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スイッチング素子 - 独立行政法人産業技術総合研究所
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発明の名称 スイッチング素子
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−53125(P2007−53125A)
公開日 平成19年3月1日(2007.3.1)
出願番号 特願2005−235131(P2005−235131)
出願日 平成17年8月15日(2005.8.15)
代理人 【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
発明者 井上 公 / 秋永 広幸 / 保田 周一郎 / 高木 英典
要約 課題
大きく異なる2つの安定した抵抗特性を可逆的かつ反復的に示す、高度集積化した不揮発性メモリへ適用可能なスイッチング素子の提供。

解決手段
2つの電極間に、組成揺らぎを含む単一中心金属元素からなる金属酸化物薄膜が介在した可変抵抗素子を備え、該両電極間に、第1の閾値以上の電圧又は電流と、該第1の閾値の絶対値よりもその絶対値が小さい第2の閾値以下の電圧又は電流と、該第2の閾値の絶対値よりもその絶対値が小さい第3の閾値以下の電圧又は電流とを選択的に印加可能な制御回路と接続し、その絶対値が少なくとも第3の閾値以下の電位域又は電流域における電極間の抵抗特性を可逆的に1000〜10000倍変化せしめることを特徴とする、スイッチング素子。
特許請求の範囲
【請求項1】
2つの電極間に、組成揺らぎを含む単一中心金属元素からなる金属酸化物薄膜が介在した可変抵抗素子を備え、該両電極間に、第1の閾値以上の電圧又は電流と、該第1の閾値の絶対値よりもその絶対値が小さい第2の閾値以下の電圧又は電流と、該第2の閾値の絶対値よりもその絶対値が小さい第3の閾値以下の電圧又は電流とを選択的に印加可能な制御回路と接続し、その絶対値が少なくとも第3の閾値以下の電位域又は電流域における電極間の抵抗特性を可逆的に1000〜10000倍変化せしめることを特徴とする、スイッチング素子。
【請求項2】
前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、銅酸化物CuO又は鉄酸化物Feの何れか一種であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子。
【請求項3】
前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素欠損型の銅酸化物CuO1−x(ここで、式中xは、0<x<1(但し、x=1/2の時を除く。)の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子。
【請求項4】
前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素欠損型の鉄酸化物Fe3−y(ここで、式中yは、0<y<1(但し、y=1/3のときを除く。)の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子。
【請求項5】
前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素過剰型の銅酸化物Cu2−zO(ここで、式中zは、1<z<2の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子。
【請求項6】
前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素過剰型の鉄酸化物Fe2−w(ここで、式中wは、0<w<2(但し、w=1/2のときを除く。)の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子。
【請求項7】
