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発明の名称 圧電薄膜振動子及びその共振周波数調整方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−6542(P2007−6542A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2006−279869(P2006−279869)
出願日 平成18年10月13日(2006.10.13)
代理人 【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
発明者 山田 由佳 / 吉田 岳人 / 橋本 雅彦 / 鈴木 信靖 / 牧野 俊晴
要約 課題
圧電薄膜共振子の共振周波数を高い精度で微調整することができ、良好かつ安定な共振特性を得ることができる圧電薄膜振動子及びその共振周波数調整方法を提供すること。

解決手段
基板11と、圧電体薄膜16と、一対の電極15、17と、最上層部に共振周波数を調整するように形成された粒径数nmから数十nmの超微粒子からなる超微粒子層31とを備えた圧電薄膜振動子であり、また最上層部に超微粒子を漸増しつつ堆積することにより、共振周波数を微小単位で精度よく調整するようにしたので、共振周波数を正確に合わせ込むことができ、良好かつ安定な共振特性を得ることができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
基板と、圧電体薄膜と、一対の電極と、最上層部に共振周波数を調整するように形成された粒径数nmから数十nmの超微粒子からなる調整層とを備えていることを特徴とする圧電薄膜振動子。
【請求項2】
圧電体薄膜下部の基板の一部が除去され空洞部分が形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電薄膜振動子。
【請求項3】
基板と、少なくとも2種類の薄膜を積層してなる多層膜と、圧電体薄膜と、一対の電極と、最上層部に共振周波数を調整するように形成された粒径数nmから数十nmの超微粒子からなる調整層とを備えていることを特徴とする圧電薄膜振動子。
【請求項4】
多層膜を構成する1種類の薄膜が、圧電体薄膜と同じ組成の薄膜であることを特徴とする請求項3記載の圧電薄膜振動子。
【請求項5】
超微粒子を構成する材料が、タングステン、モリブデン、アルミニウム、チタン等の金属である請求項1から4のいずれかに記載の圧電薄膜振動子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の圧電薄膜振動子を用いたフィルタ。
【請求項7】
ターゲット材及び圧電薄膜振動子を反応室内に配置する工程と、前記反応室に一定圧力で雰囲気ガスを導入する工程と、前記ターゲット材にビーム光を照射することによりアブレーションを生じさせる工程と、前記アブレーションにより脱離・射出された物質を空中で粒径数nmから数十nmの超微粒子に成長させつつ前記圧電薄膜振動子の最上層に堆積して調整層を形成する工程とを具備する共振周波数調整方法。
【請求項8】
雰囲気ガスの圧力が、0.01〜10Torrの範囲であることを特徴とする請求項7記載の共振周波数調整方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜振動子及びその共振周波数調整方法に関するものであり、特に、高周波用圧電デバイスに利用され得る良好な共振特性を得ることのできる、圧電薄膜振動子及びその共振周波数調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジルコン酸チタン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電体化合物は、薄膜化してその圧電特性を利用して、圧電振動子、圧電フィルタ、表面波フィルタ、圧電センサ、アクチュエータ等の各種圧電デバイスに広く応用されている。特に、近年の半導体技術の進歩による電子部品の集積化及び小型化に伴い、圧電体デバイスも小型化、薄膜化に対する需要が強く、数多くの研究がなされている。
【0003】
