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発明の名称 複合電解質膜
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−12327(P2007−12327A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−188983(P2005−188983)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100072431
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 和郎
発明者 山本 泰右 / 北條 伸彦 / 岡田 行広
要約 課題
剥離しにくい保護層を有することによって耐久性に優れ、高い耐水性を有し、かつ高温低湿度雰囲気下においても優れたプロトン伝導性を発揮し得る複合電解質膜を提供する。

解決手段
複数の貫通孔を有する多孔質基材と、前記貫通孔に保持された電解質と、を含む複合電解質膜において、前記多孔質基材の第1の面および前記第1の面に対向する第2の面に、酸性重合体で構成された保護層を設け、前記第1の面および前記第2の面の少なくとも一方において、前記保護層の少なくとも一部を前記貫通孔の内部に位置させる。
特許請求の範囲
【請求項1】
複数の貫通孔を有する多孔質基材と、前記貫通孔に保持された電解質と、を含む複合電解質膜であって、
前記多孔質基材の第1の面および前記第1の面に対向する第2の面に、酸性重合体で構成された保護層が設けられ、
前記第1の面および前記第2の面の少なくとも一方において、前記保護層の少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置すること、を特徴とする複合電解質膜。
【請求項2】
前記第1の面および前記第2の面の少なくとも一方において、前記保護層の全部が前記貫通孔の内部に位置すること、を特徴とする請求項1記載の複合電解質膜。
【請求項3】
前記第1の面および前記第2の面の両方において、前記保護層の少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置すること、を特徴とする請求項1記載の複合電解質膜。
【請求項4】
前記第1の面および前記第2の面の両方において、前記保護層の全部が貫通孔の内部に位置すること、を特徴とする請求項3記載の複合電解質膜。
【請求項5】
前記保護層のうち前記貫通孔の内部に位置する部分の厚みが、前記多孔質基材の厚みの0.01%〜20%であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合電解質膜。
【請求項6】
前記酸性重合体が140℃、相対湿度10%で10-4S/cm以上のプロトン伝導率を有すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合電解質膜。
【請求項7】
前記酸性重合体がポリビニルリン酸およびポリビニルリン酸の誘導体のうちの少なくとも一方を含むこと、を特徴とする請求項6記載の複合電解質膜。
【請求項8】
前記貫通孔の平均細孔径が1nm〜100nmであること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合電解質膜。
【請求項9】
前記多孔質基材が多孔質ガラスであること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合電解質膜。
【請求項10】
前記保護層が化学結合により前記多孔質基材の表面に固定化されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合電解質膜。
【請求項11】
請求項1から4のいずれかに記載の電解質膜の製造方法であって、
(1)複数の貫通孔を有する多孔質基材の前記貫通孔に電解質を含浸させる工程と、(2)前記多孔質基材の表面に酸性重合体からなる保護層を形成する工程と、を有することを特徴とする複合電解質膜の製造方法。
【請求項12】
前記工程(2)において、光重合により前記保護層を形成すること、を特徴とする請求項8記載の複合電解質膜の製造方法
【請求項13】
請求項1〜4のいずれかに記載の電解質膜を含むこと、を特徴とする膜電極複合体。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれかに記載の電解質膜を含むこと、を特徴とする燃料電池。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池およびその他の電気化学セルに用いられる複合電解質膜、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質として水素イオン(プロトン)伝導性を有する高分子電解質を使用する高分子電解質型燃料電池は、燃料が供給されるアノード電極と、空気などの酸素含有ガスが供給されるカソード電極と、これら電極の間に狭持された水素イオン(プロトン)伝導性を有する高分子電解質膜とを有する。
