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発明の名称 ラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−89244(P2007−89244A)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
出願番号 特願2005−271628(P2005−271628)
出願日 平成17年9月20日(2005.9.20)
代理人 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄
発明者 山下 文敏
要約 課題
ラジアル磁気異方性多極磁石の磁極部分の異方性を維持し、磁極間の異方性を小さくする。

解決手段
本発明は架橋間巨大分子を含む垂直磁気異方性薄板磁石の圧延率が規則的に3〜6.4%、並びに6.4〜20%となるように、厚さの異なる磁石を圧延し、然る後、異方性の方向をラジアル方向に転換する。
特許請求の範囲
【請求項1】
架橋間巨大分子を含む垂直磁気異方性薄板磁石の圧延率が3〜6.4%、並びに6.4〜20%の範囲となるように、規則的に厚さの異なる磁石を圧延し、ほぼ一様な厚さの磁石とし、異方性の方向をラジアル方向に転換するラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法。
【請求項2】
磁石粉末がSm2Fe173微粉末と多結晶集合型Nd2Fe14B粒子との混合磁石とする請求項1記載のラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法。
【請求項3】
平行磁界中、滑りを伴う溶融流動条件下で圧縮成形した規則的に厚さの異なる磁石である請求項1記載のラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法。
【請求項4】
薄板磁石が密度5.8Mg/m3以上、最大エネルギー積(BH)max140kJ/m3以上である請求項1記載のラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法に関し、更に詳しくは、永久磁石型モータの高出力化、或いは出力特性を保ちながら薄型化などを図るとともに、回転に伴うトルク脈動を低減するようなラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メルトスパンで得られるNd2Fe14B、αFe/Nd2Fe14B、Fe3B/Nd2Fe14B磁石材料の形態はリボンなどの薄帯や、それを粉砕したフレーク状の粉末に制限される。このため、一般に使用されるバルク状永久磁石とするには材料形態の変換、つまり何らかの方法で薄帯や粉末を特定のバルクに固定化する技術が必要となる。粉末冶金学における基本的な粉末固定手段は常圧焼結であるが、当該リボンは準安定状態に基づく磁気特性を維持する必要があるため常圧焼結の適用は困難である。そのため、もっぱらエポキシ樹脂のような結合剤で特定形状のバルクに固定化することが行われた。例えば、R.W.Leeらは(BH)max111kJ/m3のリボンを樹脂で固定すると(BH)max72kJ/m3の等方性Nd2Fe14B系ボンド磁石ができるとした[R.W.Lee,E.G.Brewer,N.A.Schaffel,“Hot−pressed Neodymium−Iron−Boron magnets”IEEE Trans.Magn.,Vol.21,1958(1985)](非特許文献1参照)。
【0003】
1986年、本発明者らは特開昭62−196057号公報によって上記メルトスパンリボンを粉砕したNd2Fe14B磁石粉末をエポキシ樹脂で固定した(BH)max〜72kJ/m3の小口径環状等方性Nd2Fe14Bボンド磁石が小型モータに有用であることを明らかにした(特許文献1参照)。その後、T.Shimodaも前記小口径環状等方性Nd2Fe14B系ボンド磁石の小型モータ特性をSm−Co系ラジアル異方性ボンド磁石の小型モータ特性と比較し、前者が有用であるとした[T.Shimoda,“Compression molding magnet made from rapid−quenched powder”,PERMANENT MAGNETS 1988 UPDATE,Wheeler Associate INC (1988)](非特許文献2参照)。さらに、小型モータに有用であるという報告がW.Baran[“Case histories of NdFeB in the European community”,The European Business and Technical Outlook for NdFeB Magnets,Nov.(1989)]、G.X.Huang,W.M.Gao,S.F.Yu[“Application of
melt−spun Nd−Fe−B bonded magnet to the micro−motor”,Proc.of the 11th International Rare−Earth Magnets and Their Applications, Pittsburgh,USA,pp.583−595(1990)]、Kasai[“MQ1,2&3 magnets applied to motors and actuators”, Polymer Bonded Magnets’92,Embassy Suite O’Hare−Rosemont,Illinois,USA,(1992)](非特許文献3、4、5参照)などによってなされ、1990年代から、主にOA、AV、PCおよびその周辺機器、情報通信機器の永久磁石型モータ用途の環状磁石として、広く普及した経緯がある。
【0004】
他方では、1980年代からメルトスピニングによる磁石材料の研究が活発に行われ、Nd2Fe14B系、Sm2Fe173系、或いはそれらとαFe、Fe3B系などとの微細組織に基づく交換結合を利用したナノコンポジット材料を含め、多彩な合金組成をミクロ組
織制御した材料に加え、近年ではメルトスピニング以外の急冷凝固法により、粉末形状の異なる等方性希土類磁石粉末も工業的に利用可能になっている[例えば、入山恭彦,“高性能希土類ボンド磁石の開発動向”,文部科学省イノベーション創出事業/希土類資源の有効利用と先端材料シンポジウム,東京,pp.19−26(2002)、B.H.Rabin,B.M.Ma,“Recent developments in Nd−Fe−B powder”,120th Topical Symposium of the
