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発明の名称 電気化学リアクタースタック及びそれから構成される電気化学反応システム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−123128(P2007−123128A)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
出願番号 特願2005−315430(P2005−315430)
出願日 平成17年10月28日(2005.10.28)
代理人
発明者 鈴木 俊男 / 山口 十志明 / 藤代 芳伸 / 淡野 正信
要約 課題
小型化及び高効率化を実現可能な電気化学リアクタースタック及びそれを利用した電気化学反応システムを提供する。

解決手段
電気化学リアクターセルスタックであって、リアクターセルは、アノード(燃料極)材料で構成された複数の中空チューブ結合体からなる成形体にイオン伝導体(イオン伝導相)が積層された、いかだ状構造体を有し、その成形体上にカソード(空気極)が積層されていることを特徴とする電気化学リアクタースタック、及びそれから構成される電気化学反応システム。
特許請求の範囲
【請求項1】
電解質層(イオン伝導相)を表面に持った複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに結合した構造体を形成しており、かつ、その構造体の電解質層上にカソード(空気極)が積層されていることを特徴とする電気化学リアクタースタック。
【請求項2】
電解質層(イオン伝導相)を表面に形成可能な複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに結合した構造体を形成しており、かつ、その構造体上に電解質層(イオン伝導体相)及びカソード(空気極)が積層されていることを特徴とする電気化学リアクタースタック。
【請求項3】
複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに平面的に結合した構造体を形成している、請求項1又は2記載の電気化学リアクタースタック。
【請求項4】
電解質材料が、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む酸化物化合物である、請求項1又は2記載の電気化学リアクタースタック。
【請求項5】
チューブ状アノード(燃料極)材料が、電解質材料と、Ni,Cu,Pt,Pd,Au,Ru,Co,La,Sr,Tiの元素及び/又はこれらの元素1種類以上を含む酸化物化合物から構成される、請求項1又は2記載の電気化学リアクタースタック。
【請求項6】
カソード(空気極)材料が、Ag,La,Sr,Mn,Co,Fe,Sm,Ca,Ba,Ni,Mgの元素及び/又はこれらの元素1種類以上を含む酸化物化合物から構成される、請求項1又は2記載の電気化学リアクタースタック。
【請求項7】
カソード材料が、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、又は遷移金属ペロブスカイト型酸化物と固体電解質材料との複合物である、請求項6記載の電気化学リアクタースタック。
【請求項8】
電解質層の厚さが1〜100ミクロンである、請求項1又は2記載の電気化学リアクタースタック。
【請求項9】
電気化学反応によって電流を取り出すシステムであって、リアクターとして、請求項1から8のいずれかに記載の電気化学リアクタースタックを構成要素として含むことを特徴とする電気化学反応システム。
【請求項10】
複数の上記電気化学リアクタースタックが集積されて、モジュール化している、請求項9記載の電気化学反応システム。
【請求項11】
電気化学反応システムが、固形酸化物形燃料電池、排ガス浄化電気化学リアクター、又は水素製造電気化学リアクターである、請求項9又は10記載の電気化学反応システム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学リアクタースタック及び該リアクタースタックから構成される固体酸化物形燃料電池等の電気化学反応システムに関するものであり、更に詳しくは、容易に積層することが可能で、かつ空気流路を十分に確保でき、また、モジュール内においても直列、並列接続を自由に設計、形成できるセルスタックと、該セルスタックを利用した、作動温度の低温化と単位モジュール当たりの発電電圧を大幅に高めることを可能とした電気化学反応システムに関するものである。