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発明の名称 荷電粒子ビーム照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−71676(P2007−71676A)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
出願番号 特願2005−258651(P2005−258651)
出願日 平成17年9月7日(2005.9.7)
代理人 【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
発明者 藤巻 寿隆 / 遠竹 聡
要約 課題

より少ない数のビームエネルギー調整手段(RMW)で、種々の照射条件において深部方向における所望の線量分布を得ることを課題とする。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項2】
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度を検出する角度検出器を備え、
前記制御装置は、
前記角度検出器で検出された前記回転角度に基づいて、前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項3】
荷電粒子ビームを生成するイオン源と、
前記イオン源から出射される荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記イオン源から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御する制御装置を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記回転角度に基づいて、前記イオン源で生成する荷電粒子ビームの生成量を制御することで、前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項5】
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度を検出する角度検出器を備え、
前記制御装置は、
前記角度検出器で検出された前記回転角度に基づいて、前記イオン源から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項6】
前記ビームエネルギー調整装置の複数の回転角度にそれぞれ対応した、前記加速装置から出射する荷電粒子ビームの複数の出射量設定値を記憶する記憶装置を備え、
前記制御装置は、前記回転角度を用いて前記記憶装置から選択された前記出射量設定値に基づいて、前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項7】
前記ビームエネルギー調整装置の複数の回転角度にそれぞれ対応した、前記イオン源から出射する前記荷電粒子ビームの複数の出射量設定値を記憶する記憶装置を備え、
前記制御装置は、前記回転角度を用いて前記記憶装置から選択された前記出射量設定値に基づいて、前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項8】
出射用の高周波印加装置を有し、荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて、前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記高周波印加装置に供給する高周波信号の振幅を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項9】
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度を検出する角度検出器を備え、
前記制御装置は、
前記角度検出器で検出された前記回転角度に基づいて、前記高周波信号の振幅を制御することを特徴とする請求項8に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項10】
前記ビームエネルギー調整装置は、前記軸方向の厚みが回転方向において複数の階段構造により変化していることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置
【請求項11】
前記ビームエネルギー調整装置は、前記軸方向の厚みが回転方向において異なっている翼を有することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項12】
荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
前記軸方向の厚みに基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項13】
荷電粒子ビームを生成するイオン源と、
前記イオン源から出射される荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
前記軸方向の厚みに基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記イオン源から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御する制御装置を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項14】
出射用の高周波印加装置を有し、荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、回転方向の厚みが軸方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて、前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
前記軸方向の厚みに基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記高周波印加装置に供給する高周波信号の振幅を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項15】
前記制御装置は、
前記エネルギー調整装置の厚みを、前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて求めることを特徴とする請求項12ないし請求項14のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項16】
荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
あるエネルギーを想定して形状が最適化された前記エネルギー調整装置に対して、前記エネルギーと異なるエネルギーを有する前記荷電粒子ビームを前記エネルギー調整装置に入射する場合、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御する制御装置を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項17】
前記制御装置は、
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射及び停止させることで前記荷電粒子ビームを出射する期間を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項18】
荷電粒子ビームを加速する加速装置と、
回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、前記加速装置から出射されて前記ビームエネルギー調整装置を通過した前記荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、
前記加速装置を周回する荷電粒子ビームの出射開始信号,出射停止信号、及び前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御する制御信号を、前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて出力する制御装置とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項19】
前記制御装置は、
あるエネルギーを想定して形状が最適化された前記エネルギー調整装置に対して、前記エネルギーよりも低いエネルギーの荷電粒子ビームを通過させる際は、前記翼の厚みが薄い領域でのイオンビームの出射量を、その他の領域よりも少なく制御することを特徴とする請求項11に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項20】
前記制御装置は、
