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使用済燃料貯蔵ラックの製造方法 - 株式会社日立製作所
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発明の名称 使用済燃料貯蔵ラックの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−24609(P2007−24609A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−205038(P2005−205038)
出願日 平成17年7月14日(2005.7.14)
代理人 【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
発明者 加藤 光雄 / 前田 澄満 / 羅 湘軍 / 羽田 光明 / 大塚 敏弘 / 木村 匡宏 / 芦田 栄次 / 舟本 孝雄 / 尾花 健
要約 課題

溶接性に優れ、高温割れを抑制し、溶接時のそり,変形,残留応力を極力抑え、高品質,高信頼の使用済燃料貯蔵ラックの製造方法を提供することにある。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
ボロンが0.1〜1.5wt%添加されたオーステナイトステンレス鋼部材を溶接して製造された使用済燃料貯蔵ラックであって、前記使用済燃料用貯蔵ラックの溶接金属部はボロンを含有するステンレス鋼よりなり、前記ステンレス鋼中のフェライト量が15〜40%であることを特徴とする使用済燃料貯蔵ラック。
【請求項2】
請求項1記載の使用済燃料貯蔵ラックであって、
前記フェライト量が20〜35%であることを特徴とする使用済燃料貯蔵ラック。
【請求項3】
ボロンが0.1〜1.5wt%添加されたオーステナイトステンレス鋼を溶接して製造する使用済燃料貯蔵ラックの製造方法であって、
前記溶接時の溶加材として、C:0.1wt%以下,Si:0.05〜0.65wt%,Mn:1.0〜2.5wt%,Ni:8.0〜10.5wt%,Cr:28.0〜32.0wt%,Mo:0.5wt%以下,P:0.03wt%以下,S:0.03wt% 以下を含有し、残部不可避的不純物及びFeからなる2相ステンレス鋼を用いることを特徴とする使用済燃料貯蔵ラックの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載された使用済み燃料貯蔵ラックの製造方法であって、
前記溶接時の溶接方法が、TIG溶接,MIG溶接,プラズマ溶接,レーザ溶接,電子ビーム溶接のいずれかを用いることを特徴とする使用済燃料貯蔵ラックの製造方法。
【請求項5】
ホウ素添加オーステナイトステンレス鋼のTIG溶接,MIG溶接,プラズマ溶接,レーザ溶接,電子ビーム溶接に用いられる溶加材であって、C:0.1wt%以下,Si:0.05〜0.65wt%,Mn:1.0〜2.5wt%,Ni:8.0〜10.5wt%,
Cr:28.0〜32.0wt%,Mo:0.5wt%以下,P:0.03wt%以下,S:0.03wt% 以下を含有し、残部不可避的不純物及びFeからなる2相ステンレス鋼であることを特徴とする溶接用溶加材。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の使用済燃料貯蔵設備に係り、特に使用済燃料貯蔵ラックの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済燃料貯蔵ラックは、原子力発電所内の使用済燃料貯蔵プール内に設置され、原子力発電所内の使用済燃料貯蔵プール内で使用された使用済燃料集合体等を再処理工場に運び出すまでの間、安全に貯蔵するための設備である。
【0003】
近年、使用済燃料貯蔵ラックは、燃料貯蔵スペースの有効活用のため、燃料貯蔵容量の増加が望まれている。
【0004】
この方策として、特開平5−80189号公報(特許文献1)のように複数の仕切り板を格子状に組み合わせてなる使用済燃料貯蔵ラックや、特開平4−318495号公報
(特許文献2),特開平5−249284号公報(特許文献3)のように複数の角筒体を格子状の組み合わせてなる使用済燃料貯蔵ラックが提案されている。
【0005】
