Warning: copy(.htaccess): failed to open stream: Permission denied in /home/jp321/public_html/header.php on line 8
ウラン廃棄物の処理方法 - 株式会社東芝
米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 核技術 -> 株式会社東芝

発明の名称 ウラン廃棄物の処理方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−187464(P2007−187464A)
公開日 平成19年7月26日(2007.7.26)
出願番号 特願2006−3635(P2006−3635)
出願日 平成18年1月11日(2006.1.11)
代理人 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久
発明者 矢坂 由美 / 酒井 仁志 / 遠田 正見
要約 課題
ウラン廃棄物を処理する際に、二次廃棄物の発生を低減するとともに、二次廃棄物の処理コストを低減することを目的とする。

解決手段
ウランが付着した廃棄物を酸で除染した除染廃液や、フッ化物を含有するウラン廃棄物を酸で溶解した溶液から、ウランを分離回収する処理方法において、前記溶液に、精製される沈殿物に不純物が混入するのを防止するためのマスク剤を添加するマスク剤添加工程1と、このマスク剤添加工程後の溶液中のウランを沈殿等により分離する主ウラン除去工程2と、この主ウラン除去工程2後の溶液に残留したウランをイオン交換樹脂や吸着剤により除去する残留ウラン除去工程3と、この残留ウラン除去工程3後の溶液を中和処理する中和工程4と、前記マスク剤を前記中和工程4で生成する中和塩から分離するマスク剤分離工程5とを具備する。
特許請求の範囲
【請求項1】
ウランが付着した廃棄物を酸で除染した除染廃液や、フッ化物を含有するウラン廃棄物を酸で溶解した溶液から、ウランを分離回収する処理方法において、
前記溶液に、生成される沈殿物に不純物が混入するのを防止するためのマスク剤を添加するマスク剤添加工程と、
このマスク剤添加工程後の溶液中のウランを沈殿処理により分離する主ウラン除去工程と、
この主ウラン除去工程後の溶液に残留したウランをイオン交換樹脂や吸着剤により除去する残留ウラン除去工程と、
この残留ウラン除去工程後の溶液を中和処理する中和工程と、
前記マスク剤を前記中和工程で生成する中和塩から分離するマスク剤分離工程と
を具備するウラン廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記ウランが付着した廃棄物を除染する酸や、ウラン廃棄物を溶解する酸として、有機酸を単独あるいは混合して用いることを特徴とする請求項1記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記マスク剤が、マスク剤元素となるZr、Th、Ti、Sc、Al、B、Be、Feのいずれかの元素の単体あるいは化合物を、単独あるいは混合して用いることを特徴とする請求項1記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記マスク剤として、前記マスク剤元素の単体を酸に溶解して得られる溶液を、単独あるいは混合して用いることを特徴とする請求項3記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記マスク剤として、前記マスク剤元素の単体を酸溶液中で電解溶解し得られる溶液を、単独あるいは混合して用いることを特徴とする請求項3記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記マスク剤として、前記マスク剤元素の水酸化物を酸により溶解し得られる溶液を、単独あるいは混合して用いることを特徴とする請求項3記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項7】
前記マスク剤元素の溶解に、ウラン廃棄物の除染や溶解に用いる酸と同一の酸を用いることを特徴とする請求項4〜6のいずれか記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項8】
前記マスク剤元素の水酸化物が水酸化アルミニウムであり、この水酸化アルミニウムを50℃以上に加温した5〜15モル濃度のギ酸により溶解し得られる溶液を用いることを特徴とする請求項6記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項9】