あるエネルギーを想定して形状が最適化された前記エネルギー調整装置に対して、前記エネルギーよりも高いエネルギーの荷電粒子ビームを通過させる際は、前記翼エネルギー調整装置の前記各翼の厚みが厚い平面領域でのイオンビームの出射量を、前記各翼の厚みが薄い平面領域よりも少なく制御することを特徴とする請求項11に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項21】
荷電粒子ビームを加速装置で加速し、
軸方向の厚みが回転方向において異なっている、回転しているビームエネルギー調整装置に、前記加速装置から出射した前記荷電粒子ビームを通過させる荷電粒子ビームの出射方法において、
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする荷電粒子ビームの出射方法。
【請求項22】
荷電粒子ビームを加速装置で加速し、
軸方向の厚みが回転方向において異なっている、回転しているビームエネルギー調整装置に、前記加速装置から出射した前記荷電粒子ビームを通過させる荷電粒子ビームの出射方法において、
前記ビームエネルギー調整装置の回転時間に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする荷電粒子ビームの出射方法。
【請求項23】
荷電粒子ビームを加速装置で加速し、
ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で荷電粒子ビームに印加する高周波信号の振幅を調整し、
前記加速装置から前記荷電粒子ビームを出射するために前記荷電粒子ビームに振幅が調整された前記高周波信号を印加し、
前記出射した荷電粒子ビームを、軸方向の厚みが回転方向において異なっている、回転しているビームエネルギー調整装置に通過させることを特徴とする荷電粒子ビームの出射方法。
【請求項24】
荷電粒子ビームを生成し、
前記生成された荷電粒子ビームを加速し、
軸方向の厚みが回転方向において異なっている、回転しているビームエネルギー調整装置に前記荷電粒子ビームを通過させ、
前記ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、前記荷電粒子ビームを出射している間で前記イオン源から出射する前記荷電粒子ビームの出射量を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項25】
前記ビームエネルギー調整装置の複数の回転角度にそれぞれ対応した荷電粒子ビームの出射量設定値に基づいて、前記加速装置から前記荷電粒子ビームを出射することを特徴とする請求項21に記載の荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項26】
前記ビームエネルギー調整装置の複数の回転角度にそれぞれ対応した荷電粒子ビームの出射量設定値に基づいて、前記荷電粒子ビームを生成することを特徴とする請求項24に記載の荷電粒子ビーム出射方法。
【請求項27】
前記加速装置から出射する前記荷電粒子ビームの出射量は、ビームの出射及び停止で制御することを特徴とする請求項21,請求項22、及び請求項25のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射方法。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法に係り、特に、荷電粒子ビームを材料に照射する材料照射装置、食品に荷電粒子ビームを照射する食品照射装置、及び陽子及び炭素イオン等の荷電粒子ビームを患部に照射して治療する粒子線治療装置に適用するのに好適な荷電粒子ビーム照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療方法として、荷電粒子ビームである陽子または炭素イオン等の荷電粒子ビーム(イオンビーム)を患者の患部に照射する方法が知られている。イオンビーム照射システムは、イオンビーム発生装置,ビーム輸送系、及び照射装置を備える。イオンビーム発生装置は、周回軌道に沿って周回するイオンビームを所望のエネルギーまで加速させる。目標のエネルギーまで加速されたイオンビームは、ビーム輸送系を経て照射装置に輸送され、照射装置から出射される。
【0003】
イオンビーム発生装置は、円形加速器であるシンクロトロン又はサイクロトロンを有する。特許文献1には、イオンビーム発生手段として、イオンビームを周回軌道に沿って周回させる手段、共鳴の安定限界内においてイオンビームのベータトロン振動振幅を増大させる高周波印加装置、及びイオンビームを周回軌道から取り出す出射用デフレを備えたシンクロトロンを記載している。高周波印加装置は、シンクロトロンにて目標エネルギーまで加速されたイオンビームを、シンクロトロンからビーム輸送系へ出射させる際に、シンクロトロン内を安定に周回するイオンビームに、高周波磁場又は高周波電場を印加し、イオンビームのベータトロン振動振幅を増加させる。ベータトロン振動振幅が増加したイオンビームは、安定限界外に移動され、シンクロトロンからビーム輸送系へ出射される。
【0004】
粒子線治療システムにおいて、照射装置から出射されたイオンビームは、患者の体内に照射される。イオンビームは、イオンビームが停止するに至ったときにエネルギーの大部分を放出する(ブラックピークを形成する)という物理的特性を有する。体内でブラックピークが形成される位置は、イオンビームのエネルギーに依存する。
【0005】
通常、患部は、患者の体表面からの深さ方向(すなわち、ビームの進行方向)にある程度の厚みをもっている。このような深さ方向において、患部の厚み全域にわたってイオンビームを照射するには、深さ方向にある程度広く一様な拡大ブラッグピーク((Spread-OutBragg Peak) 以下、SOBPという。)を形成するように、ビームエネルギーを制御しなければならない。
【0006】
このような観点から、レンジモジュレーションホイール(Range Modulation Wheel 、以下、RMWという。)を照射装置に設置した荷電粒子ビーム照射システムが提唱されている(非特許文献1)。RMWは、段階的に軸方向の厚みが増大、又は減少する縦断面が楔型形状となっている翼を周方向に複数枚配置した構成を有する。RMWは、照射装置内のビーム経路に設けられ、ビーム経路と垂直な面内で回転する。荷電粒子ビームが回転するRMWを通過することによって患者体内でのブラッグピーク位置が周期的に変動する。この結果、時間積分で見ると、体表面近くから体内深くまでに至る比較的広いSOBPを得ることができる。
【0007】
特許文献2には、イオン源に供給する電流を変えることで陽子ビームの強度を調整する技術が記載されている。つまり、特許文献2は、サイクロトロンにおいて、所望のビーム強度を得るために、実際に出射されたビームの強度を測定し、その測定結果を用いて、イオン源に供給する電流を制御している。
【0008】
また、特許文献3は、エネルギーを吸収するために、軸心方向の厚みが軸心周りに螺旋状に変化する螺旋状部を有する一対のフィルタを用いた荷電粒子ビーム照射装置を記載している。それらのフィルタは、ビーム経路に互いに重なり合い、反対方向に一定の速度で回転している。フィルタの回転角度にあわせてイオンビームの発生源をON/OFFすることによって、ビームが通過する螺旋上部の重なり部の厚みを制御し、照射対象内におけるビームの到達深さをシフトさせている。これにより、照射対象の深さ方向の線量分布を調整することができる。
【0009】
【特許文献1】特許第2596292号公報
【特許文献2】特表2004−529483号公報
【特許文献3】特開平11−408号公報
【非特許文献1】レビュー オブ サイエンティフィック インスツルメンツ64巻8号(1993年8月)のページ2077、図30(REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS VOLUME 64 NUMBER 8 (AUGUST 1993) P2077 FIG.30)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ビームエネルギー調整装置の構成は、入射するイオンビームのエネルギーに対応して、楔形形状のエネルギー吸収体の形状が最適化されている。患者によって患部の体表面からの深さ、及び患部の大きさ等が異なるため、医療機関は、イオンビームのエネルギーごとに最適化されたビームエネルギー調整装置(RMW)を荷電粒子ビーム照射システムに設置する必要があった。さらに、ビームエネルギー調整装置は、イオンビームの照射野径、及びイオンビームの飛程によっても異なる形状を有して最適化されている。
【0011】
本発明者らは、多様なビームエネルギーのイオンビームに対して、より少ない数のビームエネルギー調整装置で対応すべく、検討を行った。その結果、あるエネルギーを想定して形状を最適化されたビームエネルギー調整装置に対して、異なるエネルギーを有するイオンビームを入射した場合の体内の深さ方向の線量分布において、一様度が悪化することを見い出した。