現在、前記高分子電解質膜としては、米国Du Pont社製のNafion(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系の高分子電解質膜が広汎に使用されており、そのプロトン伝導機構には水が必要とされるため、上記高分子電解質型燃料電池の発電時には上記高分子電解質膜の含水率が低下しないように水分の管理をする必要がある。
【0003】
上記のような高分子電解質型燃料電池の出力を向上させる方法としては、例えば100℃以上の高温で当該高分子電解質型燃料電池を作動させる方法等が挙げられる。このように高温で作動させると、触媒被毒の軽減および電極反応抵抗の低下等によって電圧の向上が期待されるからである。
しかし、現在用いられている上記のようなパーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜では、100℃以上の温度領域ではその導電率が著しく低下し、耐熱性も損なわれてしまうという問題があるため、上記のような高温領域で使用することは困難である。
【0004】
これに対し、100℃〜200℃の温度領域で使用可能な電解質膜として、ポリベンズイミダゾール(PBI)膜が挙げられる。なかでも、PBI膜にリン酸などの強酸をドープすることにより、100℃〜160℃の温度領域においても良好なプロトン伝導を発揮することが確認されている。
また、リン酸ドープPBI膜は低湿度雰囲気においても10-2S/cm以上の高い導電率(プロトン伝導性)を示すため、水分管理が不要であり、簡素なシステムで燃料電池を作動させることが可能である(例えば特許文献1および2)。
【0005】
ところが、リン酸ドープPBI膜を用いた燃料電池を発電させるとカソードから水が生成し、生成水がリン酸ドープPBI膜に接触するとドーパントであるリン酸が溶出して脱離し、耐久性(即ち耐水性)が低下したり膜抵抗が増大したりするという問題がある。その対策としては、ドーパントにリン酸ではなく水に対する溶解性の低い有機リン酸を用いるなどの方法により、複合電解質膜の耐水性を向上する方法が開示されている(例えば特許文献2)。しかしながら、耐水性の高い酸を用いると、導電率が低下してしまうという問題がある。
また、耐水性を向上させる別の方法として、例えばマトリックス中に液状電解質が含浸されてなる複合電解質の表面を高分子膜(保護層)で被覆する方法が提案されている(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特表平11−503262号公報
【特許文献2】特開2000−38472号公報
【特許文献3】特開2001−325970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献3記載の構成では、保護層が複合電解質膜の表面上を被覆しているだけであることから、当該保護層が剥離してしまうという問題が考えられる。また、複合電解質膜に電解質としての機能を発揮させるためには、上記保護層は導電率(プロトン伝導性)および耐水性の両方を具備する必要があるが、上述のようにプロトン伝導性と耐水性とはトレードオフの関係(即ち、耐水性を確保するためにはプロトン伝導性を損なう傾向にあり、膜抵抗が増大してしまうという関係)があるという問題がある。
【0007】
以上の問題点に鑑み、本発明の目的は、剥離しにくい保護層を有することによって耐久性に優れ、高い耐水性を有し、かつ高温低湿度雰囲気下においても優れたプロトン伝導性を発揮し得る複合電解質膜を提供することにある。
また、本発明の目的は、耐久性および耐水性に優れかつ高温低湿度雰囲気下においても高出力で発電することが可能な燃料電池を実現するための膜電極接合体、さらには、当該膜電極接合体を用いた燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
複数の貫通孔を有する多孔質基材と、前記貫通孔に保持された電解質と、を含む複合電解質膜であって、
前記多孔質基材の第1の面および前記第1の面に対向する第2の面に、酸性重合体で構成された保護層が設けられ、
前記第1の面および前記第2の面の少なくとも一方において、前記保護層の少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置すること、を特徴とする複合電解質膜を提供する。
【0009】
上記複合電解質膜においては、前記第1の面および前記第2の面の少なくとも一方において、前記保護層の全部が前記貫通孔の内部に位置するのが有効である。
