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発明の名称 電子鍵盤楽器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−25364(P2007−25364A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−208767(P2005−208767)
出願日 平成17年7月19日(2005.7.19)
代理人 【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
発明者 国貞 慶 / 加藤 崇士 / 冨士田 隆志
要約 課題
トランスデューサ別の出力による微妙な響板振動制御を可能として、豊かな音量の自然な音響を実現すると共に音質調節を容易にする。

解決手段
板状部材から成る響板33は、フレーム31の上端に固定保持され、トランスデューサ21A、21B、21Cは、響板33の上面に互いに離間して配設される。鍵盤17の各鍵の押離鍵操作に応じて生成される第1演奏信号と、ペダル18の操作に応じて生成される第2演奏信号とから、音高に応じた定位となるように、各トランスデューサ21の特性及び配置を考慮して、個別に、駆動信号が生成され、出力される。これにより、響板33が音高に応じた周波数で加振されて振動し、演奏音及びダンパ音の楽音が発生する。
特許請求の範囲
【請求項1】
板状部材から成る響板を有し、該響板を振動させて楽音を発生させる電子鍵盤楽器であって、
複数の演奏操作子と、
同一響板に互いに離間して取り付けられ、駆動信号によって駆動されて前記響板を振動させる、特性の異なる複数の加振器と、
前記複数の演奏操作子の操作に応じて、前記複数の各加振器別に駆動信号を生成し出力する信号生成出力手段とを有することを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記複数の加振器は、その特性に応じた位置に配置され、前記信号生成出力手段は、前記複数の各加振器の特性及び配置位置に応じて前記駆動信号を生成し出力することを特徴とする請求項1記載の電子鍵盤楽器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、響板を振動させて楽音を発生させる電子鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子鍵盤楽器は、発生させる楽音が、アコースティック楽器のような広がり感のある自然な楽音に近づくように改良され続けているが、未だに、聴感上、アコースティック楽器とは差があるものである。
【0003】
これは、自然楽器では、弦等の振動部材による発音ばかりではなく、鍵等の操作子の駆動によって楽器内の部品の当接音や、それぞれの部品や響板で共鳴することで聞こえてくる音等が複雑に作用しあって発生する音が多く、既存の電子鍵盤楽器ではそのような複雑な音の表現を十分に表しきれないからである。
【0004】
例えば、演奏操作に応じて発音される箇所の音をそれぞれ作り出して、それを演奏音としてスピーカから発音するものがあるが、状況(鍵盤やペダルの操作状態及びそれらの操作タイミング等)による複雑な作用環境での発音の再現には、限界があり、表現が不足することがあった。
【0005】
一方、響板にトランスデューサ(加振器)を装着し、響板を振動させて複雑な共鳴音を出力する電子鍵盤楽器も知られている(下記特許文献1、2)。
【特許文献1】特許2917609号公報
【特許文献2】特開平5−80748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2のようなトランスデューサを用いた電子鍵盤楽器は、開発途上であり、十分な発音量を得たり、音質を自由に制御したりできるようにする上で、トランスデューサの数、特性、配置等に関し、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、トランスデューサ別の出力による微妙な響板振動制御を可能として、豊かな音量の自然な音響を実現すると共に音質調節を容易にすることができる電子鍵盤楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の電子鍵盤楽器は、板状部材から成る響板を有し、該響板を振動させて楽音を発生させる電子鍵盤楽器であって、複数の演奏操作子と、同一響板に互いに離間して取り付けられ、駆動