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発明の名称 非水電解質電池及び電池パック
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−18882(P2007−18882A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−199445(P2005−199445)
出願日 平成17年7月7日(2005.7.7)
代理人 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
発明者 稲垣 浩貴 / 高見 則雄
要約 課題
充放電サイクル寿命に優れた非水電解質電池を提供する。

解決手段
正極3と、負極集電体4a及び前記負極集電体4aに担持された負極活物質含有層4bを含む負極4と、非水電解質とを具備する非水電解質電池であって、前記負極活物質含有層4bはLi吸蔵電位が0.4V(vs. Li/Li+)以上の負極活物質を含み、前記負極4は、水銀圧入法による細孔径分布に0.01〜0.2μmのモード径を有する第1のピークと、0.003〜0.02μmのモード径を有する第2のピークとを有し、水銀圧入法による直径が0.01〜0.2μmの細孔の体積及び前記直径が0.003〜0.02μmの細孔体積が、前記負極の重量(前記負極集電体の重量を除く)1g当り、それぞれ、0.05〜0.5mL、0.0001〜0.02mLであることを特徴とする非水電解質電池。
特許請求の範囲
【請求項1】
正極と、負極集電体及び前記負極集電体に担持された負極活物質含有層を含む負極と、非水電解質とを具備する非水電解質電池であって、
前記負極活物質含有層はLi吸蔵電位が0.4V(vs. Li/Li+)以上の負極活物質を含み、
前記負極は、水銀圧入法による細孔径分布に0.01〜0.2μmのモード径を有する第1のピークと、0.003〜0.02μmのモード径を有する第2のピークとを有し、水銀圧入法による直径が0.01〜0.2μmの細孔の体積及び前記直径が0.003〜0.02μmの細孔の体積が、前記負極の重量(前記負極集電体の重量を除く)1g当り、それぞれ、0.05〜0.5mL、0.0001〜0.02mLであることを特徴とする非水電解質電池。
【請求項2】
前記負極の水銀圧入法による直径が0.01〜0.2μmの細孔の表面積及び前記直径が0.003〜0.02μmの細孔の表面積は、前記負極の重量(前記負極集電体の重量を除く)1g当り、それぞれ、5〜50m2、0.1〜10m2であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記負極の水銀圧入法による細孔体積は、前記負極の重量(前記負極集電体の重量を除く)1g当り0.1〜1mLであることを特徴とする請求項1〜2いずれか1項記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記負極の水銀圧入法による細孔体積は、前記負極の重量(前記負極集電体の重量を除く)1g当り0.2〜0.5mLであることを特徴とする請求項1〜2いずれか1項記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記第1のピークのモード径は0.02〜0.1μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の非水電解質電池。
【請求項6】
前記負極活物質は、スピネル型のチタン酸リチウムを含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の非水電解質電池。
【請求項7】
前記非水電解質は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される2種以上の溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の非水電解質電池。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の非水電解質電池の組電池を具備することを特徴とする電池パック。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池と、この非水電解質電池から形成された組電池を具備する電池パックとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンが負極と正極とを移動することにより充放電が行われる非水電解質電池は、高エネルギー密度電池として盛んに研究開発が進められている。
【0003】
この非水電解質電池には、その用途により様々な特性が望まれる。例えば、デジタルカメラの電源用では約3C放電、ハイブリッド電気自動車等の車載用では約10C放電以上の使用が見込まれる。このため、これら用途の非水電解質電池には、大電流で充放電を繰り返した際の優れた充放電サイクル寿命が望まれる。
【0004】
現在、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を用い、負極活物質として炭素質物を用いる非水電解質電池が商用化されている。リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属としてCo、Mn、Ni等を用いるのが一般的である。
【0005】
近年、炭素質物に比してLi吸蔵放出電位が高いリチウムチタン酸化物を負極活物質として用いた非水電解質電池が実用化された。リチウムチタン酸化物は、充放電に伴う体積変化が少ないために炭素質物と比較してサイクル特性に優れる。中でも、スピネル型チタン酸リチウムは、特に有望である。
【0006】
例えば、特許文献1には充放電時の体積変化が少ないスピネル型チタン酸リチウムを負極活物質に用いて、体積変化が小さく、電極膨潤に伴う短絡や容量低下が起こり難い非水電解質電池が記載されている。
【0007】
一方、特許文献2には、Lixyz2+dで表されるバナジウム酸化物からなる負極活物質が、0.1〜10μmの径を有する空孔体積を粒子重量当り10-3cc/g〜0.8cc/g有することが開示されている。
【特許文献1】特開平09−199179号公報
【特許文献2】特開2005−72008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは鋭意研究した結果、以下の課題を発見した。
【0009】
リチウムチタン酸化物のようなLi吸蔵電位が0.4V(vs. Li/Li+)以上の負極活物質は、充放電、すなわちリチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化が小さく、この活物質を含む電極は膨潤し難い。一方、既に商用化されている黒鉛などの炭素質物を負極活物質とした負極は、充放電に伴う電極の体積膨張・収縮が数%と大きい。その結果、黒鉛などを負極活物質に用いた場合には、電極の膨張・収縮により非水電解質が拡散し、非水電解質の含浸、あるいはリチウム塩のような電解質の濃度の均等化が進みやすい。ところが、リチウムチタン酸化物を含む体積変化が小さい電極は、非水電解質の含浸性が著しく悪いことが分かった。特に、車両用などの大きな電池を製造する際には、この含浸性の悪さが生産性を低下させるのみならず、電池性能、特に充放電サイクル寿命を著しく低下させた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、充放電サイクル寿命に優れた非水電解質電池及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の非水電解質電池は、正極と、負極集電体及び前記負極集電体に担持された負極活物質含有層を含む負極と、非水電解質とを具備する非水電解質電池であって、
前記負極活物質含有層はLi吸蔵電位が0.4V(vs. Li/Li+)以上の負極活物質を含み、
前記負極は、水銀圧入法による細孔径分布に0.01〜0.2μmのモード径を有する第1のピークと、0.003〜0.02μmのモード径を有する第2のピークとを有し、水銀圧入法による直径が0.01〜0.2μmの細孔の体積及び前記直径が0.003〜0.02μmの細孔の体積が、前記負極の重量(前記負極集電体の重量を除く)1g当り、それぞれ、0.05〜0.5mL、0.0001〜0.02mLであることを特徴とする。
【0012】
本発明の電池パックは、上記構成を備えた非水電解質電池の組電池を具備することを特徴とする。
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、Li吸蔵電位が0.4V(vs. Li/Li+)以上、すなわち金属リチウム電位に対して0.4Vもしくはそれよりも貴な電位でリチウムを吸蔵・放出する負極において、負極製造時のスラリーの攪拌を強固に行い、粒子同士の凝集塊を少なくして、粒子を均一に分散させ、これにより、細孔径が0.01〜0.2μm範囲に鋭いピークと、0.003〜0.02μmの範囲にサブピークとを有する細孔径分布を持つ負極を作製することに成功した。さらに研究を進めた結果、直径が0.01〜0.2μmの細孔の体積及び直径が0.003〜0.02μmの細孔の体積が、負極重量(負極集電体の重量を除く)1g当り、それぞれ、0.05〜0.5mL、0.0001〜0.02mLである際に、非水電解質の含浸性が格段に向上し、生産性の向上のみならず、大電流特性と充放電サイクル寿命が向上されることが明らかとなった。また、この負極には、小さい細孔が均一に分散されているため、電極密度を低下させることなく高い含浸性を保持することができる。これにより、電極の高密度化、すなわち、電池の高容量化も可能となる。