前記マスク剤として、前記マスク剤元素の有機酸塩を用いることを特徴とする請求項3記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項10】
前記マスク剤元素の有機酸塩は、マスク剤元素の硫酸塩とバリウムの有機酸塩とを反応させることにより生成されることを特徴とする請求項9記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項11】
前記マスク剤がアルミニウム化合物であり、前記マスク剤分離工程において、中和工程で生成する中和塩を酸溶液あるいはアルカリ溶液でアルミニウム成分を溶解して分離し、再利用することを特徴とする請求項1記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項12】
前記アルミニウム化合物のアルミニウム成分を溶解する酸溶液はpH3〜4の酸溶液であることを特徴とする請求項11記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項13】
前記アルミニウム化合物のアルミニウム成分を溶解するアルカリ溶液はpH11〜14のアルカリ溶液であることを特徴とする請求項11記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項14】
前記アルミニウム化合物のアルミニウム成分を溶解する酸溶液は、ウラン廃棄物の除染や溶解に用いる酸と同一の酸であることを特徴とする請求項11記載のウラン廃棄物の処理方法。
【請求項15】
前記中和工程において、前記残留ウラン除去工程後の溶液にカルシウムの有機酸塩を添加することにより、溶液中に含まれるフッ素をフッ化カルシウムとして沈殿させることを特徴とする請求項1記載のウラン廃棄物の処理方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウラン等の放射性物質で汚染されたウラン廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウランまたはウラン化合物が付着した金属廃棄物の除染方法について、硫酸で除染する方法(特許文献1参照)、有機酸で除染する方法(特許文献2参照)、シュウ酸で除染する方法(特許文献3参照)が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1〜3で示される方法では、ウランが付着した金属廃棄物の除染により発生する二次廃棄物について、有用な処理方法が提案されていない。
【0004】
例えば特許文献1では、二次廃棄物について言及されていないが、硫酸を処理する場合に通常であれば中和処理が必要となるため、ウランを含む大量の中和塩が二次廃棄物として発生することが想定される。
【0005】
また、特許文献2では、放射性金属廃棄物の除染に有機酸を用いて、除染廃液中に溶出した金属分をイオン交換樹脂で回収するが、回収後のイオン交換樹脂を硫酸で再生するため硫酸を処理する必要があり、中和処理により中和塩が二次廃棄物として発生することが想定される。
【0006】
さらに、特許文献3では、過酸化水素とシュウ酸を混合した除染液を用いるものであり、蒸留により水分を分離して二次廃棄物となるシュウ酸ウラニルおよびシュウ酸が回収され、これらが二次廃棄物となることが想定される。
【0007】
放射性廃液からウランを分離する技術も提案されており、特許文献4に、酸性廃液に硝酸を添加し、トリブチル燐酸(TBP)を用いた溶媒抽出法によりウランを分離する方法が記載されている。
【0008】
硝酸系での溶媒抽出法では、ウランの分離性能は優れるものの廃液処理に困難が伴う。硝酸系窒素は水質汚濁法による排水基準値が厳しく、また、中和処理等を行っても硝酸塩を多量に貯蔵することが消防法上不可能である。そのため、廃液から非常に高い回収率で硝酸を回収するためには大規模な硝酸回収装置が必要となり、処理装置のコストが高くなってしまう。
【0009】
また、廃溶媒として発生するリン酸トリブチルは沸点が289℃と高く蒸発回収が困難であり廃棄するためには分解処理が必要となる。分解処理によりリン酸カルシウム等の分解生成物が発生するため、これらが多量の二次廃棄物となる。
【0010】
そして、ウラン除去法としてウラン沈殿とキレート樹脂による除去とを併用する手法が用いられている。このウラン沈殿を実施する際にはマスク剤を添加するが、このマスク剤が最終的には多量の二次廃棄物となる。
【0011】
