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発明の名称 ステータコア及びそれを用いた回転電機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−104878(P2007−104878A)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
出願番号 特願2005−295318(P2005−295318)
出願日 平成17年10月7日(2005.10.7)
代理人 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二
発明者 平澤 直樹 / 鬼丸 貞久 / 松井 啓仁 / 金城 博文 / 星 潤
要約 課題
ステータコアの冷却(放熱)性能を向上させ、ひいてはこのステータコアを含むステータを用いた回転電機の冷却性能を向上させる。

解決手段
複数枚の電磁鋼板14を積層してなるステータコア13において、積層された電磁鋼板14の間に面粗さによって形成される隙間部分に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質(例えば絶縁性オイル15)を充填する。
特許請求の範囲
【請求項1】
複数枚の電磁鋼板を積層してなるステータコアであって、
積層された電磁鋼板の間に面粗さによって形成される隙間部分に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されていることを特徴とするステータコア。
【請求項2】
回転軸と、
回転軸に設けられたロータと、
請求項1に記載のステータコアを含むステータであって、ロータに空隙を介して対向配置された複数個のステータと、
回転軸をロータの両側で軸受を介して回転自在に支持するとともに複数個のステータを支持するケースと、
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
ステータは、ステータコアの端面をケースに接合することにより、ケースに支持され、
ステータとケースとの接合部に面粗さによって形成される隙間部分には、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されていることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
回転軸と、
回転軸に設けられたロータと、
ロータに空隙を介して対向配置された複数個のステータと、
回転軸をロータの両側で軸受を介して回転自在に支持するとともに複数個のステータを支持するケースと、
を備え、
ステータは、ステータコアの端面をケースに接合することにより、ケースに支持され、
ステータとケースとの接合部に面粗さによって形成される隙間部分には、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一つに記載の回転電機において、
充填される絶縁性物質は、回転電機に使用される潤滑用オイルと同種であることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
複数枚の電磁鋼板を積層してなるステータコアの製造方法であって、
複数枚の電磁鋼板の積層面に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質を供給する供給工程と、
物質が供給された複数枚の電磁鋼板を積層する積層工程と、
積層された複数枚の電磁鋼板に対し、積層方向に所定の圧力を加え、積層された電磁鋼板同士を接合する接合工程と、
を有し、
積層された電磁鋼板の間に面粗さによって形成される隙間部分に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されたステータコアを製造する、ステータコアの製造方法。
【請求項7】
請求項3または4に記載の回転電機を製造する製造方法であって、
ケースと接合するステータのステータコア端面、又はケースにおけるステータコア端面との接合面の少なくとも一方に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質を供給し、
絶縁性物質の供給後にステータコアの端面をケースに接合して、ステータコア端面とケースとの接合部に面粗さによって形成される隙間部分に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填された回転電機を製造する、回転電機の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機や発電機などの回転電機のステータコア及びそれを用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機(モータ)の主要部はロータ20とステータ10とによって構成される。図1は、モータの構造の一例を示す断面図である。ステータ10は、磁界を発生させるための巻線(コイル)11が巻かれたステータコア13を備え、そのコイル11に電流を流すことによってモータの内部に回転磁界を発生させる。ステータ10によって発生させられた磁界との相互作用によって、ケース30の軸受40によって回転可能に支持された回転軸50を中心に、ロータ20が回転させられる。ステータコア13には、一般的に複数枚の電磁鋼板を積層した積層コアが用いられる。
【0003】