【0014】
さらに、この負極に対して、正極活物質にスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物を適用することによって、電池の高電圧化も可能にできる。あるいは、正極活物質にオリビン構造を有するリチウムリン複合酸化物(例えば、LixFePO4、LixFe1-xMnyPO4、LixVPO4F、LixCoPO4など、0≦x≦1、0≦y≦1)を含めることによって、熱安定性に優れた非水電解質電池を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、充放電サイクル寿命に優れた非水電解質電池及び電池パックを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0017】
(第一の実施の形態)
第一の実施の形態に係る電池単体の一例について、図1、図2を参照してその構造を説明する。図1に、第一の実施の形態に係わる扁平型非水電解質二次電池の断面模式図を示す。図2は、図1のAで示した円で囲われた部分を詳細に表す部分断面模式図を示す。
【0018】
図1に示すように、外装部材7には、扁平状の捲回電極群6が収納されている。捲回電極群6は、正極3と負極4をその間にセパレータ5を介在させて渦巻状に捲回された構造を有する。非水電解質は、捲回電極群6に保持されている。
【0019】
図2に示すように、捲回電極群6の最外周には負極4が位置しており、この負極4の内周側にセパレータ5、正極3、セパレータ5、負極4、セパレータ5、正極3、セパレータ5というように正極3と負極4がセパレータ5を介して交互に積層されている。負極4は、負極集電体4aと、負極集電体4aに担持された負極活物質含有層4bとを備えるものである。負極4の最外周に位置する部分では、負極集電体4aの片面のみに負極活物質含有層4bが形成されている。正極3は、正極集電体3aと、正極集電体3aに担持された正極活物質含有層3bとを備えるものである。
【0020】
図1に示すように、帯状の正極端子1は、捲回電極群6の外周端近傍の正極集電体3aに電気的に接続されている。一方、帯状の負極端子2は、捲回電極群6の外周端近傍の負極集電体4aに電気的に接続されている。正極端子1及び負極端子2の先端は、外装部材7の同じ辺から外部に引き出されている。
【0021】
以下、負極、非水電解質、正極、セパレータ、外装部材、正極端子、負極端子について詳細に説明する。
【0022】
1)負極
負極活物質のリチウム吸蔵電位を前述した範囲に規定するのは、0.4V(vs. Li/Li+)よりも卑な電位でリチウムを吸蔵する活物質(例えば、黒鉛、リチウム金属、前述の特許文献2に記載されたLixyz2+dで表されるバナジウム酸化物)では、負極の粒子径を小さくすると、活物質表面で非水電解液の還元反応が過度に進行し、電池特性、特に出力特性や充放電サイクル寿命が著しく低下するからである。この現象は、0.2V(vs. Li/Li+)よりも卑な電位でリチウムを吸蔵する活物質の粒子径を1μm以下にするとより顕著に現れる。従って、負極活物質のリチウム吸蔵電位は、0.4V(vs. Li/Li+)以上であることが好ましく、上限値としては、3V(vs. Li/Li+)が好ましく、より好ましくは2V(vs. Li/Li+)である。
【0023】
0.4〜3V(vs. Li/Li+)の範囲でリチウムを吸蔵することが可能な負極活物質としては、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、あるいは合金が挙げられる。
【0024】
このような金属酸化物としては、例えば、チタン含有金属複合酸化物、例えばSnB0.40.63.1やSnSiO3などのスズ系酸化物、例えばSiOなどのケイ素系酸化物、例えばWO3などのタングステン系酸化物などが挙げられる。中でも、チタン含有金属複合酸化物が好ましい。
【0025】
チタン含有金属複合酸化物としては、例えば、酸化物合成時はリチウムを含まないチタン系酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムチタン酸化物の構成元素の一部を異種元素で置換したリチウムチタン複合酸化物などを挙げることができる。リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi4+xTi512(xは0≦x≦3))、ラムステライド型のチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37(yは0≦y≦3)などを挙げることができる。
【0026】
チタン系酸化物としては、TiO2、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiO2はアナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO2−P25、TiO2−V25、TiO2−P25−SnO2、TiO2−P25−MeO(MeはCu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。この金属複合酸化物は、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能が大幅に向上することができる。中でも、リチウムチタン酸化物、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物が好ましい。
【0027】
金属硫化物としては、例えば、例えばTiS2などのチタン系硫化物、例えばMoS2などのモリブデン系硫化物、例えば、FeS、FeS2、LixFeS2(0≦x≦4)などの鉄系硫化物などが挙げられる。
【0028】
金属窒化物としては、例えば、リチウム系窒化物(例えば、(Li,Me)3N{Meは遷移金属元素})などが挙げられる。
【0029】
負極活物質の平均粒径は1μm以下にすることが望ましい。これは、平均粒径が1μmを超える負極活物質を使用すると、負極の細孔径を本実施形態で規定する範囲にすることが困難になる可能性があるからである。但し、平均粒径が小さ過ぎると、非水電解質の分布が負極側に偏り、正極での電解質の枯渇を招く恐れがあるため、その下限値は0.001μmにすることが好ましい。
【0030】
負極活物質は、その平均粒径が1μm以下で、かつN2吸着によるBET法での比表面積が5〜50m2/gの範囲であることが望ましい。これにより、負極の細孔径分布を本実施形態で規定する範囲に制御しやすくなり、非水電解質の含浸性を高めることが可能となる。
【0031】
負極の細孔径分布を前記範囲に規定する理由を説明する。
【0032】
ここで、細孔とは、多孔質物質の内部に存在する表面まで通じた小さな孔を指す(岩波理化学辞典第5版参照)。モード径とは、横軸に粒子径を設け、縦軸に頻度を設けた頻度分布曲線のピークトップを指す。
【0033】
<第1のピーク>
第一のピークは活物質粒子、導電剤、結着剤など、負極構成要素同士が形成する細孔に帰属される。
【0034】
負極の水銀圧入法による細孔径分布の第1のピークのモード径を0.2μm以下とすることにより、毛細管現象による非水電解質の含浸を促進することができる。同時に、モード径を0.01μm以上とするのは、以下の理由による。負極活物質表面、あるいは負極導電剤表面では、電解液との反応により生成した副反応物(有機物、あるいは無機物)が堆積する。第1のピークのモード径を0.01μm未満にすると、副反応物の成長により細孔が塞がれ、負極の保液性(非水電解質保持性)が低下し、サイクル特性を低下させる。よって、第1のピークのモード径は、0.01〜0.2μmの範囲であることが好ましい。更に好ましい範囲は0.02〜0.1μmである。
【0035】
水銀圧入法による0.01〜0.2μmの細孔径を有する細孔に対する細孔体積は、負極重量(負極集電体の重量を除く)1g当り0.05〜0.5mLである。まず、負極集電体の重量を除くとした理由について説明する。後述するように負極集電体にはアルミニウム箔のような無孔の導電性基板が使用されている。負極重量から負極集電体の重量を差し引くことにより、細孔径分布とは無関係の重量分を除外することができる。細孔体積を0.05mL/g未満にすると、負極内の非水電解質が枯渇するため、サイクル特性が低下する。また、細孔体積が0.5mL/gを超えると、非水電解質の分布が負極側に偏り、正極での非水電解質の枯渇を招く。細孔体積のより好ましい範囲は、0.1〜0.3mL/gである。
【0036】
