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発明の名称 アンテナ装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−6465(P2007−6465A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2006−147282(P2006−147282)
出願日 平成18年5月26日(2006.5.26)
代理人 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
発明者 辻村 彰宏 / 佐藤 晃一 / 天野 隆 / 堀田 浩之
要約 課題
アンテナ放射効率の向上と小型化の両立を図る。

解決手段
アンテナエレメントと印刷配線基板との間に磁性部材を介在配置し、かつアンテナエレメントと磁性部材との間に空気層又は誘電体層を介在させたものである。磁性部材1は、絶縁マトリクス基材に強磁性を有する磁性ナノ粒子を三次元状に分散して配置したナノグラニュラ(nanogranular)構造である。
特許請求の範囲
【請求項1】
アンテナエレメントと、当該アンテナエレメントに対し接地電位を与える金属面が形成された印刷配線基板との間に、絶縁マトリクス基材に強磁性を有する磁性ナノ粒子を分散して配置した磁性部材を介在配置したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記磁性部材は、前記アンテナエレメントの給電端部を含む部位と前記印刷配線基板の金属面との間に介在配置されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記磁性部材は、絶縁マトリクス基材に強磁性を有する磁性ナノ粒子を分散配置した複数の磁性体シートを、誘電体層を挟んで積層してなることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項4】
接地面及び給電回路を備えた印刷配線基板上に設置されるアンテナ装置であって、
前記印刷配線基板に対し離間した状態で平行に配置され、前記給電回路から給電される給電端を備えたアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントの給電端と近接する部位と前記印刷配線基板との間に介在設置され、絶縁マトリクス基材に強磁性を有する磁性ナノ粒子を分散して配置してなる磁性体部材と、
前記アンテナエレメントの前記給電端と近接する部位以外の部位と前記印刷配線基板との間に介在設置された誘電体部材と
を具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
前記磁性体部材及び誘電体部材の少なくとも一方は、前記アンテナエレメントと印刷配線基板との間で、当該アンテナエレメントを支持するべく当該アンテナエレメント及び印刷配線基板の双方に当接した状態で設置されることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線装置に設けられるアンテナ装置に係わり、特に移動通信端末や無線ICカード等のように薄型化が要求される無線装置に設けられるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子通信機器の小型軽量化に伴い、電子部品の小型軽量化が望まれている。移動通信端末は、情報伝播の多くを電波の送受信にて行っている。現在用いられている電波の周波数帯域は100MHz以上の高周波帯域である。そこで、この高周波帯域において有用な電子部品及び印刷配線基板に注目が集まっている。また、移動体通信分野においては、G(ギガ)Hz帯のさらに高周波帯域の電波が使用されるようになっている。
【0003】
このような高周波帯域の電波に対応するためには、電子部品におけるエネルギ損失や伝送損失が小さいことが必要である。例えば、移動通信端末に使用されるアンテナ装置では、アンテナエレメントから放射された電波は伝播過程において伝送損失が生じる。この伝送損失は、熱エネルギとして電子部品及び印刷配線基板内で消費されて電子部品における発熱の原因となり、これにより外部に送信すべき電波が打ち消される。そのため、必要以上の強力な電波を送信する必要があり、電力の有効利用という点で問題がある。
【0004】
そこで、移動通信端末で使用される従来のアンテナ装置では、一般にアンテナエレメントと電子部品及び印刷配線基板との間の距離を大きく設定し、これによりアンテナエレメントによる電波の放射特性が電子部品及び印刷配線基板により大きな影響を受けないようにしている。
【0005】
また、別の対策として、例えば印刷配線基板のアンテナが設置されている側とは反対側に磁性体板を配置するものが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2002−232316公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、アンテナエレメントと電子部品及び印刷配線基板との間の距離を大きく設定するとアンテナ装置が大型化し、その結果移動通信端末の筐体内におけるアンテナ装置の収容スペースが大きくなって、端末の大型化が避けられなくなる。また、印刷配線基板のアンテナが設置されている側とは反対側に磁性体板を配置しても、アンテナ放射特性は何ら改善されない。このため、上記したようにアンテナエレメントと電子部品及び印刷配線基板との間の距離を大きく設定せざるを得ない。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、アンテナ放射効率の向上と小型化の両立を可能にしたアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明は、アンテナエレメントと、当該アンテナエレメントに対し接地電位を与える金属面が形成された印刷配線基板との間に、絶縁マトリクス基材に強磁性を有する磁性ナノ粒子を分散して配置した磁性部材を介在配置したものである。
したがってこの発明によれば、前記磁性部材によりアンテナエレメントと印刷配線基板との間のインピーダンスを高めることが可能となり、これにより印刷配線基板の金属面におけるイメージ電流の発生を抑制してアンテナ放射特性を高めることが可能となる。また、高インピーダンスを維持するためにアンテナエレメントと印刷配線基板との間の間隔を大きく設定する必要がなくなり、これによりアンテナ装置の小型化(薄型化)が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
要するにこの発明によれば、アンテナ放射効率の向上と小型化の両立を可能にしたアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わるアンテナ装置の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
この発明に係わるアンテナ装置の第1の実施形態は、ダイポールアンテナのエレメントと印刷配線基板との間に磁性部材を介在配置し、かつ上記ダイポールアンテナのエレメントと磁性部材との間に空気層又は誘電体層を介在させたものである。
【0011】
図1はこの発明の第1の実施形態におけるアンテナ装置の構成を示す斜視図、図2は図1におけるA−A矢視断面図である。これらの図において、8はダイポールアンテナのエレメント(以後アンテナエレメントと称する)、7は印刷配線基板をそれぞれ示している。アンテナエレメント8は、ダイポールアンテナなどの線状アンテナからなり、例えば図示しない移動通信端末の筐体の裏面に固定保持される。
【0012】
印刷配線基板7は例えば多層基板により構成される。これらの基板層のうちの表面層にはCPU(Central Processing Unit)やメモリ、LSI(Large Scale Integrated Circuit)、端子等の各種電子部品が実装されている。これらの電子部品は移動通信端末を動作させるための回路を構成する。例えば、上記LSIの一つは無線回路を構成し、この無線回路から出力された無線送信信号は信号線パターンを介して上記アンテナエレメント8の給電端子9に供給される。また、上記各基板層のうちの一層には接地パターンとなる金属面が形成されている。この金属面は、上記各電子部品及びアンテナエレメント8に対し接地電位を与える。
【0013】
ところで、上記印刷配線基板7上の上記アンテナエレメント8と対向する位置には、磁性部材1が介在して配置されている。磁性部材1は、絶縁マトリクス基材に磁性ナノ粒子を三次元状に分散して配置したナノグラニュラ(nanogranular)構造で、板状に成型されている。
【0014】
絶縁マトリクス基材としては、例えばゴムや絶縁性樹脂、絶縁性セラミックが使用される。磁性ナノ粒子としては強磁性を有する金属粒子が使用される。強磁性とは外部磁場が無くても磁気モーメントが規則的に配列して自発的に磁化を形成する性質のことであり、この性質を有する金属粒子には例えばCo、Fe、Niがある。このような構造を有する磁性部材1は、透磁率μが高くかつ低損失でしかも厚膜化が容易であるという特徴を有する。
また、上記磁性部材1と上記アンテナエレメント8との間には、図2に示すように空気層又は誘電体層が介在して設けられている。
【0015】
このように第1の実施形態であれば、アンテナエレメント8と印刷配線基板7の接地金属面との間では高透磁率の磁性部材1が介在配置され、さらに磁性部材1とアンテナエレメント8との間に空気層又は誘電体層が介在することにより、インピーダンスを高く保持することができる。
【0016】
例えば、いま図3(A),(B)に示すように、磁性部材1の縦横寸法を50×20mm、厚さを0.5mm、透磁率μ=40とすると共に、アンテナエレメント8として20mm長からなる2本の線を1mm間隔で配置したものを使用し、さらに磁性部材1とアンテナエレメント8との間に0.5mmの空気層又は誘電体層を介在させた場合を仮定する。そして、この条件の下で1GHz〜4GHzの範囲で無線周波数を変化させてインピーダンスを解析すると、図4の一点鎖線に示すインピーダンス特性が得られる。この特性から明らかなように、インピーダンスは共振周波数においても例えば17Ωと高い値を保持することができる。ちなみに、0.1mm厚の磁性材料を使用した場合には図4の破線に示すインピーダンス特性が得られ、また磁性部材1を介在配置しない場合には図4の実線に示すインピーダンス特性が得られる。これらの特性の比較から明らかなように、この発明に係わる磁性部材1を使用することでインピーダンスを高く保持することができる。
【0017】
したがって、印刷配線基板7の接地金属面においては、イメージ電流(図5に示すようにアンテナエレメント8に流れるアンテナ電流IA と同振幅で逆位相の電流)は流れ難くなる。また、印刷配線基板7上で電子部品等から発生される雑音がアンテナエレメント8のアンテナ電流に重畳される不具合も低減される。
【0018】
すなわち、この発明に係わる磁性部材1により、アンテナエレメント8と印刷配線基板7の接地金属面との間では高いアイソレーション効果を発揮することが可能となり、これによりアンテナ放射特性を高めることが可能となる。図6は、図5に示したアンテナ装置による磁界の強度分布を模式的に示したもので、濃度が高いほど磁界が強いことを示している。なお、図6はアンテナエレメント8の長手方向から見たものである。
【0019】
ちなみに、図7に示すように磁性部材1を介在配置せずに印刷配線基板7とアンテナエレメント8とを対向は位置させた構造では、印刷配線基板7の接地金属面にイメージ電流IB が流れ、この電流がアンテナ電流IA を打ち消すように作用する。このため、アンテナの放射特性を表す磁界の強度分布は図8に示すように全体的に弱いものとなり、この結果アンテナ放射効率は低下する。
【0020】
また、アンテナエレメント8と印刷配線基板7の接地金属面との間のインピーダンスを高く設定できることから、アンテナエレメント8と印刷配線基板7との間の対向間隔を小さくすることが可能となる。このため、アンテナ装置を薄型化することができ、これにより移動通信端末の筐体内におけるアンテナ装置の収容スペースを減らしてその分移動通信端末の小型化を図ることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
この発明に係わるアンテナ装置の第2の実施形態は、ダイポールアンテナのエレメントと印刷配線基板との間に磁性部材を介在配置し、かつ磁性部材と印刷配線基板との間に空気層又は誘電体層を介在させたものである。
【0022】
図9は、この発明の第2の実施形態に係わるアンテナ装置の構造を示す断面図である。印刷配線板7の接地金属面とダイポールアンテナのエレメント8との間には、当該アンテナエレメント8と接する状態に磁性部材1が介在配置されている。また、磁性部材1と印刷配線基板7との間には空気層又は誘電体層が介在させてある。なお、アンテナエレメント8、印刷配線基板7及び磁性部材1それぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一なので、ここでの説明は省略する。
【0023】