このような圧電薄膜振動子を製造する場合、機械的振動部を形成する際の精度等に起因して振動子の共振周波数がばらつくため、共振周波数を一定の値に調整する必要がある。従来の調整方法としては、第一の方法として、上部電極の厚さを薄くして周波数を高める方向に調整を行い、周波数を合わせ込む方法がある。また、第二の方法として、上部電極上に熱硬化性樹脂をその膜厚を調整して印刷する方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第一の方法では、電極の厚さを薄くする工程で、電極表面を励起することにより雰囲気酸素により電極が酸化する等の化学反応が起こり、安定な共振特性を得ることは難しい。これに対し、周波数調整を超高真空装置内で行う方法もあるが、この場合、製造コストがかかるだけでなく、電子機器における使用状態と異なる条件で調整を行うため、高精度に共振周波数を合わせ込むことは困難であった。また、第二の方法では、樹脂の厚みを制御することが、樹脂粘度や印刷条件の変動によって極めて困難であり、調整精度が悪いという問題点を有している。また、1回の樹脂印刷での周波数特性の変化が大きいため、高周波用振動子に要求される、共振周波数の±0.1%程度の厳しい精度で調整することは不可能である。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、圧電薄膜共振子の共振周波数を高い精度で微調整することができ、良好かつ安定な共振特性を得ることができる圧電薄膜振動子及びその共振周波数調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電薄膜振動子の最上層部に共振周波数を調整するように形成された粒径数nmから数十nmの超微粒子からなる調整層を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第1の発明は、基板と、圧電体薄膜と、一対の電極と、最上層部に共振周波数を調整するように形成された粒径数nmから数十nmの超微粒子からなる調整層とを備えていることを特徴とする圧電薄膜振動子である。
【0008】
本発明の第2の発明は、第1の発明の圧電薄膜振動子において、さらに、圧電体薄膜下部の基板の一部が除去され空洞部分が形成されていることを特徴とする圧電薄膜振動子である。
【0009】
本発明の第3の発明は、基板と、少なくとも2種類の薄膜を積層してなる多層膜と、圧電体薄膜と、一対の電極と、最上層部に共振周波数を調整するように形成された粒径数nmから数十nmの超微粒子からなる調整層とを備えていることを特徴とする圧電薄膜振動子である。
【0010】
ここで、第4の発明として、上記第3の発明において、多層膜を構成する1種類の薄膜が、圧電体薄膜と同じ組成の薄膜であることが好適である。
【0011】
以上において、第5の発明として、上記第1から4のいずれかの発明において、前記超微粒子を構成する材料が、タングステン、モリブデン、アルミニウム、チタン等の金属から構成されることが望ましい。
【0012】
以上の構成により、正確に共振周波数の調整された多層膜振動子を得ることができる。
【0013】
本発明の第6の発明は、上記第1から5のいずれかの発明による圧電薄膜振動子を用いたフィルタである。以上の構成により、優れた特性を有するフィルタを実現することができる。
【0014】
本発明の第7の発明は、ターゲット材及び圧電薄膜振動子を反応室内に配置する工程と、前記反応室に一定圧力で雰囲気ガスを導入する工程と、前記ターゲット材にビーム光を照射することによりアブレーションを生じさせる工程と、前記アブレーションにより脱離・射出された物質を空中で粒径数nmから数十nmの超微粒子に成長させつつ前記圧電薄膜振動子の最上層に堆積して調整層を形成する工程とを具備する共振周波数調整方法である。
【0015】
ここで、第8の発明として、上記第7の発明において、前記雰囲気ガスの圧力が、0.01〜10Torrの範囲であることが望ましい。
【0016】
これらの方法によれば、レーザ照射によりターゲットから射出した物質(主に原子・イオン・クラスター)と雰囲気ガスとの相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)の最適化により、高純度雰囲気で超微粒子を好適に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧電薄膜振動子の最上層部に共振周波数を調整するように形成された粒径数nmから数十nmの超微粒子からなる調整層を備えることにより、共振周波数を微小単位で精度よく調整することで、共振周波数を正確に合わせ込むことができ、良好かつ安定な共振特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図4を用いて説明する。
【0019】
(実施の形態1)
以下、本発明の圧電薄膜振動子の原理的な構成及びその共振周波数調整方法を、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態においては、圧電体薄膜としてAlN薄膜を用いた圧電薄膜振動子について説明する。
【0021】