前記可変抵抗素子を不揮発性メモリのデータ蓄積部に用いたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載のスイッチング素子。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗特性が大きく変化するスイッチング素子に関し、さらに詳しくは、印加電力の履歴を制御しうる回路に接続した、抵抗特性が大きく変化する金属酸化物層を用いたスイッチング素子に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗特性の変化を検出することにより情報の読み出しに利用する不揮発性記憶素子としては、結晶質と非晶質の間でその抵抗特性が大きく変化する性質を有する、DVD−RAMといった相変化光ディスクと同じカルコゲナイド化合物を用いたOUM(Ovonic Unified Memory)が知られている。
【0003】
一方、近年では、NiO、V、ZnO、Nb、TiO、WOまたはCoOの遷移金属酸化膜が、所定の電圧範囲で抵抗が急激に高く乃至低くなる性質を利用して、これらの遷移金属酸化膜をデータ貯蔵物質層として用いる不揮発性メモリ装置であって、該データ貯蔵物質層毎に設けられたトランジスタ等により各データ貯蔵物質層をアドレッシングして、所定の電圧の印加履歴を付与することにより該遷移金属酸化膜における抵抗特性を制御するとともに、該抵抗特性を検出することにより該データ貯蔵物質層に保持された情報を読み出す、技術が知られている。(特許文献1参照のこと。)
【0004】
また、Pr0.7Ca0.3MnOなる強誘電体材料をデータ記憶層に用いて、該強誘電体材料からなるデータ記憶層に印可する電圧を所定の大きさで正負に切り換えることによって、抵抗特性を10〜1000倍程度変化させ、かかる抵抗特性の検出を通してメモリとする技術が知られている。(非特許文献1参照のこと。)
【0005】
一方、酸素雰囲気中にニッケル基板を曝すことにより形成されたニッケル酸化物薄膜における、100〜200Ωと10〜20Ωの間の抵抗特性についてのスイッチング現象は、NiOのマトリックス中に形成されるNiファイバーからなるフィラメントの形成と破断を仮定した場合の計算結果と概ね整合することが報告されている。(非特許文献2参照のこと。)
【0006】
【特許文献1】特開2004-363604号公報
【非特許文献1】アプライド フィジックス レターズ(Applied Physics Letters),Vol.76,No19(2000),pp.2749-2751
【非特許文献2】ソリッド−ステート エレクトロニクス(Solid-State Electronics),Vol.7 (1964),pp.785-797
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、OUM(Ovonic Unified Memory)は、高抵抗時と低抵抗時とで抵抗が1000倍程度変化することから、読み出しの余裕度が十分取れるものの、結晶質−非晶質の変態を利用していることから、データの書き換えにおける速度を十分に高めることが難しく、しかも、大電流を要するという欠点を有している。
【0008】
一方、特許文献1や非特許文献1に例示される技術は、直接的にメモリ層全体の抵抗値を検出するものであるので、メモリのセルサイズを小型化しても同様に作動し、かつ高速に作動するとの予想はできるものの、可逆的に大きく異なる抵抗特性を生じる原理が十分に明らかにされていないため、デバイスデザインの最適化を図ることができていない。
【0009】
特に、特許文献1に例示される技術では、高抵抗時と低抵抗時の抵抗比が10倍程度に留まっていることから、OUM(Ovonic Unified Memory)ほどの十分な読み取りの余裕度を得ることができず、商用の不揮発性メモリとしての安定した性能を得ることが困難な状態にある。
【0010】
一方、非特許文献1に例示される技術では、高抵抗時と低抵抗時の抵抗比が10〜1000倍に亘り、所望の抵抗比に制御する技術が確立していないばかりか、複酸化物を抵抗体として利用するため、安定した組成制御が困難な上、製造コストを低廉化することが困難である。従って、不揮発性メモリといった実用用途への障壁は高いと予想される。
【0011】
さらに、非特許文献2に例示されるものは、酸化膜の形成手法がNi基板に対する表面からの酸素雰囲気による酸化であるため、酸化の均質性において不十分であり、金属質のNiファイバーが偏析しオーミックコンタクトしていることが疑われる。しかも、その点は、on時の抵抗値が2〜30μm厚で100〜200Ωと極端に低くかつ厚さに比例する傾向が見受けられることからも裏付けられる。
【0012】
