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発明の名称 RFモジュールおよびその作製方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−173257(P2007−173257A)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
出願番号 特願2003−77286(P2003−77286)
出願日 平成15年3月20日(2003.3.20)
代理人
発明者 鶴見 敬章 / 明渡 純 / ナン ソンミン
要約 課題
RFモジュールの基板材料として、セラミックス材料で成膜した基板を利用する。

解決手段
厚い金属ベース11上にエアロゾルデポジション法でセラミックス材料の絶縁膜12を形成して、その上にパターン配線13や既存のチップ部品を実装して二次元回路とした第1二次元回路1を作製し、この第1二次元回路1上に、薄い金属ベース12上に絶縁膜22を形成した上にパターン配線23や既存のチップ部品を実装して二次元回路とした第2二次元回路2と、薄い金属ベース31上に絶縁膜32を形成した上にパターン配線33やモジュール内に実装できない比較的大きな既存のチップ部品を実装した第3二次元回路3を積層して、集積化RFモジュールとする。
特許請求の範囲
【請求項1】
受動部品であるキャパシター、レジスター、インダクターを一つのモジュール内に集積化したRFモジュールであって、
任意形状の金属薄板である金属ベースと、
上記金属ベース上に、300℃以下の低温で1〜50〔μm〕の厚さに形成された絶縁膜と、
上記絶縁膜上に形成された受動部品および/または絶縁膜上に装着された既存のチップ部品と、これらを接続するパターン配線と、からなる二次元回路と、
を備えることを特徴とするRFモジュール。
【請求項2】
上記金属ベース上の絶縁膜に二次元回路を形成した二次元回路基板を複数用意し、個別の二次元回路基板を積層するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のRFモジュール。
【請求項3】
外表面を金属で覆って接地することにより、内部の二次元回路をシールドするようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のRFモジュール。
【請求項4】
上記絶縁膜には誘電損失の少ないセラミックスを用いるものとし、絶縁膜上に形成するマイクロストリップラインは、50Ωのインピーダンス整合を線幅の狭い配線で実現するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のRFモジュール。
【請求項5】
受動部品であるキャパシター、レジスター、インダクターを一つのモジュール内に集積化したRFモジュールの作製方法であって、
任意形状のAl薄板である金属ベース上に、エアロゾルデポジション法によりAl23微粒子を用い室温で厚さ1〜50〔μm〕の厚さの絶縁膜を形成し、この絶縁膜上に二次元回路を形成するようにしたことを特徴とするRFモジュールの作製方法。
【請求項6】
上記絶縁膜の表面には10〔nm〕以上の凹凸を形成し、絶縁膜上にマイクロストリップライン用のPt下地配線を形成し、電界メッキの電流量を1nA〜1μAの範囲で正確に制御すると共にメッキ速度を1分間に0.1μm〜1μmの範囲に抑えた状態で、Pt下地配線上にのみ電界を印加して銅をメッキするようにしたことを特徴とする請求項5に記載のRFモジュールの作製方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、受動部品であるキャパシター、レジスター、インダクターを一つのモジュール内に集積化したRFモジュールとその作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化、高周波化にともない受動部品であるキャパシター、レジスター、インダクターを一つのモジュール内に集積化した集積化RFモジュールを作製するための従来技術として、LTCC(Low Temperature Cofired Ceramics:セラミックス部材の低温同時焼成法)を用いる方法(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)や、セラミックス粒子をポリマー中に分散したポリマーコンポジットを利用する方法がある。
【0003】
【非特許文献1】
今中佳彦、高周波用LTCC材料、マテリアルインテグレーション、Vol.15,No.12,44-48 (2002)
【非特許文献2】
セラミックス電子部品・材料の技術開発、監修 山本博孝、第3章 高周波部品 著者 萬代治文、中井信也、常野宏 シー・エム・シー (2000)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、LTCC技術においては、焼成時の異種物質間の拡散や反応、焼成収縮の違いによる基板そりや剥離、熱膨張率差による内部ひずみなど、多くの問題点が存在する。例えば、LTCCでは、モジュール内部でのノイズ、外部に対し発生するノイズ、および、外部からのノイズに対して、有効な対策を講じることはできない。また、LTCCでは、焼結による材料収縮をさけることが原理的に不可能で寸法精度の確保が困難で、特性周波数の調整やインピーダンス整合を採るのが困難になる。さらに、この技術では能動デバイスをモジュール内部に三次元実装することは不可能である。これらの問題はセラミックスを室温で形成することができれば全て解決可能である。
【0005】