水銀圧入法による直径が0.01〜0.2μmの細孔の表面積は、負極重量(負極集電体の重量を除く)1g当り5〜50m2であることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。負極集電体の重量を除くとした理由は、前述した通りである。また、細孔表面積を5m2/g未満にすると、電解液の含浸促進効果が小さくなる恐れがある。細孔表面積が50m2/gを超えると、電極密度が上げ難く、エネルギー密度が低下する他、電子伝導性の欠如により出力性能が低下する恐れがある。細孔表面積のより好ましい範囲は、7〜30m2/gである。
【0037】
<第2のピーク>
第2のピークは負極活物質自身が有する細孔に帰属される。
【0038】
水銀圧入法による細孔径分布の0.003〜0.02μmの範囲にモード径を有する第2のピークを有する負極においては、電解液の含浸性が格段に高まり、優れた大電流特性を実現することができる。これは、第2のピークの細孔が存在することにより、毛細管現象がより効果的に進むからである。但し、第2のピークのモード径を0.003μm未満にすると、分子量の大きい電解質の拡散性が低下するため、逆に含浸性を低下させる恐れがある。よって、その下限値は0.003μmとすることが好ましい。更に好ましくは、0.005〜0.015μmである。
【0039】
水銀圧入法による直径が0.003〜0.02μmの細孔の体積が、負極重量(負極集電体の重量を除く)1g当り、0.0001〜0.02mLである。負極集電体の重量を除くとした理由は、前述した通りである。細孔体積を0.0001mL/g未満にすると、非水電解質の含浸性を向上する効果を十分に得られない。また、細孔体積が0.02mL/gを超えると、負極活物質自身の強度が低下し、電極圧延時に粒子が崩壊しやすく、その結果、サイクル性能、および高率負荷特性が低下する。細孔体積のより好ましい範囲は、0.0005〜0.01mL/gである。
【0040】
負極の水銀圧入法による直径が0.003〜0.02μmの細孔の表面積は、負極重量(負極集電体の重量を除く)1g当り、0.1〜10m2であることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。負極集電体の重量を除くとした理由は、前述した通りである。また、細孔表面積を0.1m2/g未満にすると、電解質の含浸性を向上する効果が十分に得られない。細孔表面積が10m2/gを超えると、電極密度を上げ難く、エネルギー密度が低下する恐れがある。細孔表面積のより好ましい範囲は、0.2〜2m2/gである。
【0041】
負極の水銀圧入法による細孔体積は、負極重量(負極集電体の重量を除く)1g当り0.1〜1mLであることが望ましい。負極集電体の重量を除くとした理由は、前述した通りである。負極の細孔体積を0.1mL/g以上とすることにより、負極の非水電解質保持量を十分なものとすることができる。細孔体積が0.1mL/gよりも小さくなると、負極内の非水電解質が枯渇し、サイクル特性を低下させる恐れがある。また、負極の細孔体積を1mL/g以下とするのは、細孔体積が大き過ぎると、非水電解質の分布が負極側に偏り、正極での電解質の枯渇を招く恐れがあるためである。よって、その上限値は1.0mL/gにすることが好ましい。更に好ましい範囲は0.2〜0.5mL/gである。
【0042】
負極の水銀圧入法による細孔表面積は、負極重量(負極集電体の重量を除く)1g当り、5〜50m2であることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。負極集電体の重量を除くとした理由は、前述した通りである。細孔表面積を5m2/g未満にすると、負極と非水電解質との親和性が低くなるため、前述した細孔径分布による含浸性向上の効果を十分に得られない恐れがある。一方、比表面積が50m2/gを超えるものは、非水電解質の分布が負極に偏り、正極での非水電解質不足を招くため、充放電サイクル特性の改善を図れない。細孔表面積のより好ましい範囲は、7〜30m2/gである。
【0043】
負極の気孔率(集電体を除く)は、20〜50%の範囲にすることが望ましい。これにより、負極と非水電解質との親和性に優れ、かつ高密度な負極を得ることができる。気孔度の更に好ましい範囲は、25〜40%である。
【0044】
負極の密度は、2g/cc以上にすることが望ましい。負極密度を2g/cc未満にすると、前述した細孔径分布を有する負極を得られない恐れがあるからである。負極密度のより好ましい範囲は、2〜2.5g/ccである。
【0045】
負極集電体は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔であることが好ましい。負極集電体は、平均結晶粒径が50μm以下であることが好ましい。これにより、集電体の強度を飛躍的に増大させることができるため、負極を高いプレス圧で高密度化することが可能となり、電池容量を増大させることができる。また、高温環境下(40℃以上)における過放電サイクルでの負極集電体の溶解・腐食劣化を防ぐことができるため、負極インピーダンスの上昇を抑制することができる。さらに、出力特性、急速充電、充放電サイクル特性も向上させることができる。平均結晶粒径のより好ましい範囲は30μm以下であり、更に好ましい範囲は5μm以下である。
【0046】
平均結晶粒径は次のようにして求められる。集電体表面の組織を光学顕微鏡で組織観察し、1mm×1mm内に存在する結晶粒の数nを求める。このnを用いてS=1x106/n(μm2)から平均結晶粒子面積Sを求める。得られたSの値から下記(1)式により平均結晶粒子径d(μm)を算出する。
【0047】
d=2(S/π)1/2 (1)
前記平均結晶粒子径の範囲が50μm以下の範囲にあるアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔は、材料組成、不純物、加工条件、熱処理履歴ならび焼なましの加熱条件など多くの因子に複雑に影響され、前記結晶粒子径(直径)は、製造工程の中で、前記諸因子を組み合わせて調整される。
【0048】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。
【0049】
負極活物質含有層には導電剤を含有させることができる。導電剤としては、例えば、炭素材料、アルミニウム粉末などの金属粉末、TiOなどの導電性セラミックスを用いることができる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛が挙げられる。より好ましくは、熱処理温度が800〜2000℃の平均粒子径10μm以下のコークス、黒鉛、TiOの粉末、平均粒子径1μm以下の炭素繊維が好ましい。前記炭素材料のN2吸着によるBET比表面積は10m2/g以上が好ましい。
【0050】
負極活物質含有層には結着剤を含有させることができる。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、コアシェルバインダーなどが挙げられる。
【0051】
負極活物質、負極導電剤及び結着剤の配合比については、負極活物質は70重量%以上96重量%以下、負極導電剤は2重量%以上28重量%以下、結着剤は2重量%以上28重量%以下の範囲にすることが好ましい。負極導電剤量が2重量%未満であると、負極活物質含有層の集電性能が低下し、非水電解質二次電池の大電流特性が低下する恐れがある。また、結着剤量が2重量%未満であると、負極活物質含有層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する可能性がある。一方、高容量化の観点から、負極導電剤及び結着剤は各々28重量%以下であることが好ましい。
【0052】
負極は、例えば、負極活物質、負極導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁し作製したスラリーを、負極集電体に塗布し、乾燥し、負極活物質含有層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。この際のスラリー作製は以下のように行う。まず、少量の溶媒に負極活物質、負極導電剤及び結着剤を投入し、固形比率(溶媒に対する負極活物質、負極導電剤及び結着剤の比率)が大きい状態で、プラネタリーミキサーなどで混練し、強い剪断力を掛けて固形分を均一に分散させる。この際、固形比率が十分に高くないと剪断力が小さくなり、凝集した負極活物質を十分に砕けなくなり、固形分が均一に分散されない。この工程は、負極活物質の粒子径が細かくなるほど重要であり、平均粒子径が1μm以下の粒子を扱う場合には、特に重要となる。固形比率が高い状態で十分に混練を行った後、溶媒を加えながら固形比率を徐々に低下させて、塗工が可能な粘度に調整する。塗工可能な粘度に調整したスラリーを更に、セラミックボールをメディアとしてビーズミルで十分に混合する。この工程により、活物質粒子のエッジが削り取られ、活物質粒子の表面が平滑化され、高密度充填が可能になり、細孔径分布を小孔径側にシフトさせることができ、本実施形態に記載の細孔径分布を有する負極が得られる。この際、セラミックボールはガラス、アルミナ、ムライト、窒化ケイ素など種々の材質を用いることができるが、耐摩耗性、耐衝撃性の観点から、ジルコニア製のボールが好ましい。ボールの直径は0.5〜5mmが好ましい。ボールの直径が0.5mm未満であると衝撃力が小さくなる。また、ボールの直径が5mmより大きいとメディア同士の接触面積が少なくなり、混練能力が低下する。ボールの直径のより好ましい範囲は1〜3mmである。
