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発明の名称 吹奏電子楽器の音源制御装置とプログラム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−33595(P2007−33595A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−213775(P2005−213775)
出願日 平成17年7月25日(2005.7.25)
代理人 【識別番号】100075074
【弁理士】
【氏名又は名称】伊沢 敏昭
発明者 増田 英之
要約 課題
音名が同一でオクターブが異なる2音を同一の運指状態にて吹き分け可能な吹奏電子楽器において、音量、音色及びピッチの制御範囲を拡大する。

解決手段
管体部12に設けたリッププレート14にてジェットが当たるエッジ又はその近傍には、ジェットの幅を検知するための複数の流速センサを含む横方向センサ群Sと、ジェットの偏心又は厚さを検知するための複数の流速センサを含む縦方向センサ群Sと、ジェットの長さを検知するための長さセンサ(発光素子Le及び発光素子Lr)とを設ける。センサ群S中の特定の流速センサの出力と長さセンサの出力とに基づいてオクターブの上昇や下降を制御する。センサ群Sからジェット幅データを取得して音量を制御する。センサ群Sからジェットの偏心又は厚さのデータを取得して音色を制御する。唄穴16への唇かざし量又は唄穴16の近傍での唇タッチ量を検知してピッチを制御する。
特許請求の範囲
【請求項1】
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、
前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジに沿ってジェットの流速又は強さを検知すべく並設された複数のセンサを有し、これらのセンサの出力に基づいてジェットの幅に対応した検知出力を送出する第1の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力と前記第2の検知手段の検知出力とに基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、
この検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号の振幅を前記第1の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
を備えた音源制御装置。
【請求項2】
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第3の検知手段を更に備え、前記決定手段及び前記第1の制御手段のいずれにおいても前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力の代りに前記第3の検知手段の検知出力を用いる請求項1記載の音源制御装置。
【請求項3】
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジに沿ってジェットの流速又は強さを検知すべく並設された複数のセンサを有し、これらのセンサの出力に基づいてジェットの幅に対応した検知出力を送出する第1の検知手段と、前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、コンピュータとを備えた音源制御装置において使用されるプログラムであって、前記コンピュータを、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力と前記第2の検知手段の検知出力とに基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号の振幅を前記第1の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
として機能させるプログラム。
【請求項4】
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第3の検知手段を更に備え、前記決定手段及び前記第1の制御手段のいずれにおいても前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力の代りに前記第3の検知手段の検知出力を用いる請求項3記載のプログラム。
【請求項5】
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、
前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく該エッジの上下方向に並べて設けられた複数のセンサを有し、これらのセンサの出力に基づいてジェットの偏心又は厚さに対応した検知出力を送出する第1の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力と前記第2の検知手段の検知出力とに基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、
この検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号の音色及び音量のうちの少なくとも1つのものを前記第1の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
を備えた音源制御装置。
【請求項6】
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第3の検知手段を更に備え、前記決定手段及び前記第1の制御手段のいずれにおいても前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力の代りに前記第3の検知手段の検知出力を用いる請求項5記載の音源制御装置。
【請求項7】
前記第1の検知手段は、前記複数のセンサの出力に基づいてセンサ位置毎にセンサ出力値を表わす出力分布曲線を推定すると共に該出力分布曲線のピーク位置に対応してジェットの偏心を決定するものである請求項5又は6記載の音源制御装置。
【請求項8】
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく該エッジの上下方向に並べて設けられた複数のセンサを有し、これらのセンサの出力に基づいてジェットの偏心又は厚さに対応した検知出力を送出する第1の検知手段と、前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、コンピュータとを備えた音源制御装置において使用されるプログラムであって、前記コンピュータを、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力と前記第2の検知手段の検知出力に基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号の音色及び音量のうちの少なくとも1つのものを前記第1の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
として機能させるプログラム。
【請求項9】
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第3の検知手段を更に備え、前記決定手段及び前記第1の制御手段のいずれにおいても前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力の代りに前記第3の検知手段の検知出力を用いる請求項8記載のプログラム。
【請求項10】
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、
前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第1の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記唄穴への唇かざし量又は前記唄穴の近傍での唇タッチ量を検知すべく設けられた第3の検知手段と、
前記第1及び第2の検知手段の検知出力に基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、
この検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記第1の検知手段の検知出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号のピッチを前記第3の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
を備えた音源制御装置。
【請求項11】
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第1の検知手段と、前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、前記リッププレートにおいて前記唄穴への唇かざし量又は前記唄穴の近傍での唇タッチ量を検知すべく設けられた第3の検知手段と、前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、コンピュータとを備えた音源制御装置において使用されるプログラムであって、前記コンピュータを、