特開平5−80189号公報(特許文献1)では、長尺仕切り板に複数の切込み部を設け、この複数の切込み部に短尺仕切り板の複数の凸部を挿入して、長尺仕切り板に複数の切込み部と短尺仕切り板の複数の凸部に溶加材を添加してTIG溶接し、順次組み立てて製造される使用済燃料貯蔵ラックの製造方法が開示されている。また特開平4−318495号公報(特許文献2),特開平5−249284号公報(特許文献3)では複数の角筒体を格子状に配置し、隣接する角筒体のコーナー部にくさび状の溶接用部材を設け、角筒体のコーナー部同士とくさび状の溶接用部材に溶加材を添加してTIG溶接し、順次組み立てて製造される使用済燃料貯蔵ラックの製造方法が開示されている。
【0006】
これらの使用済燃料貯蔵ラックには、放射能遮蔽効果に優れたボロン添加オーステナイトステンレス鋼が用いられる。ボロン添加オーステナイトステンレス鋼はFe2B,
Cr2Bなどの硼化物を含むオーステナイト組織である。TIG溶接時に添加される溶加材として、オーステナイト系ステンレス鋼(JIS規格;Y308L)や、特開平5−
69186号公報(特許文献4)ではボロンを0.4% 以上含むオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤ、特開2005−10116号公報(特許文献5)では2相ステンレス鋼ワイヤが用いられている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−80189号公報
【特許文献2】特開平4−318495号公報
【特許文献3】特開平5−249284号公報
【特許文献4】特開平5−69186号公報
【特許文献5】特開2005−10116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ボロン添加オーステナイトステンレス鋼のTIG溶接部は、FeとFe2B,Cr2Bなどの硼化物による低融点化合物及びMoB2,TiB2,NbB2 などの高融点化合物の生成による高温割れが発生しやすい特徴を持つため、製造時には厳しい溶接施工法により溶接割れ発生を抑制する必要がある。
【0009】
また使用済燃料貯蔵ラックは、溶接点数が数多いためTIG溶接時のラック全体の溶接熱変形が大きい。溶接熱変形防止,溶接割れの抑制等のため製造時間が長いという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を補い、溶接性に優れ、高温割れを抑制し、溶接時の変形,残留応力を極力抑えた溶接法の提供と、高精度,高品質,高信頼の使用済燃料貯蔵ラックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、ボロンが0.1〜1.5wt%添加されたオーステナイトステンレス鋼の溶接方法であって、溶接金属部のフェライト量を15〜40%とすることにある。
【0012】
また上記目的を達成するための本発明の燃料貯蔵ラックの製造用の溶加材は、C:0.1wt%以下,Si:0.05〜0.65wt%,Mn:1.0〜2.5wt%,Ni:8.0〜10.5wt%,Cr:28.0〜32.0wt%,Mo:0.5wt%以下,P:0.03wt%以下,S:0.03wt%以下を含有し、残部不可避的不純物及びFeからなる2相ステンレス鋼である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の使用済燃料貯蔵ラックは、高温割れが抑制されており、放射能遮蔽効果に優れ、かつ高貯蔵密度,高品質,高精度,高信頼である。
【0014】
また、本発明の溶接方法によれば、溶接性に優れ、溶接時のそり,歪などによる変形,残留応力を極力抑えることが可能である。その結果、溶接部に発生する高温割れの発生を防止し、高品質,高信頼の溶接部が得られるとともに貯蔵セル間の精度が保てられ、製造作業性に優れた高精度な使用済燃料貯蔵ラックの製造が可能となる。
【0015】
本発明の溶加材を用いて溶接を行うことによって、15〜40%のフェライトを含むボロン含有2相ステンレス鋼溶接部が形成でき、溶接部に発生する高温割れの発生を防止し、溶接時のそり,歪などによる変形,残留応力が極力抑えられた高品質,高信頼の溶接部が得られる。また、上記溶加材を貯蔵ラックに用いることにより、貯蔵セル間の精度が保てられ、製造作業性に優れた高精度な使用済燃料貯蔵ラックの製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