信号によって駆動されて前記響板を振動させる、特性の異なる複数の加振器と、前記複数の演奏操作子の操作に応じて、前記複数の各加振器別に駆動信号を生成し出力する信号生成出力手段とを有することを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記複数の加振器は、その特性に応じた位置に配置され、前記信号生成出力手段は、前記複数の各加振器の特性及び配置位置に応じて前記駆動信号を生成し出力する(請求項2)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によれば、トランスデューサ別の出力による微妙な響板振動制御を可能として、豊かな音量の自然な音響を実現すると共に音質調節を容易にすることができる。
【0011】
請求項2によれば、より適切な出力配分によってより音量豊かで自然な音響を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電子鍵盤楽器の全体構成を示すブロック図である。図2は、本電子鍵盤楽器の平面図である。図3(a)は、本電子鍵盤楽器の正面図、図3(b)は、響板のフレームに対する1つの取付部の断面図である。
【0014】
本電子鍵盤楽器1は、図1に示すように、検出回路3、検出回路4、ROM6、RAM7、タイマ8、表示装置9、記憶装置10、外部インターフェイス(外部I/F)11、音源回路13及び効果回路14が、バス16を介してCPU5にそれぞれ接続されて構成される。
【0015】
さらに、検出回路3には、演奏操作子15が接続され、演奏操作子15には、音高情報を入力するための複数の鍵からなる鍵盤17、及び足で演奏操作されるダンパペダル(以下、「ペダル」と称する)18が含まれる。検出回路4には、各種情報を入力するための複数のスイッチを含むパネル操作子2が接続されている。表示装置9は液晶ディスプレイ(LCD)等で構成され、楽譜や文字等の各種情報を表示する。CPU5にはタイマ8が接続され、外部I/F11には外部演奏機器100が接続されている。効果回路14には、サウンドシステム19を介して発音部20が接続されている。サウンドシステム19には、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ等が含まれる。
【0016】
検出回路3は演奏操作子15の操作状態を検出し、検出回路4はパネル操作子2の操作状態を検出する。CPU5は、電子鍵盤楽器1全体の制御を司る。ROM6は、CPU5が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM7は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ8は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。記憶装置10は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データ、各種データ等を記憶する。
【0017】
外部I/F11は、MIDII/Fや各種の通信I/Fを有し、例えば、外部演奏機器100等の外部装置からのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を入力したり、MIDI信号を外部装置に出力したりする。音源回路13は、演奏操作子15から入力された演奏データや予め設定された演奏データ等を楽音信号に変換する。効果回路14は、音源回路13から入力される楽音信号に各種効果を付与する。
【0018】
記憶装置10は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)を備えるが、このほか、記憶装置10は、外部の記憶媒体12に対してデータを読み書きすることができる。記憶媒体12としては、例えば、フレキシブルディスクドライブ(FDD)、CD−ROMドライブ、光磁気ディスク(MO)ドライブ等を挙げることができる。
【0019】
発音部20は、複数(例えば3つ)のトランスデューサ21(トランスデューサ21A、21B、21C)を含み、演奏データまたは演奏操作子15の操作に基づいて、図2に示す響板33を加振(励振)することで、音響を発生させる。すなわち、この電子鍵盤楽器1では、スピーカを備えず、専ら響板33の振動によって発音がなされる。
【0020】
