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発明の名称 音源制御装置及びそのプログラム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−10771(P2007−10771A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−188561(P2005−188561)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100098084
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 研二
発明者 柴田 孝一郎
要約 課題
MIDI音源などの一般的な音源デバイスを制御することによって、管楽器の共振モード変更時の吹奏音をリアルに再現できるような仕組みを提供すること。

解決手段
MIDI音源にノートオンメッセージを供給し、第1共振モードと第2共振モードの2つの楽音をその音源から出力させる。その後、共振モードが遷移すると、遷移前の共振モードの楽音の音量レベルを緩やかに下げる一方で、遷移後の共振モードの楽音の音量レベルを緩やかに上げるようなコントロールチェンジメッセージを音源へ供給する。
特許請求の範囲
【請求項1】
管楽器の各共振モード間における遷移状態を連続的に示す各遷移状態情報と、それらの遷移状態情報が示す遷移状態のときに外部の又は自身の内蔵する音源から同時に出力させる複数の楽音の音量比率を示す比率情報とを各々対応付けて記憶した比率記憶手段と、
呼気を吹入する呼気操作子と、
前記呼気操作子への呼気の吹入の態様から遷移状態情報を生成する遷移状態解析手段と、
前記生成された遷移状態情報と対応付けて前記比率記憶手段に記憶された比率情報を基に前記同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定し、特定した各々の音量でそれらの各楽音を出力させるためのメッセージを前記音源へ供給する音源制御手段と
を備えた音源制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音源制御装置において、
前記比率記憶手段は、
第1の共振モードと第2の共振モードとの間における遷移状態を連続的に示す各遷移状態情報と、それら各遷移状態情報が示す遷移状態のときに前記音源から同時に出力させることになっている第1の共振モードの楽音及び第2の共振モードの楽音の音量比率を示す比率情報とを各々対応付けて記憶し、
更に、
当該比率記憶手段に記憶された各比率情報は、第1の共振モードに近い遷移状態の遷移状態情報と対応付けられたものであるほど第1の共振モードの楽音の音量比率が高く、第2の共振モードに近い遷移状態の遷移状態情報と対応付けられたものであるほど第2の共振モードの楽音の音量比率が高くなっている
ことを特徴とする音源制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の音源制御装置において、
前記呼気操作子から吹入される呼気の呼気圧を検出する呼気圧検出手段
を更に備え、
前記音源制御手段は、
前記生成された遷移状態情報と対応付けて前記比率記憶手段に記憶された比率情報を前記検出された呼気圧に作用させることにより、前記同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定する
ことを特徴とする音源制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の音源制御装置において、
前記音源制御手段は、
同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定した後、それらの複数の楽音の各々が前記音源から出力されているか否かを判断する手段と、
前記音量を特定した複数の楽音のうち前記音源から出力されていないと判断された楽音の出力の開始を指示するノートオンメッセージを前記音源に供給する手段と、
前記音量を特定した複数の楽音のうち前記音源から出力されていると判断された楽音の音量変更を指示するコントロールチェンジメッセージを前記音源に供給する手段と
を有する音源制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の音源制御装置において、
前記音源制御手段は、
前記検出された呼気圧から呼気の吹入の有無を判断する手段と、
呼気が吹入されていないと判断されたとき、前記音源から出力されている楽音の発音の終了を指示するノートオフメッセージを前記音源へ供給する手段と