本発明は、クリーンエネルギー源や環境浄化装置等として好適に用いられる電気化学リアクタースタック及び該リアクタースタックを利用した電気化学反応システムに関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学リアクターの代表的なものとして、固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」という。)がある。SOFCは、電解質としてイオン導電性を有する固体酸化物電解質を用いた燃料電池である。このSOFCの基本構造は、通常、カソード―固体酸化物電解質―アノードの3層により構成され、該SOFCは、通常は800〜1000℃の温度領域において使用される。
【0003】
SOFCのアノードに、燃料ガス(水素、一酸化炭素、炭化水素等)、カソードに、空気、酸素等が供給されると、カソード側の酸素分圧とアノード側の酸素分圧との間に差が生じることから、ネルンストの式に従う電圧が電極間に生じる。酸素は、カソードにおいてイオンとなり、固体電解質内を通ってアノード側に移動し、アノードに達した酸素イオンは、燃料ガスと反応して電子を放出する。そのため、例えば、このSOFCのアノード及びカソードに負荷を接続すれば、燃料電池として、これより直接、電気を取り出すことができる。
【0004】
今後、SOFCを実用化させていくためには、SOFCの作動温度の低温化が必須である。作動温度を800℃以下、特に500〜600℃に下げることで、安価な材料の使用と運転コストの低下が期待でき、作動温度の低温化によってSOFCの汎用性が高まることが期待される。また、作動温度の低温化により、低温作動域では、SOFC特性が電極構造に大きく依存するようになり、その構造制御には、SOFCの製造工程におけるプロセス温度の低温化も欠かせない重要な要因となる。
【0005】
SOFCの運転温度の低温化のためには、電解質の薄膜化は必至であり、これまで、電極サポート型のセル、特に、アノードサポート形のセルが広く研究されている(非特許文献1)。また、SOFCの小型化を進めることで、自動車補助電源、ポータブル電源としての利用など、更に新たな市場の産出へ結びつくことが期待される。そのためには、単位体積当たりのセル表面積を向上させる必要があり、チューブ状のセルからなるSOFC構造体なども提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、これまでに提案されているチューブ状セルモジュールは、カソード材料によってチューブセルを安定保持された構造を有しており、チューブ径が小さくなるにつれて、チューブ状セルのパッキングが困難になってくるという問題点があった。また、この構造体では、空気ガス流路の確保が困難であること、高価なカソード材料を大量に使用する必要があること、等の問題点があり、更に、チューブがすべて並列に接続されるため、1モジュール当たりの電圧が1V程度となってしまうという制限があった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−335277号公報
【非特許文献1】日経メカニカル別冊,燃料電池 開発最前線、日経BP社,2001年6月29日,p.71−80
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上述の従来部材の問題点を確実に解決することが可能なチューブ状セル及びその新しい利用形態を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに平面的に結合した構造体を構築し、該構造体上に電解質層及びカソード(空気極)を形成した構造とすることにより、セルを容易に集積することが可能で、かつ空気通路を十分に確保できるセルスタックを提供できること、また、モジュール内においても直列、並列接続を自由に設計、形成できるセルスタックを提供でき、単位モジュールでの発電電圧を大幅に高めることが可能なセルスタックを提供できること、そして、該セルスタックを利用して、作動温度の低温化を実現できる電気化学反応システムを提供できること、等の新規知見を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、容易に集積することが可能で、かつ空気通路を十分に確保できるセルスタックを提供すること、また、モジュール内において直列、並列接続を自由に設計、形成できるセルスタックを提供すること、単位モジュールでの発電電圧を大幅に高めることができるセルスタックを提供すること、及び該セルスタックを利用することにより、作動温度の低温化と単位モジュール当たりの発電電圧を大幅に高めることを可能とした電気化学反応システムを提供すること、を目的とするものである。