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発明の名称 放射性廃棄物の処理方法及び廃棄物固化体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−127545(P2007−127545A)
公開日 平成19年5月24日(2007.5.24)
出願番号 特願2005−321069(P2005−321069)
出願日 平成17年11月4日(2005.11.4)
代理人 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
発明者 日野 祐子 / 野下 健司 / 笹平 朗
要約 課題
放射線分解により発生する水素ガスに起因する容器内の圧力上昇を、セメント固化体や容器に大きな変更改造を加えることなく、効果的に抑制することが可能な放射性廃棄物の処理方法を提供する。

解決手段
放射性廃棄物10を容器1A内に収容し、これをセメント、モルタル等の水硬性無機固化材11で固化して固化体12となし、その後、容器開口部1aを蓋部材1B等で封止して保管するに際し、容器1A内の空隙を、容器内体積の10%以下、より好ましくは6%以下とすべく、容器1A内に、放射線分解で生成する水素を溶解し再結合反応を促進する特定の充填剤13、例えば水、モルタル等を充填する。
特許請求の範囲
【請求項1】
放射性廃棄物を容器内に収容し、これをセメント、モルタル等の水硬性無機固化材で固化して固化体となし、その後、容器開口部を蓋部材等で封止して保管するための放射性廃棄物の処理方法であって、
前記容器内の空隙を、容器内体積の所定%以下とすべく、前記容器内に特定の充填剤を充填することを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記空隙を、容器内体積の10%以下、好ましくは6%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記充填剤として、水、水よりも水素の再結合反応を促進する物質、水よりも水素の溶解度が大きい物質、水よりも酸素の溶解度が大きい物質のうちの少なくとも1つを使用することを特徴とする請求項1または2に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記充填剤として、水素の再結合反応が行われるものであって、水よりも前記固化体の浸食が少ない物質を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記充填剤として、エタノール、アセトン、オクタン、モルタル、セメントのうちの少なくとも一つを使用することを特徴とする請求項1または2に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
放射性廃棄物がセメント、モルタル等の水硬性無機固化材で固化されて固化体の形で収蔵され、かつ、容器開口部が蓋部材等で封止されている廃棄物固化体であって、
容器内の空隙が、容器内体積の所定%以下となるように、前記容器内に特定の充填剤が充填されていることを特徴とする廃棄物固化体。
【請求項7】
前記空隙が、容器内体積の10%以下、好ましくは6%以下とされていることを特徴とする請求項6に記載の廃棄物固化体。
【請求項8】
前記充填剤として、水、水よりも水素の再結合反応を促進する物質、水よりも水素の溶解度が大きい物質、水よりも酸素の溶解度が大きい物質のうちの少なくとも1つが使用されていることを特徴とする請求項6または7に記載の廃棄物固化体。
【請求項9】
前記充填剤として、水素の再結合反応が行われるものであって、水より前記固化体の浸食が少ない物質が使用されていることを特徴とする請求項6または7に記載の廃棄物固化体。
【請求項10】
