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発明の名称 電極触媒、燃料極用電極、燃料電池装置及び電極触媒製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−12284(P2007−12284A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−187620(P2005−187620)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
発明者 原田 康宏 / 梅 武 / 中野 義彦
要約 課題

本発明は、ペロブスカイト化合物を担体に用いた電極触媒の耐酸性を強くすることにより、高出力でかつ長寿命な燃料電池を提供することが可能な直接液体燃料供給型燃料電池用の電極触媒を提供することを目的とする。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
直接液体燃料供給型燃料電池の燃料極用の電極触媒であって、前記液体燃料酸化触媒能を有する金属粒子と、ABO3−δ(但し、式中δは酸素欠損量を示し、0.01≦δ≦1.0、Aサイト元素及びBサイト元素は、酸素と結合して酸性酸化物または両性酸化物を形成する元素から選択される少なくとも一種の元素)で表される酸素欠損型ペロブスカイト酸化物を含むことを特徴とする電極触媒。
【請求項2】
前記金属粒子は、白金族元素鉄族元素、及び周期表第Ib族元素のうちから選択される少なくとも一種の金属粒子であることを特徴とする請求項1記載の電極触媒。
【請求項3】
Aサイト元素は、酸素と結合して酸性酸化物または両性酸化物を形成し、かつイオン半径が0.09nm以上0.18nm以下の元素から選択される少なくとも一種の元素であり、Bサイト元素は、酸素と結合して酸性酸化物または両性酸化物を形成し、かつイオン半径が0.05nm以上0.10nm以下の元素から選択される少なくとも一種の元素であることを特徴とする請求項1記載の電極触媒。
【請求項4】
前記金属粒子が、前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物の粒子に担持されていることを特徴とする請求項1記載の電極触媒。
【請求項5】
さらに導電助剤を含むことを特徴とする請求項1記載の電極触媒。
【請求項6】
直接液体燃料供給型燃料電池の燃料極用電極であって、電極支持体と、その電極支持体に担持された触媒とを具備し、前記触媒は請求項1記載の電極触媒を具備することを特徴とする燃料極用電極。
【請求項7】
請求項6記載の燃料極用電極を具備する燃料極と、
酸化剤極と、
前記燃料極及び前記酸化剤極とで挟持された電解質膜と、
を具備し、液体燃料が前記燃料極に、酸化剤が前記酸化剤極に供給されることにより電力を発生する起電部を具備することを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
請求項1記載の電極触媒の製造方法であって、前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物と前記金属粒子とを混合又は前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物と前記金属粒子とを混合する工程と、水素雰囲気下で加熱還元する工程とを具備することを特徴とする電極触媒製造方法。
【請求項9】
前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物と前記金属粒子とを混合する前記工程は、前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物の粒子に前記金属粒子を担持させる工程を行うことを特徴とする請求項8記載の電極触媒製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接液体燃料供給型燃料電池の燃料極用の電極触媒、それを用いた燃料極用電極、それを用いた燃料電池、及び電極触媒製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体燃料を直接電池本体に供給する直接液体燃料供給型燃料電池として一般的なDMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)は、高分子電解質膜の両面に、触媒層とカーボンペーパーからなる拡散層で構成された燃料極と、酸化剤極を一体化した膜・電極接合体(MEA)を具備する。
