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発明の名称 BSIMモデルのパラメータ抽出方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−5416(P2007−5416A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−181338(P2005−181338)
出願日 平成17年6月22日(2005.6.22)
代理人 【識別番号】100113859
【弁理士】
【氏名又は名称】板垣 孝夫
発明者 木下 晃成
要約 課題
実測の電気特性に対し高精度なシミュレーションを実現可能で、且つ物理的に正当性の高いフィッティングパラメータを抽出可能にするBSIMモデルのパラメータ抽出方法を提供する。

解決手段
BSIMモデルにおけるトランジスタの飽和電圧Vdsatの式はフィッティングパラメータVSATの関数であり、任意のVSAT値に対し1点の飽和点を所有する特徴がある。これを利用し、抽出対象であるVSAT値のみをスィープさせて飽和点の軌跡を描き、実測電気特性との一致点を与えるVSAT値を抽出する。
特許請求の範囲
【請求項1】
検査対象のトランジスタのBSIMモデルにおけるチャネル中キャリアの飽和速度を表現するフィッティングパラメータVSATを抽出するBSIMモデルのパラメータ抽出方法であって、
一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ任意のVSATの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、VSATの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める飽和点軌跡算出工程と、
検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記飽和点の軌跡との一致点を与えるVSATの値を求めるVSAT値算出工程と、
を具備し、前記VSAT値算出工程で得たVSATの値を真値とすることを特徴とするBSIMモデルのパラメータ抽出方法。
【請求項2】
検査対象のトランジスタのBSIMモデルにおける基板電荷効果の強さを表現する基板電荷効果係数Abulkの因子であるフィッティングパラメータA0、AGSを抽出するBSIMモデルのパラメータ抽出方法であって、
一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ任意のAbulkの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、Abulkの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める飽和点軌跡算出工程と、
検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記飽和点の軌跡との一致点を与えるAbulkの値を求めるAbulk値算出工程と、
ゲート電圧値のみを異なる値にして前記飽和点軌跡算出工程と前記Abulk値算出工程を再度行い、1回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値と、2回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値を、BSIMモデルの基板電荷効果Abulkの式へそれぞれ与えて連立方程式を作成し、該連立方程式を解いてA0、AGSの値を求めるA0、AGS値算出工程と、
を具備し、前記A0、AGS値算出工程で得たA0、AGSの値を真値とすることを特徴とするBSIMモデルのパラメータ抽出方法。
【請求項3】
検査対象のトランジスタのBSIMモデルにおけるチャネル中キャリアの飽和速度を表現するフィッティングパラメータVSATと、基板電荷効果の強さを表現する基板電荷効果係数Abulkの因子であるフィッティングパラメータA0、AGSを抽出するBSIMモデルのパラメータ抽出方法であって、
一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ任意のVSATの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、VSATの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める第1の飽和点軌跡算出工程と、
検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記第1の飽和点軌跡算出工程で得た飽和点の軌跡との一致点を与えるVSATの値を求めるVSAT値算出工程と、
一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ前記VSAT値算出工程で得たVSATの値と任意のAbulkの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、Abulkの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める第2の飽和点軌跡算出工程と、