【0012】
本発明の目的は、多様なビームエネルギーのイオンビームを照射する荷電粒子ビーム照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法において、準備すべきエネルギー調整装置の個数をさらに低減しても、所望の線量分布が形成可能な荷電粒子ビーム照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、荷電粒子ビームを加速する加速装置と、回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なっているビームエネルギー調整装置を有し、加速装置から出射されてビームエネルギー調整装置を通過した荷電粒子ビームを照射対象に照射するビーム照射装置と、ビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、荷電粒子ビームを出射している間で加速装置から出射する荷電粒子ビームの出射量を制御する制御装置とを備えたことにある。
【0014】
あるビームエネルギーを想定して構成されたビームエネルギー調整装置に、そのビームエネルギーと異なるエネルギーを有するイオンビームを入射した場合であっても、制御装置がビームエネルギー調整装置の回転角度に基づいて、加速装置から出射する荷電粒子ビームの出射量を制御するため、体内の深さ方向におけるSOBP幅内の線量分布をより一様にすることができる。これにより、準備すべきビームエネルギー調整装置の個数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多様なビームエネルギーのイオンビームを照射する荷電粒子ビーム照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法において、準備すべきビームエネルギー調整装置の個数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0017】
(実施形態1)
本発明の好適な一実施形態の荷電粒子ビーム照射システムである粒子線治療装置を図1、及び図2を用いて説明する。本実施形態の粒子線治療装置は、イオンビーム発生装置1,ビーム輸送系2、及び照射野形成装置(イオンビーム照射装置)16、及び制御システム71(図2)を備えている。ビーム輸送系2は、イオンビーム発生装置1と照射野形成装置16とを連絡する。制御システム71は、照射制御装置70を含んでおり、治療計画装置77は、記憶装置94に接続される。
【0018】
イオンビーム発生装置1は、イオン源(図示せず),前段加速装置3,シンクロトロン4、及びビーム出射用高周波印加装置5を有する。前段加速装置3が、イオン源、及びシンクロトロン4に接続される。シンクロトロン4は、ビーム加速装置である高周波加速空胴6,高周波印加電極(高周波印加装置)7,出射用デフレクタ11,四極電磁石12、及び偏向電磁石13を有する。イオンビームの周回軌道に配置された高周波加速空胴6は、後述の高周波電源8とは別の、高周波電力を印加する高周波電源(図示せず)に接続されている。高周波印加電極7が、ビーム出射用の高周波供給装置5に接続される。高周波供給装置5は、高周波電源8,開閉装置(開閉スイッチ)9,10及び信号合成装置92を有する。信号合成装置92は、開閉スイッチ10を介して高周波電源8に接続される。他方で、信号合成装置92は、開閉スイッチ9を介して高周波印加電極7に接続される。出射用デフレクタ11が、ビーム輸送系2に接続される。
【0019】
ビーム輸送系2は、四極電磁石14、及び偏向電磁石15を備える。逆U字状のビーム経路17、及び照射野形成装置16が、回転ガントリー(図示せず)に設置される。ビーム輸送系2は、ビーム経路17に接続される。ビーム経路17は、ビーム進行方向の上流側から四極電磁石18,偏向電磁石19、及び偏向電磁石20を備える。ビーム経路17が、治療室内に配置された照射野形成装置16に接続される。
【0020】
照射野形成装置16の内部構造を図2を用いて説明する。照射野形成装置16は、ケーシング25を有する。ケーシング25は、回転ガントリーに取り付けられる。ケーシング25の内部には、イオンビーム進行方向の上流側より順次、ビームプロファイルモニタ
26,線量モニタ(第1の線量検出手段)27,レンジモジュレーションホイール(以下、RMW)装置28,第2散乱体装置29,飛程調整装置(例えば、レンジシフタ)30,線量モニタ(第2の線量検出手段)31,平坦度モニタ32,ブロックコリメータ33,患者コリメータ34、及びボーラス35をビーム経路(ビーム軸)m上に配置している。
【0021】
ビームプロファイルモニタ26及び線量モニタ27は、支持テーブル39上に設けられている。ビームプロファイルモニタ26は、ビーム輸送系2を経てビーム経路17から照射野形成装置16に入射されたイオンビームがビーム軸m上に位置しているかを確認するモニタである。線量モニタ27は、照射野形成装置16に入射されたイオンビームの線量を検出するモニタである。
【0022】
RMW装置28は、RMW(ビームエネルギー分布調整装置)40,RMW保持部材
50、及びモータ42を有する。RMW40は、ケーシング25の内面に取り付けられた保持部材50によって保持されている。保持部材50は、ビーム軸mの方向に対向する保持部50A,50Bを有す。保持部50A,50Bには、それぞれ回転軸48,49が回転可能に支持されている。RMW40は、保持部50A,50Bの間に挿入され、RMW40の回転軸43が回転軸48,49に連結するように支持される。このような構成であるため、RMW40は、保持部50A,50B間で抜き差しされることによって交換可能となっている。交換作業は、オペレータが行ってよい。保持部50A,50Bは、ビーム経路mをさえぎらない位置に設置される。保持部材50Aの上部には、角度計51が設けられている。角度計51は、回転軸48(すなわちRMW40)の回転角度(回転位相)を検出する。保持部50Bは、回転軸49を有する。回転軸49は、保持部50Cに保持されるモータ42に連結される。モータ42は、RMW40を回転駆動させるためのモータである。
【0023】
RMW40の詳細構造を図3に示す。RMW40は、回転軸43、この回転軸43と同心円に配置された円筒部材44、及び回転軸43に取り付けられRMW40の半径方向に伸びた複数の翼(本実施形態では3枚)45を有している。これらの翼45は、その周方向における幅が径方向外側に行くほど広くなるように(すなわち円筒部材44側が回転軸43側よりも広くなるように)形成されており、径方向外側の端部は円筒部材44の内周面に取り付けられている。また、RMW40の周方向における翼45と翼45の間には、それぞれ開口46が形成されている。すなわち、1つのRMW40には3枚の翼45の相互間に形成された開口46が3つ存在する。RMW40は、第1散乱体(図示せず)が一体的に取り付けられている。例えば、第1散乱体は、RMW40のイオンビームが当たる位置全体に張り巡らせた構造である。本実施形態では、RMW40と第1散乱体とを一体的に設けているが、第1散乱体装置とRMW装置28は別個に独立して設けてもよい。また、RMW装置28は、RMW40の厚さ分布(平面領域部分の厚み)の大きい部分と小さい部分の散乱量の違いを補償するための補償器を取り付けてもよい。
【0024】
各翼45は、RMW40の周方向において階段状に配置された複数の平面領域47(すなわち平面領域47は、例えば階段において足を乗せる平面に相当する。)を有しており、ビーム軸mの方向におけるRMW40の底面から各平面領域47までの各厚みが異なっている(RMW40の底面から各平面領域47までのレベルが異なる)。1つの平面領域47の部分におけるその厚みを、平面領域部分の厚みという。すなわち、翼45は、周方向において翼45の両側に位置する開口46からビーム軸mの方向における最も厚みの厚い翼頂部45Aに位置する平面領域47に向かって各平面領域部分の厚みが増加するように形成されている。各平面領域47は、回転軸43から円筒部材44に向かって延びており、その周方向における幅も径方向外側に行くほど広くなっている。
【0025】
第2散乱体装置29は、複数の第2散乱体55,回転テーブル56及びモータ57を有している。モータ57は、ケーシング25内面に取り付けられる支持部材58に設置されている。複数の第2散乱体55は、回転テーブル56上に周方向に並んで設置されており、回転テーブル56がモータ57により回転されると所定の第2散乱体55がビーム軸m上に配置されるようになっている。
【0026】
飛程調整装置30は、厚みの異なる複数(本実施の形態では4個)の吸収体60、及び吸収体操作装置61を有する。例えば、圧縮空気で移動される吸収体操作装置61は、各吸収体60ごとに設けられる。吸収体操作装置61は、吸収体駆動装置62によって移動される。飛程調整装置30は、患部Kの最大深さに基づいてイオンビームの到達深度を調整する。
