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発明の名称 放射性同位元素製造装置のターゲットおよび放射性同位元素製造装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−170890(P2007−170890A)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
出願番号 特願2005−365952(P2005−365952)
出願日 平成17年12月20日(2005.12.20)
代理人 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
発明者 岡▲崎▼ 隆司 / 伊賀 尚
要約 課題
放射性核種を高収量で得ることができる放射性同位元素製造装置およびターゲットを提供する。

解決手段
この放射性同位元素製造装置のターゲット20Aは、グリッド21と、透過膜22と、放射性同位元素の元になる物質を収容する容器26とを備えている。容器の原料室26a内に、通過口と対応した位置に原料粉末23Aを充填した保持孔33aを配置した保持板33を収容する。保持板はポーラスSUSで構成されている。このような構成により、イオンビーム照射中に、キャリア媒体の原料室への流入および加熱による原料粉末の変形により、原料室内で原料粉末が移動することを防止でき、原料粉末の温度を生成された放射性核種が熱拡散しやすい温度に維持でき、生成された放射性核種の回収率を向上できる。
特許請求の範囲
【請求項1】
加速したイオンビームに照射されて放射性同位元素を生成する原料が設定される放射性同位元素製造装置のターゲットであって、
イオンビームが入射する側からグリッドと、透過膜と、容器とを、この順に配置して構成され、
前記グリッドには、イオンビームが通過する複数の通過口が設けられ、
前記透過膜は、前記グリッドに支持されるとともに、前記イオンビームを透過させ、
前記容器は、
前記透過膜側に原料室を有し、
該原料室には、前記グリッドの通過口に対応した位置に前記原料を保持する保持孔を設けた保持板を収容していることを特徴とする放射性同位元素製造装置のターゲット。
【請求項2】
前記保持板は、多孔質材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の放射性同位元素製造装置のターゲット。
【請求項3】
加速したイオンビームに照射されて放射性同位元素を生成する原料が設定される放射性同位元素製造装置のターゲットであって、
イオンビームが入射する側からグリッドと、透過膜と、容器とを、この順に配置して構成され、
前記グリッドには、イオンビームが通過する複数の通過口が設けられ、
前記透過膜は、前記グリッドに支持されるとともに、前記イオンビームを透過させ、
前記容器は、
前記透過膜側に原料室を有し、
該原料室には、前記原料を板状に焼結して成形した原料焼結板を収容していることを特徴とする放射性同位元素製造装置のターゲット。
【請求項4】
前記原料焼結板は、前記原料室内に、前記透過膜および前記原料室の底面に接しないように収容されていることを特徴とする請求項3に記載の放射性同位元素製造装置のターゲット。
【請求項5】
イオンビームを出射するイオン源と、
前記イオン源から出射された前記イオンビームが加速される真空領域を有する加速器と、
加速した前記イオンビームが照射されて放射性同位元素を生成する原料が設定されるターゲットと、を備える放射性同位元素製造装置において、
前記ターゲットは、イオンビームが入射する側からグリッドと、透過膜と、容器とを、この順に配置して構成され、
前記グリッドには、イオンビームが通過する複数の通過口が設けられ、
前記透過膜は、前記グリッドに支持されるとともに、前記イオンビームを透過させ、
前記容器は、
前記透過膜側に原料室を有し、
該原料室には、前記グリッドの通過口に対応した位置に前記原料を保持する保持孔を設けた保持板を収容していることを特徴とする放射性同位元素製造装置。
【請求項6】
前記保持板は、多孔質材で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の放射性同位元素製造装置。
【請求項7】
イオンビームを出射するイオン源と、
前記イオン源から出射された前記イオンビームが加速される真空領域を有する加速器と、
加速した前記イオンビームが照射されると放射性同位元素を生成する原料が設定されるターゲットと、を備える放射性同位元素製造装置において、
