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発明の名称 電子デバイス用基板の製造方法、電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−5057(P2007−5057A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−181570(P2005−181570)
出願日 平成17年6月22日(2005.6.22)
代理人 【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
発明者 上原 正光
要約 課題
キャリア輸送能に優れた電子デバイス用基板を製造し得る電子デバイス用基板の製造方法、キャリア輸送能に優れた電子デバイス用基板、かかる電子デバイス用基板を備え、特性に優れた電子デバイスおよび信頼性の高い電子機器を提供すること。

解決手段
本発明の電子デバイス用基板の製造方法は、有機半導体層と、電極(陽極7)と、有機半導体層と陽極7との間に、これらの双方に接触するように設けられ、キャリアを輸送する機能を有する有機物を主材料として構成される中間層4とを有する電子デバイス用基板の製造方法であり、有機物を含有する液体中に陽極7を接触させた状態で、陽極7を一方の電極として液体に電圧を印加することにより、液体中において帯電した状態の有機物を、陽極7に集めて中間層4を形成する工程と、中間層4の陽極7と反対側の面に、有機半導体層を設ける工程とを有する電子デバイス用基板の製造方法である。
特許請求の範囲
【請求項1】
有機半導体層と、電極と、前記有機半導体層と前記電極との間にこれらの双方に接触するように設けられ、キャリアを輸送する機能を有する有機物を主材料として構成される中間層とを有する電子デバイス用基板の製造方法であって、
前記有機物を含有する液体に前記電極を接触させた状態で、当該電極を一方の電極として前記液体に電圧を印加することにより、前記液体中において帯電した状態の前記有機物を、前記電極に集めて前記中間層を形成する工程と、
前記中間層の前記電極と反対側の面に、前記有機半導体層を設ける工程とを有することを特徴とする電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項2】
前記有機物は、キャリアを輸送する機能を有するキャリア輸送部位と、該キャリア輸送部位に結合する帯電可能な部位とを有する化合物である請求項1に記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項3】
前記帯電可能な部位は、前記キャリア輸送部位と反対側の端部付近において帯電し得るものである請求項1または2に記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項4】
前記キャリア輸送部位は、前記有機半導体層の構成材料と親和性の高い構造を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項5】
前記キャリア輸送部位は、正孔を輸送する機能を有するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項6】
前記有機物は、下記一般式(1)で表される化合物を主成分とする請求項5に記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【化1】


[式中、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、4つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化2】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化3】


を表す。Yは、単結合、
【化4】


を表す。]
【請求項7】
前記有機物は、下記一般式(2)で表される化合物を主成分とする請求項5に記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【化5】


[式中、3つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、3つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化6】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化7】


を表す。Yは、単結合、
【化8】


を表す。]
【請求項8】
前記有機物は、下記一般式(3)で表される化合物を主成分とする請求項5に記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【化9】


[式中、3つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、3つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化10】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化11】


を表す。Yは、単結合、
【化12】


を表す。]
【請求項9】
前記キャリア輸送部位は、電子を輸送する機能を有するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項10】
前記有機物は、下記一般式(4)で表される化合物を主成分とする請求項9に記載の電子デバイス用基板の製造方法。
【化13】


[式中、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、2つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化14】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化15】


を表す。Yは、単結合、
【化16】


を表す。]
【請求項11】
前記請求項1ないし10のいずれかに記載の電子デバイス用基板の製造方法により製造されたことを特徴とする電子デバイス用基板。
【請求項12】
前記有機物のうちの少なくとも一部が、前記電極に化学結合している請求項11に記載の電子デバイス用基板。
【請求項13】
前記中間層は、その平均厚さが1〜50nmである請求項11または12に記載の電子デバイス用基板。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれかに記載の電子デバイス用基板を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項15】
当該電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項14に記載の電子デバイス。
【請求項16】
請求項14または15に記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス用基板の製造方法、電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機半導体層と電極とを備え、これらのものがお互いに接触するように設けられた電子デバイス用基板を備える電子デバイスとして、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)や、有機薄膜トランジスタ等がある。
これらのうち、有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子(発光素子)としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。
【0003】
一般に、有機EL素子は、陰極と陽極との間に発光層を有する構成であり、陰極と陽極との間に電界を印加すると、発光層に陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。
この際に、有機EL材料(発光層材料)の分子構造や分子の集合状態が特定の状態である場合に、前記注入された電子と正孔とが即座に結合せず、特別の励起状態として一定の時間保持される。そのため、通常の状態である基底状態と比較して分子の総エネルギーは、励起エネルギー分だけ増加する。この特別な励起状態を保持している電子と正孔との対を励起子(エキシトン)と呼ぶ。
【0004】
そして、前記保持された一定の時間経過後に励起子が崩壊して電子と正孔とが結合すると、増加していた励起エネルギー分が外部に熱や光として放出される。
この光放出は、発光層付近においてなされ、前記励起エネルギー分の内の光放出する割合は、有機EL材料の分子構造や分子の集合状態によって大きく影響される。
さらに、このような有機EL素子において、高い発光を得るためには、キャリア(電子または正孔)のキャリア輸送性の異なる有機半導体材料で構成される有機半導体層を、発光層と、陰極および/または陽極との間に積層する素子構造が有効であることも判っている。
【0005】
そこで、発光層と有機半導体層とを、陽極と陰極との間に積層した構成の有機EL素子において、高い発光効率を得るために、有機EL材料および有機半導体材料の分子構造や分子の集合状態、さらには、発光層および有機半導体層の積層する数や位置等について検討が行われている。
【0006】
しかしながら、このような構成の有機EL素子においても、発光効率等の特性の向上が期待するほど得られていないのが実情であった(例えば、特許文献1参照。)。
そして、このことは、有機半導体材料と電極の構成材料(金属材料)との相互作用よりも有機半導体材料同士間の相互作用が大きく、有機半導体材料と金属材料とが反発するため、有機半導体層と電極との密着性が十分に得られず、これらの層同士間でキャリアの受け渡しが円滑に行われていないことに起因していることが判ってきた。
【0007】
このような問題を解決する方法として、陽極と正孔輸送層(有機半導体層)との間に、銅フタロシアニンのような金属錯体を主材料とする正孔注入層を、真空蒸着法やイオンビーム蒸着法のような気相成膜法を用いて形成して、キャリア輸送を向上す方法が開示されている。
しかしながら、このような方法を用いた場合においても、陽極と正孔注入層との間の密着性を十分に向上させることができず、有機EL素子の特性の向上は、十分に得られていない。
このような問題は、有機薄膜トランジスタ等にも同様に生じることが懸念されている。
【0008】
【特許文献1】特開平9−255774号公報
【特許文献2】特開2002−151269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、キャリア輸送能に優れた電子デバイス用基板を製造し得る電子デバイス用基板の製造方法、キャリア輸送能に優れた電子デバイス用基板、かかる電子デバイス用基板を備え、特性に優れた電子デバイスおよび信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の電子デバイス用基板の製造方法は、有機半導体層と、電極と、前記有機半導体層と前記電極との間にこれらの双方に接触するように設けられ、キャリアを輸送する機能を有する有機物を主材料として構成される中間層とを有する電子デバイス用基板の製造方法であって、
前記有機物を含有する液体に前記電極を接触させた状態で、当該電極を一方の電極として前記液体に電圧を印加することにより、前記液体中において帯電した状態の前記有機物を、前記電極に集めて前記中間層を形成する工程と、
前記中間層の前記電極と反対側の面に、前記有機半導体層を設ける工程とを有することを特徴とする。
これにより、中間層を介した電極から有機半導体層へのキャリアの受け渡しが円滑に行われ、キャリア輸送能に優れた電子デバイス用基板を製造することができる。
【0011】
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記有機物は、キャリアを輸送する機能を有するキャリア輸送部位と、該キャリア輸送部位に結合する帯電可能な部位とを有する化合物であることが好ましい。
有機物をかかる構成とすることにより、液体に電圧を印加した際に、有機物を確実に電極に集めることができる。
【0012】
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記帯電可能な部位は、前記キャリア輸送部位と反対側の端部付近において帯電し得るものであることが好ましい。
これにより、液体に電圧を印加した際に、帯電可能な部位と電極との間に、比較的容易に化学結合が形成されて、電極と中間層との密着性を向上させることができる。
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記キャリア輸送部位は、前記有機半導体層の構成材料と親和性の高い構造を含むものであることが好ましい。
これにより、中間層と有機半導体層との間の密着性が向上して、中間層から有機半導体層へのキャリアの受け渡しを円滑に行うことができる。
【0013】
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記キャリア輸送部位は、正孔を輸送する機能を有するものであることが好ましい。
これにより、中間層に正孔を輸送する機能を付与することができる。
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記有機物は、下記一般式(1)で表される化合物を主成分とすることが好ましい。
【化1】