また、前記第1の面および前記第2の面の両方において、前記保護層の少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置するのも有効であり、さらには、前記第1の面および前記第2の面の両方において、前記保護層の全部が貫通孔の内部に位置することが有効である。
【0010】
前記保護層のうち前記貫通孔の内部に位置する部分の厚みは、前記多孔質基材の厚みの0.01%〜20%であることが有効である。
また、前記酸性重合体が140℃、相対湿度10%で10-4S/cm以上のプロトン伝導率を有することが有効である。
さらに、前記酸性重合体がポリビニルリン酸およびポリビニルリン酸の誘導体のうちの少なくとも一方を含むことが有効である。
【0011】
前記貫通孔の平均細孔径が1nm〜100nmであるのが有効であり、前記多孔質基材が多孔質ガラスであるのが有効である。
また、前記保護層は化学結合により前記多孔質基材の表面に固定化されているのが好ましい。
【0012】
さらに本発明は、上記複合電解質膜の製造方法であって、
(1)複数の貫通孔を有する多孔質基材の前記貫通孔に電解質を含浸させる工程と、(2)前記多孔質基材の表面に酸性重合体からなる保護層を形成する工程とを有すること、を特徴とする複合電解質膜の製造方法をも提供する。
前記工程(2)においては、光重合により前記保護層を形成することが有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、剥離しにくい保護層を有することによって耐久性に優れ、高い耐水性を有し、かつ高温低湿度雰囲気下においても優れたプロトン伝導性を発揮し得る複合電解質膜を得ることができる。また、本発明によれば、耐久性および耐久性に優れ、かつ高温低湿度雰囲気下においても高出力で発電することが可能な燃料電池を実現するための膜電極接合体、さらには、当該膜電極接合体を用いた燃料電池を得ることができる。
【0014】
特に本発明の複合電解質膜は、100℃以上の高温低湿度雰囲気下において高いプロトン伝導性を有し、また優れた耐水性を有する。したがって、本発明の複合電解質膜を含む燃料電池は、加湿器を用いることが不要であり、高温低湿度雰囲気下でも高出力で発電することが可能であるため、システム全体としての小型化および高出力化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0016】
1.複合電解質膜について
図1は、本発明に係る複合電解質膜の一実施の形態の構造を模式的に示した概略断面図である。図1に示すように、本発明の複合電解質膜1は、複数の貫通孔2aを有する多孔質基材2と、貫通孔2a内に保持された電解質3とで構成されている。そして、多孔質基材2の第1の面および前記第1の面に対向する第2の面には、酸性重合体からなる保護層4a、4bが形成されている。
本発明に係る複合電解質膜1の特徴は、保護層4a、4bの少なくとも一部が多孔質基材2の貫通孔2aの内部に存在している点にあり、多孔質基材2の外部に位置する保護層4a、4bの部分はあってもなくてもよい。
【0017】
このように、保護層4a、4bのうち少なくとも一部が多孔質基材2の貫通孔2aの内部に形成されることにより、従来問題となっていた保護層4a、4bの剥離という問題を解決することができ、複合電解質膜1の耐水性を向上することができる。
また、電解質が多孔質基材2の貫通孔2aの内部に保持されていることから、複合電解質膜1は高いプロトン伝導性(導電率)を発揮することが可能である。
【0018】
複合電解質膜1において、保護層4a、4bのうち多孔質基材2の貫通孔2aの内部に存在する部分の厚み(即ち、図1におけるta、tb)は、多孔質基材2の厚み(即ち、図1におけるT)の0.01%〜20%であるのが好ましい。
このように保護層3a、3bの厚みを上記範囲に設定することにより、複合電解質膜1の耐水性および高いプロトン伝導性を両立させることが可能となる。
【0019】
ここで、多孔質基材2としては多孔質ガラスを用いるのが好ましい。多孔質基材2の表面に重合体を固定化することが容易となり、保護層4a、4bの形成が容易となるからである。特に重合体を共有結合により多孔質基材2の表面に固定化すれば、さらに複合電解質膜1の耐水性を向上させることができ、100℃以上の高温領域でも熱的安定性および化学的安定性を発揮することができる。
なお、多孔質基材2の表面とは、多孔質基材2の第1の面と第2の面だけを意味するものではなく、貫通孔2aの内壁面をも含む概念である。
【0020】
また、多孔質基材2の貫通孔2aについては、1nm〜100nmの平均細孔径を有するのが好ましい。
このように貫通孔2aの平均細孔径を上記範囲に設定することにより、多孔質基材2への電解質の含浸(充填)が比較的容易となり、また、一定以上の大きさを有する重合体の場合には細孔中での移動が抑制され、複合電解質膜1の耐水性も向上する。