前記第1及び第2の検知手段の検知出力に基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記第1の検知手段の検知出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号のピッチを前記第3の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
として機能させるプログラム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、吹奏電子楽器に用いるに好適な音源制御装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、フルート、ピッコロ等のエアリード楽器にあっては、音名が同一でオクターブが異なる2音を同一の運指状態にて吹き分けるオクターブ吹き分け奏法が用いられている。図29には、第1及び第2オクターブのE音を発生させるための運指状態(A)と、第1及び第2オクターブのF音を発生させるための運指状態(B)とが例示されている。一例として、図29に示す運指状態にて第1,第2オクターブのE音を発生させる場合、吹奏者は、第1オクターブのE音では比較的弱く吹き、第2オクターブのE音では比較的強く吹く。第1オクターブと2オクターブとでは、アンブシュアの状態も若干異なる。
【0003】
ところで、オルガンパイプ等のエアリード楽器に関しては、発音に関連する種々の物理情報が解明されている(例えば、非特許文献1参照)。図30には、この種の物理情報としてパイプオルガン発音部の物理情報が示されている。パイプオルガン発音部において、AFは入力される空気流を、SLはスリットを、EGはエッジをそれぞれ示す。物理情報としては、スリットSLの出口におけるジェットの初速U(0)[m/s]、エッジEGにおけるジェットの終速U(d)[m/s]、スリット−エッジ間距離d[m]、スリット−エッジ間のジェット伝達時間τe[sec]、発音周波数fso[Hz]等がある。パイプオルガン発音部の下方には、スリットからの距離xとジェットの流速U(x)との関係(ジェットの流速分布)が示されている。ジェットの流速U(x)は、図30に示すように初速U(0)から終速U(d)に向けて徐々に低下する。
【0004】
非特許文献1には、フルートやオルガンパイプ等のエアリード楽器におけるエアリードの発音オクターブを現在の発音モードとジェット走行角とにより決定できる旨記載されている。ここで、ジェット走行角θeは、前述のジェット伝達時間τe 及び発音周波数fso(又は発音角周波数ωso=2π・fso)を用いて次の数1の式で表わされる。
【0005】
【数1】


【0006】
また、ジェット伝達時間τeは、前述のスリット−エッジ間距離d及びジェットの流速U(x)を用いて次の数2の式により求められる。
【0007】
【数2】


【0008】
ジェット伝達時間τeは、数2の式による積分計算で求める代りに、台形近似で求めることもできる。すなわち、UをスリットSLからx=i・Δx[m](i=1,2,…n)の距離におけるジェットの流速[m/s]とすると、次の数3の式により求められる。数3の式で求められるτeは、図31に示すハッチング領域の面積Sdに相当する。数3の式の計算を精度良く行なうためには、Δxを0.1[cm]などと十分に小さく設定し、多くの個所でジェットの流速を検知するのが望ましい。
【0009】
【数3】


【0010】
図32は、発音モードとジェット走行角θeとに基づくオクターブ変化を示すものである。図32では発音モードを1次モードと2次モードとに分けて示す。1次モードは、ある音名の音を所定のオクターブで発音するモードであり、2次モードは、1次モードで発音した音を1オクターブ上げて発音するモードである。
【0011】
図32において、Sの状態で初速U(0)のジェットが発生すると、θe=3π/2となるSのときに1次モードの発音を開始する。そして、θeがπ,3π/4…とπ/2に向けて減少していく過程Sでは、発音周波数が少しずつ上昇し、非特許文献1に記載はないが、実際のエアリード楽器では音量や音色も変化する。θe=π/2となるSのときに2次モードへのジャンプ(1オクターブ上昇)が起こる。このジャンプの過程Sでは、発音周波数が倍増するため、θeが倍増してπとなる。
【0012】
θe=πの状態Sから2次モードの発音を開始する。そして、θeがπから3π/2に向けて増大していく過程Sでは、非特許文献1に記載はないが、実際のエアリード楽器では発音周波数が少しずつ下降し、音量や音色も変化する。θe=3π/2となるSのときに1次モードへのジャンプ(1オクターブ下降)が起こる。このジャンプの過程Sでは、発音周波数が半減するため、θeが半減して3π/4となる。なお、図32において、左方向は、ジェットの流速U(x)が増加する方向である。また、左方向は、スリット−エッジ間距離dが減少する方向でもある。
【0013】
ジェットの流速分布に関しては、図33に示すように(イ)ジェットの初速が大きいと、ジェットの流速U(x)の減衰が大きいこと、(ロ)ジェットの初速が小さく、スリット−エッジ間距離dが短い場合はジェットの流速U(x)の減衰が無視できることなどが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0014】
従来、エアリード楽器を模擬した物理モデル音源を鍵盤操作に応じて制御する音源制御装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。また、マウスピース等の吹奏入力部を有する吹奏電子楽器も知られており、ブレスセンサで空気流を検出して発音の開始や終了を制御するもの(例えば、特許文献2参照)、ブレスの強さに応じて楽音特性を切換制御するもの(例えば、特許文献3参照)、マウスピースへ吹込む呼気の方向に応じて音高を制御するもの(例えば、特許文献4参照)、マウスピースに吹込まれる呼気流の流速及び総呼気量からそれぞれ音高情報及び音量情報を得るもの(例えば、特許文献5参照)などがある。
【非特許文献1】吉川茂著「オルガンパイプとその水中音源への応用に関する研究」東京工業大学博士論文 昭和60年
【非特許文献2】有元慶太著「エアリード楽器におけるジェット流速分布と発音特性に関する実験的考察」九州芸術工科大学修士論文 平成13年
【特許文献1】特開平6−67675号公報
【特許文献2】特開昭64−77091号公報
【特許文献3】特開平5−216475号公報
【特許文献4】特開平7−199919号公報
【特許文献5】特開2002−49369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1 に示された電子楽器では、鍵盤から取得した鍵操作情報に基づいてジェットの厚み、ジェットの流速、ジェットの傾き等の制御情報を作成し、これらの制御情報を音源制御パラメータに変換して物理モデル音源に供給する構成であるため、吹奏入力に応じて演奏を行なうことはできない。
【0016】
一方、特許文献2〜5に示された電子楽器では、吹奏入力に応じた演奏を行なえるものの、フルート等のエアリード楽器のようにオクターブ吹き分け奏法を行なうことはできない。そこで、非特許文献1に示された知見を応用してオクターブ吹き分け奏法を可能にすることが考えられる。しかし、非特許文献1の知見をそのまま応用する場合には、次の(1)、(2)のような問題点がある。
【0017】
(1)現在の発音モードとジェット走行角θeとに基づいてオクターブを切換制御することを想定した場合、前掲の数1の式には実際の発音周波数を求めて代入する必要がある。しかし、自然楽器ではないので、実際の発音周波数を求めることはできない。
【0018】
(2)ジェット伝達時間τeを精度良く求めるためには、多数の個所でジェットの流速をセンシングすることが必要である。しかし、ジェットの流路に沿って多数の流速センサを配置するのは実際上困難である。
【0019】
本願の発明者は、これらの問題点を解決し、吹奏電子楽器においてエアリード楽器のオクターブ吹き分け奏法を模擬可能にした音源制御装置を発明し、先に特許出願した(特願2005−213736号)。この先願に係る音源制御装置では、ジェットの流速と、ジェットの長さ(ジェット吹出口−エッジ間距離)と、運指状態とを検知し、これらの検知情報に基づいてオクターブ切換制御を行なっている。このため、低音域では、強く吹くと、オクターブが変化することとなり、オクターブを変化させずに大音量で演奏することが困難であった。
【0020】
上記した先行出願では、息の強さによるオクターブ変化をなくすため、ジェットの長さのみに基づいてオクターブ切換制御を行なう方法が提案されている。この方法によれば、唇−エッジ間距離を変えるだけでオクターブの吹き分けが可能であり、低音域で強く吹いてもオクターブが変化しない。しかし、唇−エッジ間距離をあまり変えずに主に息の強さだけでオクターブを吹き分ける操作に慣れている奏者にとっては、息の強さによってオクターブが変わらないことが不都合となっていた。
【0021】
実際のフルート演奏では、低音域で大音量を得る場合、ジェットの幅を広げて演奏している。上記した先願に係る音源制御装置では、このような奏法に対応することができず、音量の制御範囲が狭かった。
【0022】
また、実際のフルート演奏では、聴感上音量が上がったように演奏するために、ジェットの偏心(ジェットがエッジに当たる部分での上下方向のずれ)を変えて高次倍音を含んだ音色になるように演奏している。上記した先願に係る音源制御装置では、このような奏法に対応することができず、音色の制御範囲が狭かった。