したがって第2の実施形態によれば、アンテナエレメント8と印刷配線基板7の接地金属面との間では高透磁率の磁性部材1が介在配置され、さらに磁性部材1と印刷配線基板7との間に空気層又は誘電体層が介在することにより、インピーダンスを高く保持することができる。例えば、磁性部材1の透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、さらに磁性部材1と印刷配線基板7との間に0.5mmの空気層又は誘電体層を介在させた構成において、1GHz〜4GHzの範囲で無線周波数を変化させてインピーダンスを解析すると、図10の破線に示すインピーダンス特性が得られる。この特性から明らかなように、この実施形態の構成においてもインピーダンスを高い値に設定することができる。
【0024】
したがって、前記第1の実施形態と同様に、印刷配線基板7の接地金属面におけるイメージ電流は小さく抑えられ、また印刷配線基板7上で電子部品等から発生される雑音がアンテナエレメント8のアンテナ電流に重畳される不具合も低減される。さらに、アンテナエレメント8と印刷配線基板7の接地金属面との間のインピーダンスを高く設定できることから、アンテナエレメント8と印刷配線基板7との間の対向間隔を小さくすることが可能となる。このため、アンテナ装置を薄型化することができ、これにより移動通信端末の筐体内におけるアンテナ装置の収容スペースを減らしてその分移動通信端末の小型化を図ることができる。
【0025】
(第3の実施形態)
この発明に係わるアンテナ装置の第3の実施形態は、ダイポールアンテナのエレメントと印刷配線基板との間に磁性部材を介在配置し、かつ磁性部材と印刷配線基板との間及び磁性部材とアンテナエレメントとの間にそれぞれ空気層又は誘電体層を介在させたものである。
【0026】
図11は、この発明の第3の実施形態に係わるアンテナ装置の構造を示す断面図である。印刷配線板7の接地金属面とダイポールアンテナのエレメント8との間には、磁性部材1が介在配置されている。また、この磁性部材1と印刷配線基板7との間及び磁性部材1とアンテナエレメント8との間にはそれぞれ空気層又は誘電体層が介在させてある。なお、アンテナエレメント8、印刷配線基板7及び磁性部材1それぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一なので、ここでの説明は省略する。
【0027】
したがって第3の実施形態によれば、アンテナエレメント8と印刷配線基板7の接地金属面との間には高透磁率の磁性部材1が介在配置され、さらに磁性部材1と印刷配線基板7との間及び磁性部材1とアンテナエレメント8との間にはそれぞれに空気層又は誘電体層が介在することにより、インピーダンスを高く保持することができる。例えば、前記第1及び第2の実施形態と同様に、磁性部材1の透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、さらに磁性部材1と印刷配線基板7との間及び磁性部材1とアンテナエレメント8との間にそれぞれ0.5mmの空気層又は誘電体層を介在させた場合のインピーダンス特性は図12の破線に示すようになる。この特性から明らかなように、この実施形態においてもインピーダンスを高い値に設定することができる。
【0028】
(第4の実施形態)
この発明の第4の実施形態は、印刷配線基板の接地金属面とダイポールアンテナのエレメントとの間に磁性部材を介在配置する際に、磁性部材を上記アンテナエレメントの両先端部を除く給電部及び中間部に対向するように配置したものである。
【0029】
図13はその構成を示す平面図である。同図に示すように、印刷配線基板7の接地金属面上には、ダイポールアンテナのエレメント8の両先端部を除く給電部及び中間部に対向するように幅の広い磁性部材1aが配置されている。なお、上記アンテナエレメント8、印刷配線基板7及び磁性部材1aそれぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一である。
【0030】
このような構成であるから、アンテナエレメント8の両先端部を除く給電部及び中間部と印刷配線基板7の接地金属面との間に介在配置された高透磁率の磁性部材1aの作用により、インピーダンスを高く保持することができる。例えば、磁性部材1aの透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、幅長を29mmとした場合のインピーダンス特性は、図14の破線に示すようになる。この特性から明らかなように、この実施形態においてもインピーダンスを高い値に設定することができる。
【0031】
(第5の実施形態)
この発明の第5の実施形態は、印刷配線基板の接地金属面とダイポールアンテナのエレメントとの間に磁性部材を介在配置する際に、磁性部材をアンテナエレメントの給電部を含むその近傍のみに対向するように配置したものである。
【0032】
図15はその構成を示す平面図である。同図に示すように、印刷配線基板7の接地金属面上には、アンテナエレメント8の給電部9を含むその近傍と対向するように磁性部材1bが配置されている。なお、アンテナエレメント8、印刷配線基板7及び磁性部材1bそれぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一である。
【0033】
このような構成であるから、アンテナエレメント8の給電部9を含むその近傍と印刷配線基板7の接地金属面との間に介在配置された高透磁率の磁性部材1bの作用により、インピーダンスを高く保持することができる。例えば、磁性部材1bの透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、かつ幅長を11mmとした場合のインピーダンス特性は、図16の破線に示すようになる。このインピーダンス特性から明らかなように、磁性部材1bは少なくともアンテナエレメント8の給電部9を含むその近傍付近に対向配置すればよいことになる。このようにすると、磁性部材1bのサイズを小型化することができ、これによりコストダウンを図ることができる。
【0034】
(第6の実施形態)
この発明の第6の実施形態は、印刷配線基板の接地金属面とダイポールアンテナのエレメントとの間に磁性部材を介在配置する際に、磁性部材をアンテナエレメントの給電部付近のみに限定して対向配置したものである。
【0035】
図17はその構成を示す平面図である。同図に示すように、印刷配線基板7の接地金属面上には、アンテナエレメント8の給電部9付近のみに限定して対向するように帯状の磁性部材1cが配置されている。なお、アンテナエレメント8、印刷配線基板7及び磁性部材1cそれぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一である。
【0036】
このような構成においても、磁性部材を使用しない従来に比べてインピーダンスを高く設定することができる。例えば、磁性部材1cの透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、かつ幅長を3mmとした場合のインピーダンス特性は、図18の破線に示すようになる。この特性に示すように第6の実施形態では、前記第5の実施形態に比べインピーダンスの値は低下するものの、磁性部材を介在配置しない場合(図4の実線)に比べれば明らかに改善される。すなわち、第6の実施形態によれば、サイズがきわめて小さい磁性部材1cを設けるだけで、インピーダンス特性を改善することができる。
【0037】
(第7の実施形態)
この発明の第7の実施形態は、印刷配線基板の接地金属面とダイポールアンテナのエレメントとの間に磁性部材を介在配置する際に、磁性部材を上記ダイポールアンテナを構成する一対のエレメントの中間部のみと対向するようにそれぞれ配置したものである。
【0038】
図19はその構成を示す平面図である。同図に示すように、印刷配線基板7の接地金属面上には、ダイポールアンテナを構成する一対のエレメント8,8の中間部のみと対向するように磁性部材1d,1dがそれぞれ配置されている。なお、アンテナエレメント8,8、印刷配線基板7及び磁性部材1d,1dそれぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一である。
【0039】
このように給電部9を除いて磁性部材1d,1dを設けた場合でも、インピーダンスを十分に高く保持することができる。例えば、透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、かつ幅長を4mmとした磁性部材1d,1dを3mmの間隔を隔てて配置した場合のインピーダンス特性は、図20の破線に示すようになる。すなわち、アンテナエレメント8の給電部9を含む範囲に磁性部材を対向配置する代わりに、ダイポールアンテナを構成する一対のエレメント8,8の中間部のみに磁性部材1d,1dを対向配置することによっても、同等の作用効果を奏することができる。
【0040】
(第8の実施形態)
この発明の第8の実施形態は、印刷配線基板の接地金属面とダイポールアンテナのエレメントとの間に磁性部材を介在配置する際に、幅が狭い帯状の磁性部材を、上記ダイポールアンテナを構成する一対のエレメントの各中間部分のうち先端部に近い部位と対向するようにそれぞれ配置したものである。
【0041】
図21はその構成を示す平面図である。同図に示すように、印刷配線基板7の接地金属面上には、ダイポールアンテナを構成する一対のエレメント8,8の中間部分のうち先端部に近い部分と対向するように、幅が狭い帯状の磁性部材1e,1eがそれぞれ配置されている。なお、アンテナエレメント8,8、印刷配線基板7及び磁性部材1e,1eそれぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一である。
【0042】
このような磁性部材1e,1eを設けた場合でも、前述した第7の実施形態に比べると若干低下するものの、必要十分なインピーダンスを保持することができる。例えば、透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、かつ幅長を3mmとした磁性部材1e,1eを11mmの間隔を隔てて配置した場合のインピーダンス特性は、図22の破線に示すようになる。すなわち、磁性部材1e,1eをアンテナエレメント8,8に対向配置させることで、その配置位置に関係なくインピーダンスの改善効果が得られる。
【0043】
(第9の実施形態)
この発明の第9の実施形態は、印刷配線基板の接地金属面とダイポールアンテナのエレメントとの間に磁性部材を介在配置する際に、幅が狭い帯状の磁性部材を、ダイポールアンテナを構成する一対のエレメントの中間部分のうち給電部に近い部位と対向するようにそれぞれ配置したものである。
【0044】
図23はその構成を示す平面図である。同図に示すように、印刷配線基板7の接地金属面上には、ダイポールアンテナを構成する一対のエレメント8,8の中間部分のうち給電部9に近い部分と対向するように、幅が狭いストライプ状の磁性部材1f,1fがそれぞれ配置されている。なお、アンテナエレメント8,8、印刷配線基板7及び磁性部材1f,1fそれぞれの構成は、第1の実施形態で述べた構成と同一である。
【0045】
このような磁性部材1f,1fを設けた場合でも、磁性部材を設けない場合に比べてインピーダンスを高く設定することができる。例えば、透磁率μを40とすると共に厚さを0.5mmとし、かつ幅長を2mmとした磁性部材1f,1fを3mmの間隔を隔てて配置した場合のインピーダンス特性は、図24の破線に示すようになる。すなわち、前記第8の実施形態と同様に、対向位置及び幅長に関係なく磁性部材1f,1fをアンテナエレメント8,8に対向配置させることで、インピーダンスの改善効果が得られる。
【0046】
(第10の実施形態)
この発明の第10の実施形態は、磁性部材を、複数の磁性体板を誘電体層を介して積層した構造とし、この磁性部材を印刷配線基板とダイポールアンテナのエレメントとの間に介在配置したものである。また、上記複数の磁性体板はアンテナエレメントの給電部を含む中間部分のみに対向するサイズに設定している。
【0047】
図25はその構成を示す断面図である。同図に示すように、印刷配線基板7とダイポールアンテナのエレメント8との間には磁性部材1Aが介在配置してある。この磁性部材1Aは、アンテナエレメント8の給電部9を含む中間部分のみに対向するサイズを有する複数の磁性体板1g,1g,…を、誘電体層1hを介して相互に平行に積層したものである。なお、磁性体板1g,1g,…は、図27に示すように複数の板材を個別に製作してもよいが、その他に図28に示すように1枚の磁性体板1iを蛇腹状に折曲することにより製作してもよい。また、誘電体層1hの代わりに所定の厚さの空気層を介挿させるようにしてもよい。
【0048】
このような構造の磁性部材1Aを使用することによって、インピーダンスを高く設定することができ、これにより印刷配線基板7の接地金属面におけるイメージ電流を低減してアンテナの放射効率を高めることができる。また、厚さの薄い磁性体板1g,1g,…を使用することができるので、磁性部材を簡単かつ安価に製作することが可能となる。
【0049】
なお、この実施形態ではダイポールアンテナを例にとって説明した。しかしそれに限らず、モノポールアンテナのエレメントと印刷配線基板との間に複数層の磁性体板を介在配置するようにしてもよい。また、この場合においても複数層の磁性体板間には誘電体層(空気層も含む)が介挿される。
