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発明の名称 モータ制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−43835(P2007−43835A)
公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
出願番号 特願2005−225790(P2005−225790)
出願日 平成17年8月3日(2005.8.3)
代理人 【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
発明者 平井 憲幸 / 鈴木 達也 / 下家 辰爾 / 渡辺 誠一
要約 課題
経年変化や製品の設置環境等によらず、的確にモータ焼損保護を行うことができると共に、モータ推定温度の算出についてのパラメータを容易に調整することができるモータ制御装置を提供する。

解決手段
巻線20aに通電されることによって作動するモータ20と、モータ20の駆動制御,巻線推定温度の算出およびモータ焼損保護を行う制御部3を備えたパワーウインドウ装置1であって、制御部3のコントローラ31は、推定温度記憶手段と、通電時に作動条件に応じて推定温度の温度上昇値を算出する温度上昇値算出手段と、温度上昇値算出手段によって算出された温度上昇値を推定温度記憶手段に記憶された推定温度に加算して推定温度を更新する推定温度更新手段とを備え、温度上昇値算出手段は、温度上昇値を算出するための温度上昇値算定式を複数有し、これら複数の算定式を用いて作動条件に応じて最適な温度上昇値を算出する。
特許請求の範囲
【請求項1】
巻線に通電されることによって作動するモータと、該モータを駆動制御するモータ制御部と、前記モータの巻線の推定温度を算出する推定温度算出部と、前記推定温度が所定の温度を超えた場合に前記モータの焼損保護を行うモータ保護部と、を備えたモータ制御装置であって、
前記推定温度算出部は、
前記推定温度を記憶する推定温度記憶手段と、
前記巻線への通電時に前記モータの作動条件に応じて前記推定温度の温度上昇値を算出する温度上昇値算出手段と、
該温度上昇値算出手段によって算出された温度上昇値を前記推定温度記憶手段に記憶された推定温度に加算して該推定温度を更新する推定温度更新手段と、を備え、
前記温度上昇値算出手段は、前記温度上昇値を算出するための温度上昇値算定式を複数有し、該複数の温度上昇算定式を用いて最適な温度上昇値を算出することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記温度上昇値算出手段は、前記複数の温度上昇値算定式から算出した温度上昇値のうち最も大きいものを最適な温度上昇値として選択することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記温度上昇値算出手段は、前記モータの単位作動時間当たりの温度上昇値を算出し、
前記推定温度更新手段は、前記モータの単位作動時間ごとに前記推定温度を更新することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記温度上昇値算定式は、前記モータの回転速度および印加電圧の1次関数の和で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記温度上昇値算定式は、少なくとも前記モータの回転速度および印加電圧に対する余裕代が付加されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御装置に係り、特に焼損保護のためにモータの推定温度を算出する機能を有するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの焼損保護のために、モータハウジングにバイメタルやPTCといった保護素子を内蔵することが行われている。モータが異常発熱した場合には、この保護素子によって電気回路が遮断され、モータへの通電が停止される。
