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発明の名称 原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測の方法、そのシステムおよびそのプログラム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−225387(P2007−225387A)
公開日 平成19年9月6日(2007.9.6)
出願番号 特願2006−45571(P2006−45571)
出願日 平成18年2月22日(2006.2.22)
代理人 【識別番号】100075812
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢次
発明者 林 貴 広 / 川 野 昌 平 / 田 中 重 彰
要約 課題
中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性を精度良く予測できる原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法を提供する。

解決手段
疲労特性予測方法10は、原子炉構造物21の形状と溶接条件とに基づいて、溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程11と、温度および応力の時刻歴と原子炉構造物21のHe含有量とに基づいて、溶接部23近傍の粒界24上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程12と、Heバブルの直径および密度、並びにひずみの時刻歴に基づいて、粒界割れ26の発生を判定する判定工程13とを備えている。次に、欠陥指標算出工程14は、Heバブルの直径および密度、並びに粒界割れ26の発生の有無に基づいて、粒界24の欠陥指標を算出する。次に、予測工程15は、前記欠陥指標に基づいて疲労特性を予測する。
特許請求の範囲
【請求項1】
中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法において、
原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程と、
時刻歴算出工程において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、
計算工程において計算されたHeバブルの直径および密度、並びに時刻歴算出工程において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部近傍の複数の粒界上における粒界割れ発生をそれぞれ判定する判定工程と、
計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度、並びに判定工程において判定された粒界割れ発生の有無に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、
欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法。
【請求項2】
中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法において、
原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を計算する時刻歴算出工程と、
時刻歴算出工程において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、
計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、
欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法。
【請求項3】
欠陥指標算出工程において、原子炉構造物断面積と実効的欠陥面積との割合からなる欠陥指標が算出され、
原子炉構造物断面積は、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の断面積であり、
実効的欠陥面積は、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れの投影面積の合計と、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブルの投影面積に一定の係数を乗じた実効的投影面積の合計とを足し合わせて算出することを特徴とする請求項1に記載の原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法。
【請求項4】
欠陥指標算出工程において、原子炉構造物断面厚さと実効的欠陥長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、
原子炉構造物断面厚さは、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の厚さであり、
実効的欠陥長さは、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れの投影長さの合計と、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブルの投影長さに一定の係数を乗じた実効的投影長さの合計とを足し合わせて算出することを特徴とする請求項1に記載の原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法。
【請求項5】
中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムにおいて、
原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出部と、
時刻歴算出部において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算部と、
計算部において計算されたHeバブルの直径および密度、並びに時刻歴算出部において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部近傍の複数の粒界上における粒界割れ発生をそれぞれ判定する判定部と、
計算部において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度、並びに判定部において判定された粒界割れ発生の有無に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出部と、
欠陥指標算出部において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測部とを備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システム。
【請求項6】
中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムにおいて、
原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出部と、
時刻歴算出部において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算部と、
計算部において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出部と、
欠陥指標算出部において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測部とを備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システム。
【請求項7】
少なくとも1台のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実行される原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラムであって、
中性子線が照射され、溶接部を有する原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程と、
時刻歴算出工程において算出した温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、
