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発明の名称 自然循環式沸騰水型原子炉
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−232518(P2007−232518A)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
出願番号 特願2006−53346(P2006−53346)
出願日 平成18年2月28日(2006.2.28)
代理人 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
発明者 高橋 志郎 / 大塚 雅哉 / 椿 正昭 / 廣川 文仁
要約 課題
複数の直立した格子流路に仕切ってチムニの内側を冷却材の上昇流路とした際に発生する気液二相流の流動様式による流力振動を低減する格子流路の流路構造を実現する。

解決手段
圧力容器6内の炉心7の上に設置される円筒状のチムニ11の内側に、上下の格子構造体11−1,11−2によって複数の直立した格子流路11a−1,11a−2を備える。そして、上下の格子構造体11−1,11−2の分割端面28,29の間に、格子流路11a−1,11a−2の流路横断面が異なる分岐・合流領域37を設けることで、格子流路11a−1から格子流路11a−2に気液二相流が上昇する過程でチャーン流などの流動様式を、混合又は合成させた流動様式に変換させて、チャーン流の流動様式で発生する流力振動荷重を低減してチムニの構造健全性を確保し、原子炉の健全性維持及び定期検査などの作業性に伴う経済性を図る。
特許請求の範囲
【請求項1】
原子炉圧力容器内の炉心の上に設置されるチムニによって内側に上昇流路を、外側に下降流路を有する冷却材の循環流路を備えている自然循環式沸騰水型原子炉であって、
前記チムニは、格子状に仕切られた複数の直立した格子流路を備え、該格子流路の流路横断面が、高さ方向において異なる領域を有していることを特徴とする自然循環式沸騰水型原子炉。
【請求項2】
前記格子流路が、分割された上下の格子構造体によって高さ方向に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自然循環式沸騰水型原子炉。
【請求項3】
前記上下の格子構造体の分割端面の間に、隙間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の自然循環式沸騰水型原子炉。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然循環式沸騰水型原子炉に係り、特に冷却材の密度差により自然循環の冷却材循環駆動力を得るために炉心の上に設置されるチムニの流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自然循環式の沸騰水型原子炉(以後、BWRと称する)は、原子炉圧力容器内に炉心が収納されており、この炉心を取り囲むように円筒状の炉心シュラウドが設けられている。そして、炉心の上にはこれにつながるかたちで円筒状のチムニが設けられている。
これら炉心シュラウド及びチムニの内側に冷却材の上昇流路が、外側には原子炉圧力容器の内周面との間で冷却材の下降流路としてダウンカマが形成されている。これにより、原子炉圧力容器内には冷却水が密度差に基づく冷却材循環駆動力によって自然循環するための循環流路がダウンカマ、炉心下部プレナム、上昇流路によって構成されている。
【0003】
冷却材が自然循環するための循環流路を原子炉圧力容器内に備えているBWRは、その循環途中である炉心で熱を受けて加熱された冷却材が蒸気を伴う飽和状態の気液二相流となり、炉心の各燃料集合体からチムニ内を抜け出る上昇流路にて上昇し、気水分離器によって水と蒸気に分離される。蒸気はタービンなどに供給され、水はダウンカマ側に戻される。また、タービンで仕事をした後の蒸気は、復水された後に給水入口ノズルを介して原子炉圧力容器内(ダウンカマ側)に戻される。
ダウンカマに戻された冷却材は、炉心で加熱されて炉心からチムニへの上昇流路を上昇する水、蒸気二相飽和状態の冷却材よりも低温で密度が大きいことから、その密度差に基づく冷却材自然循環駆動力でダウンカマを下降していく。ダウンカマを下降した冷却材の流れは炉心下部プレナムで上側に反転して再度炉心へ下方から入り加熱されて上昇流路を上昇する。
【0004】
このような、循環流路を原子炉圧力容器内に備えているBWRでは、原子炉圧力容器内の冷却材を、再循環ポンプを用いて強制循環させる替わりに、自然循環させるようにしている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
そのため、自然循環式のBWRと、冷却材を再循環ポンプで強制的に循環させる強制循環式のBWRとの最大の違いは、冷却材を循環させるための系統及び機器が簡略化されていることである。
【0005】