一方、ポリマーコンポジットでは、室温成形が可能なために上述のLTCCによる問題点は回避できるものの、セラミックスをポリマーに分散させるため、セラミックス本来の高い物性を引き出すことができない。一例として、高誘電率材料であるBaTiO3をポリマーに分散した材料では、BaTiO3の比誘電率が3000を越えるにもかかわらず、ポリマー分散後の比誘電率は100にも満たないのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、受動部品であるキャパシター、レジスター、インダクターを一つのモジュール内に集積化したRFモジュールであって、任意形状の金属薄板である金属ベースと、上記金属ベース上に、300℃以下の低温で1〜50〔μm〕の厚さに形成された絶縁膜と、上記絶縁膜上に形成された受動部品および/または絶縁膜上に装着された既存のチップ部品と、これらを接続するパターン配線と、からなる二次元回路と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載のRFモジュールにおいて、上記金属ベース上の絶縁膜に二次元回路を形成した二次元回路基板を複数用意し、個別の二次元回路基板を積層するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2に記載のRFモジュールにおいて、外表面を金属で覆って接地することにより、内部の二次元回路をシールドするようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、上記請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のRFモジュールにおいて、上記絶縁膜には誘電損失の少ないセラミックスを用いるものとし、絶縁膜上に形成するマイクロストリップラインは、50Ωのインピーダンス整合を線幅の狭い配線で実現するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、受動部品であるキャパシター、レジスター、インダクターを一つのモジュール内に集積化したRFモジュールの作製方法であって、任意形状のAl薄板である金属ベース上に、エアロゾルデポジション法によりAl23微粒子を用い室温で厚さ1〜50〔μm〕の厚さの絶縁膜を形成し、この絶縁膜上に二次元回路を形成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載のRFモジュールの作製方法において、上記絶縁膜の表面には10〔nm〕以上の凹凸を形成し、絶縁膜上にマイクロストリップライン用のPt下地配線を形成し、電界メッキの電流量を1nA〜1μAの範囲で正確に制御すると共にメッキ速度を1分間に0.1μm〜1μmの範囲に抑えた状態で、Pt下地配線上にのみ電界を印加して銅をメッキするようにしたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係るRFモジュールとその作成方法の実施形態を説明する。
【0013】
本実施形態に係るRFモジュールは、セラミックスの低温成形プロセスであるAD(Aerosol Deposition)法(後に詳述)を用いて、集積化RFモジュール用の基板と、その上の絶縁膜(静電容量の大きな絶縁物を用いて誘電体膜としても良い)等を形成するものである。AD法を用いて作製した集積化RFモジュールの概略構成を図1に示す。このRFモジュールは、個別に作製した3つの二次元回路(第1二次元回路1,第2二次元回路2,第3二次元回路3)を積層して復号化したものである。
【0014】
第1二次元回路1は、厚い金属ベース11上に絶縁膜12を形成し、その上にパターン配線13や既存のチップ部品を実装したり、受動部品を作製(例えば、誘電体を金属膜で挟む形状とすることでキャパシターを作製)した回路基板である。第2二次元回路2は、薄い金属ベース12上に絶縁膜22を形成し、その上にパターン配線23や既存のチップ部品を実装したり、受動部品を作製した回路基板である。第3二次元回路3は、薄い金属ベース31上に絶縁膜32を形成し、その上にパターン配線33やモジュール内に実装できない比較的大きな既存のチップ部品を実装した回路基板である。
【0015】
上述した第1二次元回路基板1と第2二次元回路基板2と第3二次元回路基板3を、各々絶縁物を介して三次元的に積層した最終的なモジュール形態が図1下部の図である。各層の回路基板はビアホールを介してコンタクトしており、総体としてRFモジュールとなる。なお、本実施形態のRFモジュールにおいては、各層の金属ベース11,21,31を、例えば、金属製の側壁を設けて導通させ、これを接地することでモジュール内が電気的にシールドされる構造とした。これにより、内部回路は外部ノイズに強いと共に、外部への電波漏洩もないので、EMC(Electro Magnetic Compatibility)対策に好適である。また、本実施形態では、3層構造として集積度を高めたが、一層のみの構造としても良い。
【0016】
図1において、RFモジュールの骨格をなす基板は、Al,Cu,SUS,Agなどよりなる金属ベース上にAD法により、単純酸化物(例えば、Al23,SiO2,MgO,ZnOなど)、複酸化物(例えば、SrTiO3, Ba(Mg1/3Nb2/3)O3,Ba(Mg1/3,Ta2/3)O3,TiZrO4,CaTiO3,Mg2TiO4,BaO−TiO2など)、それらの混合物あるいは固溶体、窒化物(例えば、AlN,Si34など)を300℃以下の低温でAD法により厚さ1〜50〔μm〕で堆積させ、金属ベース上に絶縁膜を形成したものである。
【0017】
上記の様に構成した基板上に、既存のチップ部品を実装したり、微細な配線をCu,Agなどの金属をスパッタリング、化学気相蒸着、スクリーン印刷、インクジェット印刷、メッキなどの方法を用いて形成することにより、RFモジュールと成す。
【0018】
また、AD法を用いて誘電体層を形成すれば、室温での成膜が可能で、機械加工で安価に寸法精度が出せる金属材料基板を用いることができる。また、基板上に形成する誘電体膜は、PbZrO3−PbTiO3,BaTiO3,BaZrO3,SrTiO3,Ba(Mg1/3Nb2/3)O3,Ba(Mg1/3,Ta2/3)O3,TiZrO4,CaTiO3,Mg2TiO4,BaO−TiO2などの複酸化物、それらの混合物あるいは固溶体をスパッタリング、化学気相蒸着、あるいはAD法により形成する。