Magnetic Society of Japan,pp.23−28(2001)、B.M.Ma,“Recent powder development at magnequench”,Polymer Bonded Magnets 2002,
Chicago(2002)、S.Hirasawa,H.Kanekiyo,T.Miyoshi,K.Murakami,Y.Shigemoto,T.Nishiuchi,“Structure and magnetic properties of Nd2Fe14B/FexB−type nanocomposite permanent magnets prepared by strip casting”,9th Joint MMM/INTERMAG,CA(2004)FG−05](非特許文献6,7,8,9参照)。また、等方性でありながら(BH)maxが220kJ/m3に達するというDaviesらの報告もある[H.A.Davies,J.I.Betancourt,C.L.Harland,“Nanophase Pr and Nd/Pr based rare−earth−iron− boron alloys”,Proc.of 16th Int.Workshop on Rare−Earth Magnets and Their Applications,Sendai,pp.485−495(2000)](非特許文献10参照)。しかし、工業的に利用可能な急冷凝固粉末の(BH)maxは〜134kJ/m3、等方性Nd2Fe14Bボンド磁石の(BH)maxは、ほぼ80kJ/m3と見積もられる。
【0005】
上記に拘らず、本発明の対象となる永久磁石型モータは電気電子機器の高性能化のもと、更なる薄型化、小型化、高出力化、低振動騒音化、或いは位置制御の高精度化などの要求が絶えない。したがって、等方性希土類ボンド磁石の磁石粉末の(BH)maxに代表される磁気特性の改良では、もはや当該モータの高性能化に有用と言い切れなくなりつつある。よって、このような、等方性希土類ボンド磁石モータの分野では異方性希土類ボンド磁石の永久磁石型モータへの応用の必要性が高まっている[山下文敏,“希土類磁石の電子機器への応用と展望”,文部科学省イノベ−ション創出事業/希土類資源の有効利用と先端材料シンポジウム,東京,(2002)](非特許文献11参照)。
【0006】
ところで、異方性希土類ボンド磁石に用いるSm−Co系磁石粉末はインゴットを粉砕しても大きな保磁力HCJが得られる。しかし、SmやCoは資源バランスの課題が大きく、工業材料としての汎用化には馴染まない。これに対し、NdやFeは資源バランスの観点で有利である。しかし、Nd2Fe14B系合金のインゴットや焼結磁石を粉砕してもHCJは小さい。
【0007】
このため、異方性Nd2Fe14B磁石粉末の作製に関しては、メルトスピニング材料を出発原料とする研究が先行した。
【0008】
1989年、徳永はNd14Fe80-X6GaX(X=0.4〜0.5)を熱間据込加工(Die−upset)したバルクを粉砕しHCJ=1.52MA/mの異方性Nd2Fe14B粉末とし、樹脂で固めて(BH)max127kJ/m3の異方性ボンド磁石を得た[徳永雅亮,“希土類ボンド磁石の磁気特性”,粉体および粉末冶金,Vol.35,pp.3−7,(1988)](非特許文献12参照)。また、1991年、H.SakamotoらはNd14Fe79.85.2Cu1を熱間圧延し、HCJ1.30MA/mの異方性Nd2Fe14B粉末を作製した[H.Sakamoto,M.Fujikura and T.M
ukai,“Fully−dense Nd−Fe−B magnets prepared from hot−rolled anisotropic powders”,Proc.11th Int.Workshop on Rare−earth Magnets and Their Applications,Pittsburg,pp.72−84(1990)](非特許文献13参照)。このように、GaやCuの添加で熱間加工性を向上させ、Nd2Fe14B結晶粒径を制御して高HCJ化した粉末が知られた。1991年、V.Panchanathanらは熱間加工バルクの粉砕法とし、粒界から水素を侵入させNd2Fe14BHXとして崩壊させ、真空加熱で脱水素したHD(Hydrogen Decrepitation)−Nd2Fe14B粒子とし、(BH)max 150 kJ/m3の異方性ボンド磁石とした[M.Doser,V.Panchanacthan,and R.K.Mishra,“Pulverizing anisotropic rapidly solidified Nd−Fe−B materials
for bonded magnets”,J.Appl.Phys.,Vol.70,pp.6603−6805(1991)](非特許文献14参照)。2001年、IriyamaはNd0.137Fe0.735Co0.0670.055Ga0.006を同法で310kJ/m3の粒子とし、(BH)max177kJ/m3の異方性ボンド磁石に改良した[T.Iriyama,“Anisotropic bonded NdFeB magnets made from hot−upset powders”,Polymer Bonded
Magnet 2002,Chicago(2002)](非特許文献15参照)。
【0009】
一方、TakeshitaらはNd−Fe(Co)−Bインゴットを水素中熱処理し、Nd2(Fe,Co)14B相の水素化(Hydrogenation,Nd2[Fe,Co]14BHx)、650〜1000℃で相分解(De composition,NdH2+Fe+Fe2B)、脱水素(Desorpsion)、再結合(Recombination)するHDDR法を提案し[T.Takeshita,and R.Nakayama,“Magnetic properties and micro−structure of the Nd−Fe−B magnet powders produced by hydrogen treatment”,Proc.10th Int. Workshop on Rare−earth Magnets and Their
