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発明の名称 燃料電池
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−122960(P2007−122960A)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
出願番号 特願2005−311251(P2005−311251)
出願日 平成17年10月26日(2005.10.26)
代理人 【識別番号】100077849
【弁理士】
【氏名又は名称】須山 佐一
発明者 矢嶋 亨 / 赤本 行伯 / 佐藤 雄一 / 根岸 信保
要約 課題
燃料タンク内などにおける液体燃料の濃度を一定に維持し、液体燃料の気化を促進して、安定した電池出力を得ることができる燃料電池を提供することを目的とする。

解決手段
燃料極と、空気極と、燃料極と空気極とに挟持された電解質膜15と、液体燃料を収容する液体燃料タンク21と、液体燃料タンク21と燃料極との間に配設され、燃料極から拡散した水蒸気と液体燃料Fとの間の熱交換を行い、液体燃料Fの気化成分を燃料極側に通過させる気液分離膜22とを具備する。
特許請求の範囲
【請求項1】
燃料極、空気極、および前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜から構成される膜電極接合体と、
液体燃料を収容する燃料タンクと、
前記燃料タンクと前記膜電極接合体の燃料極側との間に配設され、前記燃料極から拡散した水蒸気と前記液体燃料との間の熱交換を行い、前記液体燃料の気化成分を前記燃料極側に通過させる気液分離層と
を具備することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記気液分離層の前記燃料極側の表面では、前記水蒸気が凝縮し、前記気液分離層の燃料タンク側の表面では、液体燃料が気化することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記気液分離層の燃料タンク側の表面の少なくとも一部分に面して、液体燃料を供給する液体供給手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記液体供給手段が、液体燃料を毛管力によって含浸して供給する構成を備えることを特徴とする請求項3記載の燃料電池。
【請求項5】
前記気液分離層の前記燃料極側の表面の一部に面して、水を排出する水排出手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項6】
前記水排出手段が、水を毛管力によって含浸して排出する構成を備えることを特徴とする請求項5記載の燃料電池。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に小型のパッシブ型の燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体技術の発達に伴い、OA機器、オーディオ機器などの電子機器の小型化、高性能化、ポータブル化が進み、これら携帯用電子機器に使用される電池の高エネルギ密度化の要求が強まっている。
【0003】
このような状況のもと、小型の燃料電池が注目を集めている。特に、メタノールを燃料として用いた直接メタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)は、水素ガスを使用する燃料電池に比べ、水素ガスの取り扱いの困難さを回避でき、また有機燃料を改質して水素を作り出す装置等が必要なく、小型化に優れていると考えられる。
【0004】
DMFCでは、燃料極(アノード)においてメタノールが酸化分解され、二酸化炭素、プロトンおよび電子が生成される。一方、空気極(カソード)では、空気から得られる酸素と、電解質膜を経て燃料極から供給されるプロトン、および燃料極から外部回路を通じて供給される電子によって水が生成される。また、この外部回路を通る電子によって、電力が供給されることになる。
【0005】
DMFCにおける燃料供給の方法としては、燃料タンクに収容された液体燃料を、直接、液体燃料含浸部の主面に接触させて、液体燃料含浸部に含浸させ、燃料極側に液体燃料を供給する技術が開示されている(例えば、特許文献1−4参照。)。
【特許文献1】特許第3413111号公報
【特許文献2】特開2003−317791号公報
【特許文献3】特開2004−14148号公報
【特許文献4】特開2004−79506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池では、カソード触媒層において、水を生成する発電反応を生じ、この反応が進行してカソード触媒層における水分貯蔵量が多くなると、浸透圧現象によって、電解質膜を介して生成した水のアノード触媒層側への移動が促進される。
【0007】
上記した従来の燃料電池では、アノード触媒層側へ移動した水が水蒸気となり、液体燃料含浸部を介して燃料タンク内に拡散し、それらの部位で水蒸気が冷却されることで凝縮して水となることがあった。これにより、それらの部位における燃料濃度が低下し、所定の電池出力が得られないという問題を生じることがあった。
