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発明の名称 永久磁石式回転電機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−89291(P2007−89291A)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
出願番号 特願2005−274343(P2005−274343)
出願日 平成17年9月21日(2005.9.21)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 服部 宏之
要約 課題
ロータコアの変形を抑制することができる永久磁石式回転電機を提供する。

解決手段
ロータコア10には、開口部20とは独立に、回転軸方向に延在する複数のスリットSLTA,SLTBが設けられる。スリットSLTAは、ロータコア10の磁極中心であって、開口部20の内周面に対して、永久磁石30の主平面の法線方向に働く応力F3を吸収可能なように配される。スリットSLTBは、ロータコア10の磁極間であって、永久磁石30の主平面と平行に働く応力F1,F2を吸収可能なように配される。これにより、ロータコア10が径方向外方に変形するのが抑えられる。さらに、スリットSLTA,SLTBをロータコア10内部を通過するステータによる磁束の磁路を妨げない形状とすることにより、モータ性能が確保される。
特許請求の範囲
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して回転自在に設けられたロータとを備え、
前記ロータは、
周方向に沿って形成された複数の開口部を有するロータコアと、
各々が各前記複数の開口部に挿入されて磁極を構成する複数の永久磁石と、
各前記複数の開口部の内周面と各前記複数の永久磁石の外周面との隙間にそれぞれ加圧充填された充填剤とを含み、
前記ロータコアは、前記ロータコアの周方向に沿って配され、前記ロータコアの周方向外方の変形を吸収するように構成された孔部をさらに有する、永久磁石式回転電機。
【請求項2】
ステータと、
前記ステータに対して回転自在に設けられたロータとを備え、
前記ロータは、
周方向に沿って形成された複数の開口部を有するロータコアと、
各々が各前記複数の開口部に挿入されて磁極を構成する複数の永久磁石と、
各前記複数の開口部の内周面と各前記複数の永久磁石の外周面との隙間にそれぞれ充填された熱硬化性充填剤とを含み、
前記ロータコアは、前記ロータコアの周方向に沿って配され、前記ロータコアの周方向外方の変形を吸収するように構成された孔部をさらに有する、永久磁石式回転電機。
【請求項3】
前記孔部は、
前記ロータコアの磁極間ごとに配される第1の孔部と、
前記ロータコアの磁極の略中心ごとに配される第2の孔部とを含む、請求項1または請求項2に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項4】
前記第1の孔部は、各前記複数の開口部の内周面に対して、前記永久磁石の主平面の法線方向に働く応力を吸収するように配され、
前記第2の孔部は、各前記複数の開口部の内周面に対して、前記永久磁石の主平面と平行に働く応力を吸収するように配される、請求項3に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項5】
前記第1および第2の孔部は、前記ロータコア内部を通過する前記ステータによる磁束の磁路を妨げない形状に設定される、請求項4に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項6】
前記複数の開口部は、一対の開口部ごとに、前記ロータの回転軸に向かって凸となる略V字形状を形成するように配置され、
各前記複数の永久磁石は、前記一対の開口部に挿入された状態で単一の磁極を構成し、
前記第1および第2の孔部は、前記ロータコアの磁極間ごと、および前記ロータコアの磁極の略中心ごとにそれぞれ配される、請求項5に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項7】
前記ロータコアは、回転軸方向に積層された複数の電磁鋼板から構成され、前記複数の電磁鋼板をかしめるかしめ部材を含み、