また、自然循環による冷却材の循環効率の向上を期待し、円筒状のチムニの横断面においてその半径方向に沿って外側から中心に向かうにしたがって軸方向の高さが高くなるように、例えば、最外周領域、外側領域、内側領域などのように区画された直立の食違い格子流路構造を有するチムニを炉心の上に具備し、その中を炉心からの気液二相流を通して上昇させるようにした自然循環式のBWRも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平06−265665号公報(段落番号0019、及び図1参照)
【特許文献2】特開平08−094793号公報(段落番号0022〜0023、及び図1参照)
【特許文献3】特公平07−027051号公報(請求項1、明細書第4頁右欄の第7行目〜第21行目、及び図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、チムニの格子流路を模擬した空気−水二相流実験装置を用いて、垂直上昇流の二相流の流動試験を実施した。この流動試験の中で、二相流の空気と水の流量は、変化させた。
その結果、格子流路を形成する流路隔壁に流力振動(FIV:Flow Induced Vibration)荷重が掛かることが分かった。
【0007】
例えば、図9に示すように、格子流路40の流路横断面内の中央部が気相(空気泡)で占められ、その気泡の外側に格子流路40の内壁面40aに沿って液相(水)が存在する状態41と、流路横断面内が略液相で満たされた状態42とが交互に繰り返されて通過する所謂チャーン流に近い二相流の流動様式となり、流路隔壁に数kPa〜十数kPaの圧力変動が加えられることが分かった。
また、この実験では、隣り合う格子流路間における格子隔壁への圧力変動は、位相が異なることが分かった。
これは、格子流路内におけるチャーン流では、前記のように流れの中で高さ方向にボイド率分布が一様分でないことに加え、高さ方向のボイド率分布が格子流路間では同位相でないこと、さらに格子流路ごとに気相の容積量が異なることによるものと考えられる。
このような、流力振動荷重は、格子流路間を仕切る流路隔壁を、板材を溶接などにより接合して形成する場合、この接合部に繰り返し荷重が掛かり、長期的には悪影響を与える可能性がある。
【0008】
本発明は、複数の直立した格子流路に仕切ってチムニの内側を冷却材の上昇流路とした際に発生する冷却材の流力振動荷重を効果的に低減することができるように改良された流路構造を有するチムニを備えた自然循環式沸騰水型原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の自然循環式沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器内の炉心の上に設置されるチムニの内側に、格子状に仕切られた複数の直立した格子流路を備え、該格子流路の流路横断面が、高さ方向において異なる領域を有している構成を特徴とする(請求項1)。そして、前記格子流路が、上下の格子構造体によって高さ方向に構成されていることを特徴とする(請求項2)。さらに、前記上下の格子構造体の分割端面の間に、隙間が設けられていることを特徴とする(請求項3)。
【0010】
本発明の自然循環式沸騰水型原子炉によれば、炉心で加熱された冷却材が飽和状態の気液二相流となってチムニの各格子流路を上昇通過する際に、各格子流路内に流力振動荷重を引き起こす要素であるチャーン流などの流動様式は、高さ方向において流路横断面が異なる格子流路の領域における例えば分岐や合流などによって混合されてその流れが変換される。これにより、気液二相流が格子流路を上昇する過程で引き起こすチャーン流に起因する圧力変動の発生が抑えられてそれに伴う流力振動荷重を低減することができる。すなわち、本発明により、チャーン流のような、水と蒸気が分離されて流れる流動様式が、水と蒸気が分散された流れに変換される。
【0011】
また、異なる領域の流路横断面を高さ方向に有する格子流路は、分割された上下の格子構造体の段積み組み合わせによって容易に実現することができる。さらに、上下の格子構造体の各格子流路は、両格子構造体の分割端面の間に設けた隙間によって連通している。これにより、チャーン流の流動様式によって各格子流路の高さ方向に発生する位相が相違する圧力変動は隙間を介して干渉することで、隣り合う格子流路における圧力変動の均一化を図ることが可能となり、流力振動荷重をより一層効果的に低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、複数の直立した格子流路に仕切ってチムニの内側を冷却材の上昇流路とした際に各格子流路に生じる流力振動荷重を効果的に低減することができる。
また、格子流路の高さ方向における冷却材の分岐と混合は、チムニのボイド率分布を均一化する効果も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係るチムニを備えた本発明の自然循環式沸騰水型原子炉の概略を示す縦断面図である。