図3(a)に示すように、ペダル18は、脚体30の下部前部に設けられ、脚体30の上部には、フレーム31が固定されている。図2に示すように、奏者側(前側)には、グランドピアノと同じように鍵盤17が配設される。響板33は、鍵盤17の後方に配設される。響板33は、図2に示すように、グランドピアノにおける弦の下に配設される響板と同じような平面視形状を有する。響板33は、厚み1cm程度の木製の板で一様の厚みに形成され、響板33の奥行きは、高音側(図2右側)の方が低音側(図2左側)より短い。なお、響板33は、振動して発音するのに適していれば、材料は問わず、厚みも、設計において適宜変更することができる。
【0021】
フレーム31の平面視形状は、響板33の周縁部をほぼかたどった枠状の形状をしている。具体的には、フレーム31の外郭は響板33の周縁部よりやや小さく、響板33の相似形をしている。図2、図3(b)に示すように、響板33は、適当な間隔を保った複数のネジ34で、ゴム製板部材32を介して、フレーム31の上端に固定保持されている。
【0022】
トランスデューサ21A、21B、21Cは、響板33の上面に互いに離間して配設される。トランスデューサ21Aは、響板33の低音側に配置され、トランスデューサ21Bは、響板33の中音域に配置され、トランスデューサ21Cは、響板33の高音側の、奥行きが短い領域に配置される。前後方向の位置は、トランスデューサ21Cが最も前方に位置し、トランスデューサ21Bが最も後方に位置する。各トランスデューサ21A、21B、21Cは、響板33を効率よく加振できる位置に配置されるが、その具体的な配置箇所の決定手法については後述する。
【0023】
各トランスデューサ21は、響板33に直接取り付けられる。響板33に対する取り付けについては、ネジ止め、接着等、手段は問わない。トランスデューサ21の構造は、ラジオ技術1971年3月号第266頁の第1図または第2図に記載されているような公知の構造であり、電気信号(演奏信号乃至駆動信号)により自身が振動して、自身の重みによる反作用によって響板33を振動させる。なお、トランスデューサ21は、電気信号により響板33を加振して発音させることができる構造であれば、どのような構造であってもよい。
【0024】
本実施の形態では、トランスデューサ21A、21Bは同一構成のものを用いる。トランスデューサ21A、21Bは、大型で、対応可能な周波数が低く、周波数250Hz近辺での振動効率が特に良く、それより高い周波数については、発生させる振動が微小となる。また、発生可能な振動の強さも強く、主に低音域の発音を担当する。
【0025】
一方、トランスデューサ21Cは、トランスデューサ21A、21Bとは特性(能力)、すなわち、入力信号に対する振動効率が異なる。トランスデューサ21Cは、トランスデューサ21A、21Bよりも小型で、対応可能な周波数が高く、周波数1000Hz以上の加振も効率良くできる。また、発生可能な振動の強さはトランスデューサ21A、21Bほど強くなく、主に高音域の発音を担当する。
【0026】
図4は、電子鍵盤楽器1の機能を示すブロック図である。同図に示す信号処理部40は、機能部として、第1、第2演奏信号生成22、23、第1、第2演奏データ24、25、効果処理26、遅延処理27、加算器28及び出力分配29を有する。これら、信号処理部40の各機能部の機能は、図1に示すCPU5、ROM6、RAM7、タイマ8、記憶装置10、外部インターフェイス11、音源回路13、効果回路14及びサウンドシステム19等の構成要素の協働によって実現される。
【0027】
第1演奏データ24は、アコースティックグランドピアノにおいて、ダンパペダルを踏まないで各鍵を操作したときに発音される楽音を、音高別にサンプリングした波形データである。一方、第2演奏データ25は、ダンパペダルを踏みながら各鍵を操作したときに発音される楽音を、音高別にサンプリングしたものから、第1演奏データ24に相当するデータを差し引いた波形データである。すなわち、第1演奏データ24は、通常演奏音を再現するためのデータである。第2演奏データ25は、アコースティックピアノにおけるダンパペダル操作時の、打弦された弦以外の弦の共鳴等による広がり感のあるダンパ音を再現するためのデータである。これらは、例えば、ROM6に記憶されている。
【0028】
第1演奏信号生成22は、鍵盤17の各鍵の押離鍵操作に応じて、第1演奏データ24を用いて第1演奏信号を生成し、効果処理26に送る。一方、第2演奏信号生成23は、ペダル18及び鍵盤17の操作に応じて、第2演奏データ25を用いて第2演奏信号を生成し、遅延処理27に送る。効果処理26に送られた第1演奏信号は、効果処理26で、設定されている効果が施される一方、遅延処理27に送られた第2演奏信号は、遅延処理27で所定の遅延処理がなされ、これら処理後の第1、第2演奏信号が、加算器28で加算・混合されて、出力分配29に送られる。