Applications,Kyoto,pp.551−562(1989)]、1999年にはHDDR−Nd2Fe14B粒子から(BH)max193kJ/m3の異方性ボンド磁石を作製した[K.Morimoto,R.Nakayama,K.Mori,K.Igarashi,Y.Ishii,M.Itakura,N.Kuwano,K.Oki,“Nd2Fe14B−based magnetic powder with high remanence produced by modified HDDR process”,IEEE.Trans.Magn.,Vol.35,pp.3253−3255(1999)](非特許文献16、17参照)。
【0010】
2001年には、MishimaらによってCo−freeのd−HDDR Nd2Fe14B粒子が報告され[C.Mishima,N.Hamada,H.Mitarai,and Y.Honkura,“Development of a Co−free NdFeB anisotropic magnet produced d−HDDR
processes powder”,IEEE.Trans.Magn.,Vol.37,pp.2467−2470(2001)]、N.Hamadaらは(BH)max358kJ/m3の同d−HDDR異方性Nd2Fe14B粒子を150℃、2.5Tの配向磁界中、0.9GPaで圧縮し、密度6.51Mg/m3、(BH)max213kJ/m3の立方体(7mm×7mm×7mm)異方性ボンド磁石を作製している[N.Hamada,C.Mishima,H.Mitarai and Y.Honkura,“Development of anisotropic bonded magnet with 27 MGOe”IEEE.Trans.Magn.,Vol.39,pp.295
3−2956(2003)](非特許文献18、19参照)。しかし、立方体磁石は、一般の永久磁石型モータには適合しない。例えば、肉厚1mm程度の環状、或いは円弧状のラジアル異方性磁石として永久磁石型モータへの形状対応力を高める必要がある。
【0011】
一方、2001年、RD(Reduction&Diffusion)−Sm2Fe173微粉末を用いた(BH)max〜119kJ/m3の射出成形ボンド磁石が報告された[川本淳,白石佳代,石坂和俊,保田晋一,“15MGOe級SmFeN射出成形コンパウンド”,電気学会マグネティックス研究会,(2001)MAG−01−173]。2002年、Ohmoriにより(BH)max323kJ/m3の耐候性付与RD−Sm2Fe173微粉末を使用した(BH)max136kJ/m3の射出成形による異方性磁石も報告された[K.Ohmori,“New era of anisotropic bonded SmFeN magnets”,Polymer Bonded Magnet 2002,Chicago(2002)](非特許文献21参照)。このような射出成形ラジアル異方性による(BH)max80kJ/m3の異方性Sm2Fe173ボンド磁石を応用した表面磁石(SPM)ロータを用いることで、フェライト焼結磁石モータに対して高効率化を実現した報告もある[松岡篤,山崎東吾,川口仁,“送風機用ブラシレスDCモータの高性能化検討”,電気学会回転機研究会,(2001)RM−01−161](非特許文献22参照)。
【0012】
しかし、ラジアル配向磁界は成形型リングキャビティが小口径化(或いは、長尺化)すると、起磁力の多くが漏洩磁束として消費されるため配向磁界が減少する。したがって、配向度の低下に伴って、ボンド磁石や焼結磁石に拘らず小口径(長尺)化に伴ってラジアル方向の(BH)maxが減少する[例えば、清水元治,平井伸之,“Nd−Fe−B系焼結型異方性リング磁石”,日立金属技報,Vol.6,pp.33−36(1990)](非特許文献23参照)。また、均質なラジアル磁界の発生は困難で等方性ボンド磁石に比べて生産性が低い課題もある。
【0013】
しかし、仮にラジアル方向の磁気特性が形状に依存せず、均質配向が可能で、且つ高い生産性が実現できれば永久磁石型モータの高性能化に有用な高(BH)maxラジアル磁気異方性磁石の普及が期待される。
【0014】
そこで、本発明者らは、結合剤と磁石粉末とのコンパウンドを圧縮成形し、自己組織化後に形成した結合剤の架橋間巨大分子を機械的に延伸し、直磁気異方性薄板磁石の可撓性を制御し、その可撓性を利用して異方性の方向をラジアル方向に転換するラジアル磁気異方性磁石の作製技術、並びにその磁気特性を開示した[F.Yamashita,S.Tsutsumi,H.Fukunaga,“Radially Anisotropic
Ring− or Arc−Shaped Rare−Earth Bonded Magnets Using Self−Organization Technique”,IEEE Trans.Magn.,Vol.40,No.4 pp.2059−2064(2004)](非特許文献24参照)。これにより、小口径化(或いは、長尺化)してもラジアル方向の磁気特性が、殆ど低下しないラジアル磁気異方性磁石が製造できるようになった。
【特許文献1】特開昭62−196057号公報
【非特許文献1】R.W.Lee,E.G.Brewer,N.A.Schaffel,“Hot−pressed Neodymium−Iron−Boron magnets”IEEE Trans.Magn.,Vol.21,1958(1985)
【非特許文献2】W.Baran[“Case histories of NdFeB in the European community”,The European Business and Technical Outlook for NdFeB Magnets,Nov.(1989)]
【非特許文献3】T.Shimoda,“Compression molding magnet made from rapid−quenched powder”,PERMANENT MAGNETS 1988 UPDATE,Wheeler Associate INC (1988)
【非特許文献4】G.X.Huang,W.M.Gao,S.F.Yu[“Application of melt−spun Nd−Fe−B bonded magnet to the micro−motor”,Proc.of the 11th International Rare−Earth Magnets and Their Applications, Pittsburgh,USA,pp.583−595(1990)]