計算工程において計算されたHeバブルの直径および密度、並びに時刻歴算出工程において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部近傍の複数の粒界上における粒界割れ発生をそれぞれ判定する判定工程と、
計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度、並びに判定工程において判定された粒界割れ発生の有無に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、
欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラム。
【請求項8】
少なくとも1台のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実行される原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラムであって、
中性子線が照射され、溶接部を有する原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程と、
時刻歴算出工程において算出した温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、
計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、
欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所に設置された原子炉等において中性子の照射を受けた、原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測の方法、そのシステムおよびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中性子照射を受けたステンレス鋼は、主として鋼中の不純物として含有されるB(ホウ素)およびNiと中性子との核反応によりHeを生成し、鋼中に蓄積する。例えば非特許文献1には、溶接時の熱により鋼が高温に加熱されると、鋼中に蓄積されたHeが粒界に集まり、粒界上にHeバブルを形成して鋼が脆化され、この結果、溶接時の冷却過程において引張応力やひずみが負荷され、この際に割れ(粒界割れ)が生じることがある、旨の記載がある。
【0003】
このようにHeが粒界上へ集積し、これに伴って割れ(粒界割れ)が生じる現象は、とりわけ、中性子の照射を受けた原子炉構造物を補修し、保全しまたは改良するために溶接をする場合に問題を生じさせる。そこで、粒界割れが生じない健全な溶接部を得るために、あらかじめ粒界上に形成されたHeバブルの量、および溶接により生じる粒界割れの有無を予測しておく必要がある。
【0004】
粒界割れの予測方法は、特許文献1に公開されている。すなわち、被診断材料のHe含有量を求める工程と、溶接による溶融金属近傍の温度履歴および応力履歴を予測する工程と、溶融金属近傍の粒界Heバブルの成長を推測する工程と、このHeバブルの成長挙動から被診断材料の溶接の可否を診断する工程と、からなる原子炉炉内構造物の診断方法である。
【0005】
また、Heバブルの成長挙動から溶接が可能か否かを診断する方法は、非特許文献2に開示されている。すなわち、Heバブルを有する粒界が延性破壊に至る限界ひずみと、溶接中に評価点に加わるひずみとを比較し、後者のひずみが前者のそれを上回った時に「割れを発生する」と診断できる、とされている。
【0006】
さらに、粒界割れの大きさを予測する方法が、特許文献2に公開されている。すなわち、溶接部の任意の点における溶接中における温度、応力およびひずみの時刻歴を計算し、金属中のHe濃度と前記温度および応力の時刻歴から、結晶粒界上に生成するHeバブルの直径および密度の計算を行う。その後、計算されたHeバブルの直径および密度から中性子線の照射を受けた金属の粒界割れを予測する中性子照射材のHeバブル挙動予測方法である。従来は、溶接部近傍の特定の点のみが粒界割れを生じるか否か予測できていたのに対し、この予測方法によれば、溶接部近傍における特定の長さまたは面積を持った粒界が粒界割れを生じるか否かを予測することができる、と述べられている。
【特許文献1】特開平10−111380号公報
【特許文献2】特開2004−144657号公報
【非特許文献1】社団法人溶接学会発行「溶接学会誌」第70巻、第8号、第12頁
【非特許文献2】Journal of Nuclear Materials,258−263(1998)2008−2012
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の各文献には粒界割れの有無や大きさを予測する方法は記載されているが、中性子線の照射を受けた原子炉構造物の溶接部における疲労限、疲労強度、破断繰り返し数等を含む疲労特性の予測方法、予測システム、および予測プログラムに関する発明は記載されていない。
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、中性子照射を受けた原子炉構造物を溶接した場合における、溶接部近傍の疲労特性を精度良く予測することができる原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測の方法、そのシステムおよびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法において、原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程と、時刻歴算出工程において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、計算工程において計算されたHeバブルの直径および密度、並びに時刻歴算出工程において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部近傍の複数の粒界上における粒界割れ発生をそれぞれ判定する判定工程と、計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度、並びに判定工程において判定された粒界割れ発生の有無に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0010】
本発明は、中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法において、原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程と、時刻歴算出工程において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0011】
本発明は、欠陥指標算出工程において、原子炉構造物断面積と実効的欠陥面積との割合からなる欠陥指標が算出され、原子炉構造物断面積は、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の断面積であり、実効的欠陥面積は、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れの投影面積の合計と、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブルの投影面積に一定の係数を乗じた実効的投影面積の合計とを足し合わせて算出することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0012】
本発明は、欠陥指標算出工程において、原子炉構造物断面厚さと実効的欠陥長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、原子炉構造物断面厚さは、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の厚さであり、実効的欠陥長さは、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れの投影長さの合計と、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブルの投影長さに一定の係数を乗じた実効的投影長さの合計とを足し合わせて算出することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0013】