ところが、上記保護素子をモータ近傍に配設すると、モータ体格が大きくなって装置全体が大型化してしまう。このため、特許文献1に記載のモータ制御装置では、上記保護素子を設けることなく、モータを駆動制御する制御部によって、モータに印加している電圧の大きさおよび印加時間と、前回の推定温度値から、モータの推定温度を算出するように構成している。特許文献1に記載のモータ制御装置では、算出された推定温度が所定の過熱保護温度以上になったときにはモータ駆動が停止され、さらに推定温度が過熱保護解除温度値になるまで停止状態が維持されるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−164472号公報(第3−4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、経年変化等によってモータの作動負荷が設計段階における想定範囲からずれると、これに伴ってモータ回転速度が変化し、算出される推定温度の誤差が大きくなってしまう。これにより、本来停止すべきでないときにモータが焼損保護機能によって停止したり、停止すべきときに停止せずに焼損に至ったりするおそれがあった。
【0005】
また、モータ回転速度に対してモータの連続作動時間を設定し、モータ作動時間がこの連続作動時間を超えた場合に、モータを停止制御するモータ制御装置が提案されている。しかしながら、この場合でも電源電圧の違いや経年変化によって焼損保護機能が過熱状態を誤検出したり、逆に過熱状態を検出せずにモータ焼損に至ったりするおそれがあった。さらに、前記モータ制御装置では、異なったシステムにモータ制御装置を組み込む場合に、モータ回転速度と連続作動時間の特性を再設計し直さなければならず、多大なコストが発生してしまう。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、経年変化や製品の設置環境等によらず、的確にモータ焼損保護を行うことができると共に、モータ推定温度の算出についてのパラメータを容易に調整することができるモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、巻線に通電されることによって作動するモータと、該モータを駆動制御するモータ制御部と、前記モータの巻線の推定温度を算出する推定温度算出部と、前記推定温度が所定の温度を超えた場合に前記モータの焼損保護を行うモータ保護部と、を備えたモータ制御装置であって、前記推定温度算出部は、前記推定温度を記憶する推定温度記憶手段と、前記巻線への通電時に前記モータの作動条件に応じて前記推定温度の温度上昇値を算出する温度上昇値算出手段と、該温度上昇値算出手段によって算出された温度上昇値を前記推定温度記憶手段に記憶された推定温度に加算して該推定温度を更新する推定温度更新手段と、を備え、前記温度上昇値算出手段は、前記温度上昇値を算出するための温度上昇値算定式を複数有し、該複数の温度上昇算定式を用いて最適な温度上昇値を算出することにより解決される。
【0008】
このように本発明では、モータの作動条件に応じて複数の温度上昇算定式から算出される温度上昇値のうち最適な温度上昇値が選択され、これを現在の巻線の推定温度値に加算することにより、推定温度を更新するように構成されている。これにより、モータの作動条件が変動しても最適な温度上昇値によって推定温度を更新していくことができ、確実にモータの焼損保護を図ることが可能である。また、推定温度の更新によって、実際のモータ巻線温度の変動に追従して巻線の推定温度を算出することができるので、更新時期に対応してモータ焼損保護を時期的なずれを生じることなく確実に行うことができる。
【0009】
また、前記温度上昇値算出手段は、前記複数の温度上昇値算定式から算出した温度上昇値のうち最も大きいものを最適な温度上昇値として選択すると好適である。複数算出される温度上昇値のうち最大のものを最適な温度上昇値として選択すれば、推定温度は実際の巻線温度よりも低めに算出されることはないので、モータを焼損させてしまうことがない。
【0010】
また、前記温度上昇値算出手段は、前記モータの単位作動時間当たりの温度上昇値を算出し、前記推定温度更新手段は、前記モータの単位作動時間ごとに前記推定温度を更新するように構成することができる。これにより、確実に実際の巻線温度に推定温度を追従させることができる。
【0011】
また、前記温度上昇値算定式は、前記モータの回転速度および印加電圧の1次関数の和で表されると好適である。このように温度上昇値算定式が、モータの回転速度および印加電圧の1次関数の和であれば、上昇温度の算出が容易となり、処理負担が軽減される。また、温度上昇値算定式の変更も容易となる。
【0012】