また、本発明は、これまでのチューブ状セルで必要であった高価なカソード材料の使用量を大幅に減少させることを実現できるセルスタック及び該セルスタックを利用したリアクターシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)電解質層(イオン伝導相)を表面に持った複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに結合した構造体を形成しており、かつ、その構造体の電解質層上にカソード(空気極)が積層されていることを特徴とする電気化学リアクタースタック。
(2)電解質層(イオン伝導相)を表面に形成可能な複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに結合した構造体を形成しており、かつ、その構造体上に電解質層(イオン伝導体相)及びカソード(空気極)が積層されていることを特徴とする電気化学リアクタースタック。
(3)複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに平面的に結合した構造体を形成している、前記(1)又は(2)記載の電気化学リアクタースタック。
(4)電解質材料が、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む酸化物化合物である、前記(1)又は(2)記載の電気化学リアクタースタック。
(5)チューブ状アノード(燃料極)材料が、電解質材料と、Ni,Cu,Pt,Pd,Au,Ru,Co,La,Sr,Tiの元素及び/又はこれらの元素1種類以上を含む酸化物化合物から構成される、前記(1)又は(2)記載の電気化学リアクタースタック。
(6)カソード(空気極)材料が、Ag,La,Sr,Mn,Co,Fe,Sm,Ca,Ba,Ni,Mgの元素及び/又はこれらの元素1種類以上を含む酸化物化合物から構成される、前記(1)又は(2)記載の電気化学リアクタースタック。
(7)カソード材料が、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、又は遷移金属ペロブスカイト型酸化物と固体電解質材料との複合物である、前記(6)記載の電気化学リアクタースタック。
(8)電解質層の厚さが1〜100ミクロンである、前記(1)又は(2)記載の電気化学リアクタースタック。
(9)電気化学反応によって電流を取り出すシステムであって、リアクターとして、前記(1)から(8)のいずれかに記載の電気化学リアクタースタックを構成要素として含むことを特徴とする電気化学反応システム。
(10)複数の上記電気化学リアクタースタックが集積されて、モジュール化している、前記(9)記載の電気化学反応システム。
(11)電気化学反応システムが、固形酸化物形燃料電池、排ガス浄化電気化学リアクター、又は水素製造電気化学リアクターである、前記(9)又は(10)記載の電気化学反応システム。
【0011】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の電気化学リアクタースタックは、電解質層(イオン伝導相)を表面に持った複数のセラミック中空チューブ状アノード(燃料極)が互いに平行的(一次元的)に集合、結合した、いわゆるいかだ状に形成された構造体を有し、電解質層によって並び合う中空チューブ状アノードが接着され、あるいはアノードチューブ同士が接合した上に電解質層が積層され、かつ、その電解質層の上にカソード(空気極)が積層されてなる構造を有することを特徴とするものである。
【0012】
従来、チューブタイプの電気化学セルを作製する場合、アノード材料をチューブとして作製し(通常、1400℃以上の焼結を含む)、電解質を積層、焼結する工程(通常、1400℃以上)を経て、カソード構造体にチューブを配置し、更に、焼結する(通常、1000℃以上)という複数のプロセスステップが必要であった。また、その場合、チューブ径が2mm以下のマイクロチューブになると、そのプロセスの構築は更に困難なものとなっていた。しかしながら、本発明の上記電気化学リアクタースタックの構成によれば、まず、焼成前にチューブ状アノードによって、該チューブ状アノードが平面的に集合、結合したいかだ状構造体が作製されるため、電解質、アノードチューブの同時焼成と電気化学セル構造の構築が可能となり、また、2mm以下のチューブ径のマイクロセルでも容易に取扱える構造体が得られる。