前記充填剤として、エタノール、アセトン、オクタン、モルタル、セメントのうちの少なくとも一つが使用されていることを特徴とする請求項6または7に記載の廃棄物固化体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等から排出される放射性廃棄物を容器内に収容し、これをセメント、モルタル等の水硬性無機固化材で固化して固化体となし、その後、容器開口部を蓋部材等で封止して保管するための放射性廃棄物の処理方法、及び、放射性廃棄物がセメント、モルタル等の水硬性無機固化材で固化されて固化体の形で収蔵され、かつ、容器開口部が蓋部材等で封止されている廃棄物固化体に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所から発生する金属を含む放射性廃棄物(炉内構造物やチャンネルボックス等)、再処理工場から発生する金属を含む放射性廃棄物(燃料被覆管等)等の放射性廃棄物は、次のように処理される。すなわち、通常、前記放射性廃棄物をドラム缶等の容器内に収容し、セメント、モルタル等の水硬性無機固化材で固化して固化体(セメント固化体と総称されることが多い)とした後、容器開口部を蓋部材等で封止し、この封止された、放射性廃棄物がセメント固化体の形で収蔵された廃棄物固化体を、発電所や再処理工場から搬出して、放射性廃棄物の埋設処分場にて埋設する。
【0003】
ところが、放射性廃棄物の放射能による汚染度のレベルが高い場合、セメント固化体中に存在する水分の一部が放射線分解し、水素ガスが発生する可能性がある。こうして発生する水素ガスは、廃棄体容器内の圧力を上昇させる原因となる。そのため、放射性廃棄物がセメント固化体の形で収蔵された廃棄物固化体には、水素ガスによる内圧上昇に耐えられる強度が必要となるが、かかる耐圧容器の製作にはコストが嵩む。
【0004】
そこで、従来より、放射線分解により発生する水素ガスに起因する容器内の圧力上昇を抑えるための対策がいくつか提案されている。すなわち、放射線分解による水素ガスの発生量を抑制する方法の一つとして、例えば、下記特許文献1に所載のように、固化する際に使用するセメント等に含まれる有機物を低減する方法が提案されており、また他の一つとして、下記特許文献2に所載のように、固化する際に使用するセメント等の固化材に電子捕捉剤を添加し、放射線と固相の相互作用により発生する電子が水を還元して水素ガスを発生する反応を抑制する方法が提案されている。この他、放射線分解により発生した水素を除去する方法として、下記特許文献3に所載のように、廃棄体容器内に発生した水素ガスと酸素ガスとを反応させて水に転換させる触媒を設置する方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−312996号公報
【特許文献2】特開平7−128497号公報
【特許文献3】特開2002−286893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献に所載のいずれの方法においても、セメント等の改良という新たな技術開発を必要とするか、あるいは、新たな添加剤や触媒を使用するため、セメント固化体や容器の変更改造を伴い、その製作コストを大幅に増加させるものであった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、放射線分解により発生する水素ガスに起因する容器内の圧力上昇を、セメント固化体や容器に大きな変更改造を加えることなく、効果的に抑制することが可能な放射性廃棄物の処理方法、及び、放射性廃棄物が固化体の形で収蔵された廃棄物固化体を提供することにある。また、容器内部に発生した水素による容器の内部圧力上昇による破損を防止でき、処理後の状態が安定していると共に、低コストで処理できる放射性廃棄物の処理方法、及び廃棄物固化体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、放射線分解により発生する水素ガスは、主に固化体中のセメントと反応していない水、すなわち自由水が放射線分解を受けることで生成する。水素の生成は自由水中で起こり、生成した水素は溶解度に応じて気相中に放出され、水素ガスとして廃棄体容器内の空隙に蓄積する。一方、自由水中に溶解している水素は、同様に溶解している酸素やOHラジカル等と反応して、また水に戻る場合もある。この反応は再結合反応と呼ばれている。本発明では、この水素の再結合反応に着目する。水素の再結合反応を促進することで、廃棄体容器内の水素ガスを水に戻し、水素ガスによる廃棄体容器内の圧力上昇を抑制する。
【0009】
気相中に放出された水素は、再度水中に溶解しない限り、再結合反応を起こすことができない。そこで、再結合反応を促進するためには、放射線分解で生成した水素が水中に留まる時間を長くするか、あるいは、水素が気相中に放出される前に通過する物質が、再結合反応を促進するものである必要がある。又は、気相中に放出された水素の水中への再溶解を促進するものである必要がある。
