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燃料コンパクト及びその製造方法 - 原子燃料工業株式会社
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発明の名称 燃料コンパクト及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−139761(P2007−139761A)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
出願番号 特願2006−283343(P2006−283343)
出願日 平成18年10月18日(2006.10.18)
代理人 【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
発明者 高橋 昌史 / 大久保 和俊
要約 課題
プレス時の応力により被覆燃料粒子が破損するのを防止しつつ、簡易にかつ低コストで、燃料コンパクトや燃料スリーブ、黒鉛ブロックの破損を防止する。

解決手段
燃料コンパクト10は、オーバーコート粒子12を一体成型して円筒形状に形成されている。この円筒形状の燃料コンパクト10の上端及び下端の隅部10aには、チャンファ16が形成されている。このチャンファ16の厚みt、t´は、0.10mm以上であり、チャンファの面取り角度θ、θ´は30°〜60°の範囲内であり、かつ、チャンファの厚みt、t´はチャンファ面が被覆燃料粒子12Aに接する時の厚みを上限値とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
被覆燃料粒子を一体成型して形成された燃料コンパクトにおいて、隅部にチャンファが形成され、前記チャンファは、平面形状又は曲面形状を有していることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項2】
請求項1に記載された燃料コンパクトであって、前記燃料コンパクトは円筒形状を有し、前記チャンファは前記円筒形状の燃料コンパクトの隅部に形成されていることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された燃料コンパクトであって、前記チャンファは、面取り角度が異なる2段又はそれ以上の平面を有することを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された燃料コンパクトであって、前記チャンファは、前記燃料コンパクトの上端及び下端の隅部に形成されていることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項5】
請求項1に記載された燃料コンパクトであって、前記チャンファは平面形状であり、前記チャンファの厚みが0.10mm以上であることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項6】
請求項5に記載された燃料コンパクトであって、前記チャンファの面取り角度は、30°〜60°の範囲であり、且つ前記チャンファの厚みの上限値は、前記チャンファ面が被覆燃料粒子の外周面に接するときの厚みに相応する寸法であることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項7】
請求項1に記載された燃料コンパクトであって、前記チャンファは平面形状であり、前記チャンファの面取り角度は30°〜60°の範囲内であり、かつ、前記チャンファの厚みの上限値は、チャンファ面が前記被覆燃料粒子の外周面に接する時の厚みに相応する寸法であることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された燃料コンパクトであって、前記チャンファの面取り角度が45°以外である場合には、前記チャンファの厚みの上限値は、前記チャンファ面が前記被覆燃料粒子の外周面に接する時に特定される2つの前記チャンファの厚みのうち、大きい側の値に相応する寸法であることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項9】