【非特許文献5】Kasai[“MQ1,2&3 magnets applied to motors and actuators”, Polymer Bonded Magnets’92,Embassy Suite O’Hare−Rosemont,Illinois,USA,(1992)
【非特許文献6】入山恭彦,“高性能希土類ボンド磁石の開発動向”,文部科学省イノベーション創出事業/希土類資源の有効利用と先端材料シンポジウム,東京,pp.19−26(2002)
【非特許文献7】B.H.Rabin,B.M.Ma,“Recent developments in Nd−Fe−B powder”,120th Topical Symposium of the Magnetic Society of Japan,pp.23−28(2001)
【非特許文献8】B.M.Ma,“Recent powder development at magnequench”,Polymer Bonded Magnets 2002, Chicago(2002)
【非特許文献9】S.Hirasawa,H.Kanekiyo,T.Miyoshi,K.Murakami,Y.Shigemoto,T.Nishiuchi,“Structure and magnetic properties of Nd2Fe14B/FexB−type nanocomposite permanent magnets prepared by strip casting”,9th Joint MMM/INTERMAG,CA(2004)FG−05
【非特許文献10】H.A.Davies,J.I.Betancourt,C.L.Harland,“Nanophase Pr and Nd/Pr based rare−earth−iron− boron alloys”,Proc.of 16th Int.Workshop on Rare−Earth Magnets and Their Applications,Sendai,pp.485−495(2000)
【非特許文献11】山下文敏,“希土類磁石の電子機器への応用と展望”,文部科学省イノベ−ション創出事業/希土類資源の有効利用と先端材料シンポジウム,東京,(2002)
【非特許文献12】徳永雅亮,“希土類ボンド磁石の磁気特性”,粉体および粉末冶金,Vol.35,pp.3−7,(1988)
【非特許文献13】H.Sakamoto,M.Fujikura and T.Mukai,“Fully−dense Nd−Fe−B magnets prepared from hot−rolled anisotropic powders”,Proc.11th Int.Workshop on Rare−earth Magnets and Their Applications,Pittsburg,pp.72−84(1990)
【非特許文献14】M.Doser,V.Panchanacthan,and R.K.Mishra,“Pulverizing anisotropic rapidly solidified Nd−Fe−B materials for bonded magnets”,J.Appl.Phys.,Vol.70,pp.6603−6805(1991)
【非特許文献15】T.Iriyama,“Anisotropic bonded NdFeB magnets made from hot−upset powders”,Polymer Bonded Magnet 2002,Chicago(2002)
【非特許文献16】T.Takeshita,and R.Nakayama,“Magnetic properties and micro−structure of the Nd−Fe−B magnet powders produced by hydrogen treatment”,Proc.10th Int. Workshop on Rare−earth Magnets and Their Applications,Kyoto,pp.551−562(1989)
【非特許文献17】K.Morimoto,R.Nakayama,K.Mori,K.Igarashi,Y.Ishii,M.Itakura,N.Kuwano,K.Oki,“Nd2Fe14B−based magnetic powder with high remanence produced by modified HDDR process”,IEEE.Trans.Magn.,Vol.35,pp.3253−3255(1999)
【非特許文献18】C.Mishima,N.Hamada,H.Mitarai,and Y.Honkura,“Development of a Co−free NdFeB anisotropic magnet produced d−HDDR processes powder”,IEEE.Trans.Magn.,Vol.37,pp.2467−2470(2001)
【非特許文献19】N.Hamada,C.Mishima,H.Mitarai and Y.Honkura,“Development of anisotropic bonded magnet with 27 MGOe”IEEE.Trans.Magn.,Vol.39,pp.2953−2956(2003)
【非特許文献20】川本淳,白石佳代,石坂和俊,保田晋一,“15MGOe級SmFeN射出成形コンパウンド”,電気学会マグネティックス研究会,(2001)MAG−01−173
【非特許文献21】K.Ohmori,“New era of anisotropic bonded SmFeN magnets”,Polymer Bonded Magnet 2002,Chicago(2002)
【非特許文献22】松岡篤,山崎東吾,川口仁,“送風機用ブラシレスDCモータの高性能化検討”,電気学会回転機研究会,(2001)RM−01−161
【非特許文献23】清水元治,平井伸之,“Nd−Fe−B系焼結型異方性リング磁石”,日立金属技報,Vol.6,pp.33−36(1990)
【非特許文献24】F.Yamashita,S.Tsutsumi,H.Fukunaga,“Radially Anisotropic Ring− or Arc−Shaped Rare−Earth Bonded Magnets Using Self−Organization Technique”,IEEE Trans.Magn.,Vol.40,No.4 pp.2059−2064(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