検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記第2の飽和点軌跡算出工程で得た飽和点の軌跡との一致点を与えるAbulkの値を求めるAbulk値算出工程と、
ゲート電圧値のみを異なる値にして前記第2の飽和点軌跡算出工程と前記Abulk値算出工程を再度行い、1回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値と、2回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値を、BSIMモデルの基板電荷効果Abulkの式へそれぞれ与えて連立方程式を作成し、該連立方程式を解いてA0、AGSの値を求めるA0、AGS値算出工程と、
を具備し、1回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値と前記A0、AGS値算出工程で得たA0、AGSの値を用いて前記第1の飽和点軌跡算出工程以下の工程を実行することを繰り返し行い、VSATの収束値とA0、AGSの収束値をそれぞれ真値とすることを特徴とするBSIMモデルのパラメータ抽出方法。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタのシミュレーションモデルであるBSIMモデルにおける、チャネル中キャリアの飽和速度を表現するフィッティングパラメータVSATと、基板電荷効果の強さを表現する基板電荷効果係数Abulkの構成因子でチャネル長依存性を表現するフィッティングパラメータA0およびゲート電圧依存性を表現するフィッティングパラメータAGSを抽出するBSIMモデルのパラメータ抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタのシミュレーションモデルであるBSIMモデルにおけるフィッティングパラメータVSAT、A0、AGSは、実際のトランジスタの電気特性をシミュレーション上で高精度に再現するのに重要なフィッティングパラメータである。
【0003】
従来、VSATの抽出には、トランジスタが線形領域から飽和領域へ遷移する飽和点付近の実測電流特性に対して最適化計算を行ってVSATの値を決定する方法が使用されている。
【0004】
この方法によれば、実際のトランジスタの電気特性を精度良く表現できるVSATの値を決定できる。しかし、この方法で決定したVSATの値は、他のフィッティングパラメータとの組み合わせによっては特異な値となり、実際のキャリアの飽和速度の値(物理性の高い値)を表現してはいなかった。
【0005】
一方、各フィッティングパラメータの値をトランジスタの実測電気特性から直接的に算出する方法もある。この方法は、その抽出対象となるトランジスタの実測電気特性を、物理的現象もしくは構造から一意に決定可能とする特徴を有する。具体的には、IEEE EDL学会等において、線形領域の電流式に着目してフィッティングパラメータVTH0を決定する方法や、拡散領域のゲート下オーバーラップ長や寄生抵抗を求めるいくつかの方法(例えば、非特許文献1参照。)等が提案されている。
【0006】
これらの方法は、トランジスタの実測電気特性を基に、所望の物理現象を表現するフィッティングパラメータを、数式を用いて抽出可能な形にデータ変換した後、その作成した理論式を基に所望のフィッティングパラメータの値を直接的に算出する方法であり、フィッティングパラメータの物理抽出方法という括りで論じられている。この抽出方法によれば、モデル所有の理論的適性を損なうことなく物理性の高いフィッティングパラメータを抽出でき、特性異常要因を低減させる等、利点も多い。しかしながら、高精度なシミュレーションを実現するフィッティングパラメータを抽出することは出来ていなかった。
【0007】
最近は、トランジスタの実測電気特性からアーリー電圧特性を作成し、それを利用して近似直線を作成し、近似的なトランジスタモデル上の飽和電圧Vdsatを決定し、その構成因子であるフィッティングパラメータVSAT、A0、AGSを決定する方法も提案されている。しかしこの方法は、トランジスタモデルの飽和電圧Vdsatを近似的に決定するため、決定誤差が発生し、その構成因子として算出されるVSAT、A0、AGSにも誤差が伝搬するために、実測の電気特性をシミュレーション上で再現するには不十分な精度であった。
【0008】
以上のように、BSIMモデルのパラメータVSAT、A0、AGSは、シミュレーション上での実測特性再現精度と、その物理的正当性の両者を兼ね備えていることが望ましいが、上記の従来の抽出方法では、実測特性再現精度を求めると物理的正当性が低下し、物理的正当性を求めると実測特性再現精度が望めないという相反性のために、実測特性再現精度と物理的正当性の両者を兼ね備えたフィッティングパラメータが抽出できないという問題があった。