【0003】
アノード極(燃料極)側に供給されたメタノール水溶液は、アノード電極触媒上で酸化され、二酸化炭素とプロトン(水素イオン)及び電子を生成する。一方、カソード極(酸化剤極)には空気(酸素)を供給することで、外部回路を移動してきた電子と電解質膜を介して移動してきたプロトンとを反応させ水を生成する。DMFCは、これらの一連の反応により発電が行われているものである。
【0004】
近年、このようなDMFCは、小型の電子機器の電源として組み込むのに好適とされ、二次電池に比べて、充電が不要で長時間駆動する点を利点としている。このため、小型電子機器の搭載を可能にするには、燃料電池の小型化及び高出力化が急務の課題となっている。
【0005】
従来、DMFCにおける電極触媒としては炭素系材料を担体として用い、金属微粒子をこの担体に担持させた触媒が用いられている。特にアノード(メタノール)側は炭素系材料に担持された白金−ルテニウム複合微粒子触媒が多く用いられ、またカソード(空気)側には、炭素系材料に担持された白金微粒子触媒が用いられている。
【0006】
しかしながら、燃料電池においては、アノード側で生成した中間副生成物(主に一酸化炭素)が触媒表面に吸着(被毒)することで活性が低下してしまうことが知られている。この問題を解決するために、金属粒子の改良や、担体の改良等様々な試みがなされている。
【0007】
このような中、特許文献1及び特許文献2には、担体として酸素欠損型ペロブスカイト化合物を用いこの化合物と貴金属粒子を複合させることにより被毒の影響を少なくし、結果として高い活性を得ることができると記されている。
【0008】
しなしながら、当該文献の実施例で示されているペロブスカイト化合物は、アルカリ性酸化物を形成する元素が主として使用されており、例えばSrをペロブスカイト構造ABOのA元素として使用した場合、そのアルカリ性酸化物を形成する性質から、酸性溶液中でA元素を含むカチオン構成元素の溶出が起こる。すなわち電極触媒の溶解が起きる問題がある。
【0009】
DMFCの多くは高い酸性を有する電解質膜を使用するため、電極触媒の耐酸性が必須となる。電極触媒が溶解すると、その溶出したカチオンが電解質膜中に残留し、結果として電解質の抵抗を高くして燃料電池出力を低下してしまうことが知られており、あまり実用的な触媒とは成り難い。
【0010】
【特許文献1】特開2005−50760号
【特許文献2】特表2004−507341号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ペロブスカイト化合物を担体に用いた電極触媒の耐酸性を強くすることにより、高出力でかつ長寿命な燃料電池を提供することが可能な直接液体燃料供給型燃料電池用の電極触媒、電極触媒、燃料極用電極、燃料電池及び電極触媒の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、直接液体燃料供給型燃料電池の燃料極用の電極触媒であって、前記液体燃料酸化触媒能を有する金属粒子と、ABO3−δ(但し、式中δは酸素欠損量を示し、0.01≦δ≦1.0、Aサイト元素及びBサイト元素は、酸素と結合して酸性酸化物または両性酸化物を形成する元素から選択される少なくとも一種の元素)で表される酸素欠損型ペロブスカイト酸化物を含むことを特徴とする電極触媒である。
【0013】
前記電極触媒において、前記金属粒子は、白金族元素、鉄族元素及び周期表第Ib族元素から選択される少なくとも一種の金属粒子であることが望ましい。
また、前記電極触媒において、前記Aサイト元素は、酸素と結合して酸性酸化物または両性酸化物を形成し、かつイオン半径が0.09nm以上0.18nm以下の元素から選択される少なくとも一種の元素であり、前記Bサイト元素は、酸素と結合して酸性酸化物または両性酸化物を形成し、かつイオン半径が0.05nm以上0.10nm以下の元素から選択される少なくとも一種の元素であることが望ましい。
【0014】