[式中、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、4つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化2】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化3】


を表す。Yは、単結合、
【化4】


を表す。]
これにより、得られる中間層は、正孔輸送能に優れ、電極および有機半導体層に対して優れた密着性を発揮するものとなる。
【0014】
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記有機物は、下記一般式(2)で表される化合物を主成分とすることが好ましい。
【化5】


[式中、3つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、3つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化6】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化7】


を表す。Yは、単結合、
【化8】


を表す。]
これにより、得られる中間層は、正孔輸送能に優れ、電極および有機半導体層に対して優れた密着性を発揮するものとなる。
【0015】
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記有機物は、下記一般式(3)で表される化合物を主成分とすることが好ましい。
【化9】


[式中、3つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、3つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化10】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化11】


を表す。Yは、単結合、
【化12】


を表す。]
これにより、得られる中間層は、正孔輸送能に優れ、電極および有機半導体層に対して優れた密着性を発揮するものとなる。
【0016】
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記キャリア輸送部位は、電子を輸送する機能を有するものであることが好ましい。
これにより、中間層に電子を輸送する機能を付与することができる。
本発明の電子デバイス用基板の製造方法では、前記有機物は、下記一般式(4)で表される化合物を主成分とすることが好ましい。
【化13】


[式中、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、2つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【化14】