【非特許文献1】Yuan Taur 他、“MOSFET Channel Length:Extraction and Interpretation”、IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES、P160、 Vol.47、NO.1、JANUARY 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、近似の無い数式を使用してフィッティングパラメータVSAT自体、またはフィッティングパラメータA0、AGSの関数であるAbulkをスィープさせて求めた飽和点の遷移特性(軌跡)を利用して、フィッティングパラメータを物理的に抽出することにより、飽和領域におけるトランジスタの電気特性をシミュレーション上で再現するBSIMモデルのフィッティングパラメータVSAT、A0、AGSに対し、実測の電気特性に対し高精度なシミュレーションを実現可能で、且つ物理的に正当性の高いフィッティングパラメータを抽出可能にするBSIMモデルのパラメータ抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載のBSIMモデルのパラメータ抽出方法は、検査対象のトランジスタのBSIMモデルにおけるチャネル中キャリアの飽和速度を表現するフィッティングパラメータVSATを抽出するBSIMモデルのパラメータ抽出方法であって、一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ任意のVSATの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、VSATの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める飽和点軌跡算出工程と、検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記飽和点の軌跡との一致点を与えるVSATの値を求めるVSAT値算出工程と、を具備し、前記VSAT値算出工程で得たVSATの値を真値とすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2記載のBSIMモデルのパラメータ抽出方法は、検査対象のトランジスタのBSIMモデルにおける基板電荷効果の強さを表現する基板電荷効果係数Abulkの因子であるフィッティングパラメータA0、AGSを抽出するBSIMモデルのパラメータ抽出方法であって、一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ任意のAbulkの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、Abulkの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める飽和点軌跡算出工程と、検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記飽和点の軌跡との一致点を与えるAbulkの値を求めるAbulk値算出工程と、ゲート電圧値のみを異なる値にして前記飽和点軌跡算出工程と前記Abulk値算出工程を再度行い、1回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値と、2回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値を、BSIMモデルの基板電荷効果Abulkの式へそれぞれ与えて連立方程式を作成し、該連立方程式を解いてA0、AGSの値を求めるA0、AGS値算出工程と、を具備し、前記A0、AGS値算出工程で得たA0、AGSの値を真値とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3記載のBSIMモデルのパラメータ抽出方法は、検査対象のトランジスタのBSIMモデルにおけるチャネル中キャリアの飽和速度を表現するフィッティングパラメータVSATと、基板電荷効果の強さを表現する基板電荷効果係数Abulkの因子であるフィッティングパラメータA0、AGSを抽出するBSIMモデルのパラメータ抽出方法であって、一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ任意のVSATの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、VSATの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める第1の飽和点軌跡算出工程と、検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記第1の飽和点軌跡算出工程で得た飽和点の軌跡との一致点を与えるVSATの値を求めるVSAT値算出工程と、一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式へ前記VSAT値算出工程で得たVSATの値と任意のAbulkの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