また、前記温度上昇値算定式は、少なくとも前記モータの回転速度および印加電圧に対する余裕代が付加されてなると好適である。これにより、モータの回転速度や印加電圧の検出値に誤差が生じても、モータ焼損に至ることを防ぐことができる。また、余裕代を変更することにより、容易に温度上昇値算定式を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のモータ制御装置によれば、モータ作動中の巻線推定温度の算出において、モータ作動条件に応じて複数の温度上昇算定式によって算出された温度上昇値(補正値)の中から選択された最適値を現在の推定温度に加算していくことによって、推定温度を更新していくので、モータの作動条件の変動にかかわらず、確実にモータの推定温度を算出して、モータ焼損保護を行うことができる。また、温度上昇算定式は、モータ回転速度とモータ印加電圧の1次関数の和で表わされるので、設計段階でマージン分を付加することによって、温度上昇算定式の調整を容易に調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する構成、手順等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1〜図7は本発明の一実施形態に係るものであり、図1はパワーウインドウ装置の説明図、図2は図1のパワーウインドウ装置の電気構成図、図3はモータ回転速度と温度勾配の関係を表わすグラフ、図4はモータ発熱温度の時間変化を表わすグラフ、図5,図6は温度上昇値算定式を算出するための説明図、図7はモータ推定温度算出処理の処理フローである。
【0015】
以下に本発明のモータ制御装置をパワーウインドウ装置に適用した一実施形態について説明する。図1に本例のパワーウインドウ装置1(以下、「装置1」という)の説明図、図2にその電気構成図を示す。本例のパワーウインドウ装置1は、車両のドア10に配設される移動部材としてのウインドウガラス11をモータ20の回転駆動により昇降(開閉)作動させるものである。パワーウインドウ装置1は、ウインドウガラス11を開閉駆動する昇降機構2と、昇降機構2の作動を制御するための制御部3と、乗員が作動を指令するための操作スイッチ4を主要構成要素としている。
【0016】
本例では、ウインドウガラス11は不図示のレールに沿って上方の全閉位置と下方の全開位置との間を昇降動作する。
本例の昇降機構2は、ドア10に固定された減速機構を有するモータ20と、モータ20に駆動される扇形状のギヤ21aを備えた昇降アーム21と、昇降アーム21とクロスして枢支される従動アーム22と、ドア10に固定された固定チャンネル23およびウインドウガラス11と一体のガラス側チャンネル24とを主要構成要素としている。
本例のモータ20は、制御部3から電力供給を受けることにより、回転子の巻線20aに通電され、これにより回転子とマグネットを有する固定子との間で磁気吸引作用が生じて回転子が正逆回転するように構成されている。本例の昇降機構2では、モータ20の回動に応じて昇降アーム21および従動アーム22が揺動すると、これらの各端部がチャンネル23,24により摺動規制を受け、Xリンクとして駆動し、ウインドウガラス11を昇降作動させる。
【0017】
本例のモータ20には、回転検出装置(位置検出装置)25が一体に備えられている。回転検出装置25は、モータ20の回転と同期したパルス信号を制御部3へ出力するものである。本例の回転検出装置25は、モータ20の出力軸と共に回動するマグネットの磁気変化を複数のホール素子25aで検出するように構成されている。
制御部3は、このパルス信号によって、ウインドウガラス11の昇降位置を算出する。また、制御部3は、パルス信号の間隔によってモータ20の回転速度(モータ回転速度)、またはこれに対応するウインドウガラス11の昇降速度を算出することができる。
【0018】
なお、本例では、回転検出装置25にホール素子を用いたものを採用しているが、これに限らず、モータ20の回転速度を検出することができれば、エンコーダを採用してもよい。また、本例では、ウインドウガラス11の移動に応じたモータ20の出力軸の回転速度を検出するために、モータ20に回転検出装置25を一体に設けているが、これに限らず、公知の手段によってウインドウガラス11の移動速度を検出するようにしてもよい。
【0019】
本例の制御部3は、コントローラ31と、駆動回路32と、温度センサ33等が基板上に配設された構成となっている。これらには、車両に搭載されるバッテリから作動に必要な電力が供給される。