そして、非特許文献2に例示されるものは、伝導性のフィラメントの形成と破断という先駆的な知見を与えた文献ではあるが、非特許文献2の著者が自ら認めるように、かかる系のスイッチング現象における安定性に乏しく、多数回の反復使用が想定される実用用途への適用にはほど遠いものであると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる技術的課題を解決するためになされたものであって、以下の事項により特定される。
本発明(1)は、2つの電極間に、組成揺らぎを含む単一中心金属元素からなる金属酸化物薄膜が介在した可変抵抗素子を備え、該両電極間に、第1の閾値以上の電圧又は電流と、該第1の閾値の絶対値よりもその絶対値が小さい第2の閾値以下の電圧又は電流と、該第2の閾値の絶対値よりもその絶対値が小さい第3の閾値以下の電圧又は電流とを選択的に印加可能な制御回路と接続し、その絶対値が少なくとも第3の閾値以下の電位域又は電流域における電極間の抵抗特性を可逆的に1000〜10000倍変化せしめることを特徴とする、スイッチング素子である。
また、本発明(2)は、前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、銅酸化物CuO又は鉄酸化物Feの何れか一種であることを特徴とする本発明(1)のスイッチング素子である。
次に、本発明(3)は、前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素欠損型の銅酸化物CuO1−x(ここで、式中xは、0<x<1(但し、x=1/2のときを除く。)の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする本発明(1)のスイッチング素子である。
本発明(4)は、前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素欠損型の鉄酸化物Fe3−y(ここで、式中yは、0<y<1(但し、y=1/3のときを除く。)の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする本発明(1)のスイッチング素子である。
本発明(5)は、前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素過剰型の銅酸化物Cu2−O(ここで、式中zは、1<z<2の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする本発明(1)のスイッチング素子である。
本発明(6)は、前記組成揺らぎを含む金属酸化物が、酸素過剰型の鉄酸化物Fe2−(ここで、式中wは、0<w<2(但し、w=1/2のときを除く。)の関係を満たすものに限る。)であることを特徴とする本発明(1)のスイッチング素子である。
さらに、本発明(7)は、前記可変抵抗素子を不揮発性メモリのデータ蓄積部に用いたことを特徴とする本発明(1)〜(6)の何れか1発明のスイッチング素子である。
【0014】
すなわち、本発明は、金属質ファイバーからなる伝導性フィラメントではなく、金属酸化物結晶における局所的な組成揺らぎにより局所的に生じている荷電領域を繋いで導電パスを形成・破断することにより、2安定型の抵抗特性を実現し、印加電力履歴により制御可能としたものである。
【0015】
高抵抗状態と低抵抗状態との間の抵抗値の比が1000〜10000倍とは、不揮発性メモリに適用した際の十分な読み取り余裕度を確保する上で必要とされる性能より規定されたものであるが、下限値の「1000倍」という値は、通常の単一種中心元素からなる遷移金属酸化物では達成できない抵抗値の比であって、特に組成揺らぎの大きな中心金属元素を選択する又は通常の組成揺らぎを示す中心金属元素を選択した場合にあっては、積極的に金属酸化物中に組成揺らぎを導入していることを間接的に表現したものである。一方、上限値の「10000倍」という値は、局所的な組成揺らぎの範囲を超えて金属質ファイバーが析出していない程度の組成揺らぎであることを間接的に表現したものである。
【0016】
ここで、金属酸化物の組成としては、化学量論比の外、本発明(3)から本発明(6)のとおり、酸素欠損型乃至は酸素過剰型を採用することができ、電力の印加履歴によって、高抵抗状態と低抵抗状態との間の抵抗値の比が1000〜10000倍となるものを選択する。
【0017】
