米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 電気素子 -> 独立行政法人産業技術総合研究所

発明の名称 電気化学反応セル高密度集積用の多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び電気化学反応システム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−227113(P2007−227113A)
公開日 平成19年9月6日(2007.9.6)
出願番号 特願2006−46095(P2006−46095)
出願日 平成18年2月23日(2006.2.23)
代理人
発明者 山口 十志明 / 鈴木 俊男 / 藤代 芳伸 / 淡野 正信
要約 課題
複数の貫通孔を有する電気化学反応セル高密度集積用多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び電気化学反応システムを提供する。

解決手段
多孔質支持体中に含まれる複数の貫通孔を電気化学反応セルの構造支持体として用いた電気化学反応セル高密度集積用多孔質支持体、該多孔質支持体を用いて電気化学反応単セルを高密度集積した電気化学反応セルスタック、それからなる電気化学反応システム、及びその製造方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
電気化学反応セル用の多孔質支持体であって、(1)ゲル化剤が形成する三次元網目構造により形状保持された多孔質成形体から構成される、(2)電解質層及び電極層をコートするための貫通孔を有する、ことを特徴とする多孔質支持体。
【請求項2】
平行に配列した複数の貫通孔を含む、請求項1に記載の多孔質支持体。
【請求項3】
上記ゲル化剤が、寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選択される少なくとも一種類以上を含む有機化合物である、請求項1に記載の多孔質支持体。
【請求項4】
上記多孔質支持体が、La,Mg,Ca,Sr,Mn,Co,Feの元素を1種類以上含む空気極用の酸化物、又は燃料極用の固体電解質材料とNi、Cu、Agの少なくとも一種類以上を含む複合体もしくはサーメットを材料とする、請求項1に記載の多孔質支持体。
【請求項5】
上記多孔質支持体が、絶縁性酸化物、又はLa,Cr,Ca,Sr,Ni,Mgの元素を2種類以上含む集電体用の酸化物を材料とする、請求項1に記載の多孔質支持体。
【請求項6】
請求項1に記載の多孔質支持体において、該多孔質支持体が電極材料からなり、該多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁上に、電解質材料及びもう一方の電極材料の2層が形成されていることを特徴とする電気化学反応セルないし該電気化学反応セルの集積体からなる電気化学反応セルスタック。
【請求項7】
請求項1に記載の多孔質支持体において、該多孔質支持体が、電極材料以外の酸化物からなり、該多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁上に、電極、電解質材料及びもう一方の電極材料の3層が形成されていることを特徴とする電気化学反応セルないし該電気化学反応セルの集積体からなる電気化学反応セルスタック。
【請求項8】
上記電解質材料が、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む化合物酸化物である、請求項6又は7に記載の電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタック。
【請求項9】
上記電極材料が、空気極用の酸化物、又は燃料極用の複合体もしくはサーメットである、請求項6又は7に記載の電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタック。
【請求項10】
上記電極材料が活性補助材料を含み、該活性補助材料が、Pt,Pd,Ag,Ba,Sr,Ca,Mg,K,Na,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ti,Al,Ga,Nb,Ta,V,Laの元素を少なくとも一種類以上含む金属、もしくはこれらの元素を一種類以上含む酸化物である、請求項9に記載の電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタック。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の電気化学セルスタックを構成要素として含むことを特徴とする電気化学反応システム。
【請求項12】
