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圧電素子、電子デバイスおよび電子機器 - セイコーエプソン株式会社
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発明の名称 圧電素子、電子デバイスおよび電子機器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−13009(P2007−13009A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−194283(P2005−194283)
出願日 平成17年7月1日(2005.7.1)
代理人 【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
発明者 藤森 修
要約 課題
長期にわたり優れた特性を発揮することができる圧電素子、この圧電素子を備える電子デバイス、および、この電子デバイスを備える電子機器を提供すること。

解決手段
本発明の圧電素子4は、主として圧電材料で構成された圧電体41と、圧電体41に接合された1対の電極42、43とを有し、1対の電極42、43に電圧を印加することにより、圧電体41を変位または変形させるよう構成されたものであって、電極42、43が付された圧電体41の少なくとも一部が、主として無機材料で構成された保護膜44で覆われ、保護膜44の少なくとも一部に、撥水処理が施されている。
特許請求の範囲
【請求項1】
主として圧電材料で構成された圧電体と、
前記圧電体に接合された1対の電極とを有し、
前記1対の電極に電圧を印加することにより、前記圧電体を変位または変形させるよう構成された圧電素子であって、
前記電極が付された前記圧電体の少なくとも一部が、主として無機材料で構成された保護膜で覆われ、
前記保護膜の少なくとも一部に、撥水処理が施されていることを特徴とする圧電素子。
【請求項2】
前記圧電体は、前記1対の電極の間に介在している請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記撥水処理は、撥水性を付与し得るイオンを前記保護膜に注入することである請求項1または2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記撥水処理は、撥水性を有する材料で構成された撥水膜を前記保護膜の外表面に形成することである請求項1または2に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記圧電体は層状をなしており、前記圧電体の厚さをA[nm]とし、前記撥水膜の厚さをB[nm]としたときに、B/Aが1/5000〜1/10である請求項4に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記撥水膜の厚さをB[nm]とし、前記保護膜の厚さをC[nm]としたときに、B/Cが1/100〜1/10である請求項4または5に記載の圧電素子。
【請求項7】
前記圧電体は層状をなしており、前記圧電体の厚さをA[nm]とし、前記保護膜の厚さをC[nm]としたときに、C/Aが1/500〜1/10である請求項1ないし6のいずれかに記載の圧電素子。
【請求項8】
前記撥水処理による撥水性の程度は、水の接触角70〜120°である請求項1ないし7のいずれかに記載の圧電素子。
【請求項9】
前記撥水処理は、前記保護膜の外表面全域に施されている請求項1ないし8のいずれかに記載の圧電素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の圧電素子を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項11】
前記圧電素子は、基板に接合されており、前記保護膜は、前記圧電素子の外表面のうち前記基板に覆われていない部分を覆う請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記基板は、エッチング処理により形成されたものであり、前記保護膜は、前記エッチングに用いられる薬液から保護する機能も有する請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれかに記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェットヘッドのような電子デバイスには、その駆動力を得るために、圧電素子が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
このような圧電素子は、例えば、1対の電極の間に、圧電材料を主材料として構成された圧電体を介在させてなるものである。圧電体は、湿気や製造工程に用いる薬液等の水分により、その特性が劣化しやすいため、例えば、特許文献1では、圧電体を覆うように保護膜が形成されている。
【0003】
この保護膜は、耐久性および水バリア性を優れたものとするために、無機材料で構成されている。また、この保護膜は、圧電体の変位を阻害しないように、できるだけ薄くする必要がある。
しかしながら、このように無機材料で構成された保護膜を薄く成膜すると、ピンホールやクラックなどの欠損部を生じて、保護膜の水バリア性を損ねてしまう場合がある。その結果、特許文献1にかかる圧電素子は、欠損部からの水分の浸入により、長期にわたり優れた特性を発揮することが難しい。
【0004】
【特許文献1】特開平11−235818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、長期にわたり優れた特性を発揮することができる圧電素子、この圧電素子を備える電子デバイス、および、この電子デバイスを備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の圧電素子は、主として圧電材料で構成された圧電体と、
前記圧電体に接合された1対の電極とを有し、