なお、本発明(3)、本発明(4)及び本発明(6)の但し書きのx=1/2、y=1/3及びw=1/2とは、熱的に安定な化合物、乃至は超高圧条件下等の特殊な状況下において存在する可能性のある化合物を示し、かかる但し書きは、これらの安定的な化合物を本発明(3)、本発明(4)及び本発明(6)の金属酸化物から除外する趣旨である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、単一種の中心金属元素からなる金属酸化物として、フィラメントの存在確率分布の観点から、中心金属元素の選択や酸素の含有比率を制御することによって、該金属酸化物中に組成揺らぎを生じせしめ、読み出し余裕度を持たせる上で十分でかつ金属質フィラメントを生成しない1000〜10000倍と大きくかつ可逆的な抵抗特性における変化を実現した。
【0019】
さらに、本発明は、単一種の中心元素からなる金属酸化物結晶中に組成の揺らぎを積極的に導入したことにより、安定したセット・リセット電位を実現し、デバイスの誤作動の低減を実現するとともに、商用メモリとしての利用にも耐えうる十分な耐久性をも実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明にかかるスイッチング素子の製造方法について説明する。まず、熱酸化膜付きのSi基板上に、RFマグネトロンスパッタリング法によって、Ti層、Pt層、Fe又はCuOの金属酸化物層、Pt層の順に堆積し、図1の(a)に示すとおり、Ti/Pt/金属酸化物層(具体的には、Fe)/Ptの積層構造を形成した。
【0021】
ここで、Ti層は、電極としてのPt層の基板への接着性を向上させるためのいわゆる糊の役割を果たすものであって、Tiターゲットに対して、RF出力200W、Arガス圧0.5Pa、基板温度300°Cで成膜したものである。
【0022】
また、Pt層の成膜は、RF出力100W、Arガス圧0.3Pa、基板温度としては室温下で行った。一方、Feの成膜では、Feのターゲットを使用し、RF出力200W、ガス圧0.67Paの4%のArを含むOガス雰囲気下、基板温度300°Cで行った。なお、酸化物層の組成に積極的に揺らぎを導入する際には、雰囲気中のArとOとのガスの混合比を制御して、Fe3−y或いはFe2−w中のy或いはwの値を制御した。
【0023】
上述の堆積条件で成膜した酸化物層(Fe3−y)の組成を分析したところ、エネルギー分散型蛍光X線分析法によれば、y=0.5であり、X線光電子分光分析法によれば、y=0.6と見積もられた。また、酸化物層の厚さは、酸化物層としてFe層を選んだ場合には100nmに設定した。Pt層は何れも100nmとした。なお、これら各膜厚の測定には、ケーエルエー・テンコール社の触針式段差計を用いた。
【0024】
次に、図1の(b)のとおり、i線縮小投影型露光装置を用いたフォトリソグラフィーとArイオンミリングにより素子分離を行った。なお、Arイオンミリングは印加電圧300Vで行った。電極形状としては、円形を採用し、その直径は50、100、200μmの三種を用意した。その上部表面の様子(電極直径:100μm)を写したものが図2である。
【0025】
そして、図1の(c)に示すとおり、サンドイッチ構造の前記積層構造のPt表面に、プローバ装置を用いてタングステン製探針を接触させて電流電圧(I−V)特性を測定した。なお、これらの系におけるI−V特性の測定装置としては、アジレント社の半導体パラメータアナライザー4156Cを使用した。
【0026】
Ti/Pt/Fe/Ptの積層構造を採用した場合の電圧−電流特性をまとめた結果を図3に示す。最初に印加する電圧を上昇させていくと、図3中の実線で表したように、1.6V付近で、電流量が急上昇し、装置のコンプライアンス設定に達する現象が観察された。以下、この最初にやや大きめの電力を印加して低抵抗状態にする操作を便宜的に「フォーミング」と呼ぶ。
【0027】
その後、電圧を0Vに戻し再度電圧を上昇させていくと、今度は、図3中の波線で示すとおり、前回に比べ格段に大きな電流が流れる現象が観察された。しかし、先のコンプライアンス設定に到達した際の電圧よりかなり低い電圧(約0.35V)で、電流量が激減する現象が観測された。
【0028】
この図3にかかるI−V特性を、各印加電圧の掃引履歴毎に分解して別々に表示した図が図4である。まず、第1回の掃引履歴を図4の(a)に示す。すなわち、印加電圧の上昇に伴い、僅かではあるがほぼ直線的に電流量は上昇しつつ、6.5V付近で電流量が急上昇しコンプライアンス設定に到達した。
【0029】