電気化学反応セル用の多孔質支持体を製造する方法であって、電極材料もしくは電極材料以外の酸化物粉末とゲル化剤を含有するセラミックスラリーを成形型に鋳込み、ゲル化後、乾燥して成形体とすることを特徴とする多孔質支持体の製造方法。
【請求項13】
成形型が有する平行に配列した複数の芯により、平行に配列した複数の貫通孔が形成された成形体を作製する、請求項12に記載の多孔質支持体の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応セル高密度集積用の多孔質支持体に関するものであり、更に詳しくは、平行に配列した複数の貫通孔を有する多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び該セルスタックからなる電気化学反応システムに関するものである。本発明は、ゲル化剤が形成する三次元網目構造により形状保持された多孔質成形体から構成され、電解質層及び電極層をコートして形成するための貫通孔を有する電気化学セル高密度集積用の多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び該セルスタックを構成要素とする電気化学反応システムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学反応システムの代表例として、電解質に酸化物イオン伝導性を有する固体電解質を用いた固体酸化物型燃料電池(以下、「SOFC」という。)がある。このSOFCの基本構造は、空気極/固体電解質/燃料極の3層を接合した単セルより構成されている。
【0003】
SOFC単セルの燃料極に、水素、炭化水素等の燃料ガス、空気極に、酸素、空気等の酸化性ガスが供給されると、燃料極側と空気極側の酸素分圧間に差が生じる。酸素は、空気極においてイオンとなり、固体電解質内を通って燃料極側へ移動し、燃料極に達した酸化物イオンは、燃料ガスと反応して電子を放出する。そのため、燃料極と空気極に負荷を接続すれば、電極化学反応より、直接、電気エネルギーを取り出すことができる。
【0004】
この単セルの幾何学形状は、平板型と管状型とに分類することができる。中でも、管状型SOFC単セルは、管の内側に燃料ガスを流す(内側)燃料極/固体電解質/空気極(外側)及び、管の内側に酸化性ガスを流す(内側)空気極/固体電解質/燃料極(外側)からなる構造形式が知られている。
【0005】
現在、広く使用されている管状型のSOFC単セルは、管径20mm、長さ150mm程度であり、これをインターコネクタや集電用ワイヤーにより複数本集積したSOFC発電装置は、非常に大型なものとなり、単位体積当たりの出力密度が小さいという問題があった。また、この装置を小型化しようとした場合、集積工程がハンドリングの難しさ等により複雑、困難であり、小型化には限界があった(非特許文献1)。
【0006】
また、電気化学反応システムとして、SOFC以外に、排ガス浄化電気化学リアクターや水素製造リアクターが挙げられるが、上記SOFCと同様、電気化学反応単セルの小型化及び高集積化が困難であるため、高効率化を達成できるような新しい集積構造体の開発が求められてきた。
【0007】
ある単位体積当たりに含まれる管状型電気化学反応セルの直径を1/Nに縮小した場合、単セルの表面積は1/Nとなるものの、単位体積当たりに集積できる単セル数がN倍となるため、総面積がN倍の電気化学反応セルスタックが得られる試算となる。しかし、上記のように、従来の電気化学反応セルスタックは、小型化高集積化に限界があり、当技術分野では、電気化学反応単セルの小型化と高集積化を両立させ得る新技術・新製品を開発することが強く要請されていた。
【0008】
【非特許文献1】N.M. Sammes, Y. Du, and R. Bove, J. Power Source, 145, 428-434 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の中で、本発明者らは、電気化学反応単セルの小型化と高集積化を両立させ得る新しい技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、電気化学反応セル高密度集積用の多孔質支持体を開発することに成功して、本発明を完成するに至った。本発明は、電気化学反応セルを容易に集積することができる多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び該セルスタックを構成要素とする電気化学反応システムを提供することを目的とするものである。
【0010】
