで表現される。なお、粘性はダンパーとも呼ばれるが、ここでは、ダンパーペダルとの混同をさけるためにダッシュポットという用語を用いる。質M量の変位をx、質量Mにかかる力をf(t)としたときのこのモデルの運動方程式は、数式1のようになる。
【0054】
【数1】


【0055】
さらに前記数式1をラプラス変換し、その伝達関数を求めると数式2で示すようになる。数式2の伝達関数式は分子が定数項のみであり、分母がsの2次の多項式となっている。したがって、2次のローパスフィルタとして実現できる。
【0056】
【数2】


【0057】
1自由度粘性減衰系モデルの振る舞いを表すための係数、およびそれらの関係式は一般に知られており、不減衰固有角振動数ω、臨界減衰計数cc、減衰比ζ、減衰係数σ、減衰角振動数ωdとしたとき、数式3〜数式7で示すようになる。
【0058】
【数3】


【0059】
【数4】


【0060】
【数5】


【0061】
【数6】


【0062】
【数7】


【0063】
減衰角振動数ωdは、模擬しようとする倍音周波数に2πを乗じたものとし、減衰率σは、模擬しようとする倍音の得ぬ異を指数関数で近似した時の指数とする。また、質量Mは任意の値とし、ここでは「1」とする。このように、減衰固有角振動数ωd、減衰率σ、質量Mを既知とすれば、伝達係数G(s)の分の多項式の係数である。粘性係数Cおよび構成係数Kは、数式6を変形したものと数式4とを数式5に代入した数式8で求められる。
【0064】
【数8】


【0065】
したがって、粘性係数Cは数式9で示すようになる。
【0066】
【数9】


【0067】
また、減衰固有角振動数ωdは共鳴回路部分の共振周波数に2πを乗じた値である(すなわち、減衰固有角振動数(rad)=共振周波数(Hz))。数式7に数式4を代入すると数式10が得られる。
【0068】
【数10】


【0069】
数式10をΩについて解くと、数式11が得られる。
【0070】
【数11】


【0071】
さらに数式3に数式11を代入すると、数式12によって剛性係数が求められる。
【0072】
【数12】


【0073】
以上により、s表現の伝達係数の全ての係数が求まった。
【0074】
さらにこれをデジタルフィルタで実現するためには、双一次変換によりz表現の伝達関数式を得る。双一次変換とはsを数式13のように置き換えることである。数式13において、Tはサンプリング時間であり、zは単位遅延を表す。
【0075】
【数13】


【0076】
数式13を数式2に代入して数式14を得る。
【0077】
【数14】


【0078】
ここで、質量M、粘性係数C、剛性係数Kについて整理すると、数式15〜数式17のようになる。
【0079】
【数15】


【0080】
【数16】


【0081】
【数17】


【0082】
ここで、伝達関数式を示す数式2を数式18のように表現する。
【0083】
【数18】


【0084】
分母多項式の係数は、数式15〜数式17より、数式19のように求められる。
【0085】
【数19】


【0086】
上述のように、減衰固有角振動数ωd、減衰率σ、質量Mを既知として、共鳴回路のフィルタは実現できる。
【0087】
続いて、減衰固有角振動数ωdと減衰率σの求め方を説明する。減衰固有角振動数ωdは、模擬しようとする倍音周波数に2πを乗じたものとするが、この倍音周波数はFFT分析で特定するか、楽音からバンドパスフィルタを使って抽出する方法など、周知の手法で得ることができる。
【0088】
図8は、A0の楽音のFFT分析による振幅−周波数特性を示す模式図である。図中f1がA0の1倍音(基音)の周波数、f2が2倍音の周波数、fN1が最高次倍音の周波数である。図17におけるフィルタFA0−1の減衰固有角振動数ωdはf1×2πである。同様に、フィルタFA0−2の固有角振動数ωdはf2×2π、フィルタFA0−3の固有角振動数ωdはfN1×2πとなる。
【0089】
減衰率σは、倍音の波形と数式20による最小二乗誤差が最も小さくなる減衰率σを用いている。A0の楽音では、1倍音の波形(図9参照)と数式20によって図9の波形に近似した波形(図10参照)との差が最も小さくなるように減衰率σを設定する。
【0090】
【数20】


