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発明の名称 鍵盤楽器のレットオフ付与装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−139881(P2007−139881A)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
出願番号 特願2005−330247(P2005−330247)
出願日 平成17年11月15日(2005.11.15)
代理人 【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
発明者 村上 達哉
要約 課題
非常に単純な構成で、レットオフ感を付与することができる鍵盤楽器のレットオフ付与装置を提供する。

解決手段
鍵6の押鍵に伴ってレットオフ感を付与するための鍵盤楽器のレットオフ付与装置1であって、鍵6の所定位置に設けられたばね力作用部6cと、ばね力作用部6cの付近に設けられた不動の固定部41と、ばね力作用部6cおよび固定部41の一方に設けられ、押鍵に伴う鍵6の回動の途中で、ばね力作用部6cおよび固定部41の他方に係合することにより、鍵6をその回動方向と逆方向に付勢するとともに、鍵6が最終的な押鍵位置に達する前にばね力作用部6cおよび固定部41の他方から離脱するばね42と、を備えている。
特許請求の範囲
【請求項1】
鍵の押鍵に伴ってレットオフ感を付与するための鍵盤楽器のレットオフ付与装置であって、
前記鍵の所定位置に設けられたばね力作用部と、
当該ばね力作用部の付近に設けられた不動の固定部と、
前記ばね力作用部および前記固定部の一方に設けられ、押鍵に伴う前記鍵の回動の途中で、前記ばね力作用部および前記固定部の他方に係合することにより、前記鍵をその回動方向と逆方向に付勢するとともに、前記鍵が最終的な押鍵位置に達する前に前記ばね力作用部および前記固定部の他方から離脱するばねと、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器のレットオフ付与装置。
【請求項2】
前記鍵は、前後方向に延び、前後方向の中央において支点に回動自在に支持され、
前記固定部は、前記鍵の後方に設けられ、
前記ばね力作用部は、前記鍵の後端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器のレットオフ付与装置。
【請求項3】
前記ばねは、板ばねで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鍵盤楽器のレットオフ付与装置。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、押鍵に伴ってレットオフ感を付与するための鍵盤楽器のレットオフ付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ピアノの演奏者は、押鍵に伴う鍵のタッチ重さの変化、特に、ジャックが抜けるまでのタッチ重さの急増と、その後にジャックが抜ける(レットオフ)ことによるタッチ重さの急減とによって付与されるレットオフ感を感じ取ることにより、微妙なタッチコントロールを行っており、それにより、表現力に優れた演奏を行うことができる。そのようなレットオフ感を電子鍵盤楽器において付与するレットオフ付与装置として、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
このレットオフ付与装置は、鍵の下方に設けられ、鍵の押鍵に伴って回動するハンマーを備えている。このハンマーは、前後方向に延びており、ハンマーには、前方にそれぞれ突出する上側のバネ性部材および下側のレバー取付け部が、互いに間隔を隔てて設けられている。また、バネ性部材の前端部には、レバー受部が設けられており、このレバー受部に、鍵が上方から当接している。また、レバー受部とレバー取付け部の間には、脱進レバーが設けられている。脱進レバーは、上下方向に延びており、下端部において、左右方向に水平に延びる回動軸線を中心として、レバー取付け部に回動自在に取り付けられるとともに、上端部においてレバー受部に係合し、バネ性部材を支持している。また、脱進レバーは、レバー取付け部との間に設けられたバネによって、上端部が前側に付勢されている。また、脱進レバーの下端部から、アーム部が前方に延びており、アーム部の前端部の下方には、アーム部と間隔を隔ててストッパが設けられている。
【0004】