[各式中、Rは、単結合または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、単結合、
【化15】


を表す。Yは、単結合、
【化16】


を表す。]
これにより、得られる中間層は、電子輸送能に優れ、電極および有機半導体層に対して優れた密着性を発揮するものとなる。
【0017】
本発明の電子デバイス用基板は、本発明の電子デバイス用基板の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、中間層を介した電極から有機半導体層へのキャリアの受け渡しが円滑に行われ、キャリア輸送能に優れた電子デバイス用基板とすることができる。
本発明の電子デバイス用基板では、前記有機物のうちの少なくとも一部が、前記電極に化学結合していることが好ましい。
これにより、化学結合を介したキャリアの受け渡しを行うことができるとともに、電極と中間層との密着性の向上を図ることができる。
【0018】
本発明の電子デバイス用基板では、前記中間層は、その平均厚さが1〜50nmであることが好ましい。
これにより、中間層の厚さ方向に対する抵抗値が増大するのを防止しつつ、中間層を介した電極から有機半導体層へのキャリアの受け渡しを確実に行うことができる。
本発明の電子デバイスは、本発明の電子デバイス用基板を備えることを特徴とする。
これにより、特性に優れた電子デバイスが得られる。
本発明の電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
これにより、発光効率等の特性に優れた有機EL素子が得られる。
本発明の電子機器では、本発明の電子デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の電子デバイス用基板の製造方法、電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明の電子デバイスを、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)に適用した場合を一例として説明する。
<有機EL素子>
<<第1実施形態>>
まず、有機EL素子の第1実施形態について説明する。
【0020】
図1は、有機EL素子の第1実施形態を示した縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図1に示す有機EL素子1は、陽極7と、陰極3と、陽極7と陰極3との間に、陽極7側から順次積層された中間層4と、発光層5とからなる積層体9を備えるものである。そして、有機EL素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材8で封止されている。
【0021】
なお、本実施形態では、この有機EL素子1において、陽極(電極)7と中間層4と発光層(有機半導体層)5とにより本発明の電子デバイス用基板が構成される。
基板2は、有機EL素子1の支持体となるものである。有機EL素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)である場合、基板2および陽極7には、それぞれ、透明性は、特に要求されない。また、有機EL素子1が基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)である場合、基板2および陽極7には、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)性を有するものが用いられる。
【0022】
基板2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等で構成される透明基板や、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、不透明な樹脂材料で構成された基板のような不透明基板を用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜5mm程度であるのがより好ましい。
【0023】
陽極7は、後述する中間層4に正孔を注入する電極である。
また、陽極7の構成材料(陽極材料)としては、正孔を注入するという観点から、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0024】
このような陽極7の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極7の厚さが薄すぎると、陽極7としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極7が厚すぎると、有機EL素子1の発光効率が低下するおそれがある。
また、陽極7の表面抵抗は、低い程好ましく、具体的には、100Ω/□以下であるのが好ましく、50Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
【0025】
陰極3は、後述する発光層5に電子を注入する電極である。この陰極3の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極3の構成材料としては、例えば、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
特に、陰極3の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極3の構成材料として用いることにより、陰極3の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
なお、陰極3は、複数層の積層構造とすることもできる。この場合、発光層5に近い側の層を、より仕事関数が低い陰極材料で構成するのが好ましい。例えば、陰極3を2層の積層構成とする場合、発光層5から遠い側の層をCaを主材料として構成し、発光層5に近い側の層を、Al、Agまたはこれらを含む合金を主材料として構成することができる。
【0027】
このような陰極3の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nm程度であるのが好ましく、100〜400nm程度であるのがより好ましい。陰極3の厚さが薄すぎると比抵抗が高くなって電圧降下を生じたり、酸化反応により電気導電特性が不安定となり、陰極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがある。一方、陰極3が厚過ぎると、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて陰極3を形成する際に、膜中の温度が著しく上昇したり、残留応力が増加して、後述する下層として設けられている発光層5を破壊したり、陰極3や発光層5がはがれてしまい、有機EL素子1の発光効率が低下するおそれがある。
また、陰極3の表面抵抗も低い程好ましく、具体的には、50Ω/□以下であるのが好ましく、20Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
【0028】
さて、陽極7と陰極3との間には、中間層4と発光層(有機半導体層)5とがこの順で陽極7側から積層された積層体9が陽極7と陰極3とに接触するように形成されている。
中間層4は、陽極7から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能を有するものである。本発明の電子デバイス(本発明の電子デバイス用基板を備える電子デバイス)では、キャリアを輸送する機能を有する有機物を主材料として構成される中間層4を形成する工程に特徴を有する。この中間層4の形成工程、構成および構成材料等については、後に詳述する。
【0029】
中間層4は、後述する形成工程により形成されることから、陽極7および発光層5の双方に対し、これらと接触する側の面において、優れた密着性を発揮するものとなる。その結果、陽極7から中間層4への正孔の注入、および、中間層4から発光層5への正孔の注出を円滑に行うことができる。
また、有機物は、キャリア(本実施形態では正孔)を輸送する機能を有することから、中間層4中での正孔の輸送も、円滑に行うことができる。
【0030】
これらのことから、中間層4を陽極7と発光層5との間に設けることにより、中間層4を介した陽極7から発光層5への正孔の受け渡しを円滑に行うことができるようになる。その結果、電子デバイス用基板が優れた正孔(キャリア)輸送能を発揮するものとなる。
このような中間層4の厚さ(平均)は、特に限定されないが、1〜50nm程度であるのが好ましく、2〜20nm程度であるのがより好ましい。中間層4の厚さが薄過ぎると、ピンホールが生じ、中間層4を介した陰極3から発光層5への正孔の受け渡しが行われなくなるおそれがある。また、中間層4の厚さが厚過ぎると、中間層4の厚さ方向に対する抵抗値が増大し、有機EL素子1の消費電力が増大し好ましくない。
【0031】
陽極7と陰極3との間に通電(電圧を印加)すると、中間層4中を正孔が、また、発光層5中を電子が移動し、主に発光層5の中間層4側の界面付近において正孔と電子とでエキシトン(励起子)が生成する。このエキシトンは、一定時間で再結合するがその際に、前記エキシトン生成で蓄積された励起エネルギー分を主として蛍光やりん光等の光として放出する。これがエレクトロルミネセンス発光である。
【0032】
この発光層5の構成材料としては、電圧印加時に陽極7側から正孔を、また、陰極3側から電子を注入することができ、正孔と電子が再結合する場を提供できるものであれば、いかなるものであってもよい。
このような発光材料には、以下に示すような、各種低分子の発光材料、各種高分子の発光材料があり、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0033】
なお、低分子の発光材料を用いることにより、緻密な発光層5が得られるため、発光層5の発光効率が向上する。また、高分子の発光材料を用いることにより、比較的容易に溶剤へ溶解させることができるため、インクジェット印刷法等の各種塗布法による発光層5の形成を容易に行うことができる。さらに、低分子の発光材料と高分子の発光材料とを組み合わせて用いることにより、低分子の発光材料および高分子の発光材料を用いる効果を併有すること、すなわち、緻密かつ発光効率に優れる発光層5を、インクジェット印刷法等の各種塗布法により、容易に形成することができるという効果が得られる。
【0034】
低分子の発光材料としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、(2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン)プラチナム(II)のような各種金属錯体等が挙げられる。
【0035】
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
【0036】
発光層5の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。発光層5の厚さを前記範囲とすることにより、正孔と電子との再結合が効率よくなされ、発光層5の発光効率をより向上させることができる。
なお、発光層5は、単層のものに限定されず、例えば、陰極3と接触する側に、電子輸送能に優れた電子輸送層を備えた複層のものとすることもできる。発光層5をかかる構成のものとすることにより、発光層5中における電子輸送能をより向上させることができる。
【0037】
電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレンのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセンのようなクリセン系化合物、ペリレンのようなペリレン系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエンのようなブタジエン系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、キノリンのようなキノリン系化合物、ビスチリルのようなビスチリル系化合物、ピラジン、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリンのようなキノキサリン系化合物、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノンのようなナフトキノン系化合物、アントラキノンのようなアントラキノン系化合物、オキサジアゾール、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、BMD、BND、BDD、BAPDのようなオキサジアゾール系化合物、トリアゾール、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロンのようなアントロン系化合物、フルオレノン、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、ジフェノキノン、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、スチルベンキノン、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0038】
封止部材8は、陽極7、中間層4、発光層5および陰極3を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材8を設けることにより、特に陰極3の酸化を抑制または防止して,有機EL素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材8の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。
【0039】
また、封止部材8は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
このような有機EL素子1は、陰極3が負、陽極7が正となるようにして、0.5Vの電圧を印加したとき、その抵抗値が、100Ω/cm以上となる特性を有するのが好ましく、1kΩ/cm以上となる特性を有するのがより好ましい。かかる特性は、有機EL素子1において、陰極3と陽極7との間での短絡(リーク)が好適に防止または抑制されていることを示すものであり、このような特性を有する有機EL素子1は、発光効率が特に高いものとなる。
【0040】
なお、本実施形態では、陽極7と発光層5との間に、これらの双方に接触するように中間層4を設ける場合について説明したが、このような場合に限定されず、例えば、中間層4と発光層5との間に、中間層4から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能を有する正孔輸送層を設けるようにしてもよい。
この正孔輸送層の構成材料としては、有機EL素子の第2実施形態で後述する正孔輸送層6の構成材料と同様のものを用いることができる。
また、陰極3と発光層5との間に、陰極3から注入された電子を発光層5まで輸送する機能を有する電子輸送性の中間層を設けるようにしてもよい。
この電子輸送性の中間層は、有機EL素子の第2実施形態で後述する中間層14と同様のものとすることができる。
【0041】
このような有機EL素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
この有機EL素子1の製造方法において、中間層4を設ける工程(中間層形成工程)と発光層(有機半導体層)5を設ける工程(発光層形成工程)とに本発明の電子デバイス用基板の製造方法が適用される。
図2は、中間層を設ける工程を説明するための模式図(縦断面図)である。
なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0042】
[1A]陽極形成工程
まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極7を形成する。
陽極7は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0043】
[2A]中間層形成工程
前述したように、本発明の電子デバイス(有機EL素子)では、この中間層4の形成工程に特徴を有する。
すなわち、正孔(キャリア)を輸送する機能を有する有機物を含有する液体に、基板2上に形成された陽極7を接触させた状態で、この陽極7を一方の電極として液体に電圧を印加することにより、この液体中において帯電した状態の有機物を、陽極7に集めて、陽極7上に中間層4を形成する点に特徴を有する。
かかる工程により、中間層4を形成することにより、中間層4は、陽極7および次工程[3A]で形成する発光層5の双方に対し、これらと接触する側の面において、優れた密着性を発揮するものとなる。その結果、陽極7から中間層4への正孔の注入、および、中間層4から発光層5への正孔の注出を円滑に行うことができる。
以下、このような中間層4の形成工程について詳述する。
【0044】
[2A−1] まず、正孔を輸送する機能を有する有機物を含有する液体を用意する。
本実施形態では、中間層4は、陽極7から注入された正孔を発光層5にまで輸送する目的に形成することから、有機物としては、キャリアとして正孔を輸送するものが選択される。
正孔を輸送する機能を有する有機物(以下、単に「有機物」ということもある。)としては、液体に電圧を印加した際に、帯電した状態を維持し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、正孔を輸送する機能を有するキャリア輸送部位と、このキャリア輸送部位に結合する帯電可能な部位とを有するものを用いるのが好ましい。これにより、有機物は、帯電可能な部位がキャリア輸送部位の外側に突出したような構成のものとなることから、後工程[2A−3]において、液体に電圧を印加した際に、有機物の構造の中に帯電可能な部位が取り囲まれるようになるのを防止することができる。その結果、有機物は、電圧が印加されたことによる電界の影響を確実に受けるようになる。これにより、有機物を確実に陽極7に集めることができる。
【0045】
なお、キャリア輸送部位と帯電可能な部位とを有する有機物は、液体に電圧を印加した際に、帯電可能な部位の他、キャリア輸送部位が帯電するような構成のものであってもよい。これにより、有機物全体としての帯電量が大きくなり、有機物をより確実に陽極7に集めることができる。
キャリア輸送部位としては、発光層5の構成材料すなわち有機系の構成材料と親和性の高い構造を備えるものであるのが好ましい。これにより、中間層4上に発光層5を形成した際に、これらの層同士間の密着性を向上させることができる。その結果、中間層4から発光層5への正孔の受け渡しを円滑に行うことができる。
【0046】
また、前述したように本実施形態では、有機物としては、キャリアとして正孔を輸送するものが選択される。すなわち、キャリア輸送部位と帯電可能な部位とを有する構成の有機物においては、キャリア輸送部位として、正孔を輸送する機能を有するものが選択される。
以上のことから、キャリア輸送部位としては、正孔輸送能に優れ、かつ、有機系の構造を有するものが好適に選択される。
【0047】
具体的には、キャリア輸送部位としては、銅フタロシアニン骨格、ヘキサアザトリフェニレン骨格およびヘキサアザトリナフチレン骨格を有するものが挙げられる。これらの骨格は、発光層5の構成材料と同様に、ベンゼン環のような共役系の結合を多く含んでおり、特に正孔輸送能に優れるものであることから好ましい。
帯電可能な部位としては、例えば、キャリア輸送部位に結合する部位付近や、帯電可能な部位の中央付近において帯電し得るものであってもよいが、特に、キャリア輸送部位と反対側の端部付近において帯電し得るものであるのが好ましい。これにより、後工程[2A−3]において、液体に電圧を印加した際に、帯電した端部付近を陽極7に接触させることができる。その結果、帯電可能な部位と陽極7との間に比較的容易に化学結合が形成される。これにより、中間層4と陽極7との密着性を向上させることができるとともに、この化学結合を介して、正孔の受け渡しを行うことができるようになる。
【0048】
このことを考慮すると、帯電可能な部位としては、例えば、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される置換基が好ましい構造である。これらの置換基は、比較的低い電圧を印加した際においても、帯電した状態を安定的に維持することができることから、有機物を陽極7に確実に集めることができる。さらに、陽極7の構成材料に対して優れた反応性を有することから、陽極7との間に化学結合を確実に形成することができる。
【0049】
【化17】