さらに、キレート樹脂は溶離・再生が難しく、廃樹脂量低減のために樹脂を繰り返し再利用しようとすると、ウランを含んだ多量の再生廃液が発生し、返ってウラン廃棄物量が増大してしまう。従って、樹脂の繰り返し利用が行えず廃樹脂が大量に発生する上に、塩酸系による処理を行うため最終廃水は中和処理が必要となり中和塩が多量に発生する。
【特許文献1】特開2000−199800号公報
【特許文献2】特開平9−113690号公報
【特許文献3】特開平10−132999号公報
【特許文献4】特開平5−80195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
公知技術によるウラン廃棄物の処理方法では、中和塩、廃イオン交換樹脂、廃溶媒などの二次廃棄物が多量に発生し、これら二次廃棄物の処理コストが高くなるという課題があった。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みなされたもので、ウラン廃棄物を処理する際に、二次廃棄物の発生を低減するとともに、二次廃棄物の処理コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るウラン廃棄物処理方法は、請求項1に記載したように、ウランが付着した廃棄物を酸で除染した除染廃液や、フッ化物を含有するウラン廃棄物を酸で溶解した溶液から、ウランを分離回収する処理方法において、前記溶液に、生成される沈殿物に不純物が混入するのを防止するためのマスク剤を添加するマスク剤添加工程と、このマスク剤添加工程後の溶液中のウランを沈殿処理により分離する主ウラン除去工程と、この主ウラン除去工程後の溶液に残留したウランをイオン交換樹脂や吸着剤により除去する残留ウラン除去工程と、この残留ウラン除去工程後の溶液を中和処理する中和工程と、前記マスク剤を前記中和工程で生成する中和塩から分離するマスク剤分離工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るウラン廃棄物の処理方法によると、ウラン廃棄物を処理する際に、二次廃棄物の発生が低減するとともに、二次廃棄物の処理コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るウラン廃棄物の処理方法の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るウラン廃棄物の処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0018】
本手順は、ウランを含む放射性物質で汚染された廃棄物を酸で除染した際の除染廃液や、フッ化物を含有するウラン廃棄物を酸で溶解した溶液にマスク剤を添加するマスク剤添加工程1と、このマスク剤添加工程1で得た溶液からウラン沈殿物を生成しこの沈殿物を分離除去する主ウラン除去工程2と、主ウラン除去工程2でのウラン沈殿物除去後の溶液に残留するウランをイオン交換樹脂や吸着剤により除去する残留ウラン除去工程3と、残留ウラン除去工程3での残留ウラン除去後の溶液を中和処理する中和工程4と、中和工程4で生成した中和塩からマスク剤を分離して回収するマスク剤分離工程5とを具備する。
【0019】
さらに、必要に応じて、残留ウラン除去工程3で使用するウラン吸着後のイオン交換樹脂や吸着剤からウランを溶離し、樹脂や吸着剤を再生するウラン溶離・樹脂再生工程6と、ウラン溶離・樹脂再生工程6でのウラン溶離後のウラン溶離溶液からウランを安定な形に固定化するウラン固定化工程7と、中和工程4後に残留フッ素の除去など溶液を排水可能とするための最終廃液処理工程8とが付加される。
【0020】
マスク剤添加工程1において使用する、ウランにより汚染された廃棄物の除染液やフッ化物含有ウラン廃棄物の溶解液として、ギ酸やシュウ酸等の有機酸を、単独もしくは混合して用いる。
【0021】
この除染廃液やフッ化物溶解液には、ウラン、金属成分、フッ素などが含まれている。この溶液から、主ウラン除去工程2においてpHを制御しHを添加することで過酸化ウランとしてウランを沈殿させ、分離する。
【0022】
この時、ウラン沈殿に溶液中の他の不純物が共沈するのを防止するマスク剤が作用することで、回収されるウラン沈殿は純度が高くなりウラン廃棄物量の減量効果が大きくなる。
【0023】
主ウラン除去工程2でのウラン沈殿除去後の溶液中に残留してしまったウランは、残留ウラン除去工程3において、イオン交換樹脂や吸着剤等により吸着除去される。
【0024】
図2に、過酸化ウラン沈殿生成による溶液中ウラン濃度を示す。図2によると、ウラン沈殿を行い溶液中のウラン濃度が約1/20に低減されており、これにより、残留ウラン除去工程3で使用するイオン交換樹脂の量を約1/20に低減させることができる。
【0025】