次に、再び印加電圧を掃引していくと、図4の(b)のとおり、第1回目のスイープと異なり桁違いに大きな電流が流れ、5V付近で突如、電流量が激減する現象が観察された。その後、さらに0Vから印加電圧を掃引すると、図4の(c)のとおり、桁違いに小さい電流が流れ、0.45V付近で電流値が激減した。こうした低抵抗状態から高抵抗状態に変化させる印加履歴を施す操作を、以下便宜的に「リセット」と呼ぶ。
【0030】
4回目の掃引では、前記リセットの電圧を超えて、1.7V付近まで、高抵抗状態が維持され、図4の(d)のとおりそれを超えると急激に多量の電流が流れる低抵抗状態に至った。こうした高抵抗状態から低抵抗状態に変化させる印加履歴を施す操作を、以下便宜的に「セット」と呼ぶ。
【0031】
さらに5回目の電圧掃引では、図4の(e)のとおり、前記3回目のリセット電圧付近まで低抵抗状態が維持され、それを超えると高抵抗状態に変化することが観察された。また、6回目の電圧掃引でも、図4の(f)のとおり、前記第4回目の印加電圧の掃引と同様な電圧で、高抵抗状態から低抵抗状態に変化することが観察された。
【0032】
次に、同様な素子系について、その電極等のサンドイッチ部分の直径を、50μm、100μm、200μmの3種に変更したものについて、同様にそれぞれの電圧−電流特性の履歴をまとめたのが、図5である。ここで、丸印は50μm、三角印は100μm、四角印は200μmについてのデータを示す。
【0033】
この図5の結果から明かなとおり、電極の断面積が4倍、16倍に拡大しているにも拘わらず、高抵抗時の電流量は僅かしか変化していないことが観察される。かかる観察結果を踏まえると、金属酸化物層全面に亘って均等に電荷が移動するというよりも、十分に細い抵抗値の低い導電性パスができるというモデルを想定できる。但し、その抵抗値の絶対値からみて、金属質のフィラメントは生成していないと推定される。
【0034】
一方、直径100μmのTi/Pt/Fe/Ptの積層構造の系について、セット−リセットの電圧掃引を繰り返した場合の各回のスイッチング電圧値並びに電流値をまとめ図が、図6の(a)及び(b)である。セット−リセットの良好な反復性が確認できた。
【0035】
ここで、特徴的なのは、スイッチングする電圧値はセットもリセットも概ね一定であるのに対し、スイッチングする電流、特にセット電流の値は、掃引の都度変動する現象が観測されたことであろう。
【0036】
かかる現象も、同等で十分に細い導電性パスが金属酸化物中に複数個形成され、各パスの両端に同じ印加電圧がかかり同じ電流が流れていると考えれば、限度を超える電力が印加された場合に同時に導電性パスが断絶することになり、略一定の電圧で低抵抗状態から高抵抗状態へスイッチングする現象を説明できよう。しかも、その際のトータルの電流量の変動は、形成されている導電性パスの本数が必ずしも一定しないと考えれば、十分合理的に理解できる。
【0037】
一方、高抵抗状態から低抵抗状態へのスイッチングでは、計測レンジの違いもあって同様な傾向を見出すことができない。セット現象は、一種の絶縁破壊現象であることを考慮すると、その程度のバラツキが生じることはむしろ当然であって、その状態に至る直前のリセット履歴に依らないと考えられる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
ここでまず、金属酸化物層にCuO1−xを採用した場合についても同様に計測してみた。この場合の素子構造としては、Ti/Pt/CuO1−xの積層構造を採用した。なお、かかる場合の成膜条件は、CuOのターゲットを使用する外は、Feの成膜の場合と同じである。
【0039】
但し、酸化物層にCuO1−xを採用した場合には、図7に示されるとおり、積層構造のCuO1−x表面の直径は70μmとし、そのCuO1−x層の厚さは70nmとした。そして、図8のとおり、電極構造としては、Ptからなる上部電極層は設けずに、CuO1−x層の表面に直接プローバ装置のタングステン製探針を接触させることのより電流−電圧特性を測定した。なお、酸化物層の組成に積極的に揺らぎを導入する際には、雰囲気中のArとOとのガスの混合比を制御して、CuO1−x或いはCu2−zO中のx或いはzの値を制御した。
【0040】
その結果を図9に示す。大口径素子の場合と同様に、図9の(a)に示すフォーミングを施した後に、図9の(b)のとおり、0.8V付近でリセットが観測された。その後のセット−リセットをまとめたのが図9の(c)である。その後の印加電圧の掃引に対し、安定して、3.8V付近でセット、0.8V付近でリセットを繰り返すという、良好な反復性を有する2値安定な抵抗特性を示した。