なお、上記平均細孔径は、窒素吸着法などによって算出することができる。
【0021】
また、貫通孔2aに充填させる電解質としては、高いプロトン解離度を有するという理由から、リン酸基、スルホン酸基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種の酸性官能基を有する電解質を用いるのが好ましい。特に制限はないが、ビニルリン酸、アリルリン酸、エポキシリン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エポキシスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン酸、および上記電解質のフッ素置換体などを用いることことができる。また、反応性官能基を有さない酸性電解質としては、特に制限はないが、リン酸、硫酸、酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、およびトリフルオロ酢酸などを用いることができる。
【0022】
また、酸性電解質の他に、プロトンのアクセプターとして作用する塩基性官能基を有する塩基性電解質を添加してもよい。塩基性官能基としては、プロトンを受容することが可能であれば特に制限はないが、一級アミン、二級アミン、三級アミン、イミダゾール環、ピリジニル基などの官能基を有していることが好ましい。これにより、細孔内に存在する酸性官能基がプロトンドナーとして作用し、また、塩基性官能基がプロトンアクセプターとして作用することにより、プロトン伝導可能なフリーなプロトン数を向上させることが可能となる。
これにより、本発明の複合電解質膜1は100℃以上の高温低湿度雰囲気下においても高いプロトン伝導性を発揮することができる。
【0023】
保護層4a、4bを構成する材料としては、プロトン解離性官能基を有し、プロトン伝導が可能なものであればよいが、なかでも、140℃、相対湿度10%において10-4S/cm以上のプロトン伝導率を有する重合体電解質を使用するのが好ましい。
このように低湿度雰囲気下においても高いプロトン伝導率を有する材料を使用することにより、複合電解質膜1の膜抵抗が軽減され、高出力化が可能となる。
【0024】
さらに好ましくは、保護層4a、4bを構成する材料である重合体電解質は、少なくとも一部にポリビニルリン酸およびポリビニルリン酸の誘導体のうちの少なくともいずれか一方を含んでいるのが好ましい。
このような構成によれば、電解質としてビニルリン酸およびその誘導体のうちの少なくとも一方を用いた場合に、容易かつ確実に保護層4a、4bを形成することができる。
【0025】
以上のような構成を有する本発明に係る複合電解質膜1は、保護層4a、4bを有することによって、多孔質基材2に含まれている電解質が外部に滲出することを顕著に抑制することができる。
また、特に100℃以上の高温領域において想定される低湿度雰囲気下においてもプロトン伝導性を発揮し、また、上記保護層4a、4bの存在により、100℃以下の液体水が存在する雰囲気下においても高い耐水性を発揮する。
【0026】
つぎに、上記複合電解質膜1の製造方法について説明する。
本発明に係る複合電解質膜1は、(1)複数の貫通孔を有する多孔質基材の前記貫通孔に電解質を含浸させる工程と、(2)前記多孔質基材の表面に酸性重合体からなる保護層を形成する工程と、によって作製することができる。
【0027】
したがって、本発明に係る製造方法において、上記電解質は反応性を有する重合性モノマーを含んでいることが必要である。これにより、重合反応さえ行えば、特別な加工を施すことなく、容易かつ確実に保護層4a、4bを有する複合電解質膜1を得ることができる。
なかでも、ビニルリン酸を用いると、貫通孔2aに充填した電解質であるビニルリン酸のうちの少なくとも一部を重合させて、酸性重合体からなる保護層4a、4bを形成することができ好適である。
【0028】
上記工程(1)においては、例えば、重合性モノマーを含む電解質と重合開始剤とを含有する溶液に、複数の貫通孔2aを有する多孔質基材2を浸漬し、前記貫通孔2a内に前記電解質を充填する。貫通孔2a内部に電解質を充填させる方法としては、特に制限はないが、例えば真空含浸により前記溶液を多孔質基材2に含浸させる方法や、加圧によりより前記溶液を多孔質基材2に含浸させる方法などが挙げられる。
【0029】
上記工程(2)においては、例えばUV重合法や電子線重合法などに代表されるエネルギー照射による重合方法を用いることができる。
これらの重合方法を用いれば、反応および精製等を簡便に行うことができ、本発明に係る複合電解質膜を容易に作製することが可能となる。また、照射するエネルギー量を調節することにより、多孔質基材2の貫通孔2a中の保護層4a、4bの厚みを容易に制御することが可能となる。