【0014】
≪原子炉の概要≫
自然循環式沸騰水型原子炉(以後、原子炉と称する)1は、図1に示すように、原子炉圧力容器(以後、圧力容器と称する)6内に収納する炉心7で発生するボイド、すなわち蒸気(気相)と飽和温度の液相の冷却材の混合した密度の低い冷却材と、給水配管16bから供給される給水と混合された液相の冷却材との密度差(比重差)によって自然循環に必要な冷却材循環駆動力を得るように構成されている。
【0015】
≪原子炉の構成≫
原子炉1は、図1に示すように、縦長で円筒状を呈する圧力容器6の内部に、円筒状の炉心シュラウド(以後、シュラウドと称する)8が同心上に設けられている。このシュラウド8は、圧力容器6内面の底部の近くに設けられたシュラウドサポート32に固定されたシュラウドレグ8aによって支持されている。そして、シュラウド8の外周面と圧力容器6の内周面との間に環状の空間を形成し、この環状の空間を冷却材の下降流路としてのダウンカマ9としている。
また、シュラウド8の内部には、多数の燃料集合体21を装架する炉心7が炉心支持板22及び上部格子板23で支持されて収容されている。この炉心7の上部格子板23の上には、円筒状のチムニ11が同心上に設けられており、シュラウド8及びチムニ11の内側に冷却材の上昇流路を形成する。
【0016】
ダウンカマ9の上方には、復水器3から給水ポンプ4を介して、給水加熱器5で加熱の後、給水入口ノズル17から圧力容器6内に供給される冷却材を配給する図示省略の給水スパージャが円環状に設けられている。ダウンカマ9を下降した冷却材は、シュラウドレグ8a間の流路から、下部プレナム10に導き入れられる。
【0017】
そして、チムニ11の上端はシュラウドヘッド12aで閉じられている。このシュラウドヘッド12aには、所定数の冷却材通過用の孔(図示省略)が設けられており、スタンドパイプ12bを介して気液二相流から飽和蒸気と飽和水とに分離する気水分離器12に繋がっている。
この気水分離器12の上部には、蒸気乾燥器13が設けられ、気水分離器12を出た飽和蒸気に含まれている湿分が分離除去されるようになっている。
【0018】
また、シュラウドヘッド12aで閉じられたチムニ11の上には、チムニ11の後記する下側の格子流路11a−1から上側の格子流路11a−2を通って上昇してくる飽和状態の冷却材が合流するようにシュラウド上部プレナム(以後、上部プレナムと称する)11cが形成されている(図1参照)。
【0019】
炉心7の下部には、下方へ略半球面状に膨らませた炉心下部プレナム(以後、下部プレナムと称する)10が一体に形成されている。この下部プレナム10と炉心7との間には炉心7と下部プレナム10とを区切る境界になる炉心支持板22を、この炉心支持板22の上方には上部格子板23をそれぞれ設け、燃料集合体21と制御棒24の横方向の配置を決めている。
炉心支持板22には、所定の間隔で円形の図示しない貫通孔が設けられ、その貫通孔に制御棒案内管25が挿入され、制御棒案内管25の下部は、圧力容器6の底部を貫通して制御棒24を上下方向に動かす制御棒駆動機構26を収容する制御棒駆動機構ハウジング(以後、CRDハウジングと称する)26aの上部に組み合わされている。
燃料集合体21は、制御棒案内管25の上端に取り付けられた図示省略の燃料支持金具の上に据えられ、その荷重は制御棒案内管25およびCRDハウジング26aを介して圧力容器6の底部に伝えられるようにしている。
【0020】
燃料支持金具は、側面に冷却材入口を有し、そこに図示省略のオリフィスが設けられ、冷却材流量を規制している。燃料支持金具の冷却材入口に対応する制御棒案内管25の側面には開口が設けられ、下部プレナム10に導かれた冷却材が燃料支持金具を経て、燃料集合体21内に導かれるようになっている。
【0021】
個々の燃料集合体21は、図示省略の四角筒のチャンネルボックスで囲われ、軸方向の個別の流路を形成している。チャンネルボックスは、上部格子板23の上面まで至る。前記四角筒のチャンネルボックスの外側には、隣接している燃料集合体21のチャンネルボックスとの間に間隙を有し、所定割合の冷却材が上方に流れる流路を形成している。
制御棒24は、図示省略の中性子吸収物質を含む有効部を有し、その有効部が前記チャンネルボックスの外面をガイドとして、4体の燃料集合体21間に挿入される。
一方、圧力容器6の上部開口部には上方へ略半球面状に膨らませた容器蓋27が、図示省略の多数のスタッドボルトなどによって着脱(開閉)可能に取り付けられている。この容器蓋27の内側に蒸気ドーム14が設けられている。
【0022】
なお、シュラウドヘッド12aとスタンドパイプ12b及び気水分離器12は一体に組み立てられており、原子炉1の定期検査や燃料を交換するなどのときにはチムニ11の上端から一体で取り外すことが可能になっている。
【0023】
このように、概略説明した炉心7、チムニ11などの炉内構造物を圧力容器6内に順次設けけた構造になっている自然循環式の原子炉1においては、図1に示すように、冷却材(軽水)が気水分離器12の途中の高さの水位レベルLまで入れられた状態で運転される。