以上のような構成によれば、演奏者の押鍵により鍵が回動するのに伴い、ハンマーは、レバー受部を介して鍵で押圧されることによって、下方に回動する。その途中で、脱進レバーのアーム部がストッパに当接し、さらに押鍵することにより、タッチ重さが急増する。そして、脱進レバーが、バネの付勢力に抗してレバー受部から後方に抜けるように回動することにより、バネ性部材への支持が失われ、それに伴い、バネ性部材に設けられたレバー受部を押圧する鍵への支持もまた、失われる。したがって、タッチ重さが急減することによって、演奏者にレットオフ感が付与される。
【0005】
一方、アコースティックなピアノの場合、そのアクションやハンマーなどによって、レットオフ感が付与される。具体的には、アップライトピアノの場合、押鍵に伴い、バットおよびハンマーなどを組み立てたハンマー組立て品は、ジャックによりバットが突き上げられることによって、バットの回動支点を中心として後方に回動する。また、この回動の途中で、ジャックがバットから離脱する直前でタッチ重さが増加し、ジャックが離脱することでタッチ重さが急減することにより、演奏者にレットオフ感が付与される。ハンマー組立て品は、慣性によってそのまま回動し、後方に鉛直に張られた弦を打弦することによって、ピアノ音を発生させる。
【0006】
上記のようなアップライトピアノでは、ジャックがバットから離脱するときのタッチ重さであるレットオフ荷重は、グランドピアノよりも小さい。これは、アップライトピアノの場合、ハンマーシャンクが上下方向に延びていることから、ハンマーの自重による回動支点回りのモーメントは小さいためである。したがって、アップライトピアノでは、レットオフの前後のタッチ重さの変化量が小さく、レットオフ感がグランドピアノよりも不明瞭になる。このため、アップライトピアノの演奏者は、レットオフのタイミングを把握し難く、レットオフ直前のタッチコントロール、すなわちハンマーの打弦速度の微妙な調整が難しいので、このことが、アップライトピアノがグランドピアノよりも表現力に乏しく演奏性が低い原因になっている。
【0007】
このような不具合を解消するために、前述した従来のレットオフ付与装置をアップライトピアノに適用し、レットオフ荷重を増大させることが考えられる。しかし、アップライトピアノの鍵盤の下方には、鍵盤などを支持する筬などが配置され、スペースに余裕がほとんどないため、そのままでは、従来のレットオフ付与装置を適用することは困難であり、大幅な設計の変更などを行う必要がある。また、前述したように、従来のレットオフ付与装置は、構成が比較的複雑であるので、アップライトピアノに適用したとしても、製造コストが大きく増大してしまう。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、非常に単純な構成で、レットオフ感を付与することができる鍵盤楽器のレットオフ付与装置を提供することを目的としている。
【0009】
【特許文献1】特開平7−168569号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、鍵の押鍵に伴ってレットオフ感を付与するための鍵盤楽器のレットオフ付与装置であって、鍵の所定位置に設けられたばね力作用部と、ばね力作用部の付近に設けられた不動の固定部と、ばね力作用部および固定部の一方に設けられ、押鍵に伴う鍵の回動の途中で、ばね力作用部および固定部の他方に係合することにより、鍵をその回動方向と逆方向に付勢するとともに、鍵が最終的な押鍵位置に達する前にばね力作用部および固定部の他方から離脱するばねと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この鍵盤楽器のレットオフ付与装置によれば、演奏者が鍵を押鍵することにより回動させると、その途中で、鍵のばね力作用部および固定部の一方に設けられたばねが、ばね力作用部および固定部の他方に係合し、それにより、鍵をその回動方向と逆方向に付勢する。演奏者がさらに押鍵するのに伴い、このばねの付勢力が次第に増加することによって、タッチ重さが次第に増大する。そして、ばねは、鍵が最終的な押鍵位置に達する前に、ばね力作用部および固定部の他方から離脱する。このばねの離脱により、それまでに増大していたタッチ重さが急減することによってレットオフ感が付与され、その後、鍵が押鍵位置に達することにより、押鍵が終了する。
【0012】
以上のように、押鍵に伴う鍵の回動中に、鍵のばね力作用部および固定部の一方に設けたばねを、これらの他方に係合・離脱させることによって、ばねの付勢力によるレットオフ荷重を生じさせ、グランドピアノで得られるようなレットオフ感を付与することができる。したがって、タッチ感をグランドピアノに近づけることができるとともに、鍵のタッチコントロールを容易に行うことができ、演奏の表現力を向上させることができる。
