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発明の名称 放射性廃液の処理装置及びその処理方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−205758(P2007−205758A)
公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
出願番号 特願2006−22434(P2006−22434)
出願日 平成18年1月31日(2006.1.31)
代理人 【識別番号】100077849
【弁理士】
【氏名又は名称】須山 佐一
発明者 春口 佳子 / 三倉 通孝 / 村田 栄一 / 佐藤 龍明 / 桜井 学 / 赤井 芳恵
要約 課題
有機化合物を含む中レベル放射性廃液を、安全かつ安価に処理することができる放射性廃液の処理装置及びその処理方法を提供する。

解決手段
放射性廃液の処理装置が、有機化合物を含有する放射性廃液と前記放射性廃液から放射性核種を抽出する溶媒抽出剤とを超臨界二酸化炭素に接触させて、前記放射性核種を含む有機成分を前記超臨界二酸化炭素中に溶解抽出させる抽出手段と、前記抽出手段により前記放射性核種を含む有機成分を抽出した超臨界二酸化炭素を、減圧又は昇温後に減圧することにより前記超臨界二酸化炭素中から前記放射性核種を含む有機成分を分離し、この分離した放射性核種を含む有機成分を鉱酸水溶液と接触させて、前記鉱酸水溶液中に前記放射性核種を逆抽出して分離する分離手段と、前記抽出手段により前記有機化合物及び前記放射性核種が除去された放射性廃液と、水硬性無機固化材と、を混合して固化する固化手段とを具備する。
特許請求の範囲
【請求項1】
有機化合物を含有する放射性廃液と前記放射性廃液から放射性核種を抽出する溶媒抽出剤とを超臨界二酸化炭素に接触させて、前記放射性核種を含む有機成分を前記超臨界二酸化炭素中に溶解抽出させる抽出手段と、
前記抽出手段により前記放射性核種を含む有機成分を抽出した超臨界二酸化炭素を、減圧又は昇温後に減圧することにより前記超臨界二酸化炭素中から前記放射性核種を含む有機成分を分離し、この分離した放射性核種を含む有機成分を鉱酸水溶液と接触させて、前記鉱酸水溶液中に前記放射性核種を逆抽出して分離する分離手段と、
前記抽出手段により前記有機化合物及び前記放射性核種が除去された放射性廃液と、水硬性無機固化材と、を混合して固化する固化手段と、
を具備することを特徴とする放射性廃液の処理装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、前記有機化合物を含有する放射性廃液と前記溶媒抽出剤とを前記超臨界二酸化炭素に接触させて、前記放射性核種を含む有機成分を前記超臨界二酸化炭素中に溶解抽出させる抽出槽と、
前記抽出槽に前記超臨界二酸化炭素を供給する超臨界二酸化炭素供給装置と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項3】
前記分離手段は、前記抽出槽から排出された前記放射性核種を含む有機成分を溶解した超臨界二酸化炭素を減圧して、前記放射性核種を含む有機成分と、二酸化炭素に分離する減圧器と、
前記減圧器により分離された前記放射性核種を含む有機成分を、鉱酸水溶液と接触させて前記鉱酸水溶液中に前記放射性核種を逆抽出する逆抽出槽と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項4】
前記減圧器により分離された前記二酸化炭素を、前記逆抽出槽から前記超臨界二酸化炭素供給装置の入口に戻すラインをさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項5】
前記分離手段は、前記抽出槽から排出された前記放射性核種を含む有機成分を溶解した超臨界二酸化炭素を昇温させて、前記放射性核種を含む有機成分と、前記放射性核種を含む有機成分を残存している超臨界二酸化炭素とに分離する分離回収槽と
前記分離回収槽により分離された前記放射性核種を含む有機成分と、前記放射性核種を含む有機成分を残存している超臨界二酸化炭素とを減圧して、前記放射性核種を含む有機成分と、二酸化炭素に分離する減圧器と、
前記分離回収槽と前記減圧器により分離された前記放射性核種を含む有機成分を、鉱酸水溶液と接触させて前記鉱酸水溶液中に前記放射性核種を逆抽出する逆抽出槽と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項6】
前記分離回収槽は、前記抽出槽に比べて温度が20℃以上高いことを特徴とする請求項5に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項7】
前記分離回収槽により分離された前記超臨界二酸化炭素を、前記分離回収槽から前記抽出槽の入口に戻すラインと、
前記減圧器により分離された二酸化炭素を、前記逆抽出槽から前記超臨界二酸化炭素供給装置の入口に戻すラインと、
をさらに具備すること特徴とする請求項5又は6に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項8】
前記分離手段での逆抽出により得られた放射性核種の抽出除去された有機成分を、酸化剤の存在下で酸化分解する酸化分解手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項9】