また前記電極触媒においては、前記金属粒子が、前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物の粒子に担持されていることが望ましい。
【0015】
また、前記電極触媒においては、さらに導電助剤を含むことが望ましい。
【0016】
また、本発明は、直接液体燃料供給型燃料電池の燃料極用電極であって、電極支持体と、その電極支持体に担持された触媒とを具備し、前記触媒は前記電極触媒を具備することを特徴とする燃料極用電極である。
【0017】
また、本発明は、前記燃料極用電極を具備する燃料極と、
酸化剤極と、
前記燃料極及び前記酸化剤極とで挟持された電解質膜と、
を具備し、液体燃料が前記燃料極に、酸化剤が前記酸化剤極に供給されることにより電力を発生する起電部を具備することを特徴とする燃料電池である。
【0018】
また、本発明は、前記電極触媒の製造方法であって、前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物と前記金属粒子とを混合又は前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物と前記金属粒子とを混合する工程と、水素雰囲気下で加熱還元する工程とを具備することを特徴とする電極触媒製造方法である。
【0019】
前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物と前記金属粒子とを混合する前記工程は、前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物の粒子に前記金属粒子を担持させる工程を行うことが望ましい。
【0020】
上記のように、本発明においては直接液体燃料供給型燃料電池における燃料極用電極触媒として、液体燃料酸化触媒能を有する金属粒子と、特定の元素をA,Bサイト元素とする酸素欠損型ペロブスカイト酸化物との混合物を用いる。
【0021】
この酸素欠陥型ペロブスカイト酸化物を使用することにより、金属粒子の触媒効果に加えて、酸化物自体も助触媒として作用し、メタノールなどの液体燃料を酸化する際に発生する中間副生成物(一酸化炭素など)の被毒制御を可能にできる。
【0022】
酸素欠陥型ペロブスカイト酸化物が助触媒として作用する理由の1つとして、表面における酸化物イオンOが一酸化炭素やアルコール、アルデヒドなどに対して高い反応性を有していることが挙げられる。
【0023】
またこの酸素欠損型ペロブスカイト酸化物は、従来技術で金属粒子の担体として多用されている炭素系材料に比べ親水性が高い。DMFCの場合、効率良く発電することが可能なアルコール低濃度水溶液(例えばメタノールが10%未満の水溶液)において、メタノール分子が多くの水分子に包括されるようなクラスター構造を取る。そのため、親水性が高い担体を用いた場合、触媒中の活性点と反応種(メタノール)が容易に接触できる状況を作られ、反応種が触媒活性種に到達する際に生じる拡散過電圧を低減することができ、ひいてはエネルギーへの変換効率を高くすることができる。
【0024】
さらに、酸素欠損型ペロブスカイト酸化物のA,Bサイト元素として、酸素と結合した際に酸性酸化物または両性酸化物を形成する元素を用いているため、耐酸性を向上させ、酸性溶液中で構成元素の溶出が生じにくくなる。したがって電極触媒として燃料電池に組み込まれた際、高出力で安定かつ長寿命な燃料電池を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、液体燃料を用いた燃料電池において、触媒表面の疎水性を抑えると共に、耐酸性が強くなり、それにより高出力でかつ長寿命な燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<電極触媒>
本発明の実施形態にかかる電極触媒は、直接液体燃料供給型燃料電池の燃料極用の電極触媒であって、例えばメタノールやメタノール水溶液等の液体燃料酸化触媒能を有する金属粒子と、ABO3−δ(但し、式中δは酸素欠損量を示し、0.01≦δ≦1.0、Aサイト元素及びBサイト元素は、酸素と結合して酸性酸化物または両性酸化物を形成する元素から選択される少なくとも一種の元素)で表される酸素欠損型ペロブスカイト酸化物とを含む。以下に、各成分についてさらに説明する。