更に、本発明は、ゲル化剤が形成する三次元網目構造により形状保持された、多孔性と複数の貫通孔を併せ持つ成形体から構成される多孔質支持体を基本骨格として用い、更に、貫通孔の内壁を電解質及び電極材料で多層コートした電気化学反応セルを集積した電気化学反応セルスタック及び該セルスタックを含む電気化学反応システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)電気化学反応セル用の多孔質支持体であって、1)ゲル化剤が形成する三次元網目構造により形状保持された多孔質成形体から構成される、2)電解質層及び電極層をコートするための貫通孔を有する、ことを特徴とする多孔質支持体。
(2)平行に配列した複数の貫通孔を含む、前記(1)に記載の多孔質支持体。
(3)上記ゲル化剤が、寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選択される少なくとも一種類以上を含む有機化合物である、前記(1)に記載の多孔質支持体。
(4)上記多孔質支持体が、La,Mg,Ca,Sr,Mn,Co,Feの元素を1種類以上含む空気極用の酸化物、又は燃料極用の固体電解質材料とNi、Cu、Agの少なくとも一種類以上を含む複合体もしくはサーメットを材料とする、前記(1)に記載の多孔質支持体。
(5)上記多孔質支持体が、絶縁性酸化物、又はLa,Cr,Ca,Sr,Ni,Mgの元素を2種類以上含む集電体用の酸化物を材料とする、前記(1)に記載の多孔質支持体。
(6)前記(1)に記載の多孔質支持体において、該多孔質支持体が電極材料からなり、該多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁上に、電解質材料及びもう一方の電極材料の2層が形成されていることを特徴とする電気化学反応セルないし該電気化学反応セルの集積体からなる電気化学反応セルスタック。
(7)前記(1)に記載の多孔質支持体において、該多孔質支持体が、電極材料以外の酸化物からなり、該多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁上に、電極、電解質材料及びもう一方の電極材料の3層が形成されていることを特徴とする電気化学反応セルないし該電気化学反応セルの集積体からなる電気化学反応セルスタック。
(8)上記電解質材料が、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む化合物酸化物である、前記(6)又は(7)に記載の電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタック。
(9)上記電極材料が、空気極用の酸化物、又は燃料極用の複合体もしくはサーメットである、前記(6)又は(7)に記載の電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタック。
(10)上記電極材料が活性補助材料を含み、該活性補助材料が、Pt,Pd,Ag,Ba,Sr,Ca,Mg,K,Na,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ti,Al,Ga,Nb,Ta,V,Laの元素を少なくとも一種類以上含む金属、もしくはこれらの元素を一種類以上含む酸化物である、前記(9)に記載の電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタック。
(11)前記(6)又は(7)に記載の電気化学セルスタックを構成要素として含むことを特徴とする電気化学反応システム。
(12)電気化学反応セル用の多孔質支持体を製造する方法であって、電極材料もしくは電極材料以外の酸化物粉末とゲル化剤を含有するセラミックスラリーを成形型に鋳込み、ゲル化後、乾燥して成形体とすることを特徴とする多孔質支持体の製造方法。
(13)成形型が有する平行に配列した複数の芯により、平行に配列した複数の貫通孔が形成された成形体を作製する、前記(12)に記載の多孔質支持体の製造方法。
【0012】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、電気化学反応セル用の多孔質支持体であって、ゲル化剤が形成する三次元網目構造により成形保持された多孔質成形体から構成され、電解質層及び電極層をコートするための貫通孔を有することを特徴とするものである。本発明では、上記ゲル化剤が、寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンから選ばれる少なくとも一種類以上を含む有機化合物であること、また、上記多孔質支持体が、平行に配列した複数の貫通孔を含むこと、を好ましい実施態様としている。
【0013】
本発明においては、上記多孔質支持体は、La,Mg,Ca,Sr,Mn,Co,Feの元素を1種類以上含む空気極用の酸化物、又は燃料極用の固体電解質材料とNi、Cu、Agの少なくとも一種類以上を含む複合体もしくはサーメットを材料とすること、あるいは上記多孔質支持体が、絶縁性酸化物、又はLa,Cr,Ca,Sr,Ni,Mgの元素を2種類以上含む集電体用の酸化物を材料とすることが好適なものとして例示される。
