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発明の名称 固体高分子型燃料電池システム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−5330(P2007−5330A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2006−276993(P2006−276993)
出願日 平成18年10月10日(2006.10.10)
代理人 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
発明者 小上 泰司 / 大間 敦史 / 宗内 篤夫 / 堀 美知郎
要約 課題
長期間の連続運転を行っても電池スタック特性が常に安定した固体高分子型燃料電池システムを提供することである。

解決手段
固体高分子電解質膜の対向する両面に2枚のガス拡散電極を配置した単位電池を複数積層した燃料電池スタックに、反応ガスである燃料ガスと酸化剤ガスをそれぞれ供給することにより電力が得られる固体高分子型燃料電池システムにおいて、前記燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を測定する手段と、前記飽和度により燃料電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御する手段を設けた固体高分子型燃料電池システム
特許請求の範囲
【請求項1】
固体高分子電解質膜の対向する両面に2枚のガス拡散電極を配置した単位電池を複数積層した燃料電池スタックに、反応ガスである燃料ガスと酸化剤ガスをそれぞれ供給することにより電力が得られる固体高分子型燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を測定する手段と、
前記飽和度により燃料電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御する手段と、
を設けたことを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度が70%〜95%となるように燃料電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御することを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池スタックの運転温度制御手段は冷却水の燃料電池スタック入口温度調整手段と冷却水流量調整手段であることを特徴とする請求項1項記載の固体高分子型燃料電池システム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子電解質膜の両面に2枚のガス拡散電極を配置した単位電池を複数積層した燃料電池スタックに、反応ガスである燃料ガスと酸化剤ガスをそれぞれ供給することにより電力が得られる固体高分子型燃料電池システムであり、特に燃料電池スタックにおける出力の経時的な低下を防止するための単電池構造、製造技術、システム運転技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素等の燃料ガスと空気等の酸化剤ガスを電気化学的に反応させることにより、燃料ガスのもつ化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。
【0003】
図11は従来の固体高分子型燃料電池システムの基本構成100(単位電池構成)の一例を説明するための概略断面図を示しており、以下これについて説明する。
【0004】
イオン導電性を有する固体高分子電解質膜102を挟んで配置した燃料ガス拡散電極(アノード電極)103、酸化剤ガス拡散電極(カソード電極)104からなる単位電池101とそれぞれの電極に反応ガスを供給するための燃料ガス流通路103c、酸化剤ガス流通路104cをそれぞれ設けた導電性を有するガス不透過性の燃料ガス流通路付きセパレータ105、酸化剤ガス流通路付きセパレータ106および冷却水流通路107cを設けた冷却板107が基本構成となっている。
【0005】
ここで、燃料ガス拡散電極103は触媒層103aと導電性かつ撥水性の多孔質層103bと多孔質ガス拡散板103sから、又酸化剤ガス拡散電極104は触媒層104aと導電性かつ撥水性の多孔質層104bと多孔質ガス拡散板104sからそれぞれ形成されている。
【0006】
なお、図11では、冷却板107とセパレータ105を別々に設けた例であるが、従来これらを別々に設けず、ガス不透過性材料の一方面に反応ガス流通路を、他面に冷却水流通路をそれぞれ設け、反応ガス流通路付きセパレータと冷却板を共用とする構成が多く用いられている。更に、図11において各単位電池101毎に冷却をしない場合は、ガス不透過性の反応ガス流通路付きセパレータには一方の片面に酸化剤ガスを、他方の片面に燃料ガスを供給する溝を形成したものが用いられる。
【0007】
上記基本構成の単位セルにおいて、燃料ガス拡散電極103に燃料ガスである水素を、酸化剤ガス拡散電極104に酸化剤ガスである空気をそれぞれ供給すると以下の原理に基づき、単位電池101の一対の電極103,104間で電気化学反応により起電力が生じる。
【0008】
燃料ガス拡散電極103に供給された水素は触媒層103aで水素イオンと電子に解離し、水素イオンは固体高分子電解質膜102を通って、電子は外部回路を通って酸化剤ガス拡散電極104にそれぞれ移動する。