請求項1に記載された燃料コンパクトであって、前記チャンファは、曲面形状であり、前記チャンファの曲面の厚みの上限値は、前記被覆燃料粒子の外周面に達するまでの値であることを特徴とする燃料コンパクト。
【請求項10】
被覆燃料粒子を金型により一体成型して燃料コンパクトを製造する燃料コンパクトの製造方法において、前記金型の隅部に平面形状又は曲面形状のテーパを形成して、前記燃料コンパクトの隅部に平面形状又は曲面形状のチャンファを形成することを特徴とする燃料コンパクトの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載された燃料コンパクトの製造方法であって、テーパ面を有するリング状のテーパ部材を前記金型に装着することにより前記金型の隅部にテーパを形成することを特徴とする燃料コンパクトの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガス炉等の原子炉において燃料として使用され、ウランやトリウム等の核燃料物質の酸化物や炭化物の微小球(燃料核)に熱分解炭素層や炭化珪素層等を被覆した被覆燃料粒子を、黒鉛マトリックス中に分散して一体成型して形成される燃料コンパクト及びその製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
高温ガス炉は、燃料を含む炉心構造を、熱容量が大きく高温健全性が良好な黒鉛から形成すると共に、冷却ガスとして高温下でも化学反応を起こさないヘリウムガス等の気体を用いているため、固有の安全性が高く、出口温度が非常に高いヘリウムガスを取り出すことができる原子炉であり、約900℃前後の高温熱を、発電はもちろんのこと水素製造や化学プラント等、幅広い分野において利用することを可能とするものである。
【0003】
(被覆燃料粒子)
この高温ガス炉の燃料としては、一般に、二酸化ウランやトリウム等をセラミックス状に焼結した直径約350μm〜650μmの燃料核の周囲に、第1層から第4層までの合計4層の被覆が施された直径約500μm〜1000μmの被覆燃料粒子が使用される。具体的には、次の4つの被覆である。
【0004】
即ち、一般にバッファ層と呼ばれる最も内側の第1層は、密度約1g/cmの低密度熱分解炭素(PyC)から成る層で、ガス状の核分裂生成物(FP)のガスを溜めると共に、核燃料のスウェリングを吸収する機能を併せ持つ。この第1層の上に施される第2層は、一般に、密度約1.8g/cmの高密度熱分解炭素から形成された内側熱分解炭素(PyC)層であり、ガス状の核分裂生成物(FP)の拡散の障壁となってガス状の核分裂生成物(FP)を保持する機能を有するものである。炭化珪素(SiC)層と呼ばれる第3層は、密度約3.2g/cmの炭化珪素から成り、主に固体状の核分裂生成物の拡散の障壁となって固体状の核分裂生成物を保持すると共に、被覆燃料粒子全体の主要な強度部材としての機能を有するものである。最も外側の第4層である外側熱分解炭素層は、第2層と同様、密度約1.8g/cmの高密度熱分解炭素から成り、照射収縮により第3層である炭化珪素層に圧縮応力を発生させて照射下での被覆燃料粒子全体の強度を保持すると共にガス状の核分裂生成物(FP)を保持する機能を有するものである。
【0005】
このような被覆燃料粒子は、一般的には、次のような工程を経て製造される。まず、燃料核の生成について具体的に説明すると、酸化ウランの粉末を硝酸に溶かして生成した硝酸ウラニル原液に、純水、増粘剤を添加して撹拌することにより滴下原液を生成する。この場合、増粘剤は、滴下された硝酸ウラニル原液の液滴が、落下中に自身の表面張力により真球状になるように添加される。この増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂の如きアルカリ条件下で凝固する性質を有する樹脂、ポリエチレングリコール、メトローズ等を使用することができる。次いで、このようにして調整された滴下原液を、所定の温度に冷却して粘度を調整した後、細径の滴下ノズルを振動させることによりアンモニア水溶液中に滴下する。なお、この場合、液滴に、アンモニア水溶液表面に着水するまでの空間においてアンモニアガスを吹きかけ、液滴の表面をゲル化させることにより、着水時に液滴が変形するのを防止する。