【0023】
さらに、実際のフルート演奏では、音域や息の量によるピッチの変動を内吹き、外吹きなどのアンブシュアの変化により唄穴にかざす唇の面積を変えることで補正して演奏している。上記した先願に係る音源制御装置では、このような奏法に対応することができず、ピッチの制御範囲が狭かった。
【0024】
この発明の目的は、息の強さによるオクターブの吹き分けを可能にすると共に音量、音色又はピッチの制御範囲を拡大することができる新規な音源制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この発明に係る第1の音源制御装置は、
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、
前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジに沿ってジェットの流速又は強さを検知すべく並設された複数のセンサを有し、これらのセンサの出力に基づいてジェットの幅に対応した検知出力を送出する第1の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力と前記第2の検知手段の検知出力とに基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、
この検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号の振幅を前記第1の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
を備えたものである。
【0026】
この発明の第1の音源制御装置によれば、リッププレートにおいてエッジ又はその近傍で第1の検知手段によりジェットの流速又は強さが検知されると共に第2の検知手段によりジェットの長さが検知され、第1及び第2の検知手段の検知出力に基づいてジェット吹出口とエッジとの間のジェット伝達時間が決定される。複数のトーンキーに関して運指状態が検出され、検出に係る運指状態に対応して発生すべき楽音信号の周波数が指示される。指示に係る周波数と決定に係るジェット伝達時間とに基づいてジェット走行角等のジェットパラメータが算出され、このジェットパラメータと発音状態とに基づいて発音オクターブが制御される。
【0027】
第1の制御手段は、検出に係る運指状態に対応する所定オクターブの所定音名の楽音信号を複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力に基づいて発生すべく音源手段を制御する。第2の制御手段は、音源手段にて所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに算出に係るジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく音源手段を制御する。第3の制御手段は、音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに算出に係るジェットパラメータが第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音の音高を1オクターブ下降すべく音源手段を制御する。
【0028】
この発明では、運指状態に対応して発生すべき楽音信号の周波数を用いてジェットパラメータを算出するので、実際の発音周波数を求める必要がない。また、所定オクターブの楽音信号を発生中のときはジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発音オクターブを1オクターブ上げるようにしたので、ユーザとしては、ジェットパラメータが第1の所定値に達するように吹奏した後はその吹奏状態を維持したままで1オクターブ高い楽音信号を発生させることができ、図32に示したようにジェット走行角をπ/2からπに増大させるような吹奏操作は要求されない。1オクターブ高い楽音信号を発生中のときはジェットパラメータが第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発音オクターブを1オクターブ下げるようにしたので、ユーザとしては、ジェットパラメータが第2の所定値に達するように吹奏した後はその吹奏状態を維持したままで1オクターブ低い楽音信号を発生させることができ、図32に示したようにジェット走行角を3π/2から3π/4に減少させるような吹奏操作は要求されない。従って、息の強さによるオクターブの吹き分けを簡単に行なうことができる。その上、第2の所定値を第1の所定値より大きくしてオクターブ切換えにヒステリシスを持たせてあるので、1オクターブ上げる場合には第1の所定値に達しない範囲で、1オクターブ下げる場合には第2の所定値に達しない範囲でそれぞれピッチを若干変更するように吹奏してもオクターブ変化が起こらず、ピッチベンドやビブラート等の奏法が可能である。さらに、ジェットの幅を検知し、その検知情報に応じて楽音信号の振幅を制御するようにしたので、低音域ではジェットの幅を広げて吹奏することで大音量の演奏を行なうことができる。従って、第1の音源制御装置は、様々なフルートの演奏メソッドのアンブシュアに対応可能であり、フルートに近い演奏を楽しみたいユーザに好適である。
【0029】
この発明の第1の音源制御装置では、前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第3の検知手段を更に備え、前記決定手段及び前記第1の制御手段のいずれにおいても前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力の代りに前記第3の検知手段の検知出力を用いるようにしてもよい。このようにすると、オクターブの切換制御は、第3の検知手段の検知出力に基づいて行なわれるので、複数のセンサをジェットの幅を検知するのに最適な配置にすることができる。
【0030】
この発明に係る第2の音源制御装置は、
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、
前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく該エッジの上下方向に並べて設けられた複数のセンサを有し、これらのセンサの出力に基づいてジェットの偏心又は厚さに対応した検知出力を送出する第1の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力と前記第2の検知手段の検知出力とに基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、
この検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号の音色及び音量のうちの少なくとも1つのものを前記第1の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
を備えたものである。
【0031】
この発明の第2の音源制御装置は、前述した第1の音源制御装置と同様にして息の強さによるオクターブの吹き分けを可能にしたもので、ジェットの偏心又は厚さを検知し、その検知情報に応じて楽音信号の音色及び/又は音量を制御するようにしたことを特徴とする。従って、ジェットの偏心又は厚さを変えて吹奏することで音色や音量の変化に富んだ演奏を行なうことができる。
【0032】
この発明の第2の音源制御装置において、前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第3の検知手段を更に備え、前記決定手段及び前記第1の制御手段のいずれにおいても前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサの出力の代りに前記第3の検知手段の検知出力を用いるようにしてもよい。このようにすると、オクターブの切換制御は、第3の検知手段の検知出力に基づいて行なわれるので、複数のセンサをジェットの幅を検知するのに最適な配置にすることとができる。また、前記第1の検知手段は、前記複数のセンサの出力に基づいてセンサ位置毎にセンサ出力値を表わす出力分布曲線を推定すると共に該出力分布曲線のピーク位置に対応してジェットの偏心を決定するようにしてもよい。このようにすると、精度良くジェットの偏心を求めることができる。
【0033】
この発明に係る第3の音源制御装置は、
開放端に連通する細長い空洞を有する管体部であって、その側部には前記空洞に連通する唄穴を有するリッププレートと音高指定用の複数のトーンキーとが設けられたものと、
前記リッププレートにおいて前記唄穴側からジェットが当たるエッジ又はその近傍にジェットの流速又は強さを検知すべく設けられた第1の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記エッジ又はその近傍にジェットの長さを検知すべく設けられた第2の検知手段と、
前記リッププレートにおいて前記唄穴への唇かざし量又は前記唄穴の近傍での唇タッチ量を検知すべく設けられた第3の検知手段と、
前記第1及び第2の検知手段の検知出力に基づいてジェット吹出口と前記エッジとの間のジェット伝達時間を決定する決定手段と、
前記複数のトーンキーに関して運指状態を検出する検出手段と、
この検出手段で検出された運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を指示する指示手段と、
