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発明の名称 高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−71572(P2007−71572A)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
出願番号 特願2005−256244(P2005−256244)
出願日 平成17年9月5日(2005.9.5)
代理人 【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
発明者 大久保 和俊 / 高山 智生
要約 課題
高温ガス炉用燃料コンパクトを材料に荷重を掛けることなく成形することができる方法を提供すること。

解決手段
ポリビニールアルコール(PVA)水溶液中に黒鉛粉末を分散させて調製されたマトリックス原液と被覆燃料粒子とを多数の液体透過口12H、14Hを有するコンパクト形成容器10に装填し、この容器10をアセトン中に浸漬してアセトンを容器10の液体透過口12H、14Hを通してPVA水溶液をゲル化して湿潤ゲル状の燃料コンパクトを形成し、この湿潤ゲル状の燃料コンパクトを乾燥し、仮焼し、最後に焼結して製品燃料コンパクトを製造する。
特許請求の範囲
【請求項1】
水溶性高分子樹脂化合物水溶液中に黒鉛粉末を分散させてマトリックス原液を調製する工程と、周壁に多数の液体透過口を有するコンパクト形成容器に前記マトリックス原液と被覆燃料粒子とを装填する工程と、前記高分子樹脂化合物水溶液と接触すると反応して高分子樹脂化合物をゲル化させる液体中に前記コンパクト形成容器を浸漬することによって前記液体を前記容器の液体透過口を通して前記高分子樹脂化合物水溶液をゲル化して前記黒鉛粉末と前記被覆燃料粒子が分散状に担持された湿潤ゲル状の燃料コンパクトを形成させる工程と、前記湿潤ゲル状の燃料コンパクトを前記液体中から取り出し乾燥して水分が除去された乾燥ゲル状の燃料コンパクトを得る工程と、前記乾燥ゲル状の燃料コンパクトを仮焼して前記高分子樹脂化合物が除去された燃料コンパクトを得る工程と、前記燃料コンパクトを焼結する工程とを備えた高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法であって、前記水溶性高分子樹脂化合物がポリビニールアルコールであることを特徴とする高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法であって、前記コンパクト形成容器が浸漬される液体がアセトンであることを特徴とする高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法であって、前記マトリックス原液を調製する滴下原液中の前記高分子樹脂化合物の含有率が0.5〜15重量%の範囲内であることを特徴とする高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法であって、前記コンパクト形成容器の各液体透過口は、前記マトリックス原液の粘度により前記マトリックス原液が漏洩しない程度の大きさであることを特徴とする高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法であって、前記乾燥ゲル状の燃料コンパクトを仮焼する工程が400〜800℃の不活性ガス中で行われることを特徴とする高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法であって、前記燃料コンパクトが50%以上の粒子充填率を有するように前記被覆燃料粒子を充填することを特徴とした高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法。










発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法に関し、特に被覆燃料粒子に荷重をかけることがなく製造することができるようにした燃料コンパクトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温ガス炉は、燃料を含む炉心構造を熱容量が大きく高温で健全性を維持する黒鉛で構成し、炉心を冷却するために、高温下でも化学反応が起こることがないヘリウムガスを冷却ガスとして用いているので、固有の安全性が高く、約900℃の高い出口温度のヘリウムガスを回収して、この高温熱を発電、水素製造、化学プラント等の広い分野で利用することができる。