本発明は、欠陥指標算出工程において、断面合計粒界長さと実効的欠陥長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、断面合計粒界長さは、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の粒界長さの合計であり、実効的欠陥長さは、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れの投影長さの合計と、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブルの投影長さに一定の係数を乗じた実効的投影長さの合計とを足し合わせて算出することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0014】
本発明は、欠陥指標算出工程において、断面合計粒界数と実効的欠陥数との割合からなる欠陥指標が算出され、断面合計粒界数は、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の粒界数の合計であり、実効的欠陥数は、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における複数の粒界割れの数の合計と、原子炉構造物に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における複数のHeバブルの数に一定の係数を乗じた実効的Heバブル数の合計とを足し合わせて算出することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0015】
本発明は、欠陥指標算出工程において、合計粒界面積と実効的欠陥面積との割合からなる欠陥指標が算出され、合計粒界面積は、原子炉構造物の溶接部近傍における全ての粒界面積であり、実効的欠陥面積は、原子炉構造物の溶接部近傍における複数の粒界割れの面積の合計と、原子炉構造物の溶接部近傍における複数のHeバブルの面積に一定の係数を乗じた実効的Heバブル面積の合計とを足し合わせて算出することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0016】
本発明は、欠陥指標算出工程において、原子炉構造物厚さと実効的欠陥長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、原子炉構造物厚さは、原子炉構造物の溶接部近傍における原子炉構造物の厚さであり、実効的欠陥長さは、原子炉構造物の溶接部近傍における複数の粒界割れの長さの合計と、原子炉構造物の溶接部近傍における複数のHeバブルの長さに一定の係数を乗じた実効的Heバブル長さの合計とを足し合わせて算出することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0017】
本発明は、欠陥指標算出工程において、合計粒界数と実効的欠陥数との割合からなる欠陥指標が算出され、合計粒界数は、原子炉構造物の溶接部近傍における全ての粒界数であり、実効的欠陥数は、原子炉構造物の溶接部近傍における複数の粒界割れの数の合計と、原子炉構造物の溶接部近傍における複数のHeバブルの数に一定の係数を乗じた実効的Heバブル数の合計とを足し合わせて算出することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0018】
本発明は、欠陥指標算出工程において、原子炉構造物断面積とHeバブル合計投影面積との割合からなる欠陥指標が算出され、原子炉構造物断面積は、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の断面積であり、Heバブル合計投影面積は、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に複数のHeバブルをそれぞれ投影した面積の合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0019】
本発明は、欠陥指標算出工程において、原子炉構造物断面厚さとHeバブル合計投影長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、原子炉構造物断面厚さは、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の厚さであり、Heバブル合計投影長さは、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に複数のHeバブルをそれぞれ投影した長さの合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0020】
本発明は、欠陥指標算出工程において、断面合計粒界長さとHeバブル合計投影長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、断面合計粒界長さは、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の粒界長さの合計であり、Heバブル合計投影長さは、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面に複数のHeバブルをそれぞれ投影した長さの合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0021】
本発明は、欠陥指標算出工程において、断面合計粒界数とHeバブル断面合計数との割合からなる欠陥指標が算出され、断面合計粒界数は、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物の粒界数の合計であり、Heバブル断面合計数は、原子炉構造物の溶接部に負荷される荷重の方向に垂直または平行な断面におけるHeバブル数の合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0022】
本発明は、欠陥指標算出工程において、合計粒界面積とHeバブル合計面積との割合からなる欠陥指標が算出され、合計粒界面積は、原子炉構造物の溶接部近傍における全ての粒界面積であり、Heバブル合計面積は、原子炉構造物の溶接部近傍における複数のHeバブルの面積の合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0023】
本発明は、欠陥指標算出工程において、原子炉構造物厚さとHeバブル合計長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、原子炉構造物厚さは、原子炉構造物の溶接部近傍における原子炉構造物の厚さであり、Heバブル合計長さは、原子炉構造物の溶接部近傍における複数のHeバブルの長さの合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0024】
本発明は、欠陥指標算出工程において、合計粒界長さとHeバブル合計長さとの割合からなる欠陥指標が算出され、合計粒界長さは、原子炉構造物の溶接部近傍における全ての粒界長さであり、Heバブル合計長さは、原子炉構造物の溶接部近傍における複数のHeバブルの長さの合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0025】
本発明は、欠陥指標算出工程において、近傍合計粒界数とHeバブル合計数との割合からなる欠陥指標が算出され、近傍合計粒界数は、原子炉構造物の溶接部近傍における全ての粒界数であり、Heバブル合計数は、原子炉構造物の溶接部近傍における複数のHeバブルの数の合計であることを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0026】
本発明は、予測工程において、荷重により原子炉構造物の溶接部に発生する最大疲労応力、平均疲労応力、疲労応力振幅、最大ひずみ、平均ひずみ、およびひずみ振幅のうちの少なくとも一つの数値を用いて原子炉構造物の溶接部の疲労特性を予測することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0027】