前記ターゲットは、イオンビームが入射する側からグリッドと、透過膜と、容器とを、この順に配置して構成され、
前記グリッドには、イオンビームが通過する複数の通過口が設けられ、
前記透過膜は、前記グリッドに支持されるとともに、前記イオンビームを透過させ、
前記容器は、
前記透過膜側に原料室を有し、
該原料室には、前記原料を板状に焼結して成形した原料焼結板を収容していることを特徴とする放射性同位元素製造装置。
【請求項8】
前記原料焼結板は、前記原料室内に、前記透過膜および前記原料室の底面に接しないように収容されていることを特徴とする請求項7に記載の放射性同位元素製造装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素を製造する放射性同位元素製造装置に係り、特に、放射性同位元素を生成させるためにイオンビームが照射されるターゲットに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
現在、がん診断の手段として、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単光子放出型CT[Computed Tomography])とPET(Positron Emission Computed Tomography:陽電子放出型CT)が用いられている。
SPECTはモリブデン99(99Mo)、ヨウ素131(131I)、ヨウ素123(123I)、タリウム201(201Tl)などの放射性同位元素を用いて放射性薬剤を作り、これを検査に用いている。これらの放射性同位元素の半減期は2〜3日と比較的長い。
【0003】
PET検査は、より測定性能を高めようとする観点から用いられている。PET用の放射性薬剤に用いられる放射性同位元素は、加速器で作られるが、SPECT用に比べて半減期が短い。例えば、炭素11(11C)は、半減期が約20分、窒素13(13N)は約10分である。したがって、検査に用いる分量を確保するには、輸送にかかる時間を考慮して当該放射性同位元素を相当多量に製造する必要がある。また、半減期の短さを考慮して、速やかに利用に供さねばならないという制約がある。これらPET採用の際の要請事項は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0004】
ところで、このような放射性同位元素を製造する方法は、放射性同位元素を生成する元になる物質、つまり原料をターゲットに設定し、このターゲットに、加速器を用いて数MeVから数十MeVの高エネルギに加速したイオンビームを照射するものである。イオンビーム強度は、数十μAから数百μAであり、核反応を起こさせるターゲットには、数百Wの熱が入力されることになる。
なお、ターゲットは、放射性同位元素の元になる物質が液体の場合は液体ターゲット、気体の場合はガスターゲット、固体の場合は固体ターゲットと呼ばれる。
【0005】
ところで、固体ターゲットの場合、例えば、11Cの生成には、放射性同位元素の元になる物質としてホウ素11(11B)を使用した11B(p,n)11C核反応が用いられる。この場合、従来は、図9の(a)に示すように、傾斜面を有する容器41Aを用い、放射性同位元素の元になる物質であるホウ素11を含む酸化ホウ素の原料粉末43Aを前記傾斜面上に載せたターゲット40Aを用いていた。
【0006】
また、13Nの生成には、放射性同位元素の元になる物質として炭素12(12C)を使用した12C(d,n)13N核反応が用いられる。この場合、従来は、図9の(b)に示すように、円筒形の容器41Bを用い、イオンビームRの強度分布に合わせて、中央が厚くなるように放射性同位元素の元になる物質であるチャコールの原料粉末43Bを突き固めて前記円筒形の容器41B内に充填したターゲット40Bを用いていた。
【非特許文献1】「PET通信1998WINTER No.25」,第15頁〜第17頁,先端医療技術研究所
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ターゲット40A、40Bでは、原料粉末43A、43Bの一定量を容器41A、41Bにセッティングしにくいという問題があった。つまり、イオンビームRに照射される原料粉末43A、43Bのビーム方向の密度や原料粉末層の厚さを一定に設定しづらい問題があった。特に図9の(b)に示すような場合、原料粉末43BがイオンビームRに照射されている間に容器41Bの下方に沈積してしまい、イオンビームRに照射される原料粉末が実効的に少なくなる。