【0027】
線量モニタ31及び平坦度モニタ32は、支持テーブル64上に設けられている。線量モニタ31は、RMW装置28,第2散乱体装置29及び飛程調整装置30を通過したイオンビームの線量を検出するモニタである。平坦度モニタ32は、RMW40(正確にはRMW40に設けた散乱体)及び第2散乱体55によって散乱されたイオンビームのビーム軸mと垂直な方向における平坦度(線量の一様性)を確認するモニタである。
【0028】
ブロックコリメータ33は、ビーム軸mと垂直な平面上のイオンビームの照射野形状を粗く整形する開口を有し、その開口の外部のインビームを遮蔽するものである。患者コリメータ34は、イオンビームを患部22の患部K(例えば癌や腫瘍の発生部位)の形状に合わせてさらに精度良く整形する開口を有する。ボーラス35は、ビーム軸mに垂直な平面上の各位置における飛程を、照射目標である患部Kの深さ形状に合わせて調整するものである。
【0029】
中央制御装置95は、CPU96、及びCPU96に接続されるメモリ97を有する。CPU96は、記憶装置94及び照射制御装置70の統括制御部78に接続される。
【0030】
制御システム71(図2)は、照射制御装置70,RMW角度検出制御装置63,駆動制御装置66、及び駆動制御装置67を有する。照射制御装置70は、RMW制御部72(演算手段を含む;第1の制御手段),ビーム出射量制御部(ビーム出射量制御装置)
90,照射制御部73(第2の制御手段),機器駆動制御部74、及びメモリ75を有する。メモリ75は、RMW制御部72,ビーム出射量制御装置90,照射制御部73、及び機器駆動制御部74のそれぞれに接続される。RMW制御部72は、RMW角度検出制御装置63、及びモータ42に接続される。ビーム出射量制御装置90は、信号合成装置92(図1)、及び開閉スイッチ9(図1)に接続される。RMW角度検出制御装置63は、角度計51に接続される。照射制御部73は、モータ57,吸収体操作装置61、及びインターロック装置76(図1)に接続される。機器駆動制御部74は、駆動制御装置66、及び駆動制御装置67に接続される。駆動制御装置66は、モータ57に接続される。駆動制御装置67は、吸収体操作装置61に接続される。
【0031】
本実施形態では、制御システム71が照射制御装置70,RMW角度検出制御装置63及び駆動制御装置66,67を備えている。しかし、制御システム71が照射制御装置
70,RMW角度検出制御装置63及び駆動制御装置66,67の各機能を有するように構成してもよい。
【0032】
メモリ75に記憶される情報について説明する。メモリ75は、図7,図8、及び図9に示す情報を記憶する。
【0033】
メモリ75は、図7で示すように、照射野径,飛程,ビームエネルギー,第1散乱体
(以下、SC1)幅,レンジシフタ厚,RMW種類,第2散乱体(以下、SSC)種類、及びビーム出射パターンの情報を記憶する。そのビームエネルギーは、シンクロトロン4による加速終了時におけるイオンビームのエネルギーであり、シンクロトロン4から出射されたイオンビームのエネルギーである。図7によれば、照射野径,ビームエネルギー、及び飛程が決まっていれば、図7に示す情報を用いて、それらに対応したSC1幅,RMW種類,SSC種類、及びビーム出射パターンを求めることができ、飛程に対応したレンジシフタ厚を求めることができる。具体的には、照射野径が20cm,ビームエネルギー100MeV、及び飛程が40mmの場合、レンジシフタ厚50mm,SSC種類1−1,RMW種類が1−AでSC厚2mmの第1散乱体を有するRMW、ビーム出射パターンが1−A−Iとなる。照射野径,ビームエネルギー、及び飛程に対応した、SC1幅,レンジシフタ厚,RMW種類,SSC種類、及びビーム出射パターンの情報は、予め計算及び実験等によって求められる。なお、照射野径,ビームエネルギー及び飛程は、患者に対する治療計画時に決定された治療計画情報である。
【0034】
また、メモリ75は、図8で示すように、SOBP幅とRMW40の種類に対応した、ビームを出射するRMW40の回転角度及びイオンビームを停止するRMW40の回転角度の情報(ビーム出射・停止制御角度情報)を記憶する。つまり、図8によれば、SOBP幅とRMW40の種類が決まれば、RMW40のどの領域(回転角度)で、ビームを出射及び停止させるかという情報(ビーム出射・停止制御角度情報)を求めることができる。具体的には、SOBP幅が1cm、選択されたRMWが1−Aの場合、RMW40の回転角度が10.0度,130.0度,250.0 度の時にビームを停止し、RMW40の回転角度が110.0度,230.0度,350.0 度の時にビームを出射する。SOBP幅と
RMW40の種類に対応した、ビームを出射するRMW40の回転角度及びイオンビームを停止するRMW40の回転角度についても、予め計算及び実験等により求められる。
【0035】
メモリ75は、図9で示すように、RMWの回転角度の設定値とビーム出射パターンとの関係を示す情報を有する。つまり、図9によれば、ビーム出射パターンが決まっていれば、RMWの回転角度に対応するイオンビームの出射量(シンクロトロンから出射するイオンビームの出射量)を求めることができる。具体的には、照射野径及びビームエネルギーによって定まるビーム出射パターンが1−A−Iの場合、RMWの回転角度の設定値が0度のときにビーム出射量の設定値が100%、2度のときに90%、3度のときに800%、4度のときに70%…となる。RMWの回転角度とビーム出射パターンとの関係は、予め計算及び実験等によって求められている。なお、メモリ75に記憶されている図9の情報の一例として本実施形態では、RMWの回転角度1°毎にイオンビーム出射量が設定されているものとしたが、角度ステップは1°に限定されるものではなく、線量分布の調整に必要なビーム出射量の調整精度に基づいて決定されるべき値である。
【0036】
医師は、患者情報(患部の位置及びサイズ,イオンビームの照射方向、及び最大照射深さ)を治療計画装置77に入力する。治療計画装置77は、治療計画ソフトを用い、入力された患部の位置、及びサイズ等に基づいて、治療計画情報であるビームエネルギー,イオンビームの飛程,SOBP幅、及び照射野径を算出する。これらの治療計画情報は、記憶装置94に記憶される。中央制御装置95のCPU96は、記憶装置94からそれらの治療計画情報を読み取って、メモリ97に記憶させると共に、照射制御装置70の統括制御部78を介してメモリ75に記憶される。
【0037】
統括制御部78は、メモリに記憶された治療計画情報(ビームエネルギー,イオンビームの飛程,SOBP幅、及び照射野径)、及びメモリ75に記憶される図7に示す情報に基づいて、吸収体60の厚み(レンジシフタ厚),RMW40の種類(SC1厚を含む),第2散乱体55の種類(SSC種類),ビーム出射パターン等の照射条件を選択する。選択された照射条件、すなわち、SC1幅,レンジシフタ厚,RMW種類,SSC種類、及びビーム出射パターンの情報は、メモリ75に記憶される。
【0038】
選択されたこれらの照射条件は、治療の準備を行っている治療室の制御室内に設置された表示装置(図示せず)に表示される。放射線技師は、その表示画面を確認し、表示されたRMW40を、照射野形成装置16内に設置する。モータ42の回転軸49がRMW40の回転軸49と連結される。
【0039】
統括制御部78は、メモリ75から読み出された第2散乱体の種類(SSC種類)の情報、及び吸収体60の厚み情報(レンジシフタ厚の情報)を機器駆動装置74に出力する。機器駆動制御部74は、入力された第2散乱体55の種類に対応する第2散乱体識別信号を駆動制御装置66に出力する。駆動制御装置66は、その第2散乱体識別信号に基づいてモータ57を駆動させて回転テーブル56を回転させ、選択された第2散乱体55をビーム軸m上に配置する。
【0040】
駆動制御装置67は、機器駆動制御部74から入力したレンジシフタ厚情報に基づいて、吸収体駆動装置62を介して吸収体操作装置61操作し、該当する吸収体60をビーム軸m上の位置まで移動させる。
【0041】
駆動制御装置66,67は、第2散乱体装置29、及び飛程調整装置30のそれぞれの機器状態情報を、照射制御部73に送信する。照射制御部73は、総括制御部78で選定された第2散乱体の種類、及び吸収体の厚み情報をメモリ75から読み出し、上記機器状態情報と比較する。各機器状態情報が、選定されるべき第2散乱体の種類、及び吸収体の厚み情報と一致しない場合、照射制御部73は、インターロック装置76にインターロック信号を送信する。インターロック装置76は、開閉スイッチ10を開き、イオンビームをシンクロトロン4から出射しないようにインターロックをかける。それらの情報が一致する場合は、インターロック装置76の機能により、開閉スイッチ10は閉じたままである。
【0042】