前記第1および第2の孔部は、前記かしめ部材と連続的な形状で設けられる、請求項5に記載の永久磁石式回転電機。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、永久磁石式回転電機に関し、特に、回転子の内部に永久磁石が埋め込まれてなる永久磁石式回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石式回転電機の回転子(以下、ロータとも称する)においては、例えば図10に示すように、ロータコア100に複数の開口部120を設け、この開口部120の内部に永久磁石130を挿入配置することによって磁極が形成される(たとえば特許文献1〜6参照)。そして、ロータコア100を取り囲むように配置した、図示しない固定子(以下、ステータとも称する)側のコイルに通電して形成された回転磁界に基づいて、ロータが回転駆動される。永久磁石130により所定の磁極毎の磁界が形成されるため、小型で、高出力が得られる。
【0003】
このように構成される永久磁石式回転電機において、永久磁石は、ロータコア100の開口部120に充填された接着剤を介して固定されるのが一般的である。しかしながら、かかる永久磁石の固定方法では、ロータコア100の開口部120に対する接着剤の充填性が悪い場合、回転電機の起動時、停止時および負荷の急変時などにおいて、永久磁石130に作用する遠心力により、永久磁石130にぐらつきが発生する問題がある。そして、この永久磁石130のぐらつきに起因して、永久磁石130が破損する可能性がある。また、ロータコア100においても、接着剤の付着した部分に応力が集中して破損するおそれが生じる。
【0004】
また、開口部130に接着剤を充填させるためには、接着剤およびロータコア100の温度、両者間の隙間の寸法、ワーク姿勢などに複雑な管理が必要とされることから、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、最近では、永久磁石とロータコアとの隙間に、より充填性の高い樹脂部材を加圧注入して永久磁石を固定するロータが多数開示されている(たとえば特許文献2,3参照)。たとえば特許文献2は、永久磁石とロータコアとの間に溶融状態のダイカスト充填材を加圧充填して固化させることにより、永久磁石を固定する磁石埋込型のブラシレスDCモータを開示する。
【0006】
詳細には、ロータコアには、各開口部の周方向の寸法を永久磁石の周方向の寸法よりも大きくして、永久磁石の周方向両側方にそれぞれ軸方向に延びる隙間が形成される。そして、当該隙間に溶融状態のダイカスト充填材を加圧充填した後に硬化させ、その合金材により永久磁石を挿入部内に固定する。
【0007】
これによれば、開口部の周方向の寸法を永久磁石の幅寸法よりも大きくしておくことで、永久磁石の幅寸法の変更に対応することができる。また、永久磁石の周方向両側方に形成される隙間に、溶融状態のダイカスト充填材を流し込んで硬化させるようにすることで、永久磁石の幅寸法の変更や寸法公差によるばらつきに拘らず、開口部内に固定できる。
【特許文献1】特開2004−104962号公報
【特許文献2】特開平9−215236号公報
【特許文献3】特開2002−34187号公報
【特許文献4】特開平8−237893号公報
【特許文献5】特開2001−286109号公報
【特許文献6】特開2004−254466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の充填剤を用いた永久磁石の固定方法では、永久磁石、加熱硬化した充填剤、およびロータコアの間の線膨張係数の差により、ロータコアに応力が発生する場合がある。
【0009】
すなわち、永久磁石、充填剤およびロータコアは、それぞれ材質が異なるため、異なる線膨張係数を有する。そのため、ロータの製造工程において、永久磁石と開口部との隙間に加圧充填した充填剤を硬化させるための加熱がなされると、各々が互いに異なる変化量で膨張する。そして、充填剤が硬化されると、ロータコアには、開口部の内周面において、充填剤により圧縮される方向に応力が発生する場合がある。
【0010】
また、回転電機の駆動に伴なって発生する熱により永久磁石、充填剤およびロータコアが膨張する際においても、ロータコアには上述した応力が発生し得る。
【0011】
そのため、このような充填剤に起因した応力を受けることにより、ロータコアが大きく変形する可能性がある。そして、ロータコアが変形した場合、ロータコアの外周面とステータの内周面との間に配されたエアギャップの長さが不均一となり、回転電機の出力性能を低下させることになる。