【0029】
出力分配29は、供給された混合信号に基づいて、トランスデューサ21に出力を分配する。すなわち、トランスデューサ21A、21B、21Cの各々用に、アナログの駆動信号を生成し増幅して出力する。具体的には、音高に応じた周波数、ベロシティに応じた強さで振動するような駆動信号を生成・出力する。その際、出力バランスに関しては、音高の高い混合信号については、3つのトランスデューサ21のうち、トランスデューサ21Cの出力レベルを高くし、音高の中/低の混合信号については、トランスデューサ21A/21Bの出力レベルを高くすることで、音場定位を、操作された鍵に極力合致させる。
【0030】
また、ある鍵操作によって生成される第1演奏信号に基づく駆動信号と第2演奏信号に基づく駆動信号の出力バランスは、各トランスデューサ21間で同じとするが、トランスデューサ21毎に別々のバランスで出力してもよい。
【0031】
図5は、メイン処理のフローチャートである。本処理は、電源オン時に開始される。
【0032】
まず、初期化を実行、すなわち所定プログラムの実行を開始し、RAM7等の各種レジスタに初期値を設定して初期設定を行う(ステップS101)。次いで、パネル操作子2の入力を確認し(ステップS102)、その入力に対応する機器の設定(音量、音色、効果設定等)等を実行する(ステップS103)。そして、演奏操作子15の入力があったか否かを判別し(ステップS104)、入力がない場合は、ステップS105に進む一方、入力があった場合は、それが押鍵指示(鍵盤17の鍵の押下)であるか否かを判別する(ステップS106)。
【0033】
その判別の結果、押鍵指示でない場合は、離鍵指示であるか否かを判別し(ステップS110)、離鍵指示でもない場合は、ペダル18のオン操作であるか否かを判別し(ステップS113)、ペダル18のオン操作でもない場合は、ペダル18のオフ操作であるので、ステップS115に進む。従って、演奏操作子15の入力が、押鍵指示である場合は、ステップS107〜S109を実行し、離鍵指示である場合は、ステップS111、S112を実行し、ペダル18のオン操作である場合は、ステップS114を実行し、ペダル18のオフ操作である場合は、ステップS115を実行して、それぞれステップS105に進む。
【0034】
まず、前記ステップS107では、現在、ペダル18がオン状態であるか否かを判別する。そして、ペダル18がオン状態でない場合は、ステップS109に進み、押鍵鍵(押鍵された鍵)の音高に応じた第1演奏データ24をROM6から読み出して、第1演奏データ24に基づき、押鍵ベロシティに応じたエンベロープを有する第1演奏信号を生成する。一方、ペダル18がオン状態である場合は、ステップS108に進み、押鍵鍵の音高に応じた第2演奏データ25を読み出して、押鍵ベロシティに応じたエンベロープを有する第2演奏信号を生成してから、前記ステップS109を実行する。
【0035】
前記ステップS111では、現在、ペダル18がオン状態であるか否かを判別する。そして、ペダル18がオン状態でない場合は、ステップS112に進み、離鍵鍵(離鍵された鍵)の演奏信号を停止させる。すなわち、対応する発音中の楽音を消音処理するべく、消音用の信号を生成する。この処理では、第1演奏データ24を読み出して、離鍵操作に応じたエンベロープを有する消音用の第1演奏信号を生成する。一方、ペダル18がオン状態である場合は、演奏信号を停止させることなく前記ステップS105に進む。
【0036】
前記ステップS114では、押鍵状態であって発音中の音がある場合は、押鍵状態の鍵に応じた第2演奏信号を、ペダル18のオン操作に応じて生成する。すなわち、押鍵状態の鍵の音高に応じた第2演奏データ25を読み出して、発音処理中の音の減衰状態に合致したエンベロープを有する第2演奏信号を生成する。
【0037】
前記ステップS115では、押鍵状態にある鍵以外に対応する音高で発音中の音がある場合は、それらに対応する演奏信号を停止させる。すなわち、対応する発音中の楽音を消音処理するべく、消音用の信号を生成する。この処理では、押鍵状態にある鍵以外に対応する音高であって発音中の音高に応じた第1演奏データ24及び第2演奏データ25を読み出して、ペダル18のオフ操作に応じたエンベロープを有する消音用の第1演奏信号及び第2演奏信号を生成する。