【0008】
また、上記のように液体燃料を燃料極側に直接供給する方法以外に、液体燃料が気化した気化燃料を燃料極側に供給する方法も考えられる。しかし、この方式では、液体燃料の気化速度によって気化燃料の供給速度が制限されるため、大電量で発電しようとした場合に気化燃料の供給が追いつかず、このために燃料電池の電圧が低下してしまい、一定以上の発電出力を得ることが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、燃料タンク内などにおける液体燃料の濃度を一定に維持し、液体燃料の気化を促進して、安定した電池出力を得ることができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池は、燃料極、空気極、および前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜から構成される膜電極接合体と、液体燃料を収容する燃料タンクと、前記燃料タンクと前記膜電極接合体の燃料極側との間に配設され、前記燃料極から拡散した水蒸気と前記液体燃料との間の熱交換を行い、前記液体燃料の気化成分を前記燃料極側に通過させる気液分離層とを具備することを特徴とする。
【0011】
この燃料電池によれば、気液分離膜を介して、燃料極から拡散した水蒸気と液体燃料との間で熱交換を行うことができるので、液体燃料の気化を促進することができる。また、燃料極から拡散した水蒸気は、気液分離膜の燃料極側の面で凝縮して水となるので、水蒸気が気液分離膜を通過して液体燃料タンク内に拡散することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料電池によれば、燃料タンク内などにおける液体燃料の濃度を一定に維持し、液体燃料の気化を促進して、安定した電池出力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について図を参照して説明する。
【0014】
図1には、本発明に係る一実施の形態の直接メタノール型の燃料電池10の断面図が模式的に示されている。
【0015】
図1に示すように、燃料電池10は、アノード触媒層11およびアノードガス拡散層12からなる燃料極と、カソード触媒層13およびカソードガス拡散層14からなる空気極と、アノード触媒層11とカソード触媒層13との間に挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜15とから構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly )16を起電部として構成している。
【0016】
アノード触媒層11およびカソード触媒層13に含有される触媒としては、例えば、白金族元素である、Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pdなどの単体金属、白金族元素を含有する合金などを挙げることができる。具体的には、アノード触媒層11として、メタノールや一酸化炭素に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Moなど、カソード触媒層13として、白金やPt−Niなどを用いることが好ましいが、これらに限られるものではない。また、炭素材料のような導電性担持体を使用する担持触媒、あるいは無担持触媒を使用してもよい。
【0017】
電解質膜15を構成するプロトン伝導性材料としては、例えば、スルホン酸基を有する、例えば、パーフルオロスルホン酸重合体などのフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)など)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂、タングステン酸やリンタングステン酸などの無機物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
アノード触媒層11に積層されたアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体としての機能も兼ね備えている。一方、カソード触媒層13に積層されたカソードガス拡散層14は、カソード触媒層13に空気等の酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層13の集電体としての機能も兼ね備えている。そして、アノードガス拡散層12の表面には、アノード導電層17が配設され、カソードガス拡散層14の表面には、カソード導電層18が配設されている。アノード導電層17およびカソード導電層18は、例えば、金などの導電金属材料からなるメッシュなどの多孔質層や、開孔を有する板あるいは箔などで構成される。なお、アノード導電層17およびカソード導電層18は、それらの周縁から燃料や酸化剤が漏れないように構成される。
【0019】