【0006】
アンモニア水溶液中に滴下された原液は、アンモニア水溶液中で、硝酸ウラニルがアンモニアと充分に反応して重ウラン酸アンモニウムの粒子となる。この重ウラン酸アンモニウムの粒子を、大気中で焙焼して、三酸化ウラン粒子とした後、更に還元、焼結することにより、高密度のセラミックス状二酸化ウランから成る燃料核を得る。このようにして得られた燃料核の粒径や真球度は、次の被覆工程における製造条件に非常に大きな影響を与えることから、燃料核は、篩により粒径選別及び真球度選別を行った上で、被覆工程に送られる。
【0007】
次に、燃料核の被覆工程においては、燃料核を流動床に装荷し、被覆ガスを熱分解させることにより第1層乃至第4層の被覆を順次を施していく。この場合、具体的には、第1層の低密度炭素層は、アセチレン(C)を約1400℃で熱分解して燃料核の上に被覆される。第2層、第4層の高密度の熱分解炭素層は、プロピレン(C)を約1400度で熱分解して被覆される。第3層である炭化珪素層は、メチルトリクロロシラン(CHSiCl)を約1600℃で熱分解して形成される。このようにして製造された被覆燃料粒子は、更に、黒鉛粉末、粘結剤等から成る黒鉛マトリックス材を、被覆燃料粒子の表面にコーティングしてオーバーコート粒子となる。
【0008】
(燃料コンパクト)
このオーバーコートされた被覆燃料粒子を燃料コンパクトとして使用する場合には、被覆燃料粒子を黒鉛マトリックス材中に分散させた後、図7に示すように、例えば、中実円筒形又は中空円筒形にプレス成型又はモールド成型した上で焼結させて、図7(A)に示す一定形状の燃料コンパクト10とする(例えば、特開2000−284084号公報参照)。この燃料コンパクト10は、図8に示すように、被覆燃料粒子12を圧縮する際に、ダイスやパンチを加熱して黒鉛マトリックス材中に含まれるフェノール樹脂を軟化させてバインダとすることにより、複数の被覆燃料粒子12を一体化して形成されている。
【0009】
(炉心への装填)
このようにして形成された燃料コンパクト10には、中実円筒型、中空円筒型の2種類があるが、いずれの場合も、1)黒鉛から形成された燃料スリーブ(筒)に一定数量入れて上下に栓をした燃料棒の形態とした上で、高温ガス炉の六角柱型黒鉛ブロックの複数の挿入口に装填されるか、あるいは、2)高温ガス炉の六角柱型黒鉛ブロックの複数の挿入口に直接装填されるかして、最終的に、この六角柱型黒鉛ブロックを多数個ハニカム配列に複数段重ねることにより、燃料として炉心に装荷される。
【0010】
(燃料コンパクトの欠損)
この場合、これらの燃料スリーブや黒鉛ブロックへの装填等の燃料コンパクト10のハンドリング時に、燃料コンパクト10が燃料スリーブや黒鉛ブロックの内面と機械的に接触して燃料コンパクト10に衝撃が加わり、燃料コンパクト10の円筒形の角部10b(図7参照)が欠けるおそれがあった。
【0011】
このように、燃料コンパクト10に欠損が生じると、高温ガス炉内で燃料コンパクト10が高温となり、熱膨張した時に、欠片が燃料コンパクト10と燃料スリーブ又は黒鉛ブロックの内面との間に挟まり、当該箇所において高い応力が発生して、燃料コンパクト10や燃料スリーブ、黒鉛ブロックが破損する原因となる。
【0012】
また、燃料コンパクト10は、高温ガス炉での使用時に、中心部と外周部とで冷却効率の差から温度差が生じ、中心部は外周部に比較して高温となるため、中心部の方が、外周部よりも熱膨張が大きくなり、その結果、鼓型に変形する傾向がある。このように鼓型に変形した燃料コンパクト10においては、その角部10bが、燃料スリーブや黒鉛ブロックの内面と機械的に接触して、燃料コンパクト10に割れを発生させる原因となるおそれがあった。
【0013】
従って、このような燃料コンパクト10の破損を防止することが必要となるが、その際には、プレス時の応力により被覆燃料粒子12が破損しないように配慮することも必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする1つの課題は、プレス時の応力により被覆燃料粒子が破損するのを防止しつつ、簡易にかつ低コストで、燃料コンパクトや燃料スリーブ、黒鉛ブロックの破損を防止することができる燃料コンパクトを提供することにある。