前記1対の電極に電圧を印加することにより、前記圧電体を変位または変形させるよう構成された圧電素子であって、
前記電極が付された前記圧電体の少なくとも一部が、主として無機材料で構成された保護膜で覆われ、
前記保護膜の少なくとも一部に、撥水処理が施されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、保護膜にピンホールやクラックなどの欠損部が生じていても、湿気や製造工程に用いる薬液などの水分が欠損部を通じて侵入するのを防止することができる。その結果、水分による圧電体の特性の劣化を防止し、圧電素子の特性を長期にわたり優れたものとすることができる。
言い換えすれば、ピンホールやクラックなどの欠損部が生じやすい薄い保護膜であっても、水分による圧電体の特性の劣化を確実に防止し、圧電素子の特性を長期にわたり優れたものとすることができる。このような薄い保護膜は、圧電体の変位を阻害するのを最小限に抑えることができるので、圧電素子の特性を優れたものとすることができる。
【0008】
本発明の圧電素子では、前記圧電体は、前記1対の電極の間に介在していることが好ましい。
これにより、本発明の圧電素子をピエゾ素子に適用することができる。本発明は、ピエゾ素子のように圧電体の変位量の大きい場合であっても、水分による圧電体の劣化を防止しつつ、保護膜の厚さを薄くして圧電体の変位の応答性を優れたものとすることができる。このように、本発明は、ピエゾ素子のように圧電体の変位量が大きく保護膜にクラックが生じやすい場合に特に効果的である。
【0009】
本発明の圧電素子では、前記撥水処理は、撥水性を付与し得るイオンを前記保護膜に注入することであることが好ましい。
これにより、保護膜の厚さを抑えつつ、保護膜に撥水処理を施すことができる。この場合、保護膜の厚さが薄いので、圧電体の変位の応答性をより優れたものとすることができる。
本発明の圧電素子では、前記撥水処理は、撥水性を有する材料で構成された撥水膜を前記保護膜の外表面に形成することであることが好ましい。
これにより、比較的簡単に、保護膜に撥水処理を施すことができる。
【0010】
本発明の圧電素子では、前記圧電体は層状をなしており、前記圧電体の厚さをA[nm]とし、前記撥水膜の厚さをB[nm]としたときに、B/Aが1/5000〜1/10であることが好ましい。
これにより、撥水膜が圧電体の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜の水バリア性をより優れたものとすることができる。
本発明の圧電素子では、前記撥水膜の厚さをB[nm]とし、前記保護膜の厚さをC[nm]としたときに、B/Cが1/100〜1/10であることが好ましい。
これにより、撥水膜が圧電体の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜の水バリア性をより優れたものとすることができる。
【0011】
本発明の圧電素子では、前記圧電体は層状をなしており、前記圧電体の厚さをA[nm]とし、前記保護膜の厚さをC[nm]としたときに、C/Aが1/500〜1/10であることが好ましい。
これにより、保護膜が圧電体の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜の水バリア性をより優れたものとすることができる。
【0012】
本発明の圧電素子では、前記撥水処理による撥水性の程度は、水の接触角70〜120°であることが好ましい。
これにより、より確実に、湿気や製造工程に用いる薬液などの水分が欠損部を通じて侵入するのを防止することができる。
本発明の圧電素子では、前記撥水処理は、前記保護膜の外表面全域に施されていることが好ましい。
これにより、より確実に、水分による圧電体の劣化を防止するとともに、水分による電極の劣化も防止することができる。
【0013】
本発明の電子デバイスは、本発明の圧電素子を備えることを特徴とする。
これにより、長期にわたり優れた特性を有する電子デバイスを提供することができる。
本発明の電子デバイスでは、前記圧電素子は、基板に接合されており、前記保護膜は、前記圧電素子の外表面のうち前記基板に覆われていない部分を覆うことが好ましい。
これにより、アクチュエータのような電子デバイスの特性を長期にわたり優れたものとすることができる。
【0014】
本発明の電子デバイスでは、前記基板は、エッチング処理により形成されたものであり、前記保護膜は、前記エッチングに用いられる薬液から保護する機能も有することが好ましい。
これにより、電子デバイスの製造工程を簡略化するとともに、歩留まりの低下を防止することができる。
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、長期にわたり優れた特性を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の圧電素子、電子デバイスおよび電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の説明では、本発明の圧電素子としてピエゾ素子、本発明の電子デバイスとしてインクジェットヘッド、本発明の電子機器としてインクジェットプリンタを一例に説明する。
【0016】
<インクジェットプリンタ(電子機器)>
まず、本発明の電子機器、すなわち本発明の電子デバイスを備える電子機器の一例として、インクジェットプリンタを説明する。
図1は、本発明の電子機器の一例であるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。なお、以下の説明では、図1中、上側を「上部」、下側を「下部」という。
【0017】
図1に示すインクジェットプリンタ300は、装置本体302を備えており、上部後方に記録用紙(記録媒体)Pを設置するトレイ321と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口322と、上部面に操作パネル307とが設けられている。
