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発明の名称 高周波半導体回路及び無線通信機器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−13031(P2007−13031A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−194788(P2005−194788)
出願日 平成17年7月4日(2005.7.4)
代理人 【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
発明者 吉岡 啓 / 瀬下 敏樹 / 野田 隆夫
要約 課題
高調波歪を低減でき、かつ静電放電保護回路を有する高周波半導体回路およびこれを備えた無線機器を提供する。

解決手段
キャパシタンスを有する回路要素と、前記キャパシタンスと直列共振を生じるインダクタと、高周波伝送線路と、を備え、前記回路要素と前記インダクタとの直列共振回路は、前記高周波伝送線路と接地電位との間に挿入されており、前記直列共振回路の共振周波数は、前記高周波伝送線路を搬送させる搬送波の高調波のいずれかと一致していることを特徴とした高周波半導体回路が提供される。
特許請求の範囲
【請求項1】
キャパシタンスを有する回路要素と、
前記キャパシタンスと直列共振を生じるインダクタと、
高周波伝送線路と、
を備え、
前記回路要素と前記インダクタとの直列共振回路は、前記高周波伝送線路と接地電位との間に挿入されており、
前記直列共振回路の共振周波数は、前記高周波伝送線路を搬送させる搬送波の高調波のいずれかと一致していることを特徴とした高周波半導体回路。
【請求項2】
前記直列共振回路を複数個備え、それぞれの前記直列共振回路は互いに並列に接続され、それぞれの前記直列共振回路の共振周波数が前記搬送波の高調波のいずれかと一致していることを特徴とした請求項1記載の高周波半導体回路。
【請求項3】
前記搬送波の周波数をf、j番目の前記直列共振回路の前記インダクタのインダクタンスをLs(j)、前記j番目の前記直列共振回路の前記回路要素の前記キャパシタンスをCs(j)、nを自然数、前記直列共振回路の数をN、とした時に、次式

1/(2π[Ls(j)×Cs(j)]1/2)=nf
(但し、1≦j≦N、1≦N)

が成立することを特徴とする請求項1または2に記載の高周波半導体回路。
【請求項4】
前記回路要素は、半導体ダイオードを含む静電放電保護素子であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかひとつに記載の高周波半導体回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の高周波半導体回路と、
前記高周波半導体回路に接続された送信器及び受信器のうちの少なくともひとつと、
を備えたことを特徴とする無線通信機器。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波半導体回路および無線通信機器に関し、特に、静電放電保護回路を内蔵した高周波半導体回路および無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線LANなど、無線通信システム市場の拡大は目覚ましく、これを実現するための技術の進展も著しい。無線通信機器の主要構成要素は、アンテナ、送受信切り替えスイッチ回路および送受信回路である。無線通信機器の使用環境条件は厳しいので、静電気によるサージ電圧に対して、保護手段が必要である。
【0003】
よく用いられる静電放電(ESD:Electro Static Discharge)保護手段としては、アンテナと送受信切り替え回路との間に、主として保護ダイオードからなる静電放電保護回路をシャントに挿入する方法がある。これにより、降伏電圧より大きなサージ電圧が印加されると、サージ電流が保護ダイオードに分流され、送信回路および受信回路などが保護される。この場合、静電放電保護回路は、高周波伝送線路中にシャントに挿入されるために、伝送線路の特性インピーダンスとの整合性を考慮する必要がある。例えば、静電放電保護回路を分散して、高周波回路に配置させる技術の開示がある(特許文献1)。ただし、この回路設計は、通過周波数帯域内、すなわち搬送周波数帯域内においてなされていた。
【0004】
一方、無線通信機器は、情報量の拡大に対応するために、隣接チャネルへの信号漏洩及び高調波歪を低減することにより、通信品質を更に改善する必要が生じている。この対策として、歪補償回路の挿入、フィルタの挿入、能動素子の非線形成分を低減、などの方法があるが、機器の小型化要求とは相容れないことが多かった。特に、携帯電話などの携帯機器においては、回路素子数の増加、回路素子の大型化となる方法の採用は困難であった。この結果、高調波歪が充分に抑えられずに、さらなるチャネル数の増大、受信感度の改善などにとっての障害となっていた。