すなわち、ウラン沈殿(主ウラン除去工程2)を行った後にイオン交換樹脂でのウラン吸着(残留ウラン除去工程3)を行うことにより、ウラン沈殿を行わなかった場合に比べてイオン交換樹脂の使用量を大幅に低減させることができる。
【0026】
そして、ウランを吸着したイオン交換樹脂は、溶離・再生し、再利用することで更に樹脂使用量を低減することができる。
【0027】
中和工程4において、溶液中のフッ素、金属成分、マスク剤成分を水酸化物として沈殿させ分離・除去する。この際に、溶液にカルシウム成分を添加することにより、カルシウムとフッ素とで難溶性のフッ化カルシウムを生成させ、フッ素を溶液から除去することができる。
【0028】
なお、マスク剤分離工程5において、中和工程4で発生した中和塩からマスク剤成分を分離、回収して再利用することにより、中和工程4で発生する中和塩の発生量を大幅に低減できる。
【0029】
ここで、廃棄物の除染液やフッ化物含有ウラン廃棄物の溶解液として有機酸を用いると、残留した有機酸は過酸化水素やオゾン等の酸化剤により分解できるため、中和処理が不要となる。この有機酸を用いる方法によると、無機酸を除染や廃棄物溶解液に用いる場合と比較して、廃液処理による中和塩の発生量を大幅に低減できる。
【0030】
有機酸イオンは、溶液中のウラニルイオンに配位し陰イオン錯体を生成するため、残留ウラン除去工程3において、陰イオン交換樹脂を用いてウランを吸着・除去することが可能である。
【0031】
従って、ウランを他の金属陽イオンと分離することが可能である。また、陰イオン交換樹脂に吸着したウランは水で溶離できるため、溶離廃液は僅かに含まれる有機酸成分を分解すれば中和処理が不要となり、中和塩が発生しない。
【0032】
図3に、ギ酸系で陰イオン交換樹脂に吸着させたウランの、純水通水時の、通水量と溶離液中ウラン濃度との関係、及び通水料と溶離率との関係を示す。図3によると、純水通水により陰イオン交換樹脂からウランが溶離していることがわかる。
【0033】
純水通水でウランが溶離することから、陰イオン交換樹脂の溶離再生液の中和処理が不要となりウランを含む中和塩が発生しなくなる上に、陰イオン交換樹脂の繰り返し利用も可能である。
【0034】
図4に、陰イオン交換樹脂の繰り返し利用の際の、繰り返し数とウラン吸着量との関係を示す。図4によると、20回程度の繰り返し利用ではウラン吸着量への影響は見られず、それ以上の回数繰り返すことも可能だと考えられる。
【0035】
有機酸系の除染廃液や廃棄物溶解液から、主ウラン除去工程2において溶液中のウランを粗取りした上で残留ウラン除去工程3において陰イオン交換樹脂を用いること、及び、陰イオン交換樹脂を繰り返し再利用することにより、残留ウラン除去に必要な廃イオン交換樹脂量は大幅に低減される。
【0036】
有機酸が分解可能であること、及び、陰イオン交換樹脂の溶離再生が純水で行えることから、最終廃液及び陰イオン交換樹脂の溶離廃液中の中和塩発生量は大幅に低減する。その上、マスク剤を分離して再利用することによりマスク剤の薬品コストも低減することができる。
【0037】
図5に、マスク剤を用いた場合と用いていない場合とにおける廃イオン交換樹脂及び中和塩の処分費用を示す。処分費用の算出においては、フッ化物系ウラン廃棄物としてCaFを処理した場合を想定するとともに、主ウラン除去工程2において溶液中のウラン濃度は1/20に低減され、イオン交換樹脂は20回繰り返し再利用した後、焼却により1/20に減容し処分すると仮定した。また、マスク剤は80%が再利用されると仮定した。ウラン廃棄物となるイオン交換樹脂の処分単価は、非ウラン廃棄物である中和塩の処分単価の100倍であると仮定した。
【0038】
図5の(1)のケースは、ウラン沈殿を行わず(従ってマスク剤を添加せず)溶液中のウランを全て陰イオン交換樹脂で除去した場合、(2)のケースはマスク剤を添加しウラン沈殿処理を行った後、溶液中に残留したウランを陰イオン交換樹脂で除去した場合(本発明の場合)である。
【0039】
図5に示すように、本発明に係るウラン廃棄物の処理方法((2)のケース)によると、(1)と比較して樹脂の処分費用は約1/20に、中和塩の処分費用は約1/2となり、合計では処分費用が1/10に大きく低減することが可能となった。
【実施例1】
【0040】
次に、本発明に係るウラン廃棄物の処理方法の実施例1について、図6及び図7に基づいて説明する。
【0041】
実施例1では、主ウラン除去工程2において、ウラン沈殿物中に溶液中のフッ素が混入するのを防止するために添加するマスク剤として、Zr、Th、Ti、Sc、Al、B、Be、Feのいずれかの元素(以下、マスク剤元素と言う)の単体あるいは化合物を、単独あるいは混合して用いる。