【0038】
前記ステップS105では、上記生成された第1演奏信号及び第2演奏信号に基づいて、音高に応じた定位となるように、各トランスデューサ21の特性及び配置を考慮して、個別に、駆動信号を生成し、出力する。これにより、響板33が音高に応じた周波数で振動し、演奏音、あるいはこれに加えてダンパ音の楽音が発生する。その後、前記ステップS102に戻る。
【0039】
響板33の振動による楽音は、スピーカによる楽音に比べれば、鍵盤17やペダル18の操作状態及びそれらの操作タイミング等による複雑な作用環境での発音の再現に近いものとなり、良好な音質で、自然な音響となる。特に、響板33は、グランドピアノの響板と同じような形状であるので、その音響も生のピアノに近いものとなる。特に、フレーム31の平面視形状は、響板33の周縁部をほぼかたどった枠状の形状であるので、フレーム31の内側領域では、響板33が大きく(十分に低い周波数で)振動することが可能であるので、低音域での発音及びダンパ音を良好に再現できる。しかも、トランスデューサ21が、響板33を効率良く加振できる位置に配置されていることで、十分な発音量を得ることができる。
【0040】
ここで、音質制御については、例えば、同じ音高、音量の発音であっても、各トランスデューサ21へ出力する駆動信号を変えることで、音質をある程度変えることができる。音質の設定については、図5のステップS102において、パネル操作子2によって入力が受け付けられる。
【0041】
次に、トランスデューサ21の配置箇所の決定手法について説明する。
【0042】
図6(a)〜(d)は、響板33をある固有周波数で振動させたときに生じる節線を示す図である。同図(a)〜(d)は、それぞれ異なる固有周波数で響板33を振動させた場合における、響板33の外郭に対応する外郭線33x及び節線を、モニタ画面上に表したものである。
【0043】
トランスデューサ21の配置箇所の決定は、次のようなステップ(i)〜(V)でなされる。
(i)響板33の上に砂等の細かい粒状物を散布して、周波数を徐々に変化させながら響板33を自由振動させる。
(ii)響板33の固有周波数と一致すると、響板33上の粒状物が節線に集まってくるので、その際の粒状物の集合状態から、節線の位置を各固有周波数毎に把握する。
(iii)響板33に対応する平面上に各固有周波数毎の節線を重畳させる。
(iV)重畳された節線の密度が「粗」となっている場所を特定する。
(V)節線の密度が「粗」となっている場所を、トランスデューサの配置位置として決定する。
【0044】
上記ステップ(i)では、例えば、周波数50〜400Hz程度まで、周波数を徐々に、段階的に変えて、響板33を振動させる。その際、響板33の構成及び固定状態は定まっているものとし、周波数以外の条件は変えないものとする。上記ステップ(i)〜(iii)は、前述のように響板33を実際に振動させ、目視や検出によって節線を把握してもよい。しかし、本実施の形態では、響板33を現実に振動させる代わりに、上記ステップ(i)〜(iii)をコンピュータ解析により行なう。
【0045】
コンピュータ解析において、上記ステップ(i)では、固定的な条件として、響板33の大きさ、形状、板厚、材質、材質の密度、ヤング率、ポアソン比、ネジ34の位置等の情報を予め入力しておく。そして、上記ステップ(ii)では、コンピュータのモニタ画面を、響板33に対応する平面として、外郭線33xと、解析により得た各固有周波数における節線とをモニタ画面に表示する。図6(a)〜(d)では、それらの一部を例示しており、それらの振動の固有周波数は、例えば、50、140、260、360Hzである。
【0046】
そして、上記ステップ(iii)では、図7に示すように、上記各固有周波数における節線を重畳させたものをコンピュータのモニタ画面上に表示する。そして、上記ステップ(iV)では、図7に示す重畳された節線群を目視で見て、節線の密度が粗の部分と密の部分がわかるので、粗の部分を特定する(例えば、同図に白丸で示す箇所)。次に、上記ステップ(V)では、モニタ画面上で粗となっている位置に対応する、響板33上の位置を特定し、該位置を、トランスデューサ21の配置候補位置とする。ここで、配置候補位置は、3つより十分多い数が特定されることが想定されるが、その後は、各トランスデューサ21を配置候補位置に設置して、実際に響板33を振動させて、最も良好な位置の組み合わせを選択すればよい。
【0047】