前記酸化分解手段が、燃焼炉又は超臨界水酸化分解装置であることを特徴とする請求項8に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項10】
前記酸化分解手段が、前記分離手段での逆抽出により得られた放射性核種の抽出除去された有機成分を加熱して、前記溶媒抽出剤又は前記溶媒抽出剤の一成分と、前記溶媒抽出剤又は前記溶媒抽出剤の一成分が除去された残余有機成分と、に分離する濃縮器と、
前記濃縮器により分離された前記残余有機成分を酸化剤の存在下で酸化分解する燃焼炉又は超臨界水酸化分解装置と、
を具備することを特徴とする請求項8に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項11】
前記放射性核種が、60Co及び/又は58Coであり、前記溶媒抽出剤が、4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンを有機溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項12】
有機化合物を含有する放射性廃液と前記放射性廃液から放射性核種を抽出する溶媒抽出剤とを超臨界二酸化炭素に接触させて、前記放射性核種を含む有機成分を前記超臨界二酸化炭素中に溶解抽出させる抽出工程と、
前記抽出工程により前記放射性核種を含む有機成分を抽出した超臨界二酸化炭素を、減圧又は昇温後に減圧することにより前記超臨界二酸化炭素中から前記放射性核種を含む有機成分を分離し、この分離した放射性核種を含む有機成分を鉱酸水溶液と接触させて、前記鉱酸水溶液中に前記放射性核種を逆抽出して分離する分離工程と、
前記抽出工程により前記有機化合物及び前記放射性核種が除去された放射性廃液と、水硬性無機固化材と、を混合して固化する固化工程と、
を含むことを特徴とする放射性廃液の処理方法。
【請求項13】
前記分離工程での逆抽出により得られた放射性核種が抽出除去された有機成分を、酸化剤の存在下で酸化分解する酸化分解工程をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項14】
前記分離工程での逆抽出により得られた放射性核種の抽出除去された有機成分を加熱して、前記溶媒抽出剤又は前記溶媒抽出剤の一成分と、前記溶媒抽出剤又は前記溶媒抽出剤の一成分が除去された残余有機成分と、に分離し、前記残余有機成分を酸化剤の存在下で酸化分解する酸化分解工程をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項15】
前記放射性核種が、60Co及び/又は58Coであり、前記溶媒抽出剤が、4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンを有機溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界二酸化炭素を用いて有機化合物を含有する放射性廃液中から放射性核種と有機化合物を抽出し分離する放射性廃液の処理装置及びその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設等より発生する放射性廃液は、使用済燃料の再処理工程等から排出される高いレベルの放射能を有する高レベル放射性廃液、放射性レベルが10−3〜10−6μCi/mlである低レベル放射性廃液、それ以外の中間のレベルとなる中レベル放射性廃液とに分類されている。このうち、セメント固化方法は放射性廃液をセメント等とともにドラム缶中に充填して一体に固化する方法であり、安価で処理が容易なために低レベルの放射性廃棄物の処理に汎用されている。
【0003】
中レベル放射性廃棄物は、低レベル放射性廃棄物のように浅地中に処分することが困難とされている。中レベル放射性廃棄物は、安全性の確保のため、建造物の基礎などの一般的な地下利用に対しても十分に余裕を持った深度(例えば50〜100m程度)に、埋設し処分することが我国でも検討されており、安価な処理が困難とされている。
【0004】
また、中レベル放射性廃棄物についても、セメント固化の可能性が検討されているが、放射性レベルが高いとセメント固化体から水素等が発生してドラム缶内の圧力を上昇させる懸念がある。すなわち、セメント固化体中には、間隙水や結晶水などの水分が存在するが、放射性廃棄物に含有される放射性核種濃度が比較的高いとこれらの水が放射線分解して水素等のガスが発生し、長期の保管中にはドラム缶内の圧力上昇を引き起こし処分場の健全性に影響を及ぼすことも想定される。
【0005】
さらに、放射性廃液の中には、有機化合物と接触履歴を持つ廃液が存在し、この有機化合物が放射性廃液に溶存している場合がある。長期的安定性やセメントへの放射性核種保持性の観点から有機化合物を含有する放射性廃液をそのままセメント固化するのは好ましくない。
【0006】
特に、放射性廃液の中には、塩化ビニル樹脂との接触履歴を持つ廃液が存在し、塩化ビニル樹脂に含まれるフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)に代表されるフタル酸エステル系可塑剤が微量に放射性廃液中に溶存している場合がある。