操作パネル307は、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体302の内部には、主に、往復動するヘッドユニット303を備える印刷装置(印刷手段)304と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置304に送り込む給紙装置(給紙手段)305と、印刷装置304および給紙装置305を制御する制御部(制御手段)306と、各部に電力を供給する電源部(図示せず)とを有している。
【0018】
制御部306の制御により、給紙装置305は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット303の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット303が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット303の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
印刷装置304は、ヘッドユニット303と、ヘッドユニット303の駆動源となるキャリッジモータ341と、キャリッジモータ341の回転を受けて、ヘッドユニット303を往復動させる往復動機構342とを備えている。
【0019】
ヘッドユニット303は、その下部に、本発明の電子デバイスであるインクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1にインクを供給するインクカートリッジ331と、インクジェットヘッド1およびインクカートリッジ331を搭載したキャリッジ332とを有している。
なお、インクカートリッジ331として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット303には、各色にそれぞれ対応したインクジェットヘッド1が設けられることになる。
【0020】
往復動機構342は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸342Aと、キャリッジガイド軸342Aと平行に延在するタイミングベルト342Bとを有している。
キャリッジ332は、キャリッジガイド軸342Aに往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト342Bの一部に固定されている。
キャリッジモータ341の動作により、プーリ(図示せず)を介してタイミングベルト342Bを正逆走行させると、キャリッジガイド軸342Aに案内されて、ヘッドユニット303が往復動する。そして、この往復動の際に、インクジェットヘッド1から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0021】
給紙装置305は、その駆動源となる給紙モータ351と、給紙モータ351の作動により回転する給紙ローラ352とを有している。
給紙ローラ352は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ352aと駆動ローラ352bとで構成され、駆動ローラ352bは給紙モータ351に連結されている。これにより、給紙ローラ352は、トレイ321に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置304に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ321に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
【0022】
制御部306は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置304や給紙装置305等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部306は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、後述する本発明の圧電素子(振動源)を駆動する圧電素子駆動回路、印刷装置304(キャリッジモータ341)を駆動する駆動回路、給紙装置305(給紙モータ351)を駆動する駆動回路、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路、および、印刷データを処理するデータ処理回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
また、CPUには、例えば、インクジェットヘッド1の周囲の環境条件(例えば、温度、湿度等)、インクの吐出状況、記録用紙(記録媒体)P上の印刷状況、記録用紙Pの供給状態、記録用紙Pの印刷部位付近の雰囲気のインク溶媒濃度等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。
【0023】
このようなインクジェットプリンタ300では、まず、CPUが、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。次いで、データ処理回路は、この印刷データを処理する。次いで、CPUは、この処理データおよび各種センサの検出データに基づいて、各駆動回路にそれぞれ駆動信号を出力する。この駆動信号により印刷装置304および給紙装置305は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
【0024】
<インクジェットヘッド(電子デバイス)>
次に、本発明の電子デバイス、すなわち本発明の圧電素子を備える電子デバイスの一例として、前述したインクジェットヘッド1を詳細に説明する。