【0013】
また、本発明によるレットオフ付与装置は、上述したような非常に単純な構成を有しているので、アクションが設けられていない鍵盤楽器にも後付けで容易に取り付けることができ、それによりレットオフ感を容易に得ることができる。また、同じ理由により、このレットオフ付与装置を、例えばアップライトピアノのアクションと併用することも可能である。その場合、アップライトピアノのジャックによる本来のレットオフ荷重に加えて、ばねによるレットオフ荷重が作用する。それにより、ばねによるレットオフ荷重の分、より大きなレットオフ感が演奏者に付与される。その結果、演奏者は、グランドピアノを演奏するときのようにレットオフのタイミングを把握し易くなり、レットオフ直前のタッチコントロール、すなわちハンマーの打弦速度の微妙な調整をより容易に行うことができる。
【0014】
また、押鍵時のばねの付勢力によるタッチ重さへの影響は、ばねが鍵のばね力作用部または固定部に係合する間に限定され、それ以外はタッチ重さに影響を及ぼさない。したがって、「ばねっぽい」タッチ感になることなく、良好なタッチ感を得ることができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器のレットオフ付与装置において、鍵は、前後方向に延び、前後方向の中央において支点に回動自在に支持され、固定部は、鍵の後方に設けられ、ばね力作用部は、鍵の後端部に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、前後方向の中央の支点において回動する鍵の後端部に、ばねの付勢力が作用することによって、レットオフ感が付与される。このように、鍵の後端部に設けられたばね力作用部に、すなわち鍵の回動の支点から遠い位置にばねの付勢力が作用するので、ばねの付勢力による支点回りのモーメントをより大きくすることができる。それにより、より大きなレットオフ荷重を付与することができ、したがって、演奏者は、より明確なレットオフ感を得ることができる。
【0017】
また、鍵の後端部は、押鍵に伴うストロークが大きいので、ばねが、鍵の後端部および固定部の一方に係合するタイミングと、これらの他方から離脱するタイミングを、ばねを他の部分に設けた場合よりもきめ細かく調整することができ、最適な大きさのレットオフ荷重およびレットオフのタイミングを容易に得ることができる。
【0018】
また、アップライトピアノには一般に、鍵の後方に他の構成部品が配置されていないスペースが存在するので、そのようなスペースを利用して鍵の後端部付近にばね等を配置することにより、アップライトピアノの他の構成部品と干渉することなく、比較的容易にこのレットオフ付与装置を適用することができる。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の鍵盤楽器のレットオフ付与装置において、ばねは、板ばねで構成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ばねが、板ばねで構成されている。それにより、板ばねの表裏の一方の面を鍵のばね力作用部または固定部に接触させた状態で、ねじなどにより容易に取り付けることができる。また、板ばねは、曲げることにより容易に変形させることができるので、ばねがばね力作用部または固定部に係合するタイミングや、ばねの付勢力を、容易に調整することができる。また、板ばねは、一般的に耐久性に優れているので、ばねによって付与されるレットオフ荷重の大きさを、比較的長期間、一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるレットオフ付与装置1を適用したアップライトピアノの鍵盤2、アクション3およびハンマー4などを、離鍵状態において示している。なお、以下の説明では、演奏者側から見たときのアップライトピアノの手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0022】
鍵盤2は、ピアノの左右方向に並んだ多数の鍵6(1つのみ図示)によって構成されている。また、棚板8の上面には筬7が設けられており、各鍵6は、前後方向(図1の左右方向)に延び、その中央において、筬7に立設されたバランスピン7aを支点として回動自在に支持されている。また、鍵6は、上面の後端部に先座板6bを有しており、この先座板6bの上面の後端部が、後述する板ばね42のばね力が押鍵時に作用するばね力作用部6cになっている。また、筬7の後方には、バックレール7bが設けられており、各鍵6の後端部は、このバックレール7bに、フェルト7cを介して載置されている。