【0012】
また、ロータコアにおいては、図10に示すように、隣り合う開口部130との間に形成されるブリッジ部140に応力が残留するおそれがある。そのため、回転電機の信頼性を低下させるという問題が生じる。
【0013】
詳細には、ブリッジ部は、通常、永久磁石の磁束がその部分を通ってN極からS極に漏洩することによる性能低下を防止するために、出来るだけ幅が小さくなるように設定されている。ところが、上述した応力がブリッジ部に残留することにより、その強度を維持できず、回転電機の信頼性を低下させることになる。
【0014】
この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ロータコアの変形を抑制することができる永久磁石式回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明によれば、永久磁石式回転電機は、ステータと、ステータに対して回転自在に設けられたロータとを備える。ロータは、周方向に沿って形成された複数の開口部を有するロータコアと、各々が各複数の開口部に挿入されて磁極を構成する複数の永久磁石と、各複数の開口部の内周面と各複数の永久磁石の外周面との隙間にそれぞれ加圧充填された充填剤とを含む。ロータコアは、ロータコアの周方向に沿って配され、ロータコアの周方向外方の変形を吸収するように構成された孔部をさらに有する。
【0016】
上記の永久磁石式回転電機によれば、永久磁石を固定させるための充填剤に起因してロータコアに働く応力を、孔部によって吸収可能であることから、ロータコアの変形を抑制することができる。その結果、永久磁石式回転電機の出力性能を確保することができる。
【0017】
この発明によれば、永久磁石式回転電機は、ステータと、ステータに対して回転自在に設けられたロータとを備える。ロータは、周方向に沿って形成された複数の開口部を有するロータコアと、各々が各複数の開口部に挿入されて磁極を構成する複数の永久磁石と、各複数の開口部の内周面と各複数の永久磁石の外周面との隙間にそれぞれ充填された熱硬化性充填剤とを含む。ロータコアは、ロータコアの周方向に沿って配され、ロータコアの周方向外方の変形を吸収するように構成された孔部をさらに有する。
【0018】
上記の永久磁石式回転電機によれば、永久磁石を固定させるための熱硬化性充填剤に起因してロータコアに働く応力を、孔部によって吸収可能であることから、ロータコアの変形を抑制することができる。その結果、永久磁石式回転電機の出力性能を確保することができる。
【0019】
好ましくは、孔部は、ロータコアの磁極間ごとに配される第1の孔部と、ロータコアの磁極の略中心ごとに配される第2の孔部とを含む。
【0020】
上記の永久磁石式回転電機によれば、第1および第2の孔部がロータコアの磁極間および磁極中心に働く応力をそれぞれ吸収可能であるため、ロータコアの当該部分が変形するのを効果的に抑制することができる。
【0021】
好ましくは、第1および第2の孔部は、ロータコア内部を通過するステータによる磁束の磁路を妨げない形状に設定される。
【0022】
上記の永久磁石式回転電機によれば、第1および第2の孔部は、ロータコア内部を通過するステータによる磁束の磁路を阻止しないことから、磁束を減少させることがない。その結果、回転電機の出力トルクの低下を防止することができる。
【0023】
好ましくは、複数の開口部は、一対の開口部ごとに、ロータの回転軸に向かって凸となる略V字形状を形成するように配置される。各複数の永久磁石は、一対の開口部に挿入された状態で単一の磁極を構成する。第1および第2の孔部は、ロータコアの磁極間ごと、およびロータコアの磁極の略中心ごとにそれぞれ配される。
【0024】
上記の永久磁石式回転電機によれば、隣り合う開口部の間に形成されるブリッジ部に応力が残留するのを防止することができる。その結果、ブリッジ部の強度を維持でき、永久磁石式回転電機の信頼性を確保することができる。
【0025】
好ましくは、ロータコアは、回転軸方向に積層された複数の電磁鋼板から構成され、複数の電磁鋼板をかしめるかしめ部材を含む。第1および第2の孔部は、かしめ部材と連続的な形状で設けられる。
【0026】