最近、いわゆる環境ホルモンに対する関心が高まる中で、このような可塑剤が人体や生態系に影響を与えるとの報告がなされてきている。したがって、このような可塑剤を含む放射性廃液を、セメント等の水硬性無機固化材で固化して埋設処分すると、可塑剤が長年の間に溶出し、周辺環境に悪影響を及ぼすことも想定される。
【0007】
一方、超臨界二酸化炭素は有機物とよく混ざり合い有機物をよく溶解する性質があることから、有機物の抽出・分離媒体として開発が進められてきた。主に1970年代に食品・医療分野で開発が進み、例えば西ドイツやアメリカでコーヒーの脱カフェイン、ホップエッセンス抽出などの商業プロセスが稼動している。そして、近年は、原子力分野においても、硝酸ウラニル溶液に、リン酸トリブチル(TBP)を溶解した超臨界二酸化炭素を接触させて、無機物であるウランを抽出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、廃棄物処理の分野でも、超臨界二酸化炭素を接触させて有害物質を分離する技術が検討されており、例えば、ポリ塩化ビフェニル(PCB)汚染機器から超臨界二酸化炭素を用いてPCBを分離する方法(例えば、特許文献2参照。)が、提案されている。
【特許文献1】特開平8−82696号公報
【特許文献2】特開2000−61410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者の超臨界二酸化炭素を利用した抽出技術は、次世代の燃料再生処理方法として検討がなされているものであり、使用済みウラン燃料からウランの回収を目的としたものである。また、後者の超臨界二酸化炭素を利用した廃棄物処理技術は、放射性物質を含有しない廃棄物を対象とした技術である。有機化合物を含む中レベルの放射性廃液を、超臨界流体を利用して、安全かつ安価に処理する技術は未だ提案されていない。
【0009】
そこで、本発明は、有機化合物を含む中レベル放射性廃液を、安全かつ安価に処理することができる放射性廃液の処理装置及びその処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る放射性廃液の処理装置は、有機化合物を含有する放射性廃液と前記放射性廃液から放射性核種を抽出する溶媒抽出剤とを超臨界二酸化炭素に接触させて、前記放射性核種を含む有機成分を前記超臨界二酸化炭素中に溶解抽出させる抽出手段と、前記抽出手段により前記放射性核種を含む有機成分を抽出した超臨界二酸化炭素を、減圧又は昇温後に減圧することにより前記超臨界二酸化炭素中から前記放射性核種を含む有機成分を分離し、この分離した放射性核種を含む有機成分を鉱酸水溶液と接触させて、前記鉱酸水溶液中に前記放射性核種を逆抽出して分離する分離手段と、前記抽出手段により前記有機化合物及び前記放射性核種が除去された放射性廃液と、水硬性無機固化材と、を混合して固化する固化手段と、を具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る放射性廃液の処理方法は、有機化合物を含有する放射性廃液と前記放射性廃液から放射性核種を抽出する溶媒抽出剤とを超臨界二酸化炭素に接触させて、前記放射性核種を含む有機成分を前記超臨界二酸化炭素中に溶解抽出させる抽出工程と、前記抽出工程により前記放射性核種を含む有機成分を抽出した超臨界二酸化炭素を、減圧又は昇温後に減圧することにより前記超臨界二酸化炭素中から前記放射性核種を含む有機成分を分離し、この分離した放射性核種を含む有機成分を鉱酸水溶液と接触させて、前記鉱酸水溶液中に前記放射性核種を逆抽出して分離する分離工程と、前記抽出工程により前記有機化合物及び前記放射性核種が除去された放射性廃液と、水硬性無機固化材と、を混合して固化する固化工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機化合物を含む中レベル放射性廃液を、安全かつ安価に処理することができる放射性廃液の処理装置及びその処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る放射性廃液の処理装置1の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の放射性廃液の処理装置1は、抽出槽10と、超臨界二酸化炭素供給装置11と、溶媒抽出剤供給装置12と、予熱器13と、恒温槽14と、減圧器15と、逆抽出槽16と、酸化分解手段17と、固化手段18と、二酸化炭素戻しライン19aと、放射性廃液回収ライン19bとを備えている。
【0016】
抽出槽10と超臨界二酸化炭素供給装置11と溶媒抽出剤供給装置12と予熱器13と恒温槽14は、抽出手段として機能する。
抽出槽10は、有機化合物を含有する放射性廃液3と放射性廃液3中から放射性核種を抽出する溶媒抽出剤とを超臨界状態の二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)に接触させて、放射性核種を含む有機成分(溶媒抽出剤と放射性廃液3中の有機化合物)を超臨界二酸化炭素中に溶解抽出させる槽である。抽出槽10は恒温槽14内に設けられている。
超臨界二酸化炭素供給装置11は、抽出槽10内に超臨界二酸化炭素を連続的に供給するものであり、溶媒抽出剤供給装置12は、溶媒抽出剤を供給するものである。