【0019】
このように、本実施形態に係るRFモジュールは、従来品に対して、1)50オームのインピーダンス整合を線幅の狭い配線で実現できるため高密度実装化が可能、2)既存のチップ部品と薄膜形成素子の複合化が可能、3)接地された金属でシールドされるため外部ノイズに強く外部に電波を漏らさない、4)多層化したときに内部の二次元回路は金属シールドで囲まれるため、信号の閉じ込め性が良く、信号のクロストークが低減できる、5)二次元回路を作製した後に複合化が可能なため、回路設計の変更が容易で回路開発期間を短縮できる、6)基板となる金属ベースは、プレス加工などにより微細かつ高い形状精度で安価に製造でき、これにより三次元構造化した際の特性インピーダンスの調整を高精度に調整する事ができ、7)金属部材の再利用が可能、などの利点を有する。
【0020】
上述した本実施形態に係るRFモジュールの従来技術に対する利点1)につき詳述する。そもそも、従来のRF回路には、基板としてプリント配線基板を用いたものとLTCC法で作製される低誘電率セラミックス基板を用いたものがある。前者では、基板材料であるガラスエポキシの比誘電率が約4で厚みが100〜200μmであるため、特性インピーダンスを50Ωにするにはマイクロストリップラインの線幅が100μm以上となり、高集積化が困難となる。また、基板材料のガラスエポキシの誘電損失は2.5%とセラミックスと比較し大きく、高周波での特性劣化を招く。
【0021】
一方、LTCC法では多層基板および配線を800℃以上の温度で一体焼成するため、能動素子の多層基板内部への三次元実装化は不可能である。誘電体材料は、多層基板内部へ厚膜の形態で実装することはできるが、基板材料と焼成収縮、熱膨張係数を一致させるためガラス等の添加物を加えることとなり、低誘電率材料では誘電損失の増加、高誘電率材料では誘電率の低下を招来する。
【0022】
これに対して、本実施形態のRFモジュールでは、基板(金属ベース)上にAD法でセラミックス膜(絶縁膜)を形成した基板材料を用いるので、誘電損失はアルミナの場合で約0.5%とガラスエポキシよりも格段に向上する。また、形成するセラミックス膜の比誘電率は5〜10、厚みは5〜30μmであるため、特性インピーダンスが50Ωでのマイクロストリップ線路幅は5〜40μmとなる。すなわち、本実施形態に係るRFモジュールでは、50Ωのインピーダンス整合を線幅の狭い配線で実現でき、高集積化が可能となる。
【0023】
このように、AD法は室温でのセラミックス膜形成が可能なため、温度耐性のない能動素子を多層基板内部に実装することができる。誘電体材料の多層基板内部への実装においても、焼成工程を経ないため、ガラス等の添加を必要とせず、セラミックス誘電体本来の高い特性(テ損失、高誘電率)をそのまま使うことができる。
【0024】
ここで、従来製品のプリント配線基板上に作製した従来のマイクロストリップラインを特性インピーダンス50Ωとする場合と、本実施形態のRFモジュールの如く金属ベース上に形成したセラミックス膜上のマイクロストリップラインを特性インピーダンス50Ωとする場合との比較を図2(a)に示す。従来品では、絶縁体層(誘電体層)の厚みを薄くできないため、マイクロストリップラインの線幅は、狭くても350μmもの線幅を要するのに対して、AD法で作製した基板では、Al23の厚みを10μmまで薄くできるため、マイクロストリップラインの線幅を10μmオーダー程度と狭くしてもインピーダンス整合が可能であり、高集積化に極めて有利なことが理解できよう。
【0025】
また、従来のLTCC法で配線形成に利用されるスクリーン印刷法で形成したマイクロストリップラインの断面形状と、銅メッキ法で形成したマイクロストリップラインの断面形状との比較を図2(b)に示す。スクリーン印刷法では、断面形状を矩形にすることは不可能であり、これは高周波における伝送特性を劣化させる原因となる。これに対し、メッキ法によれば矩形の断面を持つマイクロストリップラインの形成が可能である。さらに、スクリーン印刷法では現時点での最小線幅は30μm程度であるが、メッキ法では10μm以下の線幅でマイクロストリップラインを形成することができる。このことから、メッキ法によるマイクロストリップラインの形成は、高集積化および高周波帯における伝送特性の向上という2つの利点を有する。
【0026】
更に、本実施形態に係るRFモジュールで用いた金属ベースは、良好な導電特性、熱拡散特性と共に機械的な強度を有する必要があり、このためには金属ベースに一定以上の厚みを持たせなければならないものの、二次元回路を多層化した場合のモジュール寸法としては、全体の厚みが抑制されて薄くできるという特長もある。例えば、モジュールの厚みの限界を3mmとし、3〜10層の多層化を考えると、基板厚みは50〜500μm程度となる。また、誘電体厚みは、誘電体の比誘電率とマイクロストリップ線路の幅から、特性インピーダンス50Ωという条件で決定されるため、比誘電率を5〜20、マイクロストリップ線路幅を5〜50μmとすると、膜厚は2〜40μm程度となる。
【0027】
【実施例】
ここで、上述した構造のRFモジュールの作製についての実施例を、他の技術を用いた場合と対比しつつ詳細に説明する。本実施例での概要は、Al上にAl23膜をAD法により形成し、その上に電解Cuメッキにより微細な配線(マイクロストリップライン)を形成したものである。
【0028】
[エアロゾルデポジション(AD)法によるAl23厚膜の作製]
文献(J. Akedo and M. Lebedev, Recent Res. Devel. Mat. Sci., 2 (2001) 51.,Maretria Japan, 41 (2002) 51 [in japanese])記載のエアロゾルデポジション(AD)法によるAl23厚膜作製を行った。成膜装置の概略構成を図3に示す。原料粉末として、次のような5種類のα−Al23微粒子を使用した。SG160AとSG160B(平均粒径0.4μm、純度99.8%、昭和電工株式会社)、そしてAA−1、AA−02、AA−04(平均粒径1μm、0.2μm、0.4μm、純度99.99%、住友化学株式会社)を原料粉末として、ガラス板、金属Al板、金属Cu板を基板として用い、原料粉末と基板の最適化の実験を行った。