【0030】
2.膜電極接合体について
図2は、図1に示す複合電解質膜1を搭載した本発明の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の一実施の形態の構造を模式的に示した概略断面図である。図2に示すように、本発明の膜電極接合体10は、先に述べた複合電解質膜1とアノード電極11aとカソード電極11bとを含み、複合電解質膜1がノード電極11aとカソード電極11bとで挟持された構造を有している。
膜電極接合体1において、アノード電極11aはカソード電極11bと対向するように配置されている。
【0031】
上記のアノード電極11aおよびカソード電極11bとしては、特に限定されることなく一般的な公知の電極を用いることができる。
また、膜電極接合体10の製造方法についても特に制限はなく、一般的な公知の方法を用いて作製することができる。例えば、アノード電極11aと複合電解質膜1とカソード電極11bとをプレスなどにより圧着してもよく、電極触媒、導電材および電解質を含むインクを調製してこれを複合電解質膜1の両面に塗布することによりアノード電極11aおよびカソード電極11bを形成してもよい。
【0032】
上記のような本発明の膜電極接合体10を用いれば、耐久性および耐水性に優れかつ高温低湿度雰囲気下においても高出力で発電することが可能な燃料電池を容易かつ確実に実現することができる。
【0033】
3.燃料電池について
図3は、図2に示す膜電極接合体10を搭載した本発明の燃料電池(単電池)の一実施の形態の構造を模式的に示した分解斜視図である。図3に示すように、本発明の燃料電池20は、先に述べた本発明の膜電極接合体10を、アノードガス拡散層12aおよびカソードガス拡散層12bによって狭持することにより構成されている。
これらアノードガス拡散層12aおよびカソードガス拡散層12bは、それぞれ膜電極接合体10のアノード電極11aおよびカソード電極11b対応している。なお、図3において、アノード電極11aは図示していない。
【0034】
また、図3に示す燃料電池20では、アノードガス拡散層11aおよびカソードガス拡散層11bの外側にそれぞれアノードセパレータ12aおよびカソードセパレータ12bが配置されている。
そして、図3においては概略的に示したが、アノードセパレータ13aには燃料供給マニホールド14が形成され、カソードセパレータ13bには酸化剤供給マニホールド15が形成されている。また、アノードセパレータ13aのアノードガス拡散層11aに面する部分には、ガス流路16aが形成されており、図示しないが、カソードセパレータ13bのカソードガス拡散層11bに面する部分にもガス流路が形成されている。これらガス流路は常法により形成すればよい。
【0035】
さらに、カソードセパレータ13bの、カソードガス拡散層12b側の面と反対の面には、冷却水用流路17bが設けられており、図示しないが、アノードセパレータ13aの、アノードガス拡散層12a側の面と反対の面にも冷却水用流路が設けられている。なお、冷却水用流路は、アノードセパレータ13aおよびカソードセパレータ13bのいずれか一方に設けてもよく、いずれにも設けなくてもよい場合もある。
また、アノードガス拡散層11aおよびカソードガス拡散層11bに電極触媒が担持されている場合は、複合電解質膜1の両面にそれぞれアノード電極11aおよびカソード電極11bを設けなくてもよい。
【0036】
本発明に係る燃料電池20のうち、複合電解質膜1以外の部材に用いる材料および構造等については、特に限定はなく、一般的な高分子電解質型燃料電池と同様の材料および構造を採用することができる。例えば、アノード電極11aおよびカソード電極11bは、電極触媒としてのPtおよび導電材としての炭素粉末を含んでいてもよい。
また、用いる燃料についても特に制限はなく、例えば、水素および炭化水素から選ばれる少なくとも1種の気体または液体を含む燃料であればよい。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジメチルエーテルなどのエーテル類、またはそれらの水溶液を用いることができる。燃料が液体である場合、例えば、カートリッジなどから燃料電池へ燃料を供給することも可能である。
【0037】
上記のような本発明の燃料電池20は、先に述べた複合電解質膜1および膜電極接合体10を用いているため、耐久性および耐水性に優れかつ高温低湿度雰囲気下においても高出力で発電することができる。
【0038】
上記実施の形態においては、複合電解質膜1の第1の面および第2の面において、保護層3a、3bが部分的に基性高分子膜2の内部に位置する態様について説明したが、前記第1の面および前記第2の面の一方において、保護層3a、3bが部分的に塩基性高分子膜2の内部に位置していても上記と同様の効果が得られる。