【0017】
予熱器13は、超臨界二酸化炭素等を加熱して抽出槽10に導入することにより、抽出槽10内の温度が一定の温度となるようにコントロールするものであり、恒温槽14は、抽出槽10を収容し、抽出槽10内の温度を一定に保つものである。
【0018】
本発明に用いる放射性廃液3としては、例えば、中レベル放射性廃液が適用できる。本明細書中において中レベル放射性廃液は、放射性レベルが10−3〜10−6μCi/mlであるいわゆる低レベル放射性廃液よりも、放射性レベルの高い放射性廃液をいい、例えば、余裕深度処分がなされる放射性廃液(いわゆるL1廃棄物)が挙げられる。
【0019】
本発明が適用される放射性廃液中の放射性核種は、特に限定されないが、例えば、60Co(半減期5.3年)や58Co(半減期70.8日)等の半減期が比較的短い放射性核種が好ましい。
【0020】
本発明に用いる放射性核種を抽出する溶媒抽出剤としては、例えば、4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンをトルエン等の有機溶媒に溶解させたもの、リン酸トリブチル、トリイソオクチルアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジイソデシルリン酸(DIDPA)等が挙げられる。放射性廃液3中から除去する目的の放射性核種の種類に応じて、溶媒抽出剤を選定すればよい。
【0021】
放射性廃液3中に含有される有機化合物(以下、有機化合物とする)は、特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂に含まれるフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)に代表されるフタル酸エステル系可塑剤等の非ハロゲン系有機化合物を挙げることができる。
【0022】
有機化合物を含む放射性廃液3は、予め抽出槽10内に投入される。この抽出槽10内に、超臨界二酸化炭素供給装置11により超臨界二酸化炭素が、溶媒抽出剤供給装置12により溶媒抽出剤が、連続的に供給される。なお、図1では、溶媒抽出剤は超臨界二酸化炭素供給装置11から供給される超臨界二酸化炭素と予め混合されて抽出槽10に供給されるよう構成されているが、超臨界二酸化炭素を供給するラインと別のラインから、抽出槽10に直接導入されるようにしてもよい。また、予め放射性廃液3とともに溶媒抽出剤を抽出槽10内に投入しておき、攪拌し、放射性核種を溶媒抽出剤に抽出させた後に超臨界二酸化炭素を供給してもよい。しかしながら、設備のコンパクト化などの観点から、図1に示すように、共通のラインで超臨界二酸化炭素とともに予熱器13を通して抽出槽10内に供給されるように構成するか、或いは、コストの低減などの観点から、予め放射性廃液3とともに溶媒抽出剤を抽出槽10内に投入し攪拌した後に超臨界二酸化炭素を供給することが好ましい。
【0023】
超臨界二酸化炭素と溶媒抽出剤は、予熱器13で加熱され、また、抽出槽10は恒温槽14内に設けられており、抽出槽10内の温度が一定の温度となるようにコントロールされる。抽出槽10内の温度および圧力は、二酸化炭素の超臨界状態を維持するため、二酸化炭素の臨界温度(約31℃)および臨界圧力(約7.3MPa)以上に保たれる。抽出槽10内の温度および圧力は、設備コストやエネルギーコストを低減する観点から、それぞれ二酸化炭素の臨界温度以上80℃以下、臨界圧力以上30MPa以下の範囲とすることが好ましい。抽出槽10において有機化合物を含む放射性廃液3が、溶媒抽出剤を溶解した超臨界二酸化炭素に接触すると、溶媒抽出剤によって特定の放射性核種が選択的に抽出されるため、この放射性核種を含む有機成分(溶媒抽出剤と放射性廃液3中の有機化合物)が超臨界二酸化炭素中に溶解し抽出される。
【0024】
放射性核種は無機物のため、超臨界二酸化炭素中への溶解度は低いが、溶媒抽出剤を添加すると、放射性核種は溶媒抽出剤と有機金属錯体を生成して超臨界二酸化炭素中への溶解度が上昇し、放射性廃液中の有機化合物とともに超臨界二酸化炭素中へ抽出することが可能になる。ここで、放射性核種として60Co、58Co等のコバルトを例とし、溶媒抽出剤として包接化合物の4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンのトルエン溶液を用いた場合の抽出の原理を以下に示す。
【0025】
水の中に存在する60Coや58Co等のコバルトイオンは4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンのトルエン溶液が存在すると、コバルトイオンと4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンの有機金属錯体を生成し、水溶液から分離される。水溶液から分離された有機金属錯体は超臨界二酸化炭素に溶解し、水溶液中から60Coや58Coを抽出することができる。このように、60Coや58Coが放射性廃液中に存在する場合には、4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンのトルエン溶液と接触させることにより、放射性廃液中から放射性核種60Coや58Coを抽出することができる。この場合、放射性廃液は、中性又はアルカリ性であることが好ましく、pHが10以上のアルカリ性であることがさらに好ましい。