例えば、自己組織化した結合剤を含む(BH)max=162kJ/m3、厚さ0.97mmの垂直異方性薄板磁石を非等方的に延伸し、内半径3.55mm、外半径3.65mm、最大肉厚0.88mm、長さ10mmの円弧状とする。この磁石を4MA/mのパルス磁界で磁化したときの磁束は(BH)max72kJ/m3の等方性Nd2Fe14Bボンド磁石の磁束量に対して1.53倍となり、永久磁石型モータの起動トルクを1.4倍以上高
める。しかしながら、モータの回転に伴うトルク脈動も15倍以上に増大する。
【0016】
仮に、磁石形状と鉄心を含む磁気回路の構成が同じであれば、鉄心と磁石との空隙磁束密度は概ね磁石の(BH)maxの比の平方根に比例するから、等方性Nd2Fe14Bボンド磁石を使用した永久磁石型モータの高出力化、或いは、薄型軽量化が可能となる。
【0017】
しかしながら、高(BH)maxのラジアル磁気異方性磁石モータは多極着磁した磁極間で略180度の磁化反転が起こる。従って、鉄心と磁石との空隙磁束密度分布は矩形波状となる。
【0018】
一方、本発明で比較対象とする等方性Nd2Fe14Bボンド磁石は多極着磁の際、多極着磁した環状磁石の各磁極中心に磁化が集中する磁化パターンとなり、磁極間ではラジアル方向磁化ではなく、面内方向の磁化成分が増す。このため、鉄心と磁石との空隙磁束密度分布は擬似正弦波状となる。
【0019】
上記のように、ラジアル磁気異方性磁石モータは等方性Nd2Fe14Bボンド磁石モータに比べて略1.4倍の高出力化や30%程度の薄型軽量化が期待できるものの、強い静磁界と矩形波状の空隙磁束密度分布はモータの回転に伴うトルク脈動を必然的に増加させる。
【0020】
ところで、永久磁石型モータは磁石と対向する鉄心外周表面に電磁巻線を配置する固定子と組み合わせる構造上、磁石と対向する鉄心にはティ−スとスロットが存在する。このため、モータの回転に伴ってパ−ミアンス係数Pcが変化するためにトルク脈動が起こるのである。
【0021】
円弧状磁石でトルク脈動を低減する方法としては、1)磁石の内外周曲率半径を偏心させて磁極中心と磁極間とを不等肉厚とする。2)磁石の磁極間に相当する周方向両端面の角を落して不等肉厚とするなど、磁石の形状(パーミアンス)を変えることで鉄心と円弧状磁石の空隙磁束密度分布を正弦波状に近づけることが可能である。(例えば、中省吾「小型モータにおける永久磁石の応用」、小型モータ技術シンポジウム予稿集,p7,昭58年)。
【0022】
しかしながら、環状磁石に多極着磁を施す場合には円弧状磁石のような研削加工などの手段で磁石形状(パーミアンス)を正確に変えることは困難な場合が多い。したがって、スラスト方向基準で鉄心、または磁石の磁極の何れかをスキューするのが普通である。しかし、鉄心、或いは磁石のスラスト方向距離が例えば約1mmまで薄型化するとなるとスラスト方向基準のスキューが困難となる。すなわち、高(BH)maxのラジアル磁気異方性磁石モータは出力的には薄型化が可能であるが、磁石の偏肉化や磁極スキューなど従来技術の組み合わせによって鉄心と磁石との空隙磁束密度を正弦波状に近づけることが実質的に困難となる。
【0023】
本発明は高(BH)maxを維持し、垂直磁気異方性薄板磁石の異方性の方向をラジアル方向に転換する技術、並びに磁極間配向の具体的な製造条件の開示により、磁極中心部分で発生する鉄心との空隙部分の静磁界の強さを保つことでモータの出力特性の低下を抑制する。
【0024】
加えて、鉄心と磁石との空隙磁束密度分布を正弦波状に近づけてトルク脈動を低減し、低振動騒音、或いは位置制御精度の低下を抑制し得るラジアル磁気異方性多極磁石を提供し、永久磁石型モータの進歩に貢献することを目的とする。
本発明にかかるラジアル磁気異方性多極磁石は、とくに、出力特性を維持しつつ薄型化が
望まれる、例えば高さ1〜2mm程度の環状磁石が採用される各種記録媒体のスピンドルモータのように、偏肉化や磁極のスキュー付与など従来技術の組み合わせでは困難なものであっても、鉄心と磁石との空隙磁束密度を正弦波状に近づけ、出力特性を維持しながらトルク脈動を抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は架橋間巨大分子を含む垂直磁気異方性薄板磁石の圧延率が規則的に3〜6.4%、並びに6.4〜20%の範囲となるように、厚さの異なる磁石を圧延し、ほぼ一様な厚さとしたのちに異方性の方向をラジアル方向に転換するラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法である。
【0026】
とくに、磁石粉末がSm2Fe173微粉末と多結晶集合型Nd2Fe14B粒子との混合磁石とし、前記磁石を本発明にかかる厚さの異なる磁石とするために平行磁界中、滑りを伴う溶融流動条件下で圧縮成形し、密度5.8Mg/m3以上、最大エネルギー積(BH)max140kJ/m3以上とすることが望ましい。
【0027】
これにより、高(BH)maxで薄型化、小型化、高出力化とともにモータのトルク脈動を抑制し、モータの薄型化、小型化、高出力化、低振動騒音化、並びに位置制御性の向上に対応できるラジアル磁気異方性多極磁石を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、架橋間巨大分子を含む垂直磁気異方性薄板磁石の圧延率が規則的に3〜6.4%、並びに6.4〜20%となるように、厚さの異なる磁石を圧延し、然る後、異方性の方向をラジアル方向に転換する。
【0029】
とくに、磁石粉末がSm2Fe173微粉末と多結晶集合型Nd2Fe14B粒子との混合薄板磁石とし、前記磁石を本発明にかかる厚さの異なる磁石とするために平行磁界中で圧縮成形し、密度5.8Mg/m3以上、最大エネルギー積(BH)max140kJ/m3以上とする。
【0030】
これにより、永久磁石型モータのトルク脈動を抑制しながら薄型化、小型化、高出力化、低振動騒音化、並びに位置制御性の向上に対応できるラジアル磁気異方性多極磁石が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
先ず、本発明にかかる磁石に好適な異方性希土類磁石粉末について説明する。本発明で言う多結晶集合型Nd2Fe14B粒子とはHDDR処理(水素分解/再結合)、すなわち、希土類−鉄系合金(R2[Fe,Co]14B)相の水素化(Hydrogenation,R2[Fe,Co]14BHx)、650〜1000℃での相分解(Decomposition,RH2+Fe+Fe2B)、脱水素(Desorpsion)、再結合(Recombination)する、所謂HDDR処理などで作製した磁石粉末を言う。