そして、給水入口ノズル17から供給される冷却材は、気水分離器12で分離された飽和水と混合し、図1中矢印Aで示す冷却材はダウンカマ9を下降する。ダウンカマを降下する冷却材の流れは、シュラウド8の下部側に設けられているシュラウドレグ8aから下部プレナム10に流下し、下部プレナム10で上側に反転して再度炉心7内に下方から流入し、炉心7によって加熱される。
【0024】
炉心7からの加熱によって冷却材Aは、図1中矢印Bで示す飽和状態の気液二相流となる。この気液二相流は、チムニ11の下側の格子流路11a−1から後記の隙間30を介して上側の格子流路11a−2を通って上昇し、上部プレナム11c、スタンドパイプ12bを経て、気水分離器12によって、矢印Cで示す気相の飽和蒸気と、矢印Dで示す液相の飽和水に分離される。このように、炉心7、チムニ11は、内側に冷却材の上昇流路を構成している。
飽和蒸気Cは、蒸気乾燥器13を経て、蒸気出口ノズル15から主蒸気配管16aによってタービン2に導かれて発電に供される。
【0025】
一方、飽和水Dは、圧力容器6内の冷却材に混合され、また、給水入口ノズル17から供給される冷却材と更に混合されて、再びダウンカマ9を下降してシュラウドレグ8aから下部プレナム10に流下され、この下部プレナム10で上側に反転して再度炉心7内に下方から流入して加熱されることが繰り返される。
つまり、ダウンカマ9に戻された冷却材は、給水と混ざり合ったものであり、炉心7で加熱されて炉心7、チムニ11と繋がる上昇流路を上昇する気液二相流の冷却材よりも低温で密度が大きいことから、その密度差(比重差)に基づく冷却水自然循環駆動力が生じ、ダウンカマ9を下降していく。
【0026】
≪第1の実施形態のチムニの構成≫
つぎに、第1の実施形態に係るチムニの格子流路の流路構造を、図2、図3及び図4を用いて説明する。ここでは、図1を適宜参照して説明する。
図2は、図1のII−II線横断面図であり、図3は、第1の実施形態に係るチムニの上下の格子構造体を示す斜視図であり、図4は、上下の格子構造体を重ね合わせたときの格子流路の組み合わせ配置関係と格子流路と炉心の制御棒セルとの配置関係を、一部を拡大して示す横断面図である。
【0027】
チムニ11は、図2及び図4に示すように、上方から見て格子状に仕切られた複数の格子流路11a−1,11a−2をそれぞれ有する上下の格子構造体11−1,11−2を内側に備えて構成されている。
また、チムニ11は、上下の格子構造体11−1,11−2の周囲を取り囲む円筒状のチムニ胴11dを備えている(図2参照)。このチムニ胴11dは、例えば圧力容器6内に同心上に設置されて上下の格子構造体11−1,11−2を同心上に段積み組み合わせて収容すると共に、上部格子構造体11−2の上端とシュラウドヘッド12aとの間に上部プレナム11cとなる上部空間が確保される高さに形成されている(図1参照)。
【0028】
≪格子構造体の構成≫
上下の格子構造体11−1,11−2は、チムニ11の高さ方向に2分割され、チムニ胴11dの内側に同心上に段積み組み合わせられて収容される。そして、上下の格子構造体11−1,11−2は、チムニ胴1dの内側に同心上に収容されるに際して、分割端面28,29の間に隙間30を確保するように収容される(図1参照)。
なお、隙間30は、気体を含む飽和蒸気が横断面において外側から中央側に集まってこない。つまり、偏流が起こらない程度にすることが好適である。要するに、上下の格子構造体11−1,11−2の格子流路11a−1,11a−2同士が互いに連通し合い、圧力の均一化の効果を期待できる程度の隙間であればよい。
この上下の格子構造体11−1,11−2は、図3及び図4に示すように、流路隔壁11bによって格子状に仕切られた格子流路11a−1,11a−2を備えて構成されている。ちなみに、流路隔壁11bの接合は溶接などによって行われている。
【0029】
≪格子流路の構成≫
下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1と上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2は、炉心平面の中心に対する配置を除いて基本的に同じ構成であることから、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1について説明する。なお、上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2の配置については後記する。
各格子流路11a−1は、流路横断面が正方形を呈し、その流路横断面(開口)の大きさを、炉心平面の2×2配列の制御棒セル31の配列角に合わせて形成している(図4参照)。従って、各格子流路11a−1の配置は、図2に示すように、炉心の平面に対し、1/8対称軸35に対して鏡対称の配置となる。ちなみに、制御棒セル31は、2×2配列の燃料集合体21の中央に制御棒24を配したものである。