【0008】
その結果、イオンビームRの入熱による原料粉末43Bの温度上昇が、ターゲットの設定のたびに異なったり、照射中に変化したりし、生成された放射性同位元素が原料粉末の粉末結晶表面に熱拡散により移動する効率に差を生じ、例えば、12C(d,n)13Nの核反応で13Nの気体を回収する場合に、13Nの収量に大きなばらつきが生じるという問題があった。
【0009】
本発明は、係る問題を解決することを課題とし、放射性同位元素の収量を安定にするターゲットと、該ターゲットを用いて放射性同位元素を高収量で得ることができる放射性同位元素製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために第1の発明は、加速したイオンビームに照射されて放射性同位元素を生成する原料を設定する放射性同位元素製造装置のターゲットであって、イオンビームが入射する側からグリッドと、透過膜と、容器とを、この順に配置して構成される。さらに、前記グリッドには、イオンビームが通過する複数の通過口が設けられ、前記透過膜は、グリッドに支持されるとともに、イオンビームを透過させ、前記容器は、透過膜側に原料室を有し、原料室には、グリッドの通過口に対応した位置に前記原料を保持する保持孔を設けた保持板を収容していることを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、加速したイオンビームに照射されて放射性同位元素を生成する原料を設定する放射性同位元素製造装置のターゲットであって、イオンビームが入射する側からグリッドと、透過膜と、容器とを、この順に配置して構成される。さらに、前記グリッドには、イオンビームが通過する複数の通過口が設けられ、前記透過膜は、グリッドに支持されるとともに、イオンビームを透過させ、前記容器は、透過膜側に原料室を有し、原料室には、原料を板状に焼結して成形した原料焼結板を収容していることを特徴とする。
【0012】
係る構成により、イオンビームに照射される原料のイオンビーム方向の密度や厚さを一定に設定でき、またイオンビーム照射中に原料が移動してしまうということが防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放射性同位元素の収量を安定にするターゲットと、該ターゲットを用いて放射性同位元素を高収量で得ることができる放射性同位元素製造装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
《第1の実施形態》
次に、本発明の第1の実施形態に係る放射性同位元素製造装置について、図1を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の放射性同位元素製造装置10は、イオン源11、高周波四重極型線形加速器(Radio Frequency Quadrupole、以下、RFQと称す)12aとドリフトチューブ型線形加速器(Drift Tube Linac、以下、DTLと称す)12bとの2段で構成された加速器12、ビーム管15およびターゲット20を有する。
【0015】
イオン源11は、イオンとなる源物質(ここでは水素、または重水素など)をイオン化してイオンビームRとして引き出す役割をし、その周囲には、質量により所望のイオンのみを選択的に取り出す図示しないマグネットやイオンビームRを整形する図示しない静電レンズ、さらには図示しないイオンビーム発生部などが設けられている。
なお、イオン源11には、熱陰極方式のデュオプラズマトロン型イオン源またはPIG(ペニングイオンゲージ)型イオン源を使用することができる。また、長寿命で大電流を発生することのできるマイクロ波放電型イオン源を使用することもできる。
【0016】
RFQ12aは、このイオン源11の後段に設けられ、イオン源11から出射されたイオンビームRを所定のエネルギまで加速させるものである。RFQ12aは、真空チャンバの内部に波形状の四重極電極を備えている。この四重極電極によりイオンビームRの進行方向と直角な方向に四重極電界が形成され、イオンビームRが集束されながら真空領域で加速される。
なお、ここで使用されるRFQ12aに代えて、六極以上の偶数の電極を持つ多重電極型の高周波加速器を用いることも、これら以外の高周波加速器を用いることもできる。
【0017】