を有する音源制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の音源制御装置において、
前記遷移状態解析手段は、
前記呼気操作子と吹奏者の口との距離を検出し、検出した距離を基に遷移状態情報を生成する
ことを特徴とする音源制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の音源制御装置において、
吹奏音の運指を指示する運指操作子と、
運指の各種別と、それら各運指が指示されたときに出力する各共振モード別の楽音のピッチを夫々示すピッチ情報群とを各々対応付けて記憶した運指記憶手段と
を更に備え、
前記音源制御手段は、
前記呼気操作子から呼気が吹入されると、前記運指操作子によって指示されている運指の種別と対応付けて前記運指記憶手段に記憶されたピッチ情報群の内容を基に、同時に出力すべき複数の楽音のピッチを夫々特定する
ことを特徴とする音源制御装置。
【請求項8】
管楽器の各共振モード間における遷移状態を連続的に示す各遷移状態情報と、それらの遷移状態情報が示す遷移状態のときに外部の又は自身の内蔵する音源から同時に出力させる複数の楽音の音量比率を示す比率情報とを各々対応付けて記憶した比率記憶手段と、呼気を吹入する呼気操作子とを備えたコンピュータ装置に、
前記呼気操作子への呼気の吹入の態様から遷移状態情報を生成する遷移状態解析機能と、
前記生成された遷移状態情報と対応付けて前記比率記憶手段に記憶された比率情報を基に前記同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定し、特定した各々の音量でそれらの各楽音を出力させるためのメッセージを前記音源へ供給する音源制御機能と
を実現させるプログラム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIDI(Musical Instruments Digital Interface)音源を制御することによって管楽器の吹奏音を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電子管楽器は、自然管楽器を模した呼気吹入口と手指用キーの両操作子を備え、呼気吹入口から呼気が吹入されると、手指用キーの押下の組合せである運指に応じて音高を特定し、その音高で呼気吹入口の呼気圧に応じた音量の吹奏音を合成して放音するようになっている。
【0003】
ここで、「共振モード変更」と呼ばれる自然管楽器に特有の奏法を検出し、その奏法に従った吹奏音を電子的に再現できるような電子管楽器の実現が従来より試みられてきた。「共振モード変更」は、運指を固定したまま呼気吹入口への呼気の吹入のさせ方を微妙に変えることによって、吹奏音のオクターブ等をコントロールする奏法を意味し、「オーバーブロー」、「オクターブ切替え」、「リップスラー」などともいう。
【0004】
特許文献1には、共振モード変更を精緻に検出し得る電子管楽器の開示がある。この文献に開示された電子管楽器は、呼気吹入口内に離散的に設置した複数の呼気圧検出センサを通じて呼気の吹入の向きを検出する。そして、検出した向きに応じて現在の共振モードを特定した後、その共振モードに従った音高の楽音信号の出力を音源へ指示するようになっている。このほか、呼気吹入口と吹奏者の口の位置関係から現在の共振モードを検出するといった手法もある。
【特許文献1】特開平07−199919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自然管楽器の演奏において共振モード変更が行われる際は、一方の共振モードの吹奏音から他方の共振モードの吹奏音へ直ちに切り替わるのではなく、両者の交じり合ったような中間的な吹奏音を段階的に経ながら半ば緩やかに変化してゆく。しかしながら、MIDI音源などの一般的な音源デバイスはこのような中間的な吹奏音の楽音情報を有していない。従って、このような中間的な吹奏音の楽音情報をも有する特殊な音源デバイスを準備できなければ、仮に特許文献1に開示された類の技術によって共振モード変更を精緻に検出し得たとしても、その共振モード変更時の吹奏音をリアルに再現することができなかった。