患者22が横たわっている治療台(ベッド)21が移動され、患部Kがビーム軸mの延長線上に位置するように位置決めされる。中央制御装置95からの制御信号を入力した加速器・輸送系制御装置(図示せず)は、シンクロトロン4,ビーム輸送系2等の電磁石を励磁する。このようにイオンビーム出射の準備が完了した後、統括制御部78は、RMW制御部72にRMW回転制御信号を出力する。RMW制御部72が、その制御信号に基づいて回転指令を出力することによって、モータ42が駆動する。このため、RMW40が図4に示す矢印方向に回転する。医師は、前述の制御室内の操作盤から治療開始信号を中央制御装置95のCPU96に出力する。治療開始信号を入力したCPU96は、イオン源(図示せず)を起動させる。イオン源で発生したイオン(例えば、陽子(または炭素イオン))は、前段加速装置(線形加速器)3に出射される。
【0043】
シンクロトロン4は、前段加速装置3から入射したイオンビーム(荷電粒子ビーム、又は粒子線)を更に加速する。この加速は、高周波電源から、高周波加速空胴6に高周波を印加することによって行われる。周回するイオンビームは、目標のビームエネルギーまで加速された後、高周波印加電極7から高周波が印加されることによって、シンクロトロン4から出射される。
【0044】
シンクロトロン4から出射されたイオンビームは、出射用デフレクタ11,ビーム輸送系2、及びビーム経路17を経て照射野形成装置16に到達する。更に、イオンビームは、照射野形成装置16内をビーム軸mに沿って進行し、患部Kに照射される。具体的には、イオンビームは、ビームプロファイルモニタ26,参照モニタ27,RMW20,RMW20に設けられた第1散乱体,第2散乱体55等のビーム軸m上に配置された器具を通過する。イオンビームは、第1散乱体によりビーム軸mと直交する方向にビームサイズが拡大される。第2散乱体55によってその直交方向において線量分布が平坦化される。吸収体60は、イオンビームの体内における飛程を調整する。
【0045】
イオンビームの線量が、線量モニタ31によって検出され、平坦度モニタ32でビーム軸mと直交する方向に垂直な方向におけるイオンビームの線量分布の平坦度が確認される。患者コリメータ34の開口より外側に位置するイオンビームは、患者コリメータで除外される。患者コリメータ34の開口を通過したイオンビームがボーラス35を通過する。ボーラス35を通過したイオンビームは、患部領域に集中した高線量領域を形成しつつ、患部Kに出射される。線量モニタ27,31で測定される線量が目標線量値に達すると、照射制御部73はビーム出射停止信号を出力して開閉スイッチ9を開く。これによりシンクロトロン4からのイオンビームの出射が停止され、患者22に対するイオンビームの照射が終了する。
【0046】
本実施形態の粒子線治療装置は、RMW40の回転角度に基づいてシンクロトロン4からのイオンビームの出射、及び停止を制御することで、単一のRMW40で複数のSOBP幅を形成できる。本実施形態のこの機能を含むビーム出射量制御装置90による制御について、以下、詳細に説明する。
【0047】
統括制御部78は、治療計画情報である照射野径,飛程,ビームエネルギー、及びSOBP幅を、ビーム出射量制御装置90に入力する。ビーム出射量制御装置90は、照射野径,飛程、及びビームエネルギーに基づいて、メモリ75に記憶された図7の情報からRMW種類の情報(例えば、1−A)及びビーム出射パターンの情報(例えば、1−A−I)を選択して入力する。更に、ビーム出射量制御装置90は、SOBP幅情報(例えば、SOBP1cm)、及びRMW種類の情報(例えば、1−A)に基づいてメモリ75に記憶された図8の情報からイオンビームの出射を開始(ON)するRMW40の回転角度設定値(以下、ON設定値という。)、及びその出射を停止(OFF)する回転角度設定値(以下、
OFF設定値という。)を、出射パターン情報(例えば、1−A−I)に基づいてメモリ75に記載された図9の情報から回転角度に対応したビーム出射量設定値(例えば、100%,90%,80%,…)を選択して入力する。
【0048】
まず、ビーム出射量制御装置90によるイオンビームの出射開始,出射停止制御(ON,OFF制御)について説明する。角度計51は、回転している回転軸48の回転角度
(回転位相)を検出し、その回転角度検出信号(以下、回転角度測定値という。)をRMW角度検出制御装置63に出力する。RMW角度検出制御装置63は、入力された検出信号からRMW40の回転角度を求め、その回転角度情報をビーム出射量制御装置90に出力する。ビーム出射量制御装置90は、入力した回転角度計測値がON設定値になったとき、ビーム出射開始信号を出力して開閉スイッチ9を閉じる。開閉スイッチ10は、すでに閉じられており、開閉スイッチ9が閉じられることによって、高周波電源8が高周波印加電極7に電気的に接続される。つまり、高周波電源8からの高周波信号が、開閉スイッチ9,10を経て高周波印加電極7に印加される。これにより、シンクロトロン4において、安定限界内で周回しているイオンビームは、安定限界外に移行し、出射用デフレクタ
11を通ってシンクロトロン4から出射される。また、回転角度計測値がOFF設定値になったとき、ビーム出射量制御装置90は、ビーム出射停止信号を出力して、開閉スイッチ9を開く。これにより、高周波印加電極7への高周波信号の印加が停止され、シンクロトロン4からのイオンビームの出射が停止される。
【0049】
患者22の体内に形成されるSOBP幅は、イオンビームの出射開始(ビーム出射開始信号の出力)、及びイオンビームの出射停止(ビーム出射停止信号の出力)を行うRMW40のそれぞれの回転角度の違いによって異なる。以下に、イオンビームの出射開始、及び出射停止を行うRMW40の各回転角度の違いによる、形成されるSOBP幅の違いを、図4,図5、及び図6を用いて説明する。
【0050】
図4はRMW40の平面図であり、3つのイオンビームの照射条件a,b,cを例として示している。図5は、これらビーム照射条件a,b,cを時系列で示している。また、図6はこれらビーム照射条件a,b,cによって得られる線量分布を示している。
【0051】
すなわち、イオンビームがRMW40の開口部46を通過したときにはビームエネルギーは減衰することなく通過するためブラッグピークが体内深くに生じる。RMW40の翼45の厚みが比較的薄い平面領域47を通過したときはビームエネルギーが若干減衰されてブラッグピークが体内略中央部にて生じる。また、RMW40の翼45の厚みが比較的厚い部分の平面領域47を通過したときはビームエネルギーが大きく減衰されてブラッグピークが体表面近くの浅い部分で生じる。したがって、図4に示す照射条件aのように
RMW40の周方向全領域において常にイオンビームが照射される場合には、RMW40の回転により上記のようなブラッグピーク位置の変動が周期的に行われる結果、時間積分で見ると、図6に示す線量分布aのように体表面近くから体内深くまでに至る広いSOBP幅が得られる。
【0052】
一方、図4に示す照射条件bのように、各翼45の厚みが比較的厚い部分の平面領域
47(翼頂部45A付近)ではイオンビームの照射を停止し、その他の周方向領域にビームが照射される場合には、ビームエネルギーが大きく減衰され体表面近くの浅い部分にブラッグピークが形成されなくなるため、図6に示す線量分布bのように線量分布aよりも狭いSOBP幅が得られる。
【0053】
他方、図4に示す照射条件cように、開口46及び各翼45の厚みが比較的薄い部分の、平面領域47にてイオンビームを照射し、その他の周方向領域ではビームの照射を停止する場合には、ビームエネルギーの減衰量が少なく体内深くにて生じるブラッグピーク分布のみとなるため、図6に示す線量分布cのように線量分布bよりもさらに狭いSOBP幅が得られる。本実施形態の粒子線治療装置では、以上のようにRMW40の回転角度に応じてイオンビームの出射の出射,停止の制御を行うことにより、単一のRMW40で複数の異なるSOBP幅を形成できる。
【0054】
次に、ビーム進行方向(深さ方向)の線量分布の一様性を調整するために、シンクロトロン4から出射するイオンビーム出射量を、イオンビームを出射している間、すなわちイオンビームの出射期間内で調整する制御について、以下に説明する。
【0055】