この指示手段で指示された周波数と前記決定手段で決定されたジェット伝達時間との積に応じたジェットパラメータを算出する計算手段と、
前記第1の検知手段の検知出力に基づいて前記所定オクターブの楽音信号を発生すべく音源手段を制御する第1の制御手段と、
前記音源手段にて前記所定オクターブの楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが第1の所定値まで減少したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ上昇すべく前記音源手段を制御する第2の制御手段と、
前記音源手段にて1オクターブ上昇した音高の楽音信号を発生中であるときに前記計算手段で算出されるジェットパラメータが前記第1の所定値より大きい第2の所定値まで増大したことを検知して発生中の楽音信号の音高を1オクターブ下降すべく前記音源手段を制御する第3の制御手段と、
前記音源手段から発生される楽音信号のピッチを前記第3の検知手段の検知出力に基づいて制御する第4の制御手段と
を備えたものである。
【0034】
この発明の第3の音源制御装置は、前述した第1の音源制御装置と同様にして息の強さによるオクターブの吹き分けを可能にしたもので、唄穴への唇かざし量又は唄穴の近傍での唇タッチ量を検知し、その検知情報に応じて楽音信号のピッチを制御するようにしたことを特徴とする。従って、唄穴への唇かざし量又は唄穴の近傍での唇タッチ量を変えて吹奏することでピッチを変化させたり、ピッチ変動を補正したりして演奏を行なうことができる。
【発明の効果】
【0035】
この発明の音源制御装置によれば、現在の発音状態とジェットパラメータとに基づいてオクターブ切換制御を行なうようにしたので、フルート等のエアリード楽器におけるオクターブ吹き分け奏法を簡単に模擬できる効果が得られる。
【0036】
また、ジェットの幅に応じて楽音信号の振幅を制御したり、ジェットの偏心又は厚さに応じて楽音信号の音色を制御したり、唄穴への唇かざし量又は唄穴の近傍での唇タッチ量に応じて楽音信号のピッチを制御したりする構成にしたので、音量、音色又はピッチの制御範囲を拡大できる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、この発明の一実施形態に係る吹奏電子楽器の回路構成を示すもので、この電子楽器では、小型コンピュータを用いて音源制御を行なうようになっている。
【0038】
フルートに類似した形状を有するウインドコントローラ10は、閉塞端12aから開放端12bに延長する細長い空洞を有する管体部12を備えたもので、管体部12の側部には、管体部12の空洞に連通する唄穴16を有するリッププレート14と、音高指定用の多数のトーンキーを含むトーンキー群18とが設けられている。ウインドコントローラ10は、フルートのようにそれ自体で音を発生するものではないから、管体部12の寸法は、ユーザの使い易さ等を考慮して適宜設定することができる。また、閉塞端12aは、開放端としてもよい。
【0039】
リッププレート14には、ジェットの流速を検知するための流速センサと、ジェットの長さを検知するための長さセンサと、唄穴16への唇かざし量を検知するための唇かざし量センサとが装着されている。これらのセンサの装着構造については、図4,7,9,10,12,13,15を参照して後述する。トーンキー群18中の各トーンキーには、その操作の有無を検出するためにキースイッチが装着されている。
【0040】
バス20には、CPU(中央処理装置)22、ROM(リード・オンリィ・メモリ)24、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)26、流速センサ回路30、長さセンサ回路32、唇かざし量センサ回路34、キースイッチ回路36、音源回路38等が接続されている。バス20には、キーボードや表示器も接続されているが、図示を省略した。CPU22は、ROM24にストアされたプログラムに従って音源制御のための各種処理を実行するもので、これらの処理については図20〜26を参照して後述する。ROM24には、プログラムの他に、各種のデータテーブルが記憶されている。RAM26は、CPU22が各種処理を実行する際にフラグ、レジスタ等として使用する記憶領域を含んでいる。
【0041】
流速センサ回路30は、リッププレート14に設けた流速センサを含むもので、流速センサの出力に応じた流速データを発生する。長さセンサ回路32は、リッププレート14に設けた長さセンサを含むもので、長さセンサの出力に応じた長さデータを発生する。唇かざし量センサ回路34は、リッププレート14に設けた唇かざし量センサを含むもので、唇かざし量センサの出力に応じた唇かざし量データを発生する。キースイッチ回路36は、トーンキー群18中の多数のトーンキーにそれぞれ設けた多数のキースイッチを含むもので、トーンキー群18での運指状態に応じた運指データを発生する。
【0042】
音源回路38は、一例として図2に示すような物理モデル音源38Aを有するもので、音源38Aからはディジタル楽音信号DTSが送出される。音源38Aには、音高制御入力としてレジスタKCRからキーコード値が、音量制御入力としてレジスタBCRから音量制御値が、音高制御入力としてレジスタEMRからアンブシュア制御値が、ピッチ制御入力としてレジスタPARからピッチ制御値が、音色制御入力としてレジスタTCRから音色制御値がそれぞれ供給される。レジスタKCR,BCR,EMR,PAR,TCRは、いずれもRAM26内に存在する。音高制御入力は、音階に従って半音単位で音高を制御する入力であり、ピッチ制御入力は、ピッチベンド等のようにセント単位で音高を制御する入力である。なお、音源回路38は、図3に示すような波形テーブル音源(波形読出音源)38Bを有するものとしてもよく、これについては後述する。
【0043】
音源回路38から送出されるディジタル楽音信号DTSは、D/A変換回路40でアナログ楽音信号ATSに変換される。アナログ楽音信号ATSは、パワーアンプ、スピーカ等を含むサウンドシステム42により楽音に変換される。
【0044】
図4は、流速センサ及び長さセンサの装着構造の一例を示すものである。リッププレート14において、唄穴16側からジェットが当たるエッジEGに沿って横方向センサ群Sが設けられると共に、エッジEGの前部には横方向センサ群Sに直交するように縦方向センサ群Sが設けられている。一例として、縦方向センサ群Sは、エッジEGの上下方向に並べて設けられた4個の流速センサを含むと共に、横方向センサ群Sは、縦方向センサ群Sの右側及び左側にそれぞれ5個ずつ並設された合計10個の流速センサを含んでいる。各流速センサは、ジェットの流速を検知するためのものである。各流速センサの代りに、ジェットの強さを検知するための圧力センサを設けてもよい。
【0045】
エッジEGの直下において、縦方向センサ群Sの左側及び右側には、それぞれ発光素子Le及び受光素子Lrが設けられている。発光素子Le及び受光素子Lrは、ジェットの長さを検知するための長さセンサを構成するもので、ジェットの長さ検知については図9を参照して後述する。
【0046】
横方向センサ群Sは、ジェットの幅を検知するためのもので、ジェットの幅の検知は、次のようにして行なうことができる。横方向センサ群Sにおいて、流速センサ列の中央位置(エッジEGの中心位置)を基準位置ゼロとする。基準位置ゼロの右側で右端から5個のセンサの出力値を順次に調べていって所定の閾値Uthを越えたセンサがあればこのセンサに対応する位置をVR[mm]とする。基準位置ゼロの左側で左端から5個のセンサの出力値を順次に調べていって閾値Uthを越えたセンサがあればこのセンサに対応する位置をVL[mm]とする。ジェットの有効幅は、VR−VL[mm]として求めることができる。
【0047】
ジェットの幅を求めるための他の方法としては、次のような簡易法を用いてもよい。すなわち、ジェットの幅を左右対称と仮定し、右側又は左側のいずれか一方側にだけエッジEGに沿って複数個のセンサを並設する。これらのセンサの出力に基づいて一方側のジェットの幅を求めて2倍することで他方側も含めた全体としてのジェットの幅を求める。この方法によれば、センサ数を半分に節約することができる。
【0048】
図5は、音量テーブルの一例を示すもので、横軸はジェットの幅[mm]を、縦軸は音量変更量をそれぞれ示す。図5の例では、ジェットの幅が増大するにつれて音量変更量が徐々に増大している。ROM24には、上記のようにして求められるジェットの幅の値毎に図5に従って音量変更量を示すデータを音量テーブルとして記憶しておき、求めたジェットの幅に対応する音量変更量をROM24から読出して音量制御データに乗算するなどして楽音信号の振幅を制御する。
【0049】
図6は、ジェットがエッジに当たる様子を示すものである。ジェットJは、上唇K及び下唇Kの間からある厚さをもって吹き出され、唄穴16の周辺でリッププレート14のエッジEGに当たる。このとき、ジェットJの中心Jcは、エッジEGからずれるのが普通であり、このずれ量を「ジェットの偏心」と称する。
【0050】
図7を参照してジェットの偏心の求め方を説明する。図7において、図6と同様の部分には同様の符号を付してある。エッジEGの前部には、縦方向センサ群Sを構成する4個の流速センサS〜Sが設けられている。流速センサS〜Sについては、各センサ毎に中央位置をセンサ位置とする。流速センサS,Sの境界位置がエッジEGの位置に一致している。
【0051】