【0023】
アクション3は、鍵盤2の後端部の上方において、筬7の左右端部にそれぞれ設けたブラケット(図示せず)に取り付けられ、両ブラケットの間に設けられている。アクション3は、ウィッペン11、ジャック13およびバット16などを有しており、これらは、鍵6ごとに設けられている(いずれも1つのみ図示)。左右のブラケットの間には、センターレール29およびハンマーレール30などが渡されており、このセンターレール29に、ウィッペンフレンジ12およびバットフレンジ17が、鍵6ごとにねじ止めされている(ともに1つのみ図示)。そして、ウィッペン11が後端部において、ウィッペンフレンジ12に、ピン状の支点11bを介して回動自在に支持されている。また、バット16およびハンマー4などを有するハンマー組立て品5が、バット16の下端部において、バットフレンジ17にピン状の支点16bを介して回動自在に支持されている。
【0024】
ウィッペン11は、例えば合成樹脂によって所定の形状に形成されており、その前部から下方に突出するヒール部11aを有していて、対応する鍵6の先座板6bに設けたキャプスタンボタン6aに、ヒール部11aを介して載置されている。また、ウィッペン11の上面前端部には、バックチェックワイヤ18aが立設されていて、その先端部にバックチェック18が取り付けられている。また、ウィッペン11の上面の後端部には、後述するダンパー25を駆動するためのスプーン19が立設されている。また、このスプーン19のすぐ前方には、前述したウィッペンフレンジ12が配置されており、このウィッペンフレンジ12は、その上部においてセンターレール29に固定されている。
【0025】
ジャック13は、例えば合成樹脂で構成されており、前後方向に延びる基部13aと、基部13aの後端部から上方に延びるハンマー突上げ部13bを有している。このようなジャック13は、その基部13aとハンマー突上げ部13bとの角部において、ウィッペン11のバックチェックワイヤ18aよりも後方の位置に、ピン状の支点13cを介して回動自在に支持されている。また、基部13aとウィッペン11の間には、コイルばねで構成されたジャックスプリング14が設けられている。
【0026】
また、ジャック13の基部13aの上方には、複数のレギュレティングボタン20が設けられている(1つのみ図示)。このレギュレティングボタン20は、センターレール29に設けられた複数のレギュレティングブラケット21(1つのみ図示)と、その前端部に取り付けられ、左右方向に延びるレギュレティングレール22とを介して、鍵6ごとに設けられている。
【0027】
また、前述したバットフレンジ17は、その下端部においてセンターレール29に固定されている。バット16は、例えば合成樹脂により所定の形状に形成されており、後側の下端部において、バットフレンジ17に回動自在に取り付けられている。また、バット16には、キャッチャーシャンク23が設けられている。このキャッチャーシャンク23は、バット16の前面から前方に斜め下方に延びている。キャッチャーシャンク23の前端部には、ブロック状に形成されたキャッチャー24が設けられており、前方のバックチェック18に対向している。
【0028】
また、センターレール29の後方には、ダンパー25が鍵6ごとに設けられている(1つのみ図示)。ダンパー25は、センターレール29に固定されたダンパーフレンジ28に、ピン状の支点26cを介して回動自在に取り付けられたダンパーレバー26と、ダンパーレバー26の上端部に立設されたダンパーワイヤ26aと、ダンパーワイヤ26aの上端部に取り付けられたダンパーヘッド27と、ダンパーレバー26を弦S側に付勢するダンパーレバースプリング26bなどで構成されている。このダンパー25は、離鍵時に、ダンパーレバースプリング26bの付勢力によって、ダンパーヘッド27が弦Sに当接することにより止音するためのものである。
【0029】
ハンマー4もまた、鍵6ごとに設けられており(1つのみ図示)、バット16の上面に立設されたハンマーシャンク31、およびその上端部に設けられたハンマーヘッド32を有している。ハンマーシャンク31は、断面円形の細長い棒状に形成され、上下方向に延びている。ハンマーヘッド32は、ハンマーウッド32aおよびハンマーフェルト32bを有しており、後方に鉛直に張られた弦Sに対向している。ハンマーウッド32aは、ハンマーシャンク31から後方に斜め上方に延びており、その後部はテーパ状に薄くなっている。このテーパ部には、ハンマーフェルト32bが巻かれており、押鍵時には、このハンマーフェルト32bが弦Sを打弦する。