【特許文献1】特表2000−510653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高調波歪を低減でき、かつ静電放電保護回路を有する高周波半導体回路およびこれを備えた無線通信機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
キャパシタンスを有する回路要素と、
前記キャパシタンスと直列共振を生じるインダクタと、
高周波伝送線路と、
を備え、
前記回路要素と前記インダクタとの直列共振回路は、前記高周波伝送線路と接地電位との間に挿入されており、
前記直列共振回路の共振周波数は、前記高周波伝送線路を搬送させる搬送波の高調波のいずれかと一致していることを特徴とした高周波半導体回路が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高調波歪が低減され、かつ静電放電保護回路を有する高周波半導体回路およびこれを備えた無線通信機器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態につき説明する。
図1は、本発明の具体例にかかる高周波半導体回路130の等価回路図である。
本具体例にかかる高周波半導体回路130は、ショットキーダイオードペア102、104、106と、インダクタ108、110、112と、を備える。ショットキーダイオードペア102、104、106は、キャパシタンスを有する回路要素であり、外部から印加された静電気によるサージ電圧から無線通信機器を保護する静電放電保護素子としての役割を有する。また、インダクタ108、110、112は、ショットキーダイオードペアの等価回路におけるキャパシタンスと直列共振回路を形成し、第m高調波(mは2以上の整数)を反射する役割を有する。
【0009】
ショットキーダイオードペア102、104、106とインダクタ108、110、112との直列共振回路は、1〜N個の範囲で、特性インピーダンスZを有する高周波伝送線路101に対しシャントに挿入されている。ショットキーダイオードとしては、1GHz以上の高い周波数領域において電子移動度の大きいGaAsなどの材料からなるものを用いることができる。
【0010】
高周波伝送線路101としては、同軸線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、コプレーナウェーブガイドなどの分布定数線路を用いることができる。また、線路長が短い場合は、集中定数回路として取扱うことができる。すなわち、図1において、高周波伝送線路101の長さLが波長に対して短い場合には、集中定数素子として取り扱うことができる。
【0011】
なお、本具体例においては、静電放電保護素子として、ショットキーダイオードペアを用いたが、降伏電圧以上でサージ電流を分流させることができれば、ショットキーダイオードペアに限定されることはない。また、多段でも、単体でもよい。ショットキーダイオードペアを用いると、搬送波振幅の正負両側に対して一定の降伏電圧を維持できるために、搬送波の漏れを低減できる。この場合、カソードコモンでもアノードコモンであっても同様の効果が得られる。
【0012】
例えば、以下に具体例を挙げて説明するように、高周波半導体回路130に用いられる電子素子やウェーハの一部を流用して静電放電保護素子としてのダイオードをモノリシックに形成することができる。
【0013】
高周波半導体回路130にGaAsなどからなる高移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)が用いられる場合、そのHEMTの形成プロセスにおいて、ゲートメタルを利用したショットキーダイオードを静電放電保護素子としてモノリシックに形成することができる。
また、高周波半導体回路130に、pn接合を有するエピタキシャルウェーハを用いる場合には、そのpn接合を利用したダイオードをやはり静電放電保護素子としてモノリシックに形成することができ、便利である。例えば、GaAlAs系やGaInP系のHBT(Hetero Bipolar Transsitor)の例えばベース−エミッタ間を接続したダイオードを静電放電保護素子としてモノリシックに形成することもできる。GaAlAs系やGaInP系のHBTで構成されるパワーアンプ(PA)においては、このようなダイオードを共通プロセスにより実現できるので、好ましい。
【0014】
また、高周波半導体回路130に、pn接合を有するエピタキシャルウェーハを用いる場合には、そのpn接合を利用したダイオードをやはり静電放電保護素子としてモノリシックに形成することができ便利である。つまり、高周波半導体回路130に用いられる電子素子やウェーハを流用して静電放電保護素子としてのダイオードをモノリシックに形成することができる。