【0014】
また、本発明は、上記多孔質支持体を骨格とする電気化学反応セルにおいて、該多孔質支持体が電極材料からなり、該多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁上に、電解質材料及びもう一方の電極材料の2層が形成されていること、あるいは上記多孔質支持体が電極材料以外の酸化物からなり、該多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁上に、電極、電解質材料及びもう一方の電極材料の3層が形成されていること、を特徴とするものである。
【0015】
本発明は、上記電解質材料が、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む化合物酸化物であること、上記電極材料が、空気極用の酸化物、又は燃料極用の複合体もしくはサーメットであること、上記電極材料が活性補助材料を含み、該活性補助材料が、Pt,Pd,Ag,Ba,Sr,Ca,Mg,K,Na,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ti,Al,Ga,Nb,Ta,V,Laの元素を少なくとも一種類以上含む金属、もしくはこれらの元素を一種類以上含む酸化物であること、を好ましい実施態様としている。
【0016】
本発明は、上記多孔質支持体に含まれる複数の貫通孔に電気化学反応セルを形成してセルを集積化した電気化学反応スタック、該スタックを構成要素として含む電気化学反応システム、及び電極材料もしくは電極材料以外の酸化物粉末とゲル化剤を含有するセラミックスラリーを成形型に鋳込み、ゲル化後、乾燥して成形体とすることを特徴とする多孔質支持体の製造方法、の点に特徴を有するものである。更に、本発明は、成形型が有する平行に配列した複数の芯により、平行に配列した複数の貫通孔が形成された成形体を作製することを好ましい実施態様とするものである。
【0017】
現在、広く使用されている管状型電気化学反応単セルは、管径20mm、長さ150mm程度であり、これをインターコネクタや集電用ワイヤーにより複数本集積した電気化学反応システムは、非常に大型なものとなり、単位体積当たりの高効率化が行えないという問題があった。また、これを小型化しようとした場合、集積工程が複雑、困難であり、小型化には限界があった。しかしながら、本発明で示されるように、複数の電気化学反応セルを容易に集積化できる多孔質支持体を使用することによって、単セルの集積体である電気化学反応セルスタックの小型化及び高集積化を同時に達成した電気化学反応システムの構築が可能となる。
【0018】
本発明において、上記の電気化学反応システムとしては、好適には、例えば、固体酸化物燃料電池(SOFC)、排ガス浄化電気化学リアクター、及び水素製造リアクターなどが例示される。上記の電気化学反応セルにおいて、空気極、電解質、及び燃料極の材料を適宜選定することによって、適宜のセル構造を形成することができ、前述のような用途において、高効率な電気化学反応システムを構築することが可能となる。
【0019】
次に、本発明の一実施の形態に係る複数の貫通孔を有する多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び電気化学反応システムについて説明する。初めに、本発明に係る電気化学反応セルスタックについて説明する。電気化学反応システムは、電気化学反応セルを多孔質支持体中に含まれる貫通孔の内壁上へ形成し、集積した電気化学反応セルスタックを、複数配列させることにより構築される。
【0020】
その基本ユニットとなる電気化学反応セルスタックにおいて、本発明では、多孔質支持体中に平行に配列した複数の貫通孔の内壁をセルの支持体として用いる電気化学反応セルの集積構造が使用される。本発明では、単セルサイズを多孔質支持体中に含まれる貫通孔の径で制御し、貫通孔を複数作り込むことによって、複数の単セルを集積化することのできる多孔質支持体とすることができる。この場合、貫通孔の形状により電気化学反応単セルの形状が決定されるが、例えば、管状や角状など目的に応じて適宜の形状を選択することができる。
【0021】
本発明では、多孔質支持体中に含まれる貫通孔を利用した電気化学セルには、大別して2種類の構造を採用することができる。1つは、多孔質支持体自体を電気化学反応セル構造の一部として用い、それらのセルを複数集積することができる構造形式、もう1つは、電気化学反応セル構造の全てを貫通孔の内壁上へ作り込み、それらのセルを複数集積することができる構造形式である。次に、それぞれについて詳細に説明する。
【0022】