【0053】
得られたスラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥した後、ロールプレス機などで圧延し、負極を完成させる。この際、ロール温度を40〜180℃とすることが好ましい。ロール温度が低いと、プレス時に負極活物質よりも比重の軽い導電剤が電極表面に浮き上がってしまい、適度な細孔を有する高密度な電極が得られず、電解液の含浸性が低下する。また、電池性能も低下してしまう。ロール温度が180℃よりも高いと、バインダーの結晶化が進行し、電極の柔軟性が低下し、負極活物質含有層が折れたり、剥がれ易くなる。その結果、生産性が低下、出力特性や充放電サイクル特性などの電池性能が低下する。ロール温度のより好ましい範囲は、90〜150℃である。
【0054】
2)非水電解質
非水電解質は、電解質を有機溶媒に溶解することにより調整される液状非水電解質、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質等が挙げられる。
【0055】
非水電解質には、揮発性がなく、不燃性のイオン性液体からなる常温溶融塩を含有させたものを使用することが可能である。
【0056】
液状非水電解質は、電解質を0.5mol/L以上2.5mol/L以下の濃度で有機溶媒に溶解することにより、調製される。
【0057】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO22]などのリチウム塩が挙げられる。使用する電解質の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0058】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等の鎖状カーボネートや、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)等の環状エーテルや、ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)等の鎖状エーテルや、γ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等の単独若しくは混合溶媒を挙げることができる。
【0059】
高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0060】
好ましい有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)およびγ−ブチロラクトン(GBL)からなる群のうち、2種以上を混合した混合溶媒が挙げられる。さらに好ましい有機溶媒として、γ−ブチロラクトン(GBL)が挙げられる。この理由は以下の通りである。
【0061】
まず第一に、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートは沸点や引火点が高く、熱安定性に優れるためである。
【0062】
第二に、リチウムチタン酸化物のようなチタン含有金属複合酸化物は、1.5V(vs. Li/Li+)近傍の電位域でリチウムイオンを吸蔵・放出する。しかしながら、この電位域では、非水電解質の還元分解が起こるものの、リチウムチタン酸化物表面に非水電解質の還元生成物である皮膜を十分に形成できる程は起こらない。このため、リチウム吸蔵状態、すなわち充電状態で保存すると、リチウムチタン酸化物に吸蔵されていたリチウムイオンが徐々に電解液中に拡散し、所謂自己放電が生じてしまう。自己放電は、電池の保管環境が高温になると顕著に表れる。
【0063】
負極の細孔径ならびに細孔容積を本実施形態に記載のように制御すると、負極と非水電解質との接触面積が増大するため、先述した自己放電がやや大きくなってしまう傾向がある。
【0064】
ここで、γ−ブチロラクトンは、鎖状カーボネートや環状カーボネートに比べて、還元されやすい。具体的には、γ−ブチロラクトン>>>エチレンカーボネート>プロピレンカーボネート>>ジメチルカーボネート>メチルエチルカーボネート>ジエチルカーボネートの順に還元されやすい。なお、>の数が多いほど、溶媒間の反応性に差があることを示している。
【0065】
そのため、γ−ブチロラクトンを電解液中に含有させると、リチウムチタン酸化物の作動電位域においても、リチウムチタン酸化物の表面に良好な皮膜が形成できる。この結果、自己放電を抑制し、非水電解質電池の高温貯蔵特性を向上できる。
【0066】
上述の混合溶媒についても、類似のことが言える。
【0067】
また、還元され易い常温溶融塩においても、同様の効果が得られる。さらに、常温溶融塩の場合、酸化もされ易いため、正極に作用して、自己放電を抑制やサイクル寿命を向上させる効果がある。
【0068】
より良質な保護皮膜を形成するためには、γ−ブチロラクトンの含有量を有機溶媒に対し40体積%以上95体積%以下とすることが好ましい。
【0069】
γ−ブチロラクトンを含む非水電解質は、上述した優れた効果を示すものの、粘度が高く、電極への含浸性が低下してしまう。しかしながら、本実施形態の負極を用いると、γ−ブチロラクトンを含む非水電解質であっても、電解液の含浸をスムーズに行うことが可能になり、生産性を向上させると共に、出力特性及び充放電サイクル特性を向上させることが可能となる。更に粘度が高い常温溶融塩を用いた場合にも同様の効果が現れる。よって、本実施形態の負極は、γ−ブチロラクトンあるいは常温溶融塩を含む20℃での粘度が5cp以上の非水電解質でより顕著な効果を示す。
【0070】
20℃での粘度の上限値は、30cpに設定することができる。
【0071】
次いで、常温溶融塩を含む非水電解質について説明する。
【0072】
常温溶融塩とは、常温において、少なくとも一部が液状を呈する塩を言い、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲を言う。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。中でも、−20℃以上60℃以下の範囲が適している。
【0073】
リチウムイオンを含有した常温溶融塩には、リチウムイオンと有機物カチオンとアニオンから構成されるイオン性融体を使用することが望ましい。また、このイオン性融体は、室温以下でも液状であることが好ましい。
【0074】
前記有機物カチオンとしては、以下の化1に示す骨格を有するアルキルイミダゾリウムイオン、四級アンモニウムイオンが挙げられる。
【化1】


【0075】
前記アルキルイミダゾリウムイオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオン、テトラアルキルイミダゾリウムイオンなどが好ましい。ジアルキルイミダゾリウムとしては1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン(MEI+)、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2−ジエチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン(DMPI+)、テトラアルキルイミダゾリウムイオンとして、1,2−ジエチル−3,4(5)−ジメチルイミダゾリウムイオンが好ましい。
【0076】
前記四級アンモニムイオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオンや環状アンモニウムイオンなどが好ましい。テトラアルキルアンモニウムイオンとしてはジメチルエチルメトキシアンモニウムイオン、ジメチルエチルメトキシメチルアンモニウムイオン、ジメチルエチルエトキシエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオンが好ましい。
【0077】
上記アルキルイミダゾリウムイオンまたは四級アンモニウムイオン(特にテトラアルキルアンモニウムイオン)を用いることにより、融点を100℃以下、より好ましくは20℃以下にすることができる。さらに負極との反応性を低くすることができる。
【0078】
前記リチウムイオンの濃度は、20mol%以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、1〜10mol%の範囲である。前記範囲にすることにより、20℃以下の低温においても液状の常温溶融塩を容易に形成できる。また常温以下でも粘度を低くすることができ、イオン伝導度を高くすることができる。
【0079】
前記アニオンとしては、BF4-、PF6-、AsF6-、ClO4-、CF3SO3-、CF3COO-、CH3COO-、CO32-、N(CF3SO22-、N(C25SO22-、(CF3SO23-などから選ばれる一種以上のアニオンと共存することが好ましい。複数のアニオンを共存することにより、融点が20℃以下の常温溶融塩を容易に形成できる。より好ましくは融点が0℃以下の常温溶融塩にすることができる。より好ましいアニオンとしては、BF4-、CF3SO3-、CF3COO-、CH3COO-、CO32-、N(CF3SO22-、N(C25SO22-、(CF3SO23-が挙げられる。これらのアニオンによって0℃以下の常温溶融塩の形成がより容易になる。