【0029】
エアロゾルデポジション法による成膜工程は次のようである。原料粉末をエアロゾルチャンバーに封入し、真空装置で成膜チャンバーとエアロゾルチャンバーを真空に引き、Al23微粒子の表面に付着している水分を除去する。エアロゾルチャンバーを振動撹拌装置に設置し、エアロゾルチャンバーごと振動させAl23微粒子が拡散した状態を作る。流速制御されたHeガスによってAl23微粒子を成膜チャンバー内のノズルの方まで運搬し、そのノズルから噴射することによりAl23微粒子が加速されて基板に衝突することによって室温で成膜を行った。
【0030】
基板ホルダーは自動送り装置で一定速度でスキャニングさせ目的面積のAl23厚膜を成膜できるようにした。表1にAl23厚膜の成膜条件を示す。
【0031】
【表1】


【0032】
成膜したAl23厚膜の厚さは、膜厚計と断面SEM(Scanning Electron Microscope,JSM-550, JEOL)観察で得られた。また、原料粉末とAl23厚膜の微細構造はSEM観察により行った。相の同定や結晶性はXRD(RINT2100V/PC, Rigaku)を用い調べた。誘電特性はImpedance Analyzer(HP4194A, Hewlett Packard)を用い1kHz〜10MHzの周波数範囲で測定した。
【0033】
[電解メッキ法によるAl23厚膜上への微小マイクロストリップラインの作製]
上述したエアロゾルデポジション法により成膜したAl23厚膜の上に電子線リソグラフィーとCu電解メッキを用い微細マイクロストリップの作製を行った。特性インピーダンスが50Ωとなる微細マイクロストリップ寸法を正確に決定するため電磁界解析ソフト(Sonnet Suite 8.0, High Frequency Electromagnetic Analysis Software, Sonnet Software,Inc.)を用いた。
【0034】
その後、マイクロストリップラインの形成を次の手順のように行った。洗浄したAl23厚膜基板上にスピンコーターを用いてレジストコートし、電子線リソグラフィーでパターニングした後、Ptをスパッタし、Lift−Off法でCu電解メッキにおける陰電極を形成する。その後、電解メッキ装置(ミッツ株式会社製)を用い、Cu電解メッキを施した。均一なCuメッキ膜を得るために硫酸銅メッキ液をヒーター制御により常に25℃の一定温度を保つようにし、Air Blowによる空気撹拌と陰極電極ごと上下運動させながらCu電解メッキを行った。また、0.1μm以下の精度でCuメッキ膜厚の制御するため、電流密度を10-3〜50×10-3〔A/cm2 〕の範囲で変化させ最適化をした。得られたマイクロストリップラインはレーザー顕微鏡により観察をした。
【0035】
[Al23厚膜上への10GHz帯のLow−Pass LC−filterの設計]
エアロゾルデポジション法によるAl23厚膜の集積RFモジュール用基板としての可能性を検討するため、Low−Pass LC−filterのシミュレーションを行った。まず、回路シュミレーションソフト(Microwave Office 2002, Applied Wave Research, Inc.)を用い、filter特性の理論値を求め、Low−Pass LC−filterの回路設計を行った。次に、電磁界解析ソフトを用いてエアロゾルデポジション法によるAl23厚膜の誘電特性を求め、これを用いてLC filter素子としてのfilter特性のシミュレーションを行った。
【0036】
[ガラス基板上のAl23厚膜の成膜]
まず、SG160AとSG160BのAl23微粒子を用い、ガラス基板上への室温でのAl23厚膜の成膜の最適化実験を行った。SG160AのAl23微粒子で成膜すると、Heの流量,エアロゾルチャンバー振動撹拌速度,ノズルと基板との距離などのパラメータを変化させても、図4(a)に示すように、圧粉体のようなものしか得られず、ガラス基板に書いた文字が判読できなくなっていた。その反面、SG160BのAl23微粒子を用いると、図4(b)のような透明の厚膜が得ら、ガラス基板に書いた文字が判読可能であった。その膜厚は約10μmである。
【0037】
その原因を調べるために、SG160AとSG160BのAl23微粒子をSEMで観察を行ったところ、図5に示すように、SG160AのAl23微粒子はSG160BのAl23微粒子と比べ、平均粒径は変わらないものの、100μm程度に大きく凝集しているのが分かった。微粒子の凝集体が大きいと、その粉がクッションのような役割をし、運動エネルギーを吸収されて緻密化が出来なかったため、圧粉体のようになったと考えられる。
【0038】
そこで、SG160BのAl23微粒子を用い、Heの流量、エアロゾルチャンバー振動撹拌速度、ノズルと基板との距離などの成膜装置パラメータの最適化を行った。Heの流量は6〜9〔l/min〕の範囲ではそれほど成膜速度に影響はなかったが、この範囲よりHe流量が多すぎると、粒子の加速が大きくなり過ぎて、成膜中にガラス基板が割れてしまった。
【0039】
成膜速度を向上するためには、エアロゾルチャンバー振動撹拌速度を上げることが効果的であったが、振動撹拌速度を300〔rpm〕以上にすると基板が割れる現象が起こる。なお、ノズルと基板との距離も成膜速度に影響するが、10〜20〔mm〕が適切であった。
【0040】
そこで、適流量値、振動撹拌速度を探したところ、6〔l/min〕,160〔rpm〕であった。しかしながら、成膜装置の成膜条件による膜質の著しい向上には至らなかった。
【0041】