【0015】
本発明が解決しようとする1つの課題は、プレス時の応力により被覆燃料粒子が破損するのを防止しつつ、燃料コンパクトや燃料スリーブ、黒鉛ブロックの破損を防止することができる燃料コンパクトを簡易にかつ低コストで製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の課題解決手段によれば、被覆燃料粒子を一体成型して形成された燃料コンパクトにおいて、隅部にチャンファが形成され、このチャンファは、平面形状又は曲面形状を有していることを特徴とする燃料コンパクトが提供される。
【0017】
本発明の第1の課題解決手段による燃料コンパクトにおいて、燃料コンパクトは、円筒形状を有し、チャンファはこの円筒形状の燃料コンパクトの隅部に形成されているものとすることができ、またチャンファは、燃料コンパクトの上下両端の隅部に形成させることができる。
【0018】
また、本発明の第1の課題解決手段による燃料コンパクトにおいて、チャンファが平面形状である場合に、その平面形状は、円筒の軸線方向に面取り角度が異なる2段又はそれ以上の平面とすることができる。
【0019】
更に、チャンファが平面形状である場合に、このチャンファの厚みが0.10mm以上であるのが好ましく、この場合、チャンファの面取り角度は、30°〜60°の範囲であり、且つチャンファの厚みの上限値は、チャンファ面が被覆燃料粒子の外周面に接するときの厚みに相応する寸法であるのが望ましい。
【0020】
また、チャンファの面取り角度が45°以外である場合には、チャンファの厚みの上限値は、チャンファ面が前記被覆燃料粒子の外周面に接する時に特定される2つのチャンファの厚みのうち、大きい側の値に相応する寸法である。
【0021】
本発明の第1の課題解決手段による燃料コンパクトにおいて、チャンファが曲面形状である場合に、チャンファの曲面の厚みの上限値は、前記被覆燃料粒子の外周面に達するまでの値である。
【0022】
本発明の第2の課題解決手段によれば、被覆燃料粒子を金型により一体成型して燃料コンパクトを製造する燃料コンパクトの製造方法において、金型の隅部に平面形状又は曲面形状のテーパを形成して、燃料コンパクトの隅部に平面形状又は曲面形状のチャンファを形成することを特徴とする燃料コンパクトの製造方法が提供される。平面テーパは、一段又は多段の平面の形態とすることができる。
【0023】
本発明の第2の課題解決手段による燃料コンパクトの製造方法において、テーパ面を有するリング状のテーパ部材を金型に装着することにより金型の隅部にテーパを形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の課題解決手段によれば、上記のように、円筒形状の燃料コンパクトの隅部にチャンファ(面取り)を形成しているため、ハンドリング時や熱膨張時に、燃料コンパクトが燃料スリーブや黒鉛ブロックの内面と機械的に接触しても、燃料コンパクトに加わる応力が低減するので、燃料コンパクトに欠損や割れが生じるのを防止することができ、ひいては燃料スリーブや黒鉛ブロックが破損することがない。
【0025】
特に、チャンファが2段又はそれ以上の平面形状あるいは曲面形状であると、チャンファの厚みや表面積を大きくすることができるので、燃料コンパクトの欠損や割れを一層有効に防止することができるので好ましい。
【0026】
また、平面形状のチャンファの厚みや面取り角度を適切に調整したり、曲面形状のチャンファの曲面の厚みの上限値が被覆燃料粒子の外周面に達するまでの値であると、被覆燃料粒子の形状に沿った形状のチャンファとすることができるため、チャンファを形成しても、プレス時に、被覆燃料粒子に不自然に応力が加わることがないので、被覆燃料粒子が破損することがなく、被覆燃料粒子の破損を防止しつつ燃料コンパクトの機械的衝撃に対する強度を向上させることができる。
【0027】
本発明の第2の課題解決手段によれば、金型の隅部に平面形状又は曲面形状のテーパを形成して、円筒形状の燃料コンパクトの隅部にチャンファを形成しているので、破損を有効に防止することができる燃料コンパクトを容易に製造することができる。
【0028】
