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発明の名称 電力変換装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−124732(P2007−124732A)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
出願番号 特願2005−309513(P2005−309513)
出願日 平成17年10月25日(2005.10.25)
代理人 【識別番号】100113077
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 省吾
発明者 菅 郁朗 / 民田 太一郎 / 川上 知之
要約 課題
交流出力電圧の全高調波歪率を最小にすると共に、基本波成分を最大にし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得る。

解決手段
異なる電圧が入力される2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,10と、2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,10の出力端子を直列接続して出力される交流出力電圧の1周期を14以上の偶数である分割数で均等分割した時間毎に、2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,10の出力電圧のレベルを切換える制御回路23と、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,1の各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって電圧を供給するトランス3を有する直流電源装置2とを備え、トランス3の巻数比によって振幅比を設定する。
特許請求の範囲
【請求項1】
異なる電圧が入力される2個の3レベル単相出力インバータブリッジと、
前記2個の3レベル単相出力インバータブリッジの出力端子を直列接続して出力される交流出力電圧の1周期を14以上の偶数である分割数2nで均等分割した時間毎に前記2個の3レベル単相出力インバータブリッジの出力電圧のレベルを切換えるインバータ制御手段と、
前記分割数に応じて前記交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した前記2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、前記2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、前記トランスの巻数比によって前記振幅比を設定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
2個の3レベル単相出力インバータブリッジのうち、入力電圧が高い3レベル単相出力インバータブリッジの入力電圧を検出する電圧検出手段を備え、前記電圧検出手段の検出値を直流電源装置の電源制御手段に入力し、前記電源制御手段によって前記直流電源装置の出力電圧を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の+、−および0の3レベルの組合せを、交流出力電圧の1周期の間に(+V1、0)、(―V1、+V2)、(0、+V2)、(+V1、+V2)、(0、+V2)、(―V1、+V2)、(+V1、0)、(―V1、0)、(+V1、―V2)、(0、―V2)、(―V1、―V2)、(0、―V2)、(+V1、―V2)、(―V1、0)の順序で、かつ、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間のm回分(m=n−6)となるように前記均等分割した時間毎にインバータ制御手段によって切換えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項4】
所望の交流出力電圧の実効値Vrmsに対して式(1)を満たすように振幅V1と振幅比K(=V2/V1)とを設定することを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【数1】


【請求項5】
分割数2nが14の場合には、振幅比Kは2.94以上、6.52以下の範囲にあることを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
分割数2nが16の場合には、振幅比Kは2.79以上、5.91以下の範囲にあることを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
【請求項7】
分割数2nが18の場合には、振幅比Kは2.57以上、5.29以下の範囲にあることを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
【請求項8】
分割数2nが20の場合には、振幅比Kは2.33以上、4.86以下の範囲にあることを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
【請求項9】
振幅比Kは、式(2)から導出された値の近傍の値であることを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
【数2】