【0026】
減圧器15と逆抽出槽16は、分離手段として機能する。
減圧器15は、抽出槽10から排出された放射性核種を含む有機成分を溶解した超臨界二酸化炭素を減圧して、放射性核種を含む有機成分と、二酸化炭素に分離するものである。
逆抽出槽16は、減圧器15により分離された二酸化炭素を選択的に排出し、減圧器15により分離された放射性核種を含む有機成分を、鉱酸水溶液と接触させて放射性核種を鉱酸水溶液中に逆抽出する槽である。
【0027】
放射性核種を含む有機成分を溶解した超臨界二酸化炭素は、抽出槽10から連続的に排出され、減圧器13で大気圧まで減圧されると、溶解していた放射性核種を含む有機成分が二酸化炭素から分離される。この二酸化炭素のみが逆抽出槽16から二酸化炭素戻しライン19aによって選択的に排出され、超臨界二酸化炭素供給装置11の入口に導入されて、再利用に供される。放射性核種を含む有機成分は逆抽出槽16に送られて鉱酸添加手段(図示せず)によって投入された鉱酸水溶液と接触し攪拌器(図示せず)によって攪拌され、放射性核種は鉱酸水溶液中に逆抽出される。逆抽出槽16で分離された放射性核種を含む鉱酸水溶液は、随時、バルブから回収され、放射能の減衰を待って別途セメント固化される。一方、逆抽出槽16に回収された放射性核種が抽出除去された有機成分は、回収されて再利用に供されるか、或いは、後述する酸化分解手段17に導入され酸化分解される。
【0028】
酸化分解手段17は、逆抽出槽16に回収された放射性核種の抽出除去された有機成分を酸化剤の存在下で酸化分解するものであり、例えば、燃焼炉若しくは超臨界水酸化分解装置等、濃縮器等及び燃焼炉、又は濃縮器等及び超臨界水酸化分解装置等を備えている。
【0029】
燃焼炉は、酸化剤として空気を導入しつつ有機成分を焼却するものである。
超臨界水酸化分解装置は、超臨界水を利用した酸化分解装置である。水は超臨界状態では良好な溶媒となるため、超臨界水と有機成分と酸化剤が均一相を形成して、超臨界水酸化反応が進行し、有機成分は極めて短時間の間に酸化分解される。その場合の反応温度および反応圧力としては、それぞれ水の臨界温度以上500℃以下、水の臨界圧力以上30MPa以下の範囲で調整することが好ましい。また、酸化剤としては、空気や酸素の他、過酸化水素水などが使用される。
濃縮器は、分離手段での逆抽出により得られた放射性核種の抽出除去された有機成分を加熱して、溶媒抽出剤又は前記溶媒抽出剤の一成分と、前記溶媒抽出剤又は前記溶媒抽出剤の一成分が除去された残余有機成分とに分離するものである。
【0030】
逆抽出槽16に回収された放射性核種の抽出除去された有機成分は、燃焼炉等の酸化分解手段17に導入され、酸化剤の存在下で酸化分解され、主に水と二酸化炭素に分解され、排出ライン(図示せず)により排出される。
【0031】
なお、逆抽出槽16に回収された放射性核種の抽出除去された有機成分を、濃縮器(図示せず)によって加熱し、溶媒抽出剤又は溶媒抽出剤の一成分と、溶媒抽出剤又は溶媒抽出剤の一成分が除去された残余有機成分とに分離して、溶媒抽出剤又は溶媒抽出剤の一成分を回収して再利用に供し、残余有機成分を酸化剤の存在下で燃焼炉等により酸化分解してもよい。
【0032】
溶媒抽出剤が、例えば、4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンのトルエン溶液の場合には、有機成分を濃縮器により加熱し、高沸点の4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンを分離回収して再利用に供し、残余有機成分を酸化剤の存在下で燃焼炉等により酸化分解してもよい。
【0033】
また、放射性廃液3中の有機化合物が有害物質、例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等の場合には、超臨界二酸化炭素によって放射性廃液3から抽出したフタル酸ジ−2−エチルヘキシルを、酸化分解手段17によって分解処理し無害化することができ、有害物質を安全に処理できるので、酸化分解手段17による分解処理が特に有効である。
【0034】
固化手段18は、抽出手段により有機化合物及び放射性核種の除去された放射性廃液3を、水硬性無機固化材と混合して固化するものである。固化手段18は、例えば、放射性廃液回収ライン19bと、水硬性無機固化材供給手段(図示せず)と、水供給手段(図示せず)と、ミキサー(図示せず)とを備えている。
【0035】
放射性廃液回収ライン19bは、抽出手段により有機化合物及び放射性核種の除去された放射性廃液3を、ミキサーに供給するラインである。
水硬性無機固化材供給手段は、水硬性無機固化材をミキサーに供給するものであり、水供給手段は、必要に応じて水をミキサーに供給するものである。
ミキサーは、有機化合物及び放射性核種の除去された放射性廃液3と、水硬性無機固化材と、必要に応じて水とを混合するものである。
【0036】
水硬性無機固化材は、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等の各種混合セメント、アルミナセメント等の特殊セメント等の各種セメントを用いることができる。水硬性無機固化材は、必要に応じて骨材、各種混和材(剤)等を含有することができる。