【0009】
一方、酸化剤ガス拡散電極104では供給した空気中の酸素と上記水素イオンと電子が触媒層104aで反応して水を生成する。このとき、外部回路を通った電子は電流となり電力を供給することができる。
【0010】
即ち、燃料ガス拡散電極103と酸化剤ガス拡散電極104ではそれぞれ以下の反応が進行し、酸化剤ガス拡散電極104では水が生成される。なお、生成した水は未反応ガスと共に電池外に排出される。
【0011】
燃料ガス拡散電極での反応 : H→2H+2e(式1)
酸化剤ガス拡散電極での反応 : 2H+1/2O+2e→ HO (式2)
単位電池101の起電力は1V以下と低いため、通常は上記の基本構成を数十〜数百枚積層し燃料電池スタックとして使用される。
【0012】
なお、発電に伴い各単位電池は発熱するが、冷却水流通路107cに供給する冷却水にて各単位電池の温度制御を行う。
【0013】
ところで、イオン導電性を有する固体高分子電解質膜102としては、例えばプロトン交換膜であるパーフルオロロカーボンスルホン酸(ナフィオンR:米国、デュポン社)が知られている。この膜は分子中に水素イオンの交換基を持ち、飽和含水することによりイオン導電性電解質として機能する。このため、膜の含水量が少なくなるとイオン抵抗が高くなり電解質の機能は果たさなくなる。
【0014】
このことから、固体高分子型燃料電池において、高い電池性能を得るためには固体高分子電解質膜102を常に飽和含水としておくことが必要となる。
【0015】
一方、触媒層において(式1)、(式2)に示す反応がスムーズに進行するためには、反応ガスが十分に拡散し、反応により生成したイオンが導通する必要があることから、触媒層の濡れを適度に維持することが必要となる。
【0016】
この場合、触媒層の濡れが過剰になると、触媒層中で反応ガスの拡散が不良となり、電池電圧が低下する要因となる。
【0017】
上記のことから固体高分子型燃料電池システムでは電池内での水管理が極めて重要な技術となる。
【0018】
通常、固体高分子型燃料電池システムは80℃程度で運転するため、反応ガスの飽和水蒸気分圧は0.47kg/cm2程度と高く、固体高分子電解質膜102および触媒層103a、104aは乾燥傾向となるため、従来の公知技術例えば特許文献1に示すように、触媒層103a、104aと多孔質ガス拡散板103s、104sの間に導電性かつ撥水性の多孔質層103b、104bを設け、水蒸気の拡散抵抗を増加することや、供給する反応ガスの加湿により電池反応で生成した水の蒸発を抑制すること等により、固体高分子電解質膜102および触媒層103a、104aの乾燥を防止していた。
【0019】
さらに、触媒層103a、104aの過剰な濡れ防止については、「触媒層の過剰な濡れ防止」については、例えば特許文献2に記載されているが、長期的な安定性や実現性などの点で不十分といえない。特許文献2では、セル電圧が低下したときは、反応ガスの流量あるいは圧力を増加させる解決策が記載されている。前記の解決策において、一時的にセル電圧は向上するが元の条件ではセル電圧は低下することから、反応ガスの流量あるいは圧力を継続的に増加させ必要がある。反応ガスの流量または圧力を増加するには供給ブロア−等の消費電力が大幅に上昇するため発電効率は著しく低下する欠点がある。また、反応ガス供給能力にマージンをとる必要があるためコストが高くなる欠点がある。
【特許文献1】特開平3−20971号公報
【特許文献2】特開平8−167421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上述べた従来の技術の固体高分子型燃料電池システムにおいて、運転初期には十分高い電池スタック電圧が得られるものの、連続運転を行うと電池スタック電圧が徐々に低下する問題があった。
【0021】
電池スタック電圧が低下すると、電池スタックの発熱量が多くなり、電力としての出力が低下するばかりではなく、システムの発電効率が低下することになる。これまでの検討結果によれば電池内の水排出が不十分であり、触媒層に水が経時的に蓄積されることが電池スタック電圧低下の要因であることがわかった。
【0022】
そこで、本発明の目的は電池内の水の排出を適正化し、触媒層の過剰な濡れを防止することにより、長期間の連続運転を行っても電池スタック特性が常に安定した固体高分子型燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、固体高分子電解質膜の対向する両面に2枚のガス拡散電極を配置した単位電池を複数積層した燃料電池スタックに、反応ガスである燃料ガスと酸化剤ガスをそれぞれ供給することにより電力が得られる固体高分子型燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を測定する手段と、
前記飽和度により燃料電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御する手段と、
を設けたことを特徴とする固体高分子型燃料電池システムである。
【0024】
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度が70%〜95%となるように燃料電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御することを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池システムである。