【0080】
3)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体の片面若しくは両面に担持され、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を含む正極活物質含有層とを有する。
【0081】
正極活物質としては、酸化物、硫化物、ポリマー等が挙げられる。
【0082】
例えば、酸化物としては、Liを吸蔵した二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、及び、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnyCo1-yO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4等)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。
【0083】
例えば、ポリマーとしては、ポリアニリンやポリピロール等の導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料等が挙げられる。その他に、イオウ(S)、フッ化カーボン等も使用できる。
【0084】
高い正極電圧が得られる正極活物質としては、リチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-yCoyO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-yO2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。なお、x、yは0〜1の範囲であることが好ましい。
【0085】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の組成はLiaNibCocMndO2(但し、モル比a,b,c及びdは0≦a≦1.1、0.1≦b≦0.5、0≦c≦0.9、0.1≦d≦0.5)であることが好ましい。
【0086】
中でも、常温溶融塩を含む非水電解質を用いる際には、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物を用いることが、サイクル寿命の観点から好ましい。これは、上記正極活物質と常温溶融塩との反応性が少なくなるためである。
【0087】
また、一次電池用の正極活物質には、例えば、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化鉄、フッ化カーボンなどが挙げられる。
【0088】
正極活物質の一次粒子径は、100nm以上1μm以下であると好ましい。100nm以上であると、工業生産上扱いやすい。1μm以下であると、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることができる。
【0089】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上であると、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下であると、工業生産上扱いやすく、良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0090】
集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための正極導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質物を挙げることができる。
【0091】
正極活物質と正極導電剤を結着させるための結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム等が挙げられる。
【0092】
正極活物質、正極導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、正極導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上17重量%以下の範囲にすることが好ましい。正極導電剤については、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、17重量%以下であることにより、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0093】
正極は、例えば、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁し作製したスラリーを、正極集電体に塗布し、乾燥し、正極活物質含有層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。その他、正極活物質、正極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、正極活物質含有層として用いても良い。
【0094】
前記正極集電体は、アルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましく、負極集電体と同様にその平均結晶粒径は50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、30μm以下である。更に好ましくは5μm以下である。前記平均結晶粒径が50μm以下であることにより、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の強度を飛躍的に増大させることができ、正極を高いプレス圧で高密度化することが可能になり、電池容量を増大させることができる。
【0095】
前記平均結晶粒径の範囲が50μm以下の範囲にあるアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔は、材料組織、不純物、加工条件、熱処理履歴、ならびに焼鈍条件など複数の因子に複雑に影響され、前記結晶粒径は製造工程の中で、前記諸因子を組合せて調整される。
【0096】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。
【0097】
4)セパレータ
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。
【0098】
5)外装部材
外装部材としては、肉厚0.2mm以下のラミネートフィルムや、肉厚0.5mm以下の金属製容器が挙げられる。金属製容器の肉厚は、0.2mm以下であるとより好ましい。
【0099】
形状としては、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等が挙げられる。なお、無論、携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池でも良い。
【0100】
ラミネートフィルムは、金属層と金属層を被覆する樹脂層とからなる多層フィルムである。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより成形する。
【0101】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等が挙げられる。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。これにより、高温環境下での長期信頼性、放熱性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0102】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属缶は、平均結晶粒径が50μm以下であることが好ましい。より好ましくは30μm以下である。更に好ましくは5μm以下である。前記平均結晶粒径を50μm以下とすることによって、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属缶の強度を飛躍的に増大させることができ、より缶の薄肉化が可能になる。その結果、軽量かつ高出力で長期信頼性に優れた車載に適切な電池を実現することができる。
【0103】
6)負極端子
負極端子は、リチウムイオン金属に対する電位が0.4V以上3V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料が好ましい。
【0104】
7)正極端子
正極端子は、リチウムイオン金属に対する電位が3V以上5V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料が好ましい。
【0105】
第一の実施形態に係る非水電解質電池は、前述した図1及び図2に示す構成のものに限らず、例えば、図3及び図4に示す構成にすることができる。図3は第一の実施形態に係る別の扁平型非水電解質二次電池を模式的に示す部分切欠斜視図で、図4は図3のB部の拡大断面図である。
【0106】