[各式中、Rは、単結合(結合手)または炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、アルカリ金属、アミノ基または炭素数1〜20のアルキル基を表す。Xは、単結合(bonding dash)、
【0050】
【化18】


を表す。Yは、単結合、
【0051】
【化19】


を表す。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0052】
なお、帯電可能な部位として前記一般式(6)で表される置換基を用いる場合、2つのRの炭素数は、それぞれ、できるだけ小さく設定するのが好ましい。これにより、帯電可能な部位のキャリア輸送部位と反対側の端部付近で帯電させることができ、前述したような効果を確実に得ることができる。
なお、液体に電圧を印加すると、前記一般式(5)および前記一般式(6)で表される置換基が帯電することとなるが、この際の、置換基の構造としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0053】
すなわち、前記一般式(5)で表される置換基においてRが水素原子またはナトリウム、カリウム、リチウムのようなアルカリ金属である場合、Rが置換基から離脱することにより、Rが離脱した置換基は、負に帯電するものとなる。
また、前記一般式(5)で表される置換基においてRが炭素数1〜20のアルキル基である場合、アルキル基に含まれる水素原子が置換基から離脱することにより、水素原子が離脱した置換基は、負に帯電するものとなる。なお、このアルキル基の炭素数が2以上である場合、末端の炭素原子に結合している水素原子がより離脱しやすい傾向を示す。
【0054】
さらに、前記一般式(5)で表される置換基においてRがアミノ基である場合や、前記一般式(6)で表される置換基である場合、窒素原子に水素原子が結合することにより、水素原子が結合した置換基は、正に帯電するものとなる。
これらのことを考慮すると、キャリア輸送部位と帯電可能な部位とを有する有機物としては、例えば、下記一般式(1)〜下記一般式(3)で表される化合物が好適に用いられる。かかる構成を有する有機物を用いることにより、前述したような効果を確実に得ることができる。
なお、これらの化合物において、Rが帯電可能な部位を構成し、R以外の主骨格の部分がキャリア輸送部位を構成している。
【0055】
【化20】


[式中、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、4つのRのうちの少なくとも1つは、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【0056】
【化21】


[式中、3つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、3つのRのうちの少なくとも1つは、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【0057】
【化22】


