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発明の名称 磁石式電動機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−97284(P2007−97284A)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
出願番号 特願2005−281660(P2005−281660)
出願日 平成17年9月28日(2005.9.28)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 山内 友和 / 佐々木 正一
要約 課題
磁石式電動機の運転領域を拡大する。

解決手段
回転子30aおよび30bは、共通の回転軸40に取り付けられる。位相差設定機構50は、回転子30a,30bに装着された界磁用磁石35a,35b間の回転位相差θを、モータ静止時に最大値とするとともにモータトルクの増大に従って減少させる。モータ静止状態および低トルク状態では、界磁用磁石35a,35bに作用する磁気吸引力Fmのスラスト方向成分であるスラスト力Fsがさらばね53による付勢力より小さいので、回転子間に磁極ずれが発生される。これにより、機械的に界磁が減少されて高速回転域での誘起電圧の上昇が抑制される。一方、高トルク状態では、スラスト力Fsの増大によりさらばね53による付勢力が打ち消されて、回転子間に磁極ずれは解消されて、鎖交磁束量を確保した高出力が可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
複数の固定子磁極および、電流の供給を受けて該固定子磁極に回転磁界を発生するための固定子巻線を有する固定子と、
共通の回転軸に取り付けられ、各々に磁石が装着された第1および第2の回転子とを備え、
前記第1および第2の回転子は、前記複数の固定子磁極と前記磁石との間に作用する磁気吸引力によって回転可能であり、かつ、前記磁気吸引力が前記回転軸に沿ったスラスト方向成分を有するように設けられ、
前記スラスト方向成分によるスラスト力に応じて、前記第1および第2の回転子の前記磁石間の回転位相差を設定する位相差設定手段をさらに備える、磁石式電動機。
【請求項2】
前記位相差設定手段は、前記スラスト力の増加に応じて前記回転位相差を減少させる、請求項1記載の磁石式電動機。
【請求項3】
前記位相差設定手段は、
前記第1および第2の回転子間に前記回転位相差を与えるように付勢する付勢手段と、
前記付勢手段への反力として与えられる前記スラスト力を、前記回転位相差を減少させる方向に作用する力に変換する変換手段とを含む、請求項1または2記載の磁石式電動機。
【請求項4】
前記保持手段は、前記スラスト力が零であるときに前記回転位相差を前記初期値とする付勢力を発生するように、前記第1および第2の回転子の間に設けられた弾性体を含み、
前記変換手段は、前記付勢力と反対方向に印加される前記スラスト力に応じて、前記回転位相差が減少する方向に前記第1および第2の回転子を回転させる力を発生させるように構成されたカム機構を含む、請求項3記載の磁石式電動機。
【請求項5】
前記位相差設定手段は、
前記スラスト力の印加に応じて、前記回転位相差を減少させる方向に弾性変形するように構成された弾性変形手段を含み、
前記弾性変形手段は、弾性変形前の状態において、前記第1および第2の回転子間に前記回転位相差を与えるように構成される、請求項1または2記載の磁石式電動機。
【請求項6】
複数の固定子磁極および、電流の供給を受けて該固定子磁極に回転磁界を発生するための固定子巻線を有する固定子と、
共通の回転軸に取り付けられ、各々に磁石が装着された第1および第2の回転子とを備え、
前記第1および第2の回転子は、前記複数の固定子磁極と前記磁石との間に作用する磁気吸引力によって回転可能であり、
前記電動機の出力トルクに応じて、前記第1および第2の回転子の前記磁石間の回転位相差を設定するように構成された位相差設定手段をさらに備え、