【0050】
(第11の実施形態)
この発明の第11の実施形態は、上記第10の実施形態と同様に、複数の磁性体板を誘電体層を介して積層した磁性部材を製作し、この磁性部材を印刷配線基板とダイポールアンテナのエレメントとの間に介在配置したものである。上記複数の磁性体板のサイズは、アンテナエレメントの全体よりも大きいサイズに設定されている。
【0051】
図26はその構成を示す断面図である。同図に示すように、印刷配線基板7とダイポールアンテナのエレメント8との間には磁性部材1Bが介在配置されている。この磁性部材1Bは、アンテナエレメント8の全長より長い複数の磁性体板1i,1i,…を、誘電体層1j,1jを介して相互に平行に積層したものである。なお、この実施形態においても、磁性体板1i,1i,…は、図27に示すように複数の個別の板材により構成してもよい、また図28に示すように1枚の磁性体板1iを蛇腹状に折曲することにより製作してもよい。さらに、誘電体層1jの代わりに所定の厚さの空気層を介挿させるようにしてもよい。
【0052】
このような構造の磁性部材1Bを使用することにより、上記第10の実施形態と同様にインピーダンスを高く設定することができ、これにより印刷配線基板7の接地金属面におけるイメージ電流を低減してアンテナの放射効率を高めることができる。また、厚さの薄い磁性体板1i,1i,…を使用することができるので、磁性部材を簡単かつ安価に製作することが可能となる。図48(a),(b)はそれぞれ0.1mm厚の磁性体板を3枚積層して介在配置した場合のスミスチャート及びインピーダンスの周波数特性を表す図である。同図に示すように、0.1mm厚の磁性体板を3枚積層すると、先に図4に示した0.5mm厚の磁性体を1枚配置する場合と同程度のインピーダンス特性を得ることができる。
【0053】
なお、この実施形態ではダイポールアンテナを例にとって説明した。しかし、それに限らず、モノポールアンテナのエレメントと印刷配線基板との間に複数層の磁性体板を介在配置するようにしてもよい。また、この場合においても複数層の磁性体板間には誘電体層(空気層も含む)が介挿される。
【0054】
(第12の実施形態)
この発明の第12の実施形態は、モノポールアンテナと、このモノポールアンテナに対し接地電位を与える金属面を有する印刷配線基板との間に、磁性部材を介在配置したものである。
【0055】
図29はこの第12の実施形態に係わるアンテナ装置の概略構成を示す断面図である。接地金属面を有する印刷配線基板とモノポールアンテナ8Aとの間には磁性部材1Cが介在配置されている。磁性部材1Cは、前記各実施形態で述べた磁性部材と同様に、絶縁マトリクス基材に磁性ナノ粒子を三次元状に分散して配置したナノグラニュラ(nanogranular)構造からなる。
このように構成されたアンテナ装置であれば、モノポールアンテナ1Cの接地金属面上の電流分布を磁性部材1Cにより制御することが可能となる。
【0056】
(第13の実施形態)
この発明の第13の実施形態は、モノポールアンテナのエレメントと印刷配線基板との間に磁性部材を介在設置する際に、上記モノポールアンテナのエレメントの給電端側に磁性部材を配置し、かつ上記モノポールアンテナのエレメントの先端側には誘電部材を配置したものである。
【0057】
図49はこの第13の実施形態に係わるアンテナ装置の概略構成を示す斜視図、図50はその平面図、図51は図49のB−B矢視断面図である。
同図において、印刷配線基板7とモノポールアンテナ8Aのエレメントとの間において、モノポールアンテナ8Aのエレメントの給電部9A側には磁性体部材1Dが介在配置され、またモノポールアンテナ8Aのエレメントの先端部側には誘電体部材1Kが介在配置される。磁性体部材1Cは、前記各実施形態で述べた磁性体部材と同様に、絶縁マトリクス基材に磁性ナノ粒子を三次元状に分散して配置したナノグラニュラ(nanogranular)構造からなり、これを板状に成形したものである。また、誘電体部材1Kは樹脂等の絶縁部材からなる。
【0058】
なお、上記磁性体部材1D及び誘電体部材1Kは、印刷配線基板7とモノポールアンテナ8Aのエレメントとの間において、これらの両方に同時に当接するように厚さ寸法及び形状が定められており、これによりモノポールアンテナ8Aのエレメントを印刷配線基板7上に構造的に安定に保持するアンテナ保持部材としても機能するようになっている。
【0059】
このような構成であるから、モノポールアンテナ8Aのエレメントと印刷配線基板7との間に磁性体部材1Dを介在設置したことにより、モノポールアンテナ8Aのエレメントと印刷配線基板7の接地面との間隔を狭くしても、共振周波数を低く設定できると共にインピーダンスを高く保持することができる。この結果、アンテナ装置の薄型化と小型化が可能となって、移動通信端末の筐体内におけるアンテナ装置の収容スペースを減らしてその分移動通信端末の小型化を図ることができる。
【0060】
しかも、モノポールアンテナ8Aのエレメントの、電流値が大きく電圧値が低い給電部9A側に磁性体部材1Dが配置され、一方電圧値が高く電流値の小さい先端側に誘電体部材1Kが配置される。したがって、モノポールアンテナ8Aのインピーダンスの低下を効果的に抑えつつ、磁性体部材1Dの設置面積を減らすことができる。
【0061】
さらに、上記磁性体部材1D及び誘電体部材1Kの厚さ寸法を、印刷配線基板7とモノポールアンテナ8Aのエレメントとの間の間隔と等しくなるように予め定めたことにより、モノポールアンテナ8Aのエレメントを印刷配線基板7上に構造的に安定に保持することができる。
【0062】
(第14の実施形態)
この発明の第14の実施形態は、ダイポールアンテナのエレメントと印刷配線基板との間に磁性部材を介在設置する際に、上記ダイポールアンテナのエレメントの給電部を中心とするアンテナ中央部分に磁性体部材を配置し、かつ上記ダイポールアンテナのエレメントの両先端部にはそれぞれ誘電体部材を配置したものである。
【0063】
図52はこの第14の実施形態に係わるアンテナ装置の概略構成を示す斜視図、図53はその平面図、図54は図52のC−C矢視断面図である。
同図において、印刷配線基板7とダイポールアンテナ8のエレメントとの間において、ダイポールアンテナ8のエレメントの給電部9を含むアンテナ中央部分と対向する部位には磁性体部材1Eが介在配置され、またダイポールアンテナ8のエレメントの両先端部側にはそれぞれ誘電体部材1L,1Lが介在配置される。磁性体部材1Eは、前記各実施形態で述べた磁性体部材と同様に、絶縁マトリクス基材に磁性ナノ粒子を三次元状に分散して配置したナノグラニュラ(nanogranular)構造で、これを板状に成形したものである。一方、誘電体部材1L,1Lは樹脂等の絶縁部材からなる。
【0064】
なお、上記磁性体部材1E及び誘電体部材1L,1Lは、印刷配線基板7とダイポールアンテナ8のエレメントとの間において、これらの両方に同時に当接するように厚さ寸法及び形状が定められており、これによりダイポールアンテナ8のエレメントを印刷配線基板7上に構造的に安定に保持するアンテナ保持部材としても機能するようになっている。
【0065】
このような構成であるから、ダイポールアンテナ8のエレメントと印刷配線基板7との間に磁性体部材1Eを介在設置したことにより、ダイポールアンテナ8のエレメントと印刷配線基板7の接地面との間隔を狭くしても、共振周波数を低く設定できると共にインピーダンスを高く保持することができる。この結果、アンテナ放射特性を維持した上で、アンテナ装置の薄型化及び小型化が可能となり、これにより移動通信端末の筐体内におけるアンテナ装置の収容スペースを減らしてその分移動通信端末の小型化を図ることができる。
【0066】
また、ダイポールアンテナ8のエレメントの、電流値が大きく電圧値が低い給電部9を含むアンテナ中央部位に磁性体部材1Eが配置され、一方電圧値が高く電流値の小さい両先端部側には誘電体部材1L,1Lが配置される。したがって、ダイポールアンテナ8のインピーダンスの低下を効果的に抑えつつ、磁性体部材1Eの設置面積を減らすことができる。
【0067】
さらに、上記磁性体部材1E及び誘電体部材1L,1Lの厚さ寸法を、印刷配線基板7とダイポールアンテナ8のエレメントとの間の間隔と等しくなるように予め定めたことにより、ダイポールアンテナ8のエレメントを印刷配線基板7上に構造的に安定に保持することができる。
【0068】
なお、上記第13及び第14の各実施形態において、磁性体材料1D,1Eの設置面積(サイズ)をそれぞれ、例えば図55及び図56の磁性体材料1D′,1E′に示すように誘電体材料1K,1Lの設置面積より大きく設定するとよい。このようにすると、インピーダンスをより高く保持することができ、これによりアンテナ装置のさらなる薄型化及び移動通信端末の小型化が可能となる。
【0069】
また、上記磁性体材料1D,1Eは1層に限らず、例えば図25に示したように複数層を積層したものとしてもよい。このようにすると、厚膜構造の磁性体材料1D,1Eを用いることなく厚膜構造の磁性体材料を用いた場合と同等のインピーダンス抑圧効果を得ることができる。
【0070】
さらに、磁性体材料は、例えば図27及び図58に示すように複数枚の磁性体板1F,1F,…、1G,1G,…を所定の間隔で印刷配線基板7上に立設したものとしてもよい。また、上記磁性体板1F,1F,…、1G,1G,…間にはそれぞれ、例えば図59及び図60に示すように誘電体材料1M,1M,…、1N,1N,…を介在させるようにしてもよい。このようにすると、磁性体板1F,1F,…、1G,1G,…を誘電体材料1M,1M,…、1N,1N,…と一体化することができ、これにより製作の簡単化と構造の安定化を図ることができる。
【0071】
(第15の実施形態)
この発明の第15の実施形態は、印刷配線基板上に設置される折り返しアンテナの給電端に、高透磁率を有する磁性部材を設置したものである。
図61はこの第15の実施形態に係わるアンテナ装置の概略構成を示す斜視図、図62は図61のD−D矢視断面図である。同図において、印刷配線基板7上には、U型に折曲形成された折り返しアンテナ8Bが配置される。そして、この折り返しアンテナ8Bの給電端は印刷配線基板7に実装された給電回路(図示せず)に接続され、短絡端は印刷配線基板7の接地端に接続される。
【0072】
また、折り返しアンテナ8Bの上記給電端部には、磁性体部材1Hが設けられる。この磁性体部材1Hは立方体の一つの対向面に貫通孔を設けたもので、この貫通孔に上記折り返しアンテナ8Bの給電端部が挿入される。上記磁性体部材1Hのサイズは、折り返しアンテナ8Bの径が2mmのとき、例えば3mm×3mm×3mmに設定される。すなわち、折り返しアンテナ8Bの上記給電端部は、その周面を厚さ1mmの磁性体部材1Hで包囲された状態に設定される。
【0073】
このような構成であるから、折り返しアンテナ8Bの給電端部にその周面を包囲するように磁性体部材1Hを設けたことによって、折り返しアンテナ8Bを印刷配線基板7に近接させて配置した場合でも、アンテナの共振周波数を低くしかつ共振周波数におけるアンテナのインピーダンスを高く保持することができる。この結果、アンテナ装置の薄型化及び小型化が可能となって、移動通信端末の筐体内におけるアンテナ装置の収容スペースを減らしてその分移動通信端末の小型化を図ることができる。
【0074】
図63(a),(b)はそれぞれ、折り返しアンテナ8Bの給電端部周面に厚さが1mmの磁性体部材1Hを長さ3mmにわたって設けた場合のスミスチャート及びインピーダンスの周波数特性を表す図である。同図から明らかなように、共振周波数は低く設定され、かつこの共振周波数におけるインピーダンスZ(f) は高く保持される。ちなみに、上記図61に示したアンテナと同一構造の折り返しアンテナ8Bにおいて磁性体部材1Hを設けない場合には、インピーダンス特性及び周波数特性はそれぞれ図64(a),(b)に示すようになる。すなわち、共振周波数は高くなり、かつインピーダンスは低くなる。
【0075】
また、この実施形態によれば、折り返しアンテナ8Bの、給電端部のみに磁性体部材1Hを配置するようにしているので、アンテナエレメント全体に磁性体部材を配置する場合に比べ、アンテナ8BのインピーダンスZ(f) の低下を効果的に抑えつつ、磁性体部材1Hの設置面積を減らすことができる。
【0076】
なお、以上述べた第15の実施形態では、折り返しアンテナ8Bの給電端部周面に磁性体部材1Hを設けた場合を例にとって説明したが、折り返しアンテナ8Bの短絡端部周面に磁性体部材1Hを設けるようにしてもよい。このように構成しても、アンテナの共振周波数を低くしてアンテナの小型化が可能となる。また、短絡端部のみに磁性体部材を配置することで、アンテナエレメント全体に磁性体部材を配置する場合に比べ、磁性体部材1Hの使用量を減らすことができる。
【0077】
また、折り返しアンテナ8Bの給電端部周面に設ける磁性体部材1Hの厚さは、1mmに限らずそれより厚くしても或いは薄くしてもよく、また長さについても3mmより長くても或いは短くてもよい。図65(a),(b)に、磁性体部材1Hの厚さを変化させたときの共振周波数及びインピーダンスの変化の一例を示す。同図から明らかなように、磁性体部材1Hの厚さを厚くすればするほど共振周波数は低くなり、またインピーダンスは高くなる。なお、誘電体を使用した場合には、共振周波数及びインピーダンスに変化はない。