本例のコントローラ31は、CPU、ROM,RAM等のメモリ、入力回路、出力回路等を備えるマイクロコンピュータで構成されている。CPUは、メモリ,入力回路及び出力回路とバスを介して互いに接続されている。
コントローラ31は、通常時、操作スイッチ4からの操作信号に基づいて駆動回路32を介してモータ20を正逆回転させて、ウインドウガラス11を開閉動作させる。
【0020】
本例の駆動回路32は、FETを備えるICによって構成されており、コントローラ31からの制御信号に基づいて、モータ20への電力供給の極性を切換えている。すなわち、駆動回路32は、コントローラ31から正回転指令信号を受けたときは、モータ20を正回転方向に回転させるようにモータ20へ電力を供給し、コントローラ31から逆回転指令信号を受けたときは、モータ20を逆回転方向に回転させるようにモータ20へ電力を供給する。なお、駆動回路32は、リレー回路を用いて極性を切換えるように構成してもよい。また、駆動回路32がコントローラ31内に組み込まれた構成であってもよい。
【0021】
本例の温度センサ33は、コントローラ31等が配設された基板周辺の温度を検出するものであり、本例では、モータ20から離れた位置に配設されている。
コントローラ31は、温度センサ33からの周辺温度検出信号を受け取り、これに基づいて基板周辺の周辺温度を算出している。
また、モータ制御部としてのコントローラ31は、駆動回路32を介してモータ20へ通電した印加電圧の大きさを検出する不図示の電圧センサを有しており、常時、モータ印加電圧を監視している。また、コントローラ31は、通電時間をカウントしている。
また、上述のようにコントローラ31は、回転検出装置25からのパルス信号によってモータ20の回転速度を監視している。
【0022】
コントローラ31は、メモリに設定された推定温度記憶手段としての温度カウンタに巻線20aの推定温度(モータ推定温度)を記憶している。また、この推定温度を算出するための基準データをメモリ内に記憶している。推定温度算出部としてのコントローラ31は、周辺温度,モータ印加電圧,通電時間,モータ回転速度等とこの基準データおよび現在の推定温度から推定温度の変動分(補正値)を算出し、この変動分を現在の推定温度に加算することによって、新たに推定温度を算出している。この推定温度の算出処理は、所定時間ごとの繰り返し処理によって行われ、この繰り返し処理の時間ごとに推定温度は更新される。
【0023】
そして、モータ保護部としてのコントローラ31は、この推定温度に応じて駆動回路32から巻線20aへの電力供給を停止させて、巻線20aが焼損してしまうことを防止している。このように、本例の装置1では、コントローラ31によって算出した巻線20aの推定温度に基づいて電力供給を停止して、巻線20aを焼損から保護している。本例では、巻線温度検出のためにモータ20本体内にバイメタルやPTCといった比較的大きな保護素子を配置する必要がないので、モータ20を小型化することができる。
【0024】
本例のコントローラ31は、モータ停止状態から巻線20aに通電してモータ20を作動させているときには、所定の繰り返し時間ごとに後述する温度上昇値算定式A1,A2,A3を用いて推定温度の補正値(温度上昇値)を算出し、温度カウンタに記憶された推定温度を更新する。
一方、巻線20aへ通電されないモータ停止中には、コントローラ31は、所定の温度減算処理を行う。この温度減算処理は、推定温度を周辺温度まで減算していく処理であり、温度カウンタの値から所定の補正値(減算温度)を所定時間ごとに減算していく。
【0025】
本例の操作スイッチ4は、2段階操作可能な揺動型スイッチ等で構成され、開スイッチ,閉スイッチ及びオートスイッチを有している。この操作スイッチ4を乗員が操作することにより、コントローラ31へウインドウガラス11を開閉動作させるための指令信号が出力される。
具体的には、操作スイッチ4は、一端側へ1段階操作されると開スイッチがオンされ、ウインドウガラス11を通常開動作(すなわち操作している間だけ開動作)させるための通常開指令信号をコントローラ31へ出力する。また、操作スイッチ4は、他端側へ1段階操作されると閉スイッチがオンされ、ウインドウガラス11を通常閉動作(すなわち操作している間だけ閉動作)させるための通常閉指令信号をコントローラ31へ出力する。
【0026】