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、MIDI音源などの一般的な音源デバイスを制御することによって、管楽器の共振モード変更時の吹奏音をリアルに再現できるような仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な態様である音源制御装置は、管楽器の各共振モード間における遷移状態を連続的に示す各遷移状態情報と、それらの遷移状態情報が示す遷移状態のときに外部の又は自身の内蔵する音源から同時に出力させる複数の楽音の音量比率を示す比率情報とを各々対応付けて記憶した比率記憶手段と、呼気を吹入する呼気操作子と、前記呼気操作子への呼気の吹入の態様から遷移状態情報を生成する遷移状態解析手段と、前記生成された遷移状態情報と対応付けて前記比率記憶手段に記憶された比率情報を基に前記同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定し、特定した各々の音量でそれらの各楽音を出力させるためのメッセージを前記音源へ供給する音源制御手段とを備える。
【0007】
この態様において、前記比率記憶手段は、第1の共振モードと第2の共振モードとの間における遷移状態を連続的に示す各遷移状態情報と、それら各遷移状態情報が示す遷移状態のときに前記音源から同時に出力させることになっている第1の共振モードの楽音及び第2の共振モードの楽音の音量比率を示す比率情報とを各々対応付けて記憶し、更に、当該比率記憶手段に記憶された各比率情報は、第1の共振モードに近い遷移状態の遷移状態情報と対応付けられたものであるほど第1の共振モードの楽音の音量比率が高く、第2の共振モードに近い遷移状態の遷移状態情報と対応付けられたものであるほど第2の共振モードの楽音の音量比率が高くなっていてもよい。
【0008】
また、前記呼気操作子から吹入される呼気の呼気圧を検出する呼気圧検出手段を更に備え、前記音源制御手段は、前記生成された遷移状態情報と対応付けて前記比率記憶手段に記憶された比率情報を前記検出された呼気圧に作用させることにより、前記同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定するようにしてもよい。
【0009】
前記音源制御手段は、同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定した後、それらの複数の楽音の各々が前記音源から出力されているか否かを判断する手段と、前記音量を特定した複数の楽音のうち前記音源から出力されていないと判断された楽音の出力の開始を指示するノートオンメッセージを前記音源に供給する手段と、前記音量を特定した複数の楽音のうち前記音源から出力されていると判断された楽音の音量変更を指示するコントロールチェンジメッセージを前記音源に供給する手段とを有してもよい。
【0010】
前記音源制御手段は、前記検出された呼気圧から呼気の吹入の有無を判断する手段と、呼気が吹入されていないと判断されたとき、前記音源から出力されている楽音の発音の終了を指示するノートオフメッセージを前記音源へ供給する手段を有してもよい。
また、前記遷移状態解析手段は、前記呼気操作子と吹奏者の口との距離を検出し、検出した距離を基に遷移状態情報を生成してもよい。
【0011】
吹奏音の運指を指示する運指操作子と、運指の各種別と、それら各運指が指示されたときに出力する各共振モード別の楽音のピッチを夫々示すピッチ情報群とを各々対応付けて記憶した運指記憶手段とを更に備え、前記音源制御手段は、前記呼気操作子から呼気が吹入されると、前記運指操作子によって指示されている運指の種別と対応付けて前記運指記憶手段に記憶されたピッチ情報群の内容を基に、同時に出力すべき複数の楽音のピッチを夫々特定するようにしてもよい。
【0012】
本発明の別の好適な態様であるプログラムは、管楽器の各共振モード間における遷移状態を連続的に示す各遷移状態情報と、それらの遷移状態情報が示す遷移状態のときに外部の又は自身の内蔵する音源から同時に出力させる複数の楽音の音量比率を示す比率情報とを各々対応付けて記憶した比率記憶手段と呼気を吹入する呼気操作子とを備えたコンピュータ装置に、前記呼気操作子への呼気の吹入の態様から遷移状態情報を生成する遷移状態解析機能と、前記生成された遷移状態情報と対応付けて前記比率記憶手段に記憶された比率情報を基に前記同時に出力させる複数の楽音の音量を夫々特定し、特定した各々の音量でそれらの各楽音を出力させるためのメッセージを前記音源へ供給する音源制御機能とを実現させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、MIDI音源などの一般的な音源デバイスを制御することによって、管楽器の共振モード変更時の吹奏音をリアルに再現できるような仕組みを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の実施の形態)