【0027】
(金属粒子)
液体燃料酸化触媒能を有する金属粒子としては、貴金族元素(Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,Os,Au,Ag等)や卑金属元素(Y,La,Ce,Pr,Nd,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Ca,Mg,Al,K,Ti,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ga,Rb,Sr,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Cs,Ba,Ta,W等)が挙げられる。これらの金属は一種のみからなるものでもよいし、複数種を組み合わせたものであっても良い。
【0028】
中でも白金族元素(Ru、Rh,Pd、Os、Ir、Pt)及び鉄族元素(Fe、Co、Ni)、周期表第Ib族元素(Cu、Ag、Auなど)が望ましく、さらにPt及びRuは、触媒活性が高いため望ましく、特にPtとRuの粒子が共存している状態が最も好ましい。
【0029】
(酸素欠損型ペロブスカイト酸化物)
前記一般式で表される酸素欠陥型ペロブスカイト酸化物において、Aサイト元素としては、酸素と結合した際に酸性酸化物又は両性酸化物を形成する元素から選択される少なくとも一種の元素を用いる。中でも酸素と結合した際、酸性酸化物を形成する元素を用いた化合物は耐酸性が高く安定なペロブスカイト結晶構造を形成しやすく、触媒活性も高い傾向にあるため好ましい。
【0030】
またAサイト元素としては、イオン半径が0.09nm以上0.18nm以下の範囲にある元素が安定したペロブスカイト結晶構造を形成する上で望ましい。具体的には、酸素と結合した際に、酸性酸化物を構成するLa,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Bi等や、両性酸化物を形成するAg,Pb,Auなどが望ましい元素として挙げられる。
【0031】
また、この酸化物においてAサイト元素には一種類の元素のみならず複数種の元素を用いた化合物であっても良い。組み合わせによっては複数種の元素が混在する固溶状態を形成することで、より高い触媒能を発揮することができる。例えば、AgとLaの組み合わせや、LaとAuなどの組み合わせが高い活性を示すことができる。
【0032】
一方、Bサイト元素も、酸素と結合した際に酸性酸化物又は両性酸化物を構成する元素から選択される少なくとも一種の元素を用いる。中でも酸素と結合した際、酸性酸化物を形成する元素を用いた化合物は耐酸性が高く安定なペロブスカイト結晶構造を形成しやすく、触媒活性も高い傾向にあるため好ましい。
【0033】
Bサイト元素としては、イオン半径が0.05nm以上0.10nm以下の範囲にある元素が安定したペロブスカイト結晶構造を形成する上で望ましい。具体的には、酸素と結合した際に、酸性酸化物を形成するMn,Ta,W等や、両性酸化物を形成するCr,Sn,Co,Zn,Ga,Tiなどが挙げられる。中でもMn,Cr,Sn,Ta,Wなどの元素は安定したペロブスカイト結晶構造を形成しやすく、活性も高い傾向にあるため好ましい。
【0034】
また、この酸化物においてBサイトにおいても一種類の元素のみならず複数種の元素を用いた化合物であっても良い。この場合、BサイトはMn,Ta,W,などの酸性酸化物を形成する元素のみで構成することにより、高い耐酸性能を付与されるため望ましい。
【0035】
一般的に、複合酸化物の耐酸性能は構成する元素の酸性度により左右される。すなわち、酸性酸化物を形成する元素のみを組み合わせた複合酸化物は、より耐酸性が向上する傾向にあり、一方で、アルカリ性酸化物を形成する元素を含有する複合酸化物の耐酸性は低い。従って、発電中に酸性状態に晒される電極触媒に必要な耐酸性能を得るためには、構成する元素を、酸性酸化物又は両性酸化物を形成する元素、より好ましくは酸性酸化物を形成する元素のみを用いた化合物であることが望ましい。
【0036】
酸素欠損量δは0.01≦δ≦1.0の範囲である。0.01を下回ると酸化物イオン欠損量が少なく、触媒活性が低い傾向にあり、1.0を上回ると、ペロブスカイト構造の歪みが大きくなり構造が安定しにくくなる。より好ましくは、歪みが少ない単相のペロブスカイト構造を持ち、高い触媒活性を得るためには、0.05≦δ≦0.5の範囲であることが望ましい。