【0015】
ショットキーダイオードは、アルミニウムなどの金属を被着する簡単な工程でダイオード特性が得られる点で、有利である。また、pn接合ダイオードは、より安定した整流特性とブレークダウンを得られる点で有利である。
【0016】
また、そのような静電放電保護素子の材料としては、GaAsに限定されず、Si,InP、GaNなどの各種の半導体材料が使用できる。さらに、SiGe系のHBT(Hetero Bipolar Transsitor)の例えばベース−エミッタ間を接続したダイオード構造であってもよい。例えば、シリコン(Si)を用いて静電放電素子を形成する場合、高周波半導体回路130の全体をモノリシックに形成できないが、イオン注入などを利用して最適な降伏特性を有するダイオードを簡単に形成できる点で有利である。この場合、ツェナーダイオードあるいはアバランシェダイオードのような降伏特性を有するダイオードを形成すれば、静電放電保護素子として最適である。
【0017】
図2は、本具体例にかかる高周波半導体回路130の応用例を表わす等価回路図である。 ここで、アンテナ100は送受信共用である。また、送信器(Tx)118または受信機(Rx)120と、高周波半導体回路130との間には送受信切り替えスイッチ回路134が設けられている。
【0018】
まず、送受信切り替えスイッチ回路134について説明する。
入力側高周波伝送線路101は、GaAs FET114と、GaAs FET116とに分岐される。送信時には、GaAs FET114をオンとし、GaAs FET116をオフとする。送信器118の終段部は送信用高出力増幅器(PA)であり、信号波により変調された搬送波(P1)がアンテナ100から放射される。一方、受信時には、GaAs FET114をオフとし、GaAs FET116をオンとする。アンテナ100からの受信搬送波(P2)が、受信回路(Rx)120の初段部に設けられた受信用低雑音増幅器(LNA)に入射する。
【0019】
GaAs FETのゲートには、3ボルトのオン電圧、または0ボルトのオフ電圧がゲート制御電圧VG1,VG2として印加される。なお、FETとしては、GaAsでなく、Siでもよいが、半絶縁性基板上に形成が容易で高周波特性においてすぐれるGaAs FETが、より好ましい。
【0020】
GaAs材料を用いて、ゲートをショットキーバリアとしたFETにおいては、ゲート制御電圧をDC3ボルトとすると、ゲート−ソース間およびゲート−ドレイン間のDC順方向電位は、約0.5ボルトであるので、ソース及びドレインの電位は共に約2.5ボルト(DC)となる。もし、ゲート閾値電圧がマイナス1ボルトであると、FETはオンとなり低抵抗を示すので、搬送波は低損失でFETを通過できる。一方、ゲート制御電圧を0ボルトとすると、(ゲート−ソース間電圧(Vgs)−閾値電圧(Vth))はマイナスとなるので、FETはオフとなり高抵抗を示すので、搬送波の通過は困難となる。以上説明したメカニズムにより、端子Aを、端子Bまたは端子Cのいずれかに切り替えることができる。
【0021】
ここで再び図1に戻って、高周波半導体回路130の作用について説明する。
まず、ショットキーダイオードペア102、104、106は、それぞれ同一特性のショットキーダイオードをカソードコモンとしたものであり、外部から降伏電圧より大きなサージ電圧が印加されると、サージ電流Q1,Q2,Qjを接地に分流させる。この結果、図2における送信器118及び受信回路120内に、サージ電流が流れることを阻止できるので、送信回路118および受信回路120が保護される。
【0022】
次に、高調波抑制の作用について詳細に説明する。
図1及び図2において、符号102は第1番目のショットキーダイオードペア、符号104は第2番目のショットキーダイオードペア、符号106は第j番目のショットキーダイオードペアをそれぞれ表すものとする。また、符号108は、第1番目のボンディングワイヤによる第1番目のインダクタ、符号110は、第2番目のボンディングワイヤによる第2番目のインダクタ、符号112は、第j番目のボンディングワイヤによる第j番目のインダクタをそれぞれ表すものとする。但し、j≧1とする。
【0023】
第jインダクタのインダクタンスをLs(j),第j番目のショットキーダイオードぺアの等価回路における接合容量をCs(j)と表わすことにする。第j番目の直列共振回路におけるインダクタンスLs(j)と接合容量Cs(j)の共振周波数は、次式により表される。

1/(2π[Ls(j)×Cs(j)]1/2

端子Fからの入射波P3の周波数がこの共振周波数であるとき、第j番目の直列接続回路を見込んだインピーダンスZはゼロとなる。この結果、反射係数の絶対値は1となるので、入射波は全反射し(Pj)、高調波が低減された搬送波P4が、端子Hより取り出される。このようにして、シャントに挿入する直列共振回路の数だけの共振周波数が設定できる。ここで、1≦j≦Nである(但し、N≧1)。