【0078】
さらに、アンテナ8Bの給電端部周面に対する磁性体部材1Hの設置方法については、立方体からなる磁性体部材の貫通孔にアンテナ8Bの給電端部を挿入する以外に、アンテナ8Bの給電端部周面に磁性体材料を塗布又は蒸着などの手段により形成する方法を採用してもよい。
【0079】
次に、以上述べた各実施形態で使用する磁性部材の構造とその製造方法を詳細に説明する。但し、図面は模式的なものであり、各材料層の厚みや磁性粒子の粒径などの比率などは現実のものとは異なる。
【0080】
先ず、本発明に用いられる構造の具体例1について説明する。この発明に係る磁性部材は、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の磁性金属(軟磁性金属)又はこれら磁性金属の合金などでなる複数の磁性粒子が、絶縁体層の表面で部分的に埋まるように析出された構造を有し、かつ磁性粒子の少なくとも一部(例えば、層表面で露出した表面領域)が、Al,AlN,SiO,Si,SiCの少なくとも一種を含有する保護膜で被覆された構造を有する。
【0081】
なお、上記の絶縁体層は、複数層でも単層でもよい。絶縁体層の絶縁抵抗の値としては、室温で1×10[Ω・cm]以上で、より好ましくは1×10[Ω・cm]以上であいることが好ましい。絶縁体層の材料としては、酸化物、窒化物などのセラミックスや、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチルテレフタレート(PET)、エポキシ系樹脂などの合成樹脂や、ガラスなどを用いることができるが、難還元性金属酸化物が含まれるセラミックス材料を用いることが望ましい。酸化物としては、組成の自由度から考慮すると、複合酸化物の固溶体が好ましく、特に全率固溶体が好ましい。また、難還元性金属酸化物を2種以上用いた場合、複合酸化物も2種以上形成されていてもよい。
【0082】
上記の難還元性金属酸化物とは、室温から1500℃の水素雰囲気下で、金属へ還元され難い金属酸化物を云う。このような金属酸化物は、水素雰囲気下に2時間放置したとしても金属が析出しない。具体的な難還元性金属酸化物としては、例えば、Ca,Al,Si,Mg,Zr,Ti,Hf、希土類元素、Ba,Sr,Znなどの酸化物を挙げることができる。本発明では、難還元性金属酸化物としては、上記の酸化物1種のみであってもよいし、これらの複数種を用いてもよい。
【0083】
また、磁性粒子が埋没する少なくとも一層の絶縁体層は、Mg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の、[a]難還元性金属酸化物を構成する[A]金属元素と、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の[B]磁性金属元素と、を構成元素として組み合わせた金属酸化物でなることが好ましい。加えて、磁性粒子が埋没する少なくとも一層の絶縁体層は、[A]金属元素及び[B]磁性金属元素以外にAl,Cr,Sc,Siから選ばれる少なくとも一種の[C]添加金属元素を、原子量比で0.01〜0.25%含有していることが好ましい。なお、[A]金属元素と[C]添加金属元素との組み合わせで選ばれる元素は互いに異なるものとする。
【0084】
そして、複数の磁性粒子同士は、絶縁体層の表面に沿って、所定の間隔で分散配置されている。これら磁性粒子を互いに挟み込んで接合する一対の絶縁体層の熱膨張係数は等しいことが望ましいが、一対の絶縁体層の一方を第1の絶縁体層とし、その熱膨張係数α1と、他方の第2の絶縁体層の熱膨張係数α2とが、80℃〜1500℃の範囲で、0.5<α1/α2<2の条件を満たすことが好ましい。
【0085】
また、上記した第1の絶縁体層と第2の絶縁体層との間に、熱膨張率のギャップを緩和するバッファ層としての第3の絶縁体層が形成されていることが好ましい。
【0086】
さらに、上記した第1の絶縁体層の比誘電率と第2の絶縁体層の比誘電率とが異なることが好ましい。そして、第1の絶縁体層及び第2の絶縁体層のうち少なくとも一層は、セラミックス層であることが好ましい。
【0087】
このセラミックス層は、Mg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の[A]金属元素の[a]難還元性金属酸化物、及びFe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の[B]磁性金属元素の[b]磁性金属酸化物から選ばれる少なくとも一種からなることが好ましい。加えて、このセラミックス層は、Al3、Sc3、Cr3、の中から選ばれる少なくとも一種からなる[D]金属酸化物を含むことが好ましい。そして、このセラミックス層は、Mg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の[A]金属元素の[a]難還元性金属酸化物を主成分とし、この[a]難還元性金属酸化物の価数よりも大きな価数を有する金属酸化物が添加されていることが好ましい。
【0088】
また、積層された複数の絶縁体層のうち少なくとも一層が、有機物層でなる構成を採用することもできる。この有機物層には、無機部材が混入されていたり、多孔質構造であってもよく、絶縁体層の特性をこのような構造により調整してもよい。
【0089】
この発明の磁性部材では、磁性粒子が互いの絶縁状態を維持しながら、絶縁体層の表面に沿って多数が均等に分散配置された状態で形成された異方構造を有している。
【0090】
〔磁性部材の第1の実施例:複数の絶縁体層が積層された構造〕
この発明の第1の実施例に係る磁性部材について、図30及び図31を用いて説明する。図30は第1の実施例に係る磁性部材の概略断面図、図31は磁性部材の要部拡大断面図である。本実施例では、絶縁体層が複数層の場合であり、例示的に4層の構造として説明する。
【0091】
(磁性部材の概略構成)
図30に示すように、磁性部材1は、複数層(例えば、本実施例では4層)の絶縁体層2,3,4,5が積層された構造を有する。絶縁体層2と絶縁体層3との積層界面、絶縁体層3と絶縁体層4との積層界面、及び絶縁体層4と絶縁体層5との積層界面のそれぞれには、複数の微細な磁性粒子6が均等に分散した配置されている。磁性粒子6は、これを挟む両方の絶縁体層(2,3,4,5)に共に埋没するように配置されている。図31に示すように、各磁性粒子6は、その表面が酸化物でなる保護膜6Aで被覆された構造となっている。なお、本実施例に係る磁性部材1は、製造過程では絶縁体層2,5の外側表面に磁性粒子6が存在するが、その後磁性粒子6が除去されたものである。
【0092】
(磁性粒子の成分)
磁性粒子6は、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の磁性金属(軟磁性金属)、若しくはこれら磁性金属の合金からなる粒子である。具体的には、この磁性粒子6は、Fe粒子,Ni粒子,Fe−Co粒子,Fe−Ni粒子,Co−Ni粒子,Fe−Co−Ni粒子のいずれかを基本として、第二成分としてAlもしくはSiを含有する。なお、この磁性粒子6は、後述する還元処理により析出したものである。
【0093】
特に、高い透磁率を実現するためには飽和磁化をできる限り上げる必要があるため、最も飽和磁化の高いFe−Co粒子を基本として、耐酸化性を付与するために他の元素、例えばNiなどを微量加えることが好ましい。第二成分として加えるAl,Siは、原子量比で50%以下の割合で含有し、かつ固溶することが望ましい。固溶する系としては、Fe−Al,Fe−Si,Co−Si,Ni−Si,Fe−Co−Al,Fe−Co−Si,Fe−Ni−Al,Fe−Ni−Si,Co−Ni−Si,Fe−Co−Ni−Al,Fe−Co−Ni−Siのいずれかを選択することができる。固溶するAl,Siの量としては粒子の飽和磁化をできる限り大きくするために少ない方がよいが、被覆される保護膜6Aとの密着性を良くするためには多い方がよい。すなわち、固溶するAl,Siの量は飽和磁化と保護膜6Aとの密着性のバランスによって決まり、原子量比で5〜10%の範囲が最も好ましい。また、透磁率の高周波特性を向上させるために、第三成分として、Mn,Cuなどの他の成分を微量含有してもよい。
【0094】
なお、磁性粒子としては、Fe粒子,Co粒子,Fe−Co合金粒子,Fe−Co−Ni合金粒子,Fe基合金粒子,Co基合金粒子の少なくとも一種が存在していればよく、これに他の非磁性金属元素が合金化していてもよいが、多過ぎると飽和磁化が下がり過ぎるため、高周波特性を考慮すると他の非磁性金属元素(Fe,Co以外の還元性金属)による合金化は10at%以下であることが好ましい。また、非磁性金属が組織中に単独で分散していてもよいが、その量は体積比で20%以下であることが好ましい。析出した微細結晶の耐酸化性の観点から、Fe基合金粒子はCoあるいはNiが一部含まれている方が好ましく、特に飽和磁化の観点からFe−Co基粒子が好ましい。
【0095】
(磁性粒子の粒径)
また、磁性粒子は高周波磁性部材を構成する結晶粒子の結晶粒子内又は結晶粒界の少なくとも一方に存在していることが好ましい。高周波磁性特性を向上させるためには、結晶粒子内及び結晶粒界の両方に磁性粒子を存在させることが好ましい。例えば、1GHz以上と周波数が高くなると磁性部材(磁性部品)には表皮効果(skin effect)の影響が大きくなるため、平均粒径の最大値は2000nm以下の磁性粒子が高周波の用途には好ましい。
【0096】
このような観点から、保護膜6Aで被覆された磁性粒子6の粒径は、1〜2000nmの範囲が好ましく、さらにアンテナ基板などの電子通信機器などに用いる場合には、1〜100nmの範囲にすることが好ましい。電子通信機器などに用いる場合に特に好ましい粒径の上限を100nmとする理由は、粒径が大き過ぎると渦電流損が発生するため、磁性部材としての特性を確保するには少なくとも100nm以下にする必要があるからである。加えて、粒径が大きいと単磁区構造よりも多磁区構造をとった方がエネルギ的に安定となるが、多磁区構造の透磁率の高周波特性は、単磁区構造の透磁率の高周波特性よりも悪くなってしまう。よって、磁性部材をアンテナ装置などのような高周波用磁性部品として使用する場合は、軟磁性金属粒子又は軟磁性金属の合金粒子を単磁区粒子として存在させることが重要である。単磁区構造を保つ限界粒径は、〜50nm程度であるため、粒径は50nm以下にする方がより望ましい。一方、粒径が小さ過ぎると、超常磁性が生じたりして飽和磁束密度が小さくなってしまう。以上のことを勘案すると、磁性粒子6の粒径を、1〜100nm、その中でも特に10〜50nmの範囲とすることが望ましい。
【0097】
(磁性粒子の結晶方位)
図30に示す磁性部材では、磁性粒子6の結晶方位は、これを挟み込んだ一対の、絶縁体層2と絶縁体層3、絶縁体層3と絶縁体層4、絶縁体層4と絶縁体層5のそれぞれの組の少なくとも一方の絶縁体層の結晶方位に対して、少なくとも2軸以上で揃っていることが好ましい。このように、少なくとも一方の絶縁体層の結晶方位に少なくとも2軸以上で揃っていることで、磁性粒子6が熱的に極めて安定な状態で層界面に存在することになり、後述するアンテナ装置に代表される高周波用磁性部品として適用した場合にも長時間使用することが可能となる。このため、磁性粒子6は全てが層界面において、絶縁体層2,3,4,5と格子の整合がとれ、かつ等しく配向した状態で存在することが望ましい。なお、磁性粒子6の埋没状態とは、単に磁性粒子6が絶縁体層の表面の窪みに配置されたものとは決定的に違い、TEM、回折像などで違いを判別することができる。
【0098】
(磁性粒子の分散状態)
磁性粒子6の分散状態は、絶縁体層同士の界面における場合と、絶縁体層の表面に磁性粒子が配置されている場合とにおいても、磁性粒子6同士が0〜5nmの間隔で離れて分散した状態であることが望ましい。その理由は、上述した保護膜6Aの膜厚範囲を規定した理由と同様に、磁性部材1の高抵抗を維持し、かつ磁性金属もしくは磁性金属合金の体積百分率の割合をできるだけ上げ、飽和磁束密度を上げるのに最適な粒子間隔が0〜5nmの範囲にあるためである。
【0099】
(保護膜の成分)
保護膜6Aの元素成分は、酸素(O)を除く元素の中でAlとSiの元素合計量が原子量比で50%以上の組成であり、100%のAl,AlN,SiO,Si,SiCのいずれかで構成されていることが最も好ましい。しかしながら、保護膜6Aは、FeO、Fe、Fe、NiO、CoO、CoやFeAl、CoAl、FeAlOなどの化合物で構成されていてもよい。
【0100】
(保護膜の膜厚)
保護膜6Aの膜厚は、磁性粒子6の粒径に拘わらず、1〜5nmであることが望ましい。その理由は、磁性部材1の高抵抗を維持し、かつ磁性粒子6の磁性部材1全体に対する体積百分率の割合をできるだけ上げ、飽和磁束密度を上げるのに最適な厚さが1〜5nmの範囲にあるためである。しかしながら、酸化によって形成された保護膜は、その厚みは理想的には原子数層程度であるが、磁性が失われない限りにおいて、保護膜の厚みは特に限定されるものではない。
【0101】
(絶縁体層の成分)
本実施例おいて、絶縁体層2,3,4,5は、[a]難還元性金属酸化物の[A]金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素と、鉄(Fe),ニッケル(Ni),コバルト(Co)から選ばれる少なくとも一種の[B]磁性金属(軟磁性金属)元素を組み合わせた酸化物絶縁体で形成されている。