【0025】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記燃料電池スタックの運転温度制御手段は冷却水の燃料電池スタック入口温度調整手段と冷却水流量調整手段であることを特徴とする請求項1項記載の固体高分子型燃料電池システムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電池反応により生成した過剰水分を固体高分子電解質膜および触媒層から反応ガス側に容易に排出でき、反応ガスの水蒸気飽和度を調整することにより水分蒸発速度を制御できることから、電池内の水の排出を適正化し、触媒層の過剰な濡れを防止することができる。このことにより、長期間、高い電池スタック特性を維持することが可能となる固体高分子型燃料電池システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の固体高分子型燃料電池システムの実施形態を図面に基づき説明する。
【0028】
<第1の実施形態>
本実施形態では、図11に示す固体高分子型燃料電池システムにおいて、燃料ガス拡散電極(アノード電極)103、酸化剤ガス拡散電極(カソード電極)104のうち少なくとも酸化剤ガス側のガス拡散電極104は、多孔質のガス拡散板104s、導電性かつ撥水性の多孔質層104b、触媒層104aの順に配置して構成され、前記導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さ、例えばカーボン層の厚さを10μm以下(0μmを含まず)としたことを特徴とするものである。
【0029】
前記導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さを10μm以下とすることにより、反応ガスの水蒸気飽和度により反応ガス側への水分蒸発速度を容易に制御することができるため、触媒層104aの過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0030】
以下、第1の実施形態について具体的に説明する。図11に示す固体高分子型燃料電池システムの基本構成100を3セット積層した3セルスタックを製作した。多孔質ガス拡散板103s、104sとして東レ製の多孔質カーボンペーパを使用した。
【0031】
導電性かつ撥水性の多孔質層103b、104bはカーボン微粉末とポリテトラフルオロエチレン(登録商標:フッ素樹脂)からなり、層形成後に360℃で10分間熱処理することにより撥水性を付与した。
【0032】
前記多孔質層の平均気孔径は1.5μm程度、気孔率は75%程度となるように形成した。また、燃料ガス拡散電極103側の導電性かつ撥水性の多孔質層103bの厚さは20μmとし、酸化剤ガス拡散電極104側の導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さは1〜20μmとした。上記導電性かつ撥水性の多孔質層上に触媒層103a、104aを形成した。触媒として白金が50%含まれるカーボン担持触媒を使用し、それぞれの白金塗布量は0.4mg/cmとなるようにした。
【0033】
固体高分子電解質膜102としては、厚さ50μmのナフィオン膜を使用し、触媒層103a、104aの表面に電解液を1.2mg/cm塗布した後、ガス拡散電極103、104と接合した。
【0034】
上記の3セルスタックを常圧、80℃で連続運転して電池電圧低下速度を評価した。
【0035】
なお、供給する燃料ガスについては露点温度が60℃となるように予め加湿を行った。また、供給する空気については、スタックから排出される空気の飽和度が70〜95%となるように予め加湿を行った。
【0036】
図1にカソードの導電性かつ撥水性の多孔質層104bと電池電圧低下速度の関係を示す。また、図2に導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さを5μmとした本発明の実施形態の寿命特性と、導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さを20μmとした従来比較例の寿命特性をそれぞれ示す。
【0037】
図1、図2から酸化剤ガス電極側の導電性かつ撥水性の多孔質層104bを10μm以下(0μmを含まず)とすることにより、電池電圧の低下速度を抑制でき、長時間安定した電池特性が得られることが明らかである。
【0038】
別の要素試験によれば、酸化剤ガス拡散電極104の水蒸気透過速度は導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さに依存し、10μm程度より薄い多孔質層の酸化剤ガス拡散電極では水蒸気透過速度が著しく向上した。
【0039】
以上述べたことから本実施形態では、ガス電極側の導電性かつ撥水性の多孔質層104bを10μm以下とすることにより、酸化剤ガスへの水分蒸発を容易にすることができ、電池特性を長時間安定できることが分かった。
【0040】
<第2の実施形態>
本実施形態は第1の実施形態と同様の電池スタックにおいて、触媒層104a(104a)の固体高分子電解質膜102と接する面を親水性としたことを特徴とするものである。
【0041】
一般に触媒層全体で水に対する濡れ性が低いと、水に濡れている部分と濡れていない部分ができ、触媒層中の水分に偏りが生じる。このため、触媒が有効に使用されなくなり、電池特性が低くなる。
【0042】
これに対して本実施形態によれば、触媒層104a(104b)から反応ガス側に水分が蒸発しても、固体高分子電解質膜102に接する触媒層を親水処理しているため、その面で触媒層には水分があり、触媒層を有効に活用できる。
