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圧電素子の製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法 - セイコーエプソン株式会社
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発明の名称 圧電素子の製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−19084(P2007−19084A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−196316(P2005−196316)
出願日 平成17年7月5日(2005.7.5)
代理人 【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
発明者 亀井 宏行
要約 課題
圧電特性を向上した圧電素子の製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。

解決手段
基板上に最上層がイリジウム64からなる下電極60、チタン層65、圧電体層及び上電極を順次積層して圧電素子を形成する際に、表面の水接触角が40°以上の前記チタン層65上にMOD法により前記圧電体層を形成する。
特許請求の範囲
【請求項1】
基板上に最上層がイリジウムからなる下電極、チタン層、圧電体層及び上電極を順次積層して圧電素子を形成する際に、表面の水接触角が40°以上の前記チタン層上にMOD法により前記圧電体層を形成することを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記チタン層を、表面の水接触角が60°以上の前記下電極上に形成することを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記下電極を、イリジウムからなる第1のイリジウム層、白金からなる白金層及びイリジウムからなる第2のイリジウム層を順次積層して形成することを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記圧電体層を、表面張力が20〜30mN/mであると共にその極性成分の割合が25〜35%のMOD液を用いて形成することを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの製造方法により製造された圧電素子を用いることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子の製造方法及び圧電素子を有する液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが実用化されている。例えば、このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
【0003】
また、このような圧電素子として、下電極の圧電体層側に、この圧電体層の結晶の核となるチタンを島状に形成することで、圧電体層の結晶配向を制御して、良好な圧電特性を得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、下電極の圧電体層側にチタンを形成すれば良いことが記載されているものの、チタンがどのような表面物性を持つことが望ましいか規定されていない。
【0005】
そして、下電極の表面物性が悪いと、下電極上に圧電体層をMOD法により形成した際に、MOD液の塗布むらが発生し、圧電特性の悪い圧電素子が形成されてしまうという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−191646号公報(特許請求の範囲等、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、圧電特性を向上した圧電素子の製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、基板上に最上層がイリジウムからなる下電極、チタン層、圧電体層及び上電極を順次積層して圧電素子を形成する際に、表面の水接触角が40°以上の前記チタン層上にMOD法により前記圧電体層を形成することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる第1の態様では、表面の水接触角が40°以上のチタン層上にMOD法により圧電体層を形成することによって、MOD液の塗布むらを防止して、圧電特性の優れた圧電体層を得ることができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記チタン層を、表面の水接触角が60°以上の前記下電極上に形成することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる第2の態様では、チタン層を、表面の水接触角が60°以上の下電極上に形成することにより、チタン層の表面の水接触角を40°以上にすることができる。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記下電極を、イリジウムからなる第1のイリジウム層、白金からなる白金層及びイリジウムからなる第2のイリジウム層を順次積層して形成することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる第3の態様では、導電性を確保して、下電極内の層間剥離を防止することができる。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記圧電体層を、表面張力が20〜30mN/mであると共にその極性成分の割合が25〜35%のMOD液を用いて形成することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる第4の態様では、所定のMOD液を、チタン層上にむら無く塗布することができる。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様の製造方法により製造された圧電素子を用いることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第5の態様では、液体噴射特性を向上した液体噴射ヘッドを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A´断面図である。