DTL12bは、RFQ12aで加速されたイオンビームRを入射して、さらに加速するものである。DTL12bは、真空チャンバ内部の真空領域の中心に、複数個のドリフトチューブ14が軸方向に並んで配置されている。このドリフトチューブ14の内部には、図示しない四極電磁石が組み込まれていて、イオンビームRは、このドリフトチューブ14内を通過する際に、収束を受ける。そして、このドリフトチューブ14の向かい合う端面間で、イオンビームRの加速が行われる。
このようにRFQ12aおよびDTL12bの2段で構成された加速器12は、最終的に10MeV程度の高エネルギのイオンビームRを生成する。
【0018】
加速されたイオンビームRは、内部を真空に保たれたビーム管15でターゲット20に導かれる。ターゲット20は、ビーム管15の先端に設定され、床に固定されているターゲット遮へい体13内に存在する。
【0019】
(ターゲットの構成)
次に本実施形態におけるターゲットの詳細な構成を図2、図3を参照(適宜、図1参照)しながら説明する。
図2のターゲットの側断面図に示すように、本実施形態のターゲット20A(図1ではターゲット20で代表して表示)は、主に、イオンビームRが入射する側からグリッド21と、透過膜22と、容器26とを、この順に配置して構成される。
【0020】
なお、ターゲット20Aは、取り付け冶具である円筒状の円筒部材28によりビーム管15の先端に、図示しないゴムシール、メタルタッチシールなどを介して取り付けられる。ビーム管15、円筒部材28、透過膜22でターゲット20A側の真空領域の境界を構成している。
【0021】
グリッド21は、真空領域側に押される透過膜22を、真空領域側から支持しており、図3の(a)のターゲット正面図(図2のA−A矢視図)に示すように、イオンビームRを通過させる複数の丸穴の通過口27が、例えば、三角格子配列で設けられている。この通過口27は、強度的に充分な範囲でできるだけ稠密に配置し、通過口27の占める面積を大きくし、イオンビームRのグリッド21の通過量を増加させることが望ましい。
透過膜22は、イオンビームRを透過させることができる薄膜材で構成されている。
【0022】
容器26は、放射性同位元素の元になる物質(以下、原料と称する)を収容するものである。容器26の透過膜22に面した側には凹部が設けられ、透過膜22と、前記凹部の壁とで原料室26aを構成する。
原料室26aは、容器26の縁部に透過膜22に面して配置した環状のシール31により、気密または水密な構造となっている。シール31としては、ゴムOリング、中空金属Oリング、メタルリングなどを用いる。
【0023】
図2に示すように、原料室26a内には、多数の保持孔33a内に原料粉末23Aを保持した保持板33が収容される。保持孔33aは、グリッド21の通過口27の位置に対応させた配列、例えば、三角格子配列に配列し、イオンビームRの方向に平行に保持板33を貫通するように穿孔されている(図3の(b)の容器26の正面断面図[図2のB−B矢視図]参照)。
なお、保持板33は、多孔質材、例えばポーラス金属、具体的にはポーラスSUSなどからなる。
【0024】
保持板33の熱伝導度は、原料粉末23Aが後記するところの容器26の冷却による冷却効果を強く受けず、生成された放射性同位元素が原料粉末23Aの粉末結晶内を熱拡散するに充分な温度範囲になるような所定の値に設定する。この熱伝導度の設定は、ポーラス金属の空隙率を設定することによって行う。
なお、保持孔33aの径は、通過口27の径より大きくてもよい。
【0025】
原料室26aに対して、原料粉末23Aから生成された放射性同位元素を原料室26aから回収するためのキャリア媒体の入口通路35と出口通路37が設けられている。
放射性同位元素が生成したところで、入口通路35に接続された配管からキャリア媒体が送られ、原料室26a、出口通路37を経て、放射性同位元素を含むキャリア媒体が回収される。キャリア媒体は、原料、または生成された放射性同位元素の性状に応じて、アルゴン(Ar)などの不活性ガス、または超純水を使い分けて用いる。
容器26には、容器26を冷却するための冷却路が設けられ、その冷却水入口25と冷却水出口29が用意されている。
【0026】
(第1の実施形態の作用)
ここで、放射性同位元素11Cを得るために、原料粉末23Aとして11B粉末を用い、加速器12で7MeVに加速された陽子ビームが照射される場合を例に、図4、図5を参照(適宜、図1および図2を参照)しながら本実施形態の作用を説明する。