【0032】
ここで必須元素Rは、10原子%未満では結晶構造がα−Feと同一構造の立方晶組織となるため、高磁気特性、特に高保磁力HCJが得られず、30原子%を超えるとRリッチな非磁性相が多くなり、飽和磁化Jsが低下する。よって、Rは10〜30原子%の範囲が望ましい。加えて必須元素Bは、2原子%未満では菱面体構造が主相となり、高い保磁力HCJは得られず、28原子%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなり、飽和磁化Jsが低下する。よって、Bは2〜28原子%の範囲が望ましい。
【0033】
一方、必須元素Feは、65原子%未満では飽和磁化Jsが低下し、80原子%を超え
ると高い保磁力HCJが得られない。よって、Feは65〜80原子%が望ましい。また、Feの一部をCoで置換することは、磁石粉末の磁気特性を損なうことなく、キュリー温度Tcの上昇によって実使用温度範囲の残留磁化Jrの温度係数を改善できる。しかしながら、CoのFe置換量が20原子%を超えると飽和磁化Jsが減少する。すなわち、Co置換量が5〜15原子%の範囲では、残留磁化Jrが一般に増加するため、高(BH)maxを得るには好ましい。
【0034】
他方では、R、B、Feのほか、工業的生産上不可避な不純物の存在は許容できる。例えば、Bの一部を4重量%以下のC、或いはP、S、Cuの中、少なくとも1種、合計量で2重量%以下の存在は一般的な許容範囲である。
【0035】
更に、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Ga、Sn、Zr、Ni、Si、Zn、Hfのうち少なくとも1種は、当該粉末の保磁力HCJ、減磁曲線の角型性Hk/HCJなどの改善のために適宜添加することができる。また、組成の10原子%〜30原子%を占める希土類元素Rは、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbの中、少なくとも1種、或いは、La、Ce、Sm、Gd、Er、Eu、Tm、Yb、Lu、Yの中、少なくとも1種を含む。通常Rのうち1種をもって足りるが、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタル、シジム等)を使用することもできる。なお、このRは工業上入手可能な範囲で製造上不可避な不純物を含有できる。
【0036】
次に、本発明で言う単磁区粒子型Sm2Fe173微粉末とは、例えば、特開平2−57663号公報に記載される溶解鋳造法、特許第17025441号や特開平9−157803号公報などに開示される還元拡散法より、R−Fe系合金、又はR−(Fe、Co)系合金を製造し、これを窒化した後、微粉砕して得られる。微粉砕はジェットミル、振動ボールミル、回転ボールミルなど、公知の技術を適用でき、フィッシャー平均粒径で1.5μm以下、好ましくは1.2μm以下となるように微粉砕したものを言う。なお、微粉末は発火防止などハンドリング性を向上させるため、例えば特開昭52−54998号公報、特開昭59−170201号公報、特開昭60−128202号公報、特開平3−211203号公報、特開昭46−7153号公報、特開昭56−55503号公報、特開昭61−154112号公報、特開平3−126801号公報等に開示されているような、湿式ないし乾式処理による徐酸化皮膜を表面に形成したものが望ましい。また、特開平5−230501号公報、特開平5−234729号公報、特開平8−143913号公報、特開平7−268632号公報や、日本金属学会講演概要(1996年春期大会、No.446、p184)等に開示されている金属皮膜を形成する方法や、特公平6−17015号公報、特開平1−234502号公報、特開平4−217024号公報、特開平5−213601号公報、特開平7−326508号公報、特開平8−153613号公報、特開平8−183601号公報等による無機皮膜を形成する方法など、1種以上の表面処理Sm2Fe173微粉末であっても差支えない。
【0037】
次に、架橋間巨大分子の形成を図1の分子構造の概念図を用いて説明する。ただし、図において、Aは磁石粉末固定成分としてのオリゴマーで、例えば、エポキシ当量205〜220g/eq,融点70−76℃のノボラック型エポキシ。Bは架橋間巨大分子Dを形成する線状高分子で、例えば、融点80℃,分子量4000〜12000のポリアミド。Cはケミカルコンタクトで、例えば、融点80〜100℃のイミダゾール誘導体である。
【0038】
本発明では、例えば、単磁区粒子型Sm2Fe173微粉末38.20重量部、多結晶集合型Nd2Fe14B粒子57.44重量部にオリゴマーAを1重量部表面被覆し、120〜130℃でポリマーBと溶融混練したのち、室温に冷却して粗粉砕し、ケミカルコンタクトCを0.28重量部混合したコンパウンドを160℃の成形型キャビティに充填し、1.5MA/m以上の平行磁界中、50MPaで圧縮成形し、150℃で20min程度
の熱処理によって架橋間巨大分子Dを含む厚さ1.35mm以下の垂直磁気異方性薄板磁石を作製する。
【0039】
圧縮成形した厚さ1.15mm×幅6mm×長さ60mmの熱処理前の20℃での引張強度は約1.8MPaであるが、20min熱処理したとき,加熱温度が120℃を越えるとケミカルコカタクトCを中心に,オリゴマーA,ポリマーB間で架橋反応が起こって室温での引張強度が増加し始める。そして、150℃で9MPaを越え、160−200℃では約9.5MPaで飽和する。このように、最適化した熱処理によって磁石の引張強度は熱処理前の5倍以上に達する。この例では、オリゴマーAのエポキシ基とポリマーBのアミノ活性水素(−NHCO−)の直接反応もあるが、主反応はケミカルコンタクトC(イミダゾール誘導体)のアミノ活性水素と思われる。
【0040】
上記架橋反応によって、結合剤は3次元網目構造となる。とくに、オリゴマーAは,その極性と高い架橋密度で磁石粉末を強固に接着固定する。また、一方のポリマーBは架橋間巨大分子Dを形成する。そして、この架橋間巨大分子Dが薄板磁石に含まれることによって薄板磁石の圧延が可能となる。また、圧延による架橋間巨大分子Dの延伸が薄板磁石の可撓性の担い手となり、異方性の方向をラジアル方向に転換できる。
【0041】