【0003】
この高温ガス炉の燃料は、二酸化ウランをセラミック状に焼結した直径が約350〜650ミクロンの燃料核の周囲に4層の被覆を施して形成されている。第一層は、密度が約1g/cmの低密度熱分解炭素の被覆であり、これは、ガス状の核分裂生成物(FP)のガス溜めとしての機能と燃料核のスウェリングを吸収するバッファとしての機能とを併せ持っている。第二層は、密度が約1.8g/cmの高密度熱分解炭素の被覆であり、これは、ガス状FPの保持機能を有する。第三層は、密度が約3.2g/cmの炭化珪素(SiC)の被覆であり、これは、固体FPの保持機能を有すると共に、被覆燃料粒子の主要な補強部材としての機能を有する。最後に、第四層は、第二層と同様に、密度が約1.8g/cmの高密度熱分解炭素の被覆であり、これは、ガス状FPの保持機能と第三層の保護層としての機能を有する。
【0004】
一般的な被覆燃料粒子は、約500〜1000ミクロンの直径を有する。この被覆燃料粒子は、黒鉛マトリックス中に分散させた後、一定形状の燃料コンパクトの形態に成型加工され、この燃料コンパクトの一定数量を黒鉛筒に入れ、上下を栓で閉じて燃料棒とされる。この燃料棒は、六角柱型黒鉛ブロックの複数の挿入口に差し込まれて高温ガス炉の燃料となる。多数個の六角柱型黒鉛ブロックをハニカム配列に多段に重ねて炉心を構成している。
【0005】
高温ガス炉の燃料は、一般的には、次のようにして製造される。まず、酸化ウラン粉末を硝酸に溶かして硝酸ウラニル原液とし、この硝酸ウラニル原液に純水、増粘剤を添加し攪拌して滴下原液を作る。増粘剤は、滴下された硝酸ウラニル原液の滴液が落下中にそれ自体の表面張力で真球状になるように作用する。このような増粘剤としては、アルカリ条件下で凝固する性質を有する樹脂、例えば、ポリビニールアルコール樹脂、ポリエチレングリコール、メトローズ等を使用することができる。このように調製された滴下原液は、所定の温度に冷却されて粘度が調整された後、細径の滴下ノズルを振動させる等の方法を用いてアンモニア水中に滴下される。
【0006】
滴液は、アンモニア水溶液表面に着水するまでの空間でアンモニアガスを吹き付けて表面をゲル化させることによって着水時の変形が防止される。硝酸ウラニルは、アンモニア水中でアンモニアと充分に反応させ、重ウラン酸アンモニウムの粒子となる。この粒子は、大気中で焙焼され三酸化ウラン粒子となり、更に還元焼結されて高密度のセラミック二酸化ウランの燃料核となる。
【0007】
この燃料核は、流動床に装荷され、この流動床内に供給される反応ガス(被覆ガス)が熱分解されて燃料核の上に被覆が施される。第一層の低密度熱分解炭素は、約1400℃でアセチレン(C)を熱分解して被覆される。第二層及び第四層の高密度熱分解炭素は、約1400℃でプロピレン(C)を熱分解して被覆される。第三層のSiCは、約1600℃でメチルトリクロロシラン(CHSiCl)を熱分解して被覆される。このように4層の被覆が施されて被覆燃料粒子が得られる。
【0008】
被覆燃料粒子の粒径や真球度は、オーバーコート粒子の製造条件に大きく影響することから、被覆燃料粒子は、篩による粒径選別及び真球度選別を行った上でオーバーコート工程にリリースされる。
【0009】
この被覆燃料粒子は、その表面に黒鉛粉末、粘結剤等から成る黒鉛マトリックス材を表面にコーティングしてオーバーコート粒子とする。オーバーコート粒子は、中空円筒形又は円筒形に温間でプレス成型され、燃料コンパクトとなる。この燃料コンパクトは、マトリックス材中に含まれる粘結剤等を除去するために予備焼成され、更にマトリックス材から脱ガスするために焼成される。
【0010】
被覆燃料粒子の表面に黒鉛マトリックス材をコーティングするオーバーコート工程は、従来、主に、次の2つの目的を達成するために、行われていた。
(1)プレス成型時の圧力によって被覆燃料粒子が破損をすることを防ぐこと。
(2)燃料コンパクト内に被覆燃料粒子を均一に分散させ、燃焼時に被覆燃料粒子が熱的、機械的に破損するのを防ぐこと。
【0011】