図1は、圧電薄膜振動子の構造の断面図である。図1において、11は(100)シリコン(Si)基板、12及び13はSi基板11の両面に形成されたシリコン窒化膜からなる絶縁層、14はSi基板11に形成された空隙領域、15は金(Au)薄膜からなる下部電極、16はAlNからなる圧電体薄膜、17はAu薄膜からなる上部電極、18はAlN薄膜からなる調整層である。
【0022】
以上の構成を有する圧電薄膜振動子において、下部電極15および上部電極17を介して圧電薄膜振動子に電界を印加すると、圧電体薄膜16の下部電極15および上部電極17に挟まれた部分が厚み方向に振動する。この時、圧電体薄膜16の下部に空隙領域14が形成されていることにより、下部への圧電損失が生じることなく、効率的に圧力/電気変換動作を行うことができる。
【0023】
なお、ここでは、絶縁層12及び13としてシリコン窒化膜を用いたが、酸化シリコン、酸化マグネシウム、窒化チタン、酸化アルミニウム等の薄膜を用いることができる。また、下部電極15及び上部電極17としてAu薄膜を用いたが、タングステン(W)、モリブデン、白金、アルミニウム、チタン/白金、クロム/金、チタン/クロム等を用いることができ、下部電極15と上部電極17が異なる薄膜を用いてもよいことはいうまでもない。さらに、圧電体薄膜16及び調整層18として、AlN薄膜を用いたが、ZnO、PZT、BaTiO3、LiNbO3、KNbO3、及びLiTaO3薄膜等の多元系の圧電体酸化物を用いることも可能である。
【0024】
また、ここでは、調整層18として、圧電体薄膜16と同じAlN薄膜を用いたが、圧電体薄膜16とは異なる薄膜で、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化マグネシウム、窒化チタン、酸化アルミニウム等の薄膜を用いてもよい。
【0025】
次に、以上のように構成された圧電薄膜振動子の製造方法及び共振周波数調整方法について、図2を用いて具体的に説明する。まず、Si基板11の両面に、CVD法によりシリコン窒化膜よりなる絶縁層12及び13を形成する。次に、絶縁層12上にレジスト層21を形成し、さらに写真製版法を用いて開口22をレジスト層21に形成する(図2(a))。
【0026】
このようにして形成したレジスト層21をエッチングマスクとして、圧電体薄膜を堆積する位置のSi基板11の上面部を異方性エッチングすることにより、空隙領域14を形成する(図2(b))。なお、こうして空隙領域14を形成した後、レジスト層21を除去しておく。次に、蒸着法等で下部電極15としてAu薄膜を選択的に形成し、その上に、圧電体薄膜16としてスパッタリング法でAlN薄膜を形成し、さらにその圧電体薄膜16上に、上部電極17としてAu薄膜を蒸着法等で形成する。そして、さらに、調整層18’としてAlN薄膜をスパッタリング法で形成する(図2(c))。その後調整層18’として形成された層の厚みを、圧電薄膜振動子の共振周波数を調整するべく、適切な厚み寸法になるように余分な部分を除去して完成された調整層18とすることにより(図2(d))、圧電薄膜振動子が製造される。
【0027】
なお、ここでは、圧電体薄膜16及び調整層18’の形成にスパッタリング法を用いたが、CVD法、レーザアブレーション法等を用いてもよい。
【0028】
次に、本発明の圧電薄膜振動子の共振周波数調整方法について述べる。共振周波数の調整は、上記調整層18’にパルスレーザ等を照射して生じるアブレーションを用いて除去する。なお、レーザアブレーション法とは、高いエネルギー密度(パルスエネルギー:0.1J/cm2程度又はそれ以上)のレーザ光をターゲット材に照射し、被照射ターゲット材表面を溶融・脱離させる方法である。
【0029】
この方法の特徴は、レーザ光の透過性により、種々のガス種、広い範囲のガス圧条件下での除去が可能であることが挙げられる。また、この特性は融点・蒸気圧にあまり依存しないので、レーザアブレーションプロセスは、従来の熱平衡プロセス技術では困難とされていた、融点・蒸気圧の異なる材料を同時に処理することが可能である。
【0030】
具体的には、調整層18’に対して、大気中でパルスレーザ光23を照射する。ここでは、アルゴン弗素(ArF)エキシマレーザ(波長:193nm、パルス幅:12ns、エネルギー密度:1J/cm2、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、調整層18’表面でレーザアブレーション現象が発生し、その一部が除去される。照射するレーザ光のパルス数を増やし、除去量を増やすことによって調整層18’の厚みを漸減して共振周波数を連続的に上昇するように変化させていき、調整層18として所望の共振周波数に合わせ込めばよい(図2(d))。