本願発明の実施形態について説明する。
本実施形態にかかる電子管楽器は、以下の2つの特徴を有する。1つ目の特徴は、吹奏者の呼気の呼気圧とその運指の状態に応じ、楽音の発音を指示するノートオンメッセージ及びその消音を指示するノートオフメッセージをMIDI音源へ供給するようにした点である。2つ目の特徴は、呼気吹入口と吹奏者の口との間の距離から共振モードの状態をも特定し、共振モードがある状態から別の状態に遷移する際はその遷移前後の両楽音のクロスフェード出力を指示するコントロールチェンジメッセージをMIDI音源へ供給するようにした点である。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる電子管楽器1の構成を示すブロック図である。この電子管楽器1は、演奏用キー10、マウスピース11、距離センサ12、ブレスセンサ13、キーセンサ14、アナログ/デジタル(以下、「A/D」と呼ぶ)変換器15、CPU16、RAM17、ROM18、及びMIDIインターフェース19を備える。図に示す音源2は、周知のMIDI音源であり、電子管楽器1からノートナンバとベロシティの両パラメータを含むノートオンメッセージの供給を受けると、そのメッセージに従ったピッチ及び音量レベルの楽音信号の出力を開始し、ノートオフメッセージの供給を受けるとその楽音信号の出力を停止する。更に、音量を制御するパラメータの1つであるエクスプレッションのコントロールチェンジメッセージの供給を受けると、出力している楽音信号の音量レベルをそのコントロールチェンジメッセージが指定する大きさに切り替える。また、この音源2は、いわゆるポリフォニック発音機能を搭載し、複数のピッチの楽音の楽音信号の合成及び出力を並行して行うことが可能である。
【0016】
演奏用キー10は、本管楽器1の筐体である円筒状ボディの側面に複数備え付けられ、それらの各々は吹奏者の手指と当接される。キーセンサ14は、各演奏用キー10の押下の有無を個別に検出する。このキーセンサ14の検出値は、A/D変換器15にて押下キーデータへと変換された後、CPU16へ供給される。CPU16は、押下キーデータが示す運指に応じたノートナンバの楽音のノートオンメッセージを音源2へ供給する。
【0017】
マウスピース11は、円筒状ボディの一端に備え付けられ、吹奏者はこのマウスピース11と当接させた自身の口から呼気を吹き入れる。距離センサ12は、マウスピース11の呼気吹入口の近傍に備え付けられ、呼気吹入口と吹奏者の口の間の距離を検出する。この距離センサ12の検出値は、A/D変換器15にて距離データへと変換された後、CPU16へ供給される。また、ブレスセンサ13は、マウスピース11から吹き入れられる呼気の圧力を検出する。このブレスセンサ13の検出値は、A/D変換器15にて呼気圧データへと変換された後、CPU16へ供給される。CPU16は、呼気圧データが示す呼気圧からエクスプレッションの大きさを示す値(以下、「エクスプレッション値」と呼ぶ)を取得し、取得したエクスプレッション値を所定の係数を用いて補正してからコントロールチェンジメッセージとして音源2へ供給する。このCPU16の振る舞いの詳細については後述する。
【0018】
ROM18は、運指テーブル18a、比率テーブル18b、及び音源制御プログラム18cを記憶する。
図2は、運指テーブル18aのデータ構造図である。このテーブルは、「運指」と「ノート」の2つのフィールドを有しており、更に、「ノート」のフィールドは「第1共振モード」と「第2共振モード」とに分かれている。「運指」のフィールドには、各演奏用キー10の押下の組合せである運指を示す運指データが記憶される。「第1共振モード」及び「第2共振モード」の両フィールドには、第1及び第2の共振モードの各々において音源2を介して出力させる楽音のノートナンバが記憶される。例えば、図に示す最上段のレコードを参照すると、このレコードの「運指」のフィールドには「運指A」と、「第1共振モード」のフィールドには「60」と、「第2共振モード」のフィールドには「72」と夫々記憶されていることが分かる。これは、演奏用キー10の一部又は全部が押下されることによって運指Aが指定された場合、第1共振モードあればノートナンバ「60」の楽音が、第2共振モードであればそれよりも1オクターブ高いノートナンバ「72」の楽音が音源2から出力されることを意味する。なお、後述するように、第1及び第2の共振モードの間の遷移過程においては、これらの両ノートナンバの楽音が所定の音量比率で音源2から同時に出力される。