図1は、電気化学反応セルスタックの一概略図を例示したものである。図1に示すように、鋳込み成形により作製された多孔質支持体1に複数の貫通孔2が形成され、緻密な電解質層3が、電極材料からなる多孔質支持体1に含まれる貫通孔2の内壁へ形成されている。更に、電解質層3の内壁へ電極層4を形成することによって、多孔質支持体(電極層)1/電解質層3/電極層4の積層構造からなる電気化学反応セル5が構築される。なお、多孔質支持体1中に含まれる複数の貫通孔2の内壁に対し、同様な処理を行うことによって、電気化学反応セル5の集積体である電気化学反応セルスタック6が構築される。
【0023】
ここで、図1に示される多孔質支持体(電極相)1に用いられる電極材料としては、La,Mg,Ca,Sr,Mn,Co,Feの元素を一種類以上含む空気極用の酸化物、又は燃料極用の固体電解質材料とNi,Cu,Agの少なくとも一種類以上を含む複合体もしくはサーメットが好適な代表例として挙げられる。
【0024】
更に、図2に示すように、絶縁性酸化物、もしくはLa,Cr,Ca,Sr,Ni,Mgの元素を2種類以上含む集電用酸化物からなる多孔質支持体7に複数の貫通孔8を形成し、この多孔質支持体7に含まれる貫通孔8の内壁へ、電極層9、緻密な電解質層10、電極層11を形成することによっても、電気化学反応セル12が構築される。
【0025】
なお、多孔質支持体7中に含まれる複数の貫通孔に対し、同様な処理を行うことによって、電気化学反応セル12の集積体である電気化学反応セルスタック13が構築される。ここで、図2に示される多孔質支持体7に用いられる絶縁性酸化物材料としては、アルミナやジルコニアなどの酸化物が好適な代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
次に、多孔質支持体に求められる多孔度について説明する。多孔質支持体を基本骨格とした電気化学反応セルが機能発現するためには、酸素もしくは燃料ガスが多孔質支持体中を拡散し、電極層と緻密な電解質層の界面へ連続的に供給される必要があるため、多孔質支持体にはガス透過性が求められる。更に、図1に示されるように、多孔質支持体1が空気極材料により構成される場合は、気孔だけではなく、材料中もガスが透過できるために、約15%以上の気孔率を有していることが好ましい。また、多孔質支持体1が燃料極材料により構成される場合は、ガス拡散と同時に還元反応が加わるため、気孔率が約10%以上である必要がある。
【0027】
それに対し、図2に示されるように、電極材料以外の材料を用いた多孔質支持体7の場合、ガスの拡散経路が気孔のみに限定されるため、気孔率として約30%以上が求められる。更に、いずれの場合においても、多孔質支持体が電気化学反応スタックの基本骨格を形成することになり、その強度保持を達成するためには、最大気孔率として約60%以下となることが好ましい。
【0028】
次に、本発明に係る多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び電気化学反応システムの製造方法について説明する。本発明のセルスタック等の製造方法は、具体的には、貫通孔を含む多孔質支持体を作製し、その貫通孔の内壁へ電気化学反応セル構造となるように多層コートを施し、焼成する工程から構成される。
【0029】
始めに、本発明の最も特徴となる多孔質支持体の作製方法について説明する。ゲル化剤として作用する寒天、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチンなどに代表される有機高分子を水に溶解させ、得られた水溶液に対し、多孔質支持体を形成するセラミックス粉末を分散させ、多孔質支持体成形用のセラミックスラリーを調製する。なお、ゲル化剤として、成型時に雰囲気制御を必要とするなどの制約を受けるものの、水溶性エポキシ系樹脂など有機モノマー系樹脂を用いることもできる。
【0030】
上記の有機高分子系は、大気雰囲気下において容易にゲル化して三次元網目構造を形成するものの、これまで固形分の低さ、脱脂、焼成時の亀裂発生など問題点があるとされてきた(特開2003−201188号公報)。しかし、本発明では、有機高分子、水、支持体形成用セラミックス粉末を適当な混合比で混ぜ合わせることによって、十分な強度を有する多孔質成形体を得ることができることが分かった。
【0031】
具体的には、ゲル化剤の添加量は水に対する溶解度に制限されるため、例えば、寒天であれば水100gに対して1g〜10gの使用が好ましく、好適には3g〜7gである。セラミックス粉末の添加量は、水溶液中での均質な分散性を考慮して、水100gに対して50g〜200gの使用が好ましく、好適には100g〜160gである。それ以外の有機高分子においても、水に対する有機高分子の溶解度及び粉末の分散性保持を考慮して、水及び有機高分子、セラミックス粉末の好ましい混合比が決定される。なお、本発明では、必要に応じて、炭素粉末等の気孔形成剤をセラミックスラリー中に加えることができる。