発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置においては、それぞれ絶縁された直流電源を持つ3レベルの出力が可能な3レベル単相出力インバータブリッジをn個備え、3レベル単相出力インバータブリッジの出力端子を直列接続した直列n段の単相出力が得られ、n個の3レベル単相出力インバータブリッジの各出力電圧の振幅V1、V2、V3およびVnの振幅比を、V1:V2:V3:・・・:Vn=1:2:4:・・・:2(n−1)とする電圧振幅比配分手段と、直列n段の電力変換装置に与える出力電圧指令に最も近い電圧をV2乃至Vnの出力電圧振幅を持つ3レベル単相出力インバータブリッジの出力電圧の組合せによって発生する指令電圧発生手段とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−89242号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電力変換装置では、それぞれ絶縁された直流電源を持つ3レベル出力が可能な3レベル単相出力インバータブリッジをn個備え、3レベル単相出力インバータブリッジの出力端子をn段直列接続していた。出力する電力が小さい場合などには、2個の3レベル単相出力インバータブリッジを直列接続する構成が用いられていた。しかしながら、V1:V2=1:2なる電圧比を持つ直流電源を備え、2個の3レベル単相出力インバータブリッジを直列接続した場合には、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各出力電圧の振幅はV1:V2=1:2とする電圧振幅比配分となるので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすることができず、交流出力電圧の高調波成分を十分低減できない問題があった。また、交流出力電圧の高調波成分を減衰させるために大きな出力フィルタを備える必要があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすると共に、基本波成分を大きくし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得るものである。また、3レベル単相出力インバータブリッジのスイッチングの制御が簡易である電力変換装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換装置は、異なる電圧が入力される2個の3レベル単相出力インバータブリッジと、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの出力端子を直列接続して出力される交流出力電圧の1周期を14以上の偶数である分割数2nで均等分割した時間毎に2個の3レベル単相出力インバータブリッジの出力電圧のレベルを切換えるインバータ制御手段と、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、トランスの巻数比によって振幅比を設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る電力変換装置は、異なる電圧が入力される2個の3レベル単相出力インバータブリッジと、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの出力端子を直列接続して出力される交流出力電圧の1周期を14以上の偶数である分割数2nで均等分割した時間毎に2個の3レベル単相出力インバータブリッジの出力電圧のレベルを切換えるインバータ制御手段と、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、トランスの巻数比によって振幅比を設定したので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすると共に、基本波成分を大きくし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得ることができる。また、制御が簡易である電力変換装置を得るものである。さらに、交流出力電圧の零クロス点が明確である電力変換装置を得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における電力変換装置の構成図を示すものである。図1において、バッテリ等の入力電源1が、絶縁された2つの異なった出力電圧V1およびV2を供給する直流電源装置2に接続されている。直流電源装置2の2つの出力端子にはそれぞれ、+V1、0、−V1の3レベル出力が可能な第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および+V2、0、−V2の3レベル出力が可能な第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10が接続されている。
【0009】
実施の形態1において、直流電源装置2はフライバックコンバータであり、トランス3、スイッチング素子4、ダイオード5,6、電圧検出手段13および電源制御手段である制御駆動回路14を備えている。トランス3には1次巻線3a、第1の出力用巻線3b、第2の出力用巻線3cが巻かれている。第1の出力用巻線3bの巻線数はN1、第2の出力用巻線3cの巻線数はN2であり、N1とN2との関係はN1<N2である。制御駆動回路14によって、MOSFET(電界効果型トランジスタ)などで構成されるスイッチング素子4のオン・オフの制御をすることで、入力電源1から絶縁された2つの異なった出力電圧V1およびV2を、それぞれ第1の直流出力7および第2の直流出力8として出力する。直流出力7,8は、例えば電解コンデンサで構成される。出力電圧V1と出力電圧V2とは、V1<V2の関係にある。スイッチング素子4がオン状態の時には、エネルギーがトランス3に蓄積される。スイッチング素子4がオフ状態の時には、ダイオード5,6は導通し、第1の直流出力7と第2の直流出力8とに、トランス3に蓄積されたエネルギーがそれぞれ伝達される。
【0010】
直流電源装置2の出力電圧のフィードバックは、第1の直流出力7の電圧V1より高い出力電圧を出力する第2の直流出力8の電圧V2を、抵抗分圧法などを利用した電圧検出手段13によって検出し、検出した出力電圧信号を制御駆動回路14に送ることで行う。つまり、2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,10のうち、入力電圧が高い3レベル単相出力インバータブリッジの入力電圧を検出する電圧検出手段13を備え、電圧検出手段13の検出値を直流電源装置の電源制御手段である制御駆動回路14に入力し、制御駆動回路14によって直流電源装置の出力電圧を制御することで、出力電圧のフィードバックを行う。
【0011】
低い出力電圧を出力する第1の直流出力7の電圧V1は、トランス3の第1の出力用巻線3bと第2の出力用巻線3cとの巻数比で決まる。ここで、高い出力電圧である第2の直流出力8の電圧V2でフィードバックすれば、出力電圧の制御誤差はトランスの巻数比N1/N2の比率で縮小された誤差電圧として、低い出力電圧を出力する第1の直流出力7の電圧V1に影響が出るにすぎない。逆に、低い出力電圧を出力する第1の直流出力7の電圧V1をフィードバックに使用すると、出力電圧の制御誤差はトランスの巻数比N2/N1の比率で拡大され、高い出力電圧である第2の直流出力8の電圧V2に大きな電圧誤差が発生してしまうことがある。このため、高い出力電圧である第2の直流出力8の電圧V2でフィードバックする方が出力電圧精度を高くすることができる。
【0012】
第1の直流出力7に、+V1、0、−V1の3レベル出力が可能な第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9が接続され、第2の直流出力8に、+V2、0、−V2の3レベル出力が可能な第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10が接続されている。2個の3レベル単相出力インバータブリッジである第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力端子と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力端子とは、直列に接続されて直列2段の単相交流出力の電力変換器を構成している。