図2は、インクジェットヘッド1を示す部分断面分解斜視図、図3は、図2におけるA−A線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」、紙面手前側を「左」、紙面奥側を「右」と言い、図3中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」、左側を「左」、右側を「右」と言う。
【0025】
図2および図3に示すインクジェットヘッド1にあっては、キャビティ基板2の上面に、複数のノズル孔32を有するノズル基板3が接合され、キャビティ基板2とノズル基板3との間に、複数のノズル孔32に対応するように複数のインク吐出室22が区画形成されている。そして、複数のインク吐出室22に対応するように、前記キャビティ基板2の下面には、インク吐出の駆動源である複数の圧電素子4が接合されている。
【0026】
より具体的に説明すると、キャビティ基板2には、1つの共有インク室21と複数のインク吐出室22とを形成するための溝が形成され、ノズル基板3には、1つの共通インク室21と複数のインク吐出室22とを連通させる複数のインクオリフィス31を形成するための溝が形成されている。そして、キャビティ基板2とノズル基板3とが接合されることにより、これらの間に、共通インク室21と、インクオリフィス31、複数のインク吐出室22が区画形成されている。このようなキャビティ基板2およびノズル基板3は、それぞれ、例えば、シリコンを主材料として構成されている。
ノズル基板3には、各インク吐出室22の先端側の部分に対応する位置に、ノズル孔32が形成されており、ノズル孔32はインク吐出室22に連通している。
【0027】
キャビティ基板2の各インク吐出室22の下壁部分は、薄肉とされており、面外方向、すなわち図2において上下方向に弾性変位可能な振動板23として機能するようになっている。
また、キャビティ基板2は、共通インク室21の下壁部分に、外部から共通インク室21内にインクを供給するためのインク供給口24が形成されている。インクは、外部の図示しないインクタンクから、インク供給口24を通って共通インク室21に供給される。共通インク室21に供給されたインクは、各インクオリフィス31を通って、各インク吐出室22に供給される。
【0028】
キャビティ基板2の各振動板23の下面に、圧電素子4が接合されている。すなわち、複数の圧電素子4が、複数の振動板23に対応して、キャビティ基板2の下面に接合されている。各圧電素子4は、図示しない電圧印加手段に接続されており、電圧が印加されることにより、キャビティ基板2の振動板23を振動(変位)させるようになっている。なお、圧電素子4については後に詳述する。
【0029】
以上のようなインクジェットヘッド1では、図示しない電圧印加手段が圧電素子4に駆動電圧を印加すると、振動板23がノズル基板3と逆側へ撓んで変位し、インク吐出室22の容積が拡大する。次に、駆動電圧を解除すると、振動板23はその弾性復帰力によって復帰し、インク吐出室22の容積が急激に収縮する。このときに発生するインク圧力により、インク吐出室22を満たすインクの一部が、このインク吐出室22に連通しているノズル孔32からインク滴として吐出される。
【0030】
<圧電素子>
次に、本発明の圧電素子の一例として、前述した圧電素子4(ピエゾ素子)を詳細に説明する。
各圧電素子4は、圧電材料を主材料として構成された圧電体(圧電体層)41と、この圧電体41を挟持する1対の電極42、43とを有している。そして、上側に位置する電極42が振動板23の下面に接合されているとともに、下側に位置する電極43が付された圧電体41を覆うように保護膜44が設けられている。
このような圧電素子4にあっては、電極42と電極43との間に電圧を印加することにより、圧電体41を変位(変形)させて駆動する。これにより、振動板23を振動させる。このような圧電素子4は、圧電体41が1対の電極42、43の間に介在していて、ピエゾ素子を構成している。
【0031】
圧電体41は、振動板23の下面全体をほぼ覆うように形成されている。なお、圧電体41の形状、大きさは、振動板23を振動可能であれば、これに限定されない。
圧電体41を構成する圧電材料としては、例えば、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、水晶、その他、各種のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウムおよびチタン酸ジルコン酸鉛のうちの少なくとも1種を主とするものが好ましい。このような材料で圧電体41を構成することにより、より高い周波数で圧電素子4を駆動することができる。
【0032】
電極42は、圧電体41よりも長尺となっていて、キャビティ基板2の下面上で電源(図示せず)との接続が可能となっている。
一方、電極43は、圧電体41の長さよりも長尺で、かつ、電極42の長さよりも短尺になっている。したがって、電極43は、電極42上で電源(図示せず)との接続が可能となっている。
なお、電極42と電極43との間には、圧電体41のほかに、絶縁層45が介在していて、これらの間の短絡を防止している。
【0033】
電極42、43の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Au、Ag、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Ir、Cuまたはこれらを含む合金等の導電性材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記導電性高分子材料は、通常、酸化鉄、ヨウ素、無機酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。これらの中でも、電極の構成材料としては、それぞれ、Pt、Ni、Cu、Co、Au、Pd、Ag、Cr、Ti、Ir、Alまたはこれらを含む合金を主とするものが好適に用いられる。
【0034】
保護膜44は、複数の圧電素子4を覆うように形成されている。本実施形態では、複数の圧電素子4は、1つの保護膜44によって覆われている。