【0037】
放射性廃液回収ライン19bにより供給された有機化合物及び放射性核種の除去された放射性廃液3と、水硬性無機固化材供給手段により供給された水硬性無機固化材と、必要に応じて水供給手段により供給された水とをミキサーで混練する。混練物をドラム缶等の処分容器に流し込み、この処分容器内でそのまま固化体とすれば、そのままの形で固化処理物のユニットとして扱うことができる。
【0038】
溶媒抽出剤は特定の放射性核種を選択的に抽出するため、溶媒抽出剤を含む超臨界二酸化炭素による抽出によって、有機化合物及び放射性核種の除去された放射性廃液3には、その溶媒抽出剤によって抽出されない放射性核種が含まれている可能性がある。しかし、溶媒抽出剤により除去目的の放射性核種が除去されているため、溶媒抽出剤を含む超臨界二酸化炭素によって処理された放射性廃液3の放射性レベルは低下している。放射性廃液3が、例えば、中レベル放射性廃液の場合であっても、溶媒抽出剤を含む超臨界二酸化炭素による処理によって、放射性レベルを低下させ低レベルの放射性廃液3にしてセメント固化することができる。また、放射性廃液3から抽出され、分離された放射性核種は、放射能の減衰を待って低レベル放射性廃液にしてから別途セメント固化できる。そのため、放射性廃液の処理装置1によれば、中レベル放射性廃液の安全かつ安価な処理が可能である。減衰の待ち時間を短くできるため、放射性廃液3から抽出され分離される放射性核種は60Co(半減期5.3年)や58Co(半減期70.8日)等の半減期が比較的短いものが好ましい。
【0039】
また、超臨界二酸化炭素を接触させることによって放射性廃液3中の有機化合物を除去できるため、超臨界二酸化炭素による処理後の放射性廃液3をセメント固化した場合に、セメントへの放射性核種保持性の低下等の有機化合物による影響を防止することができる。
【0040】
特に、放射性廃液3中の有機化合物に有害物質、例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が含まれている場合には、放射性廃液3からフタル酸ジ−2−エチルヘキシルを超臨界二酸化炭素により抽出除去できるため、放射性廃液3のセメント固化体を埋設しても、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルが溶出することはなく、安全かつ安価に処理することができる。
【0041】
本実施形態の放射性廃液の処理装置1は、60Co(半減期5.3年)や58Co(半減期70.8日)等の半減期が比較的短い放射性核種と有機化合物を含む中レベル放射性廃液の処理に好適である。
【0042】
本実施形態の放射性廃液の処理装置1によれば、溶媒抽出剤を含む超臨界二酸化炭素を接触させて、例えば、中レベル放射性廃液中から60Coや58Co等の放射性核種を選択的に抽出除去し、放射性廃液3の放射性レベルを低下させて、低レベル放射性廃液にしてセメント固化することが可能になる。また、放射性廃液中から抽出除去され分離された、例えば、60Coや58Co等の放射性核種は放射能の減衰を待って低レベル放射性廃液にして別途セメント固化することができる。これにより、中レベル放射性廃液の安全かつ安価な処理が可能になる。
また、二酸化炭素戻しライン19aを備えており、二酸化炭素を繰り返し使用できるため、二酸化炭素の使用量を実質的に低減することができる。
【0043】
本実施形態の放射性廃液の処理装置1は、放射性核種の系外への漏洩を防止し、安全な処理を行うため、少なくとも超臨界二酸化炭素供給装置11、溶媒抽出剤供給装置12、抽出槽10、減圧器15および超臨界水酸化分解装置(用いた場合)は、負圧に制御されたフードあるいはグローブボックスなどの箱の中に設置することが好ましく、装置全体を負圧に制御した箱の中に設置することがより好ましい。
【0044】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る放射性廃液の処理装置2の構成および流体の流れを概略的に示す図であり、図1に共通する部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
図2に示すように、本実施形態の放射性廃液の処理装置2は、分離回収槽20と、予熱器21と、第2の恒温槽22と、減圧器23、24と、超臨界二酸化炭素戻しライン25を備えている。他の構成は、図1に示した第1の実施形態と同じである。
【0046】
分離回収槽20と、予熱器21と、第2の恒温槽22と、減圧器23、24と、逆抽出槽16は、分離手段として機能する。
分離回収槽20は、抽出槽10と減圧器23、24の間に備えられ、抽出槽10から排出された放射性核種を含む有機成分を溶解した超臨界二酸化炭素を昇温させて、この超臨界二酸化炭素中から放射性核種を含む有機成分を分離するものである。
予熱器21は、抽出槽10から排出された超臨界二酸化炭素を加熱して分離回収槽20に導入することにより、分離回収槽20内の温度が一定の温度となるようにコントロールするものである。
【0047】
第2の恒温槽22は、分離回収槽20を収容し、分離回収槽20内の温度を一定に保つ槽である。
減圧器23、24は、分離回収槽20により分離された放射性核種を含む有機成分と、放射性核種を含む有機成分が残存している超臨界二酸化炭素を減圧するものである。この放射性核種を含む有機成分が残存している超臨界二酸化炭素は、減圧されて放射性核種を含む有機成分と二酸化炭素に分離される。