【0014】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態ではシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0015】
この流路形成基板10には、その他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が並設され、その長手方向外側には、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成され、各圧力発生室12の長手方向一端部とそれぞれインク供給路14を介して連通されている。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0016】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10−6/℃]であるガラスセラミックス、又はステンレス鋼などからなる。ノズルプレート20は、一方の面で流路形成基板10の一面を全面的に覆い、シリコン単結晶基板を衝撃や外力から保護する補強板の役目も果たす。また、ノズルプレート20は、流路形成基板10と熱膨張係数が略同一の材料で形成するようにしてもよい。この場合には、流路形成基板10とノズルプレート20との熱による変形が略同一となるため、熱硬化性の接着剤等を用いて容易に接合することができる。
【0017】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウム(ZrO)等からなり厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が積層形成されている。また、この絶縁体膜55上には、厚さが約0.1〜0.5μmの下電極膜60と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなり厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、金、白金又はイリジウム等からなり厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。
【0018】
ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用する。
【0019】
さらに、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
【0020】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、弾性膜50及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤34を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
【0021】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。保護基板30は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0022】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0023】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0024】
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路110が固定されている。この駆動回路110としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路110とリード電極90とは、ボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線120を介して電気的に接続されている。
【0025】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0026】
また、このリザーバ100の長手方向略中央部外側のコンプライアンス基板40上には、リザーバ100にインクを供給するためのインク導入口44が形成されている。さらに、保護基板30には、インク導入口44とリザーバ100の側壁とを連通するインク導入路35が設けられている。
【0027】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口44からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0028】
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図8を参照して説明する。なお、図3〜図6は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコン単結晶基板からなる流路形成基板10を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50及び保護膜51となる二酸化シリコン膜52を形成する。次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、ジルコニウム(Zr)層を形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55を形成する。
【0029】