以降の説明では、「第1共振モード」のフィールドに記憶されたノートナンバの楽音を「第1共振モード楽音」と呼び、「第2共振モード」のフィールドに記憶されたノートナンバの楽音を「第2共振モード楽音」と呼ぶ。
【0019】
ROM18の比率テーブル18bは、距離センサ12によって検出され得る距離の連続値を夫々示す距離データと、2つのエクスプレッション係数の組とを各々対応付けて記憶する。この一組のエクスプレッション係数のうち一方は、第1共振モード楽音と対応するものであり、もう一方は、第2共振モード楽音と対応するものである。エクスプレッション係数は、呼気圧データから取得されるエクスプレッション値に積算する係数であり、距離データが示す距離の大きさに応じて最小値「0.0」と最大値「1.0」の間を遷移する。
【0020】
図3は、この比率テーブル18bのデータ構造を概念的に示すグラフである。図に示すグラフの縦軸はエクスプレッション係数の大きさを表し、横軸は吹奏者の口と呼気吹入口との間の距離の大きさを表す。また、図に示す実線Aは、第1共振モード楽音のエクスプレッション係数の遷移を、一点鎖線Bは、第2共振モード楽音のエクスプレッション係数の遷移を夫々表わしている。
【0021】
図を参照すると、距離がd1よりも小さい領域においては、実線Aが示すエクスプレッション係数が「1.0」、一点鎖線Bが表すエクスプレッション係数が「0.0」となり、d2よりも大きい領域においては、実線Aが表すエクスプレッション係数が「0.0」、一点鎖線Bが表すエクスプレッション係数が「1.0」となる。そして、d1からd2にかけての領域においては、実線Aが示すエクスプレッション係数が「1.0」から「0.0」へと緩やかに小さくなり、一点鎖線Bが示すエクスプレッション係数が「0.0」から「1.0」へと緩やかに大きくなる。
以降の説明では、比率テーブル18bにおいて、距離がd1よりも小さい領域を「第1共振モード安定領域」と呼び、d1とd2の間の領域を「モード遷移領域」と呼び、d2よりも大きい領域を「第2共振モード安定領域」と呼ぶ。
【0022】
音源制御プログラム18cは、本実施形態に特有の機能をCPU16に付与するためのプログラムである。このプログラムの起動が指示されると、CPU16は、図4に示すノート状態管理テーブルをRAM17に形成した後、図5に示す本実施形態に特有の処理を所定の時間長(例えば50msec)毎に繰返す。
【0023】
まず、図4に示すノート状態管理テーブルについて説明すると、このテーブルは、各々が、第1及び第2の共振モードと対応する複数のレコードの集合体である。このテーブルを構成する1つのレコードは、「共振モード」、「ノート」、「エクスプレッション」、及び「状態」の4つのフィールドを有している。「共振モード」のフィールドには、第1の共振モードを示す「1」、及び第2の共振モードを示す「2」の各データが夫々記憶される。「ノート」のフィールドには、ROM18の運指テーブル18aから読み出された各共振モード毎のノートナンバが記憶され、「エクスプレッション」のフィールドには、エクスプレッション値が記憶される。
そして、これら両レコードの記憶内容は、押下キーデータが示す運指状態が切り替わるたびに更新される。即ち、CPU16は、運指が切り替わると、その切り替え後の運指と対応するレコードを運指テーブル18aから特定し、そのレコードの「第1共振モード」と「第2共振モード」の両フィールドに記憶されているノートナンバをノート状態管理テーブルの各レコードの「ノート」のフィールドに夫々記憶させ、デフォルトとなるエクスプレッション値「100」をそれら両レコードの「エクスプレッション」のフィールドに記憶させる。
【0024】
「状態」のフィールドには、各ノートナンバの楽音が音源2を介して発音されている状態であることを示す「ノートオン」、又は発音されていない状態であることを示す「ノートオフ」のいずれか一方のデータが記憶される。
【0025】
続いて、図5に示す一連の処理について説明する。以降の処理の説明は、ノート状態管理テーブルの第1の共振モードのレコードの「ノート」のフィールドにノートナンバ「60」が記憶され、第2の共振モードのレコードの同フィールドにノートナンバ「72」が記憶されているとの想定の下に行う。
図5のステップSa1において、CPU16は、ノート状態管理テーブルの両レコードの「エクスプレッション」のフィールドの記憶内容を呼気圧データから得た新たなエクスプレッション値に書き換えた後、書き換え後のエクスプレッション値が0よりも大きいか否か判断する。マウスピース11の呼気吹入口から呼気が吹き入れられてきていればこのステップの判断結果は「Yes」となってステップSa2へ進み、呼気が吹き入れられてきていなければこのステップの判断結果は「No」となってステップSa17へ進む。