【0091】
数式20において、x(t)は正弦波の瞬時値であり、Aは振幅である。振幅Aは近似しようとする倍音の最大振幅とする。
【0092】
上記方法以外にも、倍音のエンベロープを抽出し、それを対数関数で近似する等の方法を用いても良い。図9に、A0の1倍音の実際の波形を示し、図10に数式20によって近似したA0の1倍音の波形を示す。
【0093】
なお、最小二乗誤差を求める方法、FFTによる分析方法等は周知であるので、説明は省略する。
【0094】
弦共鳴回路としてのフィルタには、乗算器を直列接続して音色を設定することができる。つまり、弦共鳴回路16−1〜16−mのそれぞれの出力側に乗算器を接続することができる。この場合の乗算係数は、楽音波形のFFT分析の結果に基づいて求めることができる。一例として図8に示した振幅−周波数特性を有するA0の楽音波形について説明する。
【0095】
図8において、1倍音は、周波数がf1Hzで振幅レベルが0dBであり、2倍音は、周波数がf2Hzで振幅レベルが−20dBである。N1倍音(最高次倍音)は、周波数がfN1Hzであり振幅レベルは−40dBである。
【0096】
したがって、振幅比は1倍音を1(基準)とすると、2倍音は10(-20/20)=0.1となり、N1倍音は10(-40/20)=0.01となる。したがって、図1の1倍音の弦共鳴回路16−1に接続される乗算器の乗算係数は「1」、2倍音の弦共鳴回路16−2に接続される乗算器の乗算係数は「0.1」、N倍音の弦共鳴回路16−Nに接続される乗算器の乗算係数は「0.01」となる。
【0097】
次に、模擬しようとする倍音について述べる。電子ピアノでは、アコースティックピアノの楽音波形を収音し、その収音された波形を波形メモリ10に記憶する。したがって、共鳴回路の共振周波数を特定したり、減衰率を決定する場合は、収音した波形に基づいて、模擬しようとする倍音を抽出して利用する。
【0098】
例えば、A0の1倍音を模擬しようとする場合、A0楽音波形から、f1倍音を中心とし、f1未満の帯域幅を持つバンドパスフィルタで切り出して、ゼロクロス分析による共振周波数の特定を行ったり、減衰の近似を行う。
【0099】
図11は、バンドパスフィルタの帯域幅を示す図である。図中矢印で示す範囲がバンドパスフィルタの通過域である。
【0100】
図2における楽音発生部9を、波形読み出しでなく、楽音合成方式とすることができる。この場合、キー情報を楽音制御情報として楽音発生部9から発生した楽音を収音して、これについてFFT分析あるいはゼロクロス分析による共振周波数の特定を行ったり、減衰の近似を行う。すなわち、模擬しようとする倍音は、所定の楽音制御情報で楽音合成されて出力された楽音波形から抽出された倍音である。
【0101】
実際のピアノ音から各倍音を抽出して共振周波数および減衰率を決定する本実施形態では、従来の遅延ループによる共鳴音を発生させる場合に比べ、次のような利点がある。
【0102】
実際のピアノの倍音は厳密には基音の整数倍の周波数を有しておらず、多少のずれを有している。また、倍音の次数が高くなると、基音の整数倍からより高い方に周波数がずれることが知られている。また、あるべきところに倍音が存在しない場合がある。その逆に倍音が立たない場所に倍音が存在する場合がある。このように、ピアノは1台1台個性を有している。
【0103】
従来の遅延ループによる共鳴回路は、遅延時間の逆数の整数倍の周波数に正確に共鳴するため、上記ピアノの個性に対応できない。一方、本実施形態では、実際のピアノの倍音を1本1本抽出して共鳴回路を設計するので、実際のピアノ倍音を正しく再現することができる。
【0104】
上記共鳴回路では、入力された楽音に対し、それを基音としてその倍音構成となる弦共鳴回路を倍音構成分だけ用意する。しかし、1つの弦共鳴回路の共振周波数は1つの倍音周波数に相当するが、倍音周波数が等しいか非常に近い倍音周波数の倍音が複数存在する場合は、1つの倍音周波数でこれら複数の倍音周波数を代表させることができる。
【0105】