【0031】
上記実施の形態によれば、圧電体薄膜16及び上部電極17の構造を変化させることなく、共振周波数の調整が可能となる。また、上部電極17の上に形成された調整層18が保護層として働くため、電極の酸化等の化学変化による質量の変化を考慮する必要もない。さらに、共振周波数の調整は、電子機器における使用状態と同じ条件で、大気中で連続的に行うことができ、1パルスでの除去量も少ないため微調整が可能であり、極めて正確に共振周波数を合わせ込むことができる。
【0032】
なお、ここでは大気中で除去を行っているが、除去個所付近に窒素ガス等の不活性ガスを吹き付けることが有効である。これにより、除去個所の化学反応を防ぐとともに、除去された物質が再付着することを防ぐことができる。
【0033】
以上述べてきたように、本実施の形態の圧電薄膜振動子の共振周波数調整方法により、共振周波数を正確に合わせ込むことができた。この方法を用いれば、真空装置を必要とすることも無いため、製造工程の簡略化と低コスト化を図ることができる。また、電子機器における使用状態と同じ条件で、大気中で連続的に共振周波数の調整を行うことができ、1パルスでの除去量も少ないため微調整が可能であり、極めて正確に共振周波数を合わせ込むことができる。したがって、以上により得られた圧電薄膜振動子により、従来にない高周波用フィルタの実現が可能となる。また、本実施の形態で得られた共振周波数調整された圧電薄膜振動子は、圧電フィルタ、表面波フィルタ、圧電センサ、アクチュエータ等の各種圧電デバイスへの応用を図ることができる。
【0034】
特に、5GHzレベル以上の高周波フィルタになると、圧電体薄膜の膜厚はλ/2にするため、100nm程度の薄膜化が要求され、その膜厚精度はÅオーダーが要求される。これに対しても、本実施の形態に係る共振周波数調整方法を用いて圧電薄膜振動子の共振周波数調整を試みた結果、正確な共振周波数が得られることを確認しており、5GHzレベルに十分対応できる。
【0035】
なお、ここでは、圧電体薄膜の下部に空隙領域が形成されている構造の圧電薄膜振動子としているが、空隙領域を形成する代わりに、圧電体薄膜と基板との間に、少なくとも2種類の薄膜を積層してなる多層膜が形成されている構造の圧電薄膜振動子においても、同様に正確な共振周波数の調整ができる。この場合、多層膜の組み合わせとしては、音響インピーダンスが高い材料(Al23、TiO2、Ag等)と低い材料(SiO2、Si、Al等)の組み合わせが好ましい。さらに、多層膜を構成する薄膜の一つを圧電体薄膜と同じ組成とすれば、使用する薄膜の種類を少なくすることができる。
【0036】
また、ここでは、圧電性薄膜の厚み方向の振動モードを利用した圧電薄膜振動子を用いたが、圧電性薄膜の拡がり方向の振動モードを利用する圧電薄膜振動子や、圧電性薄膜の曲げ振動モードを利用する圧電薄膜振動子においても同様に、正確な共振周波数の調整ができる。
【0037】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の圧電薄膜振動子の原理的な構成及びその共振周波数調整方法を、図3を用いて詳細に説明する。
【0038】
図3は、圧電薄膜振動子の構造の断面図である。図3において、11から17までの構成は、実施の形態1で述べた図1と同様である。31は、上部電極17の上に形成されたタングステン(W)からなる超微粒子層である。
【0039】
なお、ここでは、超微粒子層としてWを用いたが、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の金属材料を用いることができる。
【0040】
次に、以上のように構成された圧電薄膜振動子の製造方法及び共振周波数調整方法を述べる。上部電極17を形成するまでの製造方法は、実施の形態1で図2を用いて述べた方法と同様である。
【0041】
次に、本発明の圧電薄膜振動子の共振周波数調整方法について述べる。共振周波数の調整は、超微粒子層31の形成により行う。超微粒子層31を形成する方法として、本実施の形態では、希ガス(Ar,He等)雰囲気中におけるレーザアブレーションを用いる。
【0042】
この方法の特徴は、非熱平衡性プロセスであることから、空間的・時間的選択励起が可能であることが挙げられる。特に、空間的選択励起性を有することから、従来の熱プロセスやプラズマプロセスにおいては反応槽のかなり広い領域あるいは全体が熱やイオンに晒されるのに対し、必要な物質源のみを励起することができるので、不純物混入が抑制されたクリーンなプロセスとなる。したがって、不純物の混入・組成・結晶性等が制御された超微粒子の作製に適している。また、このレーザアブレーションプロセスは、実施の形態1でも述べたように、レーザ光の透過性により、種々のガス種、広い範囲のガス圧条件下での堆積が可能である。さらに、この特性は融点・蒸気圧にあまり依存しないので、レーザアブレーションプロセスは、従来の熱平衡プロセス技術では困難とされていた、融点・蒸気圧の異なる材料を同時に処理(蒸発・堆積)することが可能である。