なお、図4および図5においては、7MeVに加速された陽子ビームが、図2に示す透過膜22でエネルギが減衰することを考慮して、例えば、0.5MeV減衰するとして、6.5MeVで原料粉末23Aに入射する場合を示す。
図4に11B(p,n)11C核反応の陽子(p)のエネルギ依存の反応断面積を示す(出典:IAEAのWebサイト、http://www-nds.iaea.org/exfor/exfor00.htmに掲載の、Nuclear Data Centre のNuclear Data Servicesの中のEXFOR experimental nuclear reaction data [14/Sep/05])。2本の曲線は、データを発表した研究機関が異なることを示している。
この図より、陽子の運動エネルギが約3.5MeV以下に減衰すると、この核反応をしなくなることがわかる。
【0027】
図5に11Bの結晶体の100%理論密度(比重2.53)における、6.5MeVで入射した陽子の飛程(距離)とその距離での陽子の残存エネルギ(陽子のエネルギ)を示す。陽子の残存エネルギが3.5MeV以下になるまでに6.5MeVで入射した陽子は0.0177cm移動することがわかる。また、6.5MeVのエネルギがすべて吸収されるまでには、約0.026cm移動することがわかる。
【0028】
11B粉末は、約60%理論密度程度である。100%理論密度時の陽子の飛程0.0177cmおよび0.026cmを密度補正すると、それぞれ0.0295cmと0.0433cmに相当する。
ここで、保持板33の板厚を、0.0433cm以上とし、11B粉末を保持孔33aに板厚と同じだけ充填する。また、保持板33は、あらかじめポーラスSUSの空隙率を適切に調整して、前記の所定の値にその熱伝導度を設定しておく。つまり、生成された放射性同位元素が原料粉末23Aの粉末結晶内を熱拡散するに充分な温度範囲になるように設定する。また、キャリア媒体としては、Arガスを用いる。なお、Arガスには所定の低濃度の酸素を混ぜておく。
【0029】
放射性同位元素製造装置10を作動させるにあたって、事前に、ターゲット20Aをターゲット遮へい体13内に設定しておく(図1参照)。
図示しない作動スイッチを操作すると、イオン源11に所定の電力が供給される。RFQ12a、DTL12bに対して、所定の高周波電力がそれぞれ供給され、各RFQ12a、DTL12bに電界が形成される。これにより、イオン源11のイオンビーム発生部(図示せず)から出射されたイオンビームRがRFQ12aによって所定のエネルギまで加速される。加速されたイオンビームRは、RFQ12aから出射されて後段のDTL12bに入射され、DTL12bでさらに7MeVに加速される。
【0030】
ターゲット20Aが7MeVのイオンビームR(陽子ビーム)の照射を受けると、グリッド21の通過口27を通過したイオンビームRは、透過膜22を通過する。このときエネルギ減衰をして6.5MeVのエネルギとなり、電流はそのままで透過膜22を通過した全量が保持孔33a内の原料粉末23A、つまり11B粉末に衝突する。11B粉末の層の厚さは、0.0433cm以上なので、入射した6.5MeVの陽子はすべてのエネルギを11B粉末に吸収されることになる。
もちろん、グリッド21の格子部分に衝突したイオンビームRは、グリッド21を加熱するだけで、通過はできないので11B粉末と核反応をすることはない。
【0031】
このようにしてターゲット20A内の11B粉末にイオンビームRが入射されると、11B(p,n)11C核反応により11Cが生成される。
このとき、11B粉末は、イオンビームRの照射により加熱されるので、生成された11Cは11B粉末の粉末結晶の表面に熱拡散により移動する。粉末結晶の表面に移動した11Cは、キャリア媒体のArガスに含まれる酸素により酸化されて炭酸ガス(CO2)などとなり、Arガスとともに回収される。
【0032】
以上説明した本実施形態では、陽子による11B(p,n)11C核反応を例に説明したが、ホウ素10(10B)に重水素のイオンビームRを照射して10B(d,n)11C核反応により11Cを生成する際には、原料粉末23Aとして10B粉末を適用できる。
また、炭素13(13C)に陽子のイオンビームRを照射して13C(p,n)13N核反応により13Nを生成する際、または12Cに重水素のイオンビームRを照射して12C(d,n)13N核反応により13Nを生成する際には、原料粉末23Aとして13Cまたは12C粉末を適用できる。
【0033】