より具体的には、保護膜44は、キャビティ基板2と反対側で、圧電体41を覆うように設けられている。
また、保護膜44は、電源との接続部を除いて、電極43の一部も覆っている。これにより、電極43の劣化を防止するとともに、水分による圧電体41の劣化をより確実に防止することができる。
【0035】
保護膜44は、主として無機材料で構成されていて、水バリア性を有し、水分による圧電体41の劣化を防止する機能を有する。
この無機材料としては、保護膜44を水バリア性を有するものとすることができるものであれば、特に限定されず、各種無機材料を用いることができる。例えば、前記無機材料としては、Al、Si、Ta、Nb、Ti、Ir、Zr、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、W、Mo、Cr、Znまたはこれらを含む合金、酸化物、窒化物、酸窒化物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
そして、この保護膜44の少なくとも一部には、撥水処理が施されている。これにより、保護膜44にピンホールやクラックなどの欠損部が生じていても、湿気や製造工程に用いる薬液などの水分が欠損部を通じて侵入するのを防止することができる。その結果、水分による圧電体41の特性の劣化を防止し、圧電素子4の特性を長期にわたり優れたものとすることができる。
【0037】
言い換えすれば、ピンホールやクラックなどの欠損部が生じやすい薄い保護膜44であっても、水分による圧電体41の特性の劣化を確実に防止し、圧電素子4の特性を長期にわたり優れたものとすることができる。このような薄い保護膜44は、圧電体41の変位を阻害するのを最小限に抑えることができるので、圧電素子4の特性を優れたものとすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、前述したように圧電素子4がピエゾ素子を構成しているが、本発明は、ピエゾ素子のように圧電体41の変位量の大きい場合であっても、水分による圧電体41の劣化を防止しつつ、保護膜44の厚さを薄くして圧電体41の変位の応答性を優れたものとすることができる。このように、本発明は、ピエゾ素子のように圧電体41の変位量が大きく保護膜44にクラックが生じやすい場合に特に効果的である。
【0039】
この撥水処理としては、保護膜44の外表面に撥水性を付与することができるものであれば、特に限定されず、例えば、フッ素イオン等の撥水性を付与し得るイオンを注入(打ち込む)方法、撥水性を有する撥水膜を保護膜44の外表面に形成する方法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、この撥水処理については、後に詳述する。
なお、各圧電素子4の圧電体41を覆う保護膜は、それぞれ別体として形成されていてもよい。また、保護膜は、圧電素子4の圧電体41の少なくとも一部を覆うように形成されていれば、本発明の効果を得ることができる。
【0040】
ここで、前述した圧電素子4(ピエゾ素子)の製造方法の一例(第1の例)を詳細に説明する。
(第1の例)
図4は、本実施形態のピエゾ素子4の製造方法の第1の例を説明するための図(縦断面図)である。なお、図4は、図2におけるA−A線断面に対応する断面を示している。また、以下では、説明の便宜上、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0041】
第1の例における圧電素子4の製造方法は、[1A]キャビティ基板2を製造するための基板2aを用意する工程と、[1B]電極42を形成する工程と、[1C]圧電体41を形成する工程と、[1D]絶縁層45を形成する工程と、[1E]電極43を形成する工程と、[1F]保護膜44のための処理前保護膜を形成する工程と、[1G]処理前保護膜に撥水処理を施して保護膜44を形成する工程とを有する。以下、各工程を順次詳細に説明する。
[1A]
まず、キャビティ基板2を製造するための基板として、図4(a)に示すように、例えば、シリコンを主材料として構成された基板2aを用意する。
【0042】
[1B]
次に、図4(b)に示すように、基板2aの一方の面上に、電極42を形成する。
より具体的には、基板2aの一方の面上に導電膜を形成した後、この導電膜の不要部分を除去することにより、電極42を形成する。
導電膜の構成材料としては、前述したような電極42、43の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0043】
導電膜の形成方法としては、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等が挙げられる。
導電膜の不要部分の除去に際しては、例えば、導電膜上に、フォトリソグラフィ法によって、電極42に対応する平面形状のフォトレジストを形成する。そして、このフォトレジストをマスクとして、導電膜をエッチングした後、フォトレジストを剥離除去する。これにより、図4(b)に示すように、基板2aの一方の面上に電極42が形成される。
この導電膜のエッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
[1C]
次に、図4(c)に示すように、電極42上に、圧電体41を形成する。
圧電体41の形成方法としては、前述した電極42の形成方法と同様のものを用いることができる。
[1D]
次に、図4(d)に示すように、電極42上に、圧電体41の隣接するように、絶縁層45を形成する。
絶縁層45の形成方法としては、前述した電極42の形成方法と同様のものを用いることができる。
【0045】
[1E]
次に、図4(e)に示すように、圧電体41上および絶縁層45上に、電極43を形成する。
電極43の形成方法としては、前述した電極42の形成方法と同様のものを用いることができる。
【0046】
[1F]
次に、図4(f)に示すように、電極43上および圧電体41の側面を覆うように、保護膜44のための処理前保護膜44aを形成する。