【0013】
図2は、この発明を実施するための実施の形態1における電力変換装置を構成する2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,10の制御装置の回路図を示すものである。図2において、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9はMOSFET(電界効果型トランジスタ)などのスイッチング素子9a,9b,9c,9dによって構成されており、第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10はMOSFETなどのスイッチング素子10a,10b,10c,10dによって構成されている。第1の駆動回路21はスイッチング素子9a〜9dのオン、オフの制御を行い、第2の駆動回路22はスイッチング素子10a〜10dのオン、オフの制御を行う。第1の駆動回路および第2の駆動回路は、マイクロコンピュータ、デジタルシグナルプロセッサなどで構成される制御回路23から駆動信号を受けてオン、オフの制御を行う。
【0014】
第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力端子と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力端子とを直列2段に接続した電力変換装置の出力端子11、12間に、所望の電圧実効値および所望の出力周波数を有する交流出力電圧を出力する。制御回路23は、交流出力電圧の1周期を14以上の偶数である分割数2nで均等分割した時間毎に、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10のそれぞれの出力電圧のレベルを切換えるインバータ制御手段である。
【0015】
分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧の振幅V1と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力電圧の振幅V2との振幅比を設定し、制御回路23から駆動信号を受けてスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのオン、オフの制御を行うことで、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力電圧とが重畳された交流出力電圧を得ることができる。直流電源装置2のトランス3は、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,10の各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジ9,10の各々に電圧を供給する。つまり、トランス3の巻数比によって出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比が設定される。
【0016】
均等分割した時間毎にスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dを制御することによって、制御回路23での制御が非常に容易になり、マイクロコンピュータやデジタルシグナルプロセッサなどの処理負荷を軽減でき、制御回路23の簡略化が可能となる。
【0017】
図3は実施の形態1における交流出力電圧とスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えシーケンスとの関係を示す波形図である。図3(a)は出力端子11、12間に出力される所望の電圧実効値および所望の出力周波数を有する擬似正弦波出力の交流出力電圧の波形図である。所望の交流出力電圧の1周期を均等に14分割しており、例えば出力周波数50Hzの場合には1.4286ms毎に均等分割し、出力周波数60Hzの場合には1.1905ms毎に均等分割する。図3(b)は交流出力電圧を得るためのスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えのためのオン、オフ信号の一例であり、Highはオン信号、Lowはオフ信号である。
【0018】
図3(b)のスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えによって、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10との各々の出力電圧の+、−および0の3レベルの組合せを、交流出力電圧の1周期の間に(+V1、0)、(―V1、+V2)、(0、+V2)、(+V1、+V2)、(0、+V2)、(―V1、+V2)、(+V1、0)、(―V1、0)、(+V1、―V2)、(0、―V2)、(―V1、―V2)、(0、―V2)、(+V1、―V2)、(―V1、0)の順序で、かつ、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間のm回分(m=n−6)となるように均等分割した時間毎にインバータ制御手段である制御回路23からの駆動信号によって切換える。
【0019】
本実施の形態1では、分割数2nは14であり、n=7となるので、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間の1回分となるように均等分割した時間毎にインバータ制御手段である制御回路23からの駆動信号によって切換えることになる。これによって、出力電圧は図3(a)に示すように、1周期の間に+V1、+V2−V1、+V2、+V1+V2、+V2、+V2−V1、+V1、−V1、−V2+V1、−V2、−V1−V2、−V2、−V2+V1、−V1と変化する。+V1から−V1までと−V1から+V1までとの変化時に電圧の零クロス点を通過し、零クロス点が一意に決まり、明確に定まる。零クロス点を信号に用いた負荷装置や位相制御を用いた負荷装置にも適応が可能である。
【0020】
図4は実施の形態1における振幅比(巻数比K)と交流出力電圧の全高調波歪率との関係図である。第1の入力電源1の電圧V1と第2の入力電源2の電圧V2との電圧比V2/V1、すなわち、トランス3の第1の出力用巻線N1と第2の出力用巻線N2との巻数比K(=N2/N1=V2/V1)は、図4に示すように交流出力電圧の全高調波歪率THDと関係があり、点AのようにTHDを最小にできる振幅比(巻数比K)が存在する。均等した分割数に応じて振幅比(巻数比K)を決定することによってTHDを最小化することができる。なお、従来の技術ではV2/V1=2であった。しかしながら、本実施の形態のように、交流出力電圧を均等に14分割する場合には、V2/V1=2でTHDが最小とならず、V2/V1≠2とする必要がある。
【0021】
図5は実施の形態1における振幅比(巻数比K)と交流出力電圧の基本波成分の大きさとの関係図である。出力周波数が50Hzの場合には、基本波成分は50Hz成分である。B点の振幅比(巻数比K)において基本波成分が最大となる。このB点と図4に示したA点とは同一となり、均等した分割数に対して一意的に決定できる。
【0022】
図6は実施の形態1における振幅比(巻数比K)と標準偏差との関係図である。標準偏差は、所望の理想正弦波出力電圧と本実施の形態によって得られる出力電圧とから求められる。C点の振幅比(巻数比K)において標準偏差が最小となり、最も理想的な正弦波に近づけることができる。C点の振幅比(巻数比K)は、図4のA点および図5のB点と同じ値である。
【0023】
分割数2nとして、所望の交流出力電圧の実効値Vrmsに対して、擬似正弦波出力電圧の実効値と交流出力電圧の実効値Vrmsとを一致させる条件式である式(1)を満たすように振幅V1と巻数比K(=N2/N1=V2/V1)とを設定することによって、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。
【0024】
【数1】