また、前記第1の面および前記第2の面の少なくとも一方、好ましくは両方において、保護層3a、3bの全部が塩基性高分子膜2の内部に位置していてもよい。これらの場合には、保護層3a、3bの剥離をより確実に抑制することができ、本発明の効果をより容易かつ確実に得ることができる。
以下に実施例を用いて本発明に関してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
《実施例1〜6》
本実施例では、平均細孔径が4nmの貫通孔を有し、膜厚500μmの多孔質ガラスを多孔質基材として用い、貫通孔内部に含浸する電解質としてはビニルリン酸を用い、図1において保護層3a、3bがすべて塩基性高分子膜2の貫通孔2a内に位置する構造を有する複合電解質膜を作製した。
ビニルリン酸に光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを重量分率が1wt%になるように添加して、電解質混合物を得た。この電解質混合物中に多孔質基材2に浸漬させて、60℃で真空含浸することにより、多孔質基材2の貫通孔2a内に電解質を充填した。
【0040】
電解質を充填した後に、紫外線照射装置を用いて上記多孔質基材2の両面に紫外線を照射することによりビニルリン酸を硬化し、貫通孔2a内に重合体からなる保護層4a、4bを形成した。保護層4a、4bの膜厚は照射エネルギー量により変化するため、照射エネルギーを制御することにより、保護層4a、4bの膜厚を変化させた複合電解質膜1〜6を得た。
【0041】
《比較例1》
本比較例では、リン酸ドープPBI膜を作製した。まず初めに20wt%のポリベンズイミダゾール(PBI)を含むジメチルアセトアミド溶液(DMAc)をガラス板にキャストして、60℃で15分間乾燥後、120℃で15分間乾燥させ、PBI膜を形成した。その後、自然冷却した後にガラス板からPBI膜を剥離して90℃で12時間真空乾燥した。乾燥させたPBI膜にはLiCl塩が含まれているため、沸騰水中で2時間処理し、塩を除去した。これにより作製したPBI膜を3cm×3cmの大きさに切断した。
【0042】
続いて、上記PBI膜にリン酸を含浸させた。11Mに調整したビニルリン酸水溶液中にPBI膜を3日間浸漬した後、60℃で12時間真空乾燥した。浸漬前後の重量変化からリン酸のドープ率を求めたところ、4.8であった。ここでのドープ率とはPBIのモノマーユニットあたりに複合化されたビニルリン酸の数(個/PBI−ユニット)を示す。上記のようにして比較用電解質膜を得た。
【0043】
《実施例7〜12》
本実施例では、表2に示すような細孔径の異なる貫通孔を有する多孔質ガラスを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、保護層4a、4bの膜厚(貫通孔内の部分の厚み)が約1μmの複合電解質膜7〜12を作製した。
【0044】
《実施例13》
実施例3では、多孔質基材として細孔径が4nmの貫通孔を有する多孔質ガラスを用い、電解質としてビニルリン酸を用い、さらに保護層のポリビニルリン酸を多孔質ガラスの表面に共有結合することにより固定化した以外は、実施例1と同様の方法で複合電解質膜を作製した。
ビニルトリメトキシシランとトルエンとを1:3の体積比で含む混合溶液を調整し、60℃で上記多孔質ガラスを2時間浸漬させた。多孔質ガラスの表面には、下記反応式(1):で示される反応によりビニル基が導入された。
【0045】
【化1】


【0046】
多孔質ガラスの表面にビニル基を固定化した後、実施例1と同様の方法で多孔質基材2の貫通孔2a内部にビニルリン酸および重合開始剤を導入し、紫外線を照射することにより、保護層4a、4bを形成し、複合電解質膜13を得た。
【0047】
《実施例14》
本実施例では、多孔質基材として細孔径が4nmの貫通孔を有する多孔質ガラスを用い、電解質としてイミダゾールおよびビニルリン酸を用いた。ビニルリン酸とイミダゾールとを9:1の重量比で含む混合溶液を90℃で調整し、さらにビニルリン酸の1wt%の光重合開始剤を添加した。この溶液に上記多孔質ガラスを含浸させ、90℃真空下で電解質を多孔質基材2の貫通孔2a内に充填し、紫外線を照射することにより保護層4a、4bを形成し、複合電解質膜14を得た。
【0048】
[特性評価]
・プロトン伝導性
また、上記複合電解質膜1〜14および比較用電解質膜についてプロトン伝導性(導電率)を測定した。測定は電解質膜を金電極で挟持し、水素雰囲気下、140℃、相対湿度0.5%の環境下で交流インピーダンス測定法を行うことによって行った。結果を表1に示す。
【0049】
・耐水性