【0032】
次に、得られた多孔質支持体成形用のセラミックスラリーを成形型に鋳込み、ゲル化、乾燥し、離型後、多孔質成形体を得る。成形型が平行に配列した複数の芯を有する場合、平行に配列した複数の貫通孔が多孔質成形体中に形成される。芯の形状としては、円柱状や角柱状など様々な形状を任意に用いることができる。得られた多孔質成形体は、必要に応じて、1100℃まで仮焼することができる。これらによって、多孔質成形体又は複数の貫通孔を有する多孔質成形体を得ることができる。
【0033】
次に、多孔質成形体に含まれる貫通孔の内壁に対し、電気化学反応セル構造が形成されるように電極材料及び電解質材料をコートし、乾燥、焼成することによって、図1及び図2に示すような電気化学反応セル及び単セルを集積した電気化学反応セルスタックを得ることができる。上記の工程としては、各層毎にコート及び焼成を繰り返す方法や、複数層をコート後、同時焼成する方法などが例示されるが、特に制限されるものではなく、適宜の方法及び手段を使用することができる。
【0034】
ここで、電解質材料としては、高いイオン導電性を有する材料を使用することが必要であり、これらに用いられる材料としては、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む化合物酸化物が望ましいものとして例示される。
【0035】
また、図1及び図2に記載の電極層4及び電極層11用の材料としては、例えば、上記の空気極用の酸化物、上記の燃料極用の複合体又はサーメット、活性補助材料が例示される。ここで、活性補助材料とは、電気化学反応システムが高効率で作動するように電極性能活性を補助するものである。
【0036】
その材料としては、Pt,Pd,Ag,Ba,Sr,Ca,Mg,K,Na,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ti,Al,Ga,Nb,Ta,V,Laの元素を少なくとも一種類以上含む金属、もしくはこれらの元素を一種類以上含む酸化物が望ましいものとして例示される。
【0037】
本発明では、鋳込み成形により、多孔質支持体の中に孔径1.0mm以下のサブミリ径の円柱形状の精緻な孔を同時形成し、更に、ゾルコーティングにより、多孔質支持体に含まれる孔壁の表面へ電解質層及び電極層を形成する。すなわち、孔壁の表面に電解質材料スラリー、電極材料スラリーをコートし、焼成して、それぞれ厚さ50μm以下の緻密な電解質膜及び適度な空孔を有する電極膜を形成するが、この場合、緻密さや堆積膜厚は、例えば、ゾルコーティング条件と、多孔質支持体の焼結収縮を考慮して、焼成温度により、制御することが可能である。コート膜の緻密さや堆積膜厚は、ガス分離や電極間の絶縁性、電解質/支持体間に生じる残留応力にも大きな影響を与えることから、それらを考慮して好適な範囲に設定する。
【0038】
多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁の表面に電解質層、電極層を多層に積層するためのコート方法は、例えば、ゾルコーティング法が例示されるが、それに限定されるものではなく、適宜のコート方法を任意に使用でき、また、多孔質支持体の気孔率、多孔質支持体に形成した貫通孔の孔径、積層構造の各堆積膜の膜厚や緻密性は任意に設計することができる。これらの好適な数値を例示すると、支持体の気孔率が15〜40%、貫通孔の孔径が0.4〜0.8mm、電解質が緻密かつ厚さ10〜15μmである。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明の多孔質支持体は、ゲル化剤が形成する三次元網目構造を利用して、多孔質形状と複数の貫通孔を同時に達成することができるため、電解質と電極材料の積層構造となる電気化学反応セルの集積化を容易にできるという利点がある。
(2)本発明により、複数の電気化学反応セルを容易に集積化できる多孔質支持体を提供することができる。
(3)単セルを集積した集積体である電気化学反応セルスタックの小型化及び高集積化を同時に達成した電気化学反応システムを提供することができる。
(4)本発明では、孔径1.0mm以下のサブミリ径の管状構造の電気化学反応セルを多孔質支持体の貫通孔の内壁に形成したので、従来のチューブ状セルに見られるようなセル強度の問題から限度があった高気孔率化を容易に達成することが可能である。
(5)多孔質支持体が空気極材料で構成される場合、また、燃料極材料で構成される場合でも、高い気孔率を有する電気化学反応セルスタックの基本骨格を形成することができるので、小型で高性能の電気化学反応セルスタックを容易に構築することができる。
(6)電気化学反応セルを集積した電気化学反応セルスタックを複数組み合わせることにより発電装置等の電気化学反応システムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