厚みを持ったジェットJが縦方向センサ群Sに当たると、流速センサS〜Sからは、一例として、ジェットJの左側にグラフGFで示すような値を有するセンサ出力P〜Pがそれぞれ出力される。グラフGFにおいて、縦軸は縦方向の位置を、横軸はセンサ出力値をそれぞれ示し、各センサ位置毎にP等のセンサの出力値が示されている。横軸の位置は、エッジEGの位置に一致している。ジェットの偏心は、センサ出力P〜Pのうち最大値を有するセンサ出力Pの横軸からのずれ量として求めることができる。
【0052】
ジェットの偏心を求めるための他の方法としては、センサ出力P〜Pに基づいてセンサ位置毎にセンサ出力値を表わす出力分布曲線Kを推定し、この出力分布曲線Kのピーク位置の横軸からのずれ量をジェットの偏心ΔP[mm]とする方法を用いることができる。出力分布曲線Kは、流速センサの数をn(図7ではn=4)とすると、n−1次関数の曲線として推定され、この関数の最大値(ピーク位置)に対応してジェットの偏心ΔPが決定される。この方法によると、離散的に配置された複数のセンサを用いて精度良くジェットの偏心を求めることができる。なお、流速センサをエッジEGの位置を中心にして2個だけ(例えばS,Sだけ)設けた場合には、2個のセンサの出力の差に対応してジェットの偏心を求めてもよい。
【0053】
図8は、音色テーブルの一例を示すもので、横軸はジェットの偏心[mm]を、縦軸は音色変更量をそれぞれ示す。図8の例では、音源回路38の音源として図3の波形テーブル音源38Bを用いることを想定しており、音色変更量としてのローパスフィルタ係数変更量をジェットの偏心の増大に伴って徐々に1.0に近づけるようになっている。ROM24には、上記のようにして求められるジェットの偏心の値毎に図8に従ってローパスフィルタ係数変更量を示すデータを音色テーブルとして記憶しておき、求めたジェットの偏心に対応するローパスフィルタ係数変更量をROM24から読出してローパスフィルタ係数制御データに乗算するなどして楽音信号の音色を制御する。
【0054】
音源回路38の音源としての図2の物理モデル音源38Aを用いる場合は、非線形テーブルを読出すときの読出アドレスのオフセット量が音色変更量に対応する。図8と同様にしてジェットの偏心と読出アドレスのオフセット量との関係を定めた音色テーブルを作成してROM24に記憶しておき、求めたジェットの偏心に対応する読出アドレスのオフセット量をROM24から読出して音色制御データとして音源38Aに供給することにより楽音信号の音色を制御する。
【0055】
上記した説明では、縦方向センサ群Sを用いる場合において、ジェットの偏心を検知し、その検知情報に応じて楽音信号の音色を制御する例を述べたが、検知したジェットの偏心に応じて楽音信号の音量を制御するようにしてもよい。また、図7に示すように縦方向センサ群Sからのセンサ出力に基づいてジェットJの厚さtを検知し、その検知情報に応じて楽音信号の音色及び/又は音量を制御するようにしてもよい。
【0056】
図9は、ジェットの長さの検知を説明するためのもので、図6と同様の部分には、同様の符号を付してある。ジェットの長さを検知するための長さセンサSdとしては、前述したように発光素子Le及び受光素子Lrがリッププレート14のエッジEGの真下に設けられている。発光素子Leからの射出光が唄穴16を横切ってユーザの下唇Kに照射されると共に下唇Kからの反射光が受光素子Lrに入射し、受光素子Lrからは、反射光の大きさに対応した受光出力が得られる。この受光出力に基づいて下唇−エッジ間距離d1を求めることができる。
【0057】
ジェット吹出口Jは、上唇Kと下唇Kとの間のジェット吹出部に相当する。エッジEGを中心として下唇Kの先端を通る円弧Cと、ジェット吹出口Jを通る円弧Cとを想定すると、ジェット吹出口−エッジ間距離dは、前述の下唇−エッジ間距離d1よりもジェット吹出口−下唇先端間距離d2だけ長い。すなわち、距離dは、距離d1,d2を用いてd=d1+d2として求められる。この距離dは、図30に示したスリット−エッジ間距離dに対応するもので、ジェット伝達時間τeを決定したり、エッジEGに対する唇の接近度を判定したりするのに用いられる。距離d2は、高音になるほど小さくなるので、音高に応じて決定(スケーリング)するのが望ましいが、すべての音高について平均化した一定値を用いてもよい。
【0058】
図10は、唇かざし量を検知するためのセンサ配置の一例を示すものである。この例では、唇かざし量センサとして、発光素子LE及び受光素子LRを用いる。発光素子LE及び受光素子LRは、管体部12の内部において、リッププレート14の唄穴16に対向する部分に並設される。発光素子LEからは、ある程度光を散乱させた状態で赤外線などの光を上方に向けて照射する。照射光は、ユーザの唇にて反射し、その反射光が受光素子LRに入射する。このときの入射光量は、唄穴16への唇かざし量が増大するにつれて増大するので、受光素子LRの受光出力に基づいて唇かざし量を検知することができる。
【0059】
図11は、ピッチテーブルの一例を示すもので、横軸は唇かざし量を、縦軸はピッチ変更量をそれぞれ示す。図11の例では、唇かざし量が中位である状態を標準状態とすると、標準状態から唇かざし量を低下させると、ピッチ変更量が増大し、標準状態から唇かざし量を増大させると、ピッチ変更量が減少するようになっている。ROM24には、上記のようにして検知される唇かざし量の値毎に図11に従ってピッチ変更量を示すデータをピッチテーブルとして記憶しておき、検知した唇かざし量に対応するピッチ変更量をROM24から読出す。読出しに係るピッチ変更量をPiとし、ピッチ制御データの値をPCとすると、例えば、PC×(1.0+Pi)なる式に従ってピッチ制御値を求め、このピッチ制御値を音源38Aに供給することにより楽音信号のピッチを制御する。
【0060】
図12は、唇かざし量を検知するためのセンサ配置の他の例を示すもので、図10と同様の部分には同様の符号を付してある。この例では、管体部12の内部に発光素子LEを設けると共に唄穴16の上方に発光素子LEに対向させて受光素子LRを設け、受光素子LRには唇で遮られずに透過した光を入射させる。唄穴16への唇かざし量が増大すると、受光素子LRへの入射光量が減少するので、受光素子LRの受光出力に基づいて唇かざし量を検知することができる。図12の例でも、図11に関して前述したと同様にピッチ制御を行なうことができる。
【0061】
図13は、唇タッチ量を検知するためのセンサ配置の一例を示すものである。この例では、リッププレート14において、唄穴16の手前にタッチセンサTSを設け、唄穴16の近傍での唇のタッチ量(唇の接触面積)を検知する構成としている。タッチセンサTSとしては、例えば圧力センサ又はメンブレンスイッチ等を用いることができる。メンブレンスイッチは、平面的に配置された多数のスイッチ素子を含むもので、押されたスイッチ素子の数をカウントすることで唇接触面積に対応した出力が得られる。
【0062】
図14(A)は、タッチセンサTSの出力と唄穴16への唇かざし量との関係を示すもので、タッチセンサTSの出力(唇接触面積)が小さいと内吹きの傾向があり、大きいと外吹きの傾向があることを表わしている。図14(B)には、図11に関して前述したと同様に唇かざし量とピッチ変更量との関係を示す。図14(C)は、図14(A),(B)に基づいてタッチセンサTSの出力(唇接触面積)とピッチ変更量との関係を示すもので、センサTSの出力が小さくなる(内吹き傾向が強くなる)ほどピッチを低下させると共にセンサTSの出力が大きくなる(外吹き傾向が強くなる)ほどピッチを上昇させるようになっている。
【0063】
ROM24には、タッチセンサTSの出力値毎に図14(C)に従ってピッチ変更量を示すデータをピッチテーブルとして記憶しておき、求めたタッチセンサTSの出力値に対応するピッチ変更量をROM24から読出す。読出しに係るピッチ変更量をPiとし、ピッチ制御データの値をPCとすると、図11に関して前述したと同様にPC×(1.0+Pi)なる式に従って求めたピッチ制御値を音源38Aに供給することにより楽音信号のピッチを制御する。
【0064】
図15は、唇タッチ量を検知するためのセンサ配置の他の例を示すものである。この例では、リッププレート14において、唄穴16の手前に2個のタッチセンサTS,TSを並設し、唄穴16の近傍での唇タッチ量(唇接触面積)を検知する構成としている。タッチセンサTS,TSとしては、いずれも前述の圧力センサ又はメンブレンスイッチを用いることができる。
【0065】
図16(A)は、タッチセンサTSの出力OTSに対するタッチセンサTSの出力OTSの比率OTS/OTSと唄穴16への唇かざし量との関係を示すもので、比率OTS/OTSが小さいと内吹きの傾向があり、大きいと外吹きの傾向があることを表わしている。図16(B)には、図11に関して前述したと同様に唇かざし量とピッチ変更量との関係を示す。図16(C)は、図16(A),(B)に基づいて比率OTS/OTSとピッチ変更量との関係を示すもので、比率OTS/OTSが小さくなる(内吹き傾向が強くなる)ほどピッチを低下させると共に比率OTS/OTSが大きくなる(外吹き傾向が強くなる)ほどピッチを上昇させるようになっている。
【0066】
ROM24には、比率OTS/OTSの値毎に図16(C)に従ってピッチ変更量を示すデータをピッチテーブルとして記憶しておき、求めた比率OTS/OTSの値に対応するピッチ変更量をROM24から読出す。読出しに係るピッチ変更量をPiとし、ピッチ制御データをPCとすると、図11に関して前述したと同様にPC×(1.0+Pi)なる式に従って求めたピッチ制御値を音源38Aに供給することにより楽音信号のピッチを制御する。