より具体的には、前述した電極42の形成方法と同様にして、主として無機材料で構成された処理前保護膜44aを形成する。
【0047】
[1G]
次に、図4(g)に示すように、処理前保護膜44aに、フッ素イオン等の撥水性を付与し得るイオンを注入して(打ち込んで)、保護膜44を形成する。これにより、圧電素子4が形成される。その後、図4(g)に示すように、このように圧電素子4の形成された基板2aの他方の面(圧電素子4が形成されている面と反対側の面)に、共通インク室21のための溝21aとインク吐出室22のための溝22aを形成して、キャビティ基板2を得る。
【0048】
処理前保護膜44aに施す撥水処理として、フッ素イオン等の撥水性を付与し得るイオンを注入(打ち込む)方法を用いる場合、具体的には、主として無機材料で構成された処理前保護膜44aが形成された基板2aをチャンバー内にセット(設置)した状態で、ガス状のフッ素化合物を供給しつつ電界を付与する。これにより、ガス状のフッ素化合物がプラズマ化されてフッ素プラズマが発生する。このフッ素プラズマが処理前保護膜44aの外表面に照射され、処理前保護膜44aの外表面に、例えば、吸着、結合等する。その結果、処理前保護膜44aの外表面付近がフッ素化されて、少なくとも外表面(全体または外表面付近のみ)に撥水性を有する保護膜44が得られる。
かかる方法によれば、処理前保護膜44aの外表面をほぼ全体にわたって均一にフッ素化することができ、外表面に均一に(ムラなく)撥水性を有する保護膜44を得ることができる。
【0049】
処理前保護膜44aの構成材料としては、前述した保護膜44の構成材料と同様のものを用いることができる。
圧電体41の厚さをA[nm]とし、保護膜44または処理前保護膜44aの厚さをC[nm]としたときに、C/Aが1/500〜1/10であるのが好ましく、C/Aが1/500〜1/20であるのがより好ましい。これにより、保護膜44が圧電体41の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜44の水バリア性をより優れたものとすることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、圧電体41が1層で構成されているが、圧電体41が複数層を積層して構成されていてもよい。この場合、圧電体41の厚さとは、積層されたものの合計の厚さをいう。
また、保護膜44または処理前保護膜44aの厚さは、10〜150nmであるのが好ましく、20〜100nmであるのがより好ましい。これにより、保護膜44が圧電体41の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜44の水バリア性をより優れたものとすることができる。
【0051】
また、ガス状のフッ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、四フッ化メタン(CF)、四フッ化エチレン(C)、六フッ化プロピレン(C)、八フッ化ブチレン(C)、SF等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなガス状のフッ素化合物は、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス等の不活性ガスとともに、供給するようにしてもよい。これにより、比較的高い圧力下(例えば、大気圧下)において、フッ素プラズマを発生させることができるようになり、フッ素プラズマ処理をより簡便に行うことが可能になる。
【0052】
このガス状のフッ素化合物を供給する際の流量は、10〜500ml/min程度であるのが好ましく、10〜300ml/min程度であるのがより好ましい。
放電電力は、100〜1500W程度であるのが好ましく、300〜500W程度であるのがより好ましい。
処理温度は、10〜200℃程度であるのが好ましく、50〜100℃程度であるのがより好ましい。
より具体的には、例えば、ガス状のフッ素化合物としてヘリウムおよび四フッ化メタンを使用し、大気圧プラズマによりフッ素プラズマを生じさせる場合、ヘリウムの流量と四フッ化メタンの流量は、それぞれ、10〜100ml/minとし、放電電力を700W程度とするのが好適である。
【0053】
また、例えば、ガス状のフッ素化合物として四フッ化メタンまたはSFを使用し、真空プラズマによりフッ素プラズマを生じさせる場合、真空度を1〜100Paとし、四フッ化メタンまたはSFの流量は、10〜500ml/minとし、放電電力を800〜1500W程度とするのが好適である。
ガス状のフッ素化合物の流量、放電電力および処理温度を、それぞれ、前記範囲とすることにより、処理前保護膜の少なくとも外表面付近に、より容易かつ確実に撥水性を付与することができる。
【0054】
以上説明したように、撥水処理として、撥水性を付与し得るイオンを処理前保護膜の外表面に注入する方法を用いると、保護膜44の厚さを抑えつつ、処理前保護膜44aに撥水処理を施すことができる。この場合、保護膜44の厚さが薄いので、圧電体41の変位の応答性をより優れたものとすることができる。
また、前述したような撥水処理は、保護膜44の外表面全域に施されているのが好ましい。これにより、より確実に、水分による圧電体41の劣化を防止することができる。
以上のようにして、圧電素子4を得ることができる。
【0055】
このように圧電素子4が形成された後に、基板2aの他方の面(圧電素子4が形成されている面と反対側の面)に、図4(g)に示すように、共通インク室21のための溝21aとインク吐出室22のための溝22aを形成して、キャビティ基板2を得る。
溝21a、22aの形成方法としては、特に限定されず、例えば、ウェットエッチングやドライエッチングを用いることができる。溝21a、22aの形成に際し、撥水処理された保護膜44により圧電体41が覆われているので、エッチングの際に、現像液、エッチング液、洗浄液等の水分による圧電体41の劣化を防止することができる。すなわち、保護膜44は、このエッチングに用いられるエッチング液等の薬液から保護する機能も有する。これにより、電子デバイスの製造工程を簡略化するとともに、歩留まりの低下を防止することができる。