アノードシール材19は、矩形枠状を有し、アノード導電層17と電解質膜15との間に位置するとともに、アノード触媒層11およびアノードガス拡散層12の周囲を囲んでいる。一方、カソードシール材20は、矩形枠状を有し、カソード導電層18と電解質膜15との間に位置するとともに、カソード触媒層13およびカソードガス拡散層14の周囲を囲んでいる。アノードシール材19およびカソードシール材20は、例えば、ゴム製のOリングなどで構成され、膜電極接合体16からの燃料漏れおよび酸化剤漏れを防止している。なお、アノードシール材19およびカソードシール材20の形状は、矩形枠状に限られず、燃料電池10の外縁形に対応するように適宜に構成される。
【0020】
また、液体燃料Fを収容する液体燃料タンク21の開口部を覆うように配設された気液分離膜22上には、燃料電池10の外縁形に対応した形状で構成されたフレーム23(ここでは矩形のフレーム)が配置される。そして、このフレーム23の一方の面に、アノード導電層17が接するように、上記したアノード導電層17およびカソード導電層18を備えた膜電極接合体16が積層配置されている。また、フレーム23、気液分離膜22およびアノード導電層17で囲まれた気化燃料収容室25は、気液分離膜22を透過してきた液体燃料Fの気化成分を一時的に収容し、さらに気化成分における燃料の濃度分布を均一にする空間として機能する。ここで、フレーム23は、電気絶縁材料で構成され、具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のような熱可塑性ポリエステル樹脂などで形成される。
【0021】
また、気化燃料収容室25内に、気液分離膜22の一部に面して、水排出手段24が設けられ、水排出手段24の一部は、燃料電池10の外部に突出されている。この水排出手段24は、気液分離膜22上の水を燃料電池10の外部に導くものである。水排出手段24を構成する材料は、気孔率が10〜90%で、吸水率が30〜90%である材料を用いることが好ましい。
【0022】
ここで、この範囲の気孔率が好ましいのは、気孔率が10%より小さい場合には、十分な排水量や排水速度を確保することが困難であり、90%より大きい場合には、気孔径が大きくなって毛管力が低下するためにかえって水排出手段の中に水を保持しにくくなることや、水排出手段自身の強度が低下してしまい長時間使用していると変形などを生じ、そのために排水速度が低下するなどの不具合を生じるからである。
【0023】
また、上記した範囲の吸水率が好ましいのは、吸水率が30%より小さい場合には、気孔率が小さい場合と同様に十分な排水量や排水速度を確保することが困難であり、90%より大きい場合には、吸収した燃料で燃料供給手段自体が膨張、膨潤などを生じることにより、形状を維持することが困難となるからである。具体的には、水排出手段24は、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維や、ガラスなどの無機物繊維、綿、毛、絹、紙などの天然繊維などで形成された不織布や織布、あるいは発砲ポリウレタン、発砲ポリスチレン、多孔性ポリエチレンなどの合成樹脂多孔質体、海綿などの天然多孔質体などで構成される。なお、水排出手段24が水を含浸している場合には、水排出手段24を介して外部に燃料などが漏れることはない。
【0024】
液体燃料タンク21内には、一端側が液体燃料タンク21の底面から立設し、他端側を気液分離膜22に面して、燃料供給手段26が設けられている。この燃料供給手段26は、気液分離膜22の少なくとも一部に面するように設けられる。ここで、液体燃料Fの気化を促進するために、燃料供給手段26の他端側は、気液分離膜22の一方側(液体燃料タンク21側)の全面に面して設けられるのが好ましい。この燃料供給手段26は、液体燃料タンク21内の液体燃料Fを気液分離膜22の一方側の面に導くものである。燃料供給手段26を構成する材料は、気孔率が30〜90%で、吸水率が30〜90%である材料を用いることが好ましい。
【0025】
ここで、この範囲の気孔率が好ましいのは、気孔率が30%より小さい場合には、十分な燃料供給量や燃料供給速度を確保することが困難であり、気孔率が90%より大きい場合には、毛管力が低下したり燃料供給手段自体が変形を生じるなどのために燃料供給速度が低下するなどの不具合を生じるからである。
【0026】
また、上記した範囲の吸水率が好ましいのは、吸水率が30%より小さい場合には、気孔率が小さい場合と同様に十分な燃料供給量や燃料供給速度を確保することが困難であり、吸水率が90%より大きい場合には、吸収した燃料で燃料供給手段自体が膨張、膨潤などを生じることにより、形状を維持することが困難となるからである。具体的には、燃料供給手段26は、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維や、ガラスなどの無機物繊維、綿、毛、絹、紙等の天然繊維などで形成された不織布や織布、あるいは発砲ポリウレタン、発砲ポリスチレン、多孔性ポリエチレンなどの合成樹脂多孔質体、海綿などの天然多孔質体などで構成される。
【0027】