図3に示すように、ラミネートフィルム製の外装部材8内には、積層型電極群9が収納されている。積層型電極群9は、図4に示すように、正極3と負極4とをその間にセパレータ5を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極3は複数枚存在し、それぞれが正極集電体3aと、正極集電体3aの両面に担持された正極活物質含有層3bとを備える。負極4は複数枚存在し、それぞれが負極集電体4aと、負極集電体4aの両面に担持された負極活物質含有層4bとを備える。それぞれの負極4の負極集電体4aは、一辺が正極3から突出している。正極3から突出した負極集電体4aは、帯状の負極端子2に電気的に接続されている。帯状の負極端子2の先端は、外装部材8から外部に引き出されている。また、ここでは図示しないが、正極3の正極集電体3aは、負極集電体4aの突出辺と反対側に位置する辺が負極4から突出している。負極4から突出した正極集電体3aは、帯状の正極端子1に電気的に接続されている。帯状の正極端子1の先端は、負極端子2とは反対側に位置し、外装部材8の辺から外部に引き出されている。
【0107】
(第二の実施の形態)
第二の実施の形態に係る電池パックは、第一の実施の形態に係る電池単体を複数有する。各々の電池単体は電気的に直列もしくは並列に配置され、組電池を為している。
【0108】
第一の実施の形態に係る電池単体は組電池化に適しており、第二の実施の形態に係る電池パックは、サイクル特性に優れる。このことについて、説明する。
【0109】
非水電解質の含浸性が向上すると、負極活物質表面全体を非水電解質と接触させることが可能となり、負極活物質内のリチウムイオン濃度が均等化し易くなり(過電圧がかかり難くなる、すなわち、局所的な過充電・過放電が起こり難くなる)、負極活物質の利用率を均等にすることができる。このことによって、電池の容量個体差やインピーダンスの個体差を極めて小さくすることが可能となる。その結果、例えば、直列接続の組電池において、電池容量の個体差にともなう満充電時の電池電圧ばらつきを減少できる。このため、第二の実施の形態に係る電池パックは、組電池の制御性に優れ、サイクル特性を向上できる。
【0110】
電池単体には、図1または図3に示す扁平型電池を使用することができる。
【0111】
図5の電池パックにおける電池単体21は、図1に示す扁平型非水電解質電池から構成されている。複数の電池単体21は、正極端子1と負極端子2が突出している向きを一つに揃えて厚さ方向に積層されている。図6に示すように、電池単体21は、直列に接続されて組電池22をなしている。組電池22は、図5に示すように、粘着テープ23によって一体化されている。
【0112】
正極端子1および負極端子2が突出する側面に対しては、プリント配線基板24が配置されている。プリント配線基板24には、図6に示すように、サーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用の端子27が搭載されている。
【0113】
図5及び図6に示すように、組電池22の正極側配線28は、プリント配線基板24の保護回路26の正極側コネクタ29に電気的に接続されている。組電池22の負極側配線30は、プリント配線基板24の保護回路26の負極側コネクタ31に電気的に接続されている。
【0114】
サーミスタ25は、電池単体21の温度を検知するためのもので、検知信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路と外部機器への通電用端子との間のプラス側配線31a及びマイナス側配線31bを遮断できる。所定の条件とは、例えば、サーミスタの検出温度が所定温度以上になったとき、電池単体21の過充電、過放電、過電流等を検知したとき等である。この検知方法は、個々の電池単体21もしくは電池単体21全体について行われる。個々の電池単体21を検知する場合、電池電圧を検知してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検知してもよい。後者の場合、個々の電池単体21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図6の場合、電池単体21それぞれに電圧検知のための配線32を接続し、これら配線32を通して検知信号が保護回路26に送信される。
【0115】
組電池22について、正極端子1および負極端子2が突出する側面以外の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート33が配置される。正極端子1および負極端子2が突出する側面とプリント配線基板24との間には、ゴムもしくは樹脂からなるブロック状の保護ブロック34が配置される。
【0116】
この組電池22は、各保護シート33、保護ブロック34およびプリント配線基板24と共に収納容器35に収納される。すなわち、収納容器35の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート33が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池22は、保護シート33及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。収納容器35の上面には、蓋36が取り付けられる。
【0117】
なお、組電池22の固定には、粘着テープ23に代えて、熱収縮テープを用いても良い。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮チューブを周回させた後、該熱収縮チューブを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0118】
なお、図5,6に示した電池単体21は直列に接続されているが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても良い。無論、組み上がった電池パックを直列、並列に接続することもできる。
【0119】
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。
【0120】
第二の実施の形態の電池パックの用途としては、大電流特性でのサイクル特性が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である。
【0121】
なお、非水電解質としてプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)およびγ−ブチロラクトン(GBL)からなる群のうち、少なくとも2種以上を混合した混合溶媒、あるいはγ−ブチロラクトン(GBL)を含んだ場合、高温特性が望まれる用途が好ましい。具体的には、上述の車載用が挙げられる。
【0122】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0123】
(実施例1)
<正極の作製>
まず、正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)粉末90重量%、導電剤として、アセチレンブラック5重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%をN−メチルピロリドン(NMP)に加えて混合してスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより電極密度が3.3g/cm3の正極を作製した。
【0124】
<負極の作製>
平均粒子径が0.82μm、N2吸着によるBET比表面積が10.4m2/g、Li吸蔵電位が1.55V(vs. Li/Li+)であるスピネル型チタン酸リチウム(Li4Ti512)粉末を負極活物質として用意した。
【0125】
負極活物質の粒径測定は、レーザー回折式分布測定装置(島津SALD-300)を用い、まず、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定した。
【0126】
また、Li吸蔵電位は以下に説明する方法で測定した。
【0127】
負極を2cm×2cmの大きさに切り出し、作用極とした。作用極と2.2cm×2.2cmのリチウム金属箔からなる対極とをグラスフィルター(セパレータ)を介して対向させ、作用極と対極とに触れぬようにリチウム金属を参照極として挿入した。これら電極を3極式ガラスセルに入れ、作用極、対極、参照極の夫々をガラスセルの端子に接続し、電解液(電解液の組成はエチレンカーボネートとγ-ブチロラクトンを1:2の体積比で混合した溶媒に1.5M/Lの四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を溶解させたもの)を25mL注ぎ、セパレータと電極に充分に電解液が含浸された状態にし、ガラス容器を密閉した。作製したガラスセルを25℃の恒温槽内に配置し、0.1mA/cm2の電流密度で充電した際の作用極のリチウムイオン吸蔵電位を測定した。
【0128】