【0041】
従って、プローバ装置のタングステン製探針(ルフト有限会社製同軸プローブCX22C)の先端直径は24μm程度であることから、大規模集積化により、素子の大きさ(断面積)が相当小さくなったとしても、十分スイッチング素子として機能することが確認できた。
【0042】
(実施例2)
次に、酸化物層の直径が100μmである、Ti/Pt/Fe/Ptの積層構造の系に対して、印可する電力として、印加電圧の掃引制御をする場合と、印加電流の掃引制御をする場合とについて、比較を試みた。
【0043】
まず、第1回掃引として、図10の(a)のとおり、印加電圧を制御してコンプライアンス設定に達する電圧まで掃引し0Vに復帰させるフォーミング処理を施した。続く第2回掃引でも印加電圧を制御したところ、図10の(b)のとおり、4.5V付近で高抵抗状態に変化しリセットし、その後1Vを超える範囲まで印加電圧を掃引しても同様に高抵抗状態が維持した。
【0044】
その後の第3回の掃引では、印加電圧の制御に代えて印加電流の制御を行った。図10の(c)のとおり、0.0008A付近(対応電圧値1.8V付近)で高抵抗状態から低抵抗状態に変化しセットしたことが確認された。その後は電流値を0.005Aの範囲まで、かかる状態が維持した。
【0045】
引き続き、第4回の掃引でも印加電流を制御したところ、図10の(d)のとおり、0.005A付近(対応電圧値:0.43V)までその前の掃引時の高抵抗状態が維持されたが、その後、急激に低抵抗状態に変化しリセットを示し、0.01A以下の範囲でそのまま低抵抗状態が維持された。
【0046】
次に、掃引方式を短時間(図中、「Short」時の積分時間は、640μs)の印加電流制御に切り換えたが、図10の(e)のとおり、電流値に若干の差異があることを除けば、第3回目掃引の印加電流制御の場合のI−V特性と同様な履歴を示した。
【0047】
さらに、掃引方式を短時間(図中、「Short」時の積分時間は、640μs)の印加電圧制御に切り換えたところ、図10の(f)のとおり、0.4V付近で高抵抗状態に変化し、その後、1.2V付近までは少なくとも高抵抗状態が維持されることが観測された。
【0048】
かかる図10にかかる一連の抵抗特性の変化を俯瞰するに、掃引制御する対象が電圧であっても電流であっても、概ね同等であって、電圧制御と電流制御には良好な対称性が見受けられ、どちらの値によっても制御可能な系であることが確認できた。しかも、電力を連続的に印加しても、640μsという短時間のみ印加してもほぼ同様の履歴を示すことからみて、必ずしも連続通電の必要性はなく、パルス信号によっても十分駆動可能である素子できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のとおり、本発明は、電圧制御、電流制御の何れの場合にあっても、同様に、抵抗値が1000倍〜10000倍というレンジで制御可能に安定して変化する素子を提供するものであることから、スイッチング素子としての利用が可能である。
【0050】
しかも、本発明は、十分に小さい断面積であっても、格段に異なる2つの抵抗特性が安定的かつ反復的に得られることから、高度に集積化した不揮発性メモリにおけるデータ貯蔵部を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明にかかる素子構造とその計測回路についての模式図
【図2】本発明にかかるスイッチング素子の上部表面写真
【図3】本発明にかかるスイッチング素子の電流−電圧特性の一例を示す図
【図4】図4にかかる電流−電圧特性を電力の掃引回毎に分解した図
【図5】本発明にかかる素子直径の電流−電圧特性に対する影響を示す図
【図6】本発明にかかるセット/リセットの電流及び電圧の推移を示した図
【図7】実施例1にかかるスイッチング素子の上部表面写真
【図8】実施例1にかかる素子構造とその計測回路についての模式図
【図9】実施例1にかかるスイッチング素子の電流−電圧特性を示す図
【図10】実施例2にかかるスイッチング素子の電流−電圧特性を電力の掃引回毎に分解した図
【符号の説明】
【0052】
I 電流計
V 電圧計




 

 


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