コントローラ31は、操作スイッチ4から通常開指令信号を受けている間中、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を通常開動作させる。一方、コントローラ31は、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けている間中(操作スイッチ4が操作されている間中)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を通常閉動作させる。
【0027】
また、操作スイッチ4は、一端側へ2段階操作されると開スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、ウインドウガラス11をオート開動作(すなわち操作を止めても全開位置まで開動作)させるためのオート開指令信号をコントローラ31へ出力する。また、操作スイッチ4は、他端側へ2段階操作されると閉スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、ウインドウガラス11をオート閉動作させるためのオート閉指令信号をコントローラ31へ出力する。
【0028】
また、コントローラ31は、操作スイッチ4からオート開指令信号を受けると、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を全開位置までオート開動作させる。一方、コントローラ31は、操作スイッチ4からオート閉指令信号を受けると、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を全閉位置までオート閉動作させる。
【0029】
次に、本例の装置1における温度上昇値算定式の導出原理について概略説明する。温度上昇値算定式は、モータ作動中のモータ推定温度の温度上昇値を算出するためのものである。
図3は、温度上昇値の算定に用いられる温度上昇値算定式A1,A2,A3のグラフである。直線a1,a2,a3は、それぞれ温度上昇値算定式A1,A2,A3に対応している。図3の縦軸は単位時間当たりの温度上昇値である温度勾配(発熱温度上昇勾配)α(℃/s)を表わしており、横軸はモータ回転速度ω(rad/s)を表わしている。
算定式A1,A2,A3は、モータ印加電圧V(本例では、電源電圧に相当)とモータ回転速度ωを変数とする1次関数の和で表わされ、それぞれ温度勾配α1,α2,α3が算出される。なお、図3ではモータ印加電圧Vを所定の値に設定し、変数をモータ回転速度ωのみとして表示している。
【0030】
このように温度上昇値算定式A1,A2,A3は、モータ印加電圧Vをある固定値としたときには、モータ回転速度ωの一次関数であり、互いに交差するものとなる。
算定式A1,A2,A3で表わされる直線a1,a2,a3は、負の傾きを有しており、傾きの大きさ(絶対値)が大きい順から算定式A1,A2,A3となっている。そして、算定式A1,A2で表わされる直線はモータ回転速度ω1で交差し、算定式A2,A3で表わされる直線はモータ回転速度ω2(ω2>ω1)で交差する。
【0031】
本例では、これらの算定式を用いて算出された温度勾配のうち最適値が選択されるが、本例ではこれらのうちの最大値が最適値として選択され推定温度の補正値として採用される。したがって、モータ回転速度ωがω1以下の場合(超低速回転時)は、算定式A1から算出された値が採用され、モータ回転速度ωがω1〜ω2の場合(低速回転時)は、算定式A2から算出された値が採用され、モータ回転速度ωがω2以上の場合(高速回転時)は、算定式A3から算出された値が採用される。つまり、図3の直線a1,a2,a3のうち、実線部分が実際に最適値として採用されることになる。すなわち、算定式A1〜A3はモータ回転速度に応じて適宜に選択されるものである。
【0032】
上記算定式A1,A2,A3の導出手順は以下の通りである。
モータ20の逆起電力をE(V),逆起電力定数をK(Vs/rad),モータ回転速度をω(rad/s)とすると、モータ20の逆起電力Eとモータ回転速度ωの関係は、
E=K・ω ・・・(式1)
で表わされる。これにより、アーマチャ抵抗をR(Ω),モータ通電電流をI(A)とすると、モータ印加電圧V(V)は、
V=E+R・I=K・ω+R・I ・・・(式2)
で表わされる。
【0033】
式2を用いるとモータ銅損P(W)は、
P=1/2・R・I=(V−K・ω)/2R ・・・(式3)