【0013】
また、上記電気化学リアクタースタックの構成によれば、カソード材料は、いかだ状構造物の電解質層に必要量だけを任意の厚さで高精度に制御して積層することが可能であり、それにより、コストパフォーマンスに優れた電気化学リアクタースタックを構築すること及び該電気化学リアクタースタックを利用した作動温度の低温化(400〜650℃程度)を実現可能とする電気化学反応システムを構築することが可能となる。また、本発明の電気化学反応システムとしては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、排ガス浄化電気化学リアクター、水素製造電気化学リアクターなどが挙げられ、上記電気化学リアクタースタックにおいて、アノード、電解質、カソードの材料を適宜選定することで、例えば、高効率なSOFC等の電気化学反応システムを構築することが可能となる。
【0014】
本発明では、電解質材料は、高イオン伝導を持つ材料が必須であるという観点から、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む酸化物化合物であることが望ましい。
【0015】
また、中空チューブ状アノード材料は、燃料ガスに対して高い活性を持つ材料を含むことが望ましく、電解質材料と、Ni,Cu,Pt,Pd,Au,Ru,Co,La,Sr,Tiの元素及び/又は酸化化合物を1種類以上含む構成からなることが、高効率な電化化学リアクターの実現には必要である。更に、カソード(空気極)材料は、酸素のイオン化に活性の高い材料が好ましく、特に、Ag,La,Sr,Mn,Co,Fe,Sm,Ca,Ba,Ni,Mgの元素及び/又は酸化化合物を1種類以上含む構成からなる材料が好適である。以下に、本発明の一実施形態に係る電気化学リアクタースタック及びそれから構成される電気化学反応システムについて詳細に説明する。
【0016】
初めに、本発明に係る電気化学リアクタースタックの構成について説明する。図1は、本発明に係る電気化学リアクタースタックの概略図であり、例えば、図1のaに示すタイプとbに示すタイプが好適なものとして例示される。図1のaのタイプでは、緻密な電解質層1を表面に持った複数のチューブ状アノード(燃料極)が互いに電解質層によって平面的に結合している。この場合、電解質層が、チューブ状アノードを結合する媒体として機能する。そして、電解質層の外側にカソード4が配置されることで、電気化学リアクタースタックが構成される。また、図1のbのタイプでは、複数のチューブ状アノードが互いに平面的に結合している。この場合、複数のチューブ状アノードのチューブ同士は、予め接着、結合されているが、その結合方法及び手段は、特に制限されるものではなく、適宜の方法及び手段を使用することができる。そして、その表面に、電解質層1、カソード4が積層されることで、電気化学リアクタースタックが構成されている。本発明において、上記アノードチューブを一次元的に配列し、結合する場合のアノードチューブのユニット当たりの個数は、任意であり、また、それらの結合方式も任意である。
【0017】
先ず、電解質層1について説明する。電解質層1の厚みは、多孔質チューブの管径や、固体電解質層自体の比抵抗などを考慮して定める必要がある。電解質層1は、緻密であること、厚さが1〜100ミクロンの範囲であることが好ましく、更に、電解質材料の粒径は、電解質の電気抵抗を抑えるためにも50ミクロン以下であることが好ましい。この電解質層は、アノードチューブ表面に積層されているため、電解質層の厚さの低減化と厚さの高精度の制御が容易に可能である。通常、燃料電池としての使用条件では、チューブ空孔4に、水素、一酸化炭素、メタン等の燃料ガスが供給され、また、カソード側には、空気、酸素等の酸化剤ガスが供給されるが、それらの具体的な構成については任意に設計することができる。
【0018】
ここで、本発明に係る電気化学リアクタースタックでは、チューブ状アノードの管径、管長さ、管厚みは、特に限定されるものではなく、必要とされる電気化学リアクタースタックの全体の大きさを考慮し、かつアノードとしての必要特性が得られるよう任意に設定することができる。また、チューブ状アノードの空孔率については、好ましくは30〜60%であるが、これに制限されるものではなく、三相界面(反応場)が維持され、かつ、管強度が低下しないように、その好適な範囲で種々制御することができる。また、図1のa及びbは、製造プロセスの違いによって得られる構造体の具体的な事例であり、共に本発明の好適なものとして例示される。
【0019】