【0102】
[a]難還元性金属酸化物とは、上述したように、室温から1500℃の水素雰囲気下で、還元され難い金属酸化物のことを意味する。この難還元性金属酸化物を構成する[A]金属元素としては、Mg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、及び希土類元素などが挙げられ、一種で使用してもよいし、複数種で使用してもよい。難還元性金属酸化物の金属元素と磁性金属又はそれらの合金の組み合わせとしては、多数の組み合わせが考えられるが、その中でも、固溶体を形成する系と化合物相を形成する系の二つが望ましい。
【0103】
固溶体を形成する系としては、組成の自由度から考えると、特に全率固溶系が望ましい。この全率固溶系としは、FeO−MgO,CoO−MgO,NiO−MgO,Fe−Crなどが考えられる。
一方、化合物相としては、FeAl2O4,Fe2SiO4,FeTiO3,Mgフェライト,Znフェライト,Mnフェライト,Caフェライト,Srフェライト,希土類フェライトなど多数の存在が考えられる。
【0104】
後述する製造方法で説明するように、これらの酸化物でなる絶縁体層を還元処理することにより、還元されやすい磁性金属(還元性磁性金属)又はそれらの合金の粒子でなる磁性粒子6が絶縁体層の表面(界面)に選択的に分散して析出し、かつ絶縁体層に部分的に埋め込まれた構造を得ることができる。このとき、磁性粒子6は、主に、絶縁体層の表面、絶縁体層同士の界面、並びに粒界に析出して、粒内にはほとんど析出しない。このため、磁性部材1は、絶縁体層の表面や界面に分散して析出した多数の磁性粒子6が単層状に広がる異方構造となる。
【0105】
また、化合物相に元素置換を施したり、複数の固溶体を用いたりすることによって、絶縁体層中における磁性粒子の析出サイトを制御することができ、磁性粒子同士の間隔を自由自在に制御することができる。すなわち、磁性金属やその合金でなる磁性粒子6の絶縁体層2,3,4,5の界面や、単層の絶縁体層の場合はその表面への分散析出を、粒径1〜100nmの範囲、粒子間隔1〜10nmの範囲の中で制御することが可能となる。
【0106】
さらに、絶縁体層は、[a]難還元性金属酸化物を構成する[A]金属元素及び[B]磁性金属元素以外に、Al,Cr,Sc,Siから選ばれる少なくとも一種の[C]添加金属元素を原子量比で0.01〜0.25%含有してもよい。しかし、この組成において、[a]難還元性金属酸化物を構成する[A]金属元素と、[C]添加金属元素から選ばれる元素同士は同一の元素が組み合わせることはない。すなわち、元素同士が異なる組み合わせとなることが好ましい。このように[C]添加金属元素を含有させることは、固溶体を形成する系において行うことが望ましく、例えば、2価の酸化物固溶系において3価以上の酸化物を固溶させることによって、原子価効果により、[b]磁性金属酸化物又は磁性合金酸化物の還元速度を大きくすることができる。すなわち、添加物を加えることにより、[b]磁性金属酸化物又は磁性合金酸化物の還元が促進され、微細な磁性粒子を高密度で析出させることが可能となる。なお、この還元処理工程については、後述する製造方法の説明の中で述べる。
【0107】
(磁性部材の特性及び用途)
上述のように、本実施例に係る磁性部材1は、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の磁性金属又は磁性合金の磁性粒子6が、接合する絶縁体層同士の界面に共に埋没し、かつ磁性粒子6の表面全体を、Al,AlN,SiO,Si,SiCの少なくとも一種を含有する保護膜6Aで被覆された構造を有する。そして、上述のように、磁性粒子6の分散状態や保護膜6Aの膜厚などの条件を設定したことにより、磁性部材1は100MHzから数GHz、さらには10GHzの高周波域においても優れた特性を有する。そのため、この磁性部材1は、例えば、アンテナ用基板、トランス用磁芯、磁気ヘッドコア、インダクタ、チョークコイル、フィルタや電波吸収体などの100MHz、さらには1GHz以上の高周波域で使用される高周波用磁性部品の優れた部材として用いることができる。
【0108】
例えば、アンテナ装置のアンテナ基板にこの磁性部材1を適用する場合は、積層された絶縁体層の材料の誘電率が傾斜していることが好ましい。本実施例においては、4層の絶縁体層2,3,4,5のうち絶縁体層5の露出した側の表面上にアンテナを形成する場合は、例えば絶縁体層5をマグネシア(MgO)で形成し、その下層の絶縁体層4をアルミナ(Al)で形成して誘電率を傾斜させることができる。このように絶縁体層の誘電率を傾斜させる理由は、アンテナを搭載する電子通信機器に特有の最適値があり、誘電率に傾斜をつけることでアンテナ特性の向上を期待できるからである。
【0109】
(第1の実施例の変形)
なお、本実施例に係る磁性部材1は、磁性粒子6の表面に保護膜6Aが形成された構造であるが、保護膜6Aが形成されていない状態の構造の磁性部材、すなわち、AlとSiとのうち少なくともいずれかの元素が固溶した複数の磁性粒子が絶縁体層の層表面より部分的に埋まるように配置された構造の磁性部材(磁性部材前駆体)、を高周波用磁性部品に適用することも可能である。しかしながら、後述する製造方法で説明するように、酸化処理を施すことにより、固溶しているAlやSiが磁性粒子の表面で酸化されたAl,AlN,SiO,Si,SiCなどの保護膜6Aを備える構造であることが好ましい。
【0110】
(磁性部材前駆体)
ここで、磁性部材の製造工程において前段階で作製される磁性部材前駆体の構成について図32〜図34を用いて説明する。上述の第1の実施例では、絶縁体層が4層である場合を例示したが、ここでは説明を簡略化するため、2層構造の場合と単層構造の場合に分けて説明する。なお、磁性部材前駆体は、作製する磁性部材に要求される性能、寸法などに応じて適宜の層数とするものであり、上述した第1の実施例に係る磁性部材(4層構造)のように、3層以上の絶縁体層を積層した構造としても勿論よい。
【0111】
図32は2層構造の磁性部材前駆体の斜視図、図33は図32に示した磁性部材前駆体を厚さ方向に切断した状態を示す断面図である。
【0112】
この磁性部材前駆体10は、2層の絶縁体層11,12が接合し、これら絶縁体層11,12の積層界面に、磁性粒子13が両方の絶縁体層11,12に共に埋没するように配置されている。
【0113】
磁性粒子13は、上述した第1の実施例に係る磁性部材1の磁性粒子6と同様の構成である。すなわち、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の磁性金属若しくはこれら磁性金属の合金でなる。磁性粒子13は、還元処理により析出したものである。
【0114】
この磁性粒子13は、酸化処理することにより形成される酸化物でなる保護膜の構成元素となる、Al,Siが固溶している。この固溶した元素の原子量比は、50%以下の割合である。固溶する系としては、Fe−Al,Fe−Si,Co−Si,Ni−Si,Fe−Co−Al,Fe−Co−Si,Fe−Ni−Al,Fe−Ni−Si,Co−Ni−Si,Fe−Co−Ni−Al,Fe−Co−Ni−Siのいずれかを選択することができる。固溶するAl,Siの量としては粒子の飽和磁化をできる限り大きくするために少ない方がよいが、被覆される保護膜6Aとの密着性を良くするためには多い方がよい。すなわち、固溶するAl,Siの量は飽和磁化と、酸化処理により形成される予定の保護膜との密着性のバランスによって決まり、原子量比で5〜10%の範囲が最も好ましい。また、透磁率の高周波特性を向上させるために、第三成分として、Mn,Cuなどの他の成分を微量含有してもよい。
【0115】
また、この磁性部材前駆体10においても、上述した第1の実施例の場合と同様に、磁性粒子13の結晶格子の結晶方位は、これを挟み込んだ一対の、絶縁体層11,12の少なくとも一方の絶縁体層の結晶方位に対して、少なくとも2軸以上で揃っている状態であることが好ましい。このように結晶方位を揃えることで、磁性粒子6が熱的に極めて安定な状態で層界面に存在することになる。このため、後工程で酸化処理、熱処理された場合にも磁性粒子13が安定に存在し、しかも、前述したアンテナ装置に代表される高周波用磁性部品として適用した場合にも長時間使用することが可能となる。
【0116】
なお、上述の第1の実施例で説明したように、磁性部材の磁性粒子の粒径が1nm以上でかつ100nm以下にすることが好ましいため、酸化処理によって形成される保護膜の膜厚を考慮して、磁性部材前駆体10を作製する際に析出する磁性粒子13の粒径を制御すればよい。
【0117】
磁性部材前駆体10の磁性粒子13の分散状態も、上述の第1の実施例の磁性部材1の磁性粒子の分散状態と同様である。すなわち、磁性粒子13同士が0〜5nmの間隔で離れて分散した状態であることが望ましい。
【0118】
そして、磁性部材前駆体10は、酸化処理を施すことにより磁性部材となるものであるため、磁性部材前駆体10の構成成分は、上述した第1の実施例に係わる磁性部材1を構成する絶縁体層2,3,4,5の構成成分と同様である。すなわち、絶縁体層11,12は、[a]難還元性金属酸化物の[A]金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素と、鉄(Fe),ニッケル(Ni),コバルト(Co)から選ばれる少なくとも一種の[B]磁性金属(軟磁性金属)元素とを組み合わせた酸化物絶縁体により構成される。また、絶縁体層は、[a]難還元性金属酸化物を構成する[A]金属元素及び[B]磁性金属元素以外に、Al,Cr,Sc,Siから選ばれる少なくとも一種の[C]添加金属元素を原子量比で0.01〜0.25%含有してなる。しかし、この組成において、[a]難還元性金属酸化物を構成する[A]金属元素と、[C]添加金属元素から選ばれる元素同士は同一の元素が組み合わせることはない、すなわち、元素同士が異なる組み合わせとなることが好ましい。
【0119】
そして、この磁性部材前駆体10は、多結晶体であることが好ましい。多結晶体であるということは、焼結法により作製可能なことを意味するものであり、低コストでの作製が可能となる。このような多結晶体であれば、粒界、特に絶縁体層の表面に、磁性粒子が析出し易くなるという利点がある。なお、還元処理により析出した磁性粒子13は、単結晶であってもよい。
【0120】
図34は、絶縁体層が単層である場合の磁性部材前駆体20の断面図である。この磁性部材前駆体20は、1層の絶縁体層21と、この絶縁体層21の一方の層表面で部分的に埋没するように配置された複数の磁性粒子22と、から構成されている。
【0121】
単層の場合の絶縁体層21や磁性粒子22は、上述した2層の場合と同様の材料で構成されている。また、図34に示すように、単層構造の磁性部材前駆体20の場合、磁性粒子22の埋没深さDは、磁性粒子22が絶縁体層21の表面より、粒径(深さ方向の粒径)Lの40%〜80%の範囲であることが好ましい。なお、このような磁性粒子の埋没深さDは、磁性部材前駆体20を製造する際に制御することができる。
【0122】
〔磁性部材の第2の実施例:単層構造例1〕
図35は、本発明の第2の実施例に係る磁性部材30を示している。この磁性部材30は、絶縁体層31と、この絶縁体層31の一方の表面に埋没するように配置された磁性粒子32と、この磁性粒子32が絶縁体層31から露出する表面を被覆する保護膜32Aと、からなる。
【0123】
この磁性部材30は、上述の磁性部材前駆体20と同様の構成の磁性部材前駆体を酸化処理して得られるものである。この磁性部材30においても、保護膜32Aを含めた磁性粒子32の埋没深さDが、絶縁体層31の表面より、粒径(深さ方向の粒径)Lの40%〜80%の範囲であることが好ましい。なお、本実施例に係る磁性部材30における、絶縁体層31、磁性粒子32、及び保護膜32Aの構成などは、上記した第1の実施例に係る磁性部材1と同様であるため、その説明を省略する。
【0124】
図35に示す本実施例に係る磁性部材30では、磁性粒子32が絶縁体層31から露出した表面のみに保護膜32Aが形成された構造であり、熱処理条件を制御することによりこのような構造の形成が可能となる。
【0125】
〔磁性部材の第3の実施例:単層構造例2〕
図36は、本発明の第3の実施例に係る磁性部材40を示している。図36に示すように、この磁性部材40は、絶縁体層41に部分的に埋没するように配置された磁性粒子42の全表面に保護膜42Aが形成されている点が、図35に示した第2の実施例に係る磁性部材30との相違点である。
【0126】
この磁性部材40のよう構造は、絶縁体層41や磁性粒子42の成分や、析出した磁性粒子42の熱処理条件などを制御することにより作製可能となる。このように磁性粒子42と絶縁体層41との界面に、酸化物でなる保護膜42Aが形成されていることにより、磁性粒子42と絶縁体層41との密着性を向上することが可能となる。
【0127】
なお、本実施例に係る磁性部材40における、絶縁体層41、磁性粒子42、及び保護膜42Aの構成などは、上記した第1の実施例に係る磁性部材1と同様であるため、その説明を省略する。
【0128】
〔磁性部材の第4の実施例:単層構造例3〕