なお、生成された放射性同位元素が13Nの場合、キャリア媒体としては超純水を使用し、13Nを含んだアンモニアとして超純水とともに回収する。
また、保持板33の厚さは、原料粉末23A層内でのイオンビームRの飛程に応じて適宜設定する。
なお、本実施形態における原料粉末23Aは、本発明の原料に対応する。
【0034】
以上述べたように本実施形態のターゲット20Aにおいては、グリッド21の通過口27を通過したイオンビームRは、全量が保持孔33a内の原料粉末23Aに照射されるので無駄がない。また、個々の通過口27に対応して保持板33の保持孔33aが設けられ、原料粉末23Aが原料室26a内で細かく区切られているので、キャリア媒体の原料室26a内への注入や、イオンビームRの加熱による原料粉末23Aの変形により、原料粉末23Aが原料室26a内で移動することが防止できる。その結果、イオンビームR照射中の原料粉末23Aの移動による生成効率の低下を防止できる。つまり、安定に放射性同位元素を生成できる。
【0035】
また、保持板33の熱伝導度を所定の値にコントロールして、イオンビームR照射中の原料粉末23Aの温度を、生成された放射性同位元素が熱拡散しやすい温度範囲に設定できるので、放射性同位元素の回収率が向上する。
従来のターゲットでは、原料粉末の層の厚さとターゲットの冷却性能とでイオンビームR照射中の原料粉末23Aの温度が決まり、また照射中に原料粉末23Aが原料室26a内で移動してしまい、イオンビームRに照射されている原料粉末23Aの部分の温度が必ずしも生成された放射性同位元素が熱拡散しやすい温度範囲に設定できていなかった。
【0036】
本実施形態において、通過口27の正面形状、保持孔33aの正面形状を、それぞれ丸穴としたが、それに限定されるものではない。例えば、丸穴の代わりにそれぞれ六角形の穴として、三角格子配列で配置してもよい。この場合も、保持孔33aの正面面積は、通過口27の正面面積と同じか、より大きいものとする。
本実施形態において、放射性同位元素11Cを得るために、原料粉末23Aとして11Bまたは10B粉末を用いるとしたが、それに限定されない。原料粉末23Aとして11Bまたは10Bの酸化ホウ素粉末を用いてもよい。その場合は、酸化ホウ素粉末層のイオンビームR方向の厚さを、6.5MeVの陽子が酸化ホウ素粉末層中で全エネルギを吸収される以上の厚さとする。
【0037】
なお、本実施形態において、保持孔33aには原料粉末23Aを充填するものとして説明したが原料粉末23Aに限定されない。原料粉末の焼結ペレットを個々の保持孔33aに充填してもよい。
【0038】
《第2の実施形態》
次に図6を参照して(適宜、図1、図4および図5を参照)、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図6に示すターゲット20Bでは、第1の実施形態で原料室26aに原料粉末23Aを保持した保持板33を収容する代わりに、放射性同位元素の元になる物質を焼結し板状に成形した原料焼結板23Bを収容するものである。
【0039】
本実施形態においては、放射性同位元素11Cを生成させるために、原料焼結板23Bとして11B粉末を焼結し板状に成形した焼結板を用い、7MeVに加速器12で加速された陽子ビームが照射される場合を例に説明する。
原料焼結板23Bの焼結密度と板厚は、第1の実施形態と同様に、11Bの100%理論密度換算で0.026cm以上になるように設定する。11B粉末の焼結板の密度が例えば、約80%理論密度の場合、0.0325cm以上の厚さの原料焼結板23Bとする。
【0040】
このように原料粉末23Aの代わりに原料焼結板23Bを用いることにより、キャリア媒体の原料室26a内への流入や、イオンビームRによる加熱からの変形による、原料室26a内での原料の移動が防止できる。さらに、11B(p,n)11C核反応に寄与しない3.5MeV以下の陽子のエネルギもすべて原料焼結板23Bに加えられるので、原料焼結板23Bの温度は上がり、生成された放射性同位元素11Cが熱拡散しやすい温度範囲に設定できるので、生成された11Cが粒界に移動しやすくなり、放射性同位元素11Cの回収率が向上する。
【0041】
なお、以上説明した第2の実施形態では、陽子による11B(p,n)11C反応を例に説明したが、10Bに重水素のイオンビームRを照射して10B(d,n)11C核反応により11Cを生成する際には、原料焼結板23Bとして10B粉末の焼結板を適用できる。