前記位相差設定手段は、前記出力トルクの増加に従って前記回転位相差を減少させる、磁石式電動機。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁石式電動機に関し、より特定的には、界磁用磁石を装着した回転子(ロータ)を備える磁石式電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石式電動機として、界磁用の永久磁石を回転子に装着して、インバータからの交流電流によって固定子に回転磁界を発生させることによって回転駆動させる永久磁石型同期機が知られている。このような永久磁石型同期機は、他の形式の同期機に比較して高出力でコンパクト化を実現できるので、信頼性および小型軽量化が要求される車両用回転電機に用いられている。
【0003】
車両用回転電機は回転数の変化範囲が広いため、永久磁石型同期機等の磁石式電動機を車両用回転電機として用いると、高速回転時には固定子巻線に過大な誘起電圧が発生してしまう。このため、高速回転時には電流位相を進めることによって誘起電圧を低く押える「弱め界磁制御」という手法を用いることが一般的である。しかしながら、弱め界磁制御によればモータ損失が増大してしまうという問題がある。
【0004】
これに対して、特開平10−155262号公報(特許文献1)では、回転子による遠心力が大きい領域で、回転子からの界磁を機械的に弱める構造を備えた電動機の回転子構造が開示されている。具体的には、回転子をそれぞれの表面に界磁磁石が装着された2つの回転子コアに分割し、これらの回転子コアの磁極間に位相差を設けるための磁極ずれ機構としてガバナ機構を設けている。このガバナ機構は、ロータの遠心力により変形するばねによって、回転子コア間に回転位相差を設けるものである。これにより、電動機の高速回転領域において、回転子からの発生磁束が固定子側の界磁用巻線(固定子巻線)に到達する鎖交磁束量を減ずることができるので、界磁を減少させて固定子巻線の誘起電圧の上昇を抑えることが可能となる。
【0005】
また、特開2004−242461号公報(特許文献2)には、磁石型回転子である固定回転子と回転軸に回動自在に嵌め込まれた磁石型回転子である可動回転子とを設けた上で、可動回転子を遠心力により固定回転子に対して相対回動させる相対回動機構を設ける構造が開示されている。電動機の動作中には、上記相対回動機構は、回転子の回転数変化に応じて固定回転子と可動回転子との相対角度を変更することにより、磁極ずれを発生させる。この結果回転子からの合成磁束量が変更されて、特許文献1と同様の原理により、電動機の高速回転領域において固定子巻線の誘起電圧の上昇を抑えることができる。
【特許文献1】特開平10−155262号公報
【特許文献2】特開2004−242461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、ガバナ機構においてガバナが閉状態となるような遠心力が発生する回転数に達するまでは、磁極のずれを発生させることができない。同様に、特許文献2に開示される構成でも、可動回転子に対応する遠心力によるつるまきバネの変形によって可動回転子と固定回転子との間に位相のずれを与える機構であるため、遠心力が作用するまでの間は、磁極のずれを発生させることができない。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、磁石装着型の回転子を備えた磁石式電動機において、低トルク領域で機械的に界磁を減少させる機構を備えることにより、電動機の運転領域を高速回転域へ拡大することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による磁石式電動機は、固定子と、第1および第2の回転子と。位相差設定手段とを備える。固定子と、複数の固定子磁極および固定子巻線を有し、固定子巻線は、電流の供給を受けて上記固定子磁極に回転磁界を発生する。第1および第2の回転子は、共通の回転軸に取り付けられ、各々には磁石が装着される。さらに、第1および第2の回転子は、装着された磁石と複数の固定子磁極との間に作用する磁気吸引力によって回転可能であり、かつ、磁気吸引力が回転軸に沿ったスラスト方向成分を有するように設けられる。位相差設定手段は、スラスト方向成分によるスラスト力に応じて、第1および第2の回転子の磁石間の回転位相差を設定する。
【0009】
上記磁石式電動機によれば、モータトルクに応じて変化する磁気吸引力のスラスト方向成分に応じて、第1および第2の回転子に装着された磁石間に回転位相差(すなわち磁極ずれ)を発生させることができる。したがって、電動機の回転数に関係なく、電動機の出力トルクに応じて磁極ずれを発生させることにより、機械的に界磁を減少させて固定子巻線での誘起電圧上昇を抑制できる。これにより、出力トルクを考慮した電動機の運転領域拡大を図ることができる。