次に、AA−1、AA−02、AA−04のAl23微粒子を用いて成膜を行った。AA−1のAl23微粒子を用いると、ガラス基板がエッチングされた。その原因としては、平均粒径が1μmであるため、その運動エネルギーが大きすぎて膜にはならず、ガラス基板までエッチングされることになったと考えられる。AA−02のAl23微粒子を用いて成膜を行った場合は、成膜後に残留応力で、成膜されたAl23厚膜だけが割れてしまった。AA−04のAl23微粒子を用いて成膜を行った場合は、SG160Bに比べて、成膜速度は半分程度に落ちたものの、透明性が良くなった。これは、高い純度のAl23微粒子を使ったことに起因すると考えられる。
【0042】
[金属基板上へのAl23厚膜の成膜]
集積化RFモジュール用基板として用いる金属ベースには、ground(接地電極)として機能するように抵抗率の低い金属を使用する必要がある。そこで、CuとAlに着目し、SG160BのAl23微粒子を用い、室温で成膜を行った。Cuを基板として使うと圧粉体と膜との中間の状態のような不均一なものが出来た。一方、Al基板の場合は均一なAl23厚膜が得られた。その断面と平面のSEM写真を図6に示す。
【0043】
図6(a)は図6(c)の断面形状から分かるように、緻密な厚膜になっていることが確認できる。なお、図6(a)はas−depoの状態の表面であるが、衝撃によるクレータのような跡が表面に一様に分布しているのが観察される。微小マイクロストリップラインを作製するために表面研摩を行うと、図6(b)に示すように、緻密で平坦な表面となった。
【0044】
上記のようにして室温でAl基板上にエアロゾルデポジション法により作製したAl23厚膜の相の同定と結晶性をXRDで分析した結果は、図7に示すように、原料粉末と同じα−Al23相が得られていた。なお、エアロゾルデポジション法により作製したAl23厚膜(図7(b))では強度が原料粉末(図7(a))より小さくなっているが、それは、数十nmオーダーの結晶子で膜が出来ているからであると思われる。
【0045】
Al基板上に作製した厚さが約10μmのAl23厚膜上にAuスパッタにより直径0.8mmの上部電極を形成し、その誘電特性を1kHz〜10MHzの周波数範囲で測定を行った。測定結果を図8に示す。誘電率の周波数依存性が若干みられるものの、1MHzの周波数での値としては、比誘電率εrが9.5、誘電損失tanδが0.005となった。これは、ほぼバルクAl23の誘電特性の値である、比誘電率εrが9.8、誘電損失tanδが0.0001と非常に近似している事が分かる。この結果より、AD法によってAl基板上に作製したAl23厚膜は、RFモジュール用基板としての誘電特性を満たしていることが明らかとなった。
【0046】
[微小マイクロストリップラインの作製]
Al基板上にエアロゾルデポジション法で作製したAl23厚膜で実際に特性インピーダンスが50Ωとなる微細マイクロストリップを作製するために、まず、そのAl23厚膜の誘電率と誘電損失の値を用い、正確な寸法の決定を電磁界解析ソフトでシミュレーションを行った。
【0047】
解析条件は次のようにした。Al基板はgroundとし、その導電率δ抵抗率ρは3.62×107〔S/m〕、Al23厚膜の膜厚は10〔μm〕、比誘電率εrは9.5、誘電損失tanδは0.005、そしてCuの線路の膜厚は〔5μm〕、導電率δは5.81×107〔S/m〕である。Port1(Zout=50Ω)とPort2(Zin=50Ω)の間の反射係数S11から計算した結果を図9に示す。Cuの線路の幅が11.1μmの場合、数十GHzにおいても特性インピーダンス50Ωを維持しつつける事が確認できた。その結果から10μmのAl23厚膜上に作製する特性インピーダンスが50Ωとなる微細マイクロストリップラインの目標寸法を、Cuの線路の膜厚は5μm、その線幅は11.1μmとした。
【0048】
以上の結果をもとに、Cuの配線をするため、目的寸法の微細マイクロストリップラインが作製できるように、電解Cuメッキにおいて電流密度による膜厚調整と微細パターニングを行った。図10に、メッキ時間とCuの膜厚の関係を示す。
【0049】
電流密度22.9〔A/cm2〕以上においては、密度の低い、表面が粗いCu膜が析出する。これは、電流密度が高すぎることによってメッキ速度が大きすぎるために起こった現象だといえる。メッキ速度が大きいと、陰電極表面におけるCuイオン密度の低下が起こる。また、一定陰極面積内の電荷密度が多くなり過ぎる為に、一定時間内に一定面積から大量のCuが析出する(過剰な析出速度となる)。そのため、Cuが配列する前に析出し、膜内は欠陥が多くなる。さらに、欠陥による凹凸が生じると、その凸部分にさらなる電荷集中がおこり、さらに凸凹が顕著になってくるという現象がおこると予想される。
【0050】
一方、電流密度が22.9〔A/cm2〕以下の電流密度においては、鏡面のCu膜が得られる。しかしながら、微細マイクロストリップラインをAl23厚膜上に電解Cuメッキするためには、析出Cuの形状の角型維持と0.1μm以下のオーダーにおける膜厚制御が更に要求される。
【0051】
上述したように、電流密度値が大きすぎると角への電荷集中が起こり、電界の高い個所はCu成長速度が大きいため、形状の変形が起こってくると考えられる。よって、電流密度を適切な値に抑える事によって角型を保ち、0.1μm以下の膜厚制御が可能な電流密度値の範囲から3.6〔mA/cm2〕という電流密度値を最適電流密度値と設定した。この最適電流密度における成膜速度は、図10に示す通りである。
【0052】
この条件を用い、電子線リソグラフィーでAl23厚膜上にパターニングし、電解Cuメッキを行った。この結果として得られた微細マイクロストリップラインのレーザー顕微鏡観察写真を図11(a)に、レーザー顕微鏡観察データから描出した三次元イメージを図11(b)に示す。この顕微鏡写真より、Cuの伝送線路の幅が約11μmであること、およびCu線路の形状が角型になっていることが確認できた。すなわち、目的の微小マイクロストリップラインをAl23厚膜上にが作製できたのである。
【0053】
[Al23厚膜上への微細マイクロストリップラインの作製]