、Abulkの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める第2の飽和点軌跡算出工程と、検査対象のトランジスタの実測電気特性と前記第2の飽和点軌跡算出工程で得た飽和点の軌跡との一致点を与えるAbulkの値を求めるAbulk値算出工程と、ゲート電圧値のみを異なる値にして前記第2の飽和点軌跡算出工程と前記Abulk値算出工程を再度行い、1回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値と、2回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値を、BSIMモデルの基板電荷効果Abulkの式へそれぞれ与えて連立方程式を作成し、該連立方程式を解いてA0、AGSの値を求めるA0、AGS値算出工程と、を具備し、1回目の前記Abulk値算出工程で得たAbulkの値と前記A0、AGS値算出工程で得たA0、AGSの値を用いて前記第1の飽和点軌跡算出工程以下の工程を実行することを繰り返し行い、VSATの収束値とA0、AGSの収束値をそれぞれ真値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新たな近似式を作成してパラメータ値を算出する従来の物理的なパラメータ抽出方法とは異なり、近似の無い数式を使用してフィッティングパラメータVSAT自体、またはフィッティングパラメータA0、AGSの関数であるAbulkをスィープさせて求めた飽和点の遷移特性(軌跡)を利用して、フィッティングパラメータを物理的に抽出するので、飽和領域におけるトランジスタの電気特性をシミュレーション上で再現するBSIMモデルのフィッティングパラメータVSAT、A0、AGSに対し、実測の電気特性に対し高精度なシミュレーションを実現可能で、且つ物理的に正当性の高いフィッティングパラメータを抽出可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面および数式を参照して、本発明の実施の形態におけるBSIMモデルのパラメータ抽出方法ついて詳細に説明する。なお、図面および数式は、この発明を理解できる程度に簡略化して記載する。また、以下の説明は、Nチャネルトランジスタに限定して進めるが、Pチャネルトランジスタについてはキャリアを正孔に変更するだけでよく、手順としては同様である。
【0015】
図1は、チャネル中キャリアの飽和速度を表現するフィッティングパラメータVSATの抽出処理工程を示すフロー図である。VSATの抽出は、以下の手順に沿って行われる。
【0016】
ステップS1: 強反転(ゲート電圧Vgs≧閾値電圧Vth)にしたときの線形領域(ドレイン電圧Vds<飽和電圧Vdsat)での電気特性において最も支配的なBSIMモデルのフィッティングパラメータを予め抽出しておく。
【0017】
例えば、VTH0、K1、K2、U0、UA、UB、UCなどを予め抽出する。上記のVTH0、K1、K2は閾値関連のフィッティングパラメータであり、VTH0は閾値電圧の主要零次項、K1は閾値の基板効果の一次係数、K2は閾値の基板効果の二次係数を表す。また、上記のU0、UA、UB、UCは移動度関連のフィッティングパラメータであり、U0はチャネル中キャリアの移動度の第一主要成分、UAは移動度劣化の一次係数、UBは移動度劣化の二次係数、UCは移動度劣化の基板効果を表す。その他ETA0などの飽和領域での閾値電圧関連のフィッティングパラメータも前もって抽出しておく必要がある。ETA0は、飽和領域での閾値電圧のシフト分を意味するフィッティングパラメータであり、飽和領域(ドレイン電圧Vds>飽和電圧Vdsat)での閾値電圧に多大な影響を及ぼすパラメータである。
【0018】
ステップS2: 以下の式(1)を用いてBSIMモデルの飽和電圧Vdsatを計算するために、VSATの初期値を設定する。式(1)はBSIM3モデルにおける飽和電圧Vdsatの式である。VdsatはVSAT、Abulkの関数となっており、また閾値電圧の影響をVgsteffに含んでおり、移動度の影響をEsatの中に含んでいる。
【0019】
【数1】


ここで、Wはトランジスタのゲート幅、Lはトランジスタのゲート長、Coxは酸化膜容量、Rdsは寄生抵抗、vtは熱電圧、Esatは飽和電界である。また、Vgsteffは閾値電圧Vthとゲート電圧Vgsの関数である。なお、A1、A2はVdsatの微調整用のフィッティングパラメータである。式(1)のa、b、cはVSATの関数となっており、任意のVSATの値に対し一意にVdsatが求められる。
【0020】
ステップS3: ステップS2で設定したVSATの初期値を式(1)に与えて、Vdsatを算出する。
ステップS4: ステップS3の計算により求めた飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧Vdsとして以下の式(2)へ与え、BSIMモデルのトランジスタ電流Idsを算出する。式(2)はBSIM3モデルにおけるトランジスタ電流Idsの式である。その結果、VSATの初期値に対して、一意の飽和点(Vdsat、Idsat)が求まる。