この場合、この金型の隅部のテーパがテーパ面を有するリング状のテーパ部材により形成すると、テーパ部材を金型の内部に装着するだけで、大幅な変更を加えることなく既存の製造設備を利用することができるので、破損を有効に防止することができる燃料コンパクトを低コストで簡易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1は本発明の第1の実施の形態による燃料コンパクト10を示し、この燃料コンパクト10は、図2に示す金型を用いて図1(B)に拡大して示す複数のオーバーコート粒子12をプレス成型又はモールド成型により加熱しながら圧縮して一体成型することにより形成される。
【0030】
これを具体的に説明すると、燃料コンパクト10は、所定量の被覆燃料粒子12Aを、黒鉛粉末、粘結剤等から成る黒鉛マトリックス中に分散させて、オーバーコート粒子12とした後、図2に示すように、金属製のダイス1内に投入して、ダイス1内で同じく金属製の上下のパンチ2A、2Bにより圧縮することにより製造される。なお、図1(B)において、符号14は、オーバーコート層を示す。
【0031】
燃料コンパクト10を製造する際には、ダイス1とパンチ2を加熱することによりオーバーコート粒子12を加熱し、それによって、オーバーコート層14中の黒鉛マトリックス材に含まれるフェノール樹脂を軟化させて黒鉛マトリックス材を被覆燃料粒子12間のバインダとして一体化し、図1に示す円筒形状の燃料コンパクト10に成型する。なお、図2において、符号3は、円筒形状の燃料コンパクト10に中空部を形成するためのコアロッドを示し、このコアロッド3は、中実の燃料コンパクトを製造する場合には不要である。また、これらのダイス1、パンチ2、コアロッド3は、例えば、合金工具鋼から形成することができる。
【0032】
被覆燃料粒子12Aは、既に述べたように、圧縮する前に予め、その表面に、図1(B)に示すように、黒鉛粉末、粘結剤等から成る黒鉛マトリックス材をコーティングして形成されたオーバーコート層14が被覆されている。このオーバーコート層14は、1)プレス成型時等の圧力によって、被覆燃料粒子12Aを破損することを防止すると共に、2)被覆燃料粒子12A間の介在として、燃料コンパクト10内において被覆燃料粒子12Aを均一に分散させて、成形時及び熱処理時に被覆燃料粒子12Aが熱的機械的に破損するのを防止するために形成される。このため、被覆燃料粒子12Aが均一に分散されるよう、オーバーコート粒子12の直径を均一に揃えた上で、燃料コンパクト10とすることが一般的である。
【0033】
このオーバーコート層14は、被覆燃料粒子12Aを、黒鉛粉末や粘結剤等から成る黒鉛マトリックス材中に分散させることにより形成することができるが、その際、オーバーコート層14の厚みは、このオーバーコート工程の途中及び最後にオーバーコート層14が形成された被覆燃料粒子12を篩い分けする際に、その篩のメッシュサイズを適切に設定すると共に、オーバーコートのための時間を調整することにより、適切な厚みに調整することができる。
【0034】
本発明の燃料コンパクト10は、図1に示すように、円筒形状の燃料コンパクト10の隅部10aに形成された平面形状のチャンファ16(面取り)を有する。このチャンファ16は、図1(A)に示すように、円筒形状の燃料コンパクト10の上端及び下端の隅部10aの全周にわたって形成することが望ましい。
【0035】
このチャンファ16は、図7に示す従来の燃料コンパクト10のように、その角部10b一極に荷重が加わる場合に比し、隅部10aに加わった機械的衝撃が分散されて応力が低減し、燃料コンパクト10、ひいては、その欠片等による図示しない燃料スリーブ、黒鉛ブロックの破損を防止することができる。
【0036】
このチャンファ16は、基本的には、図7に示すように成形された燃料コンパクト10の上下両端の隅部を機械的に切削加工して形成する。この場合、被覆燃料粒子12Aの被覆層を傷つけないようにすることが必要であり、このため、後に述べるチャンファ16の厚みの範囲が極めて重要である。この機械的な加工に代えて、図2に示すように、上下のパンチ2A、2B等の金型の隅部にテーパ2aを形成して、オーバーコート粒子12を圧縮成型することによりチャンファ16を形成してもよい。この場合、このテーパ2aは、図2に示すように、平面形状のテーパ面を有するリング状のテーパ部材4を、上下のパンチ2A、2Bに装着することにより形成することができる。