ここで、実際に、特性インピーダンス50Ωの微細なマイクロストリップラインをAl23厚膜上へ作製する技術につき説明する。低抵抗率Cuを伝送電路材料とし、電解メッキ法とリソグラフィー法によって、良い高周波特性を得るための矩形の形状をもつ特性インピーダンス50Ωの微細マイクロストリップラインの作製した。
【0054】
なお、電解Cuメッキという技術は既に世の中で使用されているものの、本発明者らの研究により、AD法により作製された表面粗さが数十nmオーダーのAl23厚膜表面上に、微細なパターニングするためには次のような条件が必要であることが分かった。
【0055】
1)良好な付着強度を得るには、Al23厚膜の表面粗さは数十nmオーダー以上で、尚且つ高周波領域での伝送特性の劣化が起こらない範囲とする。2)陰電極の材料としてはPtが適切で、その膜厚は200〜300nmオーダーにする。3)電界メッキの電流量を1nA〜1μAの範囲で正確に制御することによってメッキ速度を1分間に0.1μm〜1μmの範囲にする。4)メッキ用基板ホルダーは試料と面接触させるより点接触させた方が良質のCuメッキが得られる。5)再現性を高めるためには、硫酸銅メッキ液の組成を一定に保つようにする。特に、光沢剤はメッキ中に分解される性質を持つため、光沢剤の補給が必要である。
【0056】
メッキ液としては、硫酸銅メッキ液(ミッツ株式会社製)であるが、主な組成としてはキャリアーであるCuイオン確保のためのCuSO4、緩衝液としてH2SO4とHCl、その他に光沢剤などが含まれる。陽極にはCuイオン供給源も兼ねたCu板を配し、陰極には硫酸、塩酸に溶け出さない真鍮または真鍮がCuメッキされた基板ホルダーを使用した。メッキ析出において起こっている主な反応は以下の式で表わされる。
【0057】
析出反応式:Cu2++2e- ⇔ Cu
【0058】
Al23基板上に電界Cuメッキの陰電極となる電極を形成させなければならない。まず、条件出しのため、表面粗さが数nmのサファイア基板(Al23単結晶)を用いた。その基板上に導電性の良い金属をスパッタし、その基板をメッキ用基板ホルダーに設置し、その金属スパッタ膜を電極とするために電解Cuメッキ装置の陰電極と接続させる。基板上に陰電極層としての金属はAuとPtを用い、メッキを行った結果は次のようであった。
【0059】
1)Auを用いた場合。スパッタで200〜300nmのAuを成膜した。電界Cuメッキを行うと、Al23基板とAuスパッタ膜の間に直径1μm以下の気泡の盛り上がりのようなものが発生した。スパッタ電流値を変化させても、スパッタ時間を変化させても、この気泡のようなものが発生した。Auは陰電極として不適切であることが分かった。
【0060】
2)Ptを用いた場合。スパッタで200〜300nmのPtを成膜した時、Auで見られたような気泡現象は発生しなかった。この結果より、気泡現象は、Al23基板とAuスパッタ膜との組み合わせて生ずる特有の現象であると判断できる。Ptスパッタにおいては、気泡のようなものは発生せずに、一様に鏡面性の高いPt膜が観察できた。よって、Ptスパッタ膜を電解Cuメッキの陰電極として採用することとした。
【0061】
電界Cuメッキ装置についている直流安定化電源の可能制御電流値は0.01A〜1.25Aで、Al23厚膜の膜面積は1cm2(1cm角)である。この諸条件に適合する基板ホルダーと陰極電極が必要となる。まず、メッキ用基板ホルダーを作製した。このとき、基板にかかる電流密度が、1cm2のAl23基板に対して、直流安定化電源の発生電流の制御精度が低いので、陰極電極のダミー部分の面積を大きくとる設計も加味して行った。
【0062】
▲1▼ メッキ用基板ホルダーとして、図12に示す、(a),(b),(c)の3種類のホルダーを試作してみた。ホルダー(a)は、基板の周りを全部固定できるように基板寸法より1mm小さい穴を開けた固定用の板(厚み:0.5mm)を用いた。メッキ用基板と基板ホルダーは面接触となる。ホルダー(b)はL字型の真鍮板(厚み:1mm)を2枚組み合わせて、基板を固定する構造になっている。このL字型の真鍮板の側面にV字型の溝を作り基板を嵌め込むようにした。メッキ用基板と基板ホルダーは多くの部分が点接触できるようになる。ホルダー(c)は、基板ホルダーと試料表面のスパッタ金属との接触面積を確保しつつ、試料表面まわりに曲率の高い伝導体を可能な限り減らしていく方法で基板ホルダーの形状設計をした。メッキ用基板と基板ホルダーは点接触となる。
【0063】
基板ホルダー(a),(b)を用いて作製したCu膜はムラのある鏡面の部分が一部しかない粗悪なCu膜しか得られなかった。電流密度を変化させてもメッキ調整しても粗悪なCu膜しか得られないという結論に達した。その原因については次のように考察した。これらの基板ホルダー(a),(b)は多くの面積が試料基板表面より高い位置にあり、尚且つその固定部分には曲率の高いところが多くなっているため、そこに電界の集中(電荷密度が増加)が起こり、試料基板表面のような平坦な部分には曲率が低く電荷密度が低くなる現象が起こると考えられる。それによって基板表面より固定用の真鍮板の部分に異常な電荷集中が起こり、試料基板表面に析出するはずのCu2+も電荷集中が起こっている基板ホルダー端にひきつけられてしまい、試料基板表面に到達するCu2+イオン密度が基板ホルダーに近いほど低くなっていることが予想される。よって、試料基板表面付近のCu2+イオンの分布が不均一になり、ムラのある粗悪なCu膜になったと考えられる。
【0064】
一方、基板ホルダー(c)では、試料表面まわりが曲率の高い伝導体とならないようにした結果、固定ネジ周りにおいて、試料端に半径3.0mm程度の半円の粗悪Cu層ができるものの、その部分以外のCu膜は一様な膜厚の鏡面Cu厚膜となった。すなわち、固定ネジにより生ずる電荷集中の影響を受けない部位においては、膜厚が一様な鏡面Cu厚膜を得られるのである。
【0065】