上記磁石において、本発明は架橋間巨大分子を含む垂直磁気異方性薄板磁石の圧延率(圧下率)が規則的に3〜6.4%、並びに6.4〜20%となるように、厚さの異なる磁石を圧延し、然る後、異方性の方向をラジアル方向に転換するラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法である。
【0042】
ただし、ここで言う圧延率(圧下率)Rは圧延前の厚さをto、圧延後の厚さをtRとしたとき、[(to−tR)/to]×100を意味している。
【0043】
加えて、本発明では圧延率3〜6.4%の範囲が磁極部分、6.4〜20%の範囲が磁極間部分となるようにする。例えば、本発明のラジアル磁気異方性多極磁石の厚さが1mmの場合、圧延前の垂直磁気異方性薄板磁石の磁極に相当する部分は1.03〜1.068mm程度、磁極間に相当する部分は1.068〜1.20mm程度とする。
【0044】
上記において、圧延率が3%未満では磁石の剛性が強く、異方性の方向をラジアル方向に転換する作業が困難になる。また、圧延率が20%を越えると、当該磁石に微細な亀裂が入ったり、或いは多結晶集合型Nd2Fe14B粒子の破砕や微細亀裂などの損傷によって磁石の減磁曲線の角型性(Hk/HcJ)などの低下や、不可逆減磁率の増加など、信頼性が低下する。
【0045】
一方、圧延率6.4%を基準とした理由は、この値よりも小さいと95%の確率で直磁気異方性薄板磁石の圧延による垂直方向の異方性の変化がないからである。
【0046】
なお、圧延率3〜6.4%、並びに6.4〜20%の範囲としたが、この範囲内での具体的な圧延率の設定は適用されるモータなどの要求事項によって適宜選択される。
【0047】
更に、本発明では磁石粉末をSm2Fe173微粉末と多結晶集合型Nd2Fe14B粒子との混合とすることや、前記磁石を本発明にかかる厚さの異なる磁石とするために平行磁界中、滑りを伴う溶融流動条件下で圧縮成形し、密度5.8Mg/m3以上、最大エネルギー積(BH)max140kJ/m3以上とすることが望ましい。
【0048】
以上により、高(BH)maxで薄型化、小型化、高出力化とともにモータのトルク脈動を抑制し、モータの薄型化、小型化、高出力化、低振動騒音化、並びに位置制御性の向上
に対応できるラジアル磁気異方性多極磁石を提供することができる
【実施例1】
【0049】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。ただし、本発明は実施例に限定されない。
【0050】
[1.垂直異方性薄板磁石の作製]
異方性希土類磁石粉末は粒子径38〜150μmの多結晶集合型HDDR−Nd2Fe14B、粒子径3〜5μmの単磁区粒子型RD−Sm2Fe173を使用した。また、結合剤のうち磁石粉末固定成分としてのオリゴマーはエポキシ当量205〜220g/eq、融点70−76℃のノボラック型エポキシ、架橋間巨大分子Dを形成するポリマーには融点80℃、分子量4000〜12000のポリアミド、ケミカルコンタクトは融点80〜100℃のイミダゾール誘導体、また、滑剤として融点約52℃のペンタエリスリトールC17トリエステルを使用した。これは、1分子中1つの水酸基(−OH)、炭素数16のヘキサデシル基(−(CH216CH3)を3つ有する。極性基はポリマーとの相溶性、一方のヘキサデシル基は磁石粉末間や成形型壁面との潤滑を見込んでいる。
【0051】
コンパウンドはオリゴマー1重量%で表面処理したRD−Sm2Fe173 38.20重量%、並びにオリゴマー0.5重量%で表面処理したHDDR−Nd2Fe14B 57.44重量%をポリマー2.80重量%並びに滑剤0.28重量%の融点以上(120℃)で溶融混練し、室温に冷却後、350μm以下に粗粉砕したのち、室温でケミカルコンタクト0.28重量%を乾式混合したものである。
【0052】
次に、上記グラニュールコンパウンドを160℃に加熱し、1.4MA/m以上の平行磁界中、滑りを伴う溶融流動状態で50MPaで圧縮し、厚さ1.03mm、密度5.8〜6.0Mg/m3の垂直磁気異方性薄板磁石を作製した。
【0053】
[2.垂直磁気異方性薄板磁石の磁気特性]
図2は50MPaで成形した本発明に準ずる一様な厚さ(1.03mm)、密度5.8Mg/m3のSm2Fe173/Nd2Fe14B磁石の破断面を示す。図から明らかなように、Nd2Fe14B粒子はSm2Fe173微粉末よって隔離され、Nd2Fe14B粒子の成形加工での破砕や表面の損傷が抑制される。したがって、高温下での減磁曲線のHk/HcJ(Hkは残留磁化Jrの90%磁化に相当する減磁界)が良化することによって、初期不可逆減磁率が減少する。(例えば、F.Yamashita,H.Fukunaga,“Radially−Anisotropic Rare−Earth Hybrid Magnet with Sel−Organizing Binder Consolidated Under a Heat and a Low−Pressure Configuration”,Proc.18th Int.Workshop on High Performance Magnets and Their Applications,Annecy,France,pp.76−83(2004)。
【0054】
なお、1.5GPaの高圧力で圧縮成形したSm2Fe173/Nd2Fe14B磁石はNd2Fe14B粒子の破砕による新生面や表面欠陥の影響でHkの良化は観測されない(K.Noguchi,K.Machida,G.Adachi,“Preparation
and characterization of composite−type bonded magnets of Sm2Fe17Nx and Nd−Fe−B HDDR powders”,Proc.16th Int.Workshop on RE Magnets and Their Applications,pp.845−854,2000)。
【0055】
一方、Sm2Fe173微粉末を単独で用いた磁石は密度5Mg/m3以上のものは知られず、例えば密度4.79Mg/m3で、その(BH)maxは94.7kJ/m3に止まる。(K.Ohmori,S.Hayashi,S.Yoshizawa,“Injection molded Sm−Fe−N anisotropic magnets using unsaturated polyester resin”,Proc.Rare−Earths ’04 in NARA,(2004)JO−02)