【0010】
好ましくは、この発明による磁石式電動機では、位相差設定手段は、スラスト力の増加に応じて回転位相差を減少させる。
【0011】
上記磁石式電動機によれば、スラスト力の大きい、すなわち電動機の出力トルクが高い領域では、回転子間の磁極ずれを減少させて鎖交磁束量を大きくすることができる。高トルク領域でモータ出力を確保できる。
【0012】
あるいは好ましくは、位相差設定手段は、付勢手段と、変換手段とを含む。付勢手段は、第1および第2の回転子間に回転位相差を与えるように付勢する。変換手段は、付勢手段への反力として与えられるスラスト力を、回転位相差を減少させる方向に作用する力に変換する。
【0013】
上記磁石式電動機によれば、スラスト力の小さい、すなわち電動機の出力トルクが低い領域では、付勢手段の付勢力によって回転子間の磁極ずれを発生させて、機械的に界磁を減少できる。この結果、低トルク領域では誘起電圧の上昇を抑制して高速回転域での運転領域を拡大することができる。
【0014】
特にこのような構成では、保持手段は弾性体を含み、変換手段はカム機構を含む。弾性体は、スラスト力が零であるときに上記回転位相差を初期値とする付勢力を発生するように、第1および第2の回転子の間に設けられる。カム機構は、付勢力と反対方向に印加されるスラスト力に応じて、上記回転位相差が減少する方向に第1および第2の回転子を回転させる力を発生させるように構成される。
【0015】
上記磁石式電動機によれば、カム機構によって、モータトルクに従って発生される磁気吸引力に応じて、回転子間の位相差(すなわち、磁極ずれの量)を調節することができる。
【0016】
また好ましくは、位相差設定手段は、スラスト力の印加に応じて、回転位相差を減少させる方向に弾性変形するように構成された弾性変形手段を含む。この弾性変形手段は、弾性変形前の状態において、第1および第2の回転子間に回転位相差を与えるように構成される。
【0017】
上記磁石式電動機によれば、カム機構を用いることなく位相差設定手段をコンパクトに構成可能である。
【0018】
この発明による磁石式電動機は、固定子と、第1および第2の回転子と。位相差設定手段とを備える。固定子は、複数の固定子磁極および固定子巻線を有し、固定子巻線は、電流の供給を受けて該固定子磁極に回転磁界を発生する。第1および第2の回転子は、第1および第2の回転子は、共通の回転軸に取り付けられ、各々には磁石が装着される。さらに、第1および第2の回転子は、装着された磁石と複数の固定子磁極との間に作用する磁気吸引力によって回転可能であるように設けられる。位相差設定手段は、電動機の出力トルクに応じて、第1および第2の回転子の磁石間の回転位相差を設定するように構成される。特に、位相差設定手段は、出力トルクの増加に従って回転位相差を減少させる。
【0019】
上記磁石式電動機によれば、電動機の出力トルクの増加に従って、第1および第2の回転子間の磁極ずれを減少させるので、相対的に高トルク領域では鎖交磁束量を大きくして電動機出力を確保するとともに、低トルク領域では、磁極ずれを発生させて界磁を減少させることにより、高速回転領域での誘起電圧の上昇を抑制することができる。この結果、高トルク領域での運転領域を縮小させることなく、低トルク領域では高速回転域での運転領域を拡大できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明の磁石式電動機によれば、高トルク領域では鎖交磁束量を確保して高出力を可能とする一方で、低トルク領域では機械的に界磁を減少させる機構によって、電動機の運転領域を高速回転域で拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下において、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰返さないものとする。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態による磁石式電動機の概略構成を示す概念図である。
図1を参照して、磁石式電動機10は、固定子20と、回転子30a,30bと、回転軸40と、位相差設定機構50とを備える。
【0023】