【0056】
このようにして得られたキャビティ基板2に、ノズル基板3を接合することにより、インクジェットヘッド1を得ることができる。
なお、前述した圧電素子4の製造方法では、電極42、圧電体41、絶縁層45、電極43、保護膜44を順次形成したが、これらを形成するための層を予め積層し、この積層体の一部を除去することにより、電極42、圧電体41、絶縁層45、電極43、保護膜44を一括して形成することもできる。
【0057】
次に、前述した圧電素子4(ピエゾ素子)の製造方法の他の例(第2の例)を詳細に説明する。
(第2の例)
図5は、本実施形態のピエゾ素子4の製造方法の第2の例を説明するための図(縦断面図)である。なお、図5は、図2におけるA−A線断面に対応する断面を示している。また、以下では、説明の便宜上、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0058】
以下、圧電素子4の製造方法の第2の例について、前述した圧電素子4の製造方法の第1の例との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2の例における圧電素子4の製造方法は、[2A]キャビティ基板2を製造するための基板2aを用意する工程と、[2B]電極42を形成する工程と、[2C]圧電体41を形成する工程と、[2D]絶縁層45を形成する工程と、[2E]電極43を形成する工程と、[2F]保護膜44のための処理前保護膜を形成する工程と、[2G]処理前保護膜に撥水処理を施して保護膜44を形成する工程とを有する。
第2の例においては、工程[2G]以外は、第1の例と同様である。すなわち、第2の例における工程[2A]〜[2F]は、第1の例における工程[2A]〜[2F]と同様である。
【0059】
[2G]
図5(g)に示すように、処理前保護膜44aの外表面に、撥水性を有する撥水膜44bを形成して、保護膜44を形成する。これにより、圧電素子4が形成される。その後、図5(g)に示すように、このように圧電素子4の形成された基板2aの他方の面(圧電素子4が形成されている面と反対側の面)に、共通インク室21のための溝21aとインク吐出室22のための溝22aを形成して、キャビティ基板2を得る。
【0060】
処理前保護膜44aに施す撥水処理として、撥水性を有する撥水膜44bを処理前保護膜44aの外表面に形成する方法を用いる場合、より具体的には、例えば、処理前保護膜44aの外表面に、撥水膜形成用材料を供給した後、これを必要に応じて乾燥すること等により形成することができる。この場合、撥水膜44bは、基板2aの一方の面全体を覆うように形成した後、不要部分を除去するようにして形成してもよいし、基板2aの一方の面側の必要部分のみに選択的に形成してもよい。
【0061】
処理前保護膜44aの外表面に撥水膜形成用材料を選択的に供給する方法としては、例えば、撥水膜形成用材料を含浸させたパッドまたはスタンパ等を、処理前保護膜44aの外表面に接触させる方法、撥水膜形成用材料をインクジェット法により処理前保護膜44aの外表面に吐出する方法等が挙げられるが、前者の方法を用いるのが好ましい。かかる方法によれば、比較的容易かつ確実に、処理前保護膜44aの外表面に撥水膜を選択的に形成することができる。
【0062】
撥水膜44bの構成材料としては、例えば、撥水性を示す官能基を有するカップリング剤や、撥水性の有機材料等が挙げられる。
また、撥水膜形成用材料には、これらを溶媒または分散媒に混合して調製した溶液または分散液を用いることができる。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、有機リン酸系カップリング剤、シリルパーオキサイド系カップリング剤等を用いることができる。
【0063】
撥水性を示す官能基としては、例えば、フルオロアルキル基、アルキル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基等が挙げられる。
カップリング剤の具体例としては、例えば、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
一方、撥水性の有機材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)のようなフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0065】
また、溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0066】
撥水膜形成用材料における撥水膜44bの構成材料の濃度は、構成材料の種類等に応じて、例えば、次のようにするのが好ましい。
カップリング剤の場合、0.01〜0.5wt%程度であるのが好ましく、0.1〜0.3wt%程度であるのがより好ましい。また、有機材料の場合、0.01〜0.5wt%程度であるのが好ましく、0.1〜0.3wt%程度であるのがより好ましい。
【0067】
撥水膜形成用材料としてカップリング剤の溶液を用いる場合、カップリング剤の溶液に浸漬させて処理前保護膜44aの外表面にカップリング剤を付与するに際しては、浸漬時間は1〜60minであるのが好ましく、液温は20〜60℃であるのが好ましく、濃度(溶媒としてエタノールまたは純水を用いる場合)は0.1〜10%であるのが好ましい。
【0068】
また、処理前保護膜44aの外表面に付与されたカップリング剤の溶液を乾燥するに際しては、ホットプレートを用いる場合、乾燥温度50〜150℃、乾燥時間3〜6minとするのが好ましく、また、オーブンを用いる場合、乾燥温度50〜200℃(特に水蒸気雰囲気の場合は100〜200℃)、乾燥時間10〜60minとするのが好ましく、ランプアニール(真空雰囲気)を用いる場合、光の強度1〜50W、真空度100Pa程度(なお、常圧またはNパージでも可能)とし、発熱源としてPt(波長257nm)、Au(波長200〜500nm)、Si(波長200〜1000nm)を用いるのが好ましい。