オーステナイトステンレス鋼の高温割れ性を評価する方法の一つとして、バレストレイン試験法がある。本発明では、ボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼を各種溶接ワイヤで溶接し、その溶接部のバレストレイン試験を行い、調査した。
【0017】
各種溶接ワイヤによるボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼溶接部のバレストレイン試験の結果、ボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼溶接部は、高温割れが発生するが、FeとFe2B,Cr2Bが共晶反応を起こし、この低融点の共晶化合物により高温割れが埋め戻され、高温割れを修復することがわかった。
【0018】
そこでボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼溶接部は、高温割れの発生が少なく、埋め戻す作用が大きいと溶接部に発生する高温割れの発生を防止できることがわかった。その理由は、FeとFe2B,Cr2Bが共晶反応を起こし共晶生成物が低融点であるためと思われる。その他では、Ni2B等も同様の作用が得られる。
【0019】
また鉄やクロムよりも硼化物を生成しやすいMo,Nb,Tiは、FeとFe2B,
Cr2B などの硼化物による低融点化合物による高温割れを埋め戻す作用を阻害することもわかった。
【0020】
MoはFe,CrよりもBと高融点の化合物を生成しやすい。Mo2B(融点約2800℃) を生成し、溶接後の冷却過程で最初に晶出し、そのまま残存し、共晶反応を起さないため、溶接割れが大きく出る可能性がある。Ti,Nbも同様である。
【0021】
検討の結果、溶接部の溶接金属のフェライト量を15〜40%とすることにより、上記埋め戻しの作用が大きく表れることが判った。
【0022】
特に、フェライトを20〜35%とすると、熱膨張係数が低いため、高温割れの発生が少なく、発生した高温割れは短く、小さい。FeとFe2B,Cr2Bの共晶生成物による高温割れの埋め戻す作用により、割れを修復することができ、優れた溶接部となる。
【0023】
溶接金属のフェライト量が15%未満の場合、溶接部の熱膨張係数が大きく、溶接時のそり,歪などの変形,残留応力が発生して高温割れが生じる。FeとFe2B,Cr2Bの共晶生成物による高温割れの埋め戻し作用が起きるが、高温割れが長く、大きいため、
FeとFe2B,Cr2Bの共晶生成物による高温割れの埋め戻し作用に限界が生じ、高温割れが残存する。
【0024】
一方、フェライト量が40%以上の場合、熱膨張係数を低く抑えることができるので、溶接時のそり,歪などの変形,残留応力が抑えられる。しかし、フェライト量が多くなりすぎると溶接部の延性が低下するとともに割れが大きくなる傾向がある。
【0025】
また、フェライト中にB,S,Pなどの低融点化合物を生成する元素が固溶されるため、FeとFe2B,Cr2Bの共晶生成物による高温割れの埋め戻す作用が減少し、高温割れが残存する。
【0026】
本発明のボロンが0.1〜1.5wt%添加されたオーステナイトステンレス鋼を溶接して製造する使用済燃料貯蔵ラックは、溶接部の溶接金属のフェライト量を15〜40%とすることは、溶接金属部の熱膨張係数を極力低く抑えることができ、溶接時のそり,歪などの変形,残留応力が抑えられ、高温割れの発生が抑制されるとともにFeとFe2B,Cr2Bなどの硼化物による低融点化合物による高温割れを埋め戻す作用により、高温割れを修復するために高温割れが防止される。
【0027】
また本発明方法では、溶接部の溶接金属のフェライト量を15〜40%とすることにより、従来法の溶接金属に比べ、熱膨張係数を極力低く抑えることができ、溶接時のそり,歪などの変形,残留応力が極力抑えられることで高品質,高信頼の溶接部が得られるとともに貯蔵セル間の精度が保てられ、製造作業性に優れた高精度な使用済燃料貯蔵ラックの製造が可能となる。
【0028】
ボロンが0.1〜1.5wt%添加されたオーステナイトステンレス鋼を溶接して製造する使用済燃料貯蔵ラックにおいて、本発明の2相ステンレス鋼溶加材を添加しながら、溶接して製造される使用済燃料貯蔵ラックは、溶接部の溶接金属のフェライト量が15〜