上記複合電解質膜1〜7および比較用電解質膜1について耐水性を評価した。耐水性試験は30mlの純水中に電解質膜を浸漬した後、真空乾燥させ、140℃、水素雰囲気下、相対湿度0.5%の環境下で交流インピーダンス測定により導電率を測定した。そして、式:(導電率保持率)=(水浸漬後導電率)/(水浸漬前導電率)により、導電率保持率を求めた。この導電率保持率を耐水性を比較する尺度として用いた。結果を表1に示す。
【0050】
・多孔質基材の内部に位置する保護層の厚みの比
多孔質基材中に位置する保護層の部分の厚さを測定を直接測定するのは困難であるため、以下の手順で間接的に保護層の厚みを測定した。
まず、得られた複合電解質膜1〜14を切断し、未反応の端面を露出させた後に水に浸漬させることにより、未反応の電解質を除去した。重合後の電解質も水により溶出してしまうが、その溶出速度は未反応の電解質に比べてきわめて遅いため、未反応の電解質を優先して除去することが可能である。
【0051】
上記のように未反応の電解質を除去した後に端面をEPMAによりリン元素をマッピングすることにより保護層の厚みを決定し、式:(保護層の厚み比)=(多孔質基材の内部に位置する保護層の部分の厚み)/(多孔質基材の厚み)によって、保護層の厚み比(保護層の膜厚比)を求めた。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】


【0053】
表1に示すように本発明に係る複合電解質膜1〜6は、140℃という高温でかつ相対湿度0.5%という低湿度雰囲気下においても高い導電率を有し、実使用可能なレベルを持つことが確認された。
また、水浸漬前後の導電率変化から求めた導電率保持率は、比較用電解質膜と比べると飛躍的に向上し、耐水性の向上が確認された。
【0054】
ここで、図4は保護層の膜厚比とプロトン導電率の関係を示した図であり、また図5は保護層の膜厚比と導電率保持率の関係を示した図である。
図4から、保護層の膜厚比が20%を超えると電導率が急激に減少していることが確認される。保護層においては電解質が重合体を形成しており、低分子量の電解質に比べると電解質の運動性が低下するため電導率が低下することを示している。したがって、ある一定の割合以上の膜厚比になると、複合電解質膜全体としての導電率が低下してしまい、燃料電池用の電解質膜としての使用が困難になる。
【0055】
また、図5から保護層の膜厚比が0.01%以上になると導電率保持率が高くなることが確認された。これは、保護層の膜厚比が小さいと、水に対しての耐久性が低くなることから、ある一定の割合以上に保護層を形成することが、耐水性を飛躍的に向上させるためには必要であるためである。
以上から、保護層の膜厚比は、0.01%以上20%以下の範囲内にあることが低湿度雰囲気下における導電率の確保および耐水性の向上に必要であることが確認された。
【0056】
続いて、実施例7〜12で作製した複合電解質膜7〜12に関して、上記と同様にして特性評価を行った結果を表2に示す。
【0057】
【表2】



【0058】
表2に示されるように、いずれの細孔径を有する多孔質基材で作製した複合電解質膜の導電率も、140℃、相対湿度0.5%の雰囲気下で実使用可能な高い値を有することが確認された。
また、導電率保持率は細孔径に対する依存性を示した。図6に細孔径に対する導電率保持率の変化を示す。細孔径が増加すると導電率は低下する傾向を示し、細孔径が100nmを超えると導電率は急激に低下することが確認された。保護層を構成する重合体が狭い細孔の中で成長することにより耐水性が向上するが、細孔径が大きいと成長した重合体であっても比較的自由に拡散することが可能であるため、100nm以上の細孔では耐水性の向上効果が低いためである。
【0059】
続いて、複合電解質膜13および14に関して、実施例1と同様にして特性評価を行った結果を表3に示す。表3には、比較のため、比較用電解質膜、ならびに細孔径および保護層の膜厚比が同一である複合電解質膜3の特性も示した。
【0060】
【表3】


【0061】
保護層の重合体を多孔質基材の表面に固定化した複合電解質膜13は、複合電解質膜3に対して導電率は若干低下するものの、導電率保持率に関しては向上することが確認できた。これは、多孔質基材の表面に共有結合により重合体を形成することで、固定化された重合体は容易に脱離することがなく、耐水性が向上することを示している。
電解質として塩基性物質を添加した複合電解質膜14に関しては、複合電解質膜3に比べると導電率保持率はほとんど変化がないが、導電率が向上することが確認された。これは酸性電解質の中に塩基性電解質を添加することで、酸塩基結合を形成することによりフリープロトンが増加したためと考えられる。したがって、使用する電解質としては、酸性電解質だけでなく、塩基性電解質であっても本発明は耐水性の向上に有効であることが示された。
【0062】
《実施例15〜26》
本実施例においては、上記実施例で作製した本発明に係る複合電解質膜1〜12を用いた膜電極接合体および燃料電池を作製し、発電試験を行った。それぞれの複合電解質膜の厚みは約500μmである。