ビーム出射量制御装置90は、入力した各回転角度測定値が図9に示す各回転角度設定値に達したとき、各回転角度設定値に対応した各ビーム出射量設定値に基づいて、シンクロトロン4から出射するイオンビームの出射量を制御する。すなわち、ビーム出射量制御装置90は、図10に示すように、各ビーム出射量設定値に基づいた振幅変調信号(イオンビーム出射量制御信号、図10(o))を生成し、信号合成装置92に振幅変調波信号を出力する。また、高周波電源8から出力された搬送波である高周波信号(図10(p))は、開閉スイッチ10を介して信号合成装置92に入力される。信号合成装置92は、高周波信号と振幅変調信号を合成して、振幅を変調した出射用高周波信号(図10(q))を出力する。この出射用高周波信号は、時間的に連続して振幅が変化する高周波信号であり、開閉スイッチ9を介して高周波印加電極7に印加される。実際に高周波印加電極7に供給される出射用高周波信号、前述した開閉スイッチ9のON,OFFにより図10(r)のようになる。安定限界内で周回しているイオンビームは、印加される出射用高周波信号の振幅によって安定限界外に移行される量(イオンビーム強度)が変化する。図10(s)は、シンクロトロン4から出射されたイオンビームの強度の変化を示している。具体的には、出射用高周波信号の振幅が大きいと、シンクロトロン4からのイオンビームの出射量は多くなり(ビーム強度大)、その高周波信号の振幅が小さいと、シンクロトロン4からの出射されるイオンビームの出射量は少なくなる(ビーム強度小)。図10の(u)は、ビーム出射ON/OFF信号、すなわち、前述の開閉スイッチ9を閉,開する電圧が設定電圧まで上昇するビーム出射開始信号、電圧が設定電圧より減少するビーム出射停止信号を示している。
【0056】
図11、及び図12は、イオンビーム出射量をRMW40の回転角度に基づいて調整することによって、あるエネルギーを想定して形状を最適化されたRMW40に対して、異なるエネルギーを有するイオンビームを出射した場合であっても、体内の深さ方向での線量分布が一様になるように調整可能であることを示す一例である。図12は、エネルギーE1を想定して形状が最適化されたRMW40に対して、エネルギーE1よりも低いエネルギーE2を有するイオンビームを出射した場合の体内の深さ方向での線量分布を示す。図12において、dは、エネルギーE2のイオンビームを、RMW40の回転角度に対して常に一定の出射量で照射した場合(図11(a))の線量分布であり、eは、図9の情報に基づいてイオンビームを出射した場合(図11(b))の線量分布である。図11
(b)は、RMW40の開口46及び各翼45の厚みが比較的薄い平面領域47にてイオンビーム(エネルギーE2)の出射量を少なくし、その他の領域では100%のビーム出射量で照射することを示す。開口部46、及び翼45の厚みが比較的薄い平面領域47を通過するイオンビーム量が少なくなるため、体内深くにて生じるブラッグピークの線量が少なくなり、翼45の厚みが比較的厚い部分での平面領域47を通過するイオンビーム量は相対的に増加し、体表面近くの浅い部分で生じるブラッグピークの線量が相対的に大きくなる。この結果、dのように傾いた線量分布が、eのように体内の深い部分での線量が低下し、体表面近くの浅い部分での線量が相対的に増加することにより線量分布の一様度が改善される。
【0057】
図13、及び図14は、イオンビーム出射量をRMW40の回転角度に基づいて調整することで、体内の深さ方向での線量分布が一様になるように調整可能であることを示す他の例である。図14は、エネルギーE1を想定して形状を最適化されたRMW40に対して、エネルギーE1よりも高いエネルギーE3を有するイオンビームを出射した場合の体内の深さ方向での線量分布を示す。イオンビームのエネルギーE3がエネルギーE1よりも高いため、RMW40の回転角度に対して常に一定のビーム出射量で照射した場合(図13(a))の線量分布は、図14のfに示すように体内の深い部分に照射される線量が低く、体表面近くの浅い部分に照射される線量が高くなる。この場合には図13(b)に示すように、翼45の厚みが比較的厚い部分での平面領域47にてイオンビームの出射量を少なくし、その他の周方向領域では通常のビーム出射量で照射すことにより、体表面近くの浅い部分で生じるブラッグピークの線量が少なくなり、体内深くにて生じるブラッグピークの線量が相対的に増加し、図14のgのように深さ方向における線量分布の一様度が改善される。
【0058】
RMW40は、回転され、軸方向の厚みが回転方向において異なる構成を有するため、RMW40の回転角度に基づいてイオンビームの出射量を制御することは、実質的にRMW40の軸方向の厚みに基づいてイオンビームの出射量を制御することに等しい。ビーム出射量制御装置90が、RMW角度検出制御装置63から入力される角度情報に基づいて、RMW40の軸方向の厚みを求める。ビーム出射量制御装置90は、ビーム軸m上に、軸方向の厚みが異なる別の平面領域47がくるときにイオンビームの出射量を変えるように制御することも可能であり、また、イオンビームが一つの平面領域47を通過する間に、イオンビームの出射量を変えるように制御することも可能である。
【0059】
本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施形態は、回転方向に沿って厚みが異なる構成を有するRMW40の回転角度に基づいて、シンクロトロン4から出射するイオンビームの出射量を制御するため、あるエネルギーを想定して形状を最適化されたRMW40に対して、異なるエネルギーを有するイオンビームを入射した場合であっても、該当するSOBP幅において一様な線量分布を得ることができる。このため、本実施形態の粒子線治療装置において準備すべきRMWの個数をさらに低減することができる。RMWの個数の低減は、RMWの交換頻度の低減につながり、更には一年あたりに治療できる患者数の増加をもたらす。また、RMWの個数が減ることによって、医療機関はRMWの保管スペースを低減することができる。
【0060】
RMW必要数低減について図15を用いて具体的に説明する。図15に示す立方体の数が、必要となるRMW数である。RMW40を用いた従来の粒子線治療装置は、入射するビームエネルギー,SOBP幅,照射野サイズに対応した127個のRMWが必要であった(図15(a))。前述のように、回転しているRMWの回転角度に基づいてイオンビームの出射開始及び出射停止することによって、1個のRMW40で複数のSOBP幅を実現できる。このため、準備すべきRMW40が、ビームエネルギー及びSOBP幅に対応した24個まで著しく減少する(図15(b))。本実施形態は、さらにRMWの回転角度に基づいてイオンビームの出射量を制御するため、一つのRMWで異なるビームエネルギーに対し、該当するSOBP幅で一様な線量分布を形成することが可能となる。このため、RMWの必要数を前述の24個から6個に更に低減できる(図15(c))。
(2)本実施形態は、照射制御装置70のメモリ(記憶装置)75に記憶された情報に基づいて、加速装置から出射するイオンビームの出射量を制御しているため、制御が簡略化され、装置構成を簡素化することが可能となる。
(3)本実施形態では、イオンビームのエネルギーを調整する手段(ビームエネルギー調整手段)は、軸方向の厚みが回転方向において厚みが異なる構成を有するRMWを用いているため、段を通過するビーム量により線量一様度をコントロールすることができる。すなわち、段のある位置を通過するビーム量が変化しても、段全体を通過するビーム量が変化しなければ、線量一様度には影響を及ぼさない。
(4)本実施形態では、高周波印加装置に供給する高周波信号の振幅を変調することによってイオンビームの出射量を調整している。そのため、現在稼動しているイオンビーム発生装置に、振幅変調信号を出力するビーム出射量制御装置、及びビーム出射用高周波信号と振幅変調信号を合成し、振幅を変調した出射用高周波信号を高周波印加装置に出力する信号混合装置を設けることで、本発明の効果を達成できる荷電粒子ビーム照射システムを提供することができるため、複雑な装置構成を用いることなく、体内の深さ方向におけるSOBP幅内の線量分布をより一様にすることができる。
【0061】
開閉スイッチ9を設置せずに信号合成装置92に振幅変調信号を供給して高周波信号と合成してもよい。これによって、シンクロトロン4からのイオンビームの出射量を制御することができる。このため、上記した作用効果が生じ、RMW40の必要個数を127個よりも低減できる。しかしながら、その個数は6個よりも多くなる。
【0062】
本実施形態では、定められた回転角度毎(本実施形態では、1°毎)のビーム出射量情報をメモリ75が記憶し、ビーム出射量制御装置90が、その情報に基づいて振幅変調信号を信号合成装置92に常に出力している。しかし、メモリ75に記憶する情報は、各照射パターンに対して、ビーム出射量を変える回転角度とそのビーム出射量の情報としてもよい。この場合、ビーム出射量制御装置90は、ビームの出射量を変える回転角度になったときにのみ、信号合成装置92に対して振幅変調信号を出力する。信号合成装置92は、振幅変調信号を入力すると、メモリ(図示せず)に記憶された振幅変調信号を更新し、更新された振幅変調信号と高周波電源8からの高周波信号を合成して出射用高周波信号を生成する。信号合成装置92は、メモリの振幅変調信号が更新されない限り、最新の出射用高周波信号を出力する。上述の方法では、ビーム出射量制御装置90は、ビーム出射量に変化がある場合にのみ振幅変調信号を出力するため、振幅変調信号の出力頻度を低減でき、さらに精度良いビームの出射が可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、ビーム進行方向のSOBP幅における線量分布が一様となるように、シンクロトロン4から出射するイオンビームの出射量を調整する制御について説明した。しかし、ビームの進行方向に対して所望の線量分布、例えば、図12のdに示すような体表面近くの浅い部分での線量が低く、体内の深い部分での線量が高い線量分布、図14のfに示すような体表面近くの浅い部分での線量が高く、体内の深い部分での線量が低い線量分布、及びSOBP幅内の一部分での線量を低くなる線量分布を、医師が望む場合であっても、図10(o)に示す振幅変調信号の形状を変えることで実現することができる。これにより、荷電粒子ビームの照射の自由度が増す。