本発明は、予測工程において、原子炉構造物の溶接部近傍における欠陥指標と、疲労限、疲労強度、および破断繰り返し数のうち少なくとも一つの数値とから定式化したマスターカーブ群を用いて原子炉構造物の溶接部の疲労特性を予測することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0028】
本発明は、予測工程において、溶接部近傍における欠陥指標と、溶接部に加わる繰り返し荷重の繰り返し数とから原子炉構造物の溶接部の疲労特性を定式化したS−N線図群を用いて疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを予測することを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法である。
【0029】
本発明は、中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムにおいて、原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出部と、時刻歴算出部において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算部と、計算部において計算されたHeバブルの直径および密度、並びに時刻歴算出部において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部近傍の複数の粒界上における粒界割れ発生をそれぞれ判定する判定部と、計算部において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度、並びに判定部において判定された粒界割れ発生の有無に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出部と、欠陥指標算出部において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測部とを備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムである。
【0030】
本発明は、中性子線が照射された原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムにおいて、原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出部と、時刻歴算出部において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算部と、計算部において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出部と、欠陥指標算出部において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測部とを備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムである。
【0031】
本発明は、少なくとも1台のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実行される原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラムであって、中性子線が照射され、溶接部を有する原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程と、時刻歴算出工程において算出した温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、計算工程において計算されたHeバブルの直径および密度、並びに時刻歴算出工程において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部近傍の複数の粒界上における粒界割れ発生をそれぞれ判定する判定工程と、計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度、並びに判定工程において判定された粒界割れ発生の有無に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラムである。
【0032】
本発明は、少なくとも1台のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実行される原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラムであって、中性子線が照射され、溶接部を有する原子炉構造物の形状と原子炉構造物の溶接部における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出工程と、時刻歴算出工程において算出した温度および応力の時刻歴と原子炉構造物のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物の溶接部近傍に形成された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度を計算する計算工程と、計算工程において計算された複数の粒界上におけるHeバブルの直径および密度に基づいて、溶接部近傍に形成された粒界の欠陥指標を算出する欠陥指標算出工程と、欠陥指標算出工程において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する予測工程と、を備えたことを特徴とする原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測プログラムである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、中性子線が照射された原子炉構造物において、原子炉構造物の溶接部における疲労特性を精度良く予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
第1の実施の形態
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の工程図であり、図2(a)は、中性子照射を受けた原子炉構造物の溶接部近傍における断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部拡大図である。また、図3は予測工程において用いられるマスターカーブ群を示す図であり、図4は、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムを示すブロック図である。
【0035】
まず、図2(a)(b)および図4により本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムの概略について説明する。
図4に示すように、原子炉構造物21の溶接部23における疲労特性予測システム40は、原子炉構造物21の形状と原子炉構造物21の溶接部23における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物21の溶接部23近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出部41と、時刻歴算出部41において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物21のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物21の溶接部23近傍に形成された複数の粒界25上におけるHeバブル25の直径および密度を計算する計算部42と、計算部42において計算されたHeバブル25の直径および密度、並びに時刻歴算出部41において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部23近傍の複数の粒界24上における粒界割れ26の発生をそれぞれ判定する判定部43とを備えている。
また、欠陥指標算出部44は、計算部42において計算された複数の粒界24上におけるHeバブル25の直径および密度、並びに判定部43において判定された粒界割れ26の発生の有無に基づいて、溶接部23近傍に形成された粒界24の欠陥指標を算出する。
さらに、予測部45は、欠陥指標算出部44において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部23の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する。