コンパクトプレス時に被覆燃料粒子の被覆層が破損するのを防止するために、オーバーコート層は、被覆層のクッション材として働くので、厚い方が好ましいが、燃料コンパクトの体積は予め決まっているので、燃料コンパクト中のマトリックス材の量が増加すれば、燃料コンパクト中に含まれる被覆燃料粒子の個数が逆に減少し、1個当たりの燃料コンパクトに含まれるウラン量が少なくなることになる。従来の燃料コンパクトでは、被覆粒子の体積/コンパクトの体積で定義される被覆粒子充填率の値は、35%程度であった。
【0012】
高温ガス炉用燃料を高燃焼度化するために1個当たりの燃料コンパクトに含まれるU235の量を増加させる必要があり、そのためには、ウランの濃縮度を高くするか、1個当たりの燃料コンパクトに含まれるウラン量を多くすることが必要である。1個当たりの燃料コンパクトに含まれるウラン量を多くするためには、コンパクト中にできる限り多くの被覆燃料粒子を入れる必要があるが、マトリックス材の量が少なくなると、プレス成型時の圧力によって被覆燃料粒子が破損をすることを防ぐことが困難になるという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、被覆燃料粒子に荷重が加わることがなく、従ってオーバーコート工程を必要とすることなく成形することができる燃料コンパクトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題解決手段は、水溶性高分子樹脂化合物水溶液中に黒鉛粉末を分散させてマトリックス原液を調製する工程と、多数の液体透過口を有するコンパクト形成容器にこのマトリックス原液と被覆燃料粒子とを装填する工程と、高分子樹脂化合物水溶液と接触すると反応して高分子樹脂化合物をゲル化させる液体中にコンパクト形成容器を浸漬することによって液体を容器の液体透過口を通して高分子樹脂化合物水溶液をゲル化して黒鉛粉末と被覆燃料粒子が分散状に担持された湿潤ゲル状の燃料コンパクトを形成させる工程と、この湿潤ゲル状の燃料コンパクトを液体中から取り出し乾燥して水分が除去された乾燥ゲル状の燃料コンパクトを得る工程と、この乾燥ゲル状の燃料コンパクトを仮焼して高分子樹脂化合物が除去された燃料コンパクトを得る工程と、この燃料コンパクトを焼結する工程とを備えた高温ガス炉用燃料コンパクトの製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の課題解決手段において、水溶性高分子樹脂化合物は、ポリビニールアルコールであり、またコンパクト形成容器が浸漬される液体は、アセトンであるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の課題解決手段において、マトリックス原液を調製する滴下原液中の高分子樹脂化合物の含有率が0.5〜15重量%の範囲内であるのが好ましい。
【0017】
更に、コンパクト形成容器の各液体透過口は、マトリックス原液の粘度によりマトリックス原液が漏洩しない程度の大きさとし、乾燥ゲル状の燃料コンパクトを仮焼する工程が400〜800℃の不活性ガス中で行われ、燃料コンパクトが50%以上の粒子充填率を有するように被覆燃料粒子を充填するのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料コンパクトは、プレス成型ではなく、マトリックス原液と被覆燃料粒子とをコンパクト容器内に充填し、容器内でゲル化して成形されるので、プレス成型時のように被覆燃料粒子に荷重がカロわることがないため、被覆燃料粒子の被覆層が破損することがない。
【0019】
また、被覆燃料粒子に荷重が加わることがないため、オーバーコート層が不要になり、被覆燃料粒子の充填率を極限まで高めることができ、高燃焼度化できる燃料コンパクトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に述べると、図1は、本発明に係わる燃料コンパクトの製造方法に用いられるコンパクト成形容器10を示し、この容器10は、多数の小径の液体透過口12Hを有する円筒形容器本体12と、容器本体12と同様に多数の液体透過口14Hを有し蝶番16によって容器本体12を開閉することができる蓋14とから成り、蓋14は、閉じ状態でロック金具18によってロックされる。
【0021】
本発明の方法は、燃料コンパクト1個分の被覆燃料粒子を計量し、この被覆燃料粒子をコンパクト成形容器10内に装填する。一方、ポリビニールアルコールの如き水溶性高分子樹脂化合物の水溶液中に黒鉛粉末を一定の割合で分散させて予め調製されたマトリックス原液をコンパクト成形容器10に装填し、蓋14を閉じてロック金具18でロックする。