固定子20には、複数の固定子磁極21が設けられ、固定子磁極には界磁用巻線(固定子巻線)22が巻回されている。固定子巻線22には、モータ制御回路60から回転磁界を発生させるためのモータ電流が供給される。代表的には、モータ制御回路60は、三相インバータを含んで構成され、モータ制御回路60は、動作指令(たとえば、モータトルク指令値やモータ回転数指令値)に従って磁石式電動機10を回転駆動するように制御した三相電流を、上記モータ電流として固定子巻線22へ供給する。
【0024】
この発明の実施の形態による磁石式電動機10では、共通の回転軸40に対し複数の回転子30a,30bが取り付けられる。各回転子30a,30bは、強磁性の回転子コア32と、該回転子コアに装着された界磁用磁石35とを含んで構成される。界磁用磁石35は、回転子30a,30bの外周面の回転方向に交互に等間隔で異なった磁極が形成されるように配置される。あるいは、各回転子30a,30bの外周面にリング状磁石を装着することによって界磁用磁石35を構成することも可能である。
【0025】
回転軸40には、センサ磁石45が装着される。センサ磁石45は、回転軸40の回転位相を示すためのものであり、回転軸40に固定されているとともに、その外周面に磁極パターンを形成したセンサ磁石が装着されている。
【0026】
回転子30a,30bは、ともに狭いエアギャップ25を隔てて固定子磁極21に対向配置されており、固定子磁極21に発生される回転磁界と、各回転子に装着される界磁用磁石35との間に作用する磁気吸引力により回転可能である。回転子30a,30bに発生する回転力は、回転軸40の回転力として出力される。
【0027】
位相差設定機構50は、モータトルクに応じて、回転子30a,30bの対応する界磁用磁石間の相対角度を設定するために設けられる。以下ではこの相対角度を回転位相差θと称する。したがって、回転子30a,30bは、位相差設定機構50により設定された位相差θの磁極ずれが発生した状態で共に回転する。
【0028】
図2には、回転子30aに装着された界磁用磁石35aおよび回転子30bに装着された界磁用磁石35bのうち、対応する1個ずつを例示している。また、固定子磁極21についても代表的に1個のみが記載されている。θ=0の場合には磁極ずれは発生せず、回転子30a,30b間で磁極の位相は一致することになる。位相差設定機構50によって回転位相差が設定されると(θ>0)、界磁用磁石35a,35bの間に磁極ずれが発生される。
【0029】
図3は、回転子間の回転位相差と固定子巻線に到達する鎖交磁束量との関係を説明する概念図である。
【0030】
図3(a)に示されるように、θ=0の場合には、界磁用磁石35aおよび35bの位相は一致している。この場合には、単一の回転子が設けられる通常の構造と同様に、界磁用磁石によって発生される磁束φは、基本的に全量が固定子巻線22へ導かれる。したがって、各界磁用磁石35a,35bによる発生磁束をφとすると、1組の各界磁用磁石35a,35bからの固定子巻線へ到達する鎖交磁束量Ψ=2φとなる。
【0031】
これに対して、位相差設定機構によって、回転子30a,30bに回転位相差が付与された場合(θ>0)には、界磁用磁石35a,35bからそれぞれ発生される磁束φの一部のみが固定子巻線22を通過する。この場合における鎖交磁束量Ψ=2φ・cos(θ/2)となり、位相差無(θ=0)の場合よりも小さくなる。したがって、位相差設定機構50によって回転位相差θを設けることにより、鎖交磁束量、すなわち界磁を減少させて、固定子巻線22の誘起電圧の上昇を抑えることが可能となる。
【0032】
次に、位相差設定機構50の構成について詳細に説明する。
図4は、図2におけるIV−IV断面図である。
【0033】
図4を参照して、位相差設定機構50は、共通の回転軸40に装着された回転子30a,30bの間に設けられ、「変換手段」として機能する、カム機構51およびアウトプットディスク52を含む。さらに、図4の断面図には現れないが、位相差設定機構50は、初期状態(モータ静止状態)で回転子30a,30bに初期値となる所定の回転位相差θiを付与するための「付勢手段」として機能するさらばねをさらに有する。
【0034】
図5は、図4に示した位相差設定機構50の動作を詳細に説明する図である。図5(a),(b)は、図2をVI方向から見た平面図である。
【0035】
図5(a)には、モータ静止状態から低トルク状態における位相差設定機構50の動作が示される。
【0036】