【0043】
以下、本実施形態について具体的に説明する。固体高分子電解質膜102と電極103、104を接合する時に、触媒層に界面活性剤であるトライトンを0.05%含む純水を塗布した。
【0044】
本実施形態の電池スタックの電池電圧は、電解液を塗布した第1の実施形態の電池電圧の98%であった。一方、接合時に触媒層の親水処理を施さなかった電池スタックの電池電圧は電解液を塗布した第1の実施形態の電池電圧のわずか70%にすぎなかった。
【0045】
本実施形態によれば、高い電池電圧を得るためには固体高分子電解質膜102と接する面で触媒層104a(104b)を親水化することが重要であり、電解液の代わりとしてトライトンのような界面活性剤を塗布しても同等の効果が得られることが分かった。これは触媒層104a(104b)全体で水に対する濡れ性が低いと、水に濡れている部分と濡れていない部分ができ、触媒層104a(104b)中の水分に偏りが生じるため、触媒が有効に使用されなくなり、電池特性が低くなるためであると思われる。
【0046】
<第3の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態において、触媒層104aには少なくともフッ素樹脂が含まれており、層形成、熱処理後に触媒層表面に固体高分子電解質を塗布して固体高分子電解質膜102と接合したことを特徴とするものである。
【0047】
第3の実施形態によれば、触媒層104aにフッ素樹脂を含有し、熱処理することにより水分の排出性能が向上し、また、触媒層104aと固体高分子電解質膜102の界面に固体高分子電解質を塗布して一体化することにより、その面では親水性となり触媒を有効に活用することができる。
【0048】
以下、本実施形態について具体的に説明する。第1の実施形態と同様の電池スタックにおいて、酸化剤ガス拡散電極104側の触媒層104aに10%のポリテトラフルオロエチレンを混合し360℃で10分間熱処理することにより撥水性を付与した。
【0049】
また、固体高分子電解質膜102とガス拡散電極104の接合時に触媒層104aの表面に固体高分子電解液を1.2mg/cm塗布した。本実施形態の電池スタックの電池電圧は、高い撥水性を付与しない第1の実施形態の電池電圧の107%であった。
【0050】
本実施形態によれば、触媒層104aの表面に高分子電解液を塗布しても、内部まで浸透しない。ことため、電解液を塗布した面で触媒が有効に使われる一方、反応ガスが拡散する気孔には電解液が無く撥水性が保たれているため、反応ガスの拡散不良による電圧低下は起りにくいと考えられる。
【0051】
一方、触媒層104aが撥水処理されていないと、電解液の塗布量のバラツキにより、電解液が触媒層104aの内部まで浸透して、拡散不良による電圧低下を引き起こすことがある。
【0052】
本実施形態では、反応に有効な触媒層104aの表面のみを親水化でき、品質のバラツキなしに高い電池特性を得ることができる。
【0053】
<第4の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態と同様な構成のものにおいて、導電性かつ撥水性の多孔質層104bの気孔率または気孔径が同一面内で異なるように構成したことを特徴としている。
【0054】
固体高分子型燃料電池システムの場合、同一電池面内で反応ガスの水蒸気飽和度は異なる。一般的に、反応ガスの上流側では水蒸気飽和度は低く電池は乾燥傾向となり、下流ほど水蒸気飽和度は高く湿潤傾向となる。
【0055】
本実施形態によれば、反応ガスの水蒸気飽和度が高い場所での導電性かつ撥水性の多孔質層の気孔率または気孔径を水蒸気飽和度が低い場所でのそれと比較して大きくすることにより、比較的に水分蒸発速度を高くでき、電池面内で固体高分子電解質膜および触媒層の水分量を均一化でき、触媒層の局部的な過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0056】
以下、本実施形態について具体的に説明する。第1の実施形態で示した構造の3セルスタックを製作した。
【0057】
但し、酸化剤ガス拡散電極104側の導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さは20μmとし、同一平面内で酸化剤入口側半分についてはその平均気孔径を1μm、気孔率を75%、酸化剤出口側半分についてはその平均気孔径を3μm、気孔率を80%、となるようにそれぞれ製作した。3セルスタックを常圧、80℃で連続運転して電池電圧低下速度を評価した。
【0058】
なお、供給する燃料ガスについては露点温度が60℃となるように予め加湿を行った。また、供給する空気については、スタックから排出される空気の飽和度が70〜95%となるように予め加湿を行った。
【0059】
図3に本実施形態の寿命特性と同一面内で気孔径、気孔率を均一とした従来比較例の寿命特性をそれぞれ示す。図3から、多孔質層104bにおいて、空気出口側の平均気孔径、気孔率を空気入口側のそれよりも大きくすることにより、電池電圧低下速度を抑制でき、長時間安定した電池特性が得られることが明らかである。
【0060】
本実施形態によれば、反応ガスの水蒸気飽和度が高い場所すなわち空気出口側での導電性かつ撥水性の多孔質層の気孔率または気孔径を、水蒸気飽和度が低い場所すなわち空気出口側でのそれと比較して大きくすることにより、水分が蓄積しやすい空気出口側で比較的に水分蒸発速度を高くでき、電池面内で固体高分子電解質膜および触媒層の水分量を均一化でき、触媒層の局部的な過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0061】