【0030】
以上の構成により、アクション3およびハンマー4などの重量によるモーメントが、ウィッペン11のピン状の支点11b回りに、図1の時計方向に作用している。また、ハンマー組立て品5の重量によるモーメントが、支点16b回りに時計方向に作用している。また、バット16とバットフレンジ17の間には、バットスプリング16aが設けられており、これにより、ハンマー組立て品5が時計方向に付勢されている。離鍵状態では、ハンマー組立て品5は、このモーメントおよび付勢力によって時計方向に回動していて、ジャック13のハンマー突上げ部13bが、バット16の下面の前端部で構成される被突上げ部16cに下方から係合した状態で、静止している。
【0031】
図3および図4に示すように、レットオフ付与装置1は、鍵盤2のすぐ後方において棚板8に設けられた不動のばね固定レール41(固定部)と、このばね固定レール41に取り付けられた多数の板ばね42などを備えている。ばね固定レール41は、断面矩形に形成され、棚板8の上面に固定されており、鍵盤2の左右方向の全体にわたって延びている。また、多数の板ばね42は、ばね固定レール41に鍵6ごとに設けられている。
【0032】
板ばね42は、図2に示すような所定の形状に曲げ加工されており、下端部の取付け部43と、それよりも上側の部分のばね力を有するレットオフ付与部44で構成されている。取付け部43が平板状であるのに対し、レットオフ付与部44は、取付け部43の上端から前側に湾曲しながら延びており、その先端部は上方に屈曲している。取付け部43の中央およびレットオフ付与部44の下端部にはそれぞれ、上下方向に延びる長孔43a,43aが、上下方向に並ぶように形成されている。
【0033】
板ばね42は、ワッシャ45aを介して各長孔43aに挿入されたねじ45によって、ばね固定レール41の前面に取り付けられており、その左右方向の中心が、対応する鍵6のそれと一致している。また、板ばね42を取り付ける際には、上側のねじ45は、レットオフ付与部44の下端部を、そのばね力に抗してばね固定レール41側に撓ませながら締め付けられるようになっており、図3に示すように、レットオフ付与部44の下端部の背面は、ばね固定レール41にぴったりと当接している。また、レットオフ付与部44の先端部は、鍵6の後端部の上方に、ばね力作用部6cとの間に所定の間隔を隔てて位置している。
【0034】
以下、上述したアップライトピアノの押鍵の開始から終了までの一連の動作について、図5に示す静的タッチ特性グラフを参照しながら説明する。演奏者により、図1に示す離鍵位置にある状態から鍵6が押鍵されると、その押鍵力によって、鍵6は、バランスピン7aを中心として同図の時計方向に回動し、その後端部に載置されたウィッペン11は、鍵6によって突き上げられることにより、上方(反時計方向)に回動する。このウィッペン11の回動に伴い、ウィッペン11に設けられたジャック13およびバックチェック18などが一緒に上方に移動し、ハンマー組立て品5は、そのバット16がジャック13のハンマー突上げ部13bによって突き上げられることにより、後方の弦Sに向かって反時計方向に回動する。
【0035】
すなわち、押鍵力によって、鍵6がバランスピン7aを支点として回動し、アクション3がウィッペン11の支点11b回りに回動するとともに、ハンマー組立て品5が、バット16の支点16b回りに回動する。これらの回動に伴って、ハンマー組立て品5およびウィッペン11のそれぞれの支点16b,11b回りのモーメントと、鍵6の支点であるバランスピン7a回りのモーメントに応じた反力が、鍵6を介して演奏者の指先に作用し、タッチ重さとして演奏者に付与される。
【0036】
図5に実線(A)で示すように、押鍵の開始直後には、タッチ重さはほぼ一定のまま推移する(同図の区間a)。その後、鍵6が所定の角度まで、回動すると、ウィッペン11に設けたスプーン19が、ダンパーレバー26の下端部に当接することによって、ダンパーレバー26をダンパーレバースプリング26bの付勢力に抗して時計方向に回動させる。これにより、ダンパーヘッド27が弦Sから離れ、弦Sが振動可能な状態になる。このようにスプーン19がダンパーレバー26を回動させる間は、ダンパーレバースプリング26bの付勢力の分、押鍵の開始直後よりもタッチ重さが若干、大きくなる(区間b)。
【0037】