【0036】
次に、上述した疲労特性予測システムにより原子炉構造物の溶接部における疲労特性を予測する疲労特性予測方法について図1乃至図3を用いて詳細に説明する。
【0037】
(時刻歴算出工程)
まず、時刻歴算出工程11について説明する。
時刻歴算出工程11は、原子炉構造物21の形状と溶接部23の溶接条件とに基づいて、原子炉構造物21の溶接部23近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する工程である。
【0038】
この温度、応力およびひずみの時刻歴の計算には、例えば有限要素法による熱弾塑性解析が用いられる。具体的には、例えば特許文献2に示すように、溶接部23の2次元または3次元の結晶粒界モデルを作成して、少なくとも一部の要素がこの結晶粒界モデルの結晶粒界を表すようにモデルを構成して、任意の結晶粒界上の評価点における当該結晶粒界または粒界面に垂直な方向の応力、ひずみを計算する方法が挙げられる。
【0039】
または、一般的な要素モデルによる有限要素法による数値解析を行い、これとは別に、溶接部23の2次元または3次元の結晶粒界モデルを作成して、結晶粒界モデル上の任意の結晶粒界上における評価点に対応する位置に関して前記有限要素法による解析結果を用いて、結晶粒界または粒界面に垂直な方向の応力成分またはひずみ成分を計算しても良い。
【0040】
ここで、金属の結晶粒界は多角形(2次元の場合)または多面体(3次元の場合)に近似するものとし、その大きさ、すなわち一つの粒界の長さは、評価対象とする原子炉構造物21の材料となる金属の結晶粒度番号に基づいて平均的な値として設定すれば良く、または、目的に応じて任意の数値を設定しても良い。
【0041】
結晶粒界モデルを作成する方法としては、溶接の対象である原子炉構造物21と同一ヒートの材料の金相観察により作成する方法や、ボロノイ図を用いて模擬する方法等が挙げられる。
【0042】
(計算工程)
次に、計算工程12において、時刻歴算出工程11において算出された温度および応力の時刻歴、原子炉構造物21のHe含有量、および原子炉構造物21の鋼種に基づいて、原子炉構造物21の溶接部23近傍に形成された複数の粒界24上におけるHeバブル25の直径および密度を計算する。すなわち、溶接部23近傍に形成された複数の粒界24上において、Heバブル25の生成、成長、合体等がなされた後におけるHeバブル25の直径および単位面積あたりのHeバブル25の数(これをHeバブル密度という)を算出する。
【0043】
ここで、原子炉構造物21の鋼種が計算工程12において必要となるのは、非特許文献1に示されるように、原子炉構造物21の鋼種、すなわちステンレス鋼の材質により粒界割れ26に対する感受性が異なる場合があるためである。
【0044】
(判定工程)
次に、判定工程13において、計算工程12において計算されたHeバブル25の直径および密度、並びに時刻歴算出工程11において計算されたひずみの時刻歴に基づいて、溶接部23近傍の複数の粒界24上における粒界割れ26の発生の有無をそれぞれ判定する。
【0045】
この溶接部23近傍に存在する複数の粒界24上における粒界割れ26の発生を、任意点におけるひずみの時刻歴に基づいて判定する方法として、例えば特許文献2に記載の方法が挙げられる。すなわち、特許文献2に記載の方法は、原子炉構造物21の溶接部23近傍に形成された複数の粒界24上のHeバブル密度に基づいて算出される延性破壊限界ひずみと、原子炉構造物21の溶接時に粒界24に発生する最大のひずみとを比較することにより、原子炉構造物21の溶接時のひずみにより粒界24が破壊され、これにより粒界割れ26が発生するか否かを予測する方法である。
【0046】
(欠陥指標算出工程)
次に、欠陥指標算出工程14において、計算工程12において計算された複数の粒界24上におけるHeバブル25の直径および密度、並びに判定工程13において判定された粒界割れ26発生の有無に基づいて、溶接部23近傍に形成された粒界24の欠陥指標を算出する。
以下、欠陥指標算出工程14において溶接部23近傍に形成された粒界24の欠陥指標を算出する方法について、図2(a)(b)を用いて詳細に説明する。
【0047】
図2(a)において、中性子照射を受けた原子炉構造物21は開先22を有しており、この原子炉構造物21の開先22内部には、開先22内部を溶接金属で肉盛溶接した溶接部23が設けられている。
【0048】
図2(a)において、溶接部23には水平方向に荷重Fが加わっている。ここで、荷重Fの方向に垂直な断面の方向における原子炉構造物21の厚さをTで表す。原子炉構造物21の厚さTは荷重Fの性質に応じて代えても良く、例えばねじりのような荷重Fに対しては、荷重Fの方向に平行な断面の方向の厚さとしても良い。
【0049】
また、図2(b)において、原子炉構造物21内の溶接部23近傍には、多数の粒界24が形成されている。この多数の粒界24のうちの一部は、溶接により生じたHeバブル25が存在する粒界、および粒界割れ26が生じた粒界である。
【0050】
ここで、粒界割れ26が生じた粒界24を、荷重Fの方向に垂直な断面に投影した5本の粒界割れ長さをL1乃至L5で表す。同様に、Heバブル25が存在する粒界24を荷重Fの方向に垂直な断面に投影した5本のHeバブル投影長さを、それぞれl1乃至l5で表し、Heバブル25が存在する粒界24を荷重Fの方向に垂直な断面に投影した長さの合計をΣd(Σd=l1+l2+l3+l4+l5)で表す。
【0051】
次に、図2(b)に示す場合のように、溶接部23近傍に粒界割れ26が生じており、粒界割れ26の疲労特性への影響を無視できない場合には、粒界割れ26およびHeバブル25が疲労特性に及ぼす影響を考慮した欠陥指標を算出するのが好適であり、この方法を以下に述べる。
【0052】
まず、Heバブル投影長さ(l1乃至l5)に対して理論的または実験的に求めた係数αlを乗じて、それぞれ実効的Heバブル長さleff.を算出する。次に、この実効的Heバブル長さleff.の合計(αl・Σd)と、粒界割れ26の投影長さの合計(L1+L2+L3+L4+L5)とを加算し、実効的欠陥長さΣLeff.を算出する。すなわち、
ΣLeff.=(L1+L2+L3+L4+L5)+αl・Σd・・・(1)
により、実効的欠陥長さΣLeff.を算出する。
なお、αl=0の場合は、Heバブル25が疲労特性に及ぼす影響を無視できる場合であり、αl=1の場合は、Heバブル25が疲労特性に及ぼす影響と粒界割れ26が疲労特性に及ぼす影響とが等しい場合である。
このようにして求めた実効的欠陥長さΣLeff.と、荷重Fの方向に垂直な断面の原子炉構造物の厚さTとの割合を欠陥指標(ΣLeff./T)とする。
【0053】
一方、判定工程13において、原子炉構造物21内の溶接部23近傍に粒界割れ26が生じていないと判断された場合など、粒界割れ26が疲労特性に及ぼす影響を無視できる場合には、荷重Fの方向に垂直な断面の原子炉構造物の厚さTと、荷重Fの方向に垂直な断面に投影した粒界割れ長さの合計とHeバブル投影長さの合計(Σd)との割合(Σd/T)を算出して欠陥指標としても良い。
【0054】
なお、欠陥指標算出工程14において、
(a)原子炉構造物断面積Sと実効的欠陥面積Σaeff.との割合からなる欠陥指標(Σaeff./S)が算出されても良い。
ここで、原子炉構造物断面積Sは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の断面積であり、実効的欠陥面積Σaeff.は、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れ26の投影面積の合計と、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブル25の投影面積に一定の係数αaを乗じた実効的投影面積の合計とを足し合わせて算出する値である。
【0055】
また、欠陥指標算出工程14において、
(b)断面合計粒界長さLaと上述した実効的欠陥長さΣLeff.との割合からなる欠陥指標(ΣLeff./La)が算出されても良い。
ここで、断面合計粒界長さLaは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の粒界24の長さの合計であり、実効的欠陥長さΣLeff.は、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れ26の投影長さの合計と、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブル25の投影長さに一定の係数を乗じた実効的投影長さの合計とを足し合わせて算出する値である。