つまり、図2に示すように、通常、炉心7の平面における中心Pを通るX軸33とY軸34のそれぞれの対称軸、およびX軸33又はY軸34に対して45°の角度をなして中心Pを通る1/8対称軸35を有している。
【0030】
一方、上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2の配置は、図4に示すように、下部格子構造体11−1の2×2配列の格子流路11a−1の各々の横断面中心位置に、1本の格子流路11a−2の四隅が位置するようになっている。したがって、下部格子構造体11−1と上部格子構造体11−2とを段積み組み合わせたものを上側から見ると、各格子流路11a−2の中心位置に、4本の格子流路11a−1を形成する流路隔壁11bの十字交差部P1が位置して見えることになる。
なお、上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2を仕切る流路隔壁11bの下端は、ナイフエッジ状又は流線形状に形成することが好適なものとなる。これにより、チムニ11内の気液二相流の圧損を低減することができる。
【0031】
このように、上部格子構造体11−2の1本の格子流路11a−2は、その下方にある下部格子構造体11−1の2×2配列の格子流路11a−1の1/4面積ずつを囲う関係となり、下部格子構造体11−1の1本の格子流路11a−1を上昇してきた気液二相流は、上部格子構造体11−2の流路隔壁11bによって、4つの流れに分岐されることになる。そして、下部格子構造体11−1の2×2配列の格子流路11a−1の1/4面積分の気液二相流が、上部格子構造体11−2の1本の格子流路11a−2において合流することになる。
これにより、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1と上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2との間における上下の格子構造体11−1,11−2の分割端面28,29の間には、気液二相流が、分割端面28を出て、隙間30を介して分割端面29を通過して上部格子構造体11−2の1本の格子流路11a−2に流れることで、分岐と合流とが行われる流路横断面が異なる分岐・合流領域37を有する流路構造が上下の格子構造体11−1,11−2の高さ方向に形成される(図5参照)。
【0032】
そして、定期検査などの点検の際に、チムニ11を圧力容器6の内部に設置したまま、上下の格子構造体11−1,11−2の高さ方向につながる各格子流路11a−1,11a−2を通して燃料集合体21又は制御棒24を引き上げ、そして装荷するなどの交換作業を行うことができる(図4参照)。
つまり、定期検査などの点検の際に、チムニ11を炉圧力容器6の内部に設置したまま、チムニ11の各格子流路11a−1,11a−2を通じて燃料集合体21を引き上げ、そして装荷するなどの交換作業を行う観点から、チムニ11の各格子流路11a−1,11a−2の流路隔壁11bは、制御棒セル31単位で炉心7の上部格子板23に明けられた正方形の格子孔(図示省略)を横切るような形で塞がないように構成することが好ましい。
【0033】
つぎに、隙間30と流路横断面が異なる分岐・合流領域37を有する流路構造の格子流路11a−1,11a−2を上昇する気液二相流の流れを、図5を用いて説明する。ここでは、図1を適宜参照しながら説明する。
図5は、第1の実施形態に係るチムニの格子流路における流路構造の気液二相流の流れを説明するために供した概念図である。
図5に示すように、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1を上昇する蒸気が混じった気液二相流は、チャーン流の流動様式まで発達する前に、流路横断面が異なる上部格子構造体11−2の各格子流路11aー2との分岐・合流領域37に達する。このとき、気液二相流が上昇するにしがたって格子流路11a−1の流路横断面の中央部に蒸気泡が集まる。
【0034】
分岐・合流領域37の達した格子流路11a−1の蒸気泡は、格子流路11a−2の流路隔壁1bにより、例えば、4つに分割され、格子流路11a−2の流路横断面の四隅寄りに放出されるように流れる。そして、格子流路11a−2の入口部分で細分割された蒸気泡は、格子流路11a−2を上昇するにしたがって格子流路11a−2の流路横断面の中央部に移動しつつ、大きな蒸気泡を形成するように再び気液の分離が始まる。
つまり、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1を上昇してきた気液二相流は、分岐・合流領域37を通過して上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2内に分岐して流れ込み、各格子流路11a−2において隣り合う他の格子流路11a−1から分岐して流れ込んできた気液二相流との混合がなされる。このとき、各格子流路11a−1,11a−2における液体と気体の存在(瞬時ボイド率)に関する位相はランダムであり、一致していない。