40%に制御することができ、高温割れが抑制され、溶接時のそり,歪などによる変形が抑制され、残留応力が極力抑えられることで高品質,高信頼の溶接部が得られるとともに貯蔵セル間の精度が保てられ、製造作業性に優れた高精度な使用済燃料貯蔵ラックの製造が可能となる。
【0029】
ボロン添加オーステナイトステンレス鋼のTIG溶接部は、高温割れが発生するが、
FeとFe2B,Cr2Bなどの硼化物による低融点化合物による高温割れを埋め戻す作用により、高温割れを修復するために高温割れが防止される。
【0030】
各種溶接ワイヤによるボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼溶接部のバレストレイン試験を行い、調査した結果、オーステナイトステンレス鋼溶接部にFe2B,
Cr2B よりも硼化物を生成しやすいMo,Nb,Tiが固溶されると、高温割れが発生し、FeとFe2B,Cr2Bなどの硼化物による低融点化合物による高温割れを埋め戻す作用を阻害されるため、高温割れが大きく残存する。
【0031】
そこで本発明の2相ステンレス鋼溶加材では、フェライトの生成に寄与するが、高温割れに悪影響を及ぼすMo,Nb,Tiなどの高融点金属の添加を極力避けたほうがよい。
【0032】
上記した本発明の2相ステンレス鋼溶加材は、その材料組成が以下に示す範囲にあることが必要である。
[C:0.1wt%以下]
Cはオーステナイト安定化元素であり、強度向上に寄与するためC含有量0.1wt%以下が望ましい。好ましくは、ボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼の使用済燃料用貯蔵ラック溶接部及び溶加材のC量を極力低く抑え、耐応力腐食割れ性を維持するため、C含有量0.03wt%以下が望ましい。
[Si:0.05〜0.65wt%]
Siは脱酸剤として用いられる。ボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼の使用済燃料用貯蔵ラック溶接部及び溶加材のSi含有量は、0.05〜0.65wt%望ましい。Si含有量が0.05wt%以下だと溶接部の脱酸作用が低く、0.65wt%以上多く含有すると耐食性及び靭性が劣化する。
[Mn:1.0〜2.5wt%]
Mnは溶接時に脱酸作用及び脱硫作用があり、高温割れに有害なSを固定し、耐高温割れ性を抑制する効果がある。この効果を高めるには、1.0wt% 以上必要であり、Mn量が2.5wt%以上になると、溶接時の湯流れが悪くなり、作業性に問題が生じる。
[Ni:8.0〜10.5wt%]
Niは2相ステンレス鋼の必須成分であり、オーステナイト相を安定化させる。そのためには、溶加材のNi含有量を8.0〜10.5wt%とする必要がある。溶加材のNi含有量が8.0wt% 未満では、溶接部のフェライト相が増えて靭性が低下する。溶加材のNi含有量を10.5wt% 以上になるとオーステナイト相が増えて高温割れが発生しやすくなる。
[Cr:28.0〜32.0wt%]
Crは2相ステンレス鋼の必須成分であり、フェライト相を安定化させる効果がある。また2相ステンレス合金の耐食性の向上に寄与する元素である。ボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼の使用済燃料用貯蔵ラックに用いる溶加材のCr含有量を28.0〜32.0wt%とする必要がある。溶加材のCr含有量が28.00wt%未満では、CrがBと反応し、Cr2B 等の硼化物を生成するために、Crがフェライト相を安定化させる効果が低下し、高温割れが発生しやすくなる。溶加材のCr含有量が32.0wt% 以上含有するとフェライト量が増加しすぎるため、延性が低下する。
[Mo:0.5wt%以下]
MoもCr同様、耐食性の向上に寄与する元素であるが、ボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼の使用済燃料貯蔵ラックに用いる溶加材のMo含有量を0.75wt%以下とさせることが好ましい。溶加材のMo含有量を0.5wt% 以上含有するとMoがBと反応し、MoB2 等の高融点硼化物を生成するために、溶接部に発生するヒーリング現象を低下させ、高温割れが発生しやすくなる。
[P:0.03wt%以下]
Pは低融点化合物を生成する元素であり、極力抑える必要があり、溶加材のP含有量を0.03%以下とさせることが好ましい。
[S:0.03wt%以下]