▲2▼ 陰極電極のダミー面積を確保した。メッキ時に電極に給電するための直流安定化電源は、基板の面積が4×102〜2.25×102〔cm2〕のCuメッキに適した装置である。そのため、被メッキ面積が1〔cm2〕以下の場合、被メッキ面積を拡大させておかなければ、適切なCu膜質とCu膜厚の制御性が得られない。そこで、基板ホルダーの表面自体を陰極電極(被メッキ面積:ダミー)として設計した。また、0.1μm以下の精度でCuメッキ膜厚の制御がしやすいよう、0.1〔μm/min〕程度の成膜速度が電流調整範囲内で得られるようにした。図12の基板ホルダー(c)は、上記の条件を満たすものである。なお、基板面積に適合する直流安定化電源を用いることができれば、ダミー面積の確保は不要である。
【0066】
次いで、電解Cuメッキ条件は、以下のように定める。温度は25℃とし、ヒーター制御により常に25℃一定を保つ。撹拌方法は、AirBlowによる空気撹拌と陰極電極ごと上下運動させる。電流密度は、10-3〜50×10-3〔A/cm2〕の範囲とする。
【0067】
電界Cuメッキは、成膜温度に大きく依存してくるので、成膜温度を常に一定温度に決定しておかないと、成膜条件が温度によって変化してきてしまう上、温度が低すぎたり高すぎたりすると、本実施例で使用するメッキ液においては、うまく成膜できなくなると予想される。よって、ヒーター制御でメッキ液の温度を常に25℃一定に保った。
【0068】
また。Cuは重金属であるため、液中のCuイオン拡散速度は比較的遅い。よって、電界メッキ中に陰極電極付近のCuイオン密度が減少してきてしまう。試料表面に均一なCu膜を得るためには、メッキ液内のイオン密度の偏りを解消させなければならない。そのため、メッキ液液撹拌方法としてAirBlowで常に空気撹拌を行った。またカソードロッカーで陰極電極ごと上下にスライド運動させる事によりメッキ液表面付近のCuイオン密度を一定に保つこととした。
【0069】
メッキ手順としては、先ず、基板を0.1μmのアルミナ研摩粉を用いて表面研摩(表面粗さ:数十nm)し、研摩後に洗浄した基板を90℃で10分間乾燥させ、スパッタ装置を用いてPtを膜厚約200〜300nm程度に成膜してPt薄膜を陰極電極として作製する。基板ホルダーcに試料を固定し、陰極板と接続させ、メッキ槽に浸す。撹拌装置を起動しつつ、始めの10秒間は最低電流密度で放置し、それ以降は最適化電流密度で目的膜厚時間までメッキする。
【0070】
ここで、電流密度とは、出力電流値を被メッキ面積(陰極面積)で割った数値で、メッキ速度を律する大きな要因である。メッキ速度を律する他の大きな要因として、溶液状態(濃度)がある。これは、時間の経過とともに水分の蒸発が起こり、メッキ液の量変化とともにメッキ液の濃縮が起こるためと考えられる。メッキ液濃度を一定に保つために、メッキ液の減少に伴って超純水を所定の液量となる水位まで足してゆく作業を行うが、時間に対する蒸発量は、気温や湿度、またメッキ回数など、多くの要素に依存しており、蒸発量の正確な把握、調整は重要である。所定時間内(メッキ液条件の変化が起こる前:蒸発量が少ない時間内)に試料をメッキし、メッキ速度を比較してみる(図10参照)。これから、同じ電流密度でのメッキにおいては、膜厚成長速度は一定となり、メッキ速度が電流密度に比例していることが分かる。
【0071】
図10に示したメッキ時間と膜厚の関係において、電流密度22.86mA/cm2以上においては、密度の低い表面が粗いCu膜が析出する。これは、電流密度が高すぎることによって、メッキ速度が大き過ぎるために起こった現象だといえる。メッキ速度が大きいと、陰電極表面におけるCuイオン密度の低下が起こる。また、一定陰極面積内の電荷密度が多くなりすぎる為に、一定時間内に一定面積から大量のCuが析出する(過剰な析出速度)。そのため、Cuが配列する前に析出し、膜内は欠陥が多くなる。さらに、欠陥による凹凸が生じると、その凸部分にさらなる電荷集中がおこり、さらに凸凹が顕著になってくるという現象がおこると予想される。
【0072】
一方、22.86mA/cm2以下の電流密度においては、均一なCu膜が得られるものの、断面が矩形となる微細マイクロストリップラインを基板上に電解Cuメッキするためには、析出Cuの形状の矩形維持と、0.1μm以下のオーダーにおける膜厚制御が求められる。すなわち、電流密度値が大きすぎると角への電荷集中が起こり、電荷集中の高い個所はCu成長速度が大きいため形状の変形が起こってくると考えられるため、電流密度を適切な値に抑える事によって矩形を保ち、0.1μm以下の膜厚制御が可能な電流密度値を定める必要がある。これを満たす電流密度値として、3.6mA/cm2を最適電流密度値と設定した。
【0073】
上記のように、過剰電流密度でメッキを行って成膜した膜表面の状態と、最適電流密度でメッキを行って成膜した膜表面の状態の比較写真が図13である。過剰電流密度(22.9mA/cm2以上)でメッキした膜(図中、左下)では、写り込みがないことから膜表面が粗いことが分かり、最適電流密度(3.6mA/cm2)でメッキした膜(図中、右下)では、良好な写り込みが認められることから膜表面が鏡面になっていることが分かる。
【0074】
以上、集積RFモジュールの作製のために、室温で成膜可能なエアロゾルデポジション法によるAl23誘電体厚膜の作製技術と、角型の微細なCu線路を形成するための電解Cuメッキと微細パターンニング技術について説明した。次いで、これらの技術を用い、集積RFモジュールに必要となる微小Low−Pass LC−filterの設計を行った。これにより、集積RFモジュールにおけるエアロゾルデポジション法を用いた金属ベース上へのAl23厚膜形成の有効性を電磁界解析により確認した。
【0075】
まず、遮断周波数10GHzと整合性を考慮しインピーダンス50Ωの2次定K型LPF(Low Pass Filter)となるインダクタンスとキャパシタンスの値を計算し、回路シュミレーションソフト(Microwave Office)を用い、理想的な通過特性(S21)と電磁界解析ソフト(Sonnet Suite)により各素子の誘電損失および寄生キャパシタンス、インダクタンス、また電界の回りこみなども考慮した実物に近い立体的なモデル(図14(a)参照)で、通過特性(S21)を解析した。使用した解析条件は、表2に示す。そのLC filterの寸法は0.2〔mm〕×0.4〔mm〕とした。