図37は、本発明の第4の実施例に係る磁性部材50を示している。図37に示すように、この磁性部材50は、絶縁体層51に部分的に埋没するように配置された磁性粒子52の全表面に保護膜52Aが形成され、さらに、磁性粒子52が埋没した構造の絶縁体層51の表面全体にも絶縁保護膜53を形成した構造である。なお、この絶縁保護膜53は、磁性粒子52の熱処理条件をコントロールする方法でも良いし、PVD技術やCVD技術を用いても成膜可能である。
【0129】
なお、本実施例に係る磁性部材50における、絶縁体層51、磁性粒子52、及び保護膜52Aの構成などは、上記した第1の実施例に係る磁性部材1と同様であるため、その説明を省略する。
【0130】
〔磁性部材の第5の実施例:2層構造例1〕
図38は、本発明の第5の実施例に係る磁性部材60を示している。図38に示すように、この磁性部材60は、絶縁体層61と、多数の磁性粒子62と、保護膜62Aと、絶縁保護膜63と、絶縁体層64を備えてなる。磁性粒子62は、絶縁体層61に部分的に埋没するように設けられている。また、磁性粒子62の絶縁体層61から露出した表面のみに保護膜62Aが形成されている。磁性粒子62が埋没した構造の絶縁体層61の表面全体には、絶縁保護膜63が形成されている。さらに、これらの構造の表面上に合成樹脂でなる絶縁体層64が積層されている。絶縁体層61、磁性粒子62、保護膜62Aなどの構成成分などは、上記した第1の実施例に係る磁性部材1と同様であるため、その説明を省略する。
【0131】
本実施例に係る磁性部材60においては、絶縁体層64が、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチルテレフタレート(PET)、エポキシ系樹脂などの合成樹脂で形成されている。このため、磁性部材60においては、セラミックス材料でなる絶縁体層61と、合成樹脂でなる絶縁体層64との間で誘電率を傾斜させることができるため、アンテナを配置固定するアンテナ装置などの電子通信機器の部材として適している。また、絶縁体層64が合成樹脂でなるため、振動などの物理的負荷に対して耐久性を向上させることが可能となる。
【0132】
〔磁性部材の第6の実施例:2層構造例2〕
図39は、本発明の第6の実施例に係る磁性部材70を示している。この磁性部材70は、図39に示すように、絶縁体層71と、多数の磁性粒子72と、磁性粒子72の絶縁体層71から露出した表面のみに形成された保護膜72Aと、磁性粒子72を挟み込むように絶縁体層71に接合された合成樹脂でなる絶縁体層74と、を備えてなる。そして、絶縁体層74には、例えば、セラミックスなどでなる無機材料粒子73が混合、配置されている。なお、絶縁体層71、磁性粒子72、保護膜72Aなどの構成成分などは、上記した第1の実施例に係る磁性部材1と同様であるため、その説明を省略する。また、絶縁体層74の成分は、第5の実施例と同様に、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチルテレフタレート(PET)、エポキシ系樹脂などの合成樹脂である。
【0133】
本実施例の磁性部材70では、合成樹脂でなる絶縁体層74内に無機材料粒子73を混入させたことにより、無機材料粒子73の量を調整することにより絶縁体層74の誘電率の制御を図ることが可能となるだけでなく切断などの加工性を向上することができる。
【0134】
〔磁性部材の第7の実施例:2層構造例3〕
図40は、本発明の第7の実施例に係る磁性部材80を示している。この磁性部材80は、図40に示すように、絶縁体層81と、多数の磁性粒子82と、磁性粒子82の絶縁体層81から露出した表面のみに形成された保護膜82Aと、磁性粒子82を挟み込むように絶縁体層81に接合された合成樹脂でなる絶縁体層83と、を備えてなる。そして、絶縁体層84内には、空洞(気泡)84が分散して形成されている。なお、絶縁体層81、磁性粒子82、保護膜82Aなどの構成成分などは、上記した第1の実施例に係る磁性部材1と同様であるため、その説明を省略する。また、絶縁体層83の成分は、第5の実施例と同様に、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチルテレフタレート(PET)、エポキシ系樹脂などの合成樹脂である。
【0135】
本実施例の磁性部材80では、合成樹脂でなる絶縁体層83内に空洞(気泡)83が形成されているため、空洞84の大きさなどを調整することにより絶縁体層83の誘電率の制御を図ることが可能となる。また、絶縁体層83に空洞84を形成することにより、磁性部材80全体をさらに軽量化することが可能となる。
【0136】
〔磁性部材の製造方法〕
次に、本発明に係る磁性部材の製造方法について説明する。本発明に係る磁性部材の製造方法は、上述のような構成を具備していれば、その製造方法については特に限定されるものではないが、好ましい製造方法としては以下に説明するような複数の製造方法がある。
【0137】
(第1の製造方法)
この第1の製造方法は、以下のような4つの工程1〜4を備えており、磁性部材の形状、構造を特定しない基本的な製造方法である。
工程1:[a]難還元性金属酸化物の粉末と、[b]磁性金属酸化物の粉末と、微量添加物用酸化物(必要に応じて)と、から複合酸化物、例えば固溶体を作製する。
工程2:上記工程1で作製した複合酸化物を還元して複合酸化物の表面に、Fe,Co,Niなどの磁性金属、又はこれらの磁性金属を基とする合金の少なくとも一種からなる微細な磁性粒子を析出させる。
工程3:酸化処理を施すことにより、上記工程2で析出させた磁性粒子の表面に酸化物でなる保護膜を形成する。
工程4:上記工程3の後に、磁性粒子が析出している複合酸化物の表面に、他の絶縁体層を形成する。
この製造方法では、焼結法を用いることができるため、歩留まりがよく、低コストで製造することができるという利点がある。
【0138】
まず、上記工程1について詳細に説明する。この工程1は、[a]難還元性金属酸化物の粉末と、Fe,Co,Niの少なくとも一種を含む[b]磁性金属酸化物の粉末と、微量添加物用酸化物(必要に応じて)と、からなり、[a]難還元性金属酸化物と[b]磁性金属酸化物の比がmol比で、a:b=10:90から90:10の範囲からなる複合酸化物、例えば固溶体を作製する工程である。
【0139】
上述のFe,Co,Niの少なくとも一種を含む[b]磁性金属酸化物の粉末としては、一酸化鉄(FeO),酸化コバルト(CoO)などが好ましい。例えば、酸化鉄としては、FeO,Fe,Feなど様々な形態(化学量論)があるが、一酸化鉄(FeO)は、難還元性金属酸化物と広い組成範囲で複合酸化物を形成し易い。例えば、[a]難還元性金属酸化物としてMgOを用いた場合、FeO、CoO、NiOは全率固溶体となるので特に好ましい。全率固溶体の場合は、上記工程2のように磁性粒子を表面に析出させるための還元処理工程において、結晶粒内に微細な金属粒を任意の割合で析出させることができる。なお、酸化鉄としては、一酸化鉄(FeO)の以外に、他の価数の酸化鉄が含まれていてもよい。また、Fe−Al−O系化合物の固溶体を形成する場合はFeを用いることが好ましい。
【0140】
また、Fe,Co,Niなどの[B]磁性金属を含む[b]磁性金属酸化物としては、Cu,Mnが加わった複合金属酸化物でもよい。ここで、Niを選んだ場合、[b]磁性金属酸化物に含まれるNiの量は、CoあるいはFeに対して50mol%以下の含有率であることが好ましい。また、Cu又はMnを[b]磁性金属酸化物に含有させる場合は、10mol%以下の含有率にすることが好ましい。上記工程1で述べた複合金属酸化物としては、CoFe,NiFeのような複合金属酸化物でもよいし、酸化ニッケル,酸化銅,酸化マンガンやこの他の不純物を添加したものでもよい。[b]磁性金属酸化物は、200〜1500℃の水素雰囲気下で、金属へ還元され得る金属酸化物であるため、上記工程2において磁性粒子を析出させることができる。このため、[b]磁性金属酸化物は、還元性金属酸化物と呼ぶこともできる。
【0141】
上述した[a]難還元性金属酸化物と[b]磁性金属酸化物のmol比では、a:b=90:10より[a]難還元性金属酸化物が多くなると、すなわち90を越えると[b]磁性金属酸化物の割合が少なくなるため、粒子間の磁気的相互作用が小さくなり、場合によっては超常磁性が発生して特性が劣化する。一方、a:b=10:90より[b]磁性金属酸化物の割合が大きくなると、還元工程により析出した磁性粒子の結晶粒が大きくなり、高周波での特性が低下してアンテナ基板、高周波用磁芯、電磁波吸収体などに必要な磁気特性が低下してしまう。
【0142】
[a]難還元性金属酸化物と[b]磁性金属酸化物を用いて固溶体複合酸化物を作製する場合のmol比の適当な例をMgOとFeOと用いた場合で説明すると、[a]難還元性金属酸化物であるMgO粉末と、[b]磁性金属酸化物であるFeO粉末とをmol比で2:1となるように混合することが好ましい。このように2:1の比で[a]難還元性金属酸化物と[b]磁性金属酸化物とを混合することで、還元による磁性粒子の金属量を適量に抑えることができ、磁性粒子同士の合体や粒成長を抑制することができる。
【0143】
以下、上記工程1で行う操作を具体的に説明する。まず、所定のmol比になるように[a]難還元性金属酸化物と[b]磁性金属酸化物と微量添加物用酸化物(必要に応じて)とを計り取り、ボールミルなどで混合して原料粉末を調製する原料粉末調製工程を行う。なお、いずれの酸化物も、酸化物の形で混合させることが好ましいが、それに限定されず、水酸化物や炭酸化合物などのいかなる態様で混合されても構わない。また、混合の際、混入が起こらないように、ボールやポットの材質は、例えばナイロンなどの樹脂製のものなどを用いることが望ましい。さらに、湿式及び乾式のいずれの方法で混合してもよいが、より均一な混合を行うには湿式混合が好ましく、PVA(ポリビニルアルコール)などのバインダーを加えてもよい。
【0144】
次に、原料粉末を所定温度に加熱して反応を行わせる。反応させるための加熱温度などの諸条件は、原料粉末や目的とする部材性能に応じて適宜設定すればよい。例えば、加熱条件として、原料粉末をプレス成形した後、酸化雰囲気中、あるいは真空中、もしくはアルゴン(Ar)などの不活性雰囲気中で、1000℃以上の温度に加熱して焼結させてもよい。酸化雰囲気とは、大気、酸素を含有する不活性ガス雰囲気などが挙げられるが、酸素量を変動させないためには、不活性雰囲気あるいは真空中で焼結することが好ましい。例えば、FeO−MgO固溶体複合酸化物を作製する場合は、真空中もしくはAr雰囲気中で焼結させることが好ましい。なお、原料粉末としては、化学反応による沈殿物を用いることにより、より細かな原料粉が得られ、種々のプロセスを経たあとの結晶粒の微細化に反映できる。
【0145】
上記工程1によって得られる複合酸化物は、粉末、バルクなど形状は特に限定されない。また、粉末やバルクのいずれの形態であっても焼結法(粉末冶金法)により作製されたものは多結晶体となる。
【0146】
次に、上記工程2について具体的に説明する。上記工程1で得られた複合酸化物を還元してFe,Co又はそれらを基とする合金の少なくとも一種を析出させる上記工程2を行う。得られた複合酸化物に対して水素還元処理を行うことにより、多数の磁性粒子を複合酸化物(絶縁体層)の表面に部分的に埋まった状態で均一に分散して析出させることができる。すなわち、磁性粒子が複合酸化物の表面に沿って分散した状態で平面的に広がって配置、形成されるため、磁性部材全体としては異方構造となる。
【0147】
また、このような製造方法においては、上述したように、磁性粒子が複合酸化物(絶縁体層)の表面に部分的に埋まった構造となる。具体的には、磁性粒子の埋没深さDは、磁性粒子が絶縁体層の表面より、粒径(深さ方向の粒径)Lの40%〜80%の範囲となるように制御することができる。
【0148】
このように析出した磁性粒子は、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の磁性金属(軟磁性金属)、若しくはこれら磁性金属の合金からなる粒子である。具体的には、この磁性粒子は、Fe粒子,Ni粒子,Fe−Co粒子,Fe−Ni粒子,Co−Ni粒子,Fe−Co−Ni粒子のいずれかを基本として、第二成分としてAlもしくはSiを固溶している。
【0149】
特に、高い透磁率を実現するためには飽和磁化をできる限り上げる必要があるため、最も飽和磁化の高いFe−Co粒子を基本として、耐酸化性を付与するために他の元素、例えばNiなどを微量加えることが好ましい。上記した第二成分としてのAl,Siは、原子量比で50%以下の割合で含有し、かつ固溶するように制御することが好ましい。固溶する系としては、Fe−Al,Fe−Si,Co−Si,Ni−Si,Fe−Co−Al,Fe−Co−Si,Fe−Ni−Al,Fe−Ni−Si,Co−Ni−Si,Fe−Co−Ni−Al,Fe−Co−Ni−Siのいずれかを選択することができる。固溶するAl,Siの量としては粒子の飽和磁化をできる限り大きくするために少ない方がよいが、上記工程3で形成する保護膜との密着性を良くするためには多い方がよい。すなわち、固溶するAl,Siの量は飽和磁化と保護膜との密着性のバランスによって決まり、原子量比で5〜10%の範囲で制御することが最も好ましい。
【0150】