【0010】
水素が水中に留まる時間を長くする方法としては、容器内に充填する充填剤(水あるいは水より水素の溶解度が高い物質)の量を多くすることが挙げられる。また、気相中に放出された水素の再溶解を促進する方法としては、容器内の空隙を極力小さくすることが挙げられる。これは、気体Aが液体に溶ける時の溶解度は気相中のAの分圧に比例するというヘンリーの法則によるもので、容器内の空隙の体積が小さいほど気相中の水素の分圧が高くなり、水素の溶解が促進される。
【0011】
本発明は、以上の如くの知見並びにそれに基づく考察に立脚してなされたもので、次のような構成をとる。
【0012】
すなわち、本発明に係る放射性廃棄物の処理方法は、基本的には、放射性廃棄物を容器内に収容し、これをセメント、モルタル等の水硬性無機固化材で固化して固化体となし、その後、容器開口部を蓋部材等で封止するようにされ、前記容器内の空隙(容器と固化体との間に形成される空間部分)を、容器内体積の所定%以下とすべく、前記容器内に特定の充填剤を充填することを特徴としている。
【0013】
次に、本発明に係る放射性廃棄物の処理方法の好ましい態様を列挙する。前記空隙を、容器内体積の10%以下、好ましくは6%以下とする。前記充填剤として、水、水よりも水素の再結合反応を促進する物質、水よりも水素の溶解度が大きい物質、水よりも酸素の溶解度が大きい物質のうちの少なくとも1つを使用する。また、前記充填剤として、水素の再結合反応が行われるものであって、水よりも前記固化体の浸食が少ない物質を使用することが好ましい。さらに、前記充填剤として、エタノール、アセトン、オクタン、モルタル、セメントのうちの少なくとも一つを使用することが好ましい。水よりも水素の溶解度が大きい物質としては、エタノール、アセトン、オクタンが好適で、水よりも固化体の浸食が少ない物質としては、モルタル、セメントが好適である。
【0014】
一方、本発明に係る廃棄物固化体は、基本的には、放射性廃棄物がセメント、モルタル等の水硬性無機固化材で固化されて固化体の形で収蔵され、かつ、容器開口部が蓋部材等で封止され、容器内の空隙が、容器内体積の所定%以下となるように、前記容器内に特定の充填剤が充填されていることを特徴としている。
【0015】
次に、本発明に係る廃棄物固化体の好ましい態様を列挙する。前記空隙が、容器内体積の10%以下、好ましくは6%以下とされていることが好ましい。また、前記充填剤として、水、水よりも水素の再結合反応を促進する物質、水よりも水素の溶解度が大きい物質、水よりも酸素の溶解度が大きい物質のうちの少なくとも1つが使用されていることが好ましい。さらに、前記充填剤として、水素の再結合反応が行われるものであって、水より前記固化体の浸食が少ない物質が使用されていることが好ましい。前記充填剤として、エタノール、アセトン、オクタン、モルタル、セメントのうちの少なくとも1つが使用されていると好適である。この場合も、水よりも水素の溶解度が大きい物質としては、エタノール、アセトン、オクタンが好適で、水よりも固化体の浸食が少ない物質としては、モルタル、セメントが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発明者は、前記の如くの構成とされた本発明に係る放射性廃棄物の処理方法及び廃棄物固化体の効果を検証すべく、図6に示される如くに、圧力計22とバルブ23を有する蓋部材24で封止可能な、廃棄体容器を模擬した密封容器21を用意し、この容器21内に、容器21内の空隙Sの体積が容器内体積のそれぞれ25%、20%、及び2%になるように、充填剤13としての水のみを充填してコバルト60によるガンマ線照射試験を行い、水素ガスの発生量を測定した。この測定結果を図7に示す。なお、図7では、縦軸に水素発生量がとられ、横軸に吸収線量(ガンマ線照射時間)がとられている。
【0017】
この図7から、容器21内の空隙Sが25%、20%の場合は、水素ガスの発生が一定量観察されるが、2%の場合は、上記の二ケースと比較して水素ガスの発生量が非常に小さいことが理解されよう。また、いずれのケースでも、一定時間後に容器21内の水素ガスの増加が停止することがわかる。
【0018】
ここで、放射線による水素ガス発生量は、水1gが受ける吸収線量100eVあたりに生成する水素分子数で表されるG値で整理することができる。G値が大きいほど、同じ線量を受けたときに発生する水素ガス量が多い。図7に示される測定結果のうち、水素ガスの増加が認められる領域について計算したG値を表1に示す。