複合電解質膜1〜12の両面に、アノード電極およびカソード電極を配置することにより、膜電極接合体を作製した。つぎに、膜電極接合体をさらに狭持するように、それぞれ燃料および空気を流すためのガス流路が形成されたカーボン製のアノードセパレータおよびカソードセパレータを配置することにより、図3に示す構造を有する本発明に係る燃料電池1〜6を作製した。
【0063】
アノード電極には、PtRu触媒を担持した電極(Electrochem社製、Pt担持量1mg/cm2)を用い、カソード電極にはPtを担持した電極(Electrochem社製、Pt担持量1mg/cm2)を用いた。
複合電解質膜と接合する前に上記電極に5Mリン酸水溶液を含浸させ、真空乾燥により水を取り除いた。
【0064】
《比較例2》
比較例1で得た比較用電解質膜を用いて実施例15〜26と同様の方法で比較用燃料電池を作製した。
【0065】
[特性評価]
発電条件として、燃料に水素ガス(供給量30ml/min、ガス温度100℃、相対湿度100%)、酸化剤として空気(供給量200ml/min、ガス温度100℃、相対湿度100%)を供給し、燃料電池の発電温度を140℃とした。評価項目として、各燃料電池の開回路電圧(OCV)および発電時の電圧として電流密度0.1A/cm2における電池電圧を測定した。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】


【0067】
燃料電池1〜12のいずれでも、140℃という高温で、発電することが可能であることが確認された。比較例に用いたリン酸ドープPBIに対して電圧が若干低くなってはいるが、耐水性に関しては比較例に比べると著しく改善されているのは明確であり、耐水性と高温低湿度雰囲気下での発電が両立された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、剥離しにくい保護層を有することによって耐久性に優れ、高い耐水性を有し、かつ高温低湿度雰囲気下においても優れたプロトン伝導性を発揮し得る複合電解質膜を得ることができる。また、本発明によれば、耐久性および耐久性に優れ、かつ高温低湿度雰囲気下においても高出力で発電することが可能な燃料電池を実現するための膜電極接合体、さらには、当該膜電極接合体を用いた燃料電池を得ることができる。
【0069】
特に本発明の複合電解質膜は、100℃以上の高温低湿度雰囲気下において高いプロトン伝導性を有し、また優れた耐水性を有する。したがって、本発明の複合電解質膜を含む燃料電池は、加湿器を用いることが不要であり、高温低湿度雰囲気下でも発電することが可能であるため、システム全体としての小型化および高出力化が可能となる。
【0070】
さらに本発明の複合電解質膜は、燃料電池の他、一次電池、二次電池、コンデンサ、電気化学キャパシタ、ガスセンサなどのセンサ、エレクトロクロミック素子および電気分解セル等の、イオン伝導体を用いる種々の電気化学デバイスに適用することができる。
本発明によれば加湿器などのシステムを用いることなしに簡素なシステムで、100℃以上の高温あるいは低湿度雰囲気下で作動可能な電解質を提供することが可能である。
また、このような電解質を用いた膜電極複合体および燃料電池を提供することができる。
なお本発明の電解質は燃料電池の他に、一次電池、二次電池、電気化学キャパシタ、各種ガスセンサ、エレクトロクロミック素子などの様々な電気化学デバイスに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る複合電解質膜の一実施の形態の概略断面図である。
【図2】本発明に係る膜電極接合体の一実施の形態の概略断面図である。
【図3】本発明に係る燃料電池の一実施の形態の概略分解斜視図である。
【図4】本発明の実施例における保護層の厚み比と導電率との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例における保護層の厚み比と導電率保持率との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例における細孔径と導電率保持率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1 複合電解質膜
2 酸塩基複合電解質層
3a 保護層
3b 保護層
10 膜電極接合体
11a アノード電極
11b カソード電極
12a アノードガス拡散層
12b カソードガス拡散層
13a アノードセパレータ
13b カソードセパレータ
14 燃料供給マニホールド
15 酸化剤供給マニホールド
16a ガス流路
17b 冷却水用流路




 

 


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