次いで、下電極膜60を形成する。具体的には、まず、図3(c)に示すように、絶縁体膜55上に、密着層61を形成する。この密着層61としては、例えば、厚さが10〜50nmのチタン(Ti)及びクロム(Cr)から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。この密着層61を設けることによって、絶縁体膜55と下電極膜60との密着力を高めることができる。次いで、図4(a)に示すように、密着層61上にイリジウム(Ir)からなり厚さ20nmの第1のイリジウム層62と、白金(Pt)からなり厚さ60nmの白金層63と、白金層63上にイリジウム(Ir)からなり厚さ20nmの第2のイリジウム層64とを積層することにより下電極膜60を形成する。次いで、図4(b)に示すように、下電極膜60上にチタン(Ti)からなり厚さが1〜20nm、本実施形態では厚さが4.5nmのチタン層65を形成する。このように下電極膜60の上にチタン層65を設けることにより、後の工程で下電極膜60上にチタン層65を介して圧電体層70を形成する際に、圧電体層70の優先配向方位を、例えば、(100)に制御することができ、電気機械変換素子として好適な圧電体層70を得ることができる。なお、チタン層65は、圧電体層70を焼成により形成する際に、チタン酸鉛等中間生成物を形成し、圧電体層70の結晶化を助け良好な結晶を得られるようにするが、その厚さによって焼成後には圧電体層70、あるいは下電極膜60中に拡散するか、又は下電極膜60と圧電体層70との間に残留する。本実施形態では、図2に示すように、チタン層65は、圧電体層70を形成した際に拡散したこととする。
【0030】
また、このような密着層61、下電極膜60の各層62〜64及びチタン層65は、例えば、DCマグネトロンスパッタリング法によって成膜後、加熱処理することで形成することができる。また、少なくとも下電極膜60の各層62〜64及びチタン層65は、スパッタリング装置内の真空状態から開放せずに連続して成膜することが好ましい。すなわち、下電極膜60の剥離が比較的発生しやすい各層同士を連続して成膜することで層同士の密着力を向上させることができる。そして、このように密着層61、下電極膜60を構成する各層62〜64及びチタン層65を積層形成した後、図4(c)に示すように、パターニングすることで下電極膜60を形成する。
【0031】
このような下電極膜60上に形成するチタン層65は、その表面の水接触角を40°以上、好ましくは60°以上が好適である。これは、チタン層65上に圧電体層70をMOD法により形成する際に、チタン層65上に塗布するMOD液の塗布むらを防止して、圧電特性の向上した圧電体層70を得るためである。
【0032】
また、チタン層65の水接触角を40°以上にするには、下電極膜60の最上層である第2のイリジウム層64の水接触角を60°以上、好ましくは70°とするのが好適である。
【0033】
なお、第2のイリジウム層64及びチタン層65は、例えば、スパッタリングにより形成する際のスパッタ条件などを適宜変更することで水接触角を調整することができる。
【0034】
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属アルコキシド等の有機金属化合物をアルコールに溶解し、これに加水分解抑制剤等を加えて得たコロイド溶液からなるMOD液を塗布した後、これを乾燥して焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるMOD法(Metal Organic Deposition)を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛が挙げられるが、特にこれに限定されず、例えば、リラクサ強誘電体(例えば、PMN−PT、PZN-PT、PNN-PT等)の他の圧電材料を用いてもよい。
【0035】
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図5(a)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、下電極膜60が形成された流路形成基板10上に有機金属化合物を含むをMOD液を塗布する(塗布工程)。このとき、下電極膜60上に形成されたチタン層65の水接触角を40°以上としたため、チタン層65上にMOD液をむら無く塗布することができる。なお、MOD液としては、表面張力が20〜30mN/mであり、その極性成分が25〜35%のものを用いることで、表面の水接触角が40°以上のチタン層65上にMOD液をむら無く塗布することができる。
【0036】
次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を170〜180℃で8〜30分保持することで乾燥することができる。また、乾燥工程での昇温レートは0.5〜1.5℃/secが好適である。なお、ここで言う「昇温レート」とは、加熱開始時の温度(室温)と到達温度との温度差の20%上昇した温度から、温度差の80%の温度に達するまでの温度の時間変化率と規定する。例えば、室温25℃から100℃まで50秒で昇温させた場合の昇温レートは、(100−25)×(0.8−0.2)/50=0.9[℃/sec]となる。
【0037】
次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を300〜400℃程度の温度に加熱して約10〜30分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。また、脱脂工程では、昇温レートを0.5〜1.5℃/secとするのが好ましい。
【0038】
次に、図5(b)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。焼成工程では、圧電体前駆体膜71を680〜900℃に加熱するのが好ましく、本実施形態では、680℃で5〜30分間加熱を行って圧電体前駆体膜71を焼成して圧電体膜72を形成した。また、焼成工程では、昇温レートを15℃/sec以下とするのが好ましい。
【0039】
なお、このような乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置などを用いることができる。
【0040】
そして、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回、本実施形態では10回繰り返すことで、図5(c)に示すように10層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、ゾルの1回あたりの膜厚が0.1μm程度の場合には、圧電体層70全体の膜厚は約1.1μm程度となる。
【0041】
このように、水接触角が40°以上のチタン層65上に圧電体層70をMOD法により形成することで、MOD液をむら無く塗布して、圧電特性の良好な圧電体層70を得ることができる。
【0042】