【0026】
ステップSa2に進むと、CPU16は、ノート状態管理テーブルの両レコードの「エクスプレッション」のフィールドに記憶されている各エクスプレッション値に比率テーブル18bから読み出した係数を個別に積算し、係数を積算した後のエクスプレッション値をコントロールチェンジメッセージとして音源2へ供給する。
このステップSa2にて音源2へ供給されるコントロールチェンジメッセージの指示内容は、距離データが示す距離が、第1共振モード安定領域、第2共振モード安定領域、及びモード遷移領域の何れに該当するかによって異なる。
【0027】
これを詳述すると、まず、距離データが示す距離が第1共振モード安定領域にある場合、第1の共振モードのエクスプレッション値には係数「1.0」が、第2の共振モードのエクスプレッション値には係数「0.0」が夫々積算される。この結果、ノートナンバ「60」の楽音の音量レベルは変えずにノートナンバ「72」の楽音を消音状態まで引き下げることを指示するコントロールチェンジメッセージが音源2へ供給されることになる。
【0028】
距離データが示す距離が第2共振モード安定領域にある場合、第1の共振のモードのエクスプレッション値には係数「0.0」が、第2の共振モードのエクスプレッション値には係数「1.0」が夫々積算される。この結果、ノートナンバ「72」の楽音の音量レベルは変えずにノートナンバ「60」の楽音レベルを消音状態まで引き下げることを指示するコントロールチェンジメッセージが音源2へ供給されることになる。
【0029】
距離データが示す距離がモード遷移領域にある場合、両共振モードのエクスプレッション値に「1.0」と「0.0」の間の係数が夫々積算されることになるが、積算する両係数の関係は、吹奏者の口と呼気吹入口の間の距離が第1共振モード安定領域と第2共振モード安定領域のどちらに近いかによって異なる。つまり、距離が第1共振モード安定領域に近くなるほどノートナンバ「60」の楽音のエクスプレッション値に積算する係数がノートナンバ「72」の楽音のエクスプレッション値に積算する係数よりも大きくなり、第1共振モード安定領域から遠ざかって第2共振モード安定領域に近くなるとその関係は逆転する。この結果、ノートナンバ「60」及び「72」の楽音の音量レベルを距離に依存した比率で個別に切り替えることを指示するコントロールチェンジメッセージが音源2へ供給されることになる。
【0030】
図5のステップSa3において、CPU16は、供給された距離データが示す距離が第1共振モード安定領域に該当しているか否かを判断し、該当していればステップSa4に進む一方で、該当していなければステップSa8へ進む。
ステップSa4において、CPU16は、ノートナンバ「60」の楽音が発音されているか否かを判断する。このステップSa4における判断は、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「60」と対応するレコードの「状態」のフィールドを参照することによって行われる。そして、ノートナンバ「60」の楽音が発音されていないときは、そのノートナンバの楽音のノートオンメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「60」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオン」へと変更する(Sa5)。ノートナンバ「60」の楽音が発音されているときは、ステップSa5を実行することなくステップSa6へ進む。
【0031】
ステップSa6において、CPU16は、ノートナンバ「72」の楽音が発音されているか否かを判断する。このステップSa6における判断は、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「72」と対応するレコードの「状態」のフィールドを参照することによって行われる。そして、ノートナンバ「72」の楽音が発音されているときは、そのノートナンバの楽音のノートオフメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「72」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオフ」へと変更する(Sa7)。ノートナンバ「72」の楽音が発音されていないときは、ステップSa7を実行することなく、ステップSa1へ戻って以降の処理を繰返す。
【0032】