Sは低融点化合物を生成する元素であり、極力抑える必要があり、溶加材のS含有量を0.03%以下とさせることが好ましい。より好ましいのは0.005%以下である。
【0033】
本発明の2相ステンレス鋼溶加材は、使用済燃料貯蔵ラックの溶接のみならず、ボロンが添加されたオーステナイトステンレス鋼の溶接に適し、好ましくはボロンが0.1〜1.5wt%添加されたオーステナイトステンレス鋼の溶接に用いると良い。
【0034】
本発明のボロンが0.1〜1.5wt%添加されたオーステナイトステンレス鋼の溶接には、本発明の2相ステンレス鋼溶加材を添加し、TIG溶接,MIG溶接,プラズマ溶接,レーザ溶接,電子ビーム溶接を行うのが良い。
【実施例1】
【0035】
以下、本発明を精細に説明する。供試材には、ボロンが1.0%添加されたオーステナイトステンレス鋼板(板厚:5mmt,開先角:30°)を用いた。表1にTIG溶接用溶加材の化学組成を、表2にTIG溶接条件を示す。表1に示すように、TIG溶接用溶加材(No.1〜3,7〜9)は比較溶加材であり、TIG溶接用溶加材(No.4〜6)は本発明の溶加材である。
【0036】
【表1】


【0037】
【表2】


【0038】
上記した各々のTIG溶接用溶加材(No.1〜9)を用い、電流:150A,電圧:
10.2V,溶接速度:110mm/min,Ar流量:20l/min ,溶加材の送給量:30〜70mm/min溶接条件でTIG溶接を行い、板厚:5mmtでボロンが1.0%添加されたオーステナイトステンレス鋼溶接部を製作した。
【0039】
次に、各々のTIG溶接用溶加材(No.1〜9)による板厚:5mmtのボロンが1.0%添加されたオーステナイトステンレス鋼溶接部上をTIG溶接(ビードオン溶接)を行い、トランスバレストレイン試験を実施した。表3にトランスバレストレイン試験条件を示す。
【0040】
【表3】


【0041】
トランスバレストレイン試験に用いたTIG溶接(ビードオン溶接)は、TIG溶接用溶加材(No.1〜9)による板厚:5mmtのボロンが1.0% 添加されたオーステナイトステンレス鋼溶接部よりもビード幅が小さくなる溶接条件とした。トランスバレストレイン試験のひずみ量は2%一定で行った。
【0042】
表4に各種溶加材(No.1〜9)によるTIG溶接部の特性とトランスバレストレイン試験の結果を、図1(A)に各種溶加材(No.1〜7)によるTIG溶接部のフェライト量と最大割れ長さ,総割れ長さの関係を示す。また、図1(B)に、割れの入る状況を図示する。
【0043】
【表4】


【0044】
各種比較溶加材(No.1〜3,7〜9)及び本発明の各種溶加材(No.4〜6)によるTIG溶接部は、X線透過法による内部欠陥の観察及び溶接部の断面組織を光学顕微鏡による観察結果、ポロシティ,溶接割れ等の内部欠陥がない。
【0045】
各種比較溶加材(No.1〜3,7〜9)によるTIG溶接金属部のフェライト量は、溶加材(No.1):3.2%,溶加材(No.2):8.6%,溶加材(No.3):10.7%,溶加材(No.7):42.3%,溶加材(No.8):12.3%,溶加材(No.9):
8.9%である。
【0046】
また本発明の各種溶加材(No.4,5,6)によるTIG溶接金属部のフェライト量は、溶加材(No.4):22.2%、本発明の溶加材(No.5):33.9%、本発明の溶加材(No.6):16.5%である。
【0047】
表4に示すように、各種比較溶加材(1〜3,7〜9)及び本発明の各種溶加材(No.4〜6)によるTIG溶接部のトランスバレストレイン試験の結果、Moが多く添加された溶加材(No.2,3)によるTIG溶接部では、最大割れ長さが約0.45mm 、総割れ長さが約10mmとなり、小さい高温割れが多数発生した。またNbが多く添加された溶加材(No.8)及びTiが多く添加された溶加材(No.9)によるTIG溶接部では、最大割れ長さが1.8mm以上 、総割れ長さが約15mm以上となり、大きな高温割れが発生した。
【0048】
オーステナイトステンレス鋼溶接部にFe2B,Cr2Bよりも硼化物を生成しやすい
Mo,Nb,Tiが固溶されると、大きい高温割れが発生し、FeとFe2B,Cr2Bなどの硼化物による低融点化合物による高温割れを埋め戻す作用を阻害されるため、高温割れが大きく残存した。
【0049】
表4及び図1に示すように、各種比較溶加材(No.1〜3)及び本発明の各種溶加材