で表わされる。
モータ20の発熱温度θ(℃)は、モータ20の熱抵抗をU(℃/W),熱容量をC(J/℃)とすると、
θ=P・U・{1−exp(−t/UC)} ・・・(式4)
と時間関数で表わすことができる。図4に発熱温度θを表す曲線を実線で示す。
【0034】
所定時間ごとの繰り返し処理で推定温度を更新する場合は、その更新時の温度上昇勾配(温度変化率)を用いて更新していくことができる。したがって、演算処理を簡略化するために発熱温度θを時間t=0における接線で近似すると、θ´(0)=P/Cであるから、
θ≒(V−K・ω)/2CR・t ・・・(式4)
となる。図4に近似式による発熱温度θを表わす直線を破線で示す。
本例では、この近似式の傾きを推定温度更新時の発熱温度上昇勾配αとして用いる。式4から分かるように、発熱温度上昇勾配αは、モータ印加電圧V,モータ回転速度ω(および逆起電力定数K)を変数とする。
【0035】
さらに、変数部分をx=V−K・ωと定義すると、式4から、
α=x/2CR ・・・(式5)
と表わせる。αはxの2次関数で表わされる。図5は、xに対する発熱温度上昇勾配αの理論上の変化(曲線b)を表わしている。
また、図5には、アーマチャ抵抗Rのバラツキや温度変化,熱容量Cのバラツキ誤差を考慮して、曲線bを近似した直線c1,c2,c3を図示している。上記バラツキとしては、個体差によるバラツキ,経時変動によるバラツキ等がある。これらは、
α=Kxn・x+α0n ・・・(式6)
(ただし、n=1,2,3)
で表わされる。式6ではαはxの1次関数で表わされる。なお、Kxn(n=1,2,3)はそれぞれ直線c1〜c3の傾き、α0n(n=1,2,3)はそれぞれx=0となるα軸との交点の値である。
直線c2,c3はx1で交差し、直線c1,c2はx2(x2>x1)で交差している。また、直線dは実使用上でのxの最大値(x3)を表わしている。
このように曲線bを複数の直線で近似することにより、x(すなわち、V,ω)に対する発熱温度上昇勾配αの算出処理を簡略化することができる。
【0036】
直線c1,c2,c3は、上記バラツキ等を考慮して、曲線bよりも温度勾配の値が大きくなるように+α方向にシフトして設定されている。すなわち、本例では、アーマチャ抵抗Rのバラツキや温度変化,熱容量Cのバラツキ誤差を予め見込んで、巻線20aが焼損温度に至る前に確実に焼損保護を行うことができるように、上記各要素のバラツキに対する余裕代(余裕度)を持たせている。つまり、発熱温度上昇勾配αを表わす曲線と直線c1〜c3で囲まれた範囲は、この余裕代に相当する。
また、xに対する余裕代としては、電圧値を検出する電圧センサや回転検出装置25の誤差、逆起電力定数Kの誤差が考慮されている。すなわち、図6は横軸をモータ回転速度ω,縦軸をモータ印加電圧Vとして、x=0を直線(破線)e1で表示している。
【0037】
逆起電力定数Kのバラツキに対する余裕代を考慮して、Kの代わりにK´(K´>K)を用いたものが直線(破線)e2である。
さらに電圧センサのバラツキに対する余裕代をV,回転検出装置25のバラツキに対する余裕代を−ωと設定すると、図6では直線e2は+V方向にV,−ω方向にωだけシフトする。
逆起電力定数K,電圧センサ,回転検出装置25のバラツキに対して余裕代をとったものは直線e3で表わされる。
【0038】
このように余裕代を設定すると、式6は次式のようになる。
α=Kxn・{(V−V)−K´・(ω−ω)}+α0n ・・・(式7)
(ただし、n=1,2,3)
このようにして算定式A1,A2,A3が導出される。
この式7でモータ印加電圧Vを所定の値に設定し、縦軸に温度勾配α、横軸にモータ回転速度ωをとった場合の温度勾配α(n=1,2,3)の変化が、図3の直線a1〜a3で表わされる。算定式A1〜A3は、モータ回転速度ωおよびモータ印加電圧Vの1次関数の和で表わされるので、余裕代を付加または係数を変更することによって、容易に算定式A1〜A3を調整することが可能である。
【0039】
本例の装置1では、コントローラ31が推定温度を算出している。具体的には、コントローラ31は温度カウンタを有しており、この温度カウンタに所定時間ごとの繰り返し処理で算出した補正値(変動温度)を加算することによって、常時、巻線20aの推定温度を更新している。