超臨界二酸化炭素戻しライン25は、超臨界二酸化炭素の一部(大部分であっても、全部であってもよい)を、分離回収槽20から予熱器13の上流に戻すラインである。
【0048】
抽出槽10から排出された放射性核種を含む有機成分を溶解している超臨界二酸化炭素は、予熱器21で加熱された後、分離回収槽20に導入される。第2の恒温槽22に収容されている分離回収槽20内は、抽出槽10内とほぼ同じ圧力で、抽出槽10より高温に保たれており、この温度差により、放射性核種を含む有機成分が超臨界二酸化炭素中から分離される。
【0049】
ここで、その原理を説明する。超臨界二酸化炭素中の有機成分の溶解度と超臨界二酸化炭素の密度との関係は、例えば下記(1)式で与えられる。
ln(y2)=aln(ρ)+b …(1)
y2:溶解度(モル分率)
ρ:超臨界二酸化炭素密度[kg/m
a,b:定数
(1)式に示すように、有機成分の溶解度と超臨界二酸化炭素の密度の両対数プロットを取ると良好な直線関係を示す。そして、超臨界二酸化炭素の密度ρは、表1に示すように、温度と圧力により変化し、圧力が同じ場合、温度が上昇するほど小さくなる。表2は、圧力10MPaで温度が40℃、60℃および80℃のときの溶解度を(1)式(a=4、b=−30として)より算出した結果を示したものである。
【0050】
【表1】


【0051】
【表2】


【0052】
表2から明らかなように、60℃および80℃のときの溶解度は40℃のときのそれぞれ約1/10および約1/25となっている。したがって、圧力を一定とし、温度を上昇させるだけで超臨界二酸化炭素中から放射性核種を含む有機成分を分離回収することができる。なお、温度は20℃以上高くすることが好ましく、40℃以上高くすることがより好ましい。
【0053】
分離回収槽20で分離された放射性核種を含む有機成分は、随時、減圧器23、24で大気圧まで減圧した後、逆抽出槽16に回収される。
【0054】
一方、分離回収槽20から排出される超臨界二酸化炭素は、抽出槽10から排出された放射性核種を含む有機成分を溶解している超臨界二酸化炭素から、大部分の放射性核種を含む有機成分が除去された超臨界二酸化炭素であり、その大部分は超臨界二酸化炭素戻しライン25から予熱器13の上流に戻され、再利用に供される。再利用に供されない残りの超臨界二酸化炭素は放射性核種を含む有機成分を残存しているため、減圧器23、24で大気圧まで減圧されると、二酸化炭素と、放射性核種を含む有機成分とに分離する。この放射性核種を含む有機成分も逆抽出槽16に回収される。二酸化炭素は選択的に二酸化炭素戻しライン19aにより逆抽出槽16から超臨界二酸化炭素供給装置11の入口に戻されて再利用に供される。
【0055】
逆抽出槽16に回収された放射性核種を含む有機成分は、鉱酸添加手段(図示せず)によって投入された鉱酸水溶液と接触し攪拌器(図示せず)によって攪拌され、放射性核種は鉱酸水溶液中に逆抽出される。この放射性核種を含む鉱酸水溶液は、随時、バルブにより逆抽出槽16から回収され、放射能の減衰を待って別途セメント固化される。
【0056】
一方、逆抽出槽16に回収された放射性核種が抽出除去された有機成分は、回収されて再利用に供されるか、或いは、後述する酸化分解手段17に導入される。
【0057】
本実施形態の放射性廃液の処理装置2は、60Co(半減期5.3年)や58Co(半減期70.8日)等の半減期が比較的短い放射性核種と有機化合物を含む中レベル放射性廃液の処理に好適である。
【0058】
本実施形態の放射性廃液の処理装置2によれば、溶媒抽出剤を含む超臨界二酸化炭素を接触させて、例えば、中レベル放射性廃液中から60Coや58Co等の放射性核種を選択的に抽出除去し、放射性廃液3の放射性レベルを低下させて、低レベル放射性廃液にしてセメント固化することが可能になる。また、放射性廃液中から抽出除去され分離された、例えば、60Coや58Co等の放射性核種は放射能の減衰を待って低レベル放射性廃液にして別途セメント固化することができる。これにより、中レベル放射性廃液の安全かつ安価な処理が可能になる。
また、二酸化炭素戻しライン19aを備えており、二酸化炭素を繰り返し使用できるため、二酸化炭素の使用量を実質的に低減することができる。
また、減圧器23、24で減圧する前に放射性核種を含む有機成分の大部分を分離回収できるため、逆抽出槽16にかかる負荷を軽減することができる。
さらに、減圧器23、24で減圧する前に放射性核種を含む有機成分の大部分が超臨界二酸化炭素中から除去されるため、超臨界二酸化炭素を抽出槽10に導入して再利用することができ、二酸化炭素の使用量を低減することができるとともに、超臨界二酸化炭素供給装置11の負荷を軽減することができる。
【0059】
放射性核種の系外への漏洩を防止し、安全な処理を行うため、少なくとも超臨界二酸化炭素供給装置11、溶媒抽出剤供給装置12、抽出槽10、分離回収槽20、減圧器23,24および超臨界水酸化分解装置(用いた場合)は、負圧に制御されたフードあるいはグローブボックスなどの箱の中に設置することが好ましく、装置全体を負圧に制御した箱の中に設置することがより好ましい。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