ただし、トランスデューサ21の配置決定に関して、いくつか留意点がある。まず、各トランスデューサ21の特性に合った位置に配置する。すなわち、大きい(低音用の)トランスデューサ21(21A等)は、響板33の左半部、小さい(高音用の)トランスデューサ21(21C等)は右半部に配置するのが望ましい。また、音場定位を適切に制御できるようにするためには、トランスデューサ21の少なくとも2つは、左右方向に互いに離間させる必要がある。
【0048】
また、前後方向に関し、中、低音用のトランスデューサ21は、響板33の前側に配置しないようにする。すなわち、これらは、周波数が低いことから揺れが大きく、ユーザに振動が過度に伝わるとむずがゆいような不快な感じを与えるおそれがある。一方、高音用のトランスデューサ21ではそのおそれが小さい。しかも、高音用のトランスデューサ21は、定位を明瞭にする観点からも、奏者に近い側にあった方がよい。従って、複数のトランスデューサ21のうち、最前部のものが最高音側(右側)に配置されるのが望ましい。
【0049】
上記した、図2に示すトランスデューサ21の配置態様は、これらを考慮してなされたものである。トランスデューサ21の位置は、平面視において、フレーム31の内側において、フレーム31及びネジ34の位置を避けた位置となっている。ある固有周波数で響板33を振動させたとき、節線が生じるが、同じ周波数で振動させる上で、その節線位置を加振するのは非効率的である。多種類の周波数で振動させた結果、節線群が粗となる箇所は、あらゆる周波数の振動を起こす上でも、比較的効率良く振動させることができる位置であるから、その位置にトランスデューサ21を配置したものである。
【0050】
次に示すように、上記コンピュータ解析に対して、節線群が粗となる箇所の特定をより簡素化するために、ネジ34乃至フレーム31の位置を条件とした幾何的な特定手法も採用可能である。
【0051】
図8(a)は、ネジ34位置と節線が通る通過点を示す模式図である。図8(b)は、フレーム31位置と節線が通る通過点を示す模式図である。
【0052】
まず、同図(a)に示すように、一例として、ネジ34(1)とネジ34(2)との中間点(1/2)である点Q1、及び、ネジ34(1)とネジ34(2)との間でネジ34(1)からそれぞれ1/3、2/3の距離にある点Q2、Q3を求める。これら点Q1、Q2、Q3は、ネジ34(1)及びネジ34(2)の距離を整数で割り切った位置にある。
【0053】
同様に、ネジ34(1)とネジ34(3)との間においても、点Q4〜Q6が求められる。また、他の2つのネジ34の各組み合わせにおいても、点Q1、Q2、Q3と同様の点が求められる。これらの処理は、コンピュータ処理によっても行うことができる。
【0054】
ここで、節線は上下に振動しないところであるから、節線位置を加振しても、響板33を効率良く振動させることができない。ネジ34の位置は、いずれの周波数による振動においても節線が通るが、上記のような整数で割り切れる点Qの位置にも、各周波数において節線が通りやすいと考えられる。従って、ネジ34の位置はもちろんのこと、これらの点Qを避けた位置を、節線密度が粗となる位置と判断して、トランスデューサ21の配置候補として定める。ところで、フレーム31上の位置は、ネジ34が存在しない位置であっても、隣接するネジ34間において上記点Qが多数存在することになるので、節線が通りやすい。
【0055】
一方、図8(b)は、フレーム31上端面全体が響板33に当接状態となる場合、例えば、ゴム製板部材32(図3(b)参照)がフレーム31上端全体に亘って設けられるような場合を想定したものである。この場合は、フレーム31上の任意の点P1と、フレーム31上において、点P1に対向する点(例えば、フレーム31内領域の面積を2分する点)P2との間で、上記図8(a)の例と同様に、整数で割り切れる点Q(Q7、Q8、Q9)を求める。同様に、次の任意の点P3とそれに対向する点P4との間でも、点Q(Q10、Q11、Q12)を求める。このようにして、極力多数の任意の点とそれに対向する点との間で上記点Qを求める。そして、上記と同様に、これらの点Qを避けた位置を、トランスデューサ21の配置候補として定める。
【0056】
図8(a)、(b)の例では、2点間の1/2、1/3、2/3の位置を点Qとしたが、より精度を高めるためには、2点間を4以上に分割した位置(1/4、3/4等)を点Qに加えてもよい。
【0057】