また、13Cに陽子のイオンビームRを照射し13C(p,n)13N核反応により13Nを生成する際、または12Cに重水素のイオンビームRを照射して12C(d,n)13N核反応により13Nを生成する際には、原料焼結板23Bとして13C粉末または12C粉末の焼結板を適用できる。
【0042】
なお、生成された放射性同位元素が13Nの場合、キャリア媒体としては超純水を使用して、13Nを含んだアンモニアとして回収する。
また、原料焼結板23Bの焼結密度および厚さは、原料焼結板内でのイオンビームRの飛程、生成された放射性同位元素の熱拡散の度合いに応じて適宜設定する。
【0043】
(第2の実施形態の変形例)
図7は、第2の実施形態のターゲットの第1の変形例を示すものである。この変形例では、原料焼結板23Cを原料室26aの側壁(図7中、原料室26aの上下の壁)に設けた溝26bにて位置保持し、原料焼結板23Cが透過膜22および原料室26aの底面(図7中、原料室26aの右側の壁)に接していないので、原料焼結板23Cのそれらへの熱伝導による冷却効果が少ない。その結果原料焼結板23Cの温度を上げやすい。
【0044】
図8は、第2の実施形態のターゲットの第2の変形例を示すものである。この変形例では、原料焼結板23Dは、縁部の厚さを残りの中央部分より厚くして、原料焼結板23Dの中央部分が透過膜22および原料室26aの底面(図8中、原料室26aの右側の壁)に接しないようにしたものである。
したがって、原料焼結板23Dのそれらへの熱伝導による冷却効果が少ない。その結果原料焼結板23Dの温度を上げやすい。
【0045】
このように、第2の実施形態のターゲットの第1、第2の変形例では、イオンビームRによる加熱により原料焼結板23C、23Dの温度を原料焼結板23Bの場合より上げやすい構成なので、生成された放射性同位元素が原料焼結板内で熱拡散しやすい温度範囲に設定しやすい。
【0046】
(その他の適用例)
以上の第1の実施形態と、第2の実施形態およびその変形例において例示した原料の核種(10B、11B、12C、13C)に限定されるものではなく、他の固体の原料の核種に対しても、本発明は適用できる。
また、第1の実施形態と、第2の実施形態およびその変形例のターゲット20(20A〜20D)では、線形加速器に適用した場合を説明したがサイクロトロンなどの他の加速器のターゲットとしても適用できる。
【0047】
サイクロトロンでは、ターゲット20をビーム管15から着脱しないで固定したままとして、イオンビームRがターゲットに照射されることが多い。この場合、ターゲット20は、前記の円筒部材28を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置の側面断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態で用いられるターゲットの側面断面図ある。
【図3】(a)は、図2のA−A矢視のイオンビームが照射するターゲットの正面図である。(b)は、図2のB−B矢視のターゲットの容器の正面断面図である。
【図4】陽子の11B(p,n)11C核反応の反応断面積を示す図である。
【図5】理論密度100%の11B中での陽子の飛程と残存エネルギを示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態で用いられるターゲットの側面断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の変形例のターゲットの側面断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の変形例のターゲットの側面断面図である。
【図9】従来のターゲットの側面断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 放射性同位元素製造装置
11 イオン源
12 加速器
12a 高周波四重極型線形加速器
12b ドリフトチューブ型線形加速器
13 ターゲット遮へい体
14 ドリフトチューブ
15 ビーム管
20、20A、20B、20C、20D ターゲット
21 グリッド
22 透過膜
23A 原料粉末
23B、23C、23D 原料焼結板
25 冷却水入口
26 容器
26a 原料室
27 通過口
28 円筒部材
29 冷却水出口
31 シール
33 保持板
33a 保持孔
35 入口通路
37 出口通路
R イオンビーム




 

 


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