模擬放射性廃液としてCoイオンが1.2ppm含まれているCo水溶液10mlと、溶媒抽出剤として濃度1.0g/Lの4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンのトルエン溶液10mlを加圧容器に投入し20分間攪拌した。Coイオンと4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンの有機金属錯体が生成した時に起こる発色(ピンク色)があり、溶媒抽出剤にCoイオンが抽出されたことが目視で確認された。攪拌後、超臨界二酸化炭素を5ml/minの流量で加圧容器に連続的に圧入し、温度40℃、圧力30MPaで30分間抽出処理した。Coイオンを含む4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンのトルエン溶液は超臨界二酸化炭素中に溶解し抽出され、加圧容器から除去されたことが確認できた。
【0061】
(実施例2)
模擬放射性廃液として、Coイオンが2.0ppm含まれており、pHが3〜10.5の範囲にある7種類のCo水溶液をそれぞれ50ml用意した。pHの調整は塩酸又は水酸化ナトリウム溶液を添加することにより行った。pHが異なる7種類の模擬放射性廃液のCo水溶液をそれぞれ50mlと、溶媒抽出剤として、濃度1.0g/Lの4−tert−ブチルチアカリックス[4]アレーンのトルエン溶液5〜10mlを加圧容器に投入し5分間攪拌した。攪拌後、pHが異なる7種類の模擬放射性廃液それぞれについて、超臨界二酸化炭素を5ml/minの流量で加圧容器に連続的に圧入し、温度40℃、圧力30MPaで20分間抽出処理した。
【0062】
超臨界二酸化炭素による抽出後の模擬放射性廃液中のCoイオンの濃度をICP発光分光分析法により測定し、下記の式(2)から、7種類の模擬放射性廃液それぞれについてCoイオンの除去効果を現す除染係数DFを算出した。得られた結果を図3に示す。
【0063】
【数1】


【0064】
図3は、模擬放射性廃液のpHとCoイオンの除染係数DFとの関係を示す図である。図3において除染係数DFが大きい値であるほど、溶媒抽出剤及び超臨界二酸化炭素によるCoイオンの抽出除去能力が高いことを示している。Coイオンの除染係数DFは、中性又はアルカリ性において大きい値を示し、特に、pH10以上のアルカリ性で50以上を示し、模擬放射性廃液からのCoイオンの抽出除去がこの領域で効果的に行われていることを示している。
【0065】
(実施例3)
実施例1で得られたCoイオンを含む溶媒抽出剤を溶解した超臨界二酸化炭素を減圧し、Coイオンを含む溶媒抽出剤を得た。この溶媒抽出剤中のCoイオン濃度をICP発光分光分析法により測定したところ4.60ppmであった。この溶媒抽出剤10mlに酸性水溶液10mlを常温で接触させ、Coを逆抽出した。使用した酸は鉱酸である0.1M−HCl、2.0M−HCl、0.1M−HSO、2.0M−HSO、0.1M−HNOを用いた。接触(攪拌)時間は10分間とした。得られた結果を表3に示す。
【0066】
【表3】


【0067】
表3から明らかなように、2M塩酸による逆抽出によって、ほぼ全量のCoイオンを溶媒抽出剤から回収できることが示され、塩酸を逆抽出剤として用いれば、溶媒抽出剤からCoを効果的に抽出除去できることが認められた。
【0068】
(実施例4)
溶媒抽出剤と超臨界二酸化炭素による抽出処理済みの模擬放射性廃液として、5%硫酸ナトリウム、5%塩化ナトリウム、5%硝酸ナトリウム水溶液をそれぞれ120ml用意した。3種類のそれぞれの水溶液120mlに対して、普通ポルトランドセメント250gを10分間混練し、円柱状の型枠に混練物を注入し、20℃で飽和水蒸気下において28日間養生した。
養生後のいずれの固化体も、外観の観察により余剰水が発生していないことを確認した。また、この3種類の固化体の一軸圧縮強度を測定したところ、いずれも350kg/cm以上の強度を有しており、評価基準値とされる15kg/cm(1.5MPa)を上回ることが確認された。以上より、本発明によって放射性核種の除去された放射性廃液のセメント固化が可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放射性廃液の処理装置の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る放射性廃液の処理装置の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【図3】模擬放射性廃液のpHとCoイオンの除染係数DFとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1,2…放射性廃液の処理装置、3…放射性廃液、10…抽出槽、11…溶媒抽出剤供給装置、12…超臨界二酸化炭素供給装置、13,21…予熱器、14…恒温槽、15,23,24…減圧器、16…逆抽出槽、17…酸化分解手段、18…固化手段、19a…二酸化炭素戻しライン、19b…放射性廃液回収ライン、20…分離回収槽、22…第2の恒温槽、25…超臨界二酸化炭素戻しライン。




 

 


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