【0056】
さらに、欠陥指標算出工程14において、
(c)欠陥指標算出工程において、断面合計粒界数Nと実効的欠陥数Σneff.との割合からなる欠陥指標(Σneff./N)が算出されても良い。
ここで、断面合計粒界数Nは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の粒界24の数の合計であり、実効的欠陥数Σneff.は、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における複数の粒界割れ26の数の合計と、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における複数のHeバブル25の数に一定の係数αnを乗じた実効的Heバブル数の合計とを足し合わせて算出する値である。
【0057】
(予測工程)
次に、予測工程15において、欠陥指標算出工程14において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部23の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する方法について詳細に説明する。
【0058】
図3は、欠陥指標算出工程14において算出された原子炉構造物21の溶接部23近傍における欠陥指標と、疲労限、疲労強度、および破断繰り返し数のうち少なくとも一つの数値とに基づき予め定式化したマスターカーブ群を示す。このマスターカーブ群を用いて原子炉構造物21の溶接部23の疲労限等の疲労特性を予測する。
【0059】
図3に示すマスターカーブ群において、横軸は、上述した実効的Heバブル長さの合計(ΣLeff.)を原子炉構造物21の厚さTで割った欠陥指標(ΣLeff./T)であり、縦軸は、溶接部23における疲労限σ∞を無欠陥溶接部の疲労限σ∞0で除して規格化した値(σ∞/σ∞0)を示す。なお、無欠陥溶接部の疲労限σ∞0とは、原子炉構造物21にHeバブル25や粒界割れ26が存在しないと仮定した場合における溶接部23の疲労限σ∞0をいう。
【0060】
また、図3に示す個々のマスターカーブは、欠陥指標(ΣLeff./T)と、原子炉構造物21の溶接部23の疲労限σ∞を無欠陥溶接部の疲労限σ∞0で除して規格化した値(σ∞/σ∞0)との関係を示す。これらのマスターカーブは、それぞれ溶接部23に負荷される疲労応力の最大値(最大疲労応力)Stmの条件毎に算出したものである(Stm1、Stm2、Stm3、Stm4)。これら複数のマスターカーブがまとめられて上述したマスターカーブ群が構成される。
【0061】
なお、図3に示すように、欠陥指標(ΣLeff./T)が0となるような特定の荷重条件下においては、溶接部23の疲労限σ∞はσ∞0と等しくなり(σ∞=σ∞0)、このため、溶接部23の疲労限σ∞を無欠陥溶接部の疲労限σ∞0で除して規格化した値(σ∞/σ∞0)は1となる。一方、原子炉構造物21の溶接部23近傍にHeバブル25や粒界割れ26が生じて欠陥指標の値が増加するにしたがって、溶接部23の疲労限σ∞の値が0に近づき、このため、溶接部23の疲労限σ∞を無欠陥溶接部の疲労限σ∞0で除して規格化した値(σ∞/σ∞0)も0に近づく。
【0062】
ここで、図3に示すマスターカーブセットを実験的または理論的に求めて定式化し、
σ∞/σ∞0=fmc(ΣLeff./T,St)・・・(2)
という関数により表すことができる。
【0063】
これにより、欠陥指標(ΣLeff./T)を用いて特定の荷重条件における溶接部23の疲労限σ∞を、
σ∞=fmc(ΣLeff./T,St)・σ∞0・・・(3)
という式に基づいて予測することができる。
【0064】
なお、上述した疲労応力としては、最大疲労応力、平均疲労応力、疲労応力振幅、最大ひずみ、平均ひずみ、またはひずみ振幅を用いることもできる。
【0065】
このように、本実施の形態によれば、中性子線が照射された原子炉構造物21において、原子炉構造物21の溶接部23における疲労特性を精度良く予測することができる。
【0066】
第2の実施の形態
次に、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第2の実施の形態について図2(a)(b)、図5、図6および図7により説明する。
ここで、図2(a)は、中性子照射を受けた原子炉構造物の溶接部近傍における断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部拡大図である。また、図5は、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の一連の工程のうち、予測工程で用いられるマスターカーブ群を示す図であり、図6は、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムを示すブロック図であり、図7は、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の工程図である。
図2(a)(b)、図5、図6および図7に示す第2の実施の形態は、判定部(判定工程)の有無が異なるものであり、他の構成は上述した第1の実施の形態と略同一である。
図6および図7において、図1乃至4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の部号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
まず、図2(a)(b)および図6により本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムの概略について説明する。
疲労特性予測システム40は、原子炉構造物21の形状と原子炉構造物21の溶接部23における溶接条件とに基づいて、原子炉構造物21の溶接部23近傍に設けられた任意点における溶接中の温度、応力およびひずみの時刻歴を算出する時刻歴算出部41と、時刻歴算出部41において算出された温度および応力の時刻歴と原子炉構造物21のHe含有量とに基づいて、原子炉構造物21の溶接部23近傍に形成された複数の粒界24上におけるHeバブル25の直径および密度を計算する計算部42と、計算部42において計算された複数の粒界24上におけるHeバブル25の直径および密度に基づいて、溶接部23近傍に形成された粒界24の欠陥指標を算出する欠陥指標算出部44とを備えている。
また予測部45は、欠陥指標算出部44において算出された欠陥指標に基づいて、溶接部23の疲労限、疲労強度、破断繰り返し数のいずれか、または全てを含む疲労特性を予測する。
【0068】
すなわち本実施の形態は、図4に示す第1の実施の形態と異なり判定部43が存在せず、計算部42で求めたHeバブル25直径および密度から、直接欠陥指標算出部44において欠陥指標を算出するものである。
【0069】
次に、上述した疲労特性予測システムにより原子炉構造物の溶接部における疲労特性を予測する疲労特性予測方法の一連の工程のうち、欠陥指標算出工程および予測工程について図5および図7を用いて説明する。
【0070】
なお、本実施の形態による原子炉構造物の溶接部における疲労特性を予測する疲労特性予測方法は、図1に示す第1の実施の形態と異なり、判定工程が存在しないものである。
【0071】
(欠陥指標算出工程)
まず、図7を用いて、本実施の形態による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の一連の工程のうち、欠陥指標算出工程について説明する。
欠陥指標算出工程14は、計算工程12において計算された複数の粒界25上におけるHeバブル25の直径および密度に基づいて、溶接部23近傍に形成された粒界24の欠陥指標を算出する。
【0072】
この欠陥指標算出工程14において、上述した原子炉構造物断面厚さTと上述したHeバブル合計投影長さΣdとの割合からなる欠陥指標(Σd/T)が算出される。
ここで、原子炉構造物断面厚さTは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の厚さであり、Heバブル合計投影長さΣdは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に複数のHeバブル25をそれぞれ投影した長さの合計である。