【0043】
図4は、本発明の超微粒子形成方法に使用する超微粒子形成装置を示す図である。ここでは、金属ターゲットを用いてレーザアブレーションを行うことにより、超微粒子を形成する場合について説明する。
【0044】
図4において、101はターゲットが配置される金属製の反応室を示す。反応室101の底部には、反応室101内の空気を排気して反応室101内を超真空にする超真空排気系102が設けられている。反応室101には、反応室101へ雰囲気ガスを供給するガス導入ライン104が取り付けられている。このガス導入ライン104には、反応室101へ供給する雰囲気ガスの流量を制御するマスフローコントローラ103が取り付けられている。また、反応室101の底部には、反応室101内の雰囲気ガスを排気するガス排気系105が設けられている。
【0045】
反応室101内には、ターゲット107を保持するターゲットホルダー106が配置されている。このターゲットホルダー106には、回転シャフトが取り付けられており、この回転シャフトが図示しない回転制御部の制御で回転することにより、ターゲット107が回転するようになっている。このターゲット107の表面に対向するようにして、上部電極まで形成された圧電薄膜振動子109が配置されている。この圧電薄膜振動子109には、レーザ光の照射により励起されたターゲット107から脱離・射出された物質が堆積される。なお、ここでは、ターゲットとして、W金属ターゲットを用いる。
【0046】
反応室101の外側には、ターゲット107にエネルギービームとしてのレーザ光を照射するパルスレーザ光源108が配置されている。反応室101の上部には、レーザ光を反応室101内に導入するレーザ導入窓110が取り付けられている。パルスレーザ光源108から出射したレーザ光の光路上には、レーザ光源108から近い順にスリット111、レンズ112、及び反射鏡113が配置されており、パルスレーザ光源108から出射したレーザ光がスリット111により整形され、レンズ112で集光され、反射鏡113で反射されて、レーザ導入窓110を通って反応室101内に設置されたターゲット107に照射されるようになっている。
【0047】
上記構成を有する超微粒子製造装置における動作について説明する。反応室101の内部を、ターボ分子ポンプを主体とする超高真空排気系102により到達真空1.0×10-8Torr程度まで排気した後、マスフローコントローラ103を経由して、ガス導入ライン104より、Heガスの導入を行う。ここで、ドライロータリーポンプもしくは高圧用ターボ分子ポンプを主体としたガス排気系105の動作と連動することにより、反応室101内の希ガス圧力を、0.1〜10Torr程度の範囲の一圧力値に設定する。
【0048】
この状態で、自転機構を有するターゲットホルダー106に配置された、純度:5NのWのターゲット107の表面に対して、パルスレーザ光源108からレーザ光を照射する。ここでは、QスイッチパルスNd:YAGレーザの2倍高調波(波長:532nm、パルス幅:5ns、パルスエネルギー:300mJ、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、Wのターゲット107表面では、レーザアブレーション現象が発生し、イオンあるいは中性粒子(原子、クラスター)が脱離し、主にターゲット法線方向にクラスターレベルの大きさを維持して、射出して行く。そして、脱離物質は、雰囲気希ガス原子と衝突することにより、飛行方向が乱雑になるとともに、運動エネルギーが雰囲気に散逸され、空中での会合と凝集が促進される。この結果、粒径数nmから数十nmの超微粒子に成長しつつ、約3cm離れて対向した圧電薄膜振動子109上に堆積する。なお、圧電薄膜振動子、ターゲット温度とも積極的な制御は行っていない。
【0049】
なお、ここでは雰囲気ガスとして、Heガスを用いているが、Ar,Kr,Xe等の他の不活性ガスを用いてもよい。この場合、気体密度がHeガスの場合と同等になるように圧力を設定すればよい。例えば、雰囲気ガスとしてAr(気体密度:1.78g/l)を用いる場合には、He(気体密度:0.18g/l)を基準とすると0.1倍程度の圧力に設定すればよい。
【0050】
以上の超微粒子堆積過程において、共振周波数の調整は、照射するレーザ光のパルス数を増やし、堆積超微粒子数を増やすことによって超微粒子層31の厚みを漸増して共振周波数を連続的に減少するように変化させていき、所望の共振周波数に合わせ込めばよい。