【0069】
以上説明したように、撥水処理として、撥水性を有する材料で構成された撥水膜44bを処理前保護膜44aの外表面に形成する方法を用いると、比較的簡単に、処理前保護膜44aに撥水処理を施すことができる。
この場合、圧電体41の厚さをA[nm]とし、処理前保護膜44aの厚さをB[nm]としたときに、B/Aが1/500〜1/10であるのが好ましく、B/Aが1/500〜1/50であるのがより好ましい。これにより、撥水膜44bが圧電体41の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜44の水バリア性をより優れたものとすることができる。
【0070】
また、撥水膜44bの厚さをB[nm]とし、処理前保護膜44aの厚さをC[nm]としたときに、B/Cが1/100〜1/10であるのが好ましく、B/Cが1/100〜1/10であるのがより好ましい。これにより、保護膜44が圧電体41の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜44の水バリア性をより優れたものとすることができる。
また、撥水膜44bの厚さは、1〜10nmであるのが好ましく、1〜5nmであるのがより好ましい。これにより、撥水膜44bが圧電体41の変位を阻害するのを防止しつつ、保護膜44の水バリア性をより優れたものとすることができる。
【0071】
また、撥水処理による撥水性の程度は、水の接触角70〜120°であるのが好ましく、水の接触角90〜120°であるのがより好ましい。これにより、より確実に、湿気や製造工程に用いる薬液などの水分が保護膜44の欠損部を通じて侵入するのを防止することができる。
以上のようにしても、圧電素子4を得ることができる。
【0072】
このように圧電素子4が形成された後に、基板2aの他方の面(圧電素子4が形成されている面と反対側の面)に、図5(g)に示すように、共通インク室21のための溝21aとインク吐出室22のための溝22aを形成して、キャビティ基板2を得る。
この場合も、溝21a、22aの形成に際し、撥水処理された保護膜44により圧電体41が覆われているので、エッチングの際に、現像液、エッチング液、洗浄液等の水分による圧電体41の劣化を防止することができる。すなわち、保護膜44は、このエッチングに用いられるエッチング液等の薬液から保護する機能も有する。これにより、電子デバイスの製造工程を簡略化するとともに、歩留まりの低下を防止することができる。
このようにして得られたキャビティ基板2に、ノズル基板3を接合することにより、インクジェットヘッド1を得ることができる。
【0073】
以上、本発明の圧電素子、電子デバイス、および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の圧電素子は、主として圧電材料で構成された圧電体と、圧電体に接合された1対の電極とを有し、1対の電極に電圧を印加することにより、圧電体を変位または変形させるよう構成されたものであれば、特に限定されず、ピエゾ素子のほかに、例えば、特開2004−312198号公報に開示されているような弾性表面波素子に適用することができる。
【0074】
また、本発明の電子デバイスは、本発明の圧電素子を備えるものであれば特に限定されず、インクジェットヘッドのほかに、例えば、圧電素子により駆動される光スイッチ、光アッテネータ等のアクチュエータや、圧電素子により駆動される振動子等に適用することができる。
また、前述した実施形態におけるインクジェットヘッドは、インクジェットプリンタに限らず、他の液滴吐出装置に用いることができる。例えば、他の液滴吐出装置としては、プロテインチップやDNAチップの作製、有機EL製造装置や液晶表示装置のカラーフィルタの製造、インクジェット法による配線基板の作製などに用いるものが挙げられる。
【0075】
また、本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスを備えるものであれば特に限定されず、インクジェットプリンタのほかに、例えば、パーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明にかかる電子機器の実施形態の一例であるインクジェットプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタに備えられたインクジェットヘッド(電子デバイス)を示す分解斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図3に示す圧電素子の製造工程の第1の例を説明するための図である。
【図5】図3に示す圧電素子の製造工程の第2の例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0077】
1……インクジェットヘッド 2……キャビティ基板 2a……基板 21……共通インク室 22……インク吐出室 23……振動板 24……インク供給口 3……ノズル基板 300……インクジェットプリンタ 302……装置本体 303……ヘッドユニット 304……印刷装置 305……給紙装置 306……制御部(制御手段) 307……操作パネル 31……インクオリフィス 32……ノズル孔 321……トレイ 322……排紙口 331……インクカートリッジ 332……キャリッジ 341……キャリッジモータ 342……往復動機構 342A……キャリッジガイド軸 342B……タイミングベルト 351……給紙モータ 352……給紙ローラ 352a……従動ローラ 352b……駆動ローラ 4……圧電素子 41……圧電体 42、43……電極 44……保護膜 44a……処理前保護膜 44b……撥水膜 45……絶縁層




 

 


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