【0073】
なお、欠陥指標算出工程14において、
(a)上述した原子炉構造物断面積SとHeバブル合計投影面積との割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、原子炉構造物断面積Sは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の断面積であり、Heバブル合計投影面積は、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に複数のHeバブル25をそれぞれ投影した面積の合計である。
【0074】
また、欠陥指標算出工程14において、
(b)上述した断面合計粒界長さLaとHeバブル合計投影長さとの割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、断面合計粒界長さLaは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の粒界24の長さの合計であり、Heバブル合計投影長さは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に複数のHeバブル25をそれぞれ投影した長さの合計である。
【0075】
さらに、欠陥指標算出工程14において、
(c)上述した断面合計粒界数NとHeバブル断面合計数との割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、断面合計粒界数Nは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の粒界24の数の合計であり、Heバブル断面合計数は、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面におけるHeバブル25の数の合計である。
【0076】
さらにまた、欠陥指標算出工程14において、
(d)合計粒界面積とHeバブル合計面積との割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、合計粒界面積は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における全ての粒界24の面積であり、Heバブル合計面積は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数のHeバブル25の面積の合計である。
【0077】
さらにまた、欠陥指標算出工程14において、
(e)原子炉構造物厚さTとHeバブル合計長さとの割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、原子炉構造物厚さTは、原子炉構造物21の溶接部23近傍における原子炉構造物21の厚さであり、Heバブル合計長さは、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数のHeバブル25の長さの合計である。
【0078】
さらにまた、欠陥指標算出工程14において、
(f)合計粒界長さとHeバブル合計長さとの割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、合計粒界長さは、原子炉構造物21の溶接部23近傍における全ての粒界24の長さであり、Heバブル合計長さは、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数のHeバブル25の長さの合計である。
【0079】
さらにまた、欠陥指標算出工程14において、
(g)近傍合計粒界数とHeバブル合計数との割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、近傍合計粒界数は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における全ての粒界24の数であり、Heバブル合計数は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数のHeバブル25の数の合計である。
【0080】
(予測工程)
次に、予測工程15について図5を用いて説明する。図5は、欠陥指標算出工程14において、溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直な断面へのHeバブル25の投影長さの合計Σdと原子炉構造物21の厚さTとの割合(Σd/T)が欠陥指標として算出された場合におけるマスターカーブ群を示す。すなわち、図5に示すマスターカーブ群は、欠陥指標(Σd/T)と、溶接部23の疲労限σ∞を無欠陥溶接部の疲労限σ∞0で除して規格化した値(σ∞/σ∞0)との関係を最大疲労応力(Stm)の条件毎にまとめたものである。
【0081】
ここで、図5に示すマスターカーブ群を実験的または理論的に求めて定式化し、
σ∞/σ∞0=hmc(Σd/T,Stm)・・・(4)
という関数により表すことができる。
【0082】
これにより、欠陥指標(Σd/T)を用いて特定の疲労応力条件における溶接部23の疲労限(σ∞)を、
σ∞=hmc(Σd/T,Stm)・σ∞0・・・(5)
という式に基づいて予測することができる。
【0083】
また、上述の欠陥指標(Σd/T)は、S−N線図群を用いて疲労特性を予測する場合にも用いることができる。
【0084】
また、予測工程15においては、上述した疲労限σ∞のほか、特定の繰り返し数Nの疲労荷重Fを受けた場合における疲労強度σf、および特定の疲労応力Stを受けた場合における破断繰り返し数Nf(疲労寿命)といった疲労特性を予測することができる。
【0085】
このように、本実施の形態によれば、中性子線が照射された原子炉構造物21において、原子炉構造物21の溶接部23における疲労特性を精度良く予測することができる。
【0086】
第3の実施の形態
次に、図2(a)(b)および図8により本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第3の実施の形態について説明する。ここで、図2(a)は、中性子照射を受けた原子炉構造物の溶接部近傍における断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部拡大図であり、図8は、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法における一連の工程のうち予測工程において用いられるS−N線図群である。
図8による第3の実施の形態は、予測工程における溶接部の疲労特性の予測方法が異なるものであり、他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0087】
(予測工程)
まず、図2(a)(b)および図8により、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の一連の工程のうち、予測工程について説明する。
本実施の形態は、予測工程15において、図3または図5に示すマスターカーブ群に代えて、図8に示すS−N線図群を用いるものである。
【0088】
図8は実効的欠陥長さΣLeff.と、荷重Fの方向に垂直な断面の原子炉構造物21の厚さTとの割合(ΣLeff./T)を欠陥指標とした場合における、欠陥指標(ΣLeff./T)毎のS−N線図をまとめたS−N線図群を示す。図8において、横軸は溶接部23に加わる疲労荷重Fの繰り返し数Nを示し、縦軸は疲労応力Stを示す。このようなS−N線図群は、実験的または理論的に作成することができる。
【0089】
ここで、図8に示すS−N線図群に基づいて、疲労限σ∞、疲労強度σf、および破断繰り返し数Nfについてそれぞれ定式化し、
σ∞=fsn(ΣLeff./T)・・・(6)
σf=fsn(ΣLeff./T,N)・・・(7)
Nf=fsn(ΣLeff./T,St)・・・(8)
という関数により表すことができる。
これにより、特定の欠陥指標を持つ原子炉構造物21の溶接部23における疲労限σ∞、特定の繰り返し数Nの疲労荷重Fを受けた場合における疲労強度σf、および特定の疲労応力Stを受けた場合における破断繰り返し数Nfというような疲労特性を予測することができる。
【0090】