図5(a)を参照して、カム機構51およびさらばね53は、アウトプットディスク52と回転子30a,30bとの間に設けられる。特に、回転子30a,30bに作用するモータ回転軸40に沿った方向のスラスト力Fs=0のとき、すなわち、さらばね53の弾性変形量=0である状態で、回転子30a,30bの間に初期位相差θiが付与されるように、カム機構51およびさらばね53は設けられる。
【0037】
カム機構51は、さらばね53による付勢と反対方向に印加されるスラスト力Fsを、回転位相差θが初期位相差θiから減少する方向にアウトプットディスク52を回転させる回転力(位相変換力)Ftに変換するように構成される。すなわち、スラスト力Fsによるさらばね53の弾性変形に伴うスラスト方向の変位は、カム機構51によって、回転位相差θが初期位相差θiから減少する方向のアウトプットディスク52の回転変位に変換される。
【0038】
ここで、スラスト力Fsは、回転子30a,30bに装着された界磁用磁石35a,35bに作用する、固定子磁極21への磁気吸引力Fmのうちの回転軸40に沿った方向の成分である。磁石式電動機10では、このようなスラスト力Fsは、複数の回転子30a,30bを共通の固定子磁極21および固定子巻線22に対向配置することにより、両者の中心軸が不一致となることにより発生される。
【0039】
モータ静止状態においては、固定子巻線22へモータ電流が供給されていないため、固定子磁極21への磁気吸引力は、界磁用磁石35a,35bに作用しない。このため、回転子30a,30bに作用するスラスト力Fs=0である。したがって、回転子30a,30bの間には、アウトプットディスク52を介してさらばね53による付勢力のみが作用して、両者の回転位相差θは所定の初期値θiとされる。
【0040】
モータ運転が開始されると、モータトルクに応じたモータ電流が固定子巻線22に供給され、複数の固定子磁極に回転磁界が発生される。これにより、回転子30a,30bに設けられた界磁用磁石35a,35bには、固定子磁極21への磁気吸引力Fmが発生する。磁気吸引力Fmのスラスト方向成分であるスラスト力Fsは、さらばね53の付勢力と反対方向に作用して、さらばね53を弾性変形させる。カム機構51は、スラスト力Fsに応じて、回転位相差θを減ずる方向にアウトプットディスク52を回転させる位相変換力Ftを発生させる。すなわち、この実施の形態では、さらばね53は、モータトルクの増加に伴って弾性変形される弾性体の代表例として示される。
【0041】
モータトルクの増大に従って、固定子磁極21に発生する回転磁界を大きくするようにモータ電流が増大される。このため、回転子30a,30bの界磁用磁石35a,35bに作用する磁気吸引力Fmは、モータトルクが大きくなるにつれて大きくなり、そのスラスト方向成分(スラスト力Fs)についても、モータトルクの増大につれて大きくなる。
【0042】
この結果、磁石式電動機10のモータトルクが増加するにつれてスラスト力Fsも増大する。カム機構51によって、スラスト力Fsの増大に応じてアウトプットディスク52が回転されて、回転子30a,30b間の回転位相差θが初期値θiから減少していく。すなわち、位相差設定機構50は、回転子30a,30bに装着された界磁用磁石35a,35b間の回転位相差θを、モータ静止時に最大値とするとともにモータトルクの増大に従って減少させる。モータ静止状態および低トルク状態では、スラスト力Fsが、さらばね53による付勢力より小さいので、回転子30a,30b間に磁極ずれが発生される。
【0043】
そして、図5(b)に示すように、高トルク状態でスラスト力FsがFsmに達すると、カム機構51によって発生される位相変換力FtがFtmに達して、回転子30a,30b間の回転位相差θ=0となる。
【0044】
このように、磁石式電動機10では、回転子に装着された界磁用磁石に作用する磁気吸引力の増大に応じて回転子30a,30b間の回転位相差θを減少させる構造とすることにより、高トルク領域では回転子間の磁極ずれを解消する一方で、低トルク領域では回転子に磁極ずれを発生することができる。
【0045】
この結果、回転位相差θが付与される低トルク領域では、磁極ずれの発生による鎖交磁束量の減少により(図3(b))固定子巻線へ誘起される誘起電圧が過大にならないように抑制できる。これにより、図6に示されるように、θ=θi(最大値)の際の磁石式電動機10の運転領域100は、高速回転域で確保される。
【0046】