ここで、スパッタ条件が異なる装置A〜Cにより、流路形成基板10の絶縁体膜55上に下電極膜60及びチタン層65を形成した後、装置A〜Cによって形成した下電極膜60及びチタン層65を、熱処理条件の異なる装置D及び装置Eにより加熱処理した。その後、チタン層65上にMOD法により圧電体層70を形成した。そして、各装置A〜Cにより形成した下電極膜60の水接触角と圧電体層70の配向度とを測定した。この結果を下記表1に示す。
【0043】
【表1】


【0044】
表1に示すように、装置Aにより形成したチタン層65では、表面の水接触角が高く、チタン層65の膜厚を増加させても、表面の水接触角は大きく低下せず、最適なチタン層65の膜厚4.5nm程度で極小となることが分かる。また、装置Bにより形成したチタン層65では、表面の水接触角が装置Aにより形成したチタン層65に比べて低いものの、チタン層65の膜厚を増加させても、表面の水接触角は大きく低下しないことが分かる。さらに、装置Cにより形成したチタン層65では、表面の水接触角が装置Aにより形成したチタン層65に比べて低く、チタン層65の膜厚を増加させた際に大きく値が低下することが分かる。また、装置Cにより形成した下電極膜60及びチタン層65を装置Eにより加熱処理すると、チタン層65の水接触角はさらに低下してしまうことが分かる。
【0045】
そして、このような下電極膜60及びチタン層65上に形成した圧電体層70は、装置A及び装置Bにより形成した下電極膜60及びチタン層65上の圧電体層70は、何れも(100)優先配向しており、それぞれ配向度が70%以上、50〜70%と優れた圧電特性を有する圧電体層70を得ることができる。これに対して、装置Cにより形成した下電極膜60及びチタン層65上の圧電体層70は(111)優先配向しており、(100)配向度が30%以下と低く、優れた圧電特性を得ることができない。なお、ここで言う配向度とは、(100)XRD強度/{(100)XRD強度+(110)XRD強度+(111)XRD強度}から算出される。また、表1に示す最適チタン層膜厚は、(100)配向度が極大となる膜厚である。
【0046】
したがって、チタン層65の表面の水接触角が高いほど、圧電体層70の(100)配向度は高くなり、チタン層65の水接触角を40°以上(好ましくは60°以上)とすることにより、チタン層65上に塗布するMOD液の塗布むらを防止して、優れた圧電特性の圧電体層70を得ることができることが分かる。
【0047】
なお、圧電体層70を形成するためのMOD液の特性は、表面張力が26mN/mで、極性成分の割合が31.1%であった。MOD液の表面張力は、懸滴法により空気中及びペルフロロヘキサン中での測定により求めた。また、ここで言う極性成分の割合とは、γ(表面張力の極性成分)/{γ(表面張力の極性成分)+γ(表面張力の分散成分)}から算出される。
【0048】
上述したように、図5(a)〜図5(c)に示す工程によって圧電体層70を形成した後は、図6(a)に示すように、例えば、イリジウムからなる上電極膜80を流路形成基板10の全面に形成し、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。次に、リード電極90を形成する。具体的には、図6(b)に示すように、流路形成基板10の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
【0049】
次に、図6(c)に示すように、パターニングされた複数の圧電素子300を保持する保護基板30を、流路形成基板10上に例えば接着剤34によって接合する。なお、保護基板30には、リザーバ部31、圧電素子保持部32等が予め形成されている。また、保護基板30は、例えば、400μm程度の厚さを有するシリコン単結晶基板からなり、保護基板30を接合することで流路形成基板10の剛性は著しく向上することになる。
【0050】
次に、図6(d)に示すように、流路形成基板10の圧電素子300が形成された面とは反対側の二酸化シリコン膜52を所定形状にパターニングすることで保護膜51を形成し、保護膜51をマスクとして流路形成基板10をKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、流路形成基板10に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。
【0051】
その後は、流路形成基板10の保護基板30とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板30にコンプライアンス基板40を接合することで、図1に示すようなインクジェット式記録ヘッドが形成される。
【0052】
なお、実際には、上述した一連の膜形成及び異方性エッチングによって一枚のウェハ上に多数のチップを同時に形成し、プロセス終了後、図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10毎に分割することでインクジェット式記録ヘッドが形成される。
【0053】
(他の実施形態)
以上、各実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂した後、焼成して圧電体膜72を形成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体前駆体膜71を塗布、乾燥及び脱脂する工程を複数回、例えば、2回繰り返し行った後、焼成することで圧電体膜72を形成するようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態1では、下電極膜60をパターニングすることにより形成した後に圧電体層70を形成するようにしたが、デバイスの関係上、下電極膜をパターニングすることなく流路形成基板10上の全面に形成した後、1層目の圧電体膜72を形成し、その後、下電極膜をパターニングするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 下電極膜、 61 密着層、 62 第1のイリジウム層、 63 白金層、 64 第2のイリジウム層、 65 チタン層、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 110 駆動回路、 120 接続配線、 300 圧電素子




 

 


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