ここで、液体燃料タンク21に収容される液体燃料Fは、濃度が50モル%を超えるメタノール水溶液、または純メタノールである。また、純メタノールの純度は、95重量%以上100重量%以下にすることが好ましい。ここで、上記した液体燃料Fの気化成分とは、液体燃料Fとして液体のメタノールを使用した場合には、気化したメタノールを意味し、液体燃料Fとしてメタノール水溶液を使用した場合には、メタノールの気化成分と水の気化成分からなる混合気を意味する。
【0028】
気液分離膜22は、液体燃料Fの気化成分と液体燃料Fとを分離し、その気化成分をアノード触媒層11側に通過させ、さらに、アノード触媒層11から拡散した水蒸気と燃料供給手段26によって導かれた液体燃料Fとの間で熱交換を行うものである。気液分離膜22は、液体燃料Fの気化成分を通過させ、熱伝導率の高い材料で構成されることが好ましく、具体的には、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などの材料で構成される。なお、気液分離膜22は、その周縁から燃料が漏れないように構成される。
【0029】
一方、カソード導電層18上には、燃料電池10の外縁形に対応した形状で構成されたフレーム27(ここでは矩形のフレーム)を介して、保湿層28が積層されている。また、保湿層28上には、酸化剤である空気を取り入れるための空気導入口30が複数個形成された表面層29が積層されている。この表面層29は、膜電極接合体16を含む積層体を加圧して、その密着性を高める役割も果たしているため、例えば、SUS304のような金属で形成される。また、フレーム27は、上記したフレーム23と同様に、電気絶縁材料で構成され、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような熱可塑性ポリエステル樹脂などで形成される。
【0030】
また、保湿層28は、カソード触媒層13において生成した水の一部を含浸して、水の蒸散を抑制する役割をなすとともに、カソードガス拡散層14に酸化剤を均一に導入することにより、カソード触媒層13への酸化剤の均一拡散を促す補助拡散層としての機能も有している。この保湿層28は、例えば、ポリエチレン多孔質膜などの材料で構成される。ここで、浸透圧現象によるカソード触媒層13側からアノード触媒層11側への水の移動は、保湿層28上に設置された表面層29の空気導入口30の個数やサイズを変えて、開口面積等を調整することで制御することができる。
【0031】
次に、上記した燃料電池10における作用について、図1および図2を参照して説明する。
【0032】
図2は、アノード触媒層11から拡散した水蒸気100と燃料供給手段26によって導かれた液体燃料Fとの間の熱交換を行い、液体燃料Fの気化成分を通過させる気液分離膜22の説明をするための概要図である。
【0033】
液体燃料タンク21内の液体燃料F(例えば、メタノール水溶液)は、例えば、毛管力によって、燃料供給手段26に含浸し、気液分離膜22の一方の面(液体燃料タンク21側の面)に接触する。また、アノード触媒層11から拡散した水蒸気100は、気液分離膜22の他方の面(気化燃料収容室25側の面)に接触し、凝縮して水101となる。この際、少なくとも水蒸気100が有していた潜熱が放出され、その熱が気液分離膜22を伝導して、気液分離膜22の一方の面側に伝わる。そして、この伝導した熱は、気液分離膜22の一方の面と接触する液体燃料Fに伝達され、液体燃料Fが気化する。
【0034】
ここで、水蒸気の凝縮と液体燃料の気化との間で熱交換が行われるのは、水よりもメタノールの方が沸点が低く、気化しやすいために、水が凝縮してメタノールが気化する方が熱力学的に安定であることが主な理由である。
【0035】
気化したメタノールと水蒸気の混合気102は、気液分離膜22を透過し、気化燃料収容室25に一旦収容され、濃度分布が均一にされる。なお、燃料供給手段26を設けた場合でも、混合気102には、液体燃料Fの液面から気化した混合気を含むこともあるが、主として液体燃料Fが気化するのは、気液分離膜22の一方の面である。一方、気液分離膜22の他方の面に生成された水101は、気液分離膜22を通過することはできず、水排出手段24によって吸収され、燃料電池10の外部に排出される。
【0036】
気化燃料収容室25に一旦収容された混合気102は、アノード導電層17を通過し、さらにアノードガス拡散層12で拡散され、アノード触媒層11に供給される。アノード触媒層11に供給された混合気102は、次の式(1)に示すメタノールの内部改質反応を生じる。
CHOH+HO → CO+6H+6e …式(1)
【0037】
なお、液体燃料Fとして、純メタノールを使用した場合には、液体燃料タンク21からの水蒸気の供給がないため、カソード触媒層13で生成した水や電解質膜15中の水などがメタノールと上記した式(1)の内部改質反応を生じるか、または上記した式(1)の内部改質反応によらず、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じる。
【0038】