鍵6がさらに所定の角度まで回動すると、ジャック13の基部13aの前端部が、レギュレティングボタン20に下方から当接する。これにより、ジャック13は、レギュレティングボタン20により上方への移動が阻止されることによって、ウィッペン11に対し、ジャックスプリング14の付勢力に抗して時計方向に回動しようとする。このとき、レギュレティングボタン20からの反力が作用し、この反力が、ジャック13のハンマー突上げ部13bがバット16から抜けるまでの間、増大することによって、タッチ重さが急激に増大する(区間c)。
【0038】
また、ジャック13がレギュレティングボタン20に当接するのとほぼ同時に、図3(b)に示すように、鍵6のばね力作用部6cが、板ばね42のレットオフ付与部44に下方から係合するとともにこれを押圧する。それにより、板ばね42のばね力が、ばね力作用部6cを介して鍵6に作用し、鍵6を、その回動方向と逆方向に付勢する。その結果、バランスピン7a回りに板ばね42からの付勢力に応じたモーメントが生じ、その分のタッチ重さが付加される。そして、この板ばね42によるタッチ重さは、鍵6の回動が進むにつれて、板ばね42の撓みが大きくなり、その付勢力が次第に増大することによって、次第に増大する。
【0039】
そして、鍵6が、最終的な押鍵位置に達する前の所定の角度まで回動したときに、ハンマー突上げ部13bが、バット16から前方に抜けるように外れ、ハンマー組立て品5から離脱する(レットオフ)。また、同図(c)に示すように、ジャック7の離脱とほぼ同時に、ばね力作用部6cが、レットオフ付与部44から離脱する(以下、このような板ばね42からのばね力作用部鍵6cの離脱を、「鍵6のレットオフ」という)。以上のようなジャック13および鍵6のレットオフにより、鍵6のタッチ重さから、ハンマー組立て品5の重量分および板ばね42の付勢力の分が失われ、タッチ重さが急激に減少する(区間d)ことによって、演奏者にレットオフ感が付与される。上述したように、板ばね42の付勢力の分、レットオフ荷重が増大しており、レットオフ前後のタッチ重さの変化量が、図5に破線(B)で示す通常のアップライトピアノの場合よりも大きくなるので、演奏者は、より明確なレットオフ感を得ることができる。
【0040】
ハンマー組立て品5は、ジャック13が離脱した後も慣性によって回動し、弦Sを打弦することにより振動させることによって、ピアノ音を発生させる。そして、ハンマー組立て品5は、弦Sの反発力によって、時計方向への復帰回動を開始する。一方、鍵6は、その前端部が筬7のフロントレール(図示せず)に当接することにより、最終的に押鍵位置に達する。それにより、鍵6のそれ以上の回動が不可能になるので、フロントレールからの反力によって、タッチ重さは急激に増大する(区間e)。
【0041】
押鍵が終了し、鍵6が離鍵されるのに伴い、ハンマー組立て品5、鍵6およびアクション3などは、押鍵時と逆方向に復帰回動する。この場合、鍵6は、そのばね力作用部6cがレットオフ付与部44の先端部を摺動しながら、スムーズに回動し、レットオフ付与部44から離脱することによって離鍵位置に復帰する。以上により離鍵状態に復帰し、押鍵時および離鍵時の一連の動作が終了する。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、押鍵に伴う鍵6の回動中に、ジャック13による本来のレットオフ荷重に加えて、板ばね42によるレットオフ荷重が作用するので、その分、より大きなレットオフ荷重が得られる。その結果、より明確なレットオフ感を付与することができるので、演奏者は、グランドピアノを演奏するときのようにレットオフのタイミングを把握し易くなり、レットオフ直前のタッチコントロール、すなわちハンマーの打弦速度の微妙な調整をより容易に行うことができ、演奏の表現力を向上させることができる。
【0043】
また、板ばね42の付勢力によるタッチ重さへの影響は、板ばね42が鍵6に係合する間に限定され、それ以外はタッチ重さに影響を及ぼさない。したがって、「ばねっぽい」タッチ感になることなく、良好なタッチ感を得ることができる。
【0044】
また、板ばね42の付勢力は、バランスピン7aから遠い鍵6の後端部のばね力作用部6cを介して作用するので、板ばね42の付勢力によるバランスピン7a回りのモーメントを、より大きくすることができる。それにより、より大きなレットオフ荷重を付与することができ、したがって、演奏者は、より明確なレットオフ感を得ることができる。
【0045】
また、鍵6の後端部は、押鍵に伴うストロークが大きいので、板ばね42が、鍵6の後端部に係合するタイミングと、板ばね42から離脱するタイミングを、板ばね42を他の部分に設けた場合よりもきめ細かく調整することができ、最適な大きさのレットオフ荷重およびレットオフのタイミングを、容易に得ることができる。
【0046】