【0067】
図5,8,11,14,16に関して上記した説明では、ROM24に記憶した音量テーブル、音色テーブル又はピッチテーブルを参照して楽音信号の振幅(音量)、音色又はピッチを制御する例を述べたが、音量、音色又はピッチの変更量は、テーブルから読出す代りに演算で求めることも可能である。
【0068】
次に、図17を参照してジェット伝達時間算出法を説明する。図17において、横軸はジェット吹出口からの距離xを、縦軸はジェットの流速U(x)をそれぞれ表わす。線L,L,Lは、それぞれジェットの初速が小,中,大である場合のジェットの流速分布を表わす。横軸において、Jはジェット吹出口の位置を、EGはエッジの位置を、Sbは流速センサの位置を、xは、線L,Lの交点に対応する位置を、dはジェット吹出口−エッジ間距離をそれぞれ表わす。距離dは、図9に関して前述したように長さセンサSdの出力に基づいて決定される。エッジ位置でのジェットの流速U(d)を一義的に決定するためには、位置xより左側(エッジ寄り)に流速センサSbを設ける必要がある。
【0069】
図30,31に関して前述した方法によりジェット伝達時間τeを精度良く求めるためには多数の流速センサを必要とする。しかし、次に述べる(M)〜(M)の方法を用いると、少ない数の流速センサを用いてジェット伝達時間τeを精度良く求めることができる。
【0070】
(M)複数の流速センサの出力に基づいて流速分布を推定する方法:この方法では、ジェット吹出口からエッジ又はその近傍に至るジェット経路に沿って複数の流速センサを設ける。一例として、第1及び第2の2個の流速センサを設けるものとし、第1の流速センサを図17のEGの位置に、第2の流速センサを図17のSbの位置に設ける。第1の流速センサとしては、図4に示した横方向センサ群S中の1つのセンサ又は縦方向センサ群S中の1つのセンサを用いることができる。第1及び第2の流速センサの出力に基づいて補間法、直線近似、曲線近似等により例えば線Lのようなジェットの流速分布を推定する。そして、推定に係る流速分布と距離dとに基づいて前述の数2又は数3の式によりジェット伝達時間τeを算出する。
【0071】
(M)流速分布データをテーブル化して記憶しておく方法:この方法では、1個の流速センサを用いる。この1個の流速センサとしては、図4に示した横方向センサ群S中の1つのセンサ又は縦方向センサ群S中の1つのセンサを用いることができる。また、ジェット吹出口からエッジ又はその近傍の位置までのジェット流速分布を表わす流速分布データを実測により求め、流速センサの出力値に対応させてテーブル化してROM24に記憶しておく。演奏時には、流速センサの出力値に対応する流速分布データをROM24から読出し、読出しに係る流速分布データが表わす流速分布と距離dとに基づいて前述の数2又は数3の式によりジェット伝達時間τeを算出する。
【0072】
(M)予め計算したジェット伝達時間をテーブル化して記憶しておく方法:この方法では、ジェット吹出口とエッジとの間のジェット伝達に要する時間(ジェット伝達時間)を上記(M)で説明したように流速分布と距離dとに基づいて算出し、算出に係る時間を表わす時間データを流速センサの出力値及び長さセンサの出力値に対応させてテーブル化してROM24に記憶しておく。演奏時には、流速センサの出力値及び長さセンサの出力値に対応する時間データをROM24から読出し、読出しに係る時間データが表わす時間をジェット伝達時間τeとして決定する。
【0073】
(M)ジェット伝達時間を簡略式で計算する方法:この方法では、エッジ位置でのジェットの流速U(d)と距離dとを用いてτe=d/U(d)なる簡略式によりジェット伝達時間τeを算出する。この方法は、ジェットの初速U(0)と終速U(d)とがほぼ等しい(U(0)≒U(d))ことを前提としたもので、線Lで示すような初速U(0)が小さい流速分布の時に用いるのに適している。
【0074】
図18は、この発明に係るオクターブ切換制御動作を図32と同様にモード遷移図で示すものである。ジェット走行角θe’は、1次モードでは図32の場合と同様にθeであり、2次モードでは図32の場合の半分(θe/2)である。Sの状態で初速U(0)のジェットが発生すると、θe’=3π/2となるSのときに1次モードの発音を開始させる。そして、θe’がπ,3π/4…とπ/2に向けて減少していく過程Sでは、発音周波数を徐々に上昇させ、音量や音色も変化させる。θe’=π/2となるSのときに2次モードへジャンプ(1オクターブ上昇)させる。このジャンプの過程Sでは、θe’はπ/2のままとするので、図32に示したようにジェット走行角をπ/2からπに倍増させるような吹奏操作は要求されない。
【0075】
θe’=π/2の状態Sから2次モードの発音を開始させる。そして、θe’がπ/2から3π/4に増大していく過程Sでは、発音周波数を徐々に下降させ、音量や音色も変化させる。θe’=3π/4となるSの時に1次モードへジャンプ(1オクターブ下降)させる。このジャンプの過程Sでは、θe’は3π/4のままとするので、図32に示したようにジェット走行角3π/2から3π/4に半減させるような吹奏操作は要求されない。なお、図18において、左方向は、ジェットの流速U(x)が増加する方向である。また、左方向は、ジェット吹出口−エッジ間距離dが減少する方向でもある。
【0076】
図18の動作例では、2次モードにおけるジェット走行角θe’を図32の場合の半分(π/2,3π/4)としたので、2次モードでの発音開始の決定や1次モードへの移行の判定が容易となる。また、発音オクターブを1オクターブ上げたり、下げたりする際に運指状態は同一状態を維持すればよいので、ジェット走行角θe’を決定するための周波数としては、同一の運指状態に対応して発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を用いることができ、実際の発音周波数を用いなくてよい。
【0077】
図19は、キーコードに基づく発音動作を示すもので、(A)は運指データに基づいて発生されるキーコードを、(B)は音源回路38に供給されるキーコードを、(C)は音源回路38に供給されるアンブシュア制御値を、(D)は発音される音高をそれぞれ示す。キーコードは、括弧内にキーコード値(ノートナンバ)として示されている。
【0078】
キーコード値60,61は、いずれもアンブシュア制御値64と共に音源回路38に供給され、C,Cの音を発生するのに使用される。キーコード値62〜73に関して、1次モードではアンブシュア制御値が64とされ、2次モードではアンブシュア制御値が127とされる。1次モードにおいて、キーコード値62〜73は、いずれもアンブシュア制御値64と共に音源回路38に供給され、D〜Cの音を発生するのに使用される。2次モードにおいて、キーコード値62〜73は、いずれもアンブシュア制御値127と共に音源回路38に供給され、D〜Cの音を発生するのに使用される。
【0079】
74以上のキーコード値は、いずれも加算処理ASにより12が加算され、1オクターブ上のキーコード値に変換される。例えば、D〜Cに対応するキーコード値74〜85は、D〜Cに対応するキーコード値86〜97にそれぞれ変換される。変換に係るキーコード値は、いずれもアンブシュア制御値64と共に音源回路38に供給され、D以上の音高の音を発生するのに使用される。
【0080】
図20は、メインルーチンの処理の流れを示すもので、この処理は、電源オン等に応じてスタートする。ステップ50では、初期設定処理を行なう。例えば、前述のレジスタKCR,BCR,EMR,PAR,TCRには、それぞれ0をセットする。また、RAM26内のモードフラグMFには無音状態に対応する0をセットする。
【0081】
ステップ52では、図21に関して後述するようにキースイッチ回路36からの運指データに基づいてキーコード処理を行なう。ステップ54では、図22に関して後述するように流速センサ回路30からの流速データに基づいて流速処理を行なう。ステップ56では、図23に関して後述するように長さセンサ回路32からの長さデータに基づいて長さ処理を行なう。ステップ57では、図24に関して後述するように唇かざし量センサ回路34からの唇かざし量データに基づいて唇かざし量処理を行なう。ステップ58では、図25,26に関して後述するように音源回路38へ各種の制御情報を出力する出力処理を行なう。
【0082】
ステップ58の後は、ステップ60で音源オフ等の終了指示ありか判定する。この判定結果が否定的(N)であれば、ステップ52に戻り、それ以降の処理を繰返す。ステップ60の判定結果が肯定的(Y)となったときは、処理エンドとする。
【0083】
図21は、キーコード処理のサブルーチンを示すものである。ステップ62では、キースイッチ回路36から運指データを取得し、RAM26内のレジスタTKRにセットする。ROM24には、運指データが示す運指状態毎に図19(A)に示したようなキーコードを表わすキーコードテーブルが記憶されている。ステップ64では、ROM24のキーコードテーブルを参照してTKRの運指データ値に対応するキーコードKCを求め、レジスタKCRにセットする。
【0084】
ステップ66では、KCRのKC(キーコード)値が62〜73(D〜C)のいずれかか(1,2次モードか)判定する。ROM24には、KC値毎に発生すべき所定オクターブの所定音名の楽音信号の周波数を表わす周波数テーブルが記憶されている。ステップ66の判定の結果が肯定的(Y)であったときは、1,2次モードであったことになり、ステップ68でROM24の周波数テーブルを参照してKCRのKC値に対応する周波数fso1を求め、fso1を表わす周波数データをRAM26内のレジスタfRにセットする。