内部改質反応で生成されたプロトン(H)は、電解質膜15を伝導し、カソード触媒層13に到達する。一方、表面層29の空気導入口30から取り入れられた空気は、保湿層28、カソード導電層18、カソードガス拡散層14を拡散して、カソード触媒層13に供給される。カソード触媒層13に供給された空気は、次の式(2)に示す反応を生じる。この反応によって、水が生成され、発電反応が生じる。
(3/2)O+6H+6e → 3HO …式(2)
【0039】
この反応によってカソード触媒層13中に生成した水は、カソードガス拡散層14を拡散して保湿層28に到達し、一部の水は、保湿層28上に設けられた表面層29の空気導入口30から蒸散されるが、残りの水は、表面層29によって蒸散が阻害される。特に、式(2)の反応が進行すると、表面層29によって蒸散が阻害される水量が増し、カソード触媒層13中の水分貯蔵量が増加する。この場合には、式(2)の反応の進行に伴って、カソード触媒層13の水分貯蔵量が、アノード触媒層11の水分貯蔵量よりも多い状態となる。その結果、浸透圧現象によって、カソード触媒層13に生成した水が、電解質膜15を通過してアノード触媒層11に移動する反応が促進される。そのため、アノード触媒層11への水分の供給を液体燃料タンク21から気化した水蒸気のみに頼る場合に比べて、水分の供給が促され、前述した式(1)におけるメタノールの内部改質反応を促進させることができる。これによって、出力密度を高くすることができるとともに、その高い出力密度を長期間に亘り維持することが可能となる。
【0040】
また、液体燃料Fとして、メタノールの濃度が50モル%を超えるメタノール水溶液、または純メタノールを使用する場合でも、カソード触媒層13からアノード触媒層11に移動してきた水を内部改質反応に使用することができるので、アノード触媒層11への水の供給を安定して行うことが可能となる。これによって、メタノールの内部改質反応の反応抵抗をさらに低下することができ、長期出力特性と負荷電流特性をより向上させることができる。さらに、液体燃料タンク21の小型化を図ることも可能である。
【0041】
上記したように、一実施の形態の直接メタノール型の燃料電池10によれば、気液分離膜22を介して、アノード触媒層11から拡散した水蒸気100と燃料供給手段26によって導かれた液体燃料Fとの間で熱交換を行うことができるので、液体燃料Fの気化を促進し、大きな電圧低下を生じることなく発電電流を増加することができ、発電による燃料電池の出力を向上することができる。
【0042】
また、アノード触媒層11から拡散した水蒸気100は、気液分離膜22の他方の面(気化燃料収容室25側の面)で凝縮して水101となるので、水蒸気100が気液分離膜22を通過して液体燃料タンク21内に拡散することを防止できる。これによって、アノード触媒層11から拡散した水蒸気100が、液体燃料タンク21内に拡散し、その後凝縮して水となり液体燃料Fに混入することを防止できるので、液体燃料タンク21内の液体燃料Fの燃料濃度を一定に維持することができる。このように、液体燃料タンク21内の液体燃料Fの燃料濃度の低下を防止し、燃料濃度を一定に維持することで、所定の燃料濃度を有する液体燃料Fの気化成分をアノード触媒層11に供給することができ、安定した電池出力を得ることができる。
【0043】
さらに、燃料供給手段26によって、液体燃料Fを、気液分離膜22の一方の面(液体燃料タンク21側の面)に接するように均一に供給することができるので、気液分離膜22を介して行われる、アノード触媒層11から拡散した水蒸気100と液体燃料Fとの間の熱交換を効率よく進行させることができる。これによって、液体燃料Fの気化を促進することができる。
【0044】
また、水排出手段24を設けることで、気液分離膜22の他方の面に生成された水101を燃料電池10の外部に排出することができるので、生成された水101が、液体燃料Fの気化成分が気液分離膜22を通過する妨げとなるのを抑制することができる。
【0045】
なお、上記した一実施の形態では、液体燃料に、メタノール水溶液、または純メタノールを使用した直接メタノール型の燃料電池について説明したが、液体燃料は、これらに限られるものではない。例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルエーテル、ギ酸など、またはこれらの水溶液を用いた液体燃料直接供給型の燃料電池にも応用することができる。いずれにしても、燃料電池に応じた液体燃料が使用される。
【0046】
また、所定の電池出力を得るために、主として、図1に示した燃料電池10を複数並設し、各燃料電池10を電気的に直列に接続して、燃料電池を構成する。この際、例えば、1つの液体燃料タンク21を共用するように構成することができる。
【0047】
次に、燃料電池10に燃料供給手段26を設けることで、優れた出力特性が得られることを以下の実施例で説明する。
【0048】
(実施例1)
実施例1で使用した本発明に係る燃料電池を次のように作製した。
【0049】
まず、白金担持カーボンブラックに、パーフルオロカーボンスルホン酸溶液、水およびメトキシプロパノールを添加し、白金担持カーボンブラックを分散させてペーストを作製した。得られたペーストを空気極のカソードガス拡散層である多孔質カーボンペーパに塗布した。そして、これを常温で乾燥し、カソード触媒層およびカソードガス拡散層からなる空気極を作製した。