【0042】
主ウラン除去工程2において、過酸化ウラン沈殿を生成する場合について考える。過酸化水素の添加により溶液中のウランは酸化数の高い6価で存在すると考えられる。マスク剤元素のフッ化物の安定度は、6価ウランのフッ化物より大きい。そのため溶液中にマスク剤元素が存在すると、フッ素はこれら元素と安定なフッ化物を生成し溶液中に留まるため、ウラン沈殿へのフッ素混入が抑制される。
【0043】
図6に、マスク剤(アルミニウム)を添加した場合と添加しない場合とにおけるフッ素の沈殿率を示す。マスク剤を添加しない場合、過酸化ウラン沈殿を生成させる操作を行うと同時に溶液中のフッ素の90%以上が沈殿し、ウラン沈殿中に多量のフッ素が混入する。一方、マスク剤としてアルミニウムを添加した場合、フッ素の沈殿率は0.1%であり大幅にフッ素沈殿率が低減し、ウラン沈殿への共沈が抑制されている。
【0044】
図7に、マスク剤を添加した場合と添加しなかった場合とにおけるウラン廃棄物重量比を示す。フッ化カルシウムを主成分としウランを10%含んだ廃棄物を処理した場合、マスク剤が添加されていればウラン沈殿中のウラン濃度はウラン/過酸化ウラン(U/UO)の分子量比から約80%となる。
【0045】
従って、廃棄物中のウランのほぼ全てがウラン沈殿に移行した場合、初期廃棄物重量の約13%の重量中にウランは回収される。マスク剤を添加しない場合は廃棄物中のフッ素の90%以上がウラン沈殿に混入するため、ウラン沈澱はフッ素を含有して初期廃棄物の約70%の重量となる。
【0046】
すなわち、放射性廃棄物の重量は、マスク剤を添加しない場合、初期廃棄物重量の7割にしか減少しないが、マスク剤を添加した場合は約1割に大きく低減する。そのため、溶液にマスク剤元素を添加することにより、放射性廃棄物の処分費用を大幅に低減することが可能となった。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明のウラン廃棄物の処理方法の実施例2について、図8に基づいて説明する。
【0048】
実施例2では、マスク剤として、実施例1で示したマスク剤元素の単体を酸に溶解して得られた溶液を用いている。
【0049】
マスク剤元素として挙げた金属等の単体を酸に浸漬すると、それらの元素は酸溶液中に溶解する。除染あるいは廃棄物の溶解に用いる酸と同一の酸を用いて単体を溶解すれば、マスク剤として添加する際の液性調整がより容易となる。
【0050】
図8に、マスク剤元素の一つであるアルミニウムの金属をギ酸やシュウ酸に溶解した場合の溶解濃度と溶解速度との関係を示す。マスク剤となる元素は、溶液中に溶解しなければその効果が現れないが、図8に示すように、アルミニウムは、ギ酸やシュウ酸の有機酸によってアルミニウムは溶解し、マスク剤として使用可能な形態となる。
【0051】
50℃程度以上に有機酸溶液を加温すると溶解反応が促進され、例えば、フォイル状の金属アルミニウムを50℃の2Nギ酸に浸漬すると1時間程度で%オーダーの高濃度アルミニウム溶液が得られる。
【0052】
実施例2によると、酸溶液にマスク剤元素の単体を浸漬するだけの簡易な装置構成及び方法で、マスク剤として機能する溶液を調製することが可能となった。
【0053】
また、マスク剤元素の単体を酸に溶解すると、マスク剤元素の塩化物などの無機塩類を溶解して用いる場合と比較して、溶液中に含まれる塩分量が少なくなる。これにより、最終排出する中和塩量が低減し、中和塩の処理費用を低減させることができる。
【0054】
また、排水を環境放出する場合には、環境への負荷も低減される。
【0055】
その上、除染液、廃棄物溶解液、マスク剤元素溶解液に全て有機酸を用いると、さらに中和塩分量の低減効果が大きくなる。また、高濃度のマスク剤溶液を用いると、マスク剤添加液量が少量ですむためプロセス全体の装置規模が縮小でき、装置コストを低減可能となる。
【実施例3】
【0056】
次に、本発明のウラン廃棄物の処理方法の実施例3について説明する。
【0057】
実施例3では、マスク剤として、実施例1で示したマスク剤元素の単体を酸溶液中で電解溶解して得られる溶液を用いる。
【0058】
マスク剤元素の金属などの単体を陽極とし、酸溶液を電解液として電解することにより陽極成分が電解液中に溶解する。除染や廃棄物の溶解に用いる酸と同一の酸を用いて電解を行えば、マスク剤として添加する際の液性調整がより容易となる。
【0059】
マスク剤として用いられる元素は、溶液中に溶解しなければその効果が現れない。実施例3では、マスク剤元素の金属などの単体を電解溶解することにより、マスク剤として機能する溶液を調製することが可能である。
【0060】