【0025】
本実施の形態1では、分割数2nは14であり、n=7となるので、式(1)のnに7を代入した式(2)を満たすように振幅V1と、振幅V2または巻数比K(=N2/N1=V2/V1)とを設定することによって、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。
【0026】
【数2】


【0027】
図3(a)に示したような分割数14で均等に分割の場合には、図4〜図6に示したA〜C点での振幅比(巻数比K)は、K=4.0567、すなわちV1:V2=1:4.0567であり、振幅比(巻数比K)を4.1程度の値に設定することによって、交流出力電圧の全高調波歪率を最小にすると共に、基本波成分を最大にすることができる。実用的には、K=4.0567の近傍に設定することになる。出力にLCフィルタを設けて理想正弦波出力に近づける場合には、最も波形歪が小さいので、最もLCフィルタの小型軽量化を図ることができる。
【0028】
また、交流出力電圧の全高調波歪率を最小にしなくても、交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下であれば、波形歪を小さくすることができる。これによって、LCフィルタの小型軽量化を図ることができる。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+1%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+1%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を3.35≦K≦5.14の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+2%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+2%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を3.11≦K≦5.83の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+3%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+3%まで許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.94≦K≦6.52の範囲に設定すれば良い。なお、従来の技術ではK=2であり、全く異なる振幅比(巻数比K)が最適値であることがわかる。
【0029】
交流出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=4.0567の場合には、式(2)より交流出力電圧の所望の実効値Vrmsと、2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける低電圧側、ここでは第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧の振幅V1との振幅比をVrms:V1=1:0.2973とすると、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。例えば、実効値100V出力では、V1=29.73V、実効値200V出力では、V1=59.47V、実効値220V出力では、V1=65.42V、実効値240V出力では、V1=71.36Vに設定したほうが良い。
【0030】
また、出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=4.0567の場合には、交流出力電圧の所望の実効値Vrmsと、2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける高電圧側の出力電圧の振幅V2との振幅比をVrms:V2=1:1.2063にすると、所望の実効値の出力電圧が容易に得られる。例えば、実効値100V出力では、V2=120.63V、実効値200V出力では、V2=241.25V、実効値220V出力では、V2=265.38V、実効値240V出力では、V2=289.50Vに設定したほうが良い。
【0031】
さらに、交流出力電圧の波高率((V1+V2)/Vrms)は、式(3)のようになるので、波高率が1.5036となるようにすれば、出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=4.0567とすることができる。
【0032】
【数3】