【0050】
また、白金ルテニウム合金微粒子を担持したカーボン粒子に、パーフルオロカーボンスルホン酸溶液、水およびメトキシプロパノールを添加し、カーボン粒子を分散させてペーストを作製した。得られたペーストを燃料極のアノードガス拡散層である多孔質カーボンペーパに塗布した。そして、これを常温乾燥し、アノード触媒層およびアノードガス拡散層からなる燃料極を作製した。
【0051】
電解質膜として、厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(Nafion膜、デュポン社製)を用い、この電解質膜を、空気極および燃料極で挟持し、ホットプレスを行って、膜電極接合体(MEA)を作製した。なお、電極面積は、空気極、燃料極ともに12cmとした。
【0052】
続いて、この膜電極接合体を、空気および気化したメタノールを取り入れるための複数の開孔を有する金箔で挟み、アノード導電層およびカソード導電層を形成した。
【0053】
上記した膜電極接合体(MEA)、アノード導電層、カソード導電層が積層された積層体を樹脂製の2つのフレームで挟み込んだ。なお、電解質膜とアノード導電層との間、電解質膜とカソード導電層との間には、それぞれゴム製のOリングを挟持してシールを施した。
【0054】
また、2つのフレームで挟み込まれた積層体を、燃料極側が気液分離膜側になるように気液分離膜を介して、液体燃料タンクにネジ止めによって固定した。気液分離膜には、厚さが100μmのシリコーンシートを使用した。
【0055】
また、気化燃料収容室内に、気液分離膜の一部に面して、厚さが500μmで、気孔率が60%、吸水率が60%のポリエステ製の不織布で形成された水排出手段が設けられた。また、水排出手段の一部は、燃料電池の外部に突出させた。
【0056】
液体燃料タンク内には、一端側が液体燃料タンクの底面から立設し、他端側を気液分離膜に面して、厚さが500μmで、気孔率が60%、吸水率が60%のポリエステ製の不織布で形成された燃料供給手段が設けられた。また、燃料供給手段は、気液分離膜の一方の面の全面に接触させて設けられた。
【0057】
一方、空気極側のフレーム上には多孔質板を配置し、保湿層を形成した。また、この保湿層上には、空気取り入れのための空気導入口(口径3mm、口数60個)が形成された厚さが2mmのステンレス板(SUS304)を配置して表面層を形成し、ネジ止めによって固定した。
【0058】
上記したように形成された燃料電池の液体燃料タンクに、純メタノールを10ml注入し、温度25℃、相対湿度50%の環境の下、単位面積あたりの電流量である電流密度(mA/cm)と燃料電池の出力電圧(V)との関係を測定した。その結果を図3に示す。また、発電時間と発電開始時の燃料電池の出力電圧を100としたときの出力電圧率との関係を測定した。その結果を図4に示す。
【0059】
(比較例1)
比較例1で使用された燃料電池は、燃料供給手段を有しないこと以外は、上記した実施例1で使用された燃料電池の構成と同じである。また、電流密度(mA/cm)と燃料電池の出力電圧(V)との関係および発電時間と出力電圧率との関係を測定する際の測定方法および測定条件は、実施例1における測定方法および測定条件と同じである。電流密度(mA/cm)と燃料電池の出力電圧(V)との関係を測定した結果を図3に示し、発電時間と出力電圧率との関係を測定した結果を図4に示す。
【0060】
(測定結果の検討)
図3に示すように、燃料電池の充電密度が高くなるに従って出力電圧が低下するが、その出力電圧の低下は、燃料供給手段を備える実施例1の燃料電池の方が少なく、高い発電出力が得られることがわかった。
【0061】
また、図4に示すように、双方とも発電時間に伴って、出力電圧率は減少するが、燃料供給手段を備える実施例1の燃料電池の方がその減少率が小さく、高い出力電圧を維持できることがわかった。
【0062】
これらの測定結果から、燃料電池に燃料供給手段を設け、気液分離膜を介して行われる、アノード触媒層から拡散した水蒸気と液体燃料との間の熱交換を促進することで、優れた出力特性が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】一実施の形態の直接メタノール型の燃料電池の断面図。
【図2】気液分離膜の機能を説明をするための概要図。
【図3】電流密度と燃料電池の出力電圧との関係を示す図。
【図4】発電時間と出力電圧率との関係を示す図。
【符号の説明】
【0064】
10…燃料電池、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…カソード触媒層、14…カソードガス拡散層、15…電解質膜、16…膜電極接合体、17…アノード導電層、18…カソード導電層、19…アノードシール材、20…カソードシール材、21…液体燃料タンク、22…気液分離膜、23,27…フレーム、24…水排出手段、25…気化燃料収容室、26…燃料供給手段、28…保湿層、29…表面層、30…空気導入口。




 

 


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