【0037】
(各成分の形態)
上述の如く、本発明の実施形態にかかる電極触媒は、前記金属粒子と、前記酸素欠損型ペロブスカイト酸化物とを含むものであるが、金属粒子が微粒子でありまた、酸素欠陥型ペロブスカイト酸化物が微粒子結晶の形態であると、触媒活性がより高くなる傾向にあるため好ましい。
【0038】
本実施形態にかかる金属粒子の好ましい平均粒径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは10μm〜数nm、特に好ましくは、数10nm〜数nmの平均粒径を有する粒子である。平均粒径が100μmを超えると粒子の表面積が低下し、十分な触媒活性が得られない恐れがある。その金属粒子の平均粒子径はより小さいものが好ましい。触媒活性を向上させる上で重要な要素の一つとして、金属表面積を大きくとることが挙げられるためである。なお金属粒子の中には、その金属の酸化物等の金属化合物を含んでいても良いが、金属単体として存在することがより好ましい。
【0039】
本実施形態にかかる酸素欠損型ペロブスカイト酸化物の好ましい平均粒径は、1000μm以下、より好ましくは100μm〜1μm、特に好ましくは2〜10μmである。また、好ましい比表面積はBET吸着測定値で、50〜1000m/g程度である。
【0040】
また、両者の存在形態としては、前記酸素欠陥型ペロブスカイト酸化物を担体とし、これに前記金属粒子を担持せしめたものでも、前記酸素欠陥型ペロブスカイト酸化物と前記金属粒子とが混合したもの等でも良い。特に、前記酸素欠陥型ペロブスカイト酸化物を担体とし、これに前記金属粒子を担持せしめたものは、電極触媒としての触媒活性がより高くなる傾向にあるため好ましい。特に金属粒子は、担体に埋め込まれるように担持されることで金属粒子がアンカリング状態となり粒成長が抑えられ触媒活性向上の点で望ましい。酸素欠損型ペロブスカイト酸化物担体上に金属粒子を担持することで、金属粒子表面に被毒されやすい一酸化炭素などの被毒種を効率よく酸化させることが可能となり、触媒活性を向上させることが可能である。つまり担体表面に存在する活性金属種の近傍に、担体が有する反応性の高い酸化物イオンが存在することにより、アルコール類の酸化が促進されると共に、酸素欠損を有するペロブスカイト酸化物は、アルコールやアルデヒド、一酸化炭素などから電子を引き抜くことで構造中の金属カチオンが還元されると同時に、酸化物イオンの移動も伴う。この酸化物イオンと電子の移動により、金属表面に形成される被毒種などが酸化することで相乗的な活性が得られると考えられる。
【0041】
(その他の成分)
上記の2成分の他に、本実施形態にかかる電極触媒は、導電助剤を含むことが望ましい。従来、無機固体酸化物を担持体とする触媒はその電子導電性が低いため、電極触媒として利用することが困難であった。触媒層の電子導電性が低いと電極の内部抵抗が増大し、結果として燃料電池出力の低下を招くためである。そこで、本発明にかかる電極触媒は担体と電子導電助剤を混合することが望ましい。それにより、触媒層の電子導電性を向上させる特徴を持つ。
【0042】
具体的には、カーボンなどの炭素系導電助剤、又は粒子状のポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの高分子導電助剤などの導電助剤のうちの少なくとも一種を含むことが望ましい。さらに望ましくは、さらにこれらの導電助剤のうち粒子状の導電助剤と、カーボンウィスカー、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブなどのアスペクト比が高い(例えばL/Dが5以上20以下)細長い繊維状の導電助剤を組み合わせて含むことがさらに望ましい。アスペクト比が高い細長い形状をした導電助剤と粒子状の導電助剤を組み合わせることにより、電極触媒中に電子導電経路のネットワークが形成され、より効率的な導電状態を形成できる。これにより、電極触媒反応機構に重要とされる三相界面の形成を促進し、電極触媒としての能力を向上させることができる。アスペクト比の高い導電性物質は上記カーボン材料に制限されず、無機固体、有機ポリマーなど電子導電性を有する物質で、かつアスペクト比が大きな細長い材料であれば同様の効果が得られる。