(No.4〜6)によるTIG溶接部のトランスバレストレイン試験の結果、溶接金属部のフェライト量が増加するに従い、最大割れ長さ及び総割れ長さとも低下した。本発明の各種溶加材(No.4〜6)によるTIG溶接部では、最大割れ長さが0.1mm以下 、総割れ長さが3mm以下となり、高温割れが少なかった。しかし、比較溶加材(No.7)による
TIG溶接部では、溶接金属部のフェライト量が多くなりすぎて、最大割れ長さ及び総割れ長さとも増加する。
【0050】
以上のように、ボロンが1.0% 添加されたオーステナイトステンレス鋼の溶接部の高温割れ感受性は、本発明の溶加材を用い、溶接金属部のフェライト量を15%〜40%の範囲内すると低下することがわかった。また溶接金属部のフェライト量を15%以上すると熱膨張係数を極力低く抑えることができ、溶接時のそり,歪などの変形,残留応力が極力抑えられるため、高品質,高信頼の使用済燃料貯蔵ラックが製造できる。
【実施例2】
【0051】
図2はボロン添加オーステナイトステンレス鋼の角管を用いた使用済燃料貯蔵ラック断面の拡大図である。図3は角管とくさび状の溶接用部材7の肉盛溶接部の平面拡大図である。くさび状の溶接用部材7は管同士の隙間に挿入され、溶接されている。角管の角は曲面となっており、隙間に入りやすく、かつ、角管にフィットしやすい。例としては、割れが図3のように入ることとなる。
【0052】
図2,図3に示すように、ボロン添加オーステナイトステンレス鋼の角管を用いた使用済燃料貯蔵ラック1の外周部は、角管2,3と側板4が隅肉溶接部5によって接続されている。また角管を用いた使用済燃料貯蔵ラック1の内部は、角管2と角管6との間にくさび状の溶接用部材7を設け、くさび状の溶接用部材7を介して、TIGによる肉盛溶接によって角管2と角管6がTIG肉盛溶接部8よって接続された構造で製作されている。
【0053】
本実施例で使用した材料は、ボロンが0.7% 添加されたオーステナイトステンレス鋼である。角管2,3と側板4に接した隅肉溶接部5には、本発明溶加材(No.5)であるC:0.10wt%,Si:0.40wt%,Mn:1.58wt%,Ni:8.75wt%,Cr:30.51wt%,Mo:0.12wt%,P:0.017wt%,S:0.001
wt%を含有し、残部不可避的不純物及びFeからなる2相ステンレス鋼を用い、TIG溶接を行った。隅肉溶接部5のフェライト量は23.8% であり、そり,歪などの溶接変形が少なく、残留応力も低く抑えられ、溶接割れの発生がなかった。
【0054】
また角管を用いた使用済燃料貯蔵ラックの内部の角管同士の接続には、角管2と角管6との間にくさび状の溶接用部材7を設け、くさび状の溶接用部材7を介して、TIG肉盛溶接を行った。
【0055】
くさび状の溶接用部材7を介してのTIG肉盛溶接でも、上記した本発明溶加材(No.5)であるC:0.10wt%,Si:0.40wt%,Mn:1.58wt%,Ni:
8.75wt%,Cr:30.51wt%,Mo:0.12wt%,P:0.017wt%,S:0.001wt%を含有し、残部不可避的不純物及びFeからなる2相ステンレス鋼を用い、TIG肉盛溶接をおこなった。
【0056】
くさび状の溶接用部材7を介してのTIG肉盛溶接部8フェライト量は30.6% であり、そり,歪などの溶接変形が少なく、残留応力も低く抑えられ、溶接割れの発生がなかった。
【0057】
以上のように、順次下側より、角管同士をくさび状の溶接用部材7を介してのTIG肉盛溶接及び角管と側板の隅肉溶接を順次下側より組み立て、製作し、使用済燃料貯蔵ラックとした。
【0058】
溶接時の変形,残留応力を極力抑えることにより、放射能遮蔽効果に優れ、かつ貯蔵密度をあげ、高品質,高精度,高信頼の使用済燃料貯蔵ラックの製造ができた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ボロン添加オーステナイトステンレス鋼の各種溶加材によるTIG溶接部のトランスバレストレイン試験の結果を示す図である。
【図2】ボロン添加オーステナイトステンレス鋼の角管を用いた使用済燃料貯蔵ラック断面の拡大図である。
【図3】角管とくさび状の溶接用部材の肉盛溶接部の拡大図である。
【符号の説明】
【0060】
1…使用済燃料用貯蔵ラック、2,3,6…角管、5…隅肉溶接部、、7…くさび状の溶接用部材、8…TIG肉盛溶接部。




 

 


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