【0085】
ステップ66の判定の結果が否定的(N)であった(1,2次モード以外の他のモードであった)とき又はステップ68の処理が終ったときは、ステップ70でKCRのKC値が74(D)以上か判定する。この判定の結果が肯定的(Y)であれば、ステップ72でKCRのKC値に12を加え、その和のデータをKCRにセットする。この処理は、図19に示した加算処理ASに相当する。ステップ72の処理が終ったとき又はステップ70の判定の結果が否定的(N)であったときは、図20のメインルーチンにリターンする。
【0086】
図22は、流速処理のサブルーチンを示すものである。ステップ73では、流速センサ回路30から流速データを取得し、RAM26内のレジスタSPR〜SPRにセットする。すなわち、SPRには、横方向センサ群S又は縦方向センサ群Sの中央部の1つの流速センサからの流速データをセットする。あるいは横方向センサ群S又は縦方向センサ群Sの中央付近の複数(例えば2個)のセンサ流速データの値を平均し、その平均値を示す流速データをSPRにセットしてもよい。SPRには、横方向センサ群S中の各流速センサからの流速データをセットする。SPRには、縦方向センサ群Sの各流速センサからの流速データをセットする。そして、ステップ74では、SPRの流速データ値が所定値以上か判定する。この所定値としては、発音可能状態とするのに適した値が予め設定されている。ステップ74の判定の結果が否定的(N)であったときは、ステップ75でモードフラグMFに0(無音状態に対応)をセットする。
【0087】
ステップ74の判定の結果が肯定的(Y)であったときは、ステップ76に移る。ROM24には、流速データ値毎にブレス制御値を表わすブレステーブルが記憶されている。ステップ76では、ROM24のブレステーブルを参照してSPRの流速データ値に対応するブレス制御値を求め、レジスタBCRにセットする。ROM24には、流速データ値毎にエッジEGでの流速Ue(図17のU(d)に相当)を表わす流速テーブルが記憶されている。ステップ77では、ROM24の流速テーブルを参照してSPRの流速データ値をエッジでの流速Ueに変換し、流速Ueを表わす流速データをRAM26内のレジスタURにセットする。
【0088】
ステップ75又は77の処理が終ったときは、ステップ78においてSPRの流速データ値に基づいてジェットの幅を求め、RAM26内のレジスタJWRにセットする。ステップ79では、前述したROM24内の音量テーブルを参照してJWRのジェットの幅の値に対応する音量変更量を求め、RAM26内のレジスタWVRにセットする。ステップ80では、BCRのブレス制御値にWVRの音量変更量を乗算し、その積を音量制御値としてBCRにセットする。ステップ81では、SPRの流速データ値に基づいてジェットの偏心を求め、RAM26内のレジスタJPRにセットする。ステップ82では、前述したROM24内の音色テーブルを参照してJPRのジェットの偏心の値に対応した音色変更量(読出アドレスのオフセット量)を求め、TCRに音色制御値としてセットする。ステップ82の後は、図20のメインルーチンにリターンする。なお、ステップ81では、ジェットの偏心の代りに図7に関して前述したようにジェットの厚さを求め、JPRにセットしてもよい。この場合、ROM24には、ジェットの厚さの値毎にピッチ変更量を表わす音色テーブルを記憶しておき、ステップ82では、この音色テーブルを参照してJPRのジェットの厚さの値に対応する音色変更量を求め、TCRにセットする。
【0089】
図23は、長さ処理のサブルーチンを示すものである。ステップ84では、長さセンサ回路32から長さデータを取得し、RAM26内のレジスタLGRにセットする。ROM24には、長さデータ値毎にジェット吹出口−エッジ間距離dを表わす距離テーブルが記憶されている。ステップ86では、ROM24の距離テーブルを参照してLGRの長さデータ値を距離dに変換し、距離dを表わす距離データをRAM26内のレジスタdRにセットする。
【0090】
次に、ステップ88では、URの流速データが示す流速UeとdRの距離データが示す距離dとを用いてτe=d/Ueなる式に従ってジェット伝達時間τeを求め、この時間τeを表わす時間データをRAM26内のレジスタτRにセットする。ステップ88では、前述した(M)〜(M)のジェット伝達時間算出法のうち簡便な(M)の方法を用いてジェット伝達時間τeを求めたが、(M)〜(M)のいずれかの方法を用いてジェット伝達時間τeを求めてもよい。
【0091】
ステップ90では、τRの時間データが示すジェット伝達時間τeとfRの周波数データが示す周波数fso1とを用いてθe’=2πfso1×τeなる式に従ってジェット走行角θe’を求め、この走行角θe’を表わす走行角データをRAM26内のレジスタθRにセットする。ROM24には、ステップ86で求められる距離d毎にピッチ修正値を表わすピッチテーブルが記憶されている。ステップ92では、ROM24のピッチテーブルを参照してdRの距離データが示す距離dに対応するピッチ修正値を求め、RAM26内のレジスタPARにセットする。この後、図20のメインルーチンにリターンする。
【0092】
図24は、唇かざし量処理のサブルーチンを示すものである。ステップ94では、唇かざし量センサ回路34から唇かざし量データを取得し、RAM26内のレジスタOVRにセットする。
【0093】
次に、ステップ96では、前述したROM24のピッチテーブルを参照してOVRの唇かざし量データの値に対応するピッチ変更量を求め、RAM26内のレジスタPARにセットする。ステップ98では、PARのピッチ変更量の値に1.0を加えた値をPARのピッチ修正値に乗算し、その積をピッチ制御値としてPARにセットする。ステップ98の後は、図20のメインルーチンにリターンする。
【0094】
なお、ステップ94では、唇かざし量データの代りに、図13又は図15に関して前述したセンサ配置に基づいて唇タッチ量データを取得し、OVRにセットしてもよい。この場合、ステップ96では、ROM24に記憶した図14(C)又は図16(C)のピッチテーブルを参照してOVRの唇タッチ量データの値に応じたピッチ変更量を求め、PARにセットする。ステップ98の処理は、前述したと同様に行なう。
【0095】
図25,26は、出力処理のサブルーチンを示すものである。ステップ100では、KCRのKC値が62〜73のいずれかか(1,2次モードか)判定する。この判定の結果が否定的(N)であれば、KC値が60,61,74以上のいずれかであった(1,2次モード以外の他のモードであった)ことになり、ステップ102で他モードの出力処理を行なう。
【0096】
すなわち、ステップ102Aでは、アンブシュア制御値64をEMRにセットする。そして、ステップ102Bでは、KCRのKC値と、EMRのアンブシュア制御値と、BCRの音量制御値と、PARのピッチ制御値と、TCRの音色制御値とを音源回路38に出力する。この結果、KC値が60,61,74以上のいずれかである楽音が発生され、該楽音の音量、ピッチ、音色が音量制御値、ピッチ制御値、音色制御値に応じてそれぞれ制御される。
【0097】
ステップ102の出力処理の後は、図26のステップ136に移る。ステップ136では、SPRの流速データ値が図22のステップ74で述べた所定値より小か判定する。この判定の結果が否定的(N)であれば、図20のメインルーチンにリターンする。ステップ136の判定の結果が肯定的(Y)であったときは、ステップ138で消音処理を行なう。消音処理では、物理モデル音源38Aの各制御入力を0にセットすると共にKCR,BCR,EMR,PAR,TCRにそれぞれ0をセットし、MFにも0(無音状態に対応)をセットする。この結果、発生中の楽音が減衰開始し、新たな楽音の発生が可能になる。ステップ138の後は、図20のメインルーチンにリターンする。
【0098】
ステップ100の判定の結果が肯定的(Y)であったときは、1,2次モードであったことになり、ステップ104に移る。ステップ104では、MFが0で且つθe’が3π/2まで減少したか判定する。この判定の結果が肯定的(Y)であれば、ステップ106でアンブシュア値64をEMRにセットする。
【0099】
ステップ108では、ステップ102Bに関して前述したと同様にKCR,EMR,BCR,PAR,TCRの値を音源回路38に出力する。この結果、無音状態でθe’が3π/2に達したときにD〜Cのいずれかの楽音が発生され、該楽音の音量、ピッチ、音色が音量制御値、ピッチ制御値、音色制御値に応じてそれぞれ制御される。この後、ステップ110では、MFに1(1次モードに対応)をセットする。
【0100】
ステップ110の処理が終ったとき又はステップ104の判定の結果が否定的(N)であったときは、ステップ112に移る。ステップ112では、MFが1で且つθe’が3π/2以下でπ/2より大か判定する。この判定の結果が肯定的(Y)であれば、ステップ114に移り、BCRの音量制御値と、PARのピッチ制御値と、TCRの音色制御値とを音源回路38に出力する。この結果、図18に示すようにπ/2<θe’≦3π/2のときに流速を速くしたり、距離dを減少させたりすることで発音周波数を徐々に上げたり、音量や音色を変更したりすることができる。
【0101】