なお、磁性粒子としては、Fe粒子,Co粒子,Fe−Co合金粒子,Fe−Co−Ni合金粒子,Fe基合金粒子,Co基合金粒子の少なくとも一種が存在していればよく、これに他の非磁性金属元素が合金化していてもよいが、多すぎると飽和磁化が下がりすぎるため、高周波特性を考慮すると他の非磁性金属元素(Fe,Co以外の還元性金属)による合金化は10at%以下となるように制御することが好ましい。また、非磁性金属が組織中に単独で分散していてもよいが、その量は体積比で20%以下であることが好ましい。析出した微細結晶の耐酸化性の観点から、Fe基合金粒子はCoあるいはNiが一部含まれている方が好ましく、特に飽和磁化の観点からFe−Co基粒子が好ましい。
【0151】
このように析出した磁性粒子の結晶方位は、複合酸化物(絶縁体層)の結晶方位に対して、少なくとも2軸以上で揃うように形成させることができる。このように、複合酸化物(絶縁体層)の結晶方位に少なくとも2軸以上で揃って形成されることで、磁性粒子が熱的に極めて安定な状態で複合酸化物(絶縁体層)の表面に存在できる。このように、磁性粒子6全てが複合酸化物(絶縁体層)の表面おいて、複合酸化物の結晶格子との整合がとれ、かつ等しく配向した状態で存在することで、磁性粒子は複合酸化物(絶縁体層)に強くアンカーリングされて熱的に非常に安定であり、最終的に用いられる高周波用の部材として長時間安定した高周波特性を有することが可能となる。なお、この製造方法で形成された磁性粒子の埋没状態とは、単に磁性粒子が複合酸化物の表面の窪みに載っているように配置されたものとは決定的に違い、TEM、回折像などで違いを判別することができる。
【0152】
また、このような製造方法で析出した磁性粒子の分散状態は、磁性粒子同士が0〜5nmの間隔で離れて分散した状態となるように制御することが望ましい。
【0153】
なお、この製造方法における水素還元は、粉末、バルク(例えば、ペレット状、リング状、矩形状)、さらにはバルク状試料を粉砕した粉砕粉の状態で行ってもよい。特に、粉末(粉砕粉を含む)の場合、反応時間が短くて済むため、微細な磁性粒子が分散して析出させ易い。また、所定の磁性部品、例えばアンテナ基板などの形状にして還元処理を行えば、その後の部品化までの加工が簡単になる。
【0154】
なお、水素還元の温度と時間は、水素により少なくとも酸化物の一部が還元される温度であればよく、特に限定されるものではない。ただし、200℃以下では還元反応の進みが遅すぎ、1500℃を越えると析出した磁性粒子の成長が進みすぎて凝集してしまうため、200〜1500℃の範囲が好ましく、400〜1000℃の範囲がさらに好ましい。また、時間は還元温度との兼ね合いで決まるが、10分から100時間の範囲でよい。水素雰囲気は、フローが好ましく、その流量は10cc/min.以上であればよい。このように水素気流中(水素フロー中)で還元を行えば複合酸化物の全面に均一に磁性粒子を析出させ易くなる。また、その流量は常に一定である必要は無く、その温度に応じて変化させてもよい。例えば室温〜1000℃までの還元を行う場合、室温〜500℃までは流量を0として500〜800℃で10cc/min.800−1000℃では3cc/min.としてもよい。なお、複合酸化物中のFe又はCoを全量析出するように還元してもよいし、一部複合酸化物が残るように還元してもよい。
【0155】
また、還元処理に用いるガスは、水素が望ましいが、一酸化炭素やメタンなどの還元性ガスを用いてもよい。
【0156】
上記工程3は磁性粒子を酸化する工程であるが、具体的には空気中で熱処理する方法、酸素中に放置する方法や酸性ガスや酸性溶液で酸化することができる。
【0157】
上記工程4は酸化された磁性粒子が部分的に埋没する複合酸化物表面に他の絶縁層を形成する工程であるが、具体的にはスクリーン印刷やグラビア印刷により、生絶縁層を形成した後、熱処理を施す方法や、予め作製しておいた絶縁シートを、複合酸化物表面に圧着する方法などを採用することができる。
【0158】
また、上記工程3及び工程4を同時に行う方法として、予め他の絶縁層に酸化剤を混入させておき、塗布と同時に磁性粒子の表面が酸化されるようにしてもよい。
【0159】
なお、複合酸化物(絶縁体層)の表面に析出した磁性粒子が、AlもしくはSiを固溶していない場合は、磁性粒子にAlもしくはSiの少なくとも一種を含有する膜をコーティングし、熱処理を施すことによって、AlもしくはSiを固溶した磁性粒子を得ることができる。磁性粒子にAlもしくはSiの少なくとも一種をコーティングする方法は、特に限定されないが、Alターゲット,Siターゲット、所定の組成のAl−Siターゲットを用いてスパッタ法にてコーティングする方法が望ましい。このとき、磁性粒子と、Al,Si、Al−Siのいずれかが固溶する量だけコーティングし、熱処理によって固溶させる。この熱処理は磁性粒子が酸化せず、Al,Si、Al−Siと固溶させることが可能な条件であれば限定されないが、Arなどの不活性ガス雰囲気中で200〜1000℃の範囲で加熱することが好ましい。また、固溶させる量は、その後の熱処理(酸化処理)によって生じる、Al,AlN,SiO,Si,SiCのいずれかの膜の厚さに影響を与えるために慎重に決定する必要がある。例えば、FeにAlは原子量比で最大53mol%程度まで固溶させることができるが、粒径10nmのFe粒子に対して53mol%のAlを固溶させることによって、その後の熱処理によって2nm程度のAl膜をFe粒子表面に形成させることができる。また、粒径100nmのFe粒子に対して20%のAlを固溶させることによって、その後の熱処理によって7nm程度のAl膜をFe粒子表面に形成することができる。
【0160】
(第2の製造方法)
次に、磁性部材の第2の製造方法について図41に示すフローチャートを用いて説明する。図41に示すように、第2の製造方法では、順次、原料粉末の調製工程と、成形工程と、反応工程と、粒子析出工程と、酸化膜(保護膜)形成工程と、積層工程と、を備える。
【0161】
先ず、原料粉末の調製工程とは、Mg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の[A]金属元素の[a]難還元性金属酸化物と、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の[B]磁性金属元素の[b]磁性金属酸化物から選ばれる少なくとも一種とを、秤量、混合してセラミックス原料を調製する工程である(ステップS1)。
【0162】
上記成形工程とは、上記ステップS1で調製されたセラミックス原料を成形してセラミックス生シートを作製する工程である(ステップS2)。
【0163】
上記反応工程とは、上記ステップS2で作製したセラミックス生シートを加熱して複合酸化物シートを作製する工程である(ステップS3)。
【0164】
上記粒子析出工程とは、上記ステップS3で作製した複合酸化物シートを還元処理して磁性粒子(磁性金属含有粒子)を複合酸化物シートの表面に析出させて磁性部材前駆体を作製する工程である(ステップS4)。
【0165】
上記酸化膜(保護膜)形成工程とは、上記ステップS4で磁性粒子が析出した複合酸化物シート(磁性部材前駆体)に酸化処理をして磁性粒子の表面に酸化膜(保護膜)を形成する工程である(ステップS5)。
【0166】
上記積層工程とは、上記ステップS4で作製した複合酸化物シートの上に他の絶縁シートを積層して、複合酸化物シートの表面と、絶縁シートと、を積層界面で磁性粒子を挟み込むように接合させて磁性部材を作製する工程である(ステップS6)。
【0167】
以上、第2の製造方法について説明したが、この製造方法における材料、各種処理条件などは、上述の第1の製造方法と同様である。なお、絶縁シートとしては、各種の絶縁材料を用いることができるが、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチルテレフタレート(PET)、エポキシ系樹脂などの有機材料を用いることも可能である。
【0168】
(第3の製造方法)
次に、磁性部材の第3の製造方法について図42に示すフローチャートを用いて説明する。図42に示すように、第3の製造方法では、順次、積層工程と、反応工程と、粒子析出工程と、酸化膜形成工程と、を備えている。
【0169】
この製造方法では、予め、Mg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の[A]金属元素の[a]難還元性金属酸化物と、Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の[B]磁性金属元素の[b]磁性金属酸化物から選ばれる少なくとも一種と、を、秤量、混合してセラミックス原料を調製する。そして、セラミックス原料を成形してセラミックス生シートを作製しておく。
【0170】
そして、複数のセラミックス生シートを積層してセラミックス生シート積層体を作製する(ステップS11)。
【0171】
次に行う反応工程では、このセラミックス生シート積層体を焼成して複合酸化物積層体を作製する(ステップS12)。
【0172】
その後、粒子析出工程で、ステップS12で作製した複合酸化物積層体を還元処理して、磁性金属もしくは磁性金属を含む合金でなる磁性粒子を複合酸化物積層体の積層界面に析出させて磁性部材前駆体を作製する(ステップS13)。
【0173】
最後に、酸化膜形成工程を行って、磁性粒子が析出した複合酸化物積層体を、酸化処理して磁性粒子の表面に酸化膜でなる保護膜を形成する(ステップS14)。このようにして酸化膜形成工程を行うことで、磁性部材の製造が完了する。
【0174】
なお、この第3の製造方法においても、材料、各種処理条件などは、上述の第1の製造方法と同様である。
【0175】
(第4の製造方法)
図43及び図44は、第4の製造方法の特徴となる工程を示す要部拡大断面である。この第4の製造方法は、上述した第3の製造方法における磁性粒子の表面に保護膜を酸化処理により形成する工程(ステップS14)までは同様である。すなわち、図43に示すように、複合酸化物シート91の表面に析出した磁性粒子92の表面に保護膜(図示省略する)を形成する工程までは、上述の第3の製造方法のステップS14までと同様の工程を経て製造される。
【0176】
この第4の製造方法では、図43に示すように、保護膜が表面に形成された磁性粒子92が部分的に埋没している複合酸化物シート(絶縁体層)91と91と組成の異なる絶縁体セラミックシート93との界面に磁性粒子92が形成されている。この絶縁体セラミックシート93の構造は、図43に示すように、粒子同士の間に隙間が形成された多結晶もしくはアモルファス構造でもよいし、連続多孔質構造であってもよい。このような構造の絶縁層を用いることで界面での析出が発生しやすくなり、多層構造でも磁性粒子の析出制御が容易になる。
【0177】
次に、図15に示すように、絶縁体セラミックシート93が露出した部分から樹脂材料95を含浸させている。この結果、図44に示すように、絶縁体セラミックシート93の隙間に樹脂材料95が入り込んで、密着強度を高めると共に、磁性粒子92が複合酸化物シート91の表面から脱落することを防止する機能を有する。また、この樹脂材料95の構成材料を選択することにより、誘電率を制御することができるという利点がある。
【0178】
(第5の製造方法)
図45(A)〜(D)は、第5の製造方法を示している。この第5の製造方法は、複合酸化物積層体(絶縁体層の積層体)の露出する側の表面に露出する磁性粒子(保護膜を含む)を除去する工程を備えた点以外は、上述した第3の製造方法と同様である。
【0179】
この製造方法では、図45(A)に示すように、シート状支持体101の一方の面上に、磁性部材の構成原料でなる第1のセラミックス生シート102を形成する。そして、この第1のセラミックス生シート102の上に、第2のセラミックス生シート103を塗布形成する。
【0180】
印刷法を例にとって説明すると、
(1)第1のセラミックスペーストをシート状支持体101の上に印刷して乾燥し、第1のセラミックス生シート102を得る。
【0181】
(2)この状態で、第2のセラミックペーストを第1のセラミックス生シート102の上に印刷し、乾燥することで第2のセラミックス生シート103を形成し、図45(A)のようなシート状支持体の上に2層のセラミック生シートが形成された生セラミック複合シートAを得る。
【0182】
その後、シート状支持体101を剥離し、セラミックス生シート積層体をラミネート用容器に密閉して静水圧プレスなどでラミネート処理を行う。図45では2層のみのラミネート例を示したが101、102、103の複合シートを複数用意してシート状支持体101を剥離した102及び103の複合シートを多層積層して後、ラミネート処理を行うことが多い。この後、所定の大きさに切り分けた後、脱脂、焼成する。なお102及び103の複合シートを作製する場合は、初めにシート状支持体101上に102を形成し、あらかじめ用意した103を熱圧着してもよい。
【0183】
次に、セラミックスシート積層体を、水素雰囲気下で還元処理して、図45(B)に示すように、第1のセラミックスシート102Aと第2のセラミックスシート103Aの外側表面、及び積層界面に磁性粒子104が析出する。
【0184】
そして、磁性粒子104が析出したセラミックスシート積層体に酸化処理を施して図45(C)に示すように、磁性粒子104の表面に保護膜104を形成する。