【0024】
なお、静電放電は、無線LANや携帯電話のような無線通信システムに用いられる搬送波の周期と比較して、遅い現象である。従って、静電放電保護素子が分散していても、集中定数的に作用する。この結果、静電放電保護効果が損なわれることはない。
【0025】
まず、N=1のとき、すなわち、直列共振回路数が1個の場合について説明する。
この場合には、Ls(1)とCs(1)の共振周波数を、搬送波周波数fの2以上の整数倍とすることができる。すなわち、2fとすると第2高調波に対してZ=0とでき、3fとすると第3高調波に対してZ=0とできる。もし、端子Fへの入射波P3が、周波数fなる基本波のほかに、第m高調波を含んでいる場合には、共振周波数を第m高調波と一致させる。この場合、直列共振回路を見込んだインピーダンスZ=0となるので、第m高調波のみ反射されて、端子Hの伝送波P4は殆ど基本波成分のみとできる。
【0026】
次に、N=2のとき、すなわち、直列共振回路数が2個の場合について説明する。
端子Fへの入射波P3が、周波数fなる基本波のほかに、周波数2fの第2高調波及び周波数3fの第3高調波を含んでいるとする。もし第1の直列接続回路がLs(1)とCs(1)とにより、第2高調波に等しい共振を生じさせ、第2の直列接続回路がLs(2)とCs(2)とにより、第3高調波に等しい共振を生じさせることができれば、端子Hの伝送波P4は、殆ど基本波成分fのみとすることができる。高調波は、第2及び第3とは限らないので、影響を低減したい次数mの高調波に合わせて、共振周波数を設定すればよい。
【0027】
さらに、図1に例示されるように、直列共振回路はN個まで挿入できるが、影響を排除したい高調波の数にあわせて、決めることができる。以上のような高周波半導体回路130における、Ls(j)およびCs(j)の数値は、通過周波数帯域内特性仕様により決定されるものではない。従って、従来の静電放電保護回路設計においては、殆ど考慮されなかった。本発明者は、高調波歪低減回路の検討の結果、静電放電保護回路が高調波歪低減に有効活用できることを見出した。
【0028】
次に、本具体例にかかる高周波半導体回路を、無線LAN(IEEE801.11a準拠、 f=5.2GHz)に応用した例についてより詳細に説明する。
まず、用いられる半導体素子について述べる。高周波半導体回路130を構成するショットキーダイオードペア102、104、106は、同一のダイオードを順方向と逆方向とに接続したものである。第1番目の直列共振回路が第2高調波の共振回路を構成し、第2番目の直列共振回路が第3高調波の共振回路を構成したN=2の場合の例について説明する。
第1番目の直列共振回路は、第1番目のショットキーダイオードペア102及び第1番目のボンディングワイヤが生じる第1番目のインダクタ108で構成され、第2番目の直列共振回路は、第2番目のショットキーダイオードペア104及び第2番目のボンディングワイヤが生じる第2番目のインダクタ110で構成されている。第1番目のショットキーダイオードペア102の2個のアノード形状は、共に5μm×234μmの矩形であり、第2番目のショットキーダイオードペア104のアノード形状は、5μm×104μmの矩形である。
【0029】
図3は、ショットキーダイオードペア102および104のオフ容量の電圧依存性を表わすグラフ図である。
第1番目のショットキーダイオードペア102の0ボルトにおけるオフ時の接合容量は、0.82pFであり、第2番目のショットキーダイオードペア104の0ボルトにおけるオフ時の接合容量は、0.37pFである。また、図2の回路の駆動状態においては、ゲート制御電圧である3ボルトが印加されているので、3ボルトのオフ時の接合容量を比較すると、第1番目のショットキーダイオードペア102において0.234pF,第2番目のショットキーダイオードペア104において、0.104pFである。
【0030】
また、ボンディングワイヤは、一定の長さにでき、本具体例においては、1ナノヘンリーと選んだ。以上より、Ls(1)=Ls(2)=1nH、かつCs(1)=0.234pF,Cs(2)=0.104pFである。この結果、第1番目の直列共振回路の共振周波数は、10.4GHzとなり、2fと一致させることができる。また、第2番目の直列共振回路の共振周波数は、15.6GHzとなり、3fと一致させることができる。
【0031】
図4は、比較例である静電放電保護回路131、および後段に接続される送受信切り替えスイッチ回路134である。