【0076】
【表2】


【0077】
損失のない理想的なインダクター(L)とキャパシター(C)を用い遮断周波数10GHzのLC filterを計算すると、Lは1.13nH、Cは0.45pFである。回路シミュレーターによる通過特性の理論値を図14(b)の薄線で示す。一方、電磁界解析ソフトで解析した通過特性のシミュレーション結果を図14(b)の濃線で示す。実物に近い立体的なモデルを電磁界解析のシミュレーション結果は、理想的なLPFの通過特性に比べて、遮断周波数が若干高周波側に移動しているものの、遮断周波数が10GHz帯域におけるLPFの特性を十分に満たしている。すなわち、微小Low−Pass LC−filterの設計を通じ、集積RFモジュールを形成するのに、エアロゾルデポジション法を用いて金属ベース上に形成したAl23厚膜を利用することが有効で、また、小型化・高性能化に極めて有利な微小マイクロストリップラインの形成も可能であることが理解できる。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係るRFモジュールによれば、300℃以下の低温で1〜50〔μm〕の厚さに絶縁膜を形成するものとしたので、そのベースには金属を用いることができ、機械加工で安価に寸法精度が出せる金属材料基板によってRFモジュールを構成できる。また、高温焼成などを行わないので、材料収縮がなく、高い寸法精度を実現できるし、能動デバイスを二次元回路に実装できるという利点もある。
【0079】
また、請求項2に係るRFモジュールによれば、金属ベース上の絶縁膜に二次元回路を形成した二次元回路基板を複数用意し、個別の二次元回路基板を積層できるので、集積率を高めるような回路設計が容易となる。
【0080】
また、請求項3に係るRFモジュールによれば、外表面を金属で覆って接地することにより、内部の二次元回路をシールドするようにしたので、外部ノイズに強いと共に、外部への電波漏洩もないので、EMC対策に好適である。
【0081】
また、請求項4に係るRFモジュールによれば、絶縁膜には誘電損失の少ないセラミックスを用いるものとし、絶縁膜上に形成するマイクロストリップラインは、50Ωのインピーダンス整合を線幅の狭い配線で実現するようにしたので、更なる高集積化を期せる。
【0082】
請求項5に係るRFモジュールの作製方法によれば、エアロゾルデポジション法によりAl23微粒子を用いて室温で1〜50〔μm〕の厚さの絶縁膜を形成するものとしたので、そのベースにはAl薄板を用いることができ、機械加工で安価に寸法精度が出せる金属材料基板によってRFモジュールを作製できる。更に、絶縁膜には誘電損失の少ないAl23を用いるものとしたので、絶縁膜上に形成するマイクロストリップラインは、50Ωのインピーダンス整合を線幅の狭い配線で実現することができ、高集積化を期せる。
【0083】
また、請求項6に係るRFモジュールの作製方法によれば、絶縁膜の表面には10〔nm〕以上の凹凸を形成し、絶縁膜上にマイクロストリップライン用のPt下地配線を形成し、電界メッキの電流量を1nA〜1μAの範囲で正確に制御すると共にメッキ速度を1分間に0.1μm〜1μmの範囲に抑えた状態で、Pt下地配線上にのみ電界を印加して銅をメッキするようにしたので、断面が矩形状のマイクロストリップラインを得ることができ、良好な高周波特性を期せる。
【図面の簡単な説明】
【図1】AD法を用いて作製した集積化RFモジュールの概略構成図である。
【図2】(a)従来製品のプリント配線基板上に作製した従来のマイクロストリップラインを特性インピーダンス50Ωとする場合と、本実施形態のRFモジュールの如く金属ベース上に形成したセラミックス膜上のマイクロストリップラインを特性インピーダンス50Ωとする場合との比較概要図である。
(b)従来のLTCC法で配線形成に利用されるスクリーン印刷法で形成したマイクロストリップラインの断面形状と、銅メッキ法で形成したマイクロストリップラインの断面形状との比較概要図である。
【図3】エアロゾルデポジション法による成膜装置の概略構成図である。
【図4】(a)SG160AのAl23微粒子を用いてガラス基板上へ成膜した状態の写真である。
(b)SG160BのAl23微粒子を用いてガラス基板上へ成膜した状態の写真である。
【図5】(a)原料粉末SG160AにおけるAl23微粒子の顕微鏡写真である。
(b)原料粉末SG160BにおけるAl23微粒子の顕微鏡写真である。
【図6】(a)成膜したAl23厚膜のアズデポ状態の表面の顕微鏡写真である。
(b)成膜したAl23厚膜の研摩後の表面の顕微鏡写真である。
(c)Al基板上に形成したAl23厚膜断面の顕微鏡写真である。
【図7】Al23と原料粉末のX線回折パターン特性図である。
【図8】比誘電率と誘電喪失の周波数特性図である。
【図9】マイクロストリップラインの周波数−インピーダンス特性図である。
【図10】メッキ時間と膜厚の関係を示す特定図である。
【図11】(a)微細マイクロストリップラインの顕微鏡写真である。
(b)レーザー顕微鏡観察データから描出した三次元イメージである。
【図12】基板ホルダーの外観図である。
【図13】過剰電流密度でメッキを行って成膜した膜表面の状態と、最適電流密度でメッキを行って成膜した膜表面の状態の比較写真である。
【図14】(a)カットオフ10GHzのローパスフィルターの概略構成図である。
(b)図14(a)におけるローパスフィルターの理論計算によるフィルター伝達特性と、実験値からシミュレートしたフィルター伝達特性を示す特性図である。
【符号の説明】
1 第1二次元回路
11 金属ベース
12 絶縁膜
13 パターン配線
2 第2二次元回路
21 金属ベース
22 絶縁膜
23 パターン配線
3 第3二次元回路
31 金属ベース
32 絶縁膜
33 パターン配線




 

 


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