【0064】
本実施例では、角度計51で検出した回転軸48の回転角度に基づいて、RMW40の回転角度を求めている。しかし、RMW40の回転開始からの時間を計測し、その時間情報に基づいてRMW40の回転角度を求めることも可能である。
【0065】
一人の患者22の患部Kに対して荷電粒子ビームを照射する場合、ある方向(以下、第1照射方向という。)から患者22の患部Kに対して目標線量値の半分の線量を照射し
(以下、第1照射という。)、第1照射が終了した後、第1照射方向と異なる方向(以下、第2照射方向という。)から残り半分の線量を患部Kに照射(以下、第2照射という。)する照射方法(多門照射)を採用することがある。第1照射方向における患者22の患部Kの体表面からの深さ位置が、第2照射方向における体表面からの深さ位置と異なる場合、第1照射と第2照射とでビームエネルギーが異なる。例えば、第1照射でビームエネルギー250MeVの荷電粒子ビームを照射し、第2照射でビームエネルギー200MeVの荷電粒子ビームを照射する場合、従来は、エネルギー調整装置を交換して照射していた。エネルギー調整装置の交換作業は、患者を長時間ベッドに拘束する要因となり、患者にとって大きな負担である。本実施形態によれば、エネルギー調整装置を交換する必要がなくなるため、患者に与える苦痛を低減できる。
【0066】
(実施形態2)
以下に、本発明の他の実施形態の荷電粒子ビーム照射システムである粒子線治療装置を、図16を用いて説明する。
【0067】
本実施形態の陽子線治療装置は、実施形態1の陽子線治療装置において照射制御装置
70のビーム出射量制御装置90をビーム出射量制御装置90Aに替えた構成を有する。また、開閉スイッチ9を削除し、信号合成装置92を高周波印加電極7に直接接続している。本実施形態では、開閉スイッチ9を用いないでイオンビームの出射、及び停止を制御する。
【0068】
ビーム出射量制御装置90Aは、ビーム出射ON/OFF信号(図16(u))と振幅変調信号(図16(o))が合成された制御信号を信号合成装置92に出力する。信号合成装置92は、高周波信号(図16(p))とその制御信号を合成して、ビーム出射開始信号及びビーム出射停止信号を含んで振幅を変調した出射用高周波信号(図16(r))を出力する。この出射用高周波信号が高周波印加電極7により、イオンビームに印加されることにより、シンクロトロン4から出射されるイオンビームの強度は、図16(s)、及び図17(b)に示すように変化する。このイオンビーム強度の変化は、実施形態1でも同じである。
【0069】
本実施形態は、ビーム出射ON/OFF信号を含む制御信号を信号合成装置92に入力されることによって、前述の実施形態と同様に、ON設定値でイオンビームの出射を開始し、OFF設定値でイオンビームの出射を停止し、所定のSOBP幅を得ることができる。本実施形態もイオンビームの出射量を制御することができ、図18のi,jのように、深さ方向で線量分布を均一にすることができる。図18において、hはRMW40の回転角度に対して常に一定のイオンビーム出射量で照射した場合の線量分布であり、iはRMW40の回転角度に基づいて、開口46及び各翼45の厚みが比較的薄い部分での平面領域47にてイオンビームの出射量を少なくしその他の周方向領域は通常のビーム出射量で照射した場合の線量分布であり、jは、その回転角度に基づいて、開口46及び各翼45の厚みが比較的薄い部分での平面領域47にてイオンビームの出射量を少なくしその他の周方向領域では通常のビーム出射量で照射し、かつ翼45の厚い部分の平面領域47がビーム軸を通過する間、イオンビームの出射を停止して照射した場合の線量分布である。
【0070】
本実施形態も実施形態1で生じた効果(1)〜(4)を得ることができる。
【0071】
(実施形態3)
以下に、本発明の他の実施形態の荷電粒子ビーム照射システムである粒子線治療装置を、図19を参照して説明する。本実施形態の粒子線治療装置は、実施形態1の粒子線治療装置において、信号合成装置92が開閉スイッチ91に置き換えられた構成を有する。また、本実施形態では、メモリ75Bは、図7,図8及び図20に示す情報を記憶する。
【0072】
メモリ75Bは、図20に示すように、RMW40の回転角度設定値とビーム出射パターンとの関係を示す情報を記憶する。つまり、図20によれば、ビームの出射パターンが決まっていれば、RMW40の回転角度に対応するイオンビーム出射量を求めることができる。実施形態1では、シンクロトロン4から出射するイオンビームの出射量をアナログ的(0%〜100%)に制御した。本実施形態の粒子線治療装置は、RMW40の回転角度に基づいてシンクロトロン4から出射するイオンビームの出射量を0%、及び100%で制御する(図20の「1」がビーム出射量100%を、「0」がビーム出射量0%を示す)。これにより、あるエネルギーを想定して形状を最適化されたRMW40に対して、異なるエネルギーを有するイオンビームを出射した場合であっても、体内に形成される
SOBP幅においてビームの進行方向の線量分布を均一化できる。本実施形態でのこの機能を含むビーム出射量制御装置90Bによる制御について、以下、詳細に説明する。
【0073】
総括制御部78は、治療計画情報をビーム出射量制御装置90Bに出力する。ビーム出射量制御装置90Bは、照射野径,飛程、及びビームエネルギーに基づいて、メモリ75Bに記憶される図7の情報からRMW種類の情報(例えば、1−B)、及びビーム出射パターンの情報(例えば、1−B−I)を選択して入力する。さらに、ビーム出射量制御装置90Bは、SOBP幅情報、及びRMW種類の情報からON設定値、及びOFF設定値を、出射パターン情報(1−B−I)に基づいてメモリ75Bに記憶された図20の情報から回転角度に対応したビーム出射量設定値(0%、及び100%)をそれぞれ選択して入力する。
【0074】
ビーム出射量制御装置90Bは、入力した各回転角度情報値に対応したビーム出射量設定値に基づいて、シンクロトロン4からのイオンビームの出射量を制御する。すなわち、ビーム出射量制御装置90Bは、メモリ75Bから入力したビームの出射量設定値に基づいたイオンビーム出射量制御信号を生成し、開閉スイッチ91に出力する。開閉スイッチ91は、ビーム出射量100%に対応するビーム出射量制御信号を入力すると閉じ、ビーム出射量0%に対応するビーム出射量制御信号を入力すると開く。高周波電源8から出力された高周波信号は、開閉スイッチ10を介して開閉スイッチ91に入力される。本実施形態の場合、図21に示すように、細かいパルス状のイオビーム出射停止期間が複数回現れるようなビーム出射量となる。
【0075】
あるエネルギーE1を想定して形状が最適化されたRMW40に対して、エネルギー
E1よりも低いエネルギーE2を有するイオンビームを出射した場合、RMW40の回転角度に対して開口46及び各翼45の厚みが比較的薄い部分での平面領域47にて細かいパルス状のイオンビームの出射停止期間を複数回設け、その他の周方向領域は100%のビーム出射量で照射する。これにより、SOBP幅に対して体内の深さ方向での線量分布が均一化される。また、あるエネルギーE1を想定して形状が最適化されたRMW40に対して、エネルギーE1よりも高いエネルギーE3を有するイオンビームを出射した場合、RMW40の回転角度に対して翼45の厚みが比較的厚い部分での平面領域47にてイオンビームの出射停止期間を複数回設け、その他の周方向では通常のビーム出射量で照射することにより、体内の深さ方向での線量分布が均一化される。
【0076】
本実施形態も実施形態1で生じた効果(1)〜(3)を得ることができ、更に以下の効果を得ることができる。
(5)本実施形態では、イオンビーム出射量を0%と100%で制御して、イオンビームをシンクロトロンから出射しているため、装置が簡略化される。
【0077】
(実施形態4)
本発明の他の実施形態である荷電粒子ビーム照射システムの粒子線治療装置を、以下に説明する。本実施形態の粒子線治療装置は、図22に示すように、実施形態1のイオンビーム発生装置1を、イオンビーム発生装置1Aに置き替え、ビーム輸送系2にエネルギー変更装置82を付加した構成を有する。
【0078】