また、本実施形態のレットオフ付与装置1は、押鍵に伴う鍵6の回動中に、ばね固定レール41に板ばね42を設けるだけで構成でき、その構成が非常に単純である。さらに、スペースに比較的余裕のある鍵6の後方に、ばね固定レール41および板ばね42が配置されているので、他の構成部品と干渉することなく、このレットオフ付与装置1をアップライトピアノに容易に適用することができる。
【0047】
また、板ばね42の背面を、ばね固定レール41に接触させた状態で、ねじ45をねじ込むだけで、板ばね42を容易に取り付けることができる。また、板ばね42は、曲げることにより容易に変形させることができるので、レットオフ付与部44を変形させることにより、板ばね42が鍵6に係合するタイミングや板ばね42の付勢力を、容易に調整することができる。また、板ばね42は、一般的に耐久性に優れているので、板ばね42によって付与されるレットオフ荷重の大きさを、比較的長期間、一定に保つことができる。
【0048】
さらに、上下2つのねじ45,45を緩めることによって、板ばね42の上下方向の位置を、長孔43aの長さの範囲内で調整することができる。それにより、レットオフ付与部44とばね力作用部6cの間の間隔を変化させることで、押鍵時にばね力作用部6cがレットオフ付与部44に係合・離脱するタイミング、すなわち、鍵6のレットオフのタイミングを調整することができる。例えば、板ばね42を下方に移動させ、両者44,6cの間の間隔を狭めることによって、鍵6のレットオフのタイミングを早めることができ、逆に、両者44,6cの間の間隔を広げることによって、鍵6のレットオフのタイミングを遅らせることができる。また、上側のねじ45のねじ込み量を変化させることによって、レットオフ付与部44の撓み量を変化させることにより、板ばね42のばね力、およびそれによって付与されるレットオフ荷重の大きさを、容易に調整することができる。
【0049】
図6および図7は、第2実施形態によるレットオフ付与装置50を示している。本実施形態では、第1実施形態と比較して、板ばねの構成と、これをばね固定レール41に取り付ける構成が異なっている。以下、第1実施形態のレットオフ付与装置1と共通する構成部品については同じ符号を付し、この相違点を中心として説明する。
【0050】
本実施形態の板ばね51は、下部の取付け部51aと、上部のレットオフ付与部51bによって構成されている。取付け部51aは、前方に凸に湾曲しており、その下端部は、前方に斜めに屈曲している。また、取付け部51aの上下方向の中央には、孔(図示せず)が形成されており、板ばね51は、この孔に通されたねじ45によって、ばね固定レール41の前面に取り付けられている。この状態では、取付け部51aの上端部および下端部が、ばね固定レール41に当接している。また、レットオフ付与部51bは、基本的に、第1実施形態のレットオフ付与部44と同様の構成を有しており、取付け部51aの上端部から前方に湾曲しながら延びていて、その先端部が上方に屈曲している。
【0051】
以上のようなレットオフ付与装置50では、ばね固定レール41へのねじ45のねじ込み量によって、レットオフ付与部51bと鍵6のばね力作用部6cとの相対的な位置関係を調整することができる。具体的には、ねじ45を締め付けると、取付け部51aが、ばね固定レール41に押圧されることによって開くように撓むので、それに伴い、レットオフ付与部51bは、前方に倒れるように移動する。それにより、ばね力作用部6cとレットオフ付与部51bの間の間隔が狭まる結果、鍵6のレットオフのタイミングを早めることができる。一方、ねじ45を緩めると、取付け部51aが、ねじ45を締め付ける場合と逆に変形し、ばね力作用部6cとレットオフ付与部51bの間の間隔が広がることによって、鍵6のレットオフのタイミングを遅らせることができる。他の構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0052】
以上の構成から明らかなように、本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の静的タッチ特性を得ることができ、第1実施形態による前述した効果を得ることができる。また、ねじ45のねじ込み量を調整するだけで、レットオフ付与部51bの位置を変更でき、鍵6のレットオフのタイミングを、容易に調整することができる。
【0053】
図8および図9は、第3実施形態によるレットオフ付与装置60を示している。本実施形態は、第1および第2実施形態のレットオフ付与装置1,50と比較して、板ばねの構成と、これをばね固定レール41に取り付ける構成のみが異なっている。以下、第1実施形態のレットオフ付与装置1と共通する構成部品については同じ符号を付し、この相違点を中心として説明する。