[式中、3つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、3つのRのうちの少なくとも1つは、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【0058】
液体中の有機物の濃度は、有機物の種類によっても若干異なるが、0.01〜0.5mol/L程度であるのが好ましく、0.1〜0.3mol/L程度であるのがより好ましい。かかる関係を満足することにより、次工程[2A−3]において、有機物を陽極7上に確実に集めて、中間層4を形成することができる。
なお、液体は、有機物を溶媒に溶解した溶液であってもよいし、有機物を分散媒に分散した分散液であってもよい。
【0059】
有機物含有する液体を調整する際に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、酢酸エチル、エーテル、塩化メチレン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、以下の工程では、有機物として、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表される化合物を用いた場合を一例に説明する。
【0060】
[2A−2] 次に、基板2上に設けられた陽極7を陰極または陽極として、導電性材料で構成される電極を対極としてそれぞれ設置し、これらを前記工程[2A−1]で用意した液体に接触させる。
陽極7と対極とを液体に接触させる方法としては、これらを液体に浸漬する浸漬法の他、例えば、対極を内壁に備える容器中の液体に、陽極7の中間層4を形成する側の面を接触させる方法等が挙げられる。
【0061】
ここで、陽極7を陰極または陽極のうちいずれの電極に設置するかは、帯電可能な部位が帯電する状態、換言すれば、液体に電圧を印加した際に、帯電可能な部位が正負のいずれに帯電しているかに応じて、選択すればよい。すなわち、前記一般式(5)で表される置換基のように帯電可能な部位が負に帯電する場合には、陽極に、前記一般式(6)で表される置換基のように帯電可能な部位が正に帯電する場合には、陰極に陽極7を設置するようにすればよい。
なお、説明の都合上、図2には、帯電可能な部位(置換基R)が負に帯電し、陽極7を陽極に設置した場合を示す。
【0062】
[2A−3] 次に、前記工程[2A−2]で設置した陽極と陰極との間に電圧を印加する。
これにより、置換基Rの帯電状態に応じて、有機物は、図2(a)に示すように、陽極7側に移動することとなる。
そして、負に帯電した置換基Rが、図2(b)に示すように、陽極7の表面に接触すると、この置換基Rと、陽極7の構成材料が化学結合を形成することとなる。
【0063】
このような化学結合は、陽極7の表面に到達した置換基Rにより、順次形成されることから、キャリア輸送部位による立体障害により、陽極7の表面に置換基Rが接触できなくなるまで形成される。これにより、図2(c)に示すように、陽極7に置換基Rが結合した状態で、キャリア輸送部位が陽極7の面方向と平行になるように一列に配列した構成の膜が陽極7の表面に形成されることとなる。これにより、陽極7と有機物とが化学的に結合しているものとなることから、陽極7と形成される中間層4とは、優れた密着性を有するもとなる。
【0064】
そして、このような膜が形成された後、さらに電圧の印加を続けると、陽極7上に一列に配列したキャリア輸送部位に対して、陽極7に接近してきたキャリア輸送部位がこれら同士の親和性により、強い相互作用が得られることとなる。これにより、キャリア輸送部位同士が接触した状態で有機物が積層されることとなり、図2(d)に示すような、中間層4が形成される。
【0065】
このような中間層4中において、キャリア輸送部位同士が接触した状態で存在していることから、陽極7から注入された正孔を、次工程[3]で形成される発光層5側に向かって円滑に輸送することができる。
さらに、前述したように、前記一般式(1)〜前記一般式(3)で表される化合物に含まれるキャリア輸送部位は、共役系の構造を多く含んでいることから、発光層5の構成材料に対しても優れた親和性を発揮するものとなる。その結果、中間層4は、発光層5に対して優れた密着性を有するものとなる。
【0066】
陰極および陽極間の電圧差(印加電圧)は、帯電可能な部位の種類によっても若干異なるが、1〜50V程度であるのが好ましく、5〜20V程度であるのがより好ましい。
また、液体の温度は、20〜90℃程度であるのが好ましく、50〜80℃程度であるのがより好ましい。
液体のpHは、2〜10程度であるのが好ましく、4〜8.5程度であるのがより好ましい。
印加電圧および液体の温度とpHとをかかる範囲に設定することにより、陽極7上に確実に中間層4を形成することができるとともに、成膜速度を比較的遅くすることができることから、膜厚の制御をより容易かつ確実に行うことができる。
【0067】
[3A]発光層形成工程
次に、中間層4上すなわち、中間層4の陽極7と反対側の面に発光層5を形成する。
発光層5は、例えば、前述したような発光材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる発光層材料を、中間層4上に塗布(供給)した後、発光層材料に含まれる溶媒または分散媒を除去することにより、得ることができる。
【0068】
中間層4上に発光層材料を供給する方法としては、各種の方法を用いることができるが、例えば、インクジェット法、スピンコート法、液体ミスト化学体積法(LSMCD法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法のような塗布法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0070】
[4A]陰極形成工程
次に、発光層5上に陰極3を形成する。
陰極3は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[5A]封止部材形成工程
次に、陽極7、中間層4、発光層5、および陰極3を覆うように、封止部材8を形成する。
【0071】
封止部材8は、例えば、前述したような材料で構成される箱状の保護カバーを、各種硬化性樹脂(接着剤)で接合すること等により形成する(設ける)ことができる。
硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、反応性硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂のいずれも使用可能である。
以上のような工程を経て、有機EL素子1が製造される。
【0072】
なお、本実施形態では、陰極3上に、中間層4と発光層5と正孔輸送層6と陽極7とを順次積層して、有機EL素子1を製造する場合について説明したが、このような場合に限定されるものではない。すなわち、例えば、陽極7上に中間層4が形成された積層体と、陰極3上に発光層5とが積層された積層体とをそれぞれ用意し、中間層4と発光層5とを対向させた状態で、これらを接触させて貼り合せることにより製造するようにしてもよい。
【0073】
この有機EL素子1は、例えばディスプレイ装置用として用いることができるが、その他にも光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL素子1をディスプレイ装置用に用いる場合、複数の有機EL素子1がディスプレイ装置に設けられるが、このようなディスプレイ装置は、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0074】
図3は、有機EL素子を複数備えるディスプレイ装置を示す縦断面図である。
図3に示すディスプレイ装置100は、基体20と、この基体20上に設けられた複数の有機EL素子1とで構成されている。
基体20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
回路部22は、基板21上に形成された、例えば酸化シリコン層からなる保護層23と、保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
【0075】
駆動用TFT24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、有機EL素子1が設けられている。また、隣接する有機EL素子1同士は、第1隔壁部31および第2隔壁部32により区画されている。
【0076】
本実施形態では、各有機EL素子1の陽極7は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、各有機EL素子1の陰極3は、共通電極とされている。
そして、各有機EL素子1を覆うように封止部材(図示せず)が基体20に接合され、各有機EL素子1が封止されている。
ディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各有機EL素子1に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
【0077】
<<第2実施形態>>
次に、有機EL素子の第2実施形態について説明する。
図4は、有機EL素子の第2実施形態を示した縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図3中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
以下、第2実施形態について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0078】
図3に示す有機EL素子10は、陰極3と、陽極7と、陰極3と陽極7との間に、陰極3側から順次積層された中間層14と、発光層5と、正孔輸送層6とからなる積層体19を備えるものである。そして、有機EL素子10は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材8で封止されている。
なお、本実施形態では、この有機EL素子10において、陰極(電極)3と中間層14と発光層(有機半導体層)5とにより本発明の電子デバイス用基板が構成される。
基板2は、前記第1実施形態で説明したのと同様のもので構成されている。
【0079】
また、陰極3の構成材料は、前記第1実施形態で説明したように、電子を注入するという観点から、通常、仕事関数の小さい材料が選択される。ところが、本実施形態の有機EL素子10では、陰極3と発光層5との間に、後述するような構成の中間層14が設けられることにより、これらの層同士間の密着性を向上させることができる。これにより、陰極3の構成材料として、仕事関数の大きい材料を用いたとしても、陰極3と中間層14との間の電子の受け渡しを円滑に行うことができる。
【0080】
このような仕事関数の大きい材料としては、前記第1実施形態で説明した陽極7の構成材料と同様のものを用いることができる。
なお、陰極3の構成材料としては、特に、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnOのような導電性金属酸化物を用いるのが好ましい。これらは、酸素や水分等に対する安定性および導電性に特に優れた材料であることから、陰極3から中間層14への電子の注入をより確実に行うことができる。
【0081】
なお、前述したように有機EL素子1がボトムエミッション型である場合、陰極3には、実質的に透明性を有するものが用いられる。すなわち、導電性金属酸化物は、実質的に透明性を有するものが選択される。これにより、発光層5で発光した光を確実に基板2側から取り出すことができる。
ところで、有機EL素子10には、図4に示すように、封止部材8が設けられている。この封止部材8は、仕事関数の小さい材料が一般的に酸化されやすい材料であることから、陰極3が変質・劣化することを抑制または防止することを目的に設けられている。そのため、陰極3が導電性金属酸化物のように、酸素や水分に対して比較的安定な材料により構成されている場合には、封止部材8の形成を省略するようにしてもよい。これにより、有機EL素子10の小型化および製造コストの削減等を図ることができる。さらに、基板2が可撓性を有する材料で構成されている場合には、有機EL素子10に可撓性を付与することもできる。
【0082】
また、陽極7は、前記第1実施形態で説明したのと同様のもので構成されている。これにより、陽極7から後述する正孔輸送層6への正孔の受け渡しをより円滑に行うことができる。
さて、陰極3と陽極7との間には、中間層14と発光層5と正孔輸送層6とがこの順で陰極3側から積層された積層体9が陰極3と陽極7とに接触するように形成されている。
【0083】
中間層14は、陰極3から注入された電子を発光層5まで輸送する機能を有するものである。この中間層14は、この層の構成材料である有機物として、電子を輸送する機能を有するものが選択される以外、前記第1実施形態で説明した中間層4と同様の構成のものである。これにより、中間層14は、陰極3および発光層5の双方に対し、これらと接触する側の面において、優れた密着性を発揮するものとなることから、中間層14を介した陰極3から発光層5への電子の注入を円滑に行うことができる。
【0084】
また、正孔輸送層6は、陽極7から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能を有するものである。
正孔輸送層6の構成材料は、正孔輸送能力を有するものであればいかなるのもであっても良いが、以下に示すような、各種低分子の正孔輸送材料、各種高分子の正孔輸送材料を基本構造とし、共役系の化合物であるのが好ましい。共役系の化合物は、その特有な電子雲の広がりによる性質上、極めて円滑に正孔を輸送できるため、正孔輸送能力に特に優れる。
【0085】
なお、低分子の正孔輸送材料を用いることにより緻密な正孔輸送層6が得られるため、正孔輸送層6の正孔輸送効率は向上する。また、正孔輸送層6に高分子の正孔輸送材料を用いると比較的容易に溶剤に溶解させることができるため、インクジェット印刷法やスピンコート印刷法等の各種塗布法による正孔輸送層6の形成を容易に行うことができる。さらに、低分子の正孔輸送材料と高分子の正孔輸送材料とを組み合わせて用いることにより、すなわち、緻密かつ正孔輸送効率に優れる正孔輸送層6を、インクジェット印刷法等の各種塗布法により、容易に形成できるという効果が得られる。
【0086】
低分子の正孔輸送材料としては、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタンm−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)のようなチオフェン系化合物、ポリ(2,2’−チエニルピロール)、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのものは、いずれも、高い正孔輸送能を有している。
【0087】
高分子の正孔輸送材料としては、前記モノマーやオリゴマー(低分子の正孔輸送材料)化合物を主鎖または側鎖に有するプレポリマーやポリマー(高分子の正孔輸送材料)として用いることができる。
【0088】
その他の正孔輸送材料としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)のようなポリ(チオフェン/スチレンスルホン酸)系化合物等の高分子の正孔輸送材料を用いることもできる。このものは、高い正孔輸送能を有している。
このような正孔輸送層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。正孔輸送層6の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じるおそれがあり、一方、正孔輸送層6が厚過ぎると、正孔輸送層6の透過率が悪くなる原因となり、有機EL素子10の発光色の色度(色相)が変化してしまうおそれがある。
【0089】
発光層5および封止部材8は、前記第1実施形態で説明したのと同様のもので構成されている。
なお、前述したように、陰極3が導電性金属酸化物のように酸素や水分に対して比較的安定な材料により構成されている場合には、封止部材8の形成を省略するようにしてもよい。
【0090】
なお、本実施形態では、陰極3上に発光層5が設けられている場合について説明したが、このような場合に限定されず、例えば、陰極3と発光層5との間に、陰極3から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能を有する正孔輸送性の中間層を設けるようにしてもよい。
この正孔輸送性の中間層は、有機EL素子の第1実施形態で前述した中間層4と同様のものとすることができる。
このような有機EL素子10は、例えば、次のようにして製造することができる
この有機EL素子1の製造方法において、中間層14を設ける工程(中間層形成工程)と発光層(有機半導体層)5を設ける工程(発光層形成工程)とに本発明の電子デバイス用基板の製造方法が適用される。
【0091】
[1B]陰極形成工程
まず、基板2を用意し、この基板2上に陰極3を形成する。
この陰極3の形成は、有機物として、電子を輸送する機能を有するキャリア輸送部位を備えるものを用いる以外、前記第1実施形態で説明した工程[1A]と同様にして行うことができる。
【0092】
[2B]中間層形成工程
次に、陰極3上に中間層14を形成する。
中間層14の形成は、第1実施形態で説明した工程[2A]において、有機物として、正孔を輸送する機能を有するものを用いるのに代えて、電子を輸送する機能を有するものを用いる以外、前記工程[2A]と同様にして行うことができる。
以下、この電子を輸送する機能を有する有機物について説明する。
【0093】
電子を輸送する機能を有する有機物としては、この有機物に含まれるキャリア輸送部位の構造が異なる以外、正孔を輸送する機能を有する有機物と同様である。
このようなキャリア輸送部位としては、電子輸送能に優れ、かつ、有機系の構造を有するものが好適に選択され、具体的には、テトラチオフルバレン骨格を有するものが挙げられる。
そのため、電子を輸送する機能を有する有機物としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が好適に用いられる。
【0094】
【化23】