上記の永久磁石式回転電機によれば、ロータコアの固定手段であるかしめ部材に設けられた孔を、ロータコアに働く応力の吸収手段として利用することにより、孔部の設置が不要となる。したがって、より簡易にロータコアの変形を防止することができる。
【0027】
好ましくは、充填剤は、熱硬化性充填剤である。
上記の永久磁石式回転電機によれば、充填性に優れた熱硬化性充填剤を用いて永久磁石を固定することにより、ロータコアの変形を伴なうことなく、安定的に永久磁石を固定することができる。その結果、永久磁石式回転電機の出力性能および信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、永久磁石を固定させるための充填剤に起因してロータコアに働く応力を、孔部によって吸収可能であることから、ロータコアの変形を抑制することができる。その結果、永久磁石式回転電機の出力性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0030】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に係る永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。なお、図1は、回転軸方向からみたときのロータの拡大図である。
【0031】
図1を参照して、ロータは、図示しない回転軸の外周に設けられたロータコア10と、ロータコア10に配置された永久磁石30とを備える。
【0032】
ロータコア10は、例えば複数枚の電磁鋼板がロータの回転軸方向に積層されて形成される。開口部20は、ロータコア10の周方向に沿って複数個設けられる。なお、開口部20は、ロータコア10を形成する薄板を電磁鋼板から打ち抜く際に、同時に打ち抜かれ、薄板を積層することにより、回転軸と平行に形成される。
【0033】
そして、図1に示すように、開口部20は、隣り合う一対の開口部20が、径方向内方に向かって凸となるV字型となるように、ロータコア10の外周端部に設けられる。そして、隣り合う開口部20の間には、ブリッジ部12が必然的に形成される。なお、開口部20の配置はこれに限らない。
【0034】
開口部20は、略長方形状を有する。永久磁石30は、開口部20に挿入された状態で、充填剤22によりロータコア10に固定される。なお、一対の開口部20に固定された一対の永久磁石30は、永久磁石式回転電機のロータにおいて単一の磁極をなす。
【0035】
充填剤22は、たとえば熱硬化性充填剤からなる。開口部20の内周面と永久磁石30の外周面との間隙に充填剤22を充填した後、加熱することにより充填剤22を硬化させることにより、永久磁石30は、ロータコア10に固定される。なお、充填剤22を充填させる方法としては、開口部20と永久磁石30との間隙に充填剤22を加圧注入する方法、または予め充填剤22が塗布された永久磁石30を開口部20に挿入する方法などが用いられる。
【0036】
ここで、ロータコア10、充填剤22および永久磁石30は、ロータの製造工程において充填剤22を硬化させる際の加熱により、それぞれ膨張する。しかしながら、ロータコア10、充填剤22および永久磁石30は、互いに材質が異なるため、線膨張係数に差を有する。そのため、熱によるその変化量(膨張量)が互いに異なる。その結果、ロータコア10の内周面には、図2で示すように、永久磁石30の外周面外方に向かう応力F1〜F3が発生する。
【0037】
詳細には、図2を参照して、ロータコア10において、開口部20の内周面に働く応力は、永久磁石の主平面に平行に働く応力F1,F2と、永久磁石の主平面の法線方向に働く応力F3とで表わされる。
【0038】
まず、応力F1,F2は、永久磁石30の側面と開口部20の内周面との隙間に充填された充填剤22に起因して発生する応力である。たとえば開口部20が図2に示す形状を有する場合、応力は、隙間の幅が相対的に小さい永久磁石30の角部に応力が集中して働くことなる。
【0039】
次に、応力F3は、永久磁石30の主平面と開口部20の内周面との隙間に充填された充填剤22に起因して発生する応力である。応力F3は、ロータコア10の外周側に向かって作用する。なお、開口部20の内周面には、応力F3とは反対方向に作用する応力も発生し得るが、ロータコア10の変形への影響が応力F3に対して小さいことから、ここでは省略する。
【0040】
そして、これらの応力F1〜F3が開口部20の内周面に発生することにより、ロータコア10は、以下に示すように外周面が径方向外方に変形する可能性がある。