例えば、ある音名の楽音基音周波数がf1Hzであるとすると、2倍音は(f1×2)Hz、3倍音は(f1×3)Hz、4倍音は(f1×4)Hzとなる。そして、この1オクターブ上の楽音の基音周波数は、(f1×2)Hz、2倍音は(f1×4)Hzとなる。さらに2オクターブ上の楽音の基本周波数は(f1×4)Hzとなる。したがって、ある音名の楽音の2倍音と1オクターブ上の基音周波数はほぼ重なる。同様に、ある音名の楽音の4倍音と1オクターブ上の2倍音と2オクターブ上の基音周波数が重なる。また、オクターブの関係にない場合でも、異なる音名の異なる次数の倍音周波数が非常に近い場合がある。
【0106】
このように、周波数がほぼ等しい倍音については、個々の周波数毎に弦共鳴回路を持たずに、1つの倍音の周波数、またはそれらの平均の周波数の共振周波数とする弦共鳴回路を1つ持てばよい。これにより共鳴回路の規模を縮小することができる。
【0107】
図12は複数の音名の楽音について、その倍音をFFT分析した結果を示す図である。図12において、上段はC2の倍音、中段はC3の倍音、下段はC4の倍音である。図中四角形の枠で囲んだ倍音の部分は、それぞれ、1つの弦共鳴回路で作ることができる。
【0108】
弦共鳴回路に入力する楽音に含まれる倍音の周波数と入力される弦共鳴回路の共振周波数とが極めて近い場合、弦共鳴回路に入力する楽音に含まれる倍音の周波数と入力される弦共鳴回路の共振周波数とが異なる場合に比べ、前者の弦共鳴回路から出力される共鳴音が大きくなる。つまり楽音の倍音周波数と弦共鳴回路の共振周波数が近いと弦共鳴回路出力の振幅が大きくなりすぎる。その場合、本来得たい共鳴音らしい響きではなく、その共振周波数を持った安定した楽音のような聞こえとなってしまう。次に例を挙げる。
【0109】
図13は、C2の1倍音弦共鳴回路、C3の1倍音弦共鳴回路、G♯2の1倍音弦共鳴回路へ、C2の楽音をそれぞれ入力した時に各弦共鳴回路から出力される共鳴音の楽音信号を上から順に示している。この図に示したように、C2の1倍音弦共鳴回路とC3の1倍音弦共鳴回路から出力される共鳴音の楽音信号が大きい。これは、C2の楽音が、C2の1倍音とC3の1倍音の周波数に極めて近い周波数の倍音を持つためである。この場合、共鳴音はC2の楽音が鳴っているような聞こえとなってしまう。
【0110】
このような不自然さをなくすため、特定の倍音周波数に対応する弦共鳴回路の共振周波数を所定量ずらした構成とする。図13に示す共鳴音の振幅をほぼ同じ大きさに揃えるためには、弦共鳴回路の共振周波数を倍音周波数から少しずらせばよい。
【0111】
弦共鳴回路の共振周波数を倍音周波数から少しずらした結果を図14に示す。図14は、C2の1倍音から数Hzずらした共振周波数の弦共鳴回路、C3の1倍音から数Hzずらした共振周波数の弦共鳴回路、およびG♯2の1倍音から数Hzずらした共振周波数の弦共鳴回路へ、C2の楽音をそれぞれ入力したときの共鳴音を上から順に示した図である。この図から明らかなように、弦共鳴回路の共振周波数を少しずらすことによって、共鳴音の振幅をほぼ同じ大きさに揃えることができる。
【0112】
ピアノは、弦振動が響板等に伝わり、それが放音される。同時にその振動は、駒を通して他の弦にも伝わる。さらに他の弦に伝わった振動は、再び駒を通って元の弦に伝わる。このフィードバック回路を電子ピアノで再現するために弦共鳴回路にフィードバック経路を設ける。図15は、フィードバック経路を有する弦共鳴回路の一例を示す図である。共鳴回路16Nの各弦共鳴回路の出力は、乗算器M11−1〜M11−nでレベル制御され、さらに、加算器AD11−2により、元の入力楽音と加算され、再度この共鳴回路16Nにフィードバックされる。
【0113】
また、共鳴回路へフィードバックする上記構成を持つと共に、そのフィードバック経路に弦共鳴回路の出力を所定時間遅延させる回路および/または弦共鳴回路の出力の振幅−周波数特性を変更する第2の弦共鳴回路を備えるようにしてもよい。
【0114】