このように、本実施の形態によれば、中性子線が照射された原子炉構造物21において、原子炉構造物21の溶接部23における疲労特性を精度良く予測することができる。
【0091】
第4の実施の形態
次に、図2(a)(b)および図9により本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第4の実施の形態について説明する。ここで、図2(a)は、中性子照射を受けた原子炉構造物の溶接部近傍における断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部拡大図であり、図9は、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法における一連の工程のうち予測工程において用いられるマスターカーブ群である。図9による第4の実施の形態は、欠陥指標算出工程において算出する欠陥指標、および予測工程における溶接部の疲労特性の予測方法が異なるものであり、他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0092】
(欠陥指標算出工程)
まず、本実施の形態による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の一連の工程のうち、欠陥指標算出工程について説明する。
図1に示す第1の実施の形態と同様に、欠陥指標算出工程14は、計算工程12において計算された複数の粒界24上におけるHeバブル25の直径および密度、並びに判定工程13において判定された粒界割れ26発生の有無に基づいて、溶接部23近傍に形成された粒界24の欠陥指標を算出する。
【0093】
この欠陥指標算出工程14において、原子炉構造物断面積Sと実効的欠陥面積Σaeff.との割合からなる欠陥指標(Σaeff./S)が算出される。
ここで、原子炉構造物断面積Sは、原子炉構造物21の溶接部23に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面における原子炉構造物21の断面積であり、実効的欠陥面積Σaeff.は、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に対する複数の粒界割れ26の投影面積の合計と、原子炉構造物21に負荷される荷重Fの方向に垂直または平行な断面に対する複数のHeバブル25の投影面積に一定の係数を乗じた実効的投影面積の合計とを足し合わせて算出する値である。
【0094】
なお、欠陥指標算出工程14において、
(a)合計粒界面積と実効的欠陥面積との割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、合計粒界面積は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における全ての粒界24の面積であり、実効的欠陥面積は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数の粒界割れ26の面積の合計と、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数のHeバブル25の面積に一定の係数(αa)を乗じた実効的Heバブル面積の合計とを足し合わせて算出する値である。
【0095】
また、欠陥指標算出工程14において、
(b)原子炉構造物厚さTと実効的欠陥長さとの割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、原子炉構造物厚さTは、原子炉構造物21の溶接部23近傍における原子炉構造物21の厚さであり、実効的欠陥長さは、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数の粒界割れ26の長さの合計と、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数のHeバブル25の長さに一定の係数αlを乗じた実効的Heバブル長さの合計とを足し合わせて算出する値である。
【0096】
さらに、欠陥指標算出工程14において、
(c)合計粒界数と実効的欠陥数との割合からなる欠陥指標が算出されても良い。
ここで、合計粒界数は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における全ての粒界24の数であり、実効的欠陥数は、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数の粒界割れ26の数の合計と、原子炉構造物21の溶接部23近傍における複数のHeバブル25の数に一定の係数αnを乗じた実効的Heバブル数の合計とを足し合わせて算出する値である。
【0097】
(予測工程)
次に、図2(a)(b)および図9により、本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の一連の工程のうち、予測工程について説明する。
本実施の形態は、予測工程15において、図3または図5に示すマスターカーブ群に代えて、図9に示すマスターカーブ群を用いるものである。
【0098】
図9は、原子炉構造物断面積Sと実効的欠陥面積Σaeff.との割合からなる欠陥指標(Σaeff./S)と、溶接部23の疲労限σ∞を無欠陥溶接部の疲労限σ∞0で除して規格化した値(σ∞/σ∞0)との関係を最大疲労応力Stmの条件毎にまとめたマスターカーブ群を示す。
【0099】
ここで、図9に示すマスターカーブ群を実験的または理論的に求めて定式化し、
σ∞/σ∞0=gmc(Σaeff./S,Stm)・・・(9)
という関数により表すことができる。
【0100】
これにより、欠陥指標(Σaeff./S)を用いて特定の疲労応力条件における溶接部23の疲労限σ∞を、
σ∞=gmc(Σaeff./S,Stm)・σ∞0・・・(10)
という式に基づいて予測することができる。
【0101】
なお、上述した欠陥指標(Σaeff./S)は、S−N線図群を用いて疲労特性を予測する場合においても用いることができる。
【0102】
また、予測工程15においては、上述した疲労限σ∞のほか、特定の繰り返し数Nの疲労荷重Fを受けた場合における疲労強度σf、および特定の疲労応力Stを受けた場合における破断繰り返し数Nf(疲労寿命)といった疲労特性を予測することができる。
【0103】
このように、本実施の形態によれば、中性子線が照射された原子炉構造物21において、原子炉構造物21の溶接部23における疲労特性を精度良く予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第1の実施の形態を示す工程図。
【図2】中性子照射を受けた原子炉構造物を示す断面図。
【図3】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第1の実施の形態において用いられるマスターカーブ群を示す図。
【図4】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムの第1の実施の形態を示すブロック図。
【図5】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第2の実施の形態において用いられるマスターカーブ群を示す図。
【図6】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測システムの第2の実施の形態を示すブロック図。
【図7】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第2の実施の形態を示す工程図。
【図8】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第3の実施の形態において用いられるS−N線図群を示す図。
【図9】本発明による原子炉構造物の溶接部における疲労特性予測方法の第4の実施の形態において用いられるマスターカーブ群を示す図。
【符号の説明】
【0105】
10 疲労特性予測方法
11 時刻歴算出工程
12 計算工程
13 判定工程
14 欠陥指標算出工程
15 予測工程
21 原子炉構造物
23 溶接部
24 粒界
25 Heバブル
26 粒界割れ
40 疲労特性予測システム
41 時刻歴算出部
42 計算部
43 判定部
44 欠陥指標算出部
45 予測部




 

 


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