【0019】
【表1】


【0020】
水の放射線分解による水素発生のG値は、再結合反応を受けないときの理論値は0.45とされている。これに対し、容器21内の空隙Sが25%、20%の場合は、G値は理論値の約1/2となった。さらに、容器21内の空隙Sが2%の場合は、1/200となった。
【0021】
このことは、容器21内の水の量を増加し、容器21内の空隙Sの体積を小さくすることにより、放射線分解により生成する水素ガスの再溶解が加速し、あるいは、水素ガスが水中に留まる時間が増加し、再結合反応が促進されていることを示している。また、一定時間後に容器21内の水素ガスの増加が停止するのは、放射線分解による水素ガスの発生と、再結合反応による水素ガスの消費が等しく、発生と消費が平衡状態になったことを示している。
【0022】
以上のことから、本発明に係る放射性廃棄物の処理方法の好ましい態様では、容器内の空隙が容器内体積の所定%以下となるように、廃棄体容器内に、充填剤として、水又は水より水素の溶解度が大きい物質、あるいは、水又は水より水素の再結合反応を促進する物質を充填し、その後、容器開口部を蓋部材等で封止するようにされる。
【0023】
前記充填剤としては、例えば、水、エタノール、アセトン、オクタン等が挙げられる。また、発生した水素ガスが気相に放出されるのを遅らせる効果をもつ充填剤として、モルタルやセメント等が挙げられる。さらに、充填剤が水素の再結合反応の相手方である酸素の溶解度が高い物質であると、再結合反応の促進効果を大きくすることができる。
【0024】
充填剤を充填した後に容器内に残る空隙の体積は、容器内体積に対して10%以下、好ましくは6%以下にすることが望ましい。6%以下とすることで、水素ガス発生量の抑制効果が顕著となり、容器内の圧力が高くなることを防止できる。
【0025】
このように、本発明に係る放射性廃棄物の処理方法及び廃棄物固化体では、容器内に水等の安価な充填剤を充填して、容器内の空隙の体積を小さくするだけでよいので、放射線分解により発生する水素ガスに起因する容器内の圧力上昇を、セメント固化体や容器に大きな変更改造を加えることなく、効果的に抑制することができ、セメント固化体を含む廃棄物固化体の製作コストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る廃棄物固化体の一実施形態を示す概略断面図である。
【0027】
図示実施形態の廃棄物固化体1は、ドラム缶の如くの有底円筒状の容器(本体)1A内に、放射性廃棄物10がセメント、モルタル等の水硬性無機固化材11で固化されて固化体(以下、セメント固化体と称する)12の形(円柱状)で収蔵されている。そして、容器1内の空隙Sが、容器内体積の所定%以下となるように、容器1内(のセメント固化体12の上側)に特定の充填剤13が充填され、その後、容器開口部1aが蓋部材1Bを例えば溶接することにより封止されている。
【0028】
前記充填剤13としては、水又は水よりも水素の再結合反応を促進する物質、水又は水よりも水素の溶解度が大きい物質、水又は水よりも酸素の溶解度が大きい物質、及び/又は、水素の再結合反応が行われるものであって、水又は水より前記固化体の浸食が少ない物質が使用される。このような条件の少なくとも一つを満たす充填剤は、具体的には、水、エタノール、アセトン、オクタン、モルタル、セメント等である。
以下に、より具体的な実施例を説明する。
【0029】
<第1実施例>
本実施例では、図2に示すように、セメント、モルタル等の水硬性無機固化材を固化して円柱状のセメント固化体20を形成し、密封容器21の開口部を圧力計22とバルブ23を有する蓋部材24で封止する容器C内に収容した(試験容器体A)。この状態での密封容器C内の空隙は、容器内体積の14%であった。その後、密封容器C内の空隙Sが、容器内体積の6%となるように、容器C内に、充填剤13としての水を充填した。つまり、セメント固化体20の上側に、容器内体積の約8%分の、何も混じっていない水を注ぎ込んだ。しかる後、容器開口部を蓋部材24で封止して、試験容器体Bを得た。なお、ここで使用するセメント固化体20は、実験のため放射性廃棄物を埋め込んでいないもので、外部から放射線を照射して試験を行なうものである。
【0030】