【0043】
(各成分の組成比)
本実施形態にかかる電極触媒中の前記金属の含有率としては、触媒の全重量に対する重量比(mass%)として、0.05mass%以上60mass%以下であることが好ましく、その中でも5mass%以上50mass%以下であることがより好ましい。金属の含有率が、0.05mass%未満では触媒作用が得られず、60mass%以上では、ペロブスカイト表面における金属種が過剰となり、粗大粒子等が生成されるために触媒金属の利用効率が低下するため、電極触媒としては十分な触媒性能を得ることができない。
【0044】
本実施形態にかかる電極触媒中の酸素欠損型ペロブスカイト酸化物の含有率としては、触媒の全重量に対する重量比(mass%)として、40mass%以上90mass%以下であることが好ましく、その中でも50mass%以上70mass%以下であることが望ましい。
【0045】
またその他の成分である導電助剤を添加する際は、触媒の全重量に対する重量比(mass%)として、10mass%以上50mass%以下の範囲であることが望ましい。
【0046】
(製法)
本実施形態にかかるメタノール電極触媒は、例えば次のように調製することができる。すなわち既知の方法にて原料組成を調製することにより得た本発明にかかる組成の酸素欠損型ペロブスカイト酸化物、金属粒子、さらに必要に応じて導電助剤の成分を溶媒に加えて混合し、均一な懸濁液を得る。懸濁液から溶媒を乾燥することにより除去して電極触媒を得る。
【0047】
酸素欠損型ぺロブスカイト酸化物の担体に、上記金属粒子を担持させる場合は、その方法は特に制限されず、例えば、金属や金属前駆体(塩化金属酸などの金属ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、アルコキシド、テトラアンミン塩、アセチルアセトナトなど)を用いていわゆる含浸法、イオン交換法、沈澱法、混練法等の手段により、酸素欠損型ペロブスカイト酸化物の担体に金属を担持させることが可能である。
【0048】
上記のようにして金属粒子と酸素欠損型ペロブスカイト酸化物と混合するか、若しくは酸素欠損型ペロブスカイト酸化物担体に金属粒子担持させた後、水素もしくは一酸化炭素もしくは炭化水素(メタン、アセトアルデヒド等)含有雰囲気中での還元処理をするか、或いは窒素もしくは空気中での焼成処理などを行うか、またその両方を行うことが好ましい。還元雰囲気下で還元を行うことにより、金属が還元されるばかりでなく、酸素欠損型ペロブスカイト酸化物も還元環境下にさらされるため、ペロブスカイト酸化物における酸化物イオン欠損を生じさせやすくなる。また、焼成することで金属の一部を酸素欠損型ペロブスカイト酸化物中に固溶させたり、固定させることができるため微粒子の粗大化や流出を防止することも可能である。
【0049】
還元処理する場合の条件は特に制限されないが、例えば水素雰囲気中で、200〜800℃の温度で1〜10時間程度加熱するといった条件が良い。
【0050】
焼成処理する場合の条件は特に制限されないが、担持金属粒子の粒成長が起き難い温度範囲(金属種により異なる)で、比較的に短時間行うといった条件が良い。
【0051】
なお無機固体の表面の導電化手法であるイオン注入技術等を電極触媒に施すことで触媒に導電性の元素を導入させ電子導電性を付与しても良い。またこの他にも、触媒面を導電薄膜層でコーティングするなどしても良い。
【0052】
<燃料極用電極>
直接液体燃料供給型燃料電池の燃料極用電極は、前記触媒をそのまま使用しても良いが、電極支持体に担持させて使用することが実用的である。
【0053】
例えば多孔質カーボンペーパーなどの所望の電極支持体上に得られた懸濁液を塗布し、その後乾燥することにより得ることができる。電極にはこの触媒組成物に加えてイオン伝導材料そして必要に応じて使用される添加剤を添加しても良い。
【0054】
前記イオン伝導材料は、イオン伝導性を有するものなら何を使用してもよいが、電解質膜と同じ材料であると好ましい結果が得られる。必要に応じて使用される添加剤としては、カーボンに代表される導電性材料、テトラフルオロエチレンに代表される撥水性材料が挙げられる。
【0055】