[式中、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表し、同一であっても、異なっていてもよい。ただし、2つのRのうちの少なくとも1つは、前記一般式(5)または前記一般式(6)で表される置換基のうちのいずれかを表す。]
【0095】
[3B]発光層形成工程
次に、中間層14上に発光層5を形成する。
この中間層14の形成は、前記第1実施形態で説明した工程[3A]と同様にして行うことができる。
[4B]正孔輸送層形成工程
次に、発光層5上に正孔輸送層6を形成する。
正孔輸送層6は、発光層5と同様にして形成することができる。すなわち、正孔輸送層6は、前述したような正孔輸送材料を用いて、前記第1実施形態で説明した工程[3A]のような方法により形成することができる。
【0096】
[5B]陽極形成工程
次に、正孔輸送層6上に陽極7を形成する。
この陽極7の形成は、前記第1実施形態で説明した工程[1A]と同様にして行うことができる。
[6B]封止部材形成工程
次に、陰極3、中間層14、発光層5、正孔輸送層6、および陽極7を覆うように、封止部材8を形成する。
この封止部材8の形成は、前記第1実施形態で説明した工程[5A]と同様にして行うことができる。
【0097】
以上のような工程を経て、有機EL素子10が製造される。
この有機EL素子10は、有機EL素子1と同様に、ディスプレイ装置用としても光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL素子10をディスプレイ装置用に用いる場合にも、前記第1実施形態と同様にしてディスプレイ装置に適用することができる。
【0098】
<<第3実施形態>>
次に、有機EL素子の第3実施形態について説明する。
図5は、有機EL素子の第3実施形態を示した縦断面図である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態について、前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0099】
第3実施形態の有機EL素子11では、陰極3と陽極7との間に、第2実施形態のような中間層14と発光層5と正孔輸送層6とからなる積層体19が設けられているのに代えて、図3に示すような積層体19’’が設けられている以外は、第2実施形態と同様である。
この積層体19’’は、図3に示すような有機EL素子10が備える積層体19の上に、さらに、透明電極3’と中間層14’と発光層5’と正孔輸送層6’とからなる積層体19’とを有するもの、すなわち、積層体19と積層体19’とが直列に連結されたものである。
なお、本実施形態では、この有機EL素子11において、陰極3と中間層14と発光層5とにより、さらには、透明電極3’と中間層14’と発光層5とにより本発明の電子デバイス用基板が構成される。
【0100】
以下、積層体19’’の構成について中心に説明する。
積層体19上すなわち正孔輸送層6上には、透明電極3’が設けられている。
この透明電極3’は、正孔輸送層6に正孔を注入する機能と、中間層14’に電子を注入する機能とを併せもつ電極である。
また、有機EL素子11がトップエミッション型である場合、発光層5の発光を陽極7側に、有機EL素子11がボトムエミッション型である場合、発光層5’の発光を陰極3側に透過させる必要があるため、透明電極3’の構成材料には、陰極3の構成材料で説明したもののうち、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)性を有するものが用いられる。
【0101】
具体的には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の透明性の導電性金属酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、積層体19’が備える中間層14’、発光層5’および正孔輸送層6’は、それぞれ、積層体19が備える中間層14、発光層5および正孔輸送層6と同様の構成のものである。
【0102】
なお、中間層14’、発光層5’および正孔輸送層6’の構成材料は、それぞれ、中間層14、発光層5および正孔輸送層6の構成材料と同一のものであってもよいし、前記第1実施形態または前記第2実施形態で説明したものに含まれるものであれば、異なるものであってもよい。
有機EL素子11をかかる構成のものとすることにより、2つの発光層5、5’からエレクトロルミネセンス発光を得ることができることから、この発光をより安定的に行うことができるとともに、発光効率の向上を図ることができる。
【0103】
このような有機EL11は、例えば、前記第2実施形態で説明した、工程[1B]〜工程[4B]を行い、再度工程[1B]〜工程[4B]を行った後に、工程[5B]と工程[6B]を行うことにより製造することができる。
この有機EL素子11は、有機EL素子1、10と同様に、ディスプレイ装置用としても光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL素子11をディスプレイ装置用に用いる場合にも、前記第1実施形態と同様にしてディスプレイ装置に適用することができる。
【0104】
<電子機器>
前述したような、有機EL素子1、10、11(本発明の電子デバイス)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図6は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0105】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述の有機EL素子1、10、11を備えている。
【0106】
図7は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述の有機EL素子1、10、11を備えている。
【0107】
図8は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0108】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
【0109】
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述の有機EL素子1、10、11を備えている。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
【0110】
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0111】
なお、本発明の電子機器は、図6のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図7の携帯電話機、図8のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0112】
以上、本発明の電子デバイス用基板の製造方法、電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、本発明の電子デバイス用基板を備える本発明の電子デバイスは、上述した有機EL素子に適用することができる他、例えば、光電変換素子や薄膜トランジスタ等に適用することができる。
【実施例】
【0113】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.有機EL素子の製造
以下の各実施例および各比較例において、有機EL素子を5個ずつ製造した。
(実施例1A)
−1A− まず、平均厚さ1.1mmの透明なガラス基板を2つ用意し、これらの基板上に、スパッタリング法により、それぞれ、平均厚さ150nmのITO電極を形成した。
−2A− 次に、化24に示す化合物の組成物である銅フタロシアニンのスルホン酸エステル系染料(ダイレクトブルー199)1.0wt%水溶液を用意した。
【0114】
【化24】