ステップSa3からステップSa8に進むと、CPU16は、供給された距離データが示す距離がモード遷移領域に該当しているか否か判断し、該当していればステップSa9に進む一方で、該当していなければステップSa13へ進む。
ステップSa9において、CPU16は、ノートナンバ「60」の楽音が発音されているか否かを判断する。そして、ノートナンバ「60」の楽音が発音されていないときは、そのノートナンバの楽音のノートオンメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「60」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオン」へと変更する(Sa10)。ノートナンバ「60」の楽音が発音されているときは、ステップSa10を実行することなくステップSa11へ進む。
ステップSa11において、CPU16は、ノートナンバ「72」の楽音が発音されているか否かを判断する。そして、ノートナンバ「72」の楽音が発音されていないときは、そのノートナンバの楽音のノートオンメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「72」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオン」へと変更する(Sa12)。ノートナンバ「72」の楽音が発音されているときは、ステップSa12を実行することなく、ステップSa1へ戻って以降の処理を繰返す。
【0033】
ステップSa8からステップSa13に進むと、CPU16は、ノートナンバ「60」の楽音が発音されているか否かを判断する。そして、ノートナンバ「60」の楽音が発音されているときは、そのノートナンバの楽音のノートオフメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「60」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオフ」へと変更する(Sa14)。ノートナンバ「60」の楽音が発音されていないときは、ステップSa14を実行することなくステップSa15へ進む。
ステップSa15において、CPU16は、ノートナンバ「72」の楽音が発音されているか否かを判断する。そして、ノートナンバ「72」の楽音が発音されていないときは、そのノートナンバの楽音のノートオンメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「72」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオン」へと変更する(Sa16)。ノートナンバ「72」の楽音が発音されているときは、ステップSa16を実行することなく、ステップSa1へ戻って以降の処理を繰返す。
【0034】
ステップSa1において、書き換え後のエクスプレッション値が0よりも大きくないと判断され、ステップSa17に進むと、CPU16は、ノートナンバ「60」の楽音が発音されているか否かを判断する。そして、ノートナンバ「60」の楽音が発音されているときは、そのノートナンバの楽音のノートオフメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「60」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオフ」へと変更する(Sa18)。ノートナンバ「60」の楽音が発音されていないときは、ステップSa18を実行することなくステップSa19へ進む。
ステップSa19において、CPU16は、ノートナンバ「72」の楽音が発音されているか否かを判断する。そして、ノートナンバ「72」の楽音が発音されているときは、そのノートナンバの楽音のノートオフメッセージを音源2へ供給した後、ノート状態管理テーブルのノートナンバ「72」と対応するレコードの「状態」のフィールドの記憶内容を「ノートオフ」へと変更する(Sa20)。ノートナンバ「72」の楽音が発音されていないときは、ステップSa20を実行することなく、ステップSa1へ戻って以降の処理を繰返す。
【0035】
以上説明した処理が電子管楽器1のCPU16によって繰り返される結果、音源2は、ステップSa5、Sa10、Sa12、及びSa16で電子管楽器1から自身に供給されてくるノートオンメッセージに従って第1及び第2の共振モードの楽音の楽音信号を出力させ、その後のループのステップSa2で供給されてくるコントロールチェンジメッセージに従って各楽音信号の音量レベルを個別に切り替える。