【0037】
図2に示す方法によって製造すると、図8に示す従来から用いられている一般的なパンチ2A、2Bに大幅な変更を加えることなくテーパ部材4を装着するだけで、本発明の製造方法を実施することができる。このように、既存の製造設備を有効に利用することができるので、チャンファ16を有する本発明の燃料コンパクト10を簡易に、かつ、低コストで製造することができる。なお、テーパ部材4は、その直径を、上下のパンチ2A、2Bの直径と等しく設定しておくことにより、上下のパンチ2A、2Bの隅部に取り付けることができる。
【0038】
このチャンファ16の厚みt、t´(図1(B)参照)は、少なくとも0.10mm以上とすることが望ましい。これは、チャンファ16の厚みt、t´が大きい方が、チャンファ16のチャンファ面の面積を大きく取ることができ、燃料コンパクト10に加わる機械的衝撃を分散して、応力を充分に低減することにより、燃料コンパクト10の欠損を充分に防止することができるからである。なお、本発明において、チャンファ16の厚みt、t´とは、図1(B)に示すように、燃料コンパクト10の直交する上面(又は下面)10Aと側面10Bとに跨って形成されるチャンファ16において、一方の端面(上面(あるいは下面)10A又は側面10B)の位置から、チャンファ16が他方の端面(側面10B又は上面(あるいは下面)10A)と交差する位置までの距離をいう。
【0039】
このように、チャンファ16は、燃料コンパクト10の欠損防止のためには、その厚みt、t´をできるだけ大きく設定することが望ましいが、その一方で、チャンファ16の厚みt、t´をあまりに大きく設定すると、チャンファ16を機械的加工によって形成する場合には、被覆燃料粒子12Aの被覆層を削ってしまって照射挙動に影響を及ぼし、また図2の方法によってチャンファ16を形成する場合には被覆燃料粒子12Aの強度に影響を与えるので、このような影響を受けない範囲で厚みを設定するのが好ましい。また、このチャンファ16の厚みt、t´を大きくとるために、チャンファ16の面取り角度θ、θ´(図1(B)参照:燃料コンパクト10の端面からのチャンファ16の傾斜角度:θ+θ´=90°)を必要以上に大きく(他方の面取り角度を小さく)設定すると、却って、チャンファ16としての応力低減機能が低下する。
【0040】
このため、このチャンファ16の面取り角度θ、θ´(図1(B)参照)は、30°〜60°の範囲内で設定し、かつ、チャンファ16の厚みt、t´(図1(B)参照)の上限値は、チャンファ面が被覆燃料粒子12Aの外周面に接するまで深く形成された時の厚みに相応する寸法とすることが望ましい(図1(C)参照)。
【0041】
チャンファ16の値の厚みt、t´が上記の上限値を越えると、チャンファ16が、被覆燃料粒子12Aの被覆層の一部を切り欠くように形成されることになるため、オーバーコートされた被覆燃料粒子12Aの圧縮時等に、被覆燃料粒子12に必要以上の負荷が加わり、被覆燃料粒子12Aが破損して、核分裂生成物の保持上好ましくない状態となるおそれがある。特に、チャンファ16がその厚みが上記上限値を越えて機械的加工によって形成される場合には、被覆燃料粒子の被覆層が切断されて核分裂生成物の保持機能に不都合が生ずる望ましくない状態となる。従って、チャンファ16の厚みt、t´は、少なくともチャンファ面が被覆燃料粒子12Aの外周と重なる位置に設定した場合における厚みをもって上限値とし(図1(C)参照)、それ以上には設定しないことが必要となる。これにより、被覆燃料粒子12Aの破損を防止しつつ、製造された燃料コンパクト10の機械的衝撃に対する強度を向上させることができる。
【0042】
なお、チャンファ16の面取り角度を、図示の実施の形態のように、45°に設定した場合には、面取り角度θ、θ´のいずれも45°となり、チャンファ16の厚みも、燃料コンパクト10の上面(又は下面)10Aからの厚みtと側面10Bからの厚みt´とが等しくなるが、図3(A)(B)に示すように、面取り角度を45°以外に設定する場合には、チャンファ16において異なる値の面取り角度θ、θ´が存在することになり(例えば、30°と60°及びその逆)、その結果、上記の意味でのチャンファ16の厚みも、図3(A)(B)に示すように、異なる値の厚みが特定されることになる。