【0021】
【数2】


ここで、μeffはチャネル中キャリアの移動度、VAはアーリー電圧、Vbは基板バイアス電圧である。
【0022】
ステップS5: VSATの値が最終値Xであるか否か判定する。最終値Xでない場合、ステップS6へ移る。
ステップS6:VSATの値をΔx値だけ変化させ、ステップS3へ移る。
【0023】
その後、ステップS6で設定したVSAT値を用いて再度上記のステップS3、S4を実行し、VSATの値が最終値Xとなるまで、ステップS3〜S6を繰り返す。その結果、VSATの値が最終値XとなるとステップS7へ移る。
【0024】
以上のように、一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式(1)へ任意のVSATの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式(2)へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、VSATの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める(ステップS1〜S6:飽和点軌跡算出工程)。
【0025】
ステップS7: 続いて、上記のステップS1〜S6により得られた飽和点(Vdsat、Idsat)の軌跡を実測のId−Vd(ドレイン電流−ドレイン電圧)特性上にプロットし、検査対象のトランジスタの実測電気特性と飽和点の軌跡との一致点を与えるVSATの値を求め、このVSAT値を真値とする(VSAT値算出工程)。
【0026】
飽和点の軌跡を実測のId−Vd特性上にプロットした一例を図2に示す。図2に示す例では、VSATの値を1.0×10から1.0×10刻みで2.0×10までスィープさせてプロットしている。一方、図3は、VSAT=10、2×10の二つの場合についての、飽和点を含むId−Vdシミュレーション特性を図2に追加して記載した図である。これらの両特性の違いはVSATの値のみであり、他のフィッティングパラメータの値は同一である。
【0027】
図2に示すように、実測電気特性とVSATをスィープさせて描いた飽和点の集合からなる曲線(軌跡)は、唯一の交点を所有する。その交点を与えたVSATが、実際のトランジスタの物理性を損なわず且つ実測電気特性の高精度なシミュレーションを可能にするVSATである。このVSATを用いてシミュレーションを行えば、実測電気特性に良い一致を示すシミュレーション結果を得る。なお、図3に示すように、交点を与えたVSATを使用しなければ、シミュレーション特性は実測電気特性とは大きく異なる特性となる。
【0028】
続いて、基板電荷効果の強さを表現する基板電荷効果係数Abulkの構成因子であるフィッティングパラメータA0、AGSの抽出処理について説明する。図4は、フィッティングパラメータA0、AGSの抽出処理工程を示すフロー図である。A0、AGSの抽出は、VSATと同様に式(1)と式(2)に基づいて、以下の手順に沿って行われる。
【0029】
ステップS11:VSAT抽出処理のステップS1と同様に、強反転にしたときの線形領域での電気特性において最も支配的なBSIMモデルのフィッティングパラメータを予め抽出しておく。
【0030】
ステップS12: VSAT抽出処理のステップS2と同様に、Abulkの初期値を設定する。
ステップS13: VSAT抽出処理のステップS3と同様に、ステップS12で設定したAbulkの初期値を式(1)に与えて、Vdsatを算出する。式(1)のa、bはAbulkの関数となっており、任意のAbulkの値に対し一意にVdsatが求められる。
【0031】
ステップS14: VSAT抽出処理のステップS4と同様に、ステップS13の計算により求めた飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧Vdsとして式(2)へ与え、BSIMモデルのトランジスタ電流Idsを算出する。その結果、Abulkの初期値に対して、一意の飽和点(Vdsat、Idsat)が求まる。
【0032】
ステップS15、S16: VSAT抽出処理のステップS5、S6と同様に、Abulkの値が最終値Yであるか否か判定する。最終値Yでない場合、ステップS16へ移り、Abulkの値をΔy値だけ変化させる。
【0033】
その後、ステップS16で設定したAbulk値を用いて再度上記のステップS13、S14を実行し、Abulkの値が最終値Yとなるまで、ステップS13〜S16を繰り返す。その結果、Abulkの値が最終値YとなるとステップS17へ移る。
【0034】
以上のように、一定条件の下、BSIMモデルの飽和電圧Vdsatの式(1)へ任意のAbulkの値を与えて飽和電圧Vdsatを算出するとともに、その算出した飽和電圧Vdsatをドレイン端子印加電圧VdsとしてBSIMモデルのトランジスタ電流Idsの式(2)へ与えてトランジスタ電流Idsを算出して、飽和電圧Vdsatとトランジスタ電流Idsにより定まる飽和点を求める計算を、Abulkの値を変化させて繰り返し行い、飽和点の軌跡を求める(ステップS11〜S16:飽和点軌跡算出工程)。