そして、音源2が、電子管楽器1から順次供給されてくるコントロールメッセージに従って第1及び第2の共振モードの楽音信号の音量レベルを連続的に切り替えて行くことにより、遷移前の共振モードの楽音と遷移後の共振モードの楽音の音量比率が緩やかに逆転し、自然管楽器の共振モード遷移時に極めて近い吹奏音が再現される。
【0036】
(他の実施形態)
本実施形態は、種々の変形実施が可能である。
上記実施形態にかかる電子管楽器1は、MIDIインターフェース19を備え、外部の音源2を制御するためのメッセージをそのインターフェース19を介して供給するようになっていた。これに対し、電子管楽器1が音源2を内蔵し、その内蔵の音源2から外部のスピーカ3へ楽音信号を出力させるようにしてもよい。
【0037】
上記実施形態は、第1及び第2の2つの共振モードの遷移に対応するものであったが、比率テーブル18bの記憶内容の如何によっては3つ共振モードの遷移に対応させることも可能である。例えば、比率テーブル18bのデータ構造を図6のようにすることにより、3つの共振モードの遷移に対応できる。図に示す実線Aは、第1共振モード楽音のエクスプレッション係数の遷移であり、一点鎖線Bは、第2共振モード楽音のエクスプレッション係数の遷移であり、二点鎖線Cは、第3共振モード楽音のエクスプレッション係数の遷移である。この例においては、距離がd1よりも小さい領域が第1共振モード安定領域となり、d2からd3にかけての領域が第2共振モード安定領域となり、更に、d4よりも大きい領域が第3共振モード安定領域となる。そして、d1からd2にかけてのモード遷移領域においては、第1共振モード楽音のエクスプレッション係数が「1.0」から「0.0」へと緩やかに小さくなる一方で第2共振モードのエクスプレッション係数が「0.0」から「1.0」へと緩やかに大きくなり、また、d3からd4にかけてのモード遷移領域においては、第2共振モード楽音のエクスプレッション係数が「1.0」から「0.0」へと緩やかに小さくなる一方で第3共振モードのエクスプレッション係数が「0.0」から「1.0」へと緩やかに大きくなっている。
【0038】
また、比率テーブル18bにおいて各共振モードの安定領域を設ける必要はない。例えば、図7に示すような比率テーブル18bを構築すると、特定の共振モードの安定領域を経ることなく3つの共振モードの楽音が音量比率を変えつつ同時に出力されることになる。更に、図8に示すように、4つ以上の共振モードの楽音のエクスプレッション係数を多段に組み合わせて比率テーブル18bを構築してもよい。
【0039】
上記実施形態において、電子管楽器1は、エクスプレッションのコントロールチェンジメッセージを音源2に供給することによって楽音信号の音量レベルを制御していたが、「ボリューム」や「ボイスコントローラ」などといった他のパラメータを含むコントロールチェンジメッセージによって音量レベルを制御してもよい。
また、第1及び第2共振モードの楽音の音量レベルの比率に加えて、ピッチベンドやフィルタの周波数パラメータといったような他の属性を吹奏者の口と呼気吹入口の間の距離に応じて切り替えるようにしてもよい。
【0040】
上記実施形態においては、吹奏者の口と呼気吹入口の間の距離を示す距離データと比率テーブル18bを照らし合わせることによって第1及び第2の各共振モードの楽音信号の音量比率を決定していたが、共振モードの特定に好適な他の物理データに基づいて音量比率を決定してもよい。要するに、各共振モード間における遷移状態を連続的に示し得る特性を持つデータであれば、どのようなデータに依存して音量比率を決定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】電子管楽器の構成を示すブロック図である。
【図2】運指テーブルのデータ構造図である。
【図3】比率テーブルのデータ構造を概念的に示すグラフである。
【図4】ノート状態管理テーブルである。
【図5】実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図6】比率テーブルのデータ構造を概念的に示すグラフである(変形例)。
【図7】比率テーブルのデータ構造を概念的に示すグラフである(変形例)。
【図8】比率テーブルのデータ構造を概念的に示すグラフである(変形例)。
【符号の説明】
【0042】
1…電子管楽器、2…音源、3…スピーカ、10…演奏用キー、11…マウスピース、12…距離センサ、13…ブレスセンサ、14…キーセンサ、15…A/D変換器、16…CPU、17…RAM、18…ROM、19…MIDIインターフェース




 

 


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