【0035】
このように、下部格子構造体11−1と上部格子構造体11−2とで上下に分断して、高さ方向の流路断面積が異なる分岐・合流領域37を有する格子流路1a−1,1a−2からなら高さ方向の流路構造により、チャーン流の発達を抑えて、チャーン流に起因する圧力変動を抑制することができる。
また、下部格子構造体11−1の隣り合う各格子流路11a−1と上部格子構造体11−2の隣り合う各格子流路11a−2は、分岐・合流領域37における隙間30にて流通していることにより、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1を出た流れの間で圧力変動が干渉し合うことで、圧力変動(流力振動)が抑制されることとなる。
【0036】
≪第2の実施形態のチムニの構成≫
つぎに、第2の実施形態に係るチムニの格子流路の流路構造を、図6から図8を用いて説明する。
図6は、第2の実施形態に係るチムニを備えた本発明の自然循環式沸騰水型原子炉の概略を示す縦断面図であり、図7は、第2の実施形態に係るチムニの上下の格子構造体を示す斜視図であり、図8は、上下の格子構造体を重ね合わせたときの格子流路の組み合わせ配置と格子流路と炉心の制御棒セルとの配置関係を、一部を拡大して示す横断面図である。
なお、第2の実施形態に係るチムニ11の流路構造は、図6、図7及び図8に示すように、上部格子構造体11−2の各格子流路11a−3の大きさとその配置形態に違いがあるだけで、それ以外の構成においては前記した第1の実施形態に係るチムニ11の構成要素と基本的に同じことから同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明を省略する。
【0037】
すなわち、第2の実施形態に係るチムニ11の上部格子構造体11−2の各格子流路11a−3は、流路横断面が正方形を呈し、その流路横断面(開口)の大きさを、下部格子構造体11−1の横断面の2×2配列の格子流路11a−1の配列角に合わせて形成している。そして、各格子流路11a−3の配置は、図8に示すように、上部格子構造体11−2の1本の格子流路11a−3の各々の横断面中心に、下部格子構造体11−1の3×3配列の格子流路11a−1のうち、中央の1本の格子流路11a−1が同心上に位置し、尚且つ、この1本の格子流路11a−1の横断面各辺及び四隅において隣り合う各々の格子流路11a−1の横断面各辺と四隅とが位置するようになっている。したがって、下部格子構造体11−1と上部格子構造体11−2とを段積み組み合わせたものを上側から見ると、各格子流路11a−3の流路横断面内に、1本の格子流路11a−1と隣り合う計8本の格子流路11a−1の各々の一部が位置して見えることになる。
なお、上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2を仕切る流路隔壁11bの下端は、ナイフエッジ状又は流線形状に形成することが好適なものとなる。これにより、チムニ11内の気液二相流の圧損を低減することができる。
【0038】
これにより、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1と上部格子構造体11−3の各格子流路11a−3との間における上下の格子構造体11−1,11−3の分割端面28,29の間には隙間30を介して高さ方向に流通する流路横断面が異なる分岐・合流領域37が形成される。つまり、図8に示すように、下部格子構造体11−1の1本の格子流路11a−1を中心としてその横断面各辺及び四隅おいて隣り合う計9本の格子流路11a−1を上昇してきた気液二相流は、上部格子構造体11−2の流路隔壁1bによって、8つの流れに分岐されることになる。そして、下部格子構造体11−1の3×3配列のうち、1本の格子流路11a−1と格子流路11a−1のほぼ1/8面積分の気液二相流が、上部格子構造体11−2の1本の格子流路11a−2において合流することになる。
【0039】
従って、第2の実施形態に係るチムニ11を備えた原子炉1によれば、第1の実施形態と同様に、チャーン流の発達を抑えて、チャーン流に起因する圧力変動を抑制することができる。また、下部格子構造体11−1の隣り合う各格子流路11a−1と上部格子構造体11−2の隣り合う各格子流路11a−3は、分岐・合流領域37における隙間30にて連通していることにより、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1を出た流れの間で圧力変動が干渉し合うことで、圧力変動(流力振動)が抑制されることとなる。
そして、定期検査などの点検の際に、チムニ11を圧力容器6の内部に設置したまま、上下の格子構造体11−1,11−2の高さ方向につながる各格子流路11a−1,11a−3を通じて燃料集合体21又は制御棒24を引き上げ、そして装荷するなどの交換作業を行うことができる。