【0035】
ステップS17: 続いて、VSAT抽出処理のステップS7と同様に、上記のステップS11〜S16により得られた飽和点(Vdsat、Idsat)の軌跡を実測のId−Vd(ドレイン電流−ドレイン電圧)特性上にプロットし、検査対象のトランジスタの実測電気特性と飽和点の軌跡との一致点を与えるAbulkの値を求め、このAbulk値を真値とする(Abulk値算出工程)。
【0036】
飽和点の軌跡を実測のId−Vd特性上にプロットした一例を図5に示す。図5に示す例では、Abulkの値を0.8から0.05刻みで1.5までスィープさせてプロットしている。一方、図6は、Abulk=0.8、1.5の二つの場合についての、飽和点を含むId−Vdシミュレーション特性を図5に追加して記載した図である。これら両特性の違いはAbulkの値のみであり、他のフィッティングパラメータの値は同一である。
【0037】
図5に示すように、実測電気特性とAbulkをスィープさせて描いた飽和点の集合からなる曲線(軌跡)は、唯一の交点を所有する。その交点を与えたAbulkが、実際のトランジスタの物理性を損なわず且つ実測電気特性の高精度なシミュレーションを可能にするAbulkである。なお、図6に示すように、交点を与えたAbulkを使用しなければ、シミュレーション特性は実測電気特性とは大きく異なる特性となる。
【0038】
ステップS18:上記のステップS11〜S17の処理が2回目か否かを判定する。1回目ならステップS19へ移る。
ステップS19: ゲート電圧Vgsのみを異なる値に設定してステップS11へ戻る。以下、再度ステップS11〜S17の処理を行う。図7に2回目の処理で得た飽和点の軌跡を実測のId−Vd特性上にプロットした一例を示す。
【0039】
ステップS20: 1回目の処理で得たAbulkの値をAbulk1、2回目の処理で得たAbulkの値をAbulk2とすると、Abulk1、2それぞれを、以下の式(3)に代入して連立方程式を作成する。式(3)は、BSIMモデルにおける基板電荷効果Abulkの式である。そして、その連立方程式を解くことでフィッティングパラメータA0、AGSを求め、このA0値、AGS値を真値とする(A0、AGS値算出工程)。このA0、AGSを用いてシミュレーションを行えば、実測電気特性に良い一致を示すシミュレーション結果を得る。
【0040】
【数3】


このようにして抽出したVSAT、A0、AGSは最適化計算を使用せず、実測の電気特性から直接抽出したため、物理的な値を所有しており、また高精度なシミュレーションを実現するパラメータ値となる。
【0041】
さらに、上記のVSAT抽出処理により得たVSATを用いて上記のA0、AGS抽出処理を実行し、そのA0、AGS抽出処理により得たAbulk、A0、AGSを用いて(Abulkは、1回目のAbulk算出工程で得た値)、再度VSAT抽出処理を実行することを、VSAT、A0、AGSの値が収束するまで繰り返し行うことで、より様々なゲート電圧Vgs印加時の特性に対しても高精度で整合性の高いパラメータ抽出が行える。
【0042】
図8は、このVSAT、A0、AGS抽出処理の工程を示すフロー図である。図8において、まず、実測のId−Vd(ドレイン電流−ドレイン電圧)特性を設定する(ステップS81)。続いて、上記のVSAT抽出処理を実行し(ステップS82)、この処理で得たVSAT値を用いて上記のA0、AGS抽出処理を実行し(ステップS83)、この処理で得たAbulk、A0、AGSを用いてVSAT抽出処理を実行することを繰り返し、ステップS84において収束判定を行う。その結果、VSAT、A0、AGSが収束していれば、抽出処理を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかるBSIMモデルのパラメータ抽出方法は、物理的正当性を有し且つ高精度なシミュレーションを実現可能なパラメータ値を抽出することができ、最適化計算法を利用したパラメータ抽出を行う際の初期値として利用する等の用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態におけるVSATの抽出処理工程を示すフロー図
【図2】本発明の実施の形態におけるVSATをスィープして算出した飽和点プロットと実測のId−Vd特性を示す図
【図3】真値ではないVSATを用いたId−Vdシミュレーション特性を示す図
【図4】本発明の実施の形態におけるA0、AGSの抽出処理工程を示すフロー図
【図5】本発明の実施の形態におけるAbulkをスィープして算出した飽和点プロットと実測のId−Vd特性を示す図
【図6】真値ではないAbulkを用いたId−Vdシミュレーション特性を示す図
【図7】本発明の実施の形態におけるAbulkをスィープして算出した飽和点プロットと実測のId−Vd特性を示す図
【図8】本発明の実施の形態におけるVSAT、A0、AGSの抽出処理工程を示すフロー図




 

 


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