例えば、図16に示すように、共鳴回路16Nに対するフィードバック経路に、共鳴回路16Nの出力を所定時間遅らせる遅延器D11−1及び共鳴回路16Nの出力の振幅−周波数特性を変更するフィルタFlt11−1を備える。この場合、遅延回路は振動の伝播遅延を模擬し、フィルタFlt11−1は駒の伝達特性を模擬する。
【0115】
以上、本発明を最適の実施形態に従って説明したが、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、弦共鳴回路は1自由度粘性減衰系モデルを具現化したデジタルフィルタとしたが、予め共鳴音の楽音波形を波形メモリに記憶しておき、これを読み出して畳み込み演算部に入力する構成としてもよい。
【0116】
また、複数の弦共鳴回路の出力を単一の加算器で加算して合成信号として畳み込み演算部に入力する構成に代えて、個々の弦共鳴回路の出力を直接畳み込み演算部に入力するように変形してもよい。
【0117】
なお、上記実施形態では共鳴音音像生成装置を適用した電子楽器の例として電子ピアノを挙げて説明しているが、本発明は電子ピアノにのみ限定されるものではなく、他の楽器でも、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、同様な構成を取ることは可能である。
【0118】
また、畳み込み演算処理を行って音像感が付与された波形データを波形メモリ等の記憶媒体に記憶すれば、この波形メモリを電子ピアノなど各種電子楽器に装着して簡単に音像感を有する弦共鳴音を発生させることができる。
【0119】
さらに、本発明の共鳴音音像生成装置は、楽器を演奏した時の共鳴音を楽音の発生と同時に発音できる構成の他、楽器ではなく、特定の音響効果の得られる音響効果室などで、任意の音を発生させた際又は空気振動を起こさせて、その共鳴音を得る場合の音像の生成にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の第1実施形態に係る共鳴音音像生成装置の要部機能を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る共鳴音音像生成装置のハード構成部分を示すブロック図である。
【図3】インパルス応答を測定する装置の一例を示す図である。
【図4】共鳴音音像生成装置のメイン処理を示すフローチャートである。
【図5】鍵盤イベント処理を示すフローチャートである。
【図6】ペダルイベント処理を示すフローチャートである。
【図7】1自由度粘性減衰系モデルを示すモデル説明図である。
【図8】FFT分析による振幅−周波数特性を示すグラフである。
【図9】A0の1倍音を示す波形図である。
【図10】A0の1倍音の近似波形を示す波形図である。
【図11】倍音を切り出す帯域幅の例を示すグラフである。
【図12】C2、C3、C4の倍音をFFT分析した振幅−周波数特性を示すグラフである。
【図13】C2の楽音を、C2、C3、G♯2の各1倍音共鳴回路へ入力した時の共鳴音の状態を示すグラフである。
【図14】C2の楽音を、C2、C3、C♯2の各1倍音から数Hzずらした共鳴周波数のそれぞれの共鳴回路へ入力した時の共鳴音の状態を示すグラフである。
【図15】共鳴音発生部にフィードバック経路を付加した構成を示す図である。
【図16】共鳴音発生手段にフィードバック経路、遅延回路、および振幅−周波数特性を変更するフィルタを付加した構成を示す図である。
【図17】共鳴音発生部の要部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0121】
1…CPU、 7…ダンパーペダル、 7a…ペダルセンサ、 8…鍵盤、 8a…キーススイッチ、 10…波形メモリ、 11…デジタルフィルタ、 15…共鳴音発生部、 15−1〜15−n…弦共鳴回路群、 16−1〜16−m…弦共鳴回路、 17…加算器、 18−1〜18−n…畳み込み演算部、 19−1〜19−n…インパルス応答記憶部、 20…加算器






 

 


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