【0041】
図3は、ロータコア10に働く応力の影響を説明するための図である。
図3を参照して、ロータコア10は、図2に示す応力F1〜F3を受けると、その外周面において、領域RGN1,RGN2で示す変形が発生し得る。
【0042】
領域RGN1は、図2における応力F3により生じるロータコア10の変形部分に相当する。ロータコア10には、磁極ごとに、一対の開口部20の各々の内周面に応力F3がロータコア10の外周側に向かって作用する。そのため、ロータコア10には、これらの応力F3の合力が、d軸(磁束が通り易い部分であって、磁極の略中心に相当する。)に沿って径方向外方に作用することになる。その結果、領域RGN1に示すように、ロータコア10の外径がd軸方向に大きくなる変形が生じる。
【0043】
一方、領域RGN2は、図2における応力F1,F2により生じるロータコア10の変形部分に相当する。ロータコア10の磁極間には、一方の磁極の開口部20の一方に働く応力F1と、他方の磁極の開口部20の一方に働く応力F2とが作用する。そして、これらの応力F1,F2の合力がq軸(磁束が通り難い部分であって、磁極間に相当する。)に沿って径方向外方に作用することにより、領域RGN2に示すq軸方向に外径が大きくなる変形が生じる。
【0044】
そして、ロータコア10が図3のように変形し、ロータコア10の外径が部分的に大きくなると、この変形した部分において、ロータコア10の外周面と図示しないステータの内周面との間に配されるエアギャップの幅が狭められる。その結果、エアギャップが周方向に渡って不均一となり、回転電機の出力トルクを低下させる。
【0045】
そこで、本実施の形態は、ロータコア10と永久磁石30との間に介在する充填剤22に起因して発生する応力F1〜F3を吸収するようにロータコア10を形成することを特徴とする。
【0046】
詳細には、再び図1を参照して、ロータコア10には、開口部20とは独立して、回転軸方向(紙面垂直方向)に延在する複数のスリットSLTA,SLTBがさらに配される。本実施の形態において、スリットSLTA、SLTBは、応力が作用する方向に応じて、以下に述べる2つに大別される。
【0047】
まず、スリットSLTAは、ロータコア10に対して、永久磁石30の主平面の法線方向に働く応力F3を吸収するように配される。図1では、スリットSLTAは、図中のd軸上であって、ロータコア10の外周に近い部位(V字型の両端部に相当)に配される。
【0048】
すなわち、ロータコア10には、上述したように、一対の開口部20の各々に働く応力F3の合力が、d軸に沿って径方向外方に作用する。スリットSLTAは、d軸上に位置し、この合成された応力を吸収する。その結果、図3の領域RGN1に示すロータコア10の変形が抑えられる。
【0049】
次に、スリットSLTBは、永久磁石30の主平面と平行に働く応力F1,F2を吸収するように配される。図1では、磁極間であるq軸上に位置するように設けられる。
【0050】
すなわち、ロータコア10の磁極間には、隣接する磁極の開口部20にそれぞれ働く応力F1と応力F2との合力が、q軸に沿って径方向外方に作用する。スリットSLTBは、q軸上に配され、この合成された応力を吸収する。その結果、図3の領域RGN2に示すロータコア10の変形が抑えられる。
【0051】
以上のように、この発明によれば、スリットSLTA,SLTBによってロータコア10に働く応力F1〜F3が効率良く吸収されるため、ロータコア10の変形を抑制することができる。その結果、回転電機におけるエアギャップを均一に保持でき、出力性能を確保することができる。
【0052】
ここで、本実施の形態は、さらに、これらのスリットSLTA,SLTBを、ロータコア10を通過する磁束の流れを考慮して、個々の形状を決定することを特徴とする。
【0053】
詳細には、図1の構成からなるロータコア10を含む回転電機においては、ロータコア10の外周側に配されたステータのコイルが通電されると、ステータによる磁束がロータコア10の内部を通過する。
【0054】
図4および図5は、ステータによる磁束の磁路を説明するための模式図である。
ステータに交流電流を流すと、ステータが生成した回転磁界により、磁束がステータからロータコア10に流れる。ロータコア10を流れるq軸磁束φqは、図4中の矢印で示すように、ロータコア10を円弧状に流れる。また、ロータコア10を流れるd軸磁束φdは、図5中の矢印で示すように、ロータコア10を円弧状に流れる。