電解質材料としては、高いイオン伝導が実現される材料を使用することが必要であり、これらに用いられる材料としては、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む酸化物化合物が望ましいものとして例示される。
【0020】
その中でも、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、スカンジア(Sc)、マグネシア(MgO)、イッテルビア(Yb)、エルビア(Er)等の安定化剤で安定化された安定化ジルコニアやイットリア(Y)やガドリニア(Gd)、サマリア(Sm)などをドープしたセリア(CeO)などが好適な例として挙げられる。なお、安定化ジルコニアは、1種又は2種以上の安定化剤により安定化されているものが好ましく、また、アルミナ(Al)との複合体であることが好ましい。
【0021】
具体的には、安定化剤として5〜10mol%のイットリアを添加したイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ドープ剤として5〜10mol%のガドリニアを添加したガドリニアドープセリア(GDC)等が好適な一例として挙げられる。そして、例えば、YSZの場合、イットリア含有量が5mol%未満であると、アノードの酸素イオン導電率が低下するので好ましくない。また、イットリア含有量が10mol%を超えると、同様にアノードの酸素イオン導電率が低下するので好ましくない。GDCの場合も同様である。
【0022】
チューブ状アノードの材料は、アノード材料と電解質材料の混合体から構成される複合物である必要がある。このアノード材料は、Ni,Cu,Pt,Pd,Au,Ru,Co,La,Sr,Tiから選ばれる金属及び/又はこれらの元素1種類以上から構成される酸化物であって、また、触媒として機能するもので、具体的には、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)等が好適な一例として挙げられる。このうち、ニッケル(Ni)は、他の金属に比べて安価であり、かつ、水素等の燃料ガスとの反応性が十分に大きいことから、好適に用いることができる。また、これらの元素や酸化物を混合した複合物を用いることも可能である。
【0023】
ここで、アノード材料と電解質材料との複合物において、前者と後者の混合比率は、90:10重量%〜40:60重量%の範囲が好ましく、電極活性や熱膨張係数の整合性等のバランスに優れるという観点から、より好ましくは、80:20重量%〜50:50重量%である。
【0024】
一方、カソードの材料としては、酸素のイオン化に活性の高い材料が好ましく、特に、Ag,La,Sr,Mn,Co,Fe,Sm,Ca,Ba,Ni,Mgの元素及び/又はこれらの酸化物化合物、1種類以上から構成される材料が好適である。その中で、例えば、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、遷移金属ペロブスカイト型酸化物と電解質材料との複合物を好適に用いることができる。上記複合物を用いた場合には、カソードに必要な特性である電子導電性及び酸素イオン導電性のうち、酸素イオン導電性が向上するため、カソードで生じた酸素イオンが電解質層へ移行し易くなり、カソードの電極活性が向上する利点がある。
【0025】
ここで、遷移金属ペロブスカイト型酸化物と固体電解質材料との複合物を用いる場合、前者と後者の混合比率は、95:5重量%〜60:40重量%の範囲が好ましく、電極活性や熱膨張係数の整合性等のバランスに優れるという観点から、より好ましくは、90:10重量%〜70:30重量%である。
【0026】
遷移金属ペロブスカイト型酸化物としては、具体的には、LaSrMnO、LaCaMnO、LaMgMnO、LaSrCoO、LaCaCoO、LaSrFeO、LaSrCoFeO、LaSrNiO、SmSrCoO等の複合酸化物が好適な一例として挙げられる。
【0027】
ただし、図1に示すように、アノードチューブの両端には、電解質層1が積層されることなくアノードの一部がむき出し状態とされることにより、アノード露出部5が形成されている。このアノード露出部5は、アノードの外部引き出し電極として機能する。なお、このアノード露出部2の露出量は、特に限定されるものではなく、ガスのシール材、電極の集電方法、ガス出口の流路等を考慮して適宜調節することができる。
【0028】