【0033】
以上のように、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、トランスの巻数比によって振幅比を設定したので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすると共に、基本波成分を大きくし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得ることができる。また、交流出力電圧の所望の実効値を容易に出力することができ、電力変換装置の制御を簡易にすることができる。さらに、交流出力電圧の零クロス点が明確に定まる効果がある。
【0034】
なお、実施の形態1では、2段の3レベル単相出力インバータブリッジ9、10の各出力電圧の振幅が、上段である第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力電圧の振幅が大きい場合について説明した。しかしながら、下段である第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧の振幅が大きくても良く、上段の3レベル単相出力インバータブリッジと下段の3レベル単相出力インバータブリッジとを入れ換えても同様の効果を得ることができる。
【0035】
実施の形態2.
図7は、この発明を実施するための実施の形態2における出力電圧とスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えシーケンスとの関係を示す波形図である。本実施の形態における電力変換装置は、交流出力電圧の1周期の分割数および2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の+、−および0の3レベルの組合せ以外の構成は実施の形態1と同じである。
【0036】
本実施の形態2では、異なる電圧が入力される2個の3レベル単相出力インバータブリッジである第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10と、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力端子を直列接続して出力される交流出力電圧の1周期を分割数16で均等分割した時間毎に、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力電圧のレベルを切換えるインバータ制御手段である制御回路23とを備えている。
【0037】
図7(a)は出力端子11、12間に出力される所望の電圧実効値および所望の出力周波数を有する擬似正弦波出力の交流出力電圧の波形図である。所望の交流出力電圧の1周期を均等に16分割しており、例えば出力周波数50Hzの場合には1.25ms毎に均等分割し、出力周波数60Hzの場合には1.0417ms毎に均等分割する。図7(b)は交流出力電圧を得るためのスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えのためのオン、オフ信号の一例であり、Highはオン信号、Lowはオフ信号である。
【0038】
図7(b)のスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えによって、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10との各々の出力電圧の+、−および0の3レベルの組合せを、交流出力電圧の1周期の間に(+V1、0)、(―V1、+V2)、(0、+V2)、(+V1、+V2)、(0、+V2)、(―V1、+V2)、(+V1、0)、(―V1、0)、(+V1、―V2)、(0、―V2)、(―V1、―V2)、(0、―V2)、(+V1、―V2)、(―V1、0)の順序で、かつ、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間のm回分(m=n−6)となるように均等分割した時間毎にインバータ制御手段である制御回路23からの駆動信号によって切換える。
【0039】
本実施の形態2では、分割数2nは16であり、n=8となるので、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間の2回分となるように均等分割した時間毎にインバータ制御手段である制御回路23からの駆動信号によって切換えることになる。
【0040】
これによって、出力電圧は図7(a)に示すように、1周期の間に+V1、+V2−V1、+V2、+V1+V2、+V1+V2、+V2、+V2−V1、+V1、−V1、−V2+V1、−V2、−V1−V2、−V1−V2、−V2、−V2+V1、−V1と変化する。+V1から−V1までと−V1から+V1までとの変化時に電圧の零クロス点を通過し、零クロス点が一意に決まり、明確に定まる。
【0041】
実施の形態1と同様に、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10とにおける各出力電圧の振幅V1、V2の振幅比、すなわち巻数比K(=N2/N1=V2/V1)は、交流出力電圧の全高調波歪率THDと関係があり、図4で示した点AのようにTHDを最小にできる振幅比(巻数比K)が存在する。均等した分割数に応じて2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける振幅比を決定する、すなわち、トランス3の巻数比Kを決定することによってTHDを最小化することになる。また、交流出力電圧の基本波成分と関係があり、図5で示した点Bのような基本波成分が最大となる振幅比(巻数比K)が存在する。さらに、所望の理想正弦波出力電圧と本実施の形態によって得られる出力電圧とから求められる標準偏差とも関係があり、図6で示した点Cのような標準偏差が最小となる振幅比(巻数比K)が存在する。C点はA点およびB点と同じ値である。
【0042】
本実施の形態2では、分割数2nは16であり、n=8となるので、式(1)のnに8を代入した式(4)を満たすように振幅V1と、振幅V2または巻数比K(=N2/N1=V2/V1)とを設定することによって、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。
【0043】
【数4】


【0044】
図7(a)に示したような分割数16で均等に分割の場合には、図4〜図6に示したA〜C点での振幅比(巻数比K)は、K=3.8172、すなわちV1:V2=1:3.8172であり、振幅比(巻数比K)を3.8程度の値に設定することによって、出力電圧の全高調波歪率を最小にすると共に、基本波成分を最大にすることができる。実用的には、K=3.8172の近傍に設定することになる。出力にLCフィルタを設けて理想正弦波出力に近づける場合には、最も波形歪が小さいので、最もLCフィルタの小型軽量化を図ることができる。
【0045】
また、交流出力電圧の全高調波歪率を最小にしなくても、交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下であれば、波形歪を小さくすることができる。これによって、LCフィルタの小型軽量化を図ることができる。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+1%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+1%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を3.17≦K≦4.76の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+2%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+2%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.95≦K≦5.33の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+3%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+3%まで許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.79≦K≦5.91の範囲に設定すれば良い。なお、従来の技術ではK=2であり、全く異なる振幅比(巻数比K)が最適値であることがわかる。
【0046】
交流出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=3.8172の場合には、式(4)より交流出力電圧の所望の実効値Vrmsと、2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける低電圧側、ここでは第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧の振幅V1との振幅比をVrms:V1=1:0.2926とすると、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。例えば、実効値100V出力では、V1=29.26V、実効値200V出力では、V1=58.53V、実効値220V出力では、V1=64.38V、実効値240V出力では、V1=70.23Vに設定したほうが良い。
【0047】
また、出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=3.8172の場合には、交流出力電圧の所望の実効値Vrmsと、2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける高電圧側の出力電圧の振幅V2との振幅比をVrms:V2=1:1.1170にすると、所望の実効値の出力電圧が容易に得られる。例えば、実効値100V出力では、V2=111.70V、実効値200V出力では、V2=223.40V、実効値220V出力では、V2=245.74V、実効値240V出力では、V2=268.08Vに設定したほうが良い。従って、分割数を14とした場合に比べて、V2の電圧を低くすることができる。
【0048】
さらに、交流出力電圧の波高率は、式(5)のようになるので、波高率が1.4096となるようにすれば、出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=3.8172とすることができる。
【0049】
【数5】