【0054】
このレットオフ付与装置60の板ばね61も、下部の取付け部61aと、その上側のレットオフ付与部61bによって構成されている。取付け部61aは、上下方向に延びており、その中央に1つの孔が形成されている(図示せず)。また、ばね固定レール41の前面には、上下2つのほぼ半球状の突起41a,41aが、鍵6ごとに設けられている(1組のみ図示)。
【0055】
また、板ばね61の前面には、レール62が設けられている。このレール62は、例えば、オクターブごとに、または鍵盤2の全体にわたって、左右方向に延びている。このレール62にも、孔が鍵6ごとに形成されており(図示せず)、板ばね61は、上下の突起41a,41aとレール62に挟まれた状態で、レール62および板ばね61の孔に通されたねじ45によって、ばね固定レール41に取り付けられている。他の構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0056】
以上の構成から明らかなように、本実施形態によれば、前述した第1および第2実施形態と同様の静的タッチ特性を得ることができる。また、板ばね61が、2つの突起41a,41aと、レール62の間に挟み付けられた状態で、しっかりと固定されているので、第2実施形態と比較して、板ばね61をより安定して取り付けることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した第1〜第3実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、各実施形態では、ばね固定レール41に設けた板ばねに鍵6のばね力作用部6cを係合させているが、これとは逆に、鍵6側にばねを設け、このばねを、押鍵に伴って固定部側に係合させるようにしてもよい。また、各実施形態では、ばね固定レール41および板ばねなどを鍵盤2の後方に配置したが、これに限らず、例えば鍵盤2の下方など、他の位置に設けてもよい。また、上述した各実施形態で用いた板ばねに代えて、他のばね、例えば線材を曲げ加工することにより構成したばねを用いてもよい。
【0058】
さらに、上述した各実施形態は、本発明によるレットオフ付与装置をアップライトピアノに適用した例であるが、アクションが設けられていない他の鍵盤楽器に適用してもよい。前述したように、本発明によるレットオフ付与装置は、構成が非常に単純であるので、アクションが設けられていない鍵盤楽器にも容易に取り付けることができ、それにより、レットオフ感を容易に付与することができる。したがって、タッチ感を、アクションを有するグランドピアノに近づけることができるとともに、鍵のタッチコントロールを容易に行うことができ、演奏の表現力を向上させることができる。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1実施形態によるレットオフ付与装置を適用したアップライトピアノの鍵盤およびアクションなどを、離鍵状態において示す側面図である。
【図2】図1のレットオフ付与装置の板ばねおよびばね固定レールを、板ばねをばね固定レールから取り外した状態で示す側面図である。
【図3】図1のレットオフ付与装置の側面図であり、(a)鍵が離鍵位置にあるとき、(b)鍵のばね力作用部が板ばねに係合したとき、および(c)鍵が押鍵位置に達したときをそれぞれ示している。
【図4】図1のレットオフ付与装置の板ばねおよびばね固定レールを、斜め前方から示す斜視図である。
【図5】図1のレットオフ付与装置を適用したアップライトピアノの静的タッチ特性(A)、および通常のアップライトピアノの静的タッチ特性(B)をそれぞれ示す図である。
【図6】第2実施形態によるレットオフ付与装置を示す側面図である。
【図7】図6のレットオフ付与装置の板ばねおよびばね固定レールを、斜め前方から示す斜視図である。
【図8】第3実施形態によるレットオフ付与装置を示す側面図である。
【図9】図8のレットオフ付与装置の板ばねおよびばね固定レールを、斜め前方から示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 レットオフ付与装置
6 鍵
6c ばね力作用部
7a バランスピン(支点)
41 ばね固定レール(固定部)
42 板ばね(ばね)
50 レットオフ付与装置
51 板ばね(ばね)
60 レットオフ付与装置
61 板ばね(ばね)





 

 


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