[式中、4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、または、下記一般式(7)〜下記一般式(9)で表される置換基のうちのいずれかである。ただし、4つのRのうちの少なくとも1つは、下記一般式(7)〜下記一般式(9)で表される置換基のうちのいずれかである。]
【0115】
【化25】


[各式中、nは、1〜15の整数である。]
【0116】
−3A− 次に石英基板に設けられたITO電極の一方を陰極として、他方を陽極としてそれぞれセットした後、前記工程−2A−で用意した水溶液中に浸漬させた状態で、陰極と陽極との間に電圧を印加した。
なお、電圧印加時の各種条件は、以下に示す通りである。
・印加電圧 :20V
・電極間の通電電流:2〜4μA/cm
・液体の温度 :60℃
・液体のpH :5.5
・処理時間 :10分
これにより、陽極側に設置したITO電極(陽極)上に、銅フタロシアニンのスルホン酸エステル系染料の誘導体を析出させて、この誘導体を主成分とする平均厚さ8nmの中間層を得た。
【0117】
−4A− 次に、この中間層を水溶液中から取り出し、純水で洗浄した後、窒素雰囲気下で100℃×60分の条件で乾燥させた。
−5A− 次に、中間層上に、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)(重量平均分子量200000)の1.7wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、窒素雰囲気下、100℃×10分、さらに、減圧下、100℃×60分の条件で乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を形成した。
【0118】
−6A− 次に、発光層上に、真空蒸着法により、CaおよびAlを連続蒸着して、平均厚さ1nmのCaと平均厚さ300nmのAlとで構成される複数層電極(陰極)を形成した。
−7A− 次に、形成した各層を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、有機EL素子を完成した。
【0119】
(実施例2A)
前記工程−2A−において、化26に示す化合物の1.0wt%水溶液を用意した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
これにより、陽極側に設置したITO電極(陽極)上に、化26に示す化合物の誘導体を析出させて、この誘導体を主成分とする平均厚さ10nmの中間層を得た。
【0120】
【化26】


【0121】
(実施例3A)
前記工程−2A−において、化27に示す化合物の1.0wt%水・メタノール溶液を用意し、前記工程−3A−における電圧印加時の各種条件を以下のようにした以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
・印加電圧 :20V
・電極間の通電電流:1〜4μA/cm
・液体の温度 :60℃
・液体のpH :5.5〜7.0
・処理時間 :10分
【0122】
【化27】


【0123】
これにより、陽極側に設置したITO電極(陽極)上に、化27に示す化合物の誘導体を析出させて、この誘導体を主成分とする平均厚さ5nmの中間層を得た。
【0124】
(実施例4A)
前記工程−2A−において、化28に示す化合物の2.0wt%水・メタノール溶液を用意し、前記工程−3A−における電圧印加時の各種条件を以下のようにした以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
・印加電圧 :20V
・電極間の通電電流:1〜4μA/cm
・液体の温度 :60℃
・液体のpH :5.5〜7.0
・処理時間 :10分
【0125】
【化28】