【0050】
以上のように、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、トランスの巻数比によって振幅比を設定したので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすると共に、基本波成分を大きくし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得ることができる。また、交流出力電圧の所望の実効値を容易に出力することができ、電力変換装置の制御を簡易にすることができる。さらに、交流出力電圧の零クロス点が明確に定まる効果がある。
【0051】
なお、実施の形態2では、2段の3レベル単相出力インバータブリッジ9、10の各出力電圧の振幅が、上段である第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力電圧の振幅が大きい場合について説明した。しかしながら、下段である第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧の振幅が大きくても良く、上段の3レベル単相出力インバータブリッジと下段の3レベル単相出力インバータブリッジとを入れ換えても同様の効果を得ることができる。
【0052】
実施の形態3.
図8は、この発明を実施するための実施の形態3における出力電圧とスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えシーケンスとの関係を示す波形図である。本実施の形態における電力変換装置は、交流出力電圧の1周期の分割数および2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の+、−および0の3レベルの組合せ以外の構成は実施の形態1と同じである。
【0053】
本実施の形態3では、異なる電圧が入力される2個の3レベル単相出力インバータブリッジである第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10と、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力端子を直列接続して出力される交流出力電圧の1周期を分割数18で均等分割した時間毎に、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9および第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力電圧のレベルを切換えるインバータ制御手段である制御回路23とを備えている。
【0054】
図8(a)は出力端子11、12間に出力される所望の電圧実効値および所望の出力周波数を有する擬似正弦波出力の交流出力電圧の波形図である。所望の交流出力電圧の1周期を均等に18分割しており、例えば出力周波数50Hzの場合には1.1111ms毎に均等分割し、出力周波数60Hzの場合には0.9259ms毎に均等分割する。図8(b)は交流出力電圧を得るためのスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えのためのオン、オフ信号の一例であり、Highはオン信号、Lowはオフ信号である。
【0055】
図8(b)のスイッチング素子9a〜9d、10a〜10dのスイッチ切換えによって、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10との各々の出力電圧の+、−および0の3レベルの組合せを、交流出力電圧の1周期の間に(+V1、0)、(―V1、+V2)、(0、+V2)、(+V1、+V2)、(0、+V2)、(―V1、+V2)、(+V1、0)、(―V1、0)、(+V1、―V2)、(0、―V2)、(―V1、―V2)、(0、―V2)、(+V1、―V2)、(―V1、0)の順序で、かつ、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間のm回分(m=n−6)となるように均等分割した時間毎にインバータ制御手段である制御回路23からの駆動信号によって切換える。
【0056】
本実施の形態3では、分割数2nは18であり、n=9となるので、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間の3回分となるように均等分割した時間毎にインバータ制御手段である制御回路23からの駆動信号によって切換えることになる。
【0057】
これによって、出力電圧は図8(a)に示すように、1周期の間に+V1、+V2−V1、+V2、+V1+V2、+V1+V2、+V1+V2、+V2、+V2−V1、+V1、−V1、−V2+V1、−V2、−V1−V2、−V1−V2、−V1−V2、−V2、−V2+V1、−V1と変化する。+V1から−V1までと−V1から+V1までとの変化時に電圧の零クロス点を通過し、零クロス点が一意に決まり、明確に定まる。
【0058】
実施の形態1と同様に、第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9と第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10とにおける各出力電圧の振幅V1、V2の振幅比、すなわち巻数比K(=N2/N1=V2/V1)は、交流出力電圧の全高調波歪率THDと関係があり、図4で示した点AのようにTHDを最小にできる振幅比(巻数比K)が存在する。均等した分割数に応じて2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける振幅比を決定する、すなわち、トランス3の巻数比Kを決定することによってTHDを最小化することになる。また、交流出力電圧の基本波成分と関係があり、図5で示した点Bのような基本波成分が最大となる振幅比(巻数比K)が存在する。さらに、所望の理想正弦波出力電圧と本実施の形態によって得られる出力電圧とから求められる標準偏差とも関係があり、図6で示した点Cのような標準偏差が最小となる振幅比(巻数比K)が存在する。C点はA点およびB点と同じ値である。
【0059】
本実施の形態3では、分割数2nは18であり、n=9となるので、式(1)のnに9を代入した式(6)を満たすように振幅V1と、振幅V2または巻数比K(=N2/N1=V2/V1)とを設定することによって、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。
【0060】
【数6】