【0185】
次に、セラミックスシート積層体の外側表面に形成された磁性粒子104(保護膜104Aを含む)を除去する工程を行って、図45(D)に示すような磁性部材110を作製する。
【0186】
なお、セラミックスシート積層体の外側表面に形成された磁性粒子104(保護膜104Aを含む)を除去する方法としては、空気中又はガス中で酸化処理する方法や、酸、アルカリ溶液、又は溶融金属に溶解させる方法などを用いることができる。また、研磨加工することでも除去できる。このような磁性粒子104を除去する工程により、磁性部材110の外側表面(界面の端部側表面も含む)には、磁性粒子104が存在しない構造を得ることができる。また、積層体を難還元性セラミックで覆った後にラミネートを行い、還元処理することで同様の効果を得ることもできる。
【0187】
(第6の製造方法)
図46及び図47は、第6の製造方法を示している。この第6の製造方法では、図46に示すように、予め、セラミックス生シート111,112の積層界面に磁性粒子114(図47参照。)の核となる無機材料の微粒子113を配しておく。
【0188】
次に、セラミックスシート積層体を脱脂、焼成した後、還元処理を施すことにより、図47に示すような所定の粒径を有する磁性粒子114に成長させる。
【0189】
その後、酸化処理を施すことにより、図47に示すように磁性粒子114の表面に保護膜114Aを形成する。
【0190】
この第6の製造方法では、磁性粒子の析出を、予め無機材料の微粒子113を配置することで制御できるという利点がある。なお、このような微粒子113を均一にセラミックス生シート上に散布する方法は、各種の方法を用いることができるが、例えば揮発性を有するアルコールなどに微粒子113を混合した液体をスプレーにより散布することにより微粒子113を均一にセラミックス生シート表面に配することが可能である。図47では核となる無機材料が磁性粒子に成長している例であるが必ずしも核となる無機材料と磁性粒子の組成は一致している必要は無い。また、核を起点に磁性粒子が析出するが、それ以外の場所から析出していても良い。
【0191】
また、本発明に用いられる磁性部材の具体例2について説明する。
Fe,Ni,Coから選ばれる少なくとも一種の磁性金属(軟磁性金属)又はこれら磁性金属の合金などでなる複数の磁性粒子が、絶縁体層に分散した構造を有する。磁性粒子、絶縁体層に関しては上記具体例1と同様であるので以下に製造方法について具体的に説明する。
【0192】
市販MgO単結晶を厚さ400μmにスライスして厚み200μmに研磨の後、FeO粉末に埋めて、アルゴン中で1700℃−1800℃にて72h保持することでMgO中にFeOを拡散させる。この後、カーボンさやにてアルゴン中で1100℃−1300℃にて40h保持することでMgO中にFeナノ粒子が析出し、磁性体Feナノ粒子が分散した構造が得られる。このようにして得られた磁性体層そのまま本発明に使用しても良いし、これを誘電体層と交互に積層張り合わせることで本発明に係わる積層型の構造磁性部材が得られる。同様の構造は2元同時スパッタなどの薄膜法でも作製することが出来るが厚みが数μmであるため積層するなどして厚みを得ることが必要である。
【0193】
(その他の実施形態)
この発明に係わる磁性材料は、形状、結晶性、飽和磁化、異方性磁化等を可変することにより透磁率μを制御することが可能である。すなわち、磁性材料の透磁率μは、磁気モーメントの共鳴による損失だけとした理想的な場合を考えた場合、f(周波数)×μ=C(定数)という限界関係式に従う。すなわち、透磁率μが決まると限界周波数(μが落ち始める周波数)が決まる。この限界関係式は、形状、結晶性、飽和磁化によって変えることができる。また、一つの関係式を考えた時、異方性磁界を制御することによっても、透磁率μの値を変えることができる。
【0194】
したがって、材料の形状、結晶性、飽和磁化を決定することによって、限界関係式を決めることができ、さらに異方性磁界を変えることで透磁率μを決定でき、延いては限界周波数f(μが落ちる周波数)を決定できる。
【0195】
すなわち、透磁率μは、材料の組成、つまり形状、結晶性、延いては飽和磁化、異方性磁化等を制御することにより制御することができる。例えば、数百MHzまでの周波数帯域については、フェライトを使って制御できることが本発明者等により確認されており、それ以上の周波数帯域についても理論的に制御可能である。
【0196】
また、印刷配線基板の接地金属面に対向して磁性部材を配置する際に、磁性部材の形状や配置位置を工夫することにより、当該印刷配線基板に形成される回路パターンや給電パターン等の信号線パターンを除いた金属面と対向する位置に磁性部材が配置されるようにするとよい。このようにすると、磁性部材により信号線パターンのインピーダンスが変化しないようにすることができる。
【0197】
さらに、前記各実施形態ではアンテナエレメントとしてダイポールアンテナを用いた場合を例にとって説明した。しかし、これに限ったものではなく、例えばモノポールアンテナや逆Fアンテナ、逆Lアンテナなどのその他の線状アンテナにもこの発明は適用できる。また、マイクロストリップアンテナやループアンテナ等の他の種類のアンテナに対してもこの発明は適用可能である。
【0198】
なお、この発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる複数の実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】この発明に係わるアンテナ装置の第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示したアンテナ装置のA−A矢視断面図。
【図3】図1に示したアンテナ装置の寸法の一例を示すもので(A)は平面図、(B)は断面図。
【図4】図1に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図5】図1に示したアンテナ装置の作用を説明するための図。
【図6】図1に示したアンテナ装置の作用を説明するための図。
【図7】従来のアンテナ装置の作用を説明するための図。
【図8】従来のアンテナ装置の作用を説明するための図。
【図9】この発明に係わるアンテナ装置の第2の実施形態を示す断面図。
【図10】図9に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図11】この発明に係わるアンテナ装置の第3の実施形態を示す断面図。
【図12】図11に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図13】この発明に係わるアンテナ装置の第4の実施形態を示す平面図。
【図14】図13に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図15】この発明に係わるアンテナ装置の第5の実施形態を示す平面図。
【図16】図15に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図17】この発明に係わるアンテナ装置の第6の実施形態を示す平面図。
【図18】図17に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図19】この発明に係わるアンテナ装置の第7の実施形態を示す平面図。
【図20】図19に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図21】この発明に係わるアンテナ装置の第8の実施形態を示す平面図。
【図22】図21に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図23】この発明に係わるアンテナ装置の第9の実施形態を示す平面図。
【図24】図23に示したアンテナ装置のインピーダンス特性を示す図。
【図25】この発明に係わるアンテナ装置の第10の実施形態を示す断面図。
【図26】この発明に係わるアンテナ装置の第11の実施形態を示す断面図。
【図27】図25に示す装置で使用される磁性部材の構成を示す図。
【図28】図26に示す装置で使用される磁性部材の構成を示す図。
【図29】この発明に係わるアンテナ装置の第12の実施形態を示す断面図。
【図30】この発明に係る磁性部材の第1の実施例を示す概略断面図。
【図31】図30に示した磁性部材の要部拡大断面図。
【図32】この発明に係る磁性部材の前駆体(2層構造)の構造を示す斜視図。
【図33】図32に示した磁性部材の前駆体(2層構造)の断面図。
【図34】この発明に係る磁性部材の前駆体(単層構造)の構造を示す断面図。
【図35】この発明に係る磁性部材の第2の実施例を示す断面図。
【図36】この発明に係る磁性部材の第3の実施例を示す断面図。
【図37】この発明に係る磁性部材の第4の実施例を示す断面図。
【図38】この発明に係る磁性部材の第5の実施例を示す断面図。
【図39】この発明に係る磁性部材の第6の実施例を示す断面図。
【図40】この発明に係る磁性部材の第7の実施例を示す断面図。
【図41】この発明に係る磁性部材の第2の製造方法を示すフローチャート。
【図42】この発明に係る磁性部材の第3の製造方法を示すフローチャート。
【図43】この発明に係る磁性部材の第4の製造方法を説明するための要部拡大図。
【図44】この発明に係る磁性部材の第4の製造方法を説明するための要部拡大断面図。
【図45】この発明に係る磁性部材の第5の製造方法を示す工程断面図。
【図46】この発明に係る磁性部材の第6の製造方法における第1の工程を示す断面図。
【図47】この発明に係る磁性部材の第6の製造方法における第2の工程を示す断面図。
【図48】この発明の第11の実施形態に係わるアンテナ装置において、0.1mm厚の磁性体板を3枚積層して介在配置した場合のスミスチャート及びインピーダンスの周波数特性を示す図である。
【図49】この発明の第13の実施形態に係わるアンテナ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図50】図49に示したアンテナ装置の平面図である。
【図51】図49に示したアンテナ装置のB−B矢視断面図である。
【図52】この発明の第14の実施形態に係わるアンテナ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図53】図52に示したアンテナ装置の平面図である。
【図54】図53に示したアンテナ装置のC−C矢視断面図である。
【図55】図50に示したアンテナ装置の他の構成例を示す図である。
【図56】図53に示したアンテナ装置の他の構成例を示す図である。
【図57】図51に示したアンテナ装置の別の構成例を示す図である。
【図58】図54に示したアンテナ装置の別の構成例を示す図である。
【図59】図57に示したアンテナ装置のさらに異なる構成例を示す図である。
【図60】図58に示したアンテナ装置のさらに異なる構成例を示す図である。
【図61】この発明の第15の実施形態に係わるアンテナ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図62】図61に示したアンテナ装置のD−D矢視断面図である。
【図63】図61に示したアンテナ装置の特性を示すスミスチャート及び周波数特性図である。
【図64】図61に示したアンテナ装置において磁性体部材を設けない場合の特性を示すスミスチャート及び周波数特性図である。
【図65】磁性体部材の厚さを変化された場合の共振周波数及びインピーダンスの変化特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0200】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1D′,1E′,1F,1G,1H…磁性部材、1K,1L,1M,1N…誘電体部材、2,3,4,5…絶縁体層、6…磁性粒子、7…印刷配線基板、8,8A,8B…アンテナエレメント、9,9A…給電端子、10…磁性部材前駆体、11,12…絶縁体層、13…磁性粒子、20…磁性部材前駆体、21…絶縁体層、22…磁性粒子、30…磁性部材、31…絶縁体層、32…磁性粒子、32A…保護膜、40…磁性部材、41…絶縁体層、42…磁性粒子、42A…保護膜、50…磁性部材、51…絶縁体層、52…磁性粒子、52A…保護膜、53…絶縁保護膜、60…磁性部材、61…絶縁体層、62…磁性粒子、62A…保護膜、63…絶縁保護膜、64…絶縁体層、70…磁性部材、71…絶縁体層、72…磁性粒子、72A…保護膜、73…無機材料粒子、74…絶縁体層、80…磁性部材、81…絶縁体層、82…磁性粒子、82A…保護膜、83…絶縁体層、84…空洞、84…絶縁体層、91…複合酸化物シート、92…磁性粒子、93…無機材料、95…樹脂材料、102…第1のセラミックス生シート、102,103…セラミックス生シート、102A…第1のセラミックスシート、103…第2のセラミックス生シート、103A…第2のセラミックスシート、104…保護膜、104…磁性粒子、104A…保護膜、110…磁性部材、111,112…セラミックス生シート、113…微粒子、114…磁性粒子、114A…保護膜。




 

 


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