次に、上記本発明に係る電気化学リアクタースタックをSOFC単体として作動させる場合の一作動方法について説明する。図2に示すように、燃料ガス導入管9にアノード露出部5を配置し、ガスのシール材8によりアノード露出部2を燃料ガス導入管9内に封止する。上記燃料ガス導入手段を構成する主な材料としては、具体的には、SOFCの運転条件によるが、耐熱性のステンレス鋼、セラミックス等が好適な一例として挙げられる。
【0029】
すなわち、燃料ガス導入管9の内部に、電気化学リアクタースタックのアノード露出部5が装着されており、各電極接続部がガスのシール材8により封止される。上記ガスのシール材8の材料としては、ガスを透過させないものであれば良く、特に限定されるものではない。ただし、アノード部分の熱膨張係数に整合させる必要がある。具体的には、マイカガラス、スピネル(MgAl)などのセラミックス等が好適な一例として挙げられる。
【0030】
また、電極面(アノード露出部5やカソード4)には、集電体10が取り付けられる。集電体10を構成する主な材料としては、具体的には、ランタンクロマイト(LaCrO)などの導電性セラミックス、金、銀や白金などの貴金属メッシュ、ステンレス、ニッケルメッシュ、ニッケルフェルト等が好適な一例として挙げられる。
【0031】
また、酸化剤ガス又は燃料ガス導入手段(例えば、外部マニホルドなど)を用いて、アノード部に燃料ガスを、セルスタック外部から酸化剤ガスを導入し、管接続部と集電体10とに集電ワイヤー11を介して負荷12を接続することで、発電可能となる。
【0032】
なお、上記においては、本発明に係る電気化学リアクタースタックをSOFC単体として作動させる場合の一作動方法について説明したが、上記作動方法は、上記SOFCの場合に限定されるものではなく、水素製造電気化学リアクター、排ガス浄化電気化学リアクターにも適用することができる。また、本発明に係る電気化学リアクタースタックを電気的に直列接合してモジュール化した発電装置を構築することもできる。その際、上記電気化学リアクタースタックを利用することで、省スペースな、高電圧を発生するモジュールの構成が容易となる。
【0033】
次に、上記本発明に係る電気化学リアクタースタックの作用について説明する。本発明に係る電気化学リアクタースタックは、例えば、中空チューブ状のアノード(燃料極)に緻密な電解質層が積層されており、そのチューブ状アノードが平面的に一次元的に形成され、いかだ状を形成し、そして、カソードが電解質層の外側に形成されている。
【0034】
従来、チューブ径が2mm以下のセルを用いたセルスタックの作製は、そのハンドリングの難しさも重なって、極めて困難なものであった。しかしながら、上記電気化学リアクタースタックの構成によれば、まず、チューブ状アノードによって、いかだ状構造体が作製されるため、2mm以下のチューブ径のマイクロチューブでも容易に取扱える構造体が得られる。また、作製されたいかだ状構造体は、構造上容易に積層が可能であり、それらを直列接続することで、体積当たりのモジュール電圧を高めることが可能となる。本発明において、上記アノードチューブの形状、構造及びチューブ径等は特に制限されるものではなく、任意に設計することができる。
【0035】
また、上記電気化学リアクタースタックの構成によれば、カソード材料は、チューブの上の電解質層に任意の厚さで必要量だけ積層することができるので、それにより、コストパフォーマンスに優れた電気化学リアクタースタックを構築することができる。次に、本発明の電気化学リアクタースタックの好適な製造方法について説明する。本発明に係る電気化学リアクタースタックの製造方法は、基本的には、次のような工程を含んでいる。
【0036】
すなわち、本発明に係る電気化学リアクタースタックの製造方法は、アノードチューブを作製する工程と、アノードチューブの外側面に固体電解質層を接合する工程と、チューブを集合、結合し、いかだ構造体を作製する工程と、該いかだ構造体の上の固体電解質層の外側にカソード材料を塗布、焼結する工程、とを有している。以下、それらについて詳細に説明する。
【0037】
初めに、アノードチューブを、アノード材料と電解質材料の混合物を用いて作製する。具体的には、Zr,Ce,Mg,Sc,Ti,Al,Y,Ca,Gd,Sm,Ba,La,Sr,Ga,Bi,Nb,Wから選択される2種類以上の元素を含む酸化物化合物の粉末と、Ni,Cu,Pt,Pd,Au,Ru,Co,La,Sr,Tiから選ばれる金属元素あるいは酸化物の粉末に、セルロース系の結合剤、炭素粉末等の気孔生成剤を加えて、水で練り、得られた塑性混合物を押し出し成形法等を用いて、所定の管径、管長さ、管厚みの管状成形体を成形する。該管状成形体を作製するこれらの方法及び手段は、特に制限されるものではなく、適宜の方法及び手段を使用することができる。