【0043】
即ち、図3(A)に示す実施の形態においては、上面10Aからの厚みX1と側面10Bからの厚みX2とが異なり、また図3(B)に示す実施の形態においては、上面10Aからの厚みY1と側面10Bからの厚みY2が異なる。この場合には、チャンファ16の厚みは、チャンファ面が被覆燃料粒子12Aの外周面に接する時のチャンファの厚みX1又はX2(Y1又はY2)のうち、それぞれ、大きい側の値を上限値として設定し、チャンファ16の厚みが、それ以上の値とならないように設定する。
【0044】
更に具体的に述べると、図3(A)に示す実施の形態においては、上面(下面)10Aからの距離である厚みX1の値を、図3(B)に示す実施の形態においては、側面10Bからの距離である厚みY2の値を、それぞれチャンファ16の厚みの上限値として、チャンファ16の厚みがこの上限値以上の値とならないように設定することにより、他方の厚み(X2、Y1)も必ず上限値である厚み(X1、Y2)よりも小さくなり、チャンファ16が被覆燃料粒子12Aに影響を与えることがなく、被覆燃料粒子12Aの破損を防止することができる。
【0045】
本発明の第1の実施の形態の変形が図4に示されており、この変形では、チャンファ16は、円筒形の燃料コンパクト10の軸線方向に異なる面取り角度の2段の平面形状を有する。図示の例では、第1段(上段)の平面形状のチャンファ部分16Uの面取り角度θuが第2段(下段)の平面形状のチャンファ部分16Dの面取り角度θdよりも小さくしている。この変形例において、オーバーコート層14は、図4(B)に示すように、図1(C)と同様にして、チャンファ16が被覆燃料粒子12Aの被覆層に接触するように切削してもよい。
【0046】
この変形によると、図1及び図3に示す1つの平面形状のチャンファ16よりもチャンファの厚みや表面積を大きくすることができるので、燃料コンパクトの欠損や割れを一層有効に防止することができるので好ましい。
【0047】
本発明の第2の実施の形態による燃料コンパクト10が図5に示されており、この実施の形態では、このチャンファ16は、図5(B)に示すように、曲面形状を有している。このようにチャンファ16を曲面形状とすると、図1の平面形状のチャンファ16に比べて、チャンファ16の厚みt(図5(B)参照)や表面積を大きく設定することができる。
【0048】
この曲面形状のチャンファ16は、図5(B)の例では、被覆燃料粒子12A上のオーバーコート層14の外面に接触するような曲面半径R1(この場合の曲面半径は、オーバーコート粒子12の半径と同じである)に設定している。しかし、曲面形状のチャンファ16は、図5(C)に示すように、オーバーコート層14を削った状態に形成して曲面半径を大ききしてもよいが、被覆燃料粒子12Aの被覆層を削ったり傷つけたりすることがないように、その曲面半径の上限値R2は、図5(C)に示すように、チャンファ16の曲面が被覆燃料粒子12Aの外周面(被覆層の外周面)に接触する曲面半径である。これ以上曲面半径を大きくすると、被覆層を損傷するので、それを避けなければならない。
【0049】
このように、チャンファ16が曲面で厚みtが大きくなると、チャンファ16のチャンファ面の面積を大きくすることができるため、ハンドリング時や熱膨張時に、燃料コンパクト10が図示しない燃料スリーブや黒鉛ブロックの内面と機械的に接触しても、燃料コンパクト10に加わる機械的衝撃を分散して応力を充分に低減することができるので、燃料コンパクト10に欠損や割れに対する機械的強度が向上し、従って燃料スリーブや黒鉛ブロックが破損するのを充分に防止することができる。
【0050】
また、チャンファ16は、曲面の厚みを上限値まで大きくしても被覆燃料粒子12Aの形状に沿った曲面形状となるため、プレス時に、被覆燃料粒子12Aに不自然に応力が加わることがないので、被覆燃料粒子12Aが破損することがなく、被覆燃料粒子12Aの破損を防止しつつ燃料コンパクト10の機械的衝撃に対する強度を向上させることができる。
【0051】