上記のモータにおいて、モータ駆動時または回生時には、コイル11には電流が流れる。このとき、コイル11に流れる電流の一部は、コイル11自体の抵抗で消費され、熱に変換される。また、コイル11が発生する磁束の一部は、ロータコア(図示せず)やステータコア13において消費され、熱となる。このため、コイル11の温度が高くなり、モータの出力が低下してしまうという問題があった。そこで、近年、モータの小型化と共に、モータの高出力化(出力密度の増大化)が求められている。
【0004】
ところで、上記のようにしてモータから熱が発生するが、モータにおける主な発熱源は、ステータ10(特に、コイルエンド12)であることが知られている。また、ステータ10において発生した熱は、コイルエンド12からステータコア13を経てケース30に伝わり、ケース30からケース外部に放熱される、という経路が主流であることも分かった。さらに、ステータコア13からケース30への放熱経路としては、図1に示すように2種類の放熱経路1,2があるが、複数枚の電磁鋼板が積層されてなるステータコア13を用いた場合、電磁鋼板間に形成される多数の隙間(空気層)、及び、ステータコア13とケース30との接合部31に形成される隙間(空気層)の存在により、放熱経路2よりも放熱経路1の方が支配的であるということも知られている。
【0005】
そこで、上記の知見を踏まえ、モータの小型化と高出力化(出力密度の増大化)という要求に応じるために、コイルの温度上昇による出力低下を防ぐべく、モータの冷却性能を向上させる方法が種々提案されている。
【0006】
従来、モータの冷却性能を向上させる方法としては、ステータの内部に冷却水を流す冷却水管や穴を設けておき、そこに冷却水を流すことでモータの冷却性能を上げる方法がある(例えば、下記特許文献1参照)。また、加熱すると接着能を発揮する被膜が施された積層鋼板を複数枚積層して加熱接着することで、ステータコアの積層方向の熱伝導率を向上させ、これによりモータの冷却性能を上げる方法がある(例えば、下記特許文献2参照)。
【0007】
また、他の冷却性能を向上させる方法としては、コイルエンドにオイルをかけて直接冷却し、さらにステータ外周とケース内周との間の隙間にオイルを充填する方法(例えば、下記特許文献3参照)や、スロット内にオイルを流し、ステータコイルとステータコアの両方を直接冷却する方法(例えば、下記特許文献4参照)もある。
【0008】
【特許文献1】特表2003−507994号公報
【特許文献2】特開平11−150895号公報
【特許文献3】特開2003−324901号公報
【特許文献4】特開2005−12989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、モータの主要な発熱部であるステータを直接冷却できるという点では有効であるが、冷却水管を設ける必要があるため、製造の組み付け性は良好とはいえず、またコストもかかる。さらに、ステータ内に電気伝導性のある冷却水を流すというのは、信頼性の点でも好ましいとは言い難い。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の方法でも、被膜を施した電磁鋼板を使用する必要があり、またステータコアの組立ての際に加熱処理が必要となるため、通常のステータコアの製造に対してコストがかかる。
【0011】
また、上記特許文献2に記載の方法は、ステータコアにおいて、電磁鋼板の積層方向の熱伝達性(図1の放熱経路2による放熱効果に相当)を向上させることでステータコア自体の熱伝達性を向上させたものである。そして、この方法により、例えば図3のようにステータコア13aの軸長を大きくし且つ径方向の長さを小さくして、回転軸方向に細長くなる形状にモータを小型化した場合や、図4のように、複数の管内に冷却媒体を流してケースを冷却する冷却手段60を、ステータ10bとケース30bとの接合部31b側に配置しなければならないような場合に、特に冷却(放熱)効果の向上が期待できる、というものである。しかしながら、この方法では、直接的に電磁鋼板同士を積層させた場合に比して被膜の厚さ分だけ電磁鋼板間の距離が拡大するため、たとえ熱伝導率の大きい被膜を用いたとしても、電磁鋼板間の距離が大きくなれば、その分だけ放熱効果は落ちてしまう。したがって、この方法によって、ステータコアにおいて、電磁鋼板の積層方向の熱伝達性が格段に向上するとは言い難い。この図3や図4のような場合については、上記特許文献3,4に記載の方法についても、冷却(放熱)効果の向上が期待できるとは言い難い。
【0012】
本発明は、ステータコアを構成する電磁鋼板の積層方向の熱伝導率を増加させ、より多くの有効な放熱経路を確保することで、冷却(放熱)性能を向上させたステータコア及びそれを用いた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のステータコアは、複数枚の電磁鋼板を積層してなるステータコアであって、積層された電磁鋼板の間に面粗さによって形成される隙間部分に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の回転電機は、回転軸と、回転軸に設けられたロータと、上記のステータコアを含むステータであって、ロータに空隙を介して対向配置された複数個のステータと、回転軸をロータの両側で軸受を介して回転自在に支持するとともに複数個のステータを支持するケースと、を備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、上記構成の回転電機において、ステータは、ステータコアの端面をケースに接合することにより、ケースに支持され、ステータとケースとの接合部に面粗さによって形成される隙間部分には、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されているのが好適である。