【0040】
以上のように構成された各実施形態のチムニ11を備えた原子炉1によれば、炉心7で加熱された冷却材が飽和状態の気液二相流となって下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1、そして上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2又は11a−3を上昇通過する際に、気液二相流は流力振動を引き起こす要素であるチャーン流などの流動様式まで発達することは抑制される。
そして、チャーン流の流動様式まで発達せずに下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1を上昇する気液二相流は、上下の格子構造体11−1,11−2の分割端面28,29の間に形成された流動断面積が異なる分岐・合流領域37によって分岐され、そして合流されることによって混合されてその流れが変換される。
つまり、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1の内壁面に沿う液膜流は、上方で液滴の状態となって上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2又は各格子流路11a−3の流路隔壁1b側に沿って分布し、該流路隔壁1bの内壁面に付着して液膜液を形成するように流れ込む。また、下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1の流路横断面内の中央部の蒸気泡は、上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2又は各格子流路11a−3を仕切る流路隔壁11bによって細分割されて小さい体積の蒸気泡に分割されて各格子流路11a−2又は各格子流路11a−3に流れ込むこととなる。これにより、気液二相流が上昇する過程で引き起こすチャーン流に起因する圧力変動の発生が抑えられてその流力振動荷重を低減することができる。
【0041】
また、分岐・合流領域37は、上下の格子構造体11−1,11−2の段積み組み合わせによって容易に実現することができる。つまり、上下の格子構造体11−1,11−2又は各格子流路11a−3の横断面において下部格子構造体11−1の各格子流路11a−1の配置に対し、上部格子構造体11−2の各格子流路11a−2又は各格子流路11a−3の配置を変更するなどによって実現することができる。
【0042】
また、上下の格子構造体11−1,11−2の各格子流路11a−1,11a−2又は各格子流路11a−3は、分割端面28,29の間に設けた隙間30によって連通していることにより、各格子流路11a−1,11a−2又は各格子流路11a−3に発生する位相が相違する圧力変動は隙間30を介して干渉し合うこととなる。これにより、隣り合う各格子流路11a−1,11a−2又は各格子流路11a−3において位相が相違する圧力変動の均一化を図ることが可能となり、流力振動荷重をより一層効果的に低減させることが期待できる。
【0043】
さらに、チムニ11の高さ方向に直立する複数の格子流路11a−1,11a−2又は各格子流路11a−3を、チムニ11の高さ方向に分割された上下の格子構造体11−1,11−2によって構成するようにしていることで、例えば、原子炉1の建設現場へと格子構造体11−1,11−2を搬送、そして、格子構造体11−1,11−2を圧力容器6内に吊り下げ収容したり、定期点検などのときに圧力容器6から引き上げるなどの作業性の向上が期待できる。
【0044】
しがたって、各実施形態によれば、格子流路11a−1,11a−2の流路隔壁11bにかかる流力振動荷重を効果的に低減することができ、原子炉運転期間中のチムニ11や格子流路11a−1,11a−2又は格子流路11a−3における位相が相違する圧力変動が、上部格子構造体11−2の1本の格子流路11a−2又は格子流路11a−3において合流の損傷の可能性を小さくすることができる。これにより、長期間の使用にも耐えられ、原子炉の定期点検時の点検・保守の手間も省け、万一の場合のチムニ11や格子流路11a−1,11a−2又は格子流路11a−3を有する上下の格子構造体11−1,11−2の交換などの回数を減らすことができる。また、交換時のプラント停止による経済損失を最小限に抑えることができる。
さらに、複数の直立した格子流路11a−1,11a−2又は格子流路11a−3に仕切ってチムニ11の内側を冷却材の上昇流路とする格子構造をチムニ11の内側の備えても、定期検査などの点検の際に、チムニ11を圧力容器6の内部に設置したまま、上下の格子構造体11−1,11−2の高さ方向につながる各格子流路11a−1,11a−2又は格子流路11a−3を通して燃料集合体21又は制御棒24を引き上げ、そして装荷するなどの交換作業を行うことができる。つまり、燃料交換時の工程の増加を招くなどの不具合が生じることはない。