<第5の実施形態>
本実施形態は、図4の概略断面図に示すように、燃料ガス拡散電極103、酸化剤ガス拡散電極104のうち、少なくとも酸化剤ガス拡散電極104は、触媒層104aと多孔質ガス拡散板104sからなり、触媒層104aに接する多孔質ガス拡散板104sの表面の空隙内部に導電性かつ撥水性の多孔質層又は導電性かつ撥水性の材料が保持されていることを特徴とする。
【0062】
本実施形態によれば、多孔質ガス拡散板104sの表面の空隙内部に保持した導電性かつ撥水性の材料は、固体高分子電解質膜102および触媒層104aから水分が反応ガス側に蒸発する速度を抑制し、触媒層104aを適切の濡れ状態にすることができる。
【0063】
また、導電性かつ撥水性の材料をガス拡散板表面の空隙内部のみに保持することにより、反応ガスの水蒸気飽和度により反応ガス側への水分蒸発速度を容易に制御することができるため、触媒層104aの過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態によれば、第1の実施形態に示すような導電性かつ撥水性の多孔質層を形成しないため、層厚さ管理の必要がなく均質なガス拡散電極の製造が容易となる。
【0065】
又、本実施形態は、前述の導電性かつ撥水性の多孔質層または導電性かつ撥水性の材料は、カーボン微粒子とフッ素樹脂により構成したことを特徴としている。
【0066】
本実施形態によれば、電気導電性が高く化学的、熱的に安定であるカーボン微粒子と、撥水性が高く化学的、熱的に安定なフッ素樹脂を使用することにより、長期間安定して機能を維持することのできる導電性かつ撥水性の多孔質層または導電性かつ撥水性の材料を得ることができる。
【0067】
本実施形態は、前述の導電性かつ撥水性の材料を溶媒に分散したインクをスクリーンプリンターにてオンコンタクトで多孔質のガス拡散板に塗布し、多孔質ガス拡散板104sの表面の空隙内部に含浸することを特徴するものである。
【0068】
本実施形態によれば、導電性かつ撥水性の材料を溶媒に分散したインクをガス拡散板上に層を形成することなしに、容易に表面の空隙内部のみに含浸することができる。
【0069】
以下、第5の実施形態について具体的に説明する。図4に示す固体高分子型燃料電池の基本構成100を3セット積層した3セルスタックを製作した。燃料ガス拡散極103は、多孔質ガス拡散板103sと、導電性かつ撥水性の多孔質層103bと、触媒層103aからなる。なお、導電性かつ撥水性の多孔質層103bはカーボン微粉末とポリテトラフルオロエチレン(登録商標:フッ素樹脂)からなり、層形成後に360℃で10分間熱処理することにより撥水性を付与した。前記層の平均気孔径は1.2μm、厚さは22μmであった。一方、酸化剤ガス拡散電極104は、多孔質ガス拡散板104sと触媒層104aからなる。
【0070】
但し、多孔質ガス拡散板104sの触媒層104aと接する側の表面の空隙内部には導電性かつ撥水性の材料104iを保持含浸している。そのため、導電性かつ撥水性の材料としての単独層は設けられていない。
【0071】
層の形成方法として、スクリーンプリンターを使用し、スクリーンと多孔質ガス拡散板を密着させて(オンコンタクトで)印刷した。印刷に使用したインクはカーボン微粉末とポリテトラフルオロエチレンを水系の溶媒に分散した物であり、その粘度は印刷後インクがガス拡散板に吸収される程度の粘度とした。インク含浸後、360℃で10分間熱処理することにより撥水性を付与した。
【0072】
前記製造方法によれば、ガス拡散板にインクを均一に含浸することができる。触媒としては白金が50%含まれるカーボン担持触媒を使用し、燃料ガス拡散極、酸化剤ガス拡散極の白金塗布量はそれぞれ0.4mg/cmとなるようにした。固体高分子電解質膜102としては、厚さ50μmのナフィオン膜を使用した。
【0073】
上記の3セルスタックを常圧、80℃で連続運転して電池電圧の低下速度を評価した。なお、供給する燃料ガスについては露点温度が60℃となるように予め加湿を行った。また、供給する空気については、スタックから排出される空気の飽和度が70〜95%となるように予め加湿を行った。
【0074】
図5に導電性かつ撥水性材料104iを多孔質ガス拡散板104sに含浸保持した本実施形態の寿命特性と導電性かつ撥水性の多孔質層104bの厚さを20μmとした従来比較例の寿命特性をそれぞれ示す。
【0075】
図5から導電性かつ撥水性材料104iを含浸保持した多孔質ガス拡散板104sを使用することにより、電池電圧の低下速度を抑制でき、長時間安定した電池特性が得られることが明らかである。
【0076】
本実施形態によれば、多孔質のガス拡散板104s表面の空隙内部に保持した導電性かつ撥水性の材料104iは固体高分子電解質膜102および触媒層104aから水分が反応ガス側に蒸発する速度を抑制し、触媒層104aを適切の濡れ状態にする効果がある。
【0077】
また、導電性かつ撥水性の材料としての単独層を設けていないことから、触媒層104に生成した水分を比較的容易に酸化剤ガス側に排出することができる。よって、反応ガスの水蒸気飽和度により反応ガス側への水分蒸発速度を容易に制御することができるため、触媒層の過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができた。