このような構成の試験容器体A,Bを用いて、本発明の放射性廃棄物の処理方法および廃棄物固化体の効果、すなわち、充填剤13として水(のみ)を使用した場合の放射線分解による水素ガス発生量の抑制効果を検証した。図2(A)に示される試験容器体Aは、廃棄物固化体1を模擬した密封容器体で、この密封容器C内に、前記セメント固化体20を装填した。この状態での、密封容器C内の空隙Sは、容器内体積の14%であった。このように構成されたセメント固化体20が収蔵された密封容器Cを、容器内空隙14%の試験容器体Aと呼ぶ。
【0031】
また、図2(B)に示される試験容器体Bは、図2(A)に示される、容器内空隙14%の試験容器体A中に、充填剤13としての水を充填して、容器内空隙Sを容器内体積の6%とした。この容器内空隙6%の試験容器体Bと、容器内空隙14%の試験容器体Aに対して、同様の照射条件で外部からコバルト60のガンマ線照射を行い、密封容器内の圧力を経時的に測定した。この測定結果を図3に示す。なお、図3では、縦軸に容器内圧力がとられ、横軸に吸収線量(ガンマ線照射時間)がとられている。
【0032】
この図3から、容器内空隙14%の試験容器体Aでは、吸収線量(時間)の増加に従って容器内圧力が急勾配で上昇するが、充填剤13として水(のみ)を充填した容器内空隙6%の試験容器体Bでは、容器内圧力の上昇がかなり抑えられることが明らかであり、密封容器の内部圧力上昇による破損を防止することができることは明白である。
【0033】
ここで、放射線による水素ガス発生量は、水1gが受ける吸収線量100eVあたりに生成する水素分子数で表されるG値で整理することができる。G値が大きいほど、同じ線量を受けたときに発生する水素ガス量が多い。図3に示される測定結果のうち、容器内圧力の上昇が認められる領域について計算したG値を表2に示す。
【0034】
【表2】


【0035】
ここで、水の放射線分解による水素発生のG値は、再結合反応を受けないときの理論値は0.45とされている。したがって、表2から、容器内空隙14%の試験容器体Aでは、G値が0.4であるので、容器内圧力抑制効果はほとんど得られないことがわかる。それに対し、充填剤13としての水を充填した容器内空隙6%の試験容器体Bでは、G値が0.02となり、理論値の1/20以下まで低減したことがわかる。
【0036】
このことは、容器内に充填剤としての水(のみ)を充填して、容器内空隙Sの体積を、容器内体積の10%以下、好ましくは6%以下にすることにより、放射線分解により生成する水素ガスの再溶解が加速し、あるいは、水素ガスが水中に留まる時間が増加し、再結合反応が促進されていることを示している。なお、前記測定結果をもとに、実使用が検討されている廃棄物固化体1内の圧力を試算した。その詳細を以下に記す。
【0037】
ここでは、JNC TY1400 2000−001、TRU TR−2000−01、TRU廃棄物処分概念検討書(核燃料サイクル開発機構、電気事業連合会)に記載の、ハル廃棄物について試算した。廃棄体容器のサイズ、ハル廃棄物の充填量、ハル廃棄物の放射能濃度は前記検討書に記載の数値を使用し、廃棄体容器内の空隙が容器内体積の14%となるようモルタルを充填した場合(ケース1)と、ケース1の空隙に水(のみ)を充填して容器内空隙が容器内体積の6%となるようにした場合(ケース2)について、廃棄体容器内の圧力変化を計算した。水素ガス発生量を計算するためのG値は、ケース1では0.4、ケース2では0.02を使用した。結果を図4に示す。
【0038】
図4から明らかなように、実使用が検討されている、放射性廃棄物の廃棄物固化体1においても、空隙に水(のみ)を充填することで廃棄体容器内の圧力を1/5以下に低減できることがわかる。
【0039】
以上のことから、本実施例の廃棄物固化体(放射性廃棄物の処理方法)1では、容器1A内の空隙Sが容器内体積の6%となるように、容器1A内に、充填剤13としての水を充填したので、放射線分解により発生する水素ガスに起因する容器内の圧力上昇を効果的に抑制することができる。そのため、廃棄物固化体1を安全に輸送、保管することができる。また、容器1A内に充填剤13として水を充填して、廃棄物固化体1内の空隙を小さくするだけでよいので、セメント固化体や容器に大きな変更改造を加えなくて済み、セメント固化体を含む廃棄物固化体の製作コストの上昇を抑えることができる。
【0040】
<第2実施例>