【0016】
さらに、上記構成の回転電機において、充填される絶縁性物質は、回転電機に使用される潤滑用オイルと同種であるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の回転電機は、回転軸と、回転軸に設けられたロータと、ロータに空隙を介して対向配置された複数個のステータと、回転軸をロータの両側で軸受を介して回転自在に支持するとともに複数個のステータを支持するケースと、を備え、ステータは、ステータコアの端面をケースに接合することにより、ケースに支持され、ステータとケースとの接合部に面粗さによって形成される隙間部分には、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されていることを特徴とするものである。ここで、この回転電機においても、充填される絶縁性物質は、回転電機に使用される潤滑用オイルと同種であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステータコアを構成する電磁鋼板の積層方向の熱伝導率を増加でき、より多くの有効な放熱経路を確保することができるため、ステータコアの冷却(放熱)性能が向上し、ひいてはこのステータコアを含むステータを用いた回転電機の冷却性能も向上する。
【0019】
また、回転電機において、ステータコアの端面とケースとの接合部に面粗さによって形成される隙間部分に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質が充填されることで、この接合部における接触熱抵抗も低減できるため、回転電機の冷却性能も一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態におけるモータは、図1と同様の構成を有している。すなわち、ステータ10は、磁界を発生させるための巻線(コイル)11が巻かれたステータコア13を備え、そのコイル11に電流を流すことによってモータの内部に回転磁界を発生させる。ステータ10によって発生させられた磁界との相互作用によって、ケース30の軸受40によって回転可能に支持された回転軸50を中心に、ロータ20が回転させられる。ステータコア13には、図2に示すように、一般的に複数枚の電磁鋼板14を積層した積層コアが用いられている。図2は、本発明の実施の形態におけるモータの、ステータ10とケース30との接合部31付近を拡大した図である。なお、各電磁鋼板14の表面には絶縁層(図示せず)が形成されている。
【0021】
ここで、本実施形態におけるステータコア13は、図2に示すように、積層された電磁鋼板14の間に面粗さによって形成される隙間部分に、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性オイル15が充填された状態となっている。
【0022】
ステータコア13への絶縁性オイル15の充填は、例えば以下のような手順で行う。例えば、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性オイル15が満たされた容器内で電磁鋼板14を積層させた後、容器内で、あるいは容器外に取り出してから、積層方向に所定の荷重を加えて積層された電磁鋼板14間を接合する。こうしてステータコア13を作製することで、本実施形態におけるステータコア13は、積層された電磁鋼板14の間に面粗さによって形成される隙間部分に、絶縁性オイル15が充填された状態となっている。
【0023】
つまり、従来のステータコアでは、電磁鋼板14間の隙間には熱伝導率の小さい空気が存在していたのが、これに代わって空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性オイル15が存在することとなる。しかも、ステータコア13の作製途中で所定の荷重を積層方向に加えるため、本実施形態におけるステータコア13は、従来のステータコアと略同一の軸長を有するものである。
【0024】
したがって、熱伝導率の大きい絶縁性オイル15を電磁鋼板14間に充填させても、電磁鋼板14間の距離が大きくなってその分だけ放熱効果が落ちるということは無く、従来のステータコアに比して、電磁鋼板14の積層方向の熱伝導率が確実に増大する。
【0025】
こうして、本実施形態におけるステータコア13では、電磁鋼板14の積層方向の熱伝達性(図1における放熱経路2による放熱効果に相当)を向上させることができる。
【0026】
なお、このようなステータコア13の作製方法としては、上記方法に限らずとも良い。例えば、電磁鋼板14の積層させる側の表面に絶縁性オイル15を塗布しながら積層させていき、所定の枚数を積層し終えたところでこの積層体に所定の荷重を加え、積層された電磁鋼板14間を接合して上記のようなステータコア13を作製するようにしても良い。
【0027】
こうして、電磁鋼板14間の隙間部分に絶縁性オイル15が充填されたステータコア13が作製されると、このステータコア13のティース(図示せず)にコイル11を巻回し、中空円筒形状のケース30内に挿入し(図1ではケース30の左側から挿入し)、段差によって形成された接合面31にステータコア13の端面を接合させる。そして、ロータ20と一体の回転軸50を軸受40に取り付けてステータコア13内にロータ20を配置し、ケース30を閉じることにより、本実施形態におけるステータコア13を利用したモータが作製される。このモータの構成は図1と同様である。なお、ステータ10の取付け作業の便宜上、ステータ10の外周とケース30の内周との間には隙間32が形成される(図2参照)。