ステップ114の処理が終ったとき又はステップ112の判定の結果が否定的(N)であったときは、図26のステップ116に移る。ステップ116では、MFが1で且つθe’がπ/2まで減少したか判定する。この判定の結果が肯定的(Y)であれば、ステップ118でアンブシュア制御値127をEMRにセットする。アンブシュア制御値は、図27に示すようにθe’が π/2まで減少した時に64から127に変化する。ステップ116の判定の結果が否定的(N)であれば、ステップ124に移る。
【0102】
ステップ120では、EMRのアンブシュア制御値と、BCRの音量制御値と、PARのピッチ制御値と、TCRの音色制御値とを音源回路38に出力する。この結果、図18に示すようにSの状態で1次モードから2次モードにジャンプし、発音オクターブが1オクターブ上昇する。また、音量制御値、ピッチ制御値及び音色制御値に応じて音量、ピッチ及び音色がそれぞれ制御される。この後は、ステップ122でMFに2(2次モードに対応)をセットする。
【0103】
次に、ステップ124では、MFが2で且つθe’がπ/2以上で3π/4より小か判定する。この判定の結果が肯定的(Y)であれば、ステップ126に移り、前述のステップ114と同様にしてBCR,PAR,TCRの値を音源回路38に出力する。この結果、図18に示すようにπ/2≦θe’<3π/4のときに流速を遅くしたり、距離dを増大させたりすることで発音周波数を徐々に下降させたり、音量や音色を変化させたりすることができる。
【0104】
ステップ126の処理が終ったとき又はステップ124の判定の結果が否定的(N)であったときは、ステップ128に移る。ステップ128では、MFが2で且つθe’が3π/4まで増大したか判定する。この判定の結果が肯定的(Y)であれば、ステップ130でアンブシュア制御値64をEMRにセットする。アンブシュア制御値は、図28に示すようにθe’が3π/4まで増大したときに127から64に変化する。
【0105】
ステップ132では、前述のステップ120と同様にしてEMR,BCR,PAR,TCRの値を音源回路38に出力する。この結果、図18に示すようにSの状態で2次モードから1次モードへジャンプし、発音オクターブが1オクターブ下降する。また、音量制御値、ピッチ制御値及び音色制御値に応じて音量、ピッチ及び音色がそれぞれ制御される。この後は、ステップ134でMFに1をセットする。
【0106】
ステップ136では、前述したと同様にSPRの流速データ値が所定値より小か判定する。この判定の結果が肯定的(Y)であれば、ステップ138で前述したと同様に消音処理を行なう。ステップ138の処理が終ったとき又はステップ136の判定の結果が否定的(N)であったときは、図20のメインルーチンにリターンする。
【0107】
上記した実施形態では、ステップ104,112,116,124,128の判定の際にジェットパラメータとしてジェット走行角θe’を用い、例えば3π/2のように「π」を有する数値と比較するようにしたが、ジェットパラメータとして例えば2fso1×τeのように「π」を持たない数値を用いると共に比較基準値としても例えば3/2のように「π」を持たない数値を用いてもよい。
【0108】
上記した実施形態によれば、音名が同一でオクターブが異なる2音を同一の運指状態にて流速Ueや距離dを変更することで簡単に吹き分けることができる。オクターブ切換えにヒステリシスがない状態では、ビブラート等によりオクターブ変化が生じやすく、演奏に困難を伴うが、オクターブ切換えにヒステリシスを持たせたので、ジェット走行角がπ/2<θe’≦3π/4又はπ/2≦θe’ <3π/4の範囲内にあるときはピッチベンドやビブラートの奏法が可能である。また、1オクターブ上の音をスラー(吹奏状態で運指を変える方法)ではなくタンギング(息を舌で止めてから吹奏開始する方法)で吹くと、息の弱い状態を経由するため、アタックとリリースで1オクターブ下の音を経由することになり、フルートと同様の演奏の困難さがある。さらに、ジェットの幅に応じて音量を制御したり、ジェットの偏心又はジェットの厚さに応じて音色や音量を制御したり、唄穴への唇かざし量又は唄穴の近傍での唇タッチ量に応じてピッチを制御したりするので、音量、ピッチ、音色の変化に富んだ演奏が可能である。従って、様々なフルートの演奏メソッドのアンブシュアに対応可能であり、フルートに近い演奏を楽しみたいユーザに好適である。
【0109】
上記した実施形態において、音源回路38の音源として、図3に示した波形テーブル音源38Bを用いる場合には、変換回路160,162,164,166を設ける。変換回路160は、図19(B)に示すようにEMRのアンブシュア制御値が64であればKCRからの60〜73,86以上のいずれかのKC値をそのまま音源38Bに音高制御入力として供給する一方、EMRのアンブシュア制御値が127であれば62〜73のいずれかのKC値に12を加えて74〜85のいずれかのKC値に変換し、変換に係るKC値を音源38Bに音高制御入力として供給する。音源38Bでは、74〜85のいずれかのKC値に基づいてD〜Cのいずれかの楽音信号が発生される。
【0110】
変換回路162は、BCRの音量制御値を音量制御情報に変換し、この音量制御情報を音源38Bに音量制御入力として供給する。変換回路164は、PARのピッチ制御値をピッチ制御情報に変換し、このピッチ制御情報を音源38Bにピッチ制御入力として供給する。変換回路166は、TCRの音色制御値を音色制御情報に変換し、この音色制御情報を音源38Bに音色制御入力として供給する。なお、変換回路160〜166は、変換処理としてコンピュータに実行させるようにしてもよい。別の方法としては、変換回路160〜166又は変換処理を用いず、変換回路160〜166の出力に相当する制御情報をコンピュータから音源38Bに供給するようにしてもよい。
【0111】
音源38Bには、楽音発生を開始させるためのノートオン情報NTONと、楽音減衰を開始させるためのノートオフ情報NTOFとが供給される。ノートオン情報NTONは、図22のステップ74と同様の判定処理により発生させることができ、ノートオフ情報NTOFは、図26のステップ136と同様の判定処理により発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】この発明の一実施形態に係る吹奏電子楽器の回路構成を示すブロック図である。
【図2】音源回路の一例を示すブロック図である。
【図3】音源回路の他の例を示すブロック図である。
【図4】流速センサ及び長さセンサの装着構造の一例を示す断面図である。
【図5】音量テーブルの一例を示すグラフである。
【図6】ジェットがエッジに当たる様子を示すリッププレートの唄穴部の断面図である。
【図7】ジェットの偏心の求め方を説明するためのリッププレートの唄穴部の断面図である。
【図8】音色テーブルの一例を示すグラフである。
【図9】ジェットの長さの検知を説明するためのリッププレートの唄穴部の断面図である。
【図10】唇かざし量を検知するためのセンサ配置の一例を示す斜視図である。
【図11】ピッチテーブルの一例を示すグラフである。
【図12】唇かざし量を検知するためのセンサ配置の他の例を示す斜視図である。
【図13】唇タッチ量を検知するためのセンサ配置の一例を示す斜視図である。
【図14】図13のセンサ配置に基づくピッチテーブルの作成例を示す図である。
【図15】唇タッチ量を検知するためのセンサ配置の他の例を示す斜視図である。
【図16】図15のセンサ配置に基づくピッチテーブルの作成例を示す図である。
【図17】ジェット伝達時間算出法を説明するための流速分布図である。
【図18】オクターブ切換制御動作を説明するためのモード遷移図である。
【図19】キーコードに基づく発音動作を説明するための図である。
【図20】メインルーチンの処理を示すフローチャートである。
【図21】キーコード処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図22】流速処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図23】長さ処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図24】唇かざし量処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図25】出力処理のサブルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図26】出力処理のサブルーチンの残部を示すフローチャートである。
【図27】オクターブ上昇時におけるジェット走行角とアンブシュア制御値との関係を示すグラフである。
【図28】オクターブ下降時におけるジェット走行角とアンブシュア制御値との関係を示すグラフである。
【図29】音名が同一でオクターブが異なる2音を同一の運指状態にて吹き分ける例を示す運指図である。
【図30】エアリード楽器におけるジェットの流れを示す断面図である。
【図31】ジェット伝達時間算出法を説明するためのグラフである。
【図32】エアリード楽器におけるオクターブ変化を示すモード遷移図である。
【図33】エアリード楽器におけるジェットの流速分布を示す流速分布図である。
【符号の説明】
【0113】
10:ウインドコントローラ、12:管体部、14:リッププレート、16:唄穴、18:トーンキー群、20:バス、22:CPU、24:ROM、26:RAM、30:流速センサ回路、32:長さセンサ回路、34:唇かざし量センサ回路、36:キースイッチ回路、38:音源回路、40:D/A変換回路、42:サウンドシステム。




 

 


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