【0078】
さらにまた、本実施形態によれば、導電性かつ撥水性材料104iの含浸をスクリーンプリンターにてオンコンタクトで行うことにより撥水性かつ導電性の材料を溶媒に分散したインクをガス拡散板上104に層を形成することなしに、容易に表面の空隙内部のみに均一に含浸することができた。
【0079】
さらに、本実施形態によれば導電性かつ撥水性の材料104iとして電気導電性が高く化学的、熱的に安定であるカーボン微粒子と、撥水性が高く化学的、熱的に安定なフッ素樹脂を使用することにより、長期間安定して撥水性を維持するこができるため、触媒層の過剰濡れによる経時的電池電圧低下を抑制することができた。
【0080】
<第6の実施形態>
本実施形態は、図11に示すガス拡散電極103,104として、それぞれ導電性かつ撥水性の多孔質層を挟んで配置した触媒層と多孔質のガス拡散板からなり、前記の酸化剤ガス側の導電性かつ撥水性の多孔質層の気孔径または気孔率が燃料ガス側のそれよりも大きいことを特徴とするものである。
【0081】
本実施形態は、固体高分子燃料電池では酸化剤ガス拡散電極の触媒層で反応生成水が生じるため、触媒層には水が蓄積されやすくなる。一方、燃料ガス拡散電極側では水の生成はないばかりか、水素イオンの移動に伴い水分は酸化剤ガス拡散電極側に移動することから、触媒層は乾燥傾向となる。よって、燃料ガス拡散電極側で水分の蒸発を抑制し、酸化剤ガス拡散電極側で水分の蒸発を抑制しつつ、過剰の水分を排出する制御を行うことが望ましい。
【0082】
本実施形態によれば、酸化剤ガス側の導電性かつ撥水性の多孔質層の気孔径または気孔径を燃料ガス側のそれよりも大きくすることにより、燃料ガス拡散電極からの水分蒸発を抑制し、酸化剤ガス側で過剰の水分を容易に排出することができ、また、酸化剤ガスの水蒸気飽和度のみにより水分蒸発速度を容易に制御することができるため、触媒層の過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0083】
以下、本実施形態について具体的に説明する。図11に示す固体高分子型燃料電池の基本構成100を3セット積層した3セルスタックを製作した。多孔質ガス拡散板103s、104sとして東レ製の多孔質カーボンペーパを使用した。導電性かつ撥水性の多孔質層103b、104bはカーボン微粉末とポリテトラフルオロエチレン(フッ素樹脂)からなる20μm程度の層であり、撥水性を付与するために360℃で10分間の熱処理が施されている。
【0084】
なお、それぞれの多孔質層形成に当たり、酸化剤ガス拡散電極側の多孔質層の平均気孔径、気孔率を燃料ガス拡散電極側のそれと比較して大きくすることを目的に、酸化剤ガス拡散電極側の多孔質層形成では造孔材を使用した。燃料ガス拡散電極103側の多孔質層103bの平均気孔径は1μm、気孔率は78%であった。
【0085】
一方、酸化剤ガス拡散電極104側の多孔質層104bの平均気孔径は5μm、気孔率は82%であった。上記導電性かつ撥水性の多孔質層上に触媒層103a、104aを形成した。
【0086】
触媒として白金が50%含まれるカーボン担持触媒を使用し、それぞれの白金塗布量は0.4mg/cm2となるようにした。固体高分子電解質膜102としては厚さ50μmのナフィオン膜を使用し、触媒層103a、104aの表面に電解液を塗布した後、ガス拡散電極103、104と接合した。
【0087】
上記の3セルスタックを常圧、80℃で連続運転して電池電圧の低下速度を評価した。なお、供給する燃料ガスについては露点温度が60℃となるように予め加湿を行った。また、供給する空気については、電池スタックから排出される空気の飽和度が70〜95%となるように予め加湿を行った。
【0088】
図6に酸化剤ガス拡散電極側の多孔質層の平均気孔径、気孔率を燃料ガス拡散電極側のそれと比較して大きくした本発明実施形態の寿命特性とそれらが同一である従来比較例の寿命特性をそれぞれ示す。図6から酸化剤ガス拡散電極側の多孔質層の平均気孔径、気孔率を燃料ガス拡散電極側のそれよりも大きくすることにより、電池電圧の低下速度を抑制でき、長時間安定した電池特性が得られることが明らかである。
【0089】
固体高分子燃料電池では酸化剤ガス拡散電極の触媒層で反応生成水が生じるため、前記触媒層には水が蓄積されやすくなる。一方、燃料ガス拡散電極側では水の生成はないばかりか、水素イオンの移動に伴い水分は酸化剤ガス拡散電極側に移動することから、前記触媒層は乾燥傾向となる。よって、燃料ガス拡散電極側で水分の蒸発を抑制し、酸化剤ガス拡散電極側で水分の蒸発を抑制しつつ、過剰の水分を排出する制御を行うことが望ましい。
【0090】
本実施形態によれば、酸化剤ガス側の導電性かつ撥水性の多孔質層の気孔径または気孔径を燃料ガス側のそれよりも大きくすることにより、燃料ガス拡散電極からの水分蒸発を抑制し、酸化剤ガス側で過剰の水分を容易に排出することができる。
【0091】
また、酸化剤ガスの水蒸気飽和度のみにより水分蒸発速度を容易に制御することができるため、触媒層の過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0092】