ジルコニア粉末30重量部、寒天1重量部、蒸留水30重量部を加熱混合してスラリーを調製した。直径0.8mmφ、長さ1mm長の円柱を規則的に10×10本(計100本)を配列させた15mm×15mm×15mmの型枠内にスラリーを鋳込み、室温にてゲル化成形させた。成形型を取り外し、冷蔵庫内で乾燥することにより、100本の貫通孔を含む多孔質成形体を得た。なお、成形体中のゲル化剤の含有量は3重量%であった。
【0042】
これを、空気中、1300℃で焼成することによって、気孔率40%の多孔質支持体を得た。図3に、得られた多孔質支持体の外観を示す。図3に示されるように、支持体の外径は7.5mm×7.5mm×7.5mmであり、孔径は0.4mmφであった。複数の貫通孔については、図4に、多孔質支持体の断面SEM像を示す。
【実施例2】
【0043】
マンガン酸ランタン粉末30重量部、寒天1重量部、蒸留水20重量部を加熱混合してスラリーを調製した。直径0.9mmφ、長さ1mmの円柱を規則的に5×5本(計25本)を配列させた15mm×15mm×15mmの型枠内にスラリーを鋳込み、室温にてゲル化成形させた。成形型を取り外し、冷蔵庫内で乾燥することにより、25本の貫通孔を含む多孔質成形体を得た。なお、成形体中のゲル化剤の含有量は3重量%であった。これを、空気中、1300℃で焼成することによって、気孔率47%の多孔質支持体を得た。支持体の外径は10mm×10mm×10mmであり、孔径は0.6mmφであった。
【0044】
比較例1
マンガン酸ランタン粉末20重量部、セルロース系高分子3重量部に対し、水9重量部を加えて混練し、押出成形法により貫通孔を有する成形体を得た。保冷庫にて乾燥後、成形体中に含まれるセルロース系高分子は13重量%であった。これを、空気中、1300℃で焼成することにより得られたマンガン酸ランタンセラミックスの気孔率は16%であった。
【0045】
以上の結果から、押出成形法により成形体を作製した場合と比較して、本発明により、ごく少量の有機高分子を用いるだけで、高気孔率を有し、かつ複雑形状の多孔質体が得られることが確認された。
【実施例3】
【0046】
実施例2に記載のマンガン酸ランタン多孔質支持体中に含まれる貫通孔内壁をセリア系電解質層でコートし、その上を更に燃料極用のセリア−酸化ニッケル層にてコートし、これを、空気中、1300℃で焼成して電気化学反応セルスタックを得た。なお、貫通孔内壁上へ形成されたセル構造の断面SEM写真とその拡大図を図5に示す。得られた電気化学反応セルスタックは、作動温度が450℃、燃料ガスが窒素希釈30%水素ガス、燃料ガス流量が10cc/minの条件において、図6に示すように、貫通孔内へ水素ガスを導入後、約5分後から貫通孔最内壁の燃料極が還元し始め、約15分後に開回路電圧0.8V以上を示した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上詳述したように、本発明は、電気化学反応セル高密度集積用の多孔質支持体、それから構成される電気化学反応セルスタック及び電気化学反応システムに係るものであり、本発明により、多孔質成形体に貫通孔を形成した電気化学反応セル高密度集積用の多孔質支持体、該多孔質支持体に含まれる貫通孔の内壁に電解質層及び電極層をコートして形成した電気化学反応セルないし該セルを集積化した電気化学セルスタック、該セルスタックから構成される電気化学反応システムを作製し、提供することができる。本発明は、電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタックを小型化し、高集積化することを可能とする電気化学反応セルないし電気化学反応セルスタックの新しい高密度集積構造を提供するものとして高い技術的意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】電極材料からなる多孔質支持体に対し形成された電気化学反応セル、及びその集積体である電気化学反応セルスタックの概略図を示す。
【図2】電極材料以外の酸化物からなる多孔質支持体に対し形成された電気化学反応セル、及びその集積体である電気化学反応セルスタックの概略図を示す。
【図3】実施例1において作製された複数の貫通孔を有する多孔質支持体の外観を示す。
【図4】実施例1において作製された複数の貫通孔を有する多孔質支持体の断面SEM写真を示す。
【図5】実施例3において、多孔質支持体中に含まれる貫通孔内壁上へ形成されたセル構造の断面SEM写真とその拡大図を示す。
【図6】実施例3において、多孔質支持体中に含まれる貫通孔内壁上へ形成されたセルの開回路電圧を測定した結果を示す。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013