本実施例は、充填剤13としてモルタルを使用したものである。すなわち、セメント、モルタル等の水硬性無機固化材を固化して円柱状のセメント固化体20を形成し、密封容器21の開口部を圧力計22とバルブ23を有する蓋部材24で封止する密封容器C内に収容した。この状態での密封容器C内の空隙は、容器内体積の14%であった。その後、密封容器C内の空隙Sが、容器内体積の3%となるように、密封容器C内に、充填剤13としてのモルタルを充填した。つまり、セメント固化体20の上側に、容器内体積の約11%分のモルタルを投入した。しかる後、容器開口部を蓋部材24で封止して、試験容器体を得た。
【0041】
このように充填剤としてモルタルが用いられた廃棄物固化体1を模擬した図2(B)に示される如くの試験容器体に対して、前記と同様に、ガンマ線照射による容器内の圧力変化を測定した。測定結果を図5に示す。また、この測定結果をもとに計算したG値を表3に示す。
【0042】
【表3】


【0043】
表3から、充填剤13としてモルタルを充填した容器内空隙3%の試験容器体では、G値が0.04となり、理論値の1/10以下まで低減したことがわかる。このことは、前記した第1実施例と同様に、容器内に充填剤としてのモルタルを充填して、容器内空隙Sを小さくすることにより、放射線分解により生成する水素ガスの再溶解が加速し、あるいは、水素ガスがモルタル中に留まる時間が増加し、再結合反応が促進されていることを示している。
【0044】
以上のことから、本実施例の充填剤としてモルタルが用いられた廃棄物固化体(放射性廃棄物の処理方法)1においても、充填剤として水のみを使用した場合よりは劣るが、放射線分解により発生する水素ガスに起因する容器内の圧力上昇を効果的に抑制することができる。そのため、廃棄物固化体1を安全に輸送、保管することができる。
【0045】
すなわち、放射性廃棄物は、廃棄物が発生する発電所内や再処理工場内、あるいは廃棄物処理施設で廃棄体容器に収納され、モルタル固化される。その後、廃棄施設に輸送されるまで、一定期間保管される。また、廃棄施設に輸送後、処分施設に運搬されるまで一定期間保管される。このように輸送時、あるいは保管される際に、モルタル中の自由水の放射線分解により水素ガスが発生し、廃棄体容器内の圧力が上昇する懸念がある。
【0046】
本発明では、廃棄物固化体を保管する際あるいは輸送する際に、廃棄体容器内に水素の再結合反応を促進する充填材を充填し、廃棄体容器内の空隙を10%以下、好ましくは6%以下とし、その後、廃棄体容器を密封して保管することにより、放射性廃棄物を収容した廃棄物固化体の保管時、あるいは輸送時に発生する水素ガスの量を低減することが可能である。そして、容器内部に発生した水素による容器の内部圧力上昇に起因する破損を防止でき、処理後の状態を安定させることができる。
【0047】
また、容器1A内に充填剤13として安価なモルタルを充填して、廃棄物固化体1内の空隙を小さくするだけでよいので、セメント固化体や容器に大きな変更改造を加えなくて済み、セメント固化体を含む廃棄物固化体の製作コストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る廃棄物固化体の一実施形態を示す概略断面図。
【図2】本発明に係る放射性廃棄物の処理方法及び廃棄物固化体の作用効果の説明に供される図であり、(A)は容器内空隙14%の試験容器体(充填剤なし)を示し、(B)は容器内空隙6%の試験容器体(充填剤[水]あり)を示す。
【図3】図2に示される容器内空隙14%の試験容器体(充填剤なし)と容器内空隙6%の試験容器体(充填剤[水]あり)とにおける容器内圧力の測定結果を示すグラフ。
【図4】図3に示される測定結果をもとに、実使用が検討されている容器内の圧力を試算した結果を示すグラフ。
【図5】充填剤としてモルタルを使用した場合の容器内圧力の測定結果を示すグラフ。
【図6】本発明に係る放射性廃棄物の処理方法及び廃棄物固化体の作用効果の説明に供される試験容器を示す図。
【図7】図6に示される試験容器を使用して水素発生量を測定した結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0049】
1…廃棄物固化体
1A…容器(本体)
1B…蓋部材
1a…容器開口部
10…放射性廃棄物
11…水硬性無機固化材(セメント)
12…セメント固化体
13…充填剤(水等)
S…容器内空隙




 

 


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