【0022】
次いで、高分子樹脂化合物水溶液と接触すると反応して高分子樹脂化合物をゲル化させる液体、例えば、アセトン中に、コンパクト成形容器10を浸漬し、これによってアセトンをコンパクト成形容器10の液体透過口12H、14Hを通して高分子樹脂化合物水溶液をゲル化して黒鉛粉末と被覆燃料粒子が分散状に担持された湿潤ゲル状の燃料コンパクトを形成する。
【0023】
その後、この湿潤ゲル状の燃料コンパクトを容器10と共に液体中から取り出した後、湿潤ゲル状の燃料コンパクトを容器10から取り出し、加温し乾燥して水分が除去された乾燥ゲル状の燃料コンパクトを得る。この乾燥ゲル状の燃料コンパクトを仮焼して高分子樹脂化合物が除去された燃料コンパクトを得、最後に、この燃料コンパクトを焼結してマトリックス中のガス成分を除去して燃料コンパクトを完成する。
【実施例】
【0024】
本発明の燃料コンパクトの製造方法の具体的実施例を述べると、コンパクト1個分の被覆燃料粒子の充填率は約60%とした。コンパクト容器10は、円筒形とし、その内径及び高さは、燃料コンパクトの製品寸法に等しくした。これは、乾燥・仮焼・焼結工程を経ても、燃料コンパクトの寸法がほぼ稠密に充填された被覆燃料粒子によって変化しないためである。また、液体透過口12H、14Hの大きさは、水溶性高分子樹脂水溶液を装填したときにその粘性により容器から流出することがない程度の大きさとして約0.5mmとした。この液体透過口の数量は、ポリビニールアルコール(PVA)水溶液とアセトンが接触し、ゲル化反応が進むものであれば、特に限定されない。
【0025】
水溶性高分子樹脂化合物であるポリビニルアルコール(PVA)を水に溶かして約10重量%のPVA水溶液とした。このPVAを水に溶かす際は、加熱・撹拝しながら行い、溶解後、これを室温まで冷却した。これに粘結剤を除いた黒鉛マトリックスを一定割合で混合させてマトリックス原液を調製した。この混合割合は、燃料コンパクト中に黒鉛マトリックスが占める部分の体積及び最終的な燃料コンパクトのマトリックス密度から決めた。
【0026】
マトリックス原液と被覆燃料粒子とが装填されたコンパクト成形容器をアセトン中に約5時間浸漬させてアセトンにより原液中に含まれる PVAを脱水し原液をゲル化して湿潤ゲル状の燃料コンパクトを得た。
【0027】
この湿潤ゲル状の燃料コンパクトを容器から取り出し、大気中で約40℃に加温して水分を除去して乾燥ゲル状の燃料コンパクトを得た。この乾燥ゲル状の燃料コンパクトを約650℃の窒素雰囲気中で仮焼して高分子樹脂化合物を除去した燃料コンパクトとした。仮焼温度は400〜800℃で充分であり、PVAを充分に除去することができ、加熱時の雰囲気はマトリックス材の黒鉛が酸化しないことが必要であり、本実施例では、窒素ガス雰囲気で乾燥した。最後に、仮焼された燃料コンパクトを1800℃の真空中で1時間焼結することにより、マトリックス中に含まれるガス成分を除去し、製品燃料コンパクトを得た。
【0028】
本実施例で得られた燃料コンパクトを検査し、SiC被覆層の破損率及び貫通破損率(露出ウラン率)を測定したところ、コンパクト製造に起因する被覆燃料粒子の破損は認められなかった
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、燃料コンパクトは、材料をコンパクト容器内に充填しゲル化して成形されるので、プレス成型時のように被覆燃料粒子に荷重がカロわることがないため、被覆燃料粒子の被覆層が破損することがなく、オーバーコート層が不要になり、被覆燃料粒子の充填率を極限まで高めることができるので、燃料コンパクトの燃焼の高度化に確実に対応することができ、産業上の利用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の燃料コンパクトの製造方法に用いられるコンパクト成形容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 コンパクト成形容器
12 容器本体
12H 液体透過口
14 蓋
14H 液体透過口
16 蝶番
18 ロック金具


































 

 


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