【0061】
図8(a)に示したような分割数18で均等に分割の場合には、図4〜図6に示したA〜C点での振幅比(巻数比K)は、K=3.5039、すなわちV1:V2=1:3.5039であり、振幅比(巻数比K)を3.5程度の値に設定することによって、出力電圧の全高調波歪率を最小にすると共に、基本波成分を最大にすることができる。実用的には、K=3.5039の近傍に設定することになる。出力にLCフィルタを設けて理想正弦波出力に近づける場合には、最も波形歪が小さいので、最もLCフィルタの小型軽量化を図ることができる。
【0062】
また、交流出力電圧の全高調波歪率を最小にしなくても、交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下であれば、波形歪を小さくすることができる。これによって、LCフィルタの小型軽量化を図ることができる。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+1%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+1%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.92≦K≦4.32の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+2%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+2%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.72≦K≦4.81の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+3%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+3%まで許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.57≦K≦5.29の範囲に設定すれば良い。なお、従来の技術ではK=2であり、全く異なる振幅比(巻数比K)が最適値であることがわかる。
【0063】
交流出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=3.5039の場合には、式(6)より交流出力電圧の所望の実効値Vrmsと、2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける低電圧側、ここでは第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧の振幅V1との振幅比をVrms:V1=1:0.3001とすると、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。例えば、実効値100V出力では、V1=30.01V、実効値200V出力では、V1=60.01V、実効値220V出力では、V1=66.02V、実効値240V出力では、V1=72.02Vに設定したほうが良い。
【0064】
また、出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=3.5039の場合には、交流出力電圧の所望の実効値Vrmsと、2段の3レベル単相出力インバータブリッジにおける高電圧側の出力電圧の振幅V2との振幅比をVrms:V2=1:1.0514にすると、所望の実効値の出力電圧が容易に得られる。例えば、実効値100V出力では、V2=105.14V、実効値200V出力では、V2=210.29V、実効値220V出力では、V2=231.32V、実効値240V出力では、V2=252.35Vに設定したほうが良い。従って、14分割、16分割よりもV2の電圧を低くすることができる。
【0065】
さらに、交流出力電圧の波高率は、式(7)のようになるので、波高率が1.3515となるようにすれば、出力電圧の全高調波歪率が最小で、基本波成分が最大となるK=3.5039とすることができる。
【0066】
【数7】


【0067】
以上のように、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、トランスの巻数比によって振幅比を設定したので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすると共に、基本波成分を大きくし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得ることができる。また、交流出力電圧の所望の実効値を容易に出力することができ、電力変換装置の制御を簡易にすることができる。さらに、交流出力電圧の零クロス点が明確に定まる効果がある。
【0068】
なお、実施の形態3では、2段の3レベル単相出力インバータブリッジ9、10の各出力電圧の振幅が、上段である第2の3レベル単相出力インバータブリッジ10の出力電圧の振幅が大きい場合について説明した。しかしながら、下段である第1の3レベル単相出力インバータブリッジ9の出力電圧の振幅が大きくても良く、上段の3レベル単相出力インバータブリッジと下段の3レベル単相出力インバータブリッジとを入れ換えても同様の効果を得ることができる。
【0069】
実施の形態4.
実施の形態3では分割数が18の場合について示したが、分割数が20で(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間の4回分となるようにしても同様の効果を得ることができる。
【0070】
本実施の形態4では、分割数2nは20であり、n=10となるので、式(1)のnに10を代入した式(8)を満たすように振幅V1と、振幅V2またはトランス3の巻数比K(=N2/N1=V2/V1)とを設定することによって、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。
【0071】
【数8】


【0072】
分割数20で均等に分割の場合には、振幅比(巻数比K)は、K=3.2203、すなわちV1:V2=1:3.2203であり、振幅比(巻数比K)を3.2程度の値に設定することによって、出力電圧の全高調波歪率を最小にすると共に、基本波成分を最大にすることができる。実用的には、K=3.2203の近傍に設定することになる。出力にLCフィルタを設けて理想正弦波出力に近づける場合には、最も波形歪が小さいので、最もLCフィルタの小型軽量化を図ることができる。
【0073】
また、交流出力電圧の全高調波歪率を最小にしなくても、交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下であれば、波形歪を小さくすることができる。これによって、LCフィルタの小型軽量化を図ることができる。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+1%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+1%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.67≦K≦3.97の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+2%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+2%まで歪率を許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.48≦K≦4.43の範囲に設定すれば良い。全高調波歪率の所定値を全高調波歪率の最小値に+3%加えた値とする場合、つまり、全高調波歪率の最小値に対して+3%まで許容する場合には、振幅比(巻数比K)を2.33≦K≦4.86の範囲に設定すれば良い。なお、従来の技術ではK=2であり、全く異なる振幅比(巻数比K)が最適値であることがわかる。
【0074】
以上のように、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、トランスの巻数比によって振幅比を設定したので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすると共に、基本波成分を大きくし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得ることができる。また、交流出力電圧の所望の実効値を容易に出力することができ、電力変換装置の制御を簡易にすることができる。さらに、交流出力電圧の零クロス点が明確に定まる効果がある。
【0075】
実施の形態5.
分割数が2nで、(+V1、+V2)および(―V1、―V2)の組合せとなる時間をそれぞれ均等分割した時間のm回分(m=n−6)となるようにしても、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
【0076】
分割数を2nとして、所望の交流出力電圧の実効値Vrmsに対して、式(1)を満たすように振幅V1と、振幅V2またはトランス3の巻数比K(=N2/N1=V2/V1)とを設定することによって、所望の実効値Vrmsを有する交流出力電圧が容易に得られる。分割数2nで均等に分割した場合には、出力電圧の全高調波歪率を最小にすると共に、基本波成分を最大にするためには、振幅比Kが式(9)を満たす値の近傍にあれば良い。
【0077】
【数9】