【0126】
これにより、陰極側に設置したITO電極(陽極)上に、化28に示す化合物の誘導体を析出させて、この誘導体を主成分とする平均厚さ5nmの中間層を得た。
【0127】
(実施例5A)
前記工程−2A−において、化29に示す化合物の3.0wt%水・メタノール溶液を用意し、前記工程−3A−における電圧印加時の各種条件を以下のようにした以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
・印加電圧 :20V
・電極間の通電電流:1〜4μA/cm
・液体の温度 :60℃
・液体のpH :5.5〜6.0
・処理時間 :10分
【0128】
【化29】


【0129】
これにより、陽極側に設置したITO電極(陽極)上に、化29に示す化合物の誘導体を析出させて、この誘導体を主成分とする平均厚さ5nmの中間層を得た。
【0130】
(比較例1A)
中間層を前記工程−2A−〜前記工程−4A−にようにして形成したのに代えて、真空蒸着法により銅フタロシアニンを蒸着して、平均厚さ15nmの中間層を形成した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例2A)
前記工程−2A−〜前記工程−4A−(中間層形成工程)を省略した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0131】
(実施例1B)
−1B− まず、平均厚さ1.1mmの透明なガラス基板を2つ用意し、これらの基板上に、スパッタリング法により、それぞれ、平均厚さ150nmのITO電極を形成した。
−2B− 次に、テトラチオフルバレンのカルボン酸ナトリウム塩3.0wt%水溶液を用意した。
−3B− 次に石英基板に設けられたITO電極の一方を陰極として、他方を陽極としてそれぞれセットした後、前記工程−2B−で用意した水溶液中に浸漬させた状態で、陰極と陽極との間に電圧を印加した。
【0132】
なお、電圧印加時の各種条件は、以下に示す通りである。
・印加電圧 :5〜20V
・電極間の通電電流:1〜4μA/cm
・液体の温度 :60℃
・液体のpH :5.5
・処理時間 :20分
これにより、陽極側に設置したITO電極(陰極)上に、テトラチオフルバレンのカルボン酸ナトリウム塩の誘導体を析出させて、この誘導体を主成分とする平均厚さ8nmの中間層を得た。
【0133】
−4B− 次に、この中間層を水溶液中から取り出し、純水で洗浄した後、窒素雰囲気下で60℃×60分の条件で乾燥させた。
−5B− 次に、中間層上に、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)(重量平均分子量200000)の1.7wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、窒素雰囲気下、100℃×10分、さらに、減圧下、100℃×60分の条件で乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を形成した。
【0134】
−6B− 次に、発光層上に、銅フタロシアニンを真空蒸着し、平均厚さ10nmの正孔輸送層を形成した。
−7B− 次に、正孔輸送層上に、真空蒸着法により、平均厚さ300nmのAl電極(陽極)を形成した。
−8B− 次に、形成した各層を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、有機EL素子を完成した。
【0135】
(実施例2B)
−1C− まず、前記工程−1B−〜前記工程−6B−と同様にして、ガラス基板上に陰極と中間層と発光層と正孔輸送層とを順次形成した。
−2C− 次に、正孔輸送層上に、前記工程−1C−と同様にして、透明電極と中間層と発光層と正孔輸送層とを順次形成した。
−3C− 次に、前記工程−7B−と同様にして、正孔輸送層上に陽極を形成した。
−4C− 次に、前記工程−8B−と同様にして、各層を保護カバーにより封止して、有機EL素子を製造した。
【0136】
(比較例1B)
中間層を前記工程−2B−〜前記工程−4B−にようにして形成したのに代えて、真空蒸着法によりテトラチオフルバレンを蒸着して、平均厚さ10nmの中間層を形成した以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例2B)
前記工程−2B−〜前記工程−4B−(中間層形成工程)を省略した以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0137】
2.評価
各実施例および各比較例の有機EL素子について、それぞれ、通電電流(A)、発光輝度(cd/m)、最大発光効率(lm/W)を測定すると共に、発光輝度が初期値の半分になる時間(半減期)を測定した。
なお、これらの測定は、陰極と陽極との間に9Vの電圧を印加することで行った。
【0138】
そして、比較例1Aで測定された各測定値(通電電流、発光輝度、最大発光効率、半減期)を基準値として、実施例1A〜実施例5Aおよび比較例2Aで測定された各測定値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
◎:比較例1Aの測定値に対し、1.50倍以上である
○:比較例1Aの測定値に対し、1.25倍以上、1.50倍未満である
△:比較例1Aの測定値に対し、1.00倍以上、1.25倍未満である
×:比較例1Aの測定値に対し、0.75倍以上、1.00倍未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表1に示す。
また、一例として、実施例1Aおよび比較例1Aの有機EL素子において測定された印加電圧の値の変化と、通電電流の値の変化との関係を示すグラフを図9に示す。
【0139】
【表1】


【0140】
表1に示すように、各実施例の有機EL素子は、いずれも、各比較例の有機EL素子と比較して、通電電流、発光輝度、最大発光効率および半減期ともに、優れた結果が得られた。
これにより、本発明の有機EL素子では、陽極と中間層との界面および中間層と発光層との界面における密着性がそれぞれ向上したため、中間層を介した陽極から発光層への正孔の受け渡しが好適に行われていることが明らかとなった。
次に、比較例1Bで測定された各測定値(通電電流、発光輝度、最大発光効率、半減期)を基準値として、実施例1B、実施例2Bおよび比較例2Bで測定された各測定値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
【0141】
◎:比較例1Bの測定値に対し、1.50倍以上である
○:比較例1Bの測定値に対し、1.25倍以上、1.50倍未満である
△:比較例1Bの測定値に対し、1.00倍以上、1.25倍未満である
×:比較例1Bの測定値に対し、0.75倍以上、1.00倍未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表2に示す。
【0142】
【表2】


【0143】
表2に示すように、各実施例の有機EL素子は、いずれも、各比較例の有機EL素子と比較して、通電電流、発光輝度、最大発光効率および半減期ともに、優れた結果が得られた。
これにより、本発明の有機EL素子では、陰極と中間層との界面および中間層と発光層との界面における密着性がそれぞれ向上したため、中間層を介した陰極から発光層への電子の受け渡しが好適に行われていることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】有機EL素子の第1実施形態を示した縦断面図である。
【図2】中間層を設ける工程を説明するための模式図(縦断面図)である。
【図3】第1実施形態の有機EL素子を備えるディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】有機EL素子の第2実施形態を示した縦断面図である。
【図5】有機EL素子の第3実施形態を示した縦断面図である。
【図6】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図9】実施例1Aおよび比較例1Aの有機EL素子において測定された印加電圧の値の変化と、通電電流の値の変化との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0145】
1、10、11……有機EL素子 2……基板 3……陰極 3’……透明電極 4、、14、14’……中間層 5、5’……発光層 6、6’……正孔輸送層 7……陽極 8……封止部材 9、19、19’、19’’……積層体 100……ディスプレイ装置 20……基体 21……基板 22……回路部 23……保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……第1隔壁部 32……第2隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ




 

 


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