また、チャンファ16の曲面の厚みが上限値に達しない場合には、チャンファ面と被覆燃料粒子12Aとの間に黒鉛マトリックス材が介在することになり、プレスの際に、この黒鉛マトリックス材の圧縮により、被覆燃料粒子12Aに不自然に圧力が加わり、被覆燃料粒子12Aが破損するおそれがなくなる。
【0052】
このように、チャンファ16の曲面の厚みの上限値を被覆燃料粒子12Aの被覆層を削ったり傷つけたりすることがないように設定すると、被覆燃料粒子12Aに加わる応力を充分に低減して被覆燃料粒子12Aの破損を防止しつつ、チャンファ16の厚みtを被覆燃料粒子12の半径に近い充分に大きな値の厚みとすることができるので、燃料コンパクトの機械的強度を向上して、燃料コンパクトや燃料スリーブ、黒鉛ブロックの破損を充分に防止することができる。
【0053】
図1の実施の形態と同様に、この曲面形状のチャンファ16も、機械的切削によって形成するが、それに代えて、図6に示すように、上下のパンチ2A、2B等の金型の隅部に曲面部2aを形成して、オーバーコート層14を有する被覆燃料粒子12A(即ち、オーバーコート粒子12)を圧縮することにより形成することができる。この場合、既存の製造設備を有効に利用することができるようにするために、この曲面部2aは、図6に示すように、曲面形状を有するテーパリング状のテーパ部材4を、上下のパンチ2A、2Bに装着することにより形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、円筒形状の燃料コンパクトの隅部に設けられたチャンファ(面取り)によって、ハンドリング時や熱膨張時に、燃料コンパクトが燃料スリーブや黒鉛ブロックの内面と機械的に接触しても、燃料コンパクトに加わる応力が低減するので、燃料コンパクトに欠損や割れが生じるのを防止することができ、良質の燃料コンパクトを提供することができ、産業上の利用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態による燃料コンパクトを示し、同図(A)はその斜視図、同図(B)はその一部拡大断面図、同図(C)は、図1(B)と同じ部分の断面図であるが、図1(B)とは異なる形態のチャンファの拡大断面図である。
【図2】本発明による燃料コンパクトの製造方法を実施する状態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を変形した燃料コンパクトを示し、同図(A)はその斜視図、同図(B)はその一部拡大断面図、同図(C)は、図(B)と同じ部分の断面図であるが、図3(B)とは異なる形態のチャンファの拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を更に変形した燃料コンパクトを示し、同図(A)はその一部拡大断面図、同図(B)は、同図(A)と同じ部分の断面図であるが、図4(A)とは異なる形態のチャンファの拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による燃料コンパクトを示し、同図(A)はその斜視図、同図(B)はその一部拡大断面図、同図(C)は、図5(B)と同じ部分の断面図であるが、図5(B)とは異なる形態のチャンファの拡大断面図である。
【図6】図5の燃料コンパクトの製造方法を実施する状態を示す概略断面図である。
【図7】従来技術の燃料コンパクトを示し、同図(A)はその斜視図、同図(B)はその一部拡大断面図である。
【図8】図7の燃料コンパクトの製造する状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ダイス
2 パンチ
2A 上パンチ
2B 下パンチ
2a テーパ又は曲面部
3 コアロッド
4 テーパ部材
10 燃料コンパクト
10A 燃料コンパクトの上面(下面)
10B 燃料コンパクトの側面
10a 燃料コンパクトの隅部
10b 燃料コンパクトの角部
12 オーバーコート粒子
12A 被覆燃料粒子
14 オーバーコート層
16 チャンファ
16U 第1段(上段)のチャンファ部分
16D 第2段(下段)のチャンファ部分
t、t´、X1、X2、Y1、Y2 チャンファの厚み
θ、θ´、θu、θd チャンファの面取り角度




 

 


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