ショットキーダイオードペア105のアノード形状は、5μm×338μmであり、本具体例のN=2の場合における第1番目のショットキーダイオード102と第2番目のショットキーダイオード104のアノード面積和に等しく設定されている。従って、容量も両者の和となるので、静電放電保護に関しては、ほぼ同様の効果が得られている。ボンディングワイヤによるインダクタ111のインダクタンスは、1ナノヘンリーとした。この静電放電保護回路131は、第m高調波に対して共振を生じるように設計されていない。
【0032】
次に、N=2に対応する本具体例の高調波歪特性について、比較例と対比して説明する。 図5は、基本波が5.2GHzにおける第2高調波(10.4GHz)および第3高調波(15.6GHz)のスペクトラム相対強度を表わすグラフ図である。同図においては、本具体例を実線で、比較例を破線で表わした。
【0033】
図5においては、端子Aへの入力電力が20dBmのときの端子Cにおける出力スペクトラムをスペクトラムアナライザにて測定した結果を表わす。本実施例においては、基本波に対して、第2高調波がマイナス78dB,第3高調波がマイナス82dBであった。一方、比較例においては、基本波に対して、第2高調波がマイナス65dB,第3高調波がマイナス64dBであった。本具体例のほうが、第2高調波においては13dB,第3高調波においては18dB高調波歪が低減できた。
【0034】
図6は、基本波に対する高調波成分のスペクトル強度差、すなわち高調波歪の入力電力依存性を表わすグラフ図である。
端子Aからの入力電力Pinが増加するにつれて、送受信切り替えスイッチ回路におけるFET116の非線形成分が増加する。この結果、端子Cにおける出力搬送波中の高調波歪が増加してくる。図6に例示される測定結果においては、本実施例において、第2及び第3高調波間での歪差は約8dB以下であった。また、第2及び第3高調波歪は、本実施例においては比較例より大幅に低減されており、しかも入力電力Pinが大きいほどその効果が大きいことが理解される。
【0035】
さらに、送信器出力段を構成するFETなど、非線形成分を生じる要素が存在すると、本具体例の効果が更に高まる。図2において、送信回路118を端子Bに接続し、GaAs FET114をオンとし、GaAs FET116をオフとする。一般に、送信回路118は、GaAs FETなどを用いて大振幅動作をさせることにより高出力を得ている。この結果、出力信号は高調波成分を多く含んでいる。端子Bへの入力電力を高くする、すなわち送信回路118の出力を大とするほど、高調波成分が増加する。このような場合、本具体例の高周波半導体回路130により、高調波成分を大幅に低減でき、その効果が大きくなる。
【0036】
なお、受信回路120と端子Cとが接続されている場合にも同様の効果が得られる。すなわち、高調波成分を含んだ搬送波が端子Aから入射される場合、本具体例である高周波半導体回路130により、第m高調波を反射して、受信回路120には基本波を入射させることが可能である。
【0037】
次に、送信回路118及び受信回路120の通過周波数帯域を含む周波数特性について説明する。図2において、高周波伝送線路101の特性インピーダンスZは、例えば50Ωとすることができる。このとき、端子Aの電位をV1,端子Bの電位をV2,端子Cの電位をV3とする。GaAs FET114がオン、GaAs FET116がオフのとき、A−B間の挿入損失(Insertion Loss)及びA−C間のアイソレーション(Isolation)は以下の式(1)及び(2)で、それぞれ表わされる。

挿入損失=−20log(V2/V1) [dB] (1)
アイソレーション=−20log(V3/V1) [dB] (2)

ここで、送受信切り替えスイッチ回路134を構成するGaAs FET114及び116は、同一性能を有するものとする。さらに、ゲート数は2本で、ゲート幅Wは2ミリメータとし、オン抵抗R=1.4Ω、接合容量Coff=0.26pF(ゲート制御電圧3ボルト)であるとする。
【0038】
図7は、挿入損失を表わすグラフ図である。
通過帯域である5.2GHz付近において、本実施例では0.9dB,比較例において1.2dBである。本実施例のほうが、0.3dBほど、挿入損失が小さい。さらに、5.2GHz以上において、比較例における挿入損失が増加している。
【0039】
図8は、アイソレーションを表わすグラフ図である。
通過帯域である5.2GHz付近において、いずれもほぼ29dBであり、充分にアイソレーションされている。また、比較例との差異は小さい。以上のように、直列共振回路が2個配置された、静電放電用ダイオードペアを含んだ本具体例の高周波半導体回路130と、送受信切り替えスイッチ回路134とを接続するとき、通過帯域内の高周波特性を損なうことなく高調波歪が低減できる。
【0040】
さらに、本具体例における静電耐圧は、「マシンモデル」で350ボルトであり、「人体モデル」で2,120ボルトであった。一方、比較例における静電耐圧は、「マシンモデル」で360ボルトであり、「人体モデル」で2,030ボルトであった。本具体例において、2個の直列共振回路に分散させても、静電放電保護効果が損なわれることはなかった。