【0038】
次いで、得られたチューブ状アノード成形体に電解質材料粉体を含むスラリーを付着させた後、いかだ状に配列し、乾燥させる。これにより、管の表面に、後の焼成によって固体電解質層となる電解質層形成層が付着し、電解質層によって互いのチューブが結合した、いかだ構造体となる(図1のa)。また、得られたチューブ状成形体を乾燥前に結合することでアノードチューブによる、いかだ状構造体を得ることも可能であり、その後、電解質材料粉体を含むスラリーを付着させ、乾燥させる(図1のb)。
【0039】
上記スラリーの付着方法としては、例えば、多孔質チューブの両端側の開口を樹脂系接着剤等により封止した後、この管を、固体電解質を含むスラリー中に浸漬してディップコーティングする方法等が好適な一例として挙げられるが、これに制限されるものではなく、ディプコーティング法以外にも、例えば、ハケ塗り法、スプレー法等の種々の付着方法を用いることができる。
【0040】
このとき、得られた電解質層付きチューブ状アノードの外側面の一端に、固体電解質を含むスラリーが付着されることなく、アノード部分がむき出し状態とされた露出部が形成されることが必要である。これを、所定の温度で焼成して、電解質層付きチューブ構造体とする。該チューブ構造体の焼成温度としては、1200〜1600℃程度の温度で焼成することが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではなく、チューブの材質、多孔度等を考慮して、電解質層が密度90%以上程度に緻密化される温度が任意に設定される。
【0041】
次いで、カソード材料を電解質層に塗布する。カソード材料としては、特に、Ag,La,Sr,Mn,Co,Fe,Sm,Ca,Ba,Ni,Mgを一種類以上及び/又はこれらの酸化物化合物から構成される材料が好適である。これらの粉体よりスラリーを作製して、上記固体電解質の調製と同様の方法を用いて、カソードを電解質層上に形成することができる。
【0042】
次いで、得られたチューブ構造体を、所定の温度で焼成して電気化学リアクタースタックとする。この場合、焼成温度としては、800〜1200℃程度の温度で焼成することが好ましいが、特に限定されるものではなく、カソード材料の種類等を考慮して種々調節することができる。以上により、アノードチューブ2の外側面に固体電解質層1が接合され、電解質層の外側にカソード3が積層された構造を有する電気化学リアクタースタックを得ることができる。
【0043】
なお、必要に応じて、例えば、得られた電気化学リアクタースタックのカソード又はアノードの部分を機械加工して面出しや寸法調整を行うことも適宜可能である。また、上記製造方法においては、電解質材料のスラリーをコートしたチューブを焼成することにより、予め電解質付多孔質チューブ結合体を作製した後に、カソードを積層した場合について説明したが、これ以外にも、電解質付アノードチューブを先ず作製し、その後、カソード材料スラリーによって、チューブ同士を接合し、いかだ状構造体を成形することも適宜可能である。
【0044】
これらの電気化学リアクタースタックをスタックとして積層させていく場合、例えば、図3に示すように、チューブを並列に配列し、それぞれのチューブ構造体に共通の燃料ガス導入及び集電用マニフォールド13を形成することができる。アノード側のマニフォールドは、一段上のカソード集電体にインターコネクト等を介して接続することで、マルチボルト発電可能な電気化学リアクターとして使用することができる。
【0045】
また、上記電気化学リアクタースタックを利用して、スタックを構成した場合、電解質層が接合されたチューブ同士を、カソード材料により一体的に接合することもできるので、従来、接続が困難であった管の外側が酸化雰囲気下にある場合であっても、高価な貴金属製ワイヤー等を使用することなく、簡単に管の間を電気的に接続することができる。本発明の電気化学リアクターをスタックとして積層させる方法、手段及びその形態については、特に制限されるものではなく、その種類、使用目的に応じて任意に選択及び設計することができる。本発明では、上記電気化学リアクタースタックを、電気化学反応システムにおけるリアクターとして組み込むことで適宜の電気化学反応システムを構築することが可能であり、その作製方法及び手段については、特に制限されない。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明により、新規セル構造を有し、クリーンエネルギー源や環境浄化装置等として好適に用いられる電気化学リアクタースタックを提供できる。