ところで、響板33の振動は、低音域ではピストン振動に近く、節線を加振したとき、響板33の振動は弱いものとなってしまう。一方、高音域では点加重的で複雑な振動となり、加振位置が上記配置候補位置から多少ずれても、振動効率が著しく低下するものではない。従って、特に、低音を担当するトランスデューサ21については、配置位置を、上記配置候補位置に厳格に設定するのが望ましい。
【0058】
豊かな周波数帯域で発音させるためには、ネジ34位置及びフレーム31位置を避けて配置されたトランスデューサ21が存在していることが必要であり、より好ましくは、節線密度が粗となる位置に配設されたトランスデューサ21が存在していることが重要である。
【0059】
本実施の形態によれば、トランスデューサ21は、響板33の平面視において、ネジ34位置及びフレーム31位置のいずれでもない位置に配置され、特に、響板33を自由振動させたときに生じる各固有周波数における節線群の密度が粗となるような位置に配設されたので、響板を効率的に振動させて、良好な音質で豊かな周波数帯域の自然な音響を実現することができる。
【0060】
また、トランスデューサ21A、21Bとトランスデューサ21Cとで特性が異なり、これらを、その特性に応じた位置に配置し、各トランスデューサ21の特性及び配置位置と演奏操作子15の操作とに応じて、各トランスデューサ21毎に個別に駆動信号を生成し出力するようにしたので、トランスデューサ別の出力による微妙な響板振動制御を可能として、豊かな周波数帯域の自然な音響を実現すると共に音質調節を容易にすることができる。
【0061】
また、響板33は、グランドピアノの響板と同じような形状であるので、グランドピアノに近い自然な音響を実現できる。特に、板を振動させて低音を発音させる場合は、高音発音に比し、広い面積が必要であるので、響板33の形状は、ピアノ音の再生において理想的である。
【0062】
なお、本実施の形態では、ピアノ音をより適切に再生するために、響板33をピアノの響板形状としたが、響板33の形状は、単に発音させる上では、どのような形状でもよく、より適切な音を発音させるためには、発音させたい音の種類に応じて適宜採択すればよい。例えば、バイオリン音の再生には、バイオリンの形状に構成すれば理想的な発音が期待できる。
【0063】
なお、本実施の形態では、駆動信号の生成において、まず、第1、第2演奏信号が生成され(図5のステップS109、S112、S114、S115)、それらが効果処理26、遅延処理27で処理された後、出力分配29(図4参照)によって、各トランスデューサ21A、21B、21Cにそれぞれ出力される3つの駆動信号として生成される(図5のステップS105)とした。しかし、これに限るものでなく、効果処理26、遅延処理27の処理前の段階で、出力分配の機能を持たせ、各トランスデューサ21A、21B、21C毎に個別に、鍵盤17の操作に基づく駆動信号とペダル18に基づく駆動信号とを生成してもよい。
【0064】
なお、本実施の形態では、トランスデューサ21は、響板33の上面に取り付けたが、下面に取り付けてもよい。なお、トランスデューサ21A、21Bは互いに異なる特性としてもよい。また、トランスデューサ21の数は、音場定位制御を行わず、単に発音させるだけであるならば、最低1つでもよいが、良好な音質を求める観点からは、少なくとも2つ以上設けるのが好ましく、4つ以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子鍵盤楽器の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本電子鍵盤楽器の平面図である。
【図3】電子鍵盤楽器の正面図(図(a))、響板のフレームに対する1つの取付部の断面図(図(b))である。
【図4】電子鍵盤楽器の機能を示すブロック図である。
【図5】メイン処理のフローチャートである。
【図6】響板をある固有周波数で振動させたときに生じる節線を示す図である。
【図7】響板を振動させたときの各周波数における節線をモニタ画面上に重畳表示させた図である。
【図8】ネジ位置と節線が通る通過点を示す模式図(図(a))、フレーム位置と節線が通る通過点を示す模式図(図(b))である。
【符号の説明】
【0066】
1 電子鍵盤楽器、 15 演奏操作子、 21 トランスデューサ(加振器)、 31 フレーム、 33 響板、 40 信号処理部(信号生成出力手段)




 

 


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