コントローラ31は、上述のようにモータ作動時には、周辺温度,モータ印加電圧,通電時間,モータ回転速度等と基準データおよび現在の推定温度から繰り返し処理ごとに、算定式A1〜A3を用いて温度上昇値を算出し、この温度上昇値を現在の温度カウンタに加算して温度カウンタの更新を行っている。そして、コントローラ31は、この温度カウンタが所定温度値に達した場合には、駆動回路32によるモータ20への電力供給を停止させる。
【0040】
次に図7に基づいて、推定温度の更新処理について説明する。
図7に示す処理手順は、コントローラ31によって所定の処理時間ごとに繰り返し行われるものである。
まず、コントローラ31は、ステップS1でモータ20へ電力供給しているか否かを判定する。モータ20へ通電していない場合(ステップS1;No)は、ステップS7でコントローラ31は温度減算処理を行う。モータ温度は、通電されていないときは周辺温度に向けて降下していく。この温度減算処理では、繰り返し処理時間の間に下がる温度降下分(減算温度)を算出して、温度カウンタの値に負の値である減算温度を加算して、温度カウンタの値を更新する。これにより、温度カウンタの値は周辺温度に向けて降下していく。
【0041】
一方、モータ20へ通電している場合(ステップS1;Yes)は、ステップS2でコントローラ31はモータ印加電圧Vを算出する。コントローラ31は不図示の電圧センサによってモータ印加電圧Vを検出する。
モータ印加電圧Vを算出すると、コントローラ31はステップS3でモータ回転速度ωを算出する。コントローラ31は、回転検出装置25からのパルス信号に基づいてモータ回転速度ωを算出する。
【0042】
引き続き温度上昇値算出手段としてのコントローラ31は、予め設定された温度上昇値算定式A1〜A3にステップS2で算出したモータ印加電圧V,ステップS3で算出したモータ回転速度ωを適用して、温度勾配α1,α2,α3を算出する(ステップS4)。本例では、モータ作動条件(モータ印加電圧V,モータ回転速度ω)が経年変化や環境等によって変動しうるので、これを考慮して温度勾配αが算出される。
次に推定温度更新手段としてのコントローラ31は、ステップS4で算出した温度勾配α1,α2,α3のうち最大の温度勾配αmaxを選択する(ステップS5)。
そして、ステップS6で現在の温度カウンタの値に補正値(温度上昇値)を加算して、温度カウンタの値を更新する。補正値は、温度勾配αmaxに繰り返し処理時間を乗算して算出される。
【0043】
温度カウンタの値を更新すると、コントローラ31は、ステップS8で更新された値が予め設定された焼損温度を超えたか否かを判定する。
更新値が焼損温度を超えた場合(ステップS8;Yes)は、ステップS9でコントローラ31は、モータ20への通電を停止させて、モータ20の焼損保護を行う。一方、更新値が焼損温度を超えていない場合(ステップS8;No)は、ステップS10でコントローラ31は焼損保護を行わずにモータ20への通電を継続させる。
なお、本例では焼損保護のためにモータ20への通電を停止しているが、これに限らず、モータ印加電圧Vを低くしたり、通電電流を小さくしたりしてモータ温度が上昇し難くなるように構成して、焼損保護を行ってもよい。
【0044】
上記実施形態では、3つの温度上昇値算定式A1〜A3によって温度勾配αを算出していたが、これに限らず、複数の温度上昇値算定式を設定すればよい。
また、上記実施形態では、本発明をパワーウインドウ装置1に適用した例を示したが、これに限らず、モータを有する装置全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係るパワーウインドウ装置の説明図である。
【図2】図1のパワーウインドウ装置の電気構成図である。
【図3】モータ回転速度と温度勾配の関係を表わすグラフである。
【図4】モータ発熱温度の時間変化を表わすグラフである。
【図5】温度上昇値算定式を算出するための説明図である。
【図6】温度上昇値算定式を算出するための説明図である。
【図7】モータ推定温度算出処理の処理フローである。
【符号の説明】
【0046】
1‥パワーウインドウ装置、2‥昇降機構、3‥制御部、4‥操作スイッチ、
10‥ドア、11‥ウインドウガラス、20‥モータ、20a‥巻線、
21‥昇降アーム、21a‥ギヤ、22‥従動アーム、23,24‥チャンネル、
25‥回転検出装置、25a‥ホール素子、31‥コントローラ、
32‥駆動回路、33‥温度センサ




 

 


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