(2)上記電気化学リアクタースタックを利用した固体酸化物形燃料電池等の電気化学反応システムを提供できる。
(3)チューブ径が2mm以下のマイクロチューブでも容易に取扱える電気化学リアクタスタックの構造体を構築できる。
(4)いかだ状構造体からなる一次元構造のスタックを利用することにより、容易に直列接合によるモジュール化が可能であり、それにより、1モジュール当たりの発電電圧を大幅に向上させることが可能となる。
(5)チューブ状アノードの製造工程におけるプロセス温度を低温化できるので、安価なカソード材料の使用が可能であり、高価なカソード材料を大量に使用するという従来材のような問題を解決することができる。
(6)電解質層の薄膜化及び単位表面当たりの表面積を大幅に増加させることができ、また、該電解質層の上にカソード材料を任意の厚さで、高精度に制御して積層できるので、コストパフォーマンスの向上と、運転温度を400〜650℃程度に低温化することを可能にした電気化学反応システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
本実施例では、以下の手順に従い、電気化学リアクタースタックを作製した。先ず、ZrO−10mol%Y組成を有する粉末(東ソー株式会社製)に、結合剤としてニトロセルロース、気孔生成剤として炭素粉末を加えて、水で練り、粘土状にした後、押し出し成形法によりチューブ状成形体を成形した。得られたチューブ状成形体の管径、管厚みは、それぞれ、1.5mm、0.4mmであった(管外径1.5mm、管内径0.7mm)。
【0049】
次いで、得られたチューブ状成形体を2cm長さにし、一端の開口を酢酸ビニルにより封止した後、この管を、ZrO−10mol%Y組成の固体電解質を含むスラリー中に浸漬して電解質層をディップコーティングし、電解質付チューブ状成形体とした。この電解質付チューブを5本密着させて、いかだ状構造体を作製した。この後、アノードチューブの他端を5mmむき出し状態とし、露出部とした。
【0050】
次いで、このコイル状成形体を乾燥後、1450℃で2時間焼成し、電解質付きいかだ状構造体とした。図4に、その拡大断面写真を示した。電解質材料によってチューブが結合されているのが分かる。
【0051】
次いで、容器内にカソード材料としてLaSrCoFeO(日本セラミックス株式会社製)を含むペーストを電解質層面に塗布し、100℃で乾燥させた後、1000℃で1時間焼成した。これにより、電気化学リアクタースタックを得た。
【0052】
以上、本発明の実施例について具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記実施例では、単一のいかだ状構造体のみについて示したが、スタックを構築する場合にも、同様の手順で作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上詳述したように、本発明は、電気化学リアクタースタック及びそれから構成される電気化学反応システムに係るものであり、本発明の電気化学リアクタースタックの構成によれば、まず、チューブによって、いかだ状構造体が作製されるため、2mm以下のチューブ径のマイクロチューブでも容易に取扱える構造体が得られる。上記いかだ状構造体は、一次元構造体スタックであるので、モジュール化の際、容易に直列接続が可能となる。したがって、1モジュール当たり、従来部材以上の高電圧を発電することが可能となる。また、上記構成によれば、カソード材料は、コイル上の電解質層に必要量だけ積層することが可能であり、それによって、コストパフォーマンスに優れた電気化学リアクタースタック及び作動温度の低温化を可能とした電気化学反応システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る電気化学リアクタースタックの概略図である。
【図2】本発明に係る電気化学リアクタースタックをSOFC単体として使用する場合の構成図である。
【図3】本発明に係る電気化学リアクタースタックを利用したモジュール化の一例である。
【図4】本発明に係る電気化学リアクタースタックの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 電解質層
2 アノードチューブ
3 チューブ空
4 カソード
5 アノード露出部
6 燃料ガス
7 空気
8 シール材
9 燃料ガス導入管
10集電体
11集電ワイヤー
12 負荷
13 マニフォールド




 

 


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