負極活物質を90重量%と、導電剤として1300℃で焼成したコークス(d002が0.3465nm、平均粒径が8.2μm、BET比表面積が11.2m2/g)を5重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5重量%とに、N−メチルピロリドン(NMP)を固形分比率が62%になるように添加した。これをプラネタリーミキサーで混練し、NMPを加えながら固形比率を徐々に低下させ、粘度が10.2cp(B型粘度計、50rpmでの値)のスラリーを調製した。このスラリーを更に、直径が1mmのジルコニア製ボールをメディアとしてビーズミルで混合した。
【0129】
得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99%、平均結晶粒径10μm)からなる集電体の両面に塗布し、乾燥した後、100℃に加温したロールでロールプレスすることにより下記表1に示す電極密度と気孔率を有する負極を得た。得られた負極の水銀圧入法による細孔径分布を以下に説明する方法で測定し、その結果を下記表4に示す。
【0130】
負極の細孔径分布測定は、水銀圧入法によって行った。測定装置は、島津オートポア9520形を用いた。試料は、負極を約25×25mm2サイズに切断し、これを折りたたんで測定セルに採り、初期圧20kPa(約3psia、細孔直径約60μm相当)の条件で測定した。データ整理に当り、細孔比表面積は、細孔の形状を円筒形として計算した。細孔径分布において最も高い頻度を与える細孔直径を負極のモード径とした。細孔直径が0.01〜0.2μmの範囲内において最も高い頻度を与える細孔直径を第1のピークのモード径とした。細孔直径が0.003〜0.02μmの範囲内において最も高い頻度を与える細孔直径を第2のピークのモード径とした。
【0131】
なお、水銀圧入法の解析原理はWashburnの式(1)に基づく。
【0132】
D=−4γcosθ/P (1)式
ここで、Pは加える圧力、Dは細孔直径、γは水銀の表面張力(480dyne・cm-1)、θは水銀と細孔壁面の接触角で140°である。γ、θは定数であるからWashburnの式より、加えた圧力Pと細孔径Dの関係が求められ、そのときの水銀侵入容積を測定することにより、細孔径とその容積分布を導くことができる。測定法・原理等の詳細は、神保元ニら:「微粒子ハンドブック」朝倉書店、(1991)、早川宗八郎編:「粉体物性測定法」朝倉書店(1978)などを参照されたい。
【0133】
負極集電体重量を除いた負極重量1g当たりの細孔体積(細孔径分布の全範囲、0.01〜0.2μm、0.003〜0.02μm)、負極集電体重量を除いた負極重量1g当たりの負極の細孔表面積(細孔径分布の全範囲、0.01〜0.2μm、0.003〜0.02μm)、第1のピーク及び第2のピークのモード径、負極のモード径を下記表4に示す。
【0134】
<電極群の作製>
正極、厚さ25μmのポリエチレン製の多孔質フィルムからなるセパレータ、負極、セパレータの順番に積層した後、渦巻き状に捲回した。これを90℃で加熱プレスすることにより、幅が30mmで、厚さが3.0mmの偏平状電極群を作製した。得られた電極群を、厚さが40μmのアルミニウム箔とアルミニウム箔の両面に形成されたポリプロピレン層とから構成された厚さが0.1mmのラミネートフィルムからなるパックに収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。
【0135】
<液状非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチロラクトン(GBL)が体積比率1:2で混合された混合溶媒に、電解質としてのLiBF4を1.5mol/L溶解することにより液状非水電解質を調製した。上記非水電解質の20℃の粘度は7.1cp(B型粘度計にて測定)であった。
【0136】
電極群を収納したラミネートフィルムパック内に液状非水電解質を注入した後、パックをヒートシールにより完全密閉し、図1に示す構造を有し、幅が35mmで、厚さが3.2mm、かつ高さが65mmの非水電解質二次電池を作製した。
【0137】
(実施例2〜13及び比較例1)
スラリー攪拌時に使用するボール直径、および攪拌時間を下記表1に示す値に変更すること以外は実施例1と同様にして負極を作製した。負極密度と負極気孔率を下記表1に、細孔径分布を下記表4に示す。この負極を用いる以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0138】
(実施例14)
非水電解質として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン(MEI+)とLi+とBF4-からなる常温溶融塩(MEI/Li/BF4)をモル比40:10:50となるように調整した以外は、実施例13と同様にして非水電解質二次電池を作製した。上記非水電解質の20℃の粘度は20cpであった。
【0139】
(実施例15)
非水電解質中の1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン(MEI+)の代わりにジメチルエチルメトキシメチルアンモニウムイオンを用いる以外は、実施例14と同様にして非水電解質二次電池を作製した。上記非水電解質の20℃の粘度は20cpであった。
【0140】
(実施例16)
正極活物質にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)を用いる以外は、実施例13と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0141】
(実施例17)
正極活物質にリチウムリン酸鉄(LiFePO4)を用いる以外は、実施例13と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0142】
(実施例18)
エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)が体積比率1:2で混合された混合溶媒に、電解質としてLiPF6を1mol/L溶解することにより液状非水電解質を調製した。この非水電解質の20℃の粘度は1.9cpであった。この非水電解質を用いる以外は、実施例13と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0143】
(実施例19〜20)
平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が1.55V(vs. Li/Li+)で、Li4Ti512で表されるスピネル型チタン酸リチウム粉末を用いること以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極密度と負極気孔率を下記表2に、細孔径分布を下記表5に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0144】
(比較例2)
平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が1.55V(vs. Li/Li+)で、Li4Ti512で表されるスピネル型チタン酸リチウム粉末を用いること以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極密度と負極気孔率を下記表2に、細孔径分布を下記表5に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0145】
(実施例21)
平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が1.8V(vs. Li/Li+)のFeS粉末を用いること以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極密度と負極気孔率を下記表2に、細孔径分布を下記表5に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0146】
(実施例22)
平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が1〜2V(vs. Li/Li+)で、Li2Ti37で表されるチタン酸リチウム粉末を用いること以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極密度と負極気孔率を下記表2に、細孔径分布を下記表5に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0147】
(実施例23〜24)
平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が1〜2V(vs. Li/Li+)で、TiO2−P25−SnO2−NiO−CuOで表されるTiO2の微結晶相と非結晶相が混在したチタン含有金属複合酸化物を用いること以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極密度と負極気孔率を下記表2に、細孔径分布を下記表5に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0148】
(比較例3)
負極活物質として、平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が1〜2V(vs. Li/Li+)で、TiO2−P25−SnO2−NiO−CuOで表されるTiO2の微結晶相と非結晶相が混在したチタン含有金属複合酸化物を用意した。