【0051】
上記実施の形態によれば、圧電体薄膜16及び電極17の構造を変化させることなく、共振周波数の調整が可能となる。また、超微粒子の堆積レートが小さいため微調整が可能であり、極めて正確に共振周波数を合わせ込むことができる。
【0052】
なお、ここでは常温で超微粒子の堆積を行っているが、結晶性向上のために、500℃以下の基板加熱を行うことも可能である。あるいは、形成直後の超微粒子は、結晶性が悪い、欠陥が存在する等の問題を生じることがある。このような場合には、結晶性、純度等の膜質向上のために、窒素雰囲気中で熱処理をすることが有効である。この際の熱処理温度は500℃以下とすれば、電極材料あるいは薄膜内応力による劣化を生じることもない。一例として、Heガス圧:5.0Torrで形成したW超微粒子に対して、N2ガス中で熱処理を行った結果、結晶性の向上が確認された。
【0053】
以上述べてきたように、本実施の形態の圧電薄膜振動子の共振周波数調整方法により、共振周波数を連続的に正確に合わせ込むことができた。この方法を用いれば、1パルスでの堆積量が少ないため微調整が可能であり、極めて正確に共振周波数を合わせ込むことができる。また、超微粒子のサイズがnmオーダーであり、高周波の波長(100nmオーダー)に比べて十分に小さいため、散乱等の原因になる表面状態への影響も無視できる。したがって、以上により得られた圧電薄膜振動子により、従来にない高周波用フィルタの実現が可能となる。また、本実施の形態で得られた、共振周波数に調整された圧電薄膜振動子は、圧電フィルタ、表面波フィルタ、圧電センサ、アクチュエータ等の各種圧電デバイスへの応用を図ることができる。
【0054】
特に、5GHzレベル以上の高周波フィルタになると、圧電体薄膜の膜厚はλ/2にするため、100nm程度の薄膜化が要求され、その膜厚精度はÅオーダーが要求される。これに対しても、本実施の形態に係る共振周波数調整方法を用いて圧電薄膜振動子の共振周波数調整を試みた結果、正確な共振周波数が得られることを確認しており、5GHzレベルに十分対応できる。
【0055】
なお、ここでは、圧電体薄膜の下部に空隙領域が形成されている構造の圧電薄膜振動子としているが、空隙領域を形成する代わりに、圧電体薄膜と基板との間に、少なくとも2種類の薄膜を積層してなる多層膜が形成されている構造の圧電薄膜振動子においても、同様に正確な共振周波数の調整ができる。この場合、多層膜の組み合わせとしては、音響インピーダンスが高い材料(Al23、TiO2、Ag等)と低い材料(SiO2、Si、Al等)の組み合わせが好ましい。さらに、多層膜を構成する薄膜の一つを圧電体薄膜と同じ組成とすれば、使用する薄膜の種類を少なくすることができる。
【0056】
また、ここでは、圧電性薄膜の厚み方向の振動モードを利用した圧電薄膜振動子を用いたが、圧電性薄膜の拡がり方向の振動モードを利用する圧電薄膜振動子や、圧電性薄膜の曲げ振動モードを利用する圧電薄膜振動子においても同様に、正確な共振周波数の調整ができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る圧電薄膜振動子は、共振周波数を微小単位で精度よく調整することで、共振周波数を正確に合わせ込むことができ、良好かつ安定な共振特性を得ることができるという効果を有し、圧電フィルタ、表面波フィルタ、圧電センサ、アクチュエータ等の各種圧電デバイスとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1に係る圧電薄膜振動子の構造を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1に係る圧電薄膜振動子の製造工程図
【図3】本発明の実施の形態2に係る圧電薄膜振動子の構造を示す断面図
【図4】本発明の方法に使用する超微粒子製造装置を示す構成図
【符号の説明】
【0059】
11 シリコン基板
12、13 絶縁層
14 空隙領域
15 下部電極
16 圧電体薄膜
17 上部電極
18 調整層
21 レジスト層
22 開口
23 パルスレーザ光
31 超微粒子層
101 反応室
102 超高真空排気系
103 マスフローコントローラ
104 ガス導入ライン
105 ガス排気系
106 ターゲットホルダー
107 ターゲット
108 パルスレーザ光源
109 圧電薄膜振動子
110 レーザ導入窓
111 スリット
112 レンズ
113 反射鏡




 

 


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