【0078】
式(9)を満たすように巻数比Kを設定することによって、交流出力電圧の全高調波歪率を最小にすると共に、基本波成分を最大にすることができるので、出力にLCフィルタを設けて理想正弦波出力に近づける場合には、最もLCフィルタの小型軽量化を図ることができる。また、交流出力電圧の全高調波歪率を最小にしなくても、交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下であれば、波形歪を小さくすることができる。実施の形態1〜4と同様に、全高調波歪率の最小値に対して+1%、+2%、または+3%の値を加えて全高調波歪率の所定値を設定し、それに応じた巻数比Kを設定すれば良い。
【0079】
以上のように、分割数に応じて交流出力電圧の全高調波歪率が所定値以下となるように設定した2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々の出力電圧の振幅V1と振幅V2との振幅比にしたがって、2個の3レベル単相出力インバータブリッジの各々に電圧を供給するトランスを有する直流電源装置とを備え、トランスの巻数比によって振幅比を設定したので、交流出力電圧の全高調波歪率を小さくすると共に、基本波成分を大きくし、出力フィルタの小型軽量化が可能な電力変換装置を得ることができる。また、交流出力電圧の所望の実効値を容易に出力することができ、電力変換装置の制御を簡易にすることができる。さらに、交流出力電圧の零クロス点が明確に定まる効果がある。
【0080】
実施の形態6.
図9は、この発明を実施するための実施の形態6における電力変換装置の構成図を示すものである。図9において、太陽電池(PV)15が充電回路16を介して入力電源1に接続されている。充電回路16は、ダイオード17およびスイッチング素子18によって構成されている。太陽電池15からの発電電力はダイオード17を介してバッテリ、電気二重層コンデンサなどから構成される入力電源1に充電される。入力電源1が満充電状態になると、過充電を防止するためにスイッチング素子18をオン状態にして、太陽電池15からの発電電力を還流させる。
【0081】
実施の形態1〜5では、自動車搭載用インバータやアウトドア用インバータなどに適用できるバッテリなどの入力電源1から、絶縁された2つの異なった出力電圧V1およびV2を供給する直流電源装置を備えたものについて示した。本実施の形態6では、太陽電池(PV)15がエネルギー供給源となる無電化向け太陽光発電システムまたは独立型太陽光発電システムであっても良く、実施の形態1〜5と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明の実施の形態1を示す電力変換装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における2個の3レベル単相出力インバータブリッジの制御装置の回路図である。
【図3】この発明の実施の形態1における交流出力電圧とスイッチング素子のスイッチ切換えシーケンスとの関係を示す波形図である。
【図4】この発明の実施の形態1における振幅比と交流出力電圧の全高調波歪率との関係図である。
【図5】この発明の実施の形態1における振幅比と交流出力電圧の基本波成分の大きさとの関係図である。
【図6】この発明の実施の形態1における振幅比と標準偏差との関係図である。
【図7】この発明の実施の形態2における交流出力電圧とスイッチング素子のスイッチ切換えシーケンスとの関係を示す波形図である。
【図8】この発明の実施の形態3における交流出力電圧とスイッチング素子のスイッチ切換えシーケンスとの関係を示す波形図である。
【図9】この発明の実施の形態6を示す電力変換装置の構成図である。
【符号の説明】
【0083】
1 入力電源、2 直流電源装置、3 トランス、4,9a〜9d,10a〜10d,18 スイッチング素子、5,6,17 ダイオード、7 第1の直流出力、8 第2の直流出力、9,10 3レベル単相インバータブリッジ、11,12 出力端子、13 電圧検出手段、14 制御駆動回路、15 太陽電池、16 充電回路、21 第1の駆動回路、22 第2の駆動回路、23 制御回路。




 

 


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