<第7の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態の多孔質層103bの製造方法に関するもので、ガス拡散板に導電性かつ撥水性の多孔質層または多孔質のガス拡散板表面の空隙内部に導電性かつ撥水性の材料を付与した後、または触媒層を形成した後、多孔質のガス拡散板と垂直方向に熱風を吹き付けることにより、分散材等の材料表面に付着している有機物を蒸発または熱分解させることを特徴とする。導電性かつ撥水性の多孔質層または触媒層の形成工程、多孔質のガス拡散板表面の空隙内部に導電性かつ撥水性の材料を付与する工程では、分散剤として界面活性剤など高級アルコールを使用することが多い。しかし、製造に上記の分散剤が残留しているとその部分で形成層の濡れ性が徐々に高くなる。このため、電池を長期運転すると電池内に発生する水分の蒸発速度が遅くなり電池特性低下の原因となっていた。
【0093】
これに対して、本実施形態によれば、ガス拡散板と垂直方向に熱風を吹き付けることにより、多孔質材料の微細気孔内に存在する分散剤も完全に蒸発または熱分解することができる。
【0094】
以下、本実施形態について具体的に説明する。本実施形態では、第1の実施形態で示した構造の3セルスタックを製作した。但し、導電性かつ撥水性の多孔質層103b、104bはカーボン粉末とフッ素樹脂の分散水溶液を多孔質ガス拡散板103s、104sにそれぞれ塗布することにより形成した。形成層の厚さはそれぞれ、10μm程度とした。
【0095】
層を形成した後、多孔質のガス拡散板と垂直方向に360℃の熱風を10分間吹き付ける処理を施した。上記の処理は、多孔質層103bおよび104bに撥水性を付与するとともに、カーボン粉末とフッ素樹脂の分散水溶液に含まれる界面活性剤などの有機物を多孔質層、触媒層、多孔質のガス拡散板の気孔からそれぞれ完全に除去するためである。
【0096】
上記3セルスタックを常圧、80℃で連続運転して電池電圧の低下速度を評価した。
【0097】
なお、供給する燃料ガスについては露点温度が60℃となるように予め加湿を行った。
【0098】
また、供給する空気については、スタックから排出される空気の飽和度が70〜95%となるように予め加湿を行った。
【0099】
図7に温風を吹き付けて熱処理を行った本発明実施形態の寿命特性と熱風を吹き付けず、360℃、10分間熱処理した従来比較例の寿命特性をそれぞれ示す。図7から、熱風を吹き付けて熱処理を施した電池では、電池電圧の低下速度を抑制でき、長時間安定した電池特性が得られることが明らかである。
【0100】
前述した従来例では、多孔質層103bおよび104bを形成する工程で、界面活性剤など有機物の除去が不十分であることから、多孔質層または触媒層の濡れ性が経時的に高くなる傾向があった。このことにより、電池内に発生する水分の蒸発速度が遅くなり、電池電圧が低下すると考えられる。
【0101】
本実施形態によれば、ガス拡散板と垂直方向に熱風を吹き付けることにより、多孔質材料の微細気孔内に存在する有機物も完全に蒸発または熱分解することができ、多孔質層、触媒層、多孔質のガス拡散板の撥水性を長期間維持できることから、安定した電池電圧を得ることができる。
【0102】
<第8の実施形態>
本実施形態は、図11又は図4に示す固体高分子型燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を測定する手段と、前記飽和度により燃料電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御する手段を設けたものである。
【0103】
本実施形態によれば、燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を監視し電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御することにより、電池スタック内の反応ガスの水蒸気飽和度を調整できる。このことにより、固体高分子電解質膜および触媒層からの反応ガス側への水分蒸発速度を容易に制御することができるため、触媒層の過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0104】
又本実施形態は、燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を70%〜95%となるように燃料電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御することを特徴とする。固体高分子型燃料電池を長時間安定して動作させるためには、酸化剤ガス拡散電極側の触媒層で生成する過剰水分を適切に除去することが重要となる。
【0105】
本実施形態によれば、燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を70%〜95%となるように動作させることにより、酸化剤ガス拡散電極に過剰の水分が蓄積することなしに長時間安定した動作が可能となる。
【0106】
更に本実施形態は、前述の燃料電池スタックの運転温度制御手段として冷却水の燃料電池スタック入口温度調整手段と冷却水流量調整手段で構成したことを特徴とする。
【0107】
本実施形態によれば、冷却水の燃料電池スタック入口温度と冷却水流量を調整することにより、電池スタック入口冷却水温度と電池スタック出口冷却水温度を独自に制御可能となり、電池面内での温度分布を任意に設定することができ、電池面内で反応ガスの水蒸気飽和度を調整できる。このことにより、電池面内で固体高分子電解質膜および触媒層からの反応ガス側への水分蒸発速度を設定することができ、触媒層の過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【0108】