これに対し、本発明にかかるSm2Fe173/Nd2Fe14B垂直磁気異方性薄板磁石では容易に高密度化ができるため、140kJ/m3以上の(BH)maxが容易に得られる。
【0056】
図3は1.4MA/mの平行磁界中で圧縮成形した本発明に準ずる一様な厚さ(1.03mm)、密度5.8Mg/m3のSm2Fe173/Nd2Fe14B垂直異方性薄板磁石(試料形状10×10×1.03mm)を4MA/mで面垂直方向へパルス着磁し、試料振動型磁力計(VSM)を用いて反磁界係数Nを0.892とし反磁界補正した減磁曲線である。図のように密度5.8Mg/m3の本発明に準ずる一様な厚さの磁石の減磁曲線は残留磁化Jr=0.93T、HcJ=796kA/m、(BH)max=145kJ/m3であった。
【0057】
ところで、平行磁界(1.4MA/m)中で圧縮成形するとき、図4(b)のように溶融流動の際に速度勾配が生じると見掛けの溶融粘度が増加し、材料と成形型の間にせん断応力が生じる。そして、このせん断応力が薄肉化や配向を阻むと考えられる。薄板磁石1は添加剤PESTEの無極性長鎖脂肪族炭化水素の外部滑性作用で図4(a)のように滑りを伴う溶融流動となる(F.Yamashita,H.Fukunaga:“Anisotropic rare−earth thin bonded magnets prepared by compaction using slip−flow phenomenon”, IEEE Trans. Magn.,vol.41,(in press))。
【0058】
上記効果はDie−upset Nd2Fe14BにおけるGa(M.Tokunaga,N.Nozawa,K.Iwasaki,M.Endoh,S.Tanigawa,and H.Harada,“Ga added Nd?Fe?B sintered and die−up set magnets”,IEEE Trans.Magn.,vol.25,pp.3561?3566,(1989).26)、Cu(T.Mukai,Y.Okazaki,H.Sakamoto,M.Fujikura,and T.Inaguma,“Fully−dense Nd−F−e−B magnets prepared from hot−rolled anisotropic powders”,Proc.11th Int.Workshop on RE Magnets
and Their Applications,pp.72?84(1990))の添加による加工性の向上と同様に本発明にかかる磁石の製造に有効である。
【0059】
上記のような方法を用いれば、本発明にかかる規則的に厚さが変化したSm2Fe173/Nd2Fe14B垂直異方性薄板磁石を平行磁界中での圧縮成形により、容易に製造することができる。
【0060】
[3.圧延による異方性の変化]
図5は本発明に準ずる一様な厚さのSm2Fe173/Nd2Fe14B垂直磁気異方性薄板磁石の圧延を示す。図中1は直径90mmの等速圧延ロール、2は圧延によって磁石に含まれる架橋間巨大分子を一軸延伸する状態、3は延伸方向に生じる可撓性を利用して磁石の異方性の方向を面垂直からラジアル方向に転換した状態を示すが、このような可撓性の発現には圧下率3−5%を要する。
【0061】
ところで、小型モータに使われる等方性Nd2Fe14Bボンド磁石の厚さは、ほぼ1mmである。そこで、厚さ1.03mmの垂直磁気異方性薄板磁石を圧延率0〜20%で圧延し、垂直方向の最大磁化Mmax(垂直)、面内方向の最大磁化Mmax(面内)により、Mmax(垂直)/Mmax(面内)を評価した。
【0062】
圧延前を基準とし、圧延後全ての水準のMmax(垂直)/Mmax(面内)値の母分散の差の検定を行うと、確率95%で差がなかった。そこで、圧延前を基準とし、圧延後全ての水準のMmax(垂直)/Mmax(面内)値の母平均の差の検定を行うためにto値を求めた。
【0063】
図6はMmax(垂直)/Mmax(面内)のto値の圧延率依存性を示す。図から明らかなように、Mmax(垂直)/Mmax(面内)のto値は圧延率と指数近似が成り立つ(相関係数0.986)。また、t(8,0.10)=1.860なる関係から95%の確率で異方性に変化がない圧延率の限界は6.4%と言うことになる。
【0064】
[4.ラジアル磁気異方性多極磁石]
以上のように、本発明にかかるリジッドな垂直磁気異方性薄板磁石の異方性の方向を面垂直からラジアル方向に転換するには3−5%の圧下率を要する。また、95%の確率で異方性に変化がない圧延率の限界が6.4%であるから、先ず図7(a)のように、磁極に相当する部分を基準として磁極間に相当する部分を厚くした垂直方向磁気異方性薄板磁石を作製する。然る後、図7(b)のように磁極に相当する部分を圧延率3〜6.4%、磁極間に相当する部分を圧延率6.4〜20%で一様な厚さの薄板磁石とする。
【0065】
これにより、磁極に相当する部分の異方性の変化なしに磁石全体の可撓性を制御できる。また、磁極間部分の圧延率を6.4〜20%に設定することで当該部分の異方性の程度を低下させ、磁石と鉄心との磁束密度分布が正弦波状に近づけることができる。
【0066】
したがって、モータの高出力化、或いは出力特性を保ちながら薄型化などを図るとともに回転に伴うトルク脈動を低減することができる。
【0067】
なお、本発明にかかるラジアル磁気異方性多極磁石の着磁は異方性の方向をラジアル方向へ転換する前後の何れであっても差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のラジアル磁気異方性多極磁石の製造方法は、回転に伴うトルク脈動を低減したラジアル磁気異方性多極磁石の製造を可能にし、永久磁石型モータの高出力化、薄型化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】架橋間巨大分子鎖の分子構造概念図
【図2】垂直磁気異方性薄板磁石の破断面図
【図3】垂直磁気異方性薄板磁石の減磁曲線図
【図4】滑りを伴う溶融流動の概念図
【図5】圧延を示す外観図
【図6】Mmax(垂直)/Mmax(面内)のto値の圧延率依存性を示す特性図
【図7】圧延による異方性と可撓性の同時制御、極間異方性制御の概念図
【符号の説明】
【0070】
N、Sは磁極の種類、矢印の向きは磁石の磁化方向を表す




 

 


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