イオンビーム発生装置1は、イオン源80(本実施形態では、フィラメント型のイオン源とする),サイクロトロン4A、及びビーム加速装置81を有する。イオン源80が、サイクロトロン4Aに接続される。エネルギー変更装置82は、イオンビームを通過させてエネルギーを損失させる板状の複数のエネルギー吸収体(ディグレーダ)(図示せず)、エネルギーの低くなったイオンビームを偏向する偏向電磁石(図示せず)、偏向電磁石通過後のイオンビームの一部分を切り出すアパーチャ(図示せず)、及びイオンビームのビーム輸送系2下流側への輸送をシャットアウトするビームシャッタ(図示せず)を備える。
【0079】
本実施形態におけるビーム出射量制御装置90Cによる制御について、以下に説明する。
【0080】
ビーム出射量制御装置90Cは、入力されたRMW40の回転角度計測値がON設定値になったときに、イオン源電源装置86にビーム出射開始信号を出力する。イオン源電源装置86は、イオン源80に電流を供給してプラズマを発生させてイオンビームを生成する。イオン源80で生成されたイオンビームは、サイクロトロン4Aに出射される。サイクロトロン4Aは、入射したイオンビームを加速する。この加速は、ビーム加速装置81によって行われる。周回するイオンビームは、目標のビームエネルギーまで加速された後、出射用デフレクタ11を通ってサイクロトロン4Aから出射される。また、回転角度計測値がOFF設定値になったときに、ビーム出射量制御装置90Cは、ビーム出射停止信号をイオン源電源装置86に出力する。これにより、イオン源80に供給する電流が停止され、サイクロトロン4Aへのイオンビームの出射が停止される。このような制御により、1個のRMW40で複数のSOBP幅を形成できる。
【0081】
次に、SOBP幅に対してビームの進行方向の線量分布の一様性を調整するために、サイクロトロン4Aから出射するイオンビーム出射量を調整する制御について、以下に説明する。
【0082】
ビーム出射量制御装置90Cは、入力した各回転角度測定値に対応した各ビーム出射量設定値(例えば、100%,90%,80%,…)に基づいて、サイクロトロン4Aから出射するイオンビームの出射量を制御する。すなわち、RMW40の回転角度がビーム出射角度となったら、ビーム出射量制御装置90Cは、メモリ75から入力したイオンビームの出射量設定値に基づいてビーム出射量制御信号をイオン源電源装置86に出力する。イオン源電源装置86は、イオン源80にアーク電流を供給してプラズマを生成する。本実施形態では、RMW40の回転角度に基づいてイオン源80で生成するプラズマの量を調整して生成するイオン量を調整し、サイクロトロン4Aから出射するイオンビームの出射量を制御する。つまり、ビーム出射量制御装置90Cが、RMW40の回転角度に基づいて、イオン源電源装置86を制御してイオンビームの出射量を制御する。これにより、体内でのビームの進行方向の線量分布を均一化できる。イオンビーム出射量とイオン源
80に供給するアーク電流値との関係は予め求められ、メモリ75に記憶されている。
【0083】
線量モニタ31から入力した線量が目標線量値に達すると、照射制御部73は、ビーム出射停止信号をイオン源電源装置86に出力する。これにより、イオン源80へ供給する電流が停止され、サイクロトロン4Aからイオンビームの出射が停止され、患者22への照射が終了する。
【0084】
本実施形態も、実施形態1で生じた効果(1)〜(4)を得ることができる。
【0085】
本実施形態では、イオン源80のフィラメントに供給するアーク電流量を調整してイオン生成量を調整し、イオン源80から取り出すイオンビームの出射量を調整する。これにより、サイクロトロン4Aからのイオンビームの出射量を制御している。しかし、イオン源80に設けられたビーム引き出し電極に印加する電圧を調整することで、イオン源80から取り出すイオンビーム量を調整することも可能である。
【0086】
本実施形態では、イオン源80をフィラメント型としたが、例えばECR型のイオン源でも、供給するマイクロ波の強度を調節することで、同じく引き出されるビーム量を調節することができる。
【0087】
本実施形態では、メモリ75Cに記憶する回転角度に対応したビーム出射量設定値は、実施形態1と同様、0〜100%とした。しかし、実施形態3のように、0%及び100%で示すビーム出射量設定値としてもよい。この方法によると、予め求めておく必要のあるイオンビーム出射量とイオン源80に供給するアーク電流値との関係が簡略になり、イオン源電源装置86、及び照射制御装置70の構成の簡素化が可能となる。
【0088】
本実施形態では、イオン源80への電流の供給及び供給停止によって、サイクロトロン4Aから出射するイオンビームの出射、及び出射停止を制御した。しかし、エネルギー変更装置82のビームシャッタを開閉することによって、照射野形成装置16へのイオンビームの入射を制御し、イオンビームの出射、及び出射停止を制御してもよい。この場合、照射制御装置70の照射制御部73、又はインターロック装置76からディグレーダ制御装置87にビーム出射開始信号又はビーム出射停止信号を送信し、ディグレーダ制御装置87がその信号に応じてエネルギー変更装置82のビームシャッタの開閉を制御することにより、ビームの出射、及び出射停止を制御する。また、特に図示はしないが、偏向電磁石15への電源供給の制御により、イオンビームの経路を変更させて、照射野形成装置
16へのイオンビームの入射を制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の好適な一実施形態である粒子線治療装置の全体概略構成を表す図である。
【図2】本発明の好適な一実施形態である粒子線治療装置に備えられる照射野形成装置の構成を表す縦断面図、及び制御システムのプロック構成図である。
【図3】RMWの斜視図である。
【図4】RMWの平面図であり、3種類のイオンビームの照射条件を示した図である。
【図5】図4に示す3種類のビーム照射条件を時系列で示した図である。
【図6】図4に示す3種類のビーム照射条件により得られる線量分布を示す図である。
【図7】記憶装置に記憶された照射条件情報を示す表である。
【図8】記憶装置に記憶されたSOBP幅条件情報を示す表である。
【図9】記憶装置に記憶されたビーム出射量条件情報を示す表である。
【図10】本発明の好適な一実施形態である粒子線治療装置を表す構成図、及びビームの出射量を制御するために出力される信号を表す概略図である。
【図11】イオンビーム出射量とRMW角度との関係をそれぞれ示す図である。(a)RMWの回転角度に対して常に一定のイオンビーム出射量で照射した場合のビーム電流の時間変化、(b)RMWの回転角度に応じてイオンビーム出射量を制御した場合のビーム電流の時間変化。
【図12】ビーム進行方向(深部方向)の線量分布を示す図である。
【図13】イオンビーム出射量とRMW回転角度との関係を示す図である。(a) RMWの回転角度に対して常に一定のイオンビーム出射量で照射した場合のビーム電流の時間変化、(b)RMWの回転角度に応じてイオンビーム出射量を制御した場合のビーム電流の時間変化。
【図14】入射ビームエネルギーを高くした場合の、ビーム進行方向(深部方向)の線量分布を示す図である。
【図15】RMWの必要数の概略を表す図である。(a)従来の照射法で必要となるRMW数を表す概略図。(b)ビームを出射及び停止してSOBP幅を制御する場合に必要となるRMW数を示す概略図。(c)本発明を用いた場合に必要となるRMW数を表す概略図。
【図16】本発明の好適な一実施形態である粒子線治療装置を示す構成図、及びビームの出射量を制御するために出力される信号を表す概略図である。
【図17】イオンビーム出射量とRMW回転角度との関係を示す図である。(a) RMWの回転角度に対して常に一定のイオンビーム出射量で照射した場合のビーム電流の時間変化、(b)RMWの回転角度に応じてイオンビーム出射量の制御,SOBP幅を調整した場合のビーム電流の時間変化。
【図18】ビーム進行方向(深部方向)の線量分布を示す図である。
【図19】本発明の他の実施形態に用いる粒子線治療装置の全体概略構成を表す図である。
【図20】記憶装置に記憶されたビーム出射量条件情報を示した表である。
【図21】ビームの出射・停止によりビーム出射量を制御した場合のイオンビーム出射量とRMW回転角度との関係をそれぞれ示す図である。
【図22】本発明の他の実施形態の粒子線治療装置の全体概略構成を表す図である。
【符号の説明】
【0090】
1,1A…イオンビーム発生装置、4…シンクロトロン(円形加速装置)、4A…サイクロトロン(円形加速装置)、5…ビーム出射用の高周波供給装置、7…高周波印加電極、8…高周波電源、9,10,91…開閉装置(開閉スイッチ)、16…照射野形成装置(イオンビーム照射装置)、28…レンジモジュレーションホイール装置(RMW装置,ブラッグピーク幅形成手段)、40…RMW、51…角度計、72…RMW制御部、73…照射制御部、75…メモリ(記憶装置)、80…イオン源、90,90A,90B,
90C…ビーム出射量制御装置、92…信号合成装置(信号合成回路)。






 

 


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