【0028】
ここで、本実施形態では、ケース30に接合させるステータコア13の端面、またはケース30側の接合面の少なくとも一方に絶縁性オイル15を塗布し、しかる後にケース30側の接合面にステータコア13の端面を接合する、といった手順を経て、モータが作製されている。これにより、本実施形態におけるモータは、ステータ10とケース30との接合部31(ステータコアの端面とケース側の接合面との間)に面粗さによって形成される隙間部分に、絶縁性オイル15が充填された状態となっている。
【0029】
つまり、従来のモータでは、上記のステータ10とケース30との接合部31の隙間には熱伝導率の小さい空気が存在していたのが、これに代わって空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性オイル15が存在することとなる。これにより、この接合部31における接触熱抵抗は低減する。
【0030】
したがって、本実施形態におけるモータでは、ステータ10からケース30への熱伝達において、ステータ10とケース30との接合部での熱伝達性(図1における放熱経路2による放熱効果に相当)を向上させることができる。
【0031】
勿論、上記のようにステータ10とケース30との接合部31の隙間部分に絶縁性オイル15を充填せずとも、ステータコア13の電磁鋼板14間の隙間部分に絶縁性オイル15を充填させておけば、図1における放熱経路2による放熱効果は従来よりも向上する。しかしながら、本実施形態のように、ステータ10とケース30との接合部31の隙間部分に絶縁性オイル15を充填させた方が、モータの冷却(放熱)性能をより向上させることが可能となる。
【0032】
また、電磁鋼板14間の隙間部分に絶縁性オイル15を充填していない従来のステータコア(隙間部分に空気が存在するステータコア)を用い、ステータ10とケース30との接合部31の隙間部分に絶縁性オイル15を充填してステータ10をケース30に接合した場合でも、図1における放熱経路2による放熱効果は従来よりも向上するが、やはり本実施形態のように、電磁鋼板14間及び接合部31の双方に絶縁性オイル15を充填させるのが好ましい。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、ステータコア13における電磁鋼板14の積層方向への熱伝導率の増大により、この方向への熱伝達性が向上すると共に、ステータ10とケース30との接合部31における接触熱抵抗の低減により、ステータ10とケース30との接合部31での熱伝達性が向上するため、図1における放熱経路2による放熱効果が向上する。これにより、従来支配的であった図1における放熱経路1のみならず放熱経路2をも有効な経路として確保できるため、ステータコア13及びそれを用いたモータの冷却(放熱)性能を向上させることができる。
【0034】
そして、放熱経路2も有効な経路として確保できるため、例えば図3のようにステータコア13aの軸長を大きくし、径方向の長さを小さくするようにモータを小型化した場合や、図4のようにケース30bを冷却する冷却手段60を、ステータ10bとケース30bとの接合部31b側に配置しなければならないような場合にも、冷却(放熱)効果の向上が十分期待できる。
【0035】
なお、ステータ10の外周とケース30の内周との間に形成された隙間32にも従来の技術を適用してオイルを充填させることで、従来においても有効であった放熱経路1について冷却(放熱)効果を向上させ、モータの冷却(放熱)効果を一層向上させることができるのは言うまでもない。
【0036】
なお、本発明者らは、本発明のステータコア及びそれを用いたモータに関し、冷却性能向上の評価を行った。そこで、以下、本発明者らが行った冷却性能向上の評価結果について説明する。
【0037】
まず、ハイブリッド車両用のモータ(ステータ外径約270mm、ステータ積層厚み約90mm)から切り出した部材を用い、ステータコアの電磁鋼板間の隙間にオイルを充填したもの、及びステータコアの電磁鋼板間の隙間に空気が存在する現状のものの各々について、コアの電磁鋼板積層方向の熱伝導率を評価した。
【0038】
図5は、本発明者らが行ったステータコアの熱伝導率の向上を示すサンプル評価結果を示すものであり、縦軸は熱伝導率、横軸はコア作製時に電磁鋼板積層方向に加えた荷重を示す。図5によれば、電磁鋼板間の隙間に空気が存在する現状のものに比べて、オイルを充填したものの熱伝導率は、全体的に約50%増大していることが分かる(例えば白抜き丸の部分)。したがって、本発明によれば、オイルの充填によりステータコアにおける電磁鋼板積層方向への熱伝導率が増大し、これにより、この方向への熱伝達性は向上するといえる。
【0039】
また、同様にハイブリッド車両用のモータ(ステータ外径約270mm、ステータ積層厚み約90mm)から切り出した部材を用い、接合部の隙間にオイルを充填したもの、及び接合部の隙間に空気が存在する現状のものの各々について、接合部の接触熱抵抗を評価した。
【0040】
図6は、本発明者らが行った接触熱抵抗の向上を示すサンプル評価結果を示すものであり、縦軸は接触熱抵抗、横軸は接合面に加えている圧力を示す。図6によれば、接合部の隙間に空気が存在する現状のものに比べて、オイルを充填したものの接触熱抵抗は、全体的に約60%低減していることが分かる(例えば白抜き丸の部分)。したがって、本発明によれば、オイルの充填によりケースとステータとの接合部における接触熱抵抗が低減し、これにより、ケースとステータとの接合部における熱伝達性は向上するといえる。