【0055】
そして、永久磁石30とステータの磁極との間の磁気吸引力および磁気反発力によってトルクが発生することにより、ロータが回転する。したがって、ロータコア10の内部においてステータによる磁束の磁路が阻止されれば、磁束が減少し、回転電機の出力トルクを低下させることになる。
【0056】
そこで、本実施の形態では、ステータコイルからの磁束がロータコア10で減少されるのを防止すべく、スリットSLTA,SLTBをステータによる磁束の磁路を妨げない形状とする。
【0057】
具体的には、磁極中心に配されるスリットSLTAを、図1に示すように、たとえば一対の永久磁石30に略平行な二辺と外周に沿う一辺とからなる略三角形状とする。略三角形状において、一対の永久磁石30に略平行な二辺に挟まれる角の大きさは、ロータコア10ごとに、磁極の数や一対の永久磁石30の配置などを考慮して、通過する磁束の磁路に沿うように設定される。
【0058】
なお、スリットSLTAの形状は、ステータによる磁束の通過を妨げないものであれば、略三角形状に限定されず、略円状であっても良い。
【0059】
また、磁極間に配されるスリットSLTBを、径方向に長径を有する略楕円形状とする。このとき、略楕円形状の短径、すなわち、周方向の長さは、磁束の通過を妨げないように十分短く設定される。
【0060】
以上のように、この発明によるロータコア10において、スリットSLTA,SLTBは、開口部20の内周面に生じる応力を吸収でき、かつ、ロータコア10を通過する磁束の磁路を妨げないように、その位置および形状が設定される。その結果、充填剤に起因したロータコア10の変形を抑制でき、回転電機の出力性能を確保することができる。
【0061】
また、ロータコア10のブリッジ部12に応力が残留するのを防止でき、信頼性の高い回転電機を実現することができる。
【0062】
なお、ロータコア10に設けられるスリットについては、充填剤に起因して発生する応力の向きとステータによる磁束の磁路とが考慮される限りにおいて、以下の変更例で示される位置および形状を適用することも可能である。
【0063】
[変更例1]
図6は、この発明の実施の形態1の変更例1による永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。
【0064】
図6を参照して、ロータコア10aは、図1のロータコア10におけるスリットSLTBをスリットSLTCに変更したものである。スリットSLTCは、図1のスリットSLTBに対して、q軸上に配される点で共通するが、ロータコア10aの内周側に配される点で異なる。
【0065】
スリットSLTCは、スリットSLTBと同様に、応力F1,F2を吸収する機能を有するものの、その形状は、スリットSLTBよりも大きい。これは、スリットSLTCをロータコア10aの内周側に配することにより、その形状を、ステータによる磁束の磁路の制約を受けることなく設定できることによる。すなわち、本変更例によれば、スリットの設計自由度を向上させることができる。本変更例は、特に、ロータコアに働く応力が相対的に大きい場合や、磁極間の幅が著しく狭い場合に有効である。
【0066】
[変更例2]
図7は、この発明の実施の形態1の変更例2に係る永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。
【0067】
図7を参照して、ロータコア10bには、磁極ごとに単一の開口部20が配される。すなわち、本変更例に係るロータは、磁極が、単一の開口部20に挿入配置された単一の永久磁石からなる点で、磁極がV字型に配置された一対の永久磁石30からなる図1のロータとは相違する。
【0068】
このようなロータの構造において、ロータコア10bに働く応力を吸収するために、スリットSLTDが設けられる。詳細には、図6に示すように、磁極中心であって、ロータコア10の外周側にスリットSTLDが設けられる。
【0069】
スリットSLTDは、スリットSLTAと同様に、応力F3を吸収する機能を有するものの、その形状は、ステータによる磁束の磁路を考慮して、周方向に長径を有する略楕円状に設定される。
【0070】
なお、磁極間に配されるスリットSLTBは、図1におけるスリットSLTBと同一の構造からなる。すなわち、スリットSLTBは、磁極間(q軸上)に配され、応力F1,F2を吸収する。