【0041】
次に、静電放電保護用のショットキーダイオードペアを内蔵し、高調波低減のための直列共振回路を含んだ高周波半導体回路130と、送受信切り替えスイッチ回路134とを、集積した高周波半導体回路について説明する。ショットキーダイオードペア102、104、106、及びGaAs FET114、116、及び高周波伝送線路101は、半絶縁性GaAs基板上に形成できる。
【0042】
図2に例示した無線通信機器は、携帯電話や無線LANなどに広く使用するために、小型化が重要である。GaAsにおける媒質内波長は、λ/n(λは、真空中の波長、nは屈折率で約3.6)であるから、真空中の波長の約28%に波長が短縮できる。このため、本具体例の高周波回路130及び送受信切り替えスイッチ回路134をGaAs基板上に集積すると、大幅な小型化が実現できる。この場合、静電放電保護用ショットキーダイオードペア102、104、106、およびGaAsFET114、116の製造プロセスはほぼ共通であるので、シリコンと比べて工程の簡素化が図れる。また、半絶縁性GaAs基板に、高周波伝送線路101、バイアホール、裏面メタライズなどを設けるプロセスは、上記半導体素子プロセスと整合性が良いので、集積化が容易である。このように、化合物半導体基板上に静電放電保護回路を含んだ高周波半導体回路130、および送受信切り替えスイッチ回路134を集積することにより、フィルタや歪補償回路を用いることなく、高調波歪低減が可能となり、かつ通信機器の小型化および高信頼化が実現できる。
【0043】
図9は、本発明の具体例にかかる無線通信機器を搭載したノートパソコンを表す模式図である。
すなわち、このノートパソコン200には、例えばIEEE801.11a(5.2GHz)の無線LAN通信が可能なアンテナ、送信回路、受信回路などとともに、本実施形態の高周波半導体回路130が内蔵されている。本実施形態によれば、高調波歪みが低減され、ESDに対する耐圧も高く、且つコンパクトな無線通信機器を内蔵させることができ、小型軽量で安定したLAN通信が可能なノートパソコンを実現できる。
【0044】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし本発明はこれら具体例に限定されるものではない。例えば、静電放電保護素子としては、ショットキーダイオードペアに限定されず、ダイオード多段であっても、ダイオード単体であっても、FETであっても良い。また、ショットキー接合ではなく、pn接合ダイオードでも良い。さらに、材料も、Si,GaAs,InP,GaN、II−VI族化合物などの半導体材料を広く用いることができる。
【0045】
その他、高周波半導体回路を構成する静電放電保護素子、インダクタなどの各要素の形状、サイズ、材質、配置関係などに関して当業者が各種の設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を有する限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の具体例にかかる高周波半導体回路を表わす等価回路図である。
【図2】本発明の具体例にかかる高周波半導体回路と、送受信切り替えスイッチ回路との接続を表わす等価回路図である。
【図3】本発明の具体例にかかる高周波半導体回路を構成するショットキーダイオードペアの接合容量の印加電圧依存性を表わすグラフ図である。
【図4】比較例の静電放電回路および、これと接続される送受信切り替えスイッチ回路とを表わす等価回路図である。
【図5】本発明の具体例にかかる高周波半導体回路を通過したスペクトラム相対強度を現すグラフ図である。
【図6】本発明の具体例にかかる高周波半導体回路を通過した高調波歪の入力電力依存性を表わすグラフ図である。
【図7】本発明の具体例にかかる高周波半導体回路の挿入損失の周波数特性を表すグラフ図である。
【図8】本発明の具体例にかかる高周波半導体回路のアイソレーションの周波数特性を表すグラフ図である。
【図9】本発明の具体例にかかる無線通信機器を搭載したノートパソコンを表す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
100 アンテナ
101 高周波伝送線路
102、104、106 静電放電保護素子
105 静電放電保護素子
111 インダクタ
108、110、112 インダクタ
114、116 FET
118 送信回路
120 受信回路
130 高周波半導体回路
131 静電放電保護回路
134 送受信切り替えスイッチ回路




 

 


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