次に、本実施形態について、図8、図9、図10を参照して具体的に説明する。図8は、本実施形態の固体高分子型燃料電池システムを示す概略構成図である。ここでは、燃料電池スタックを安定に運転するために必要な機能のみを記載しており、反応生成水の回収ライン、バルブなどは全て省略している。
【0109】
図8において、燃料電池スタック1の酸化剤ガス出口に水蒸気の飽和度を測定するために露点/温度計2を設置した。
【0110】
発電により発熱する燃料電池スタック1を冷却する為に冷却水供給装置7を設けた。冷却水供給装置7は冷却器4、冷却水タンク5、可変循環ポンプ6からなる。制御演算部3は露点/温度計2からデータを受け、燃料電池スタック出口酸化剤ガスの水蒸気飽和度を計算し、その計算結果に基づき冷却器4と可変循環ポンプ6に制御信号を出す。冷却器4は制御演算部3から制御信号を受け冷却能力を調整して冷却水の温度を調整する。
【0111】
また、可変循環ポンプ6制御演算部3から制御信号を受け燃料電池スタックに供給する冷却水の流量を調整する。上記システムにおいて、燃料電池スタック出口酸化剤ガスの水蒸気飽和度が90%、電池スタック1入口/出口の冷却水温度差を5℃となるように設定し、燃料電池スタックの運転を行った。
【0112】
図9は、運転温度を制御する本実施形態の寿命特性と、運転温度を制御しない従来比較例の寿命特性を示す。図9から明らかなように、運転温度を制御することにより、電池電圧の低下速度を抑制でき、長時間安定した電池特性が得られることが明らかである。
【0113】
なお、燃料電池スタック出口酸化剤ガスの水蒸気飽和度と電池電圧の関係を図10に示す。水蒸気飽和度が70%以下では、固体高分子膜は乾燥傾向となり、電池抵抗が上昇することにより電池電圧は低下する。また、95%を越えると電池内の過剰水分の除去が不良となり電池電圧が急激に低下する。このことから、燃料電池スタック出口酸化剤ガスの水蒸気飽和度を70%〜95%として上記実施形態と同様の運転評価を実施したが、同様に高い電池電圧を長時間維持することができた。
【0114】
上記の実施形態では料電池スタック出口酸化剤ガスの水蒸気飽和度により電池スタックの温度を調整したが、電池スタックに供給する反応ガスの水蒸気飽和度を反応ガス加湿器8により調整することによっても同様の効果が得られる。
【0115】
本実施形態によれば、燃料電池スタック出口における酸化剤ガスの水蒸気の飽和度を監視し電池スタックの運転温度または供給する反応ガスの水蒸気飽和度を制御することにより、電池スタック内の反応ガスの水蒸気飽和度を容易に調整できる。このことにより、固体高分子電解質膜および触媒層からの反応ガス側への水分蒸発速度を容易に制御することができるため、触媒層の過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができ、長期安定して運転可能となる。
【0116】
また、本実施形態では燃料電池スタックの酸化剤ガス出口における水蒸気の飽和度を70%〜95%となるように動作させることにより、燃料電池スタック内に過剰の水分が蓄積することなしに長時間安定した動作が可能となる。
【0117】
また、本実施形態では、冷却水の燃料電池スタック入口温度と冷却水流量を制御することにより、冷却水入口温度と冷却水出口温度を独自に制御可能となり、電池面内での温度分布を任意に設定することができ、電池面内で反応ガスの水蒸気飽和度を調整できる。このことにより電池面内で固体高分子電解質膜および触媒層からの反応ガス側への水分蒸発速度を電池面内で均一に設定することができ、触媒層の局部的な過剰濡れによる電池電圧低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の固体分子型燃料電システムの池第1の実施形態の効果を説明するための多孔質層の厚さと電池電圧低下速度の関係を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態の効果を示す電池寿命特性図。
【図3】本発明の第3の実施形態の効果を示す電池寿命特性図。
【図4】本発明の第5の実施形態の電池構成を示す概略断面図。
【図5】本発明の第5の実施形態の効果を示す電池寿命特性図。
【図6】本発明の第6の実施形態の効果を示す電池寿命特性図。
【図7】本発明の第7の実施形態の効果を示す電池寿命特性図。
【図8】本発明の第8の実施形態を説明するための燃料電池システム図。
【図9】本発明の第8の実施形態の効果を説明するための電池スタック寿命特性図。
【図10】本発明の第8の実施形態の効果を説明するための電池スタック出口の水蒸気飽和度と電池スタック電圧の関係を示す図。
【図11】従来の固体分子型燃料電システムの電池構成を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0119】
1…燃料電池スタック、2…露点/温度計、3…制御演算部、4…冷却器、5…冷却水タンク、6…可変循環ポンプ、7…冷却水供給装置、8…反応ガス加湿器、100…基本構成、101…単位電池、102…固体高分子電解質膜、103…燃料ガス拡散電極、103c…燃料ガス流通路、103a…触媒層、103b…多孔質層、103s…多孔質ガス拡散板、104a…触媒層、104b…多孔質層、104…酸化剤ガス拡散電極、104c…酸化剤ガス流通路、104s…多孔質ガス拡散板、104i…撥水性材料、104s…ガス拡散板、105…燃料ガス流通路付きセパレータ、106…酸化剤ガス流通路付きセパレータ、107c…冷却水流通路、107…冷却板。




 

 


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