【0149】
この負極活物質を90重量%と、実施例1と同様な導電剤を5重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5重量%とに、N−メチルピロリドン(NMP)の全量を添加した。これをプラネタリーミキサーで混練することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを実施例1で説明したのと同様な集電体の両面に塗布し、乾燥した後、ロールプレスすることにより負極を得た。得られた負極密度と負極気孔率を下記表2に、細孔径分布を下記表5に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0150】
(比較例4)
負極活物質として、平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が0.15V(vs. Li/Li+)の黒鉛を用意した。
【0151】
この負極活物質を90重量%と、実施例1と同様な導電剤を5重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を5重量%とに、N−メチルピロリドン(NMP)の全量を添加した。これをプラネタリーミキサーで混練することによりスラリーを調製した。得られたスラリーを集電体(厚さ12μmの銅箔)の両面に塗布し、乾燥した後、ロールプレスすることにより負極を得た。得られた負極密度と負極気孔率を下記表2に、細孔径分布を下記表5に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0152】
(実施例25〜31)
スラリー攪拌時に使用するボール直径、および攪拌時間を下記表3に示す値に変更すること以外は実施例1と同様にして負極を作製した。負極密度と負極気孔率を下記表3に、細孔径分布を下記表6に示す。この負極を用いる以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0153】
(比較例5)
負極活物質として、平均粒子径及びN2吸着によるBET比表面積が下記表2に示す値で、Li吸蔵電位が0.15V(vs. Li/Li+)の黒鉛を用意した。この黒鉛を負極活物質として用い、集電体として厚さ12μmの銅箔を使用すること以外は、実施例1と同様な構成の負極を作製した。得られた負極密度と負極気孔率を下記表3に、細孔径分布を下記表6に示す。この負極を使用すること以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0154】
比較例4,5以外の実施例及び比較例の電池に対して、25℃環境下において、2.8Vの定電圧充電で1時間充電した後、0.2Aの低率放電を行い、0.2Aの放電容量を測定した。また、同条件で充電した後、2Aの高率放電を行い、2Aの放電容量を測定した。これらの結果から、0.2A放電容量に対する2A放電容量の比率を求めた。また、同条件で充電した後、600mAで1.5Vまで定電流放電する充放電を繰り返すサイクル試験を行った。充放電サイクル試験の寿命は初期容量の80%まで容量低下したときのサイクル数を寿命とした。測定結果を表4〜6に示す。
【0155】
比較例4,5の電池に対して、25℃環境下において、4.2Vの定電圧充電で1時間充電した後、0.2Aの低率放電を行い、0.2Aの放電容量を測定した。また、同条件で充電した後、2Aの高率放電を行い、2Aの放電容量を測定した。これらの結果から、0.2A放電容量に対する2A放電容量の比率を求めた。また、同条件で充電した後、600mAで1.5Vまで定電流放電する充放電を繰り返すサイクル試験を行った。充放電サイクル試験の寿命は初期容量の80%まで容量低下したときのサイクル数を寿命とした。測定結果を表5,6に示す。
【表1】


【0156】
【表2】


【0157】
【表3】


【0158】
【表4】


【0159】
【表5】


【0160】
【表6】


【0161】
表1〜表6の結果から明らかなように、実施例1〜31の非水電解質電池は、比較例1〜5に比較してサイクル特性が優れている。
【0162】
直径が0.01〜0.2μmの細孔の体積については、実施例1,28及び29の結果から、0.05〜0.5mL/gの範囲で高率放電特性及びサイクル特性が共に優れていることが理解できる。
【0163】
直径が0.01〜0.2μmの細孔の表面積については、実施例1,25及び30の結果から、5〜50m2/gの範囲で高率放電特性及びサイクル特性が共に優れていることが理解できる。
【0164】
第1のピークのモード径については、実施例1,2,20,23及び28を比較することにより、0.01〜0.2μmの範囲で高率放電特性及びサイクル特性が共に優れており、特に実施例2,20のように0.02〜0.1μmの範囲にすることで優れたサイクル特性を得られることが理解できる。
【0165】
直径が0.003〜0.02μmの細孔の体積については、実施例1及び25の結果から、0.0001〜0.02mL/gの範囲で高率放電特性及びサイクル特性が共に優れていることが理解できる。
【0166】
直径が0.003〜0.02μmの細孔の表面積については、実施例1及び25の結果から、0.1〜10m2/gの範囲で高率放電特性及びサイクル特性が共に優れていることが理解できる。
【0167】
第2のピークのモード径については、実施例1,26及び27を比較することにより、0.003〜0.02μmの範囲で高率放電特性及びサイクル特性が共に優れていることが理解できる。
【0168】
負極活物質の種類については、実施例1,21〜23を比較することにより、チタン含有複合酸化物を使用した実施例1,22,23のサイクル特性が、鉄系硫化物を使用した実施例21に比して優れていることがわかった。特に、リチウムチタン酸化物を使用した実施例1及び22の電池のサイクル特性が優れていた。
【0169】
正極活物質の種類については、実施例13,16,17の結果から、いずれの実施例においても高率放電特性及びサイクル特性が共に優れていることがわかった。特に優れた高率放電特性を得られるのは、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を使用した実施例13とリチウムコバルト複合酸化物を使用した実施例16であった。一方、サイクル特性の点で有利なのは、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物を使用した実施例17であった。
【0170】
非水電解質の種類については、実施例13,14,15及び18を比較することにより、有機溶媒を含む実施例13,18のサイクル特性が、イオン性融体を含む実施例14,15に比して優れていた。中でも、GBLを含む実施例13の電池が、高率放電特性とサイクル特性が共に実施例18の電池よりも優れていた。
【0171】
また、比較例4,5の電池は、Li吸蔵電位が0.4V(vs. Li/Li+)未満の負極活物質を使用している。比較例4の負極は、第2のピークを持たない細孔径分布を有しており、実施例1〜31に比してサイクル寿命が著しく低かった。比較例5の負極は、実施例1と同様な細孔径分布を有しているものの、高率放電特性及びサイクル寿命において劣っていた。
【0172】
図7及び図8に、実施例3の負極についての水銀圧入法による細孔径分布を示す。図8は、細孔径分布の全体像を示している。図7から、第1のピークのモード径が0.095μmに存在することが理解できる(実施例3に対応)。また、図8は、図7の細孔径分布のうち0.01μm付近の分布を拡大したものである。図8から、第2のピークのモード径が0.0085μmに存在することがわかる。なお、図7及び図8のグラフの縦軸は、集電体を含めた負極重量1g当たりの細孔体積(mL)を示している。
【0173】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】第一の実施の形態に係わる扁平型非水電解質二次電池の断面模式図。
【図2】図1のAで示した円で囲われた部分を詳細に表す部分断面模式図。
【図3】第一の実施の形態に係わる別の扁平型非水電解質二次電池を模式的に示した部分切欠斜視図。
【図4】図3のB部の拡大断面図。
【図5】第二の実施形態に係る電池パックの分解斜視図。
【図6】図5の電池パックの電気回路を示すブロック図。
【図7】実施例3の負極についての水銀圧入法による細孔径分布を示す特性図。
【図8】図7の細孔径分布のうち0.01μm付近の分布を拡大した特性図。
【符号の説明】
【0175】
1…正極端子、2…負極端子、3…正極、3a…正極集電体、3b…正極活物質含有層、4…負極、4a…負極集電体、4b…負極活物質含有層、5…セパレータ、6…捲回電極群、7,8…外装部材、9…積層電極群、21…電池単体、22…組電池、23…粘着テープ、24…プリント配線基板、28…正極側配線、29…正極側コネクタ、30…負極側配線、31…負極側コネクタ、33…保護ブロック、35…収納容器、36…蓋。




 

 


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