一方、回転位相差θが解消される高トルク領域では、鎖交磁束量の確保により(図3(a))、モータを効率よく駆動して高出力を得ることが可能となる。これにより、θ=0の際の磁石式電動機10の運転領域は、高トルク領域で確保される。また、最大値である回転位相差θ=θiから、回転位相差θが徐々に減少していく過程では、中間領域120での磁石式電動機10の運転が可能となる。
【0047】
このように、本発明による磁石式電動機によれば、モータトルクに応じて回転子間の磁極ずれを設定することにより、高トルク領域において界磁を確保する一方で低トルク領域において機械的に界磁を減少させる機構を実現できる。この結果、磁石式電動機について、高トルク領域ではモータ出力を確保して運転領域を縮小させることなく、低トルク−高速回転域で運転領域を拡大することができる。
【0048】
なお、図6に示されるように、磁石式電動機10の運転領域は、モータトルク=0のときの初期値である回転位相差θiと、スラスト力Fsに対する回転位相差θの減少レートによって決定される。初期値θiは、カム機構51およびさらばね53の取付け形態によって決定され、回転位相差θの減少レートは、カム機構51の外溝形状や、さらばね53の弾性係数によって設計される。すなわち、磁石式電動機の運転領域は、これらの要素によって調整可能である。
【0049】
(実施の形態の変形例1)
図7に示すように、アウトプットディスク52および回転子30a,30bの間に、さらばね53に代えてコイルスプリング70を設ける構成としても、カム機構51およびコイルスプリング70によって、上記と同様の位相差設定機構50を得ることができる。
【0050】
なお、図8に示すように、コイルスプリング70は、長手方向に圧縮されるような力Fを受けると、両端には円周方向に広がる力Rが作用する特性を有する。この特性を利用して、図9に示すように、コイルスプリング75のみによって位相差設定機構50を構成することも可能である。
【0051】
図9を参照して、コイルスプリング75は、両端81および82は、回転子30aおよびアウトプットディスク81と接続され、かつ、磁気吸引力Fmのスラスト方向成分であるスラスト力Fsによって、長手方向(図8のF方向)に圧縮されるように取付けられる。さらに、コイルスプリング75が弾性変形していない状態で、回転子30aおよびアウトプットディスク81の間に所定の初期位相差が設けられるように、両端81および82の取付けは調整される。
【0052】
このような構成とすることにより、コイルスプリング75は、スラスト力Fsに応じて、回転子30aおよびアウトプットディスク81の間の位相差を減少させる方向に弾性変形する。すなわち、上記位相差は、スラスト力Fs=0の状態で所定の初期値となり、スラスト力Fsの増大に従って減少する。
【0053】
したがって、回転子30bおよびアウトプットディスク81の間にも、図9と同様にコイルスプリングを設けることにより、カム機構を省略して位相差設定機構をコンパクトに構成することができる。
【0054】
(実施の形態の変形例2)
また、図1〜9では、カム機構および/または弾性体を用いた位相差設定機構を例示したが、本発明による磁石式電動機において、位相差設定機構は、モータトルクに応じて変化するスラスト力Fsを回転子30a,30b間の回転位相差を変化する力に変換することが可能であれば、任意の機構を適用することができる。
【0055】
変形例の一例として、図10に示すように、油圧系により位相差設定機構50を構成することも可能である。
【0056】
図10を参照して、位相差設定機構50は、回転子30aとアウトプットディスク52の間に設けられた、シリンダ54aおよびピストン55a,56aを有する。さらに、位相差設定機構50は、回転子30bおよびアウトプットディスク52の間に設けられた、シリンダ54bおよびピストン55b,56bを有する。
【0057】
図10では記載を省略しているが、図10の位相差設定機構においても、回転子30a,30bに初期値となる所定の回転位相差θiを付与するための「付勢手段(代表的には、図5(a)に示したさらばね53)」が設けられている。
【0058】
ピストン55aは、回転子30aに作用する磁気吸引力のスラスト方向成分(スラスト力)Fsを受ける。ピストン55aに印加されたスラスト力Fsは、シリンダ54a内の油圧を媒介してピストン56aに伝搬され、アウトプットディスク52と回転子30aとの間の回転力Ftとして作用する。上記のように、この回転力Ftは、さらばね53によって付勢された回転位相差θを減ずる方向にさらばね53を弾性変形させるように作用する。