【0041】
以上のように、本発明によるステータコア及びそれを用いたモータにより、冷却性能が向上することは、実験的にも明らかなものとなっている。
【0042】
また、本発明者らは、上記の実験と併せて、本発明のステータコアを用いたモータに関し、有限要素法(FEM)によるシミュレーション解析による冷却性能向上の評価を行った。具体的には、コイルエンドからステータを経てケースに至るまでの放熱経路の熱抵抗について、シミュレーション解析を行った。以下、シミュレーション解析による冷却性能向上の評価結果について説明する。
【0043】
図7は、シミュレーション解析で用いた試算モデルを示すものである。また、本シミュレーション解析では、図7の各部の熱伝導率を次のように設定した。ステータコア(図7のA)については、径方向の熱伝導率を31W/m・Kとした。ステータコアの軸方向の熱伝導率については、ステータコアの電磁鋼板間の隙間に空気が存在する(現状の)ものでは10W/m・Kとし、オイルを充填させたものでは14.6W/m・Kとした。コイルエンド(図7のB)については、周方向の熱伝導率を23W/m・K、軸方向の熱伝導率を194W/m・Kとし、ステータコアのスロット(図示せず)内にあるスロット内コイル(図7のC)については、径方向の熱伝導率を0.55W/m・K、軸方向の熱伝導率を203W/m・Kとした。ケース(図7のD)については、熱伝導率に等方性があるものとして、155W/m・Kとした。ステータとケースとの接合部(図7のE)については、厚さ1mmのダミー抵抗要素で模擬的に解析することとし、接合部の隙間に空気が存在する(現状の)ものでは4.3W/m・Kとし、オイルを充填させたものでは10.7W/m・Kとした。モータ内の内部空気(図7のF)については、熱伝導率に等方性があるものとして、0.03W/m・Kとした。
【0044】
図8は、以上の条件に基づいてシミュレーション解析した試算結果を示すものである。図8によれば、ステータコアの電磁鋼板間の隙間とステータとケースとの接合部の隙間のいずれにも空気が存在する場合(図8中の「現状」)には、コイルエンドからステータを経てケースに至るまでの放熱経路の熱抵抗は、約103.5℃/kWと試算された。これに対し、ステータとケースの接合部の隙間にのみオイルを充填した場合には約102.5℃/kW、ステータコアの電磁鋼板間の隙間にのみオイルを充填した場合には約100.2℃/kW、ステータコアの電磁鋼板間の隙間とステータとケースとの接合部の隙間のいずれにもオイルを充填した場合には約99℃/kW、とそれぞれ試算された。
【0045】
以上の試算結果は、特にステータコアの電磁鋼板間の隙間とステータとケースとの接合部の隙間のいずれにもオイルを充填した場合には、コイルエンドからステータを経てケースに至るまでの放熱経路の熱抵抗が約4.5℃/kW低減する、すなわち、モータの発熱量(損失)が1kWあたり最も高熱となるコイルエンドの温度を約4.5℃低減する効果がある、ということを示している。
【0046】
このように、本発明によるステータコアを用いると、モータの冷却性能が向上することは、シミュレーション解析からも明らかなものとなっている。
【0047】
なお、上記実施形態では絶縁性オイルを用いているが、空気よりも熱伝導率の大きい絶縁性物質であれば、オイルに限らずとも良い。しかしながら、モータの潤滑用オイルと同種とするのが好適である。これは、オイルの兼用が可能となると共に、もし充填したオイルがステータコアの劣化等によりモータ内に漏れ出したとしても、モータの潤滑用オイルと同種であるために潤滑用オイルの純度が低下することがなく、潤滑性能が劣化することもない、という利点があるからである。
【0048】
また、上記の各実施形態におけるステータコアは、モータ(電動機)のみならず、発電機などの回転電機にも適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】モータの構造の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるモータの、ステータとケースとの接合部付近を拡大した図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるステータコアを用いるのに好適なモータの構造の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるステータコアを用いるのに好適なモータの構造の他の例を示す断面図である。
【図5】ステータコアの熱伝導率の向上を示す実験結果を示す図である。
【図6】接触熱抵抗の向上を示す実験結果を示す図である。
【図7】コイルエンドからステータを経てケースに至る放熱経路の熱抵抗のシミュレーション解析に用いる試算モデルを説明するための図である。
【図8】コイルエンドからステータを経てケースに至る放熱経路の熱抵抗のシミュレーション解析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10,10a,10b ステータ、11,11a,11b コイル(巻線)、12 コイルエンド、13,13a,13b ステータコア、14 電磁鋼板、15 絶縁性オイル、20,20a,20b ロータ、30,30a,30b ケース、31,31a,31b 接合部、32 隙間、40,40a,40b 軸受、50,50a,50b 回転軸。




 

 


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