【0071】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、永久磁石を固定するための充填剤に起因してロータコアに作用する応力をスリットにより吸収することができる。そのため、永久磁石を破損から保護できるとともに、ロータコアの変形を抑制することができる。その結果、永久磁石式回転電機の出力性能を確保することができる。
【0072】
また、ロータコアのブリッジ部に応力を残留するのを防止できることから、信頼性の高い回転電機を実現することができる。
【0073】
[実施の形態2]
図8は、この発明の実施の形態2に係る永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。
【0074】
図8を参照して、ロータコア10cは、複数の開口部20と、かしめ部材40A,40Bとを含む。図7のロータコア10cは、図1のロータコア10のスリットSLTA,SLTBを、かしめ部材40A,40Bに変更したものである。
【0075】
かしめ部材40A,40Bは、具体的には、図9に示すように、回転軸方向に突出したかしめ部分と、かしめ部分に連続的な形状で設けられたスリットSLTEとを有する。かしめ部分とスリットSLTEとは、ロータコア10を形成する薄板を電磁鋼板から打ち抜く際に同時に成形され、薄板を積層することにより、回転軸と平行に形成される。そして、積層された電磁鋼板をかしめることにより、隣り合う電磁鋼板が相互に嵌合されて一体化される。これにより、複数の電磁鋼板は回転軸方向および周方向に固定され、一体のロータコア10cを構成する。このとき、同時に、かしめ部分の両側には、回転軸方向に延在するスリットSLTEが形成される。
【0076】
本実施の形態は、このロータコア10cを構成する複数の電磁鋼板の嵌合手段としてのかしめ部材40A,40Bを、ロータコア10cの応力を吸収するための手段としても利用することを特徴とする。
【0077】
詳細には、図8に示すように、かしめ部材40Aは、磁極中心であって、ロータコア10cの外周側に配される。そして、かしめ部材40AのスリットSLTEが、図1におけるスリットSLTAと同様に応力F3を吸収する働きをする。
【0078】
また、かしめ部材40Bは、磁極間であって、ロータコア10cの外周側に配される。かしめ部材40BのスリットSLTEは、図1におけるスリットSLTBと同様に、応力F1,F2を吸収する働きをする。
【0079】
以上のように、この発明の実施の形態2によれば、既存のロータコアのかしめ部材をロータコアに働く応力の吸収手段として利用することにより、スリットの設置が不要となり、より簡易にロータコアの変形を抑制することができる。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
この発明は、ロータ内に永久磁石を配置した永久磁石式回転電機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明の実施の形態1に係る永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。
【図2】ロータコアに働く応力を説明するための図である。
【図3】ロータコアに働く応力の影響を説明するための図である。
【図4】ステータによる磁束の磁路を説明するための模式図である。
【図5】ステータによる磁束の磁路を説明するための模式図である。
【図6】この発明の実施の形態1の変更例1による永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態1の変更例2に係る永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る永久磁石式回転電機におけるロータの構造を説明する図である。
【図9】図8におけるかしめ部材を説明するための模式図である。
【図10】従来の永久磁石式回転電機におけるロータの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
10,10a〜10c,110 ロータコア、12,140 ブリッジ部、20,120 開口部、22 充填剤、30,130 永久磁石、40A,40B かしめ部材、SLTA〜SLTE スリット。




 

 


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