【0059】
同様に、回転子30bに作用するスラスト力Fsは、ピストン55b、シリンダ54bおよびピストン56bを介して、アウトプットディスク52と回転子30bとの間の回転力Ftへ変換される。この回転力Ftも、さらばね53によって付勢された回転位相差θを減ずる方向にさらばね53を弾性変形させるように作用する。
【0060】
このように、図9に示したような油圧系によっても、高トルク領域において界磁を確保する一方で低トルク領域において機械的に界磁を減少させるように、モータトルクに応じて回転子30a,30b間の回転位相差を設定する位相差設定機構を構成することができる。
【0061】
また、図1〜10では、回転位相差を制御可能な2個の回転子30a,30bを備える磁石式電動機の構成を説明したが、回転子は、3以上の複数個設けることも可能である。
【0062】
図11には、3個の回転子30x,30y,30zを設けた磁石式電動機の構成が例示される。
【0063】
図11を参照して、回転子30xおよび30yの間、ならびに回転子30xおよび30zの間には、位相差設定機構50a,50bがそれぞれ設けられる。
【0064】
図11の構成では、回転子30xは固定され、回転子30y,30xは、回転子30xに対して磁極ずれを発生可能に配置される。さらに、回転子30xに対する回転子30yの回転位相差θyが位相差設定機構50aによってモータトルクに応じて設定されるとともに、回転子30xに対する回転子30zの回転位相差θzは位相差設定機構50bによってモータトルクに応じて設定される。
【0065】
位相差設定機構50a,50bには、これまで説明した位相差設定機構50が適用されるの。これにより、高トルク領域では、回転子30x,30y,30z間の回転位相差θy,θz=0となって鎖交磁束量が確保される一方で、低トルク領域では回転位相差θy,θzを設けて磁極ずれを発生させることにより機械的に界磁を減少させることができる。この結果、3以上の複数個の回転子を備えた構成の磁石式電動機についても、高トルク領域でモータ出力を確保して運転領域を縮小させることなく、低トルク−高速回域で運転領域を拡大することができる
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態による磁石式電動機の概略構成を示す概念図である。
【図2】回転子間の回転位相差を説明する概念図である。
【図3】回転子間の回転位相差と固定子巻線に到達する鎖交磁束量との関係を説明する概念図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】位相差設定機構の動作を詳細に説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態による磁石式電動機の運転領域を示す図である。
【図7】コイルスプリングを用いた位相差設定機構の変形例(その1)を説明する図である。
【図8】コイルスプリングの特性を説明する概念図である。
【図9】コイルスプリングを用いた位相差設定機構の変形例(その2)を説明する図である。
【図10】油圧系による位相差設定機構の変形例を説明する図である。
【図11】回転子構成の変形例を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
10 磁石式電動機、20 固定子、21 固定子磁極、22 固定子巻線、25 エアギャップ、30a,30b,30x,30y,30z 回転子(分割)、32 回転子コア、35,35a,35b 界磁用磁石、40 モータ回転軸、45 センサ磁石、50,50a,50b 位相差設定機構、51 カム機構、52 アウトプットディスク、54a,54b シリンダ、55a,55b,56a,56b ピストン、60 モータ制御回路、70,75 コイルスプリング、81,82 両端部(コイルスプリング)、100 運転領域(θ=0:高トルク時)、110 運転領域(θ=θi:モータ静止時)、120 中間領域、Fm 磁気吸引力、Fs スラスト力、Ft 位相変換力(回転力)、θ,θy、θz 回転子間位相差、θi 位相差初期値、φ 界磁用磁石発生磁束量、Ψ 鎖交磁束量。




 

 


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