前記電極支持体としては、この電極支持体は液体燃料を拡散する拡散層として機能するものであることが望ましい。多孔質カーボンペーパー以外にも、例えば金、白金、ステンレス、ニッケル等の薄膜やメッシュあるいはスポンジ、あるいは、酸化チタン、シリカ、酸化スズに代表される公知の導電性粒子が挙げられる。
【0056】
担持方法には、スパッタやケミカルベーパーデポジションに代表される真空薄膜作製法、メッキ、無電解メッキや含浸法等の化学的ないし電気化学的方法でも行うことができる。さらには、アーク溶解やメカニカルミリング等の方法も使用できる。
【0057】
<燃料電池>
以下に前記電極を用いた直接液体燃料供給型燃料電池の構造の一実施形態について述べる。上記触媒を適用する燃料電池は、パッシブ型燃料電池であってもよく、アクティブ型燃料電池であっても良い。
【0058】
図1は、燃料電池の単セルを示す概念図である。
図1中、筐体1a、1b内に電解質膜2と、それを挟持する酸化剤極(カソード)3と燃料極(アノード)4を有し、それらの外側に酸化剤流路5と液体燃料流路6を具備してなる。
【0059】
電解質膜2はイオン交換膜が使用される。イオン交換膜は、アニオンまたはカチオンのいずれのイオン伝導タイプでも使用できるが、プロトン伝導タイプのものが好適に使用される。例えばパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマーを代表とする高分子膜などアニオン又はカチオン伝導性を有する材料が使用できる。
【0060】
酸化剤極3と燃料極4との間に電解質膜2を介在配置させて挟持するか、あるいはホットプレスまたはキャスト製膜等によって三者を接合して、膜―電極構造体(Membrane Electrode Assembly)が構成される。多孔質カーボンペーパーには、必要であればポリテトラフルオロエチレンに代表される撥水剤を添加または積層することもできる。
【0061】
燃料極4は、前述の電極触媒を有効成分としてなる電極である。燃料極4は、電解質膜2に当接させる。燃料極4を電解質膜2に当接させる方法としては、ホットプレス、キャスト製膜をはじめとする公知の方法が使用できる。
【0062】
酸化剤極3も、多くの場合、白金を担持したカーボン等の酸化剤極用電極触媒をイオン伝導材料とともによく混合した上で電解質膜2に当接させることで構成されている。イオン伝導材料は、電解質膜2と同じ材料であると好ましい結果が得られる。酸化剤極3をイオン交換膜2に当接させる方法としては、ホットプレス、キャスト製膜をはじめとする公知の方法を使用することができる。白金を担持したカーボン以外にも、酸化剤極3として、貴金属又はそれらを担持した電極触媒や、有機金属錯体又はそれを焼成した電極触媒など公知のものを使用できる。
【0063】
酸化剤極3側には、上方に酸化剤(多くの場合空気)を導入するための酸化剤導入孔(図示せず)が設けられる一方、下方に未反応空気と生成物(多くの場合水)を排出するための酸化剤排出孔(図示せず)が設けられる。筐体1aに空気の自然対流孔を設けてもよい。酸化剤極3側には、強制的に酸化剤を導入するための強制通気手段を付設してもよい。強制通気手段としては、送気ポンプなどが挙げられる。
【0064】
燃料極4の外側には、液体燃料流路6が設けられる。液体燃料流路6は、外部燃料収納部(図示せず)との流通路であってもよいが、液体燃料を収納するための部位であってもよい。下方に未反応メタノール燃料と生成物(多くの場合CO)を排出するための排出孔(図示せず)が設けられる。この場合、強制排出及び/または強制排出手段を付設してもよい。燃料極4側には強制的に液体的に燃料を供給する強制燃料供給手段を付設して良い。強制燃料供給手段としては、液体ポンプなどが挙げられる。
【0065】
燃料極4に直接供給される燃料は、メタノール単独ないしはメタノールと水の混合物が適当であるが、メタノールとの混合物であると、クロスオーバーが効果的に防止されて更に良好なセル起電力と出力が得られる。
【0066】
図1に示す直接液体燃料供給型燃料電池の概念図は、単セルだけを表しているが、本発明においては、この単セルをそのまま使用してもよいし、複数のセルを直列及び/または並列接続して実装燃料電池とすることもできる。セル同士の接続方法は、バイポーラ板を使用する従来の接続方式を採用してもよいし、平面接続方式を採用してもよい。無論その他公知の接続方式の採用も有用である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