【0045】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した各実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項3に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、複数の直立した格子流路を有するチムニの上下の格子構造体の分割は、下部格子構造体と上部格子構造体との上下二段の組み合わせに限らず、上下三段(図5参照)、四段など数段に分割することができる。つまり、チムニの高さに応じて任意に設定することが可能である。
【0046】
また、下部格子構造体と上部格子構造体との分割高さは同じである必要はない。例えば、下部格子構造体側を上部格子構造体側よりも高く形成することができる。
また、数段に分割した場合には炉心の上に載置される一段目から高さ方向に至るにしたがって段階的に格子構造体の高さを低くするなどが可能である。つまり、炉心から高さ方向に至るにしたがって格子流路の流路横断面が異なる領域を段階的に増やすなどの設計が可能になる。
これは、気液が混合した飽和状態の気液二相流は上方へと垂直に上昇するにしたがって発達する傾向にあることから、炉心から高さ方向に至るにしたがって格子流路の流路横断面が異なる領域を段階的に増やすことで、気液二相流の分岐や合流などによる混合又は干渉が繰り返されることになり、チャーン流の発生を抑制(圧力変動を抑制)して流力振動荷重をより一層効果的に低減させることが期待できる。但し、格子流路の高さ方向に流路横断面が異なる領域(分離・合流領域など)を過剰に設けることは、冷却材を自然循環させる際の圧力損失の増加を招くおそれがあるので必要最小限に抑えることが望ましい。
【0047】
また、上下の格子構造体の横断面における中心から半径方向の外側に至るにしたがって格子流路の流路横断面の大きさを段階的に大きくするなどの格子流路の配列構造とすることができる。つまり、格子構造体の中心部位の内側領域における格子流路群の流路横断面よりもその外側領域における格子流路群の流路横断面を大きめに、そして、この外側領域の格子流路群の流路横断面よりもその最外周領域における格子流路群の流路横断面をさらに大きめに形成するなど、中心から半径方向の外側に至るにしたがって格子流路の配列群の流路横断面を変えることができる。
【0048】
また、格子流路の流路横断面は、正方形に限らず、例えば、長方形、三角形、そして六角形など多角形に形成することが可能である。但し、高さ方向につながる格子流路を通じて燃料集合体又は制御棒を引き上げ、そして装荷するなどの交換作業を行うことができるようにするなどを配慮する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、自然循環式沸騰水型原子炉に適用され、炉心の上に設置されるチムニの内側の上昇流路内での気液二相流のチャーン流に起因する流力振動(圧力変動)を低減するのに有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態に係るチムニを備えた本発明の自然循環式沸騰水型原子炉の概略を示す縦断面図である。
【図2】原子炉圧力容器を省略して示す図1のII−II線横断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るチムニの格子流路を有する上下の格子構造体を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係るチムニの上下の格子構造体を段積み組み合わせた状態の一部を拡大して示す横断面図である。
【図5】第1の実施形態に係るチムニの格子流路における気液二相流の流れを説明するために供した概念図である。
【図6】第2の実施形態に係るチムニを備えた本発明の自然循環式沸騰水型原子炉の概略を示す縦断面図である。
【図7】第2実施形態に係るチムニの格子流路を有する上下の格子構造体を示す斜視図である。
【図8】第2の実施形態に係るチムニの上下の格子構造体を段積み組み合わせた状態の一部を拡大して示す横断面図である。
【図9】チムニの格子流路内における気液二相流のチャーン流の流動様式を調べるために、格子流路を模擬した実験装置に供した格子流路の概念図である。
【符号の説明】
【0051】
1 自然循環式沸騰水型原子炉
2 タービン
6 原子炉圧力容器
7 炉心
8 炉心シュラウド
9 ダウンカマ(下降流路)
10 炉心下部プレナム
11 チムニ
11−1 下部格子構造体
11−2 上部格子構造体
11a−1,11a−2又は11a−3 格子流路(上昇流路)
11b 流路隔壁
11c 上部プレナム
11d チムニ胴
21 燃料集合体
28,29 分割端面
30 隙間
31 制御棒セル
37 分岐・合流領域(流路横断面が異なる領域)




 

 


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