図2に示す合成スキームに従って触媒の合成を行い、酸素欠損型ペロブスカイト酸化物ABO3−δ(AはLaで占有率は0.8、BはCo、δは0.3)を合成した。
【0069】
合成は簡便のために一般的な固相反応法を用いて行った。原料酸化物及び各種塩を所定のモル比になるように混合し、電気炉にて仮焼きを行った後、本焼成して粉砕した。合成した化合物は、粉末X線解析により目的のペロブスカイト構造であることを確認した。
【0070】
この化合物をボールミルにて粉砕し、出来る限り細かい粒径になるように整えた。この粉末を水溶液中で分散し、ルテニウム及び白金の担持を行った。担持を終えた粉末を水路流通下で還元処理を行い、最終的に粉末X線解析、XPS分析などを行って、担持金属の状態を調べた。
【0071】
担体に対してPt−Ruを30mass%担持したときのCV測定を行った。測定溶液は、硫酸とメタノールを混合した酸性液体で、硫酸水溶液のみで測定することで担体の電気化学的溶出の有無を調べた。更に、測定溶液中に担体を構成する元素の溶出の有無についてもICP分析によって調べ、以下の実施例に示したすべての組成に同様の条件で測定を行った。
【0072】
(実施例2)
同様に合成した酸素欠損型ペロブスカイト酸化物ABO3−δ(AはLaで占有率は0.9、BはMn、δはおよそ0.15)を担体として、Pt−Ruを30mass%担持したときのCV測定を行った。
【0073】
(比較例1)
比較用として通常のカーボン粉末担体を用いて、Pt−Ruを30mass%担持したときのCV測定を行った。
【0074】
(比較例2)
Srのようなアルカリ性酸化物を形成するカチオンが含有していた場合の耐酸性について比較するため、アルカリ性元素を含有する酸素欠損型ペロブスカイト酸化物ABO3−δ(AはLaとSrで、占有率がLaは0.8、Srは0.2、BはMn、δはおよそ0.1)を担体として、Pt−Ruを30mass%担持したときのCV測定を行った。
【0075】
図3に上記実施例1、2の結果と、従来用いられてきたPt−Ru/Cの比較例1及びアルカリ性元素を含む比較例2のCV測定結果を示す。実施例1では、従来型触媒の比較例1に対してピーク時の電流値が低いものの、ピーク電流に到達するまでの電流値が優れていることが分かる。これは、従来担体よりも親水性が高い担体を用いたことで、拡散過電圧が低下することで、より低い電圧で多くの酸化電流が流れていると考えることが出来る。一方で、実施例2においてはピーク電流共に従来型触媒を大きく上回る結果となった。担体の欠陥構造や電子構造がPt−Ruの電子状態に影響を及ぼし、結果として活性も向上したためと考えることが出来る。更に、実施例1,2で用いた担体は、硫酸のみのブランクCV測定及びICPによる元素分析により、構成元素が溶出しないことが明らかとなった。
【0076】
その一方で、アルカリ元素を含む比較例2は、同様に従来触媒より活性は高いものの、測定後の溶液のICP分析にから、Srイオンが多量に検出された。従って、触媒担体であるペロブスカイト酸化物が酸性溶液中で溶出していることが確認できた。
【0077】
このことから、従来技術にも示されているようなアルカリ元素を含む触媒を実際に触媒膜接合電極(MEA)として発電した場合、電解質膜の持つ強い酸性により触媒担体も溶解することを意味する。上述したような本発明で用いた触媒担体を用いることで、耐酸性が向上し結果として燃料電池の高出力化のみならず出力安定化、超寿命化に貢献することができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施形態にかかる燃料電池の概略図。
【図2】実施例に係る触媒合成のスキーム図
【図3】実施例に係る触媒と従来技術による触媒のサイクリックボルタンメトリー法による電気化学測定チャート
【符号の説明】
【0080】
1a.・・・筐体
1b.・・・筐体
2・・・電解質膜
3・・・酸化剤極
4・・・燃料極
5・・・酸化剤流路
6・・・液体燃料流路




 

 


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