マスク剤元素の単体を電解溶解して用いると、マスク剤元素の塩化物など無機塩類を溶解して用いる場合と比較して、溶液中に含まれる塩分量が少なくなる。このため、最終排出する中和塩量が低減し、中和塩の処理費用を低減させることが可能となる。
【0061】
また、排水を環境放出する場合には、環境への負荷を低減することができる。除染液、廃棄物溶解液、マスク剤元素電解溶解液に全て有機酸を用いると、さらに中和塩分量の低減効果が向上する。また、電解法は単純浸漬溶解の場合より溶解速度を高めることができるため、マスク剤調製のための時間を短縮することも可能となる。
【実施例4】
【0062】
次に、本発明のウラン廃棄物の処理方法の実施例4について、図9及び図10説明する。
【0063】
実施例4では、マスク剤として、実施例1で示したマスク剤元素の水酸化物を酸に溶解して得られる溶液を用いる。
【0064】
マスク剤元素の水酸化物を酸に浸漬すると、このマスク剤元素は酸溶液中に溶解することにより溶液中でマスク剤として機能する状態となる。除染あるいは廃棄物の溶解に用いる酸と同一の酸を用いて水酸化物を溶解すれば、添加時の液性調整がより容易となる。
【0065】
図9に、マスク剤元素の一つであるアルミニウムの水酸化物を、室温で40時間ギ酸溶液に浸漬した溶液中の、ギ酸濃度とアルミニウム濃度との関係を示す。図9によると、10M(モル濃度)近傍まではギ酸濃度が高い程溶解するアルミニウム濃度が高いが、ギ酸濃度が20Mになると返ってアルミニウム濃度が下がる傾向を示す。ギ酸濃度5〜15Mでアルミニウムの溶解性が高く、5M以下及び15M以上では低くなることがわかった。
【0066】
図10に、10Mギ酸に水酸化アルミニウムを2時間浸漬した溶液中の温度とアルミニウム濃度との関係を示す。図10によると、溶解アルミニウム濃度は50℃以上で急激に高くなる傾向を示した。
【0067】
従って、水酸化アルミニウムをギ酸で溶解する場合は、ギ酸濃度5〜15Mの範囲、温度条件50℃以上の条件で溶解を行うと、より短時間でアルミニウム濃度の高いマスク剤溶液を得ることが可能である。
【0068】
マスク剤として用いられる元素は、溶液中に溶解しなければその効果が現れない。実施例4では、この元素の水酸化物を溶解することにより、マスク剤として機能する溶液を調製することが可能である。
【0069】
実施例4によると、マスク剤元素の塩化物その他の塩類を溶解して用いる場合と比較して、溶液中に含まれる塩分量が少なくなる。これにより、最終排出する中和塩量が低減し、中和塩の処理費用を低減することができる。
【0070】
また、排水を環境放出する場合には、環境への負荷が低減される。
【0071】
その上、除染液、廃棄物溶解液、マスク剤元素水酸化物の溶解液に全て有機酸を用いることにより、さらに中和塩分量を低減することができる。
【0072】
加えて、酸濃度条件、温度条件を最適化することにより、高濃度のマスク剤液を短時間で得ることが可能となる。例えば、水酸化アルミニウムをギ酸で溶解する場合は、ギ酸濃度5〜15Mの範囲、温度条件50℃以上の条件で溶解を行うと、アルミニウム濃度の高いマスク剤溶液を得ることが可能である。
【0073】
そして、高濃度のマスク剤溶液を用いるとマスク剤添加液量が少量ですむためプロセス全体の装置規模が縮小でき、装置コストを低減可能である。
【実施例5】
【0074】
次に、本発明のウラン廃棄物の処理方法の実施例5について説明する。
【0075】
実施例5では、マスク剤として、実施例1に示したマスク剤元素の有機酸塩を用いる。この有機酸塩は、マスク剤元素の硫酸塩とバリウムの有機酸塩とを反応させて生成される。
【0076】
マスク剤元素の有機酸塩を除染廃液または廃棄物溶解液に添加し、溶解した元素はマスク剤として作用する。マスク剤元素の対イオンである有機酸イオンは、後段で過酸化水素やオゾンなどの酸化剤により二酸化炭素と水に分解可能であるため、二次廃棄物源にはならない。
【0077】
また、この元素の有機酸塩は市販されていないものもあるため、それらについては生成する必要がある。マスク剤の有機酸塩は、マスク剤元素の硫酸塩に、バリウムの有機酸塩を反応させて生成する。例えば、ギ酸アルミニウムを生成する場合は、水中で下記(1)式の様に硫酸アルミニウムとギ酸バリウムを反応させる。
【0078】
[化1]
Al(SO)3+3Ba(HCOO)→2Al(HCOO)+3BaSO
……(1)
【0079】
ギ酸アルミニウム以外の反応生成物である硫酸バリウムは溶解度が極めて小さいため、生成するとすぐに沈殿し溶液中から除去される。硫酸アルミニウム溶液に、ギ酸バリウム飽和溶液を少量づつ滴下し、上澄み液に硫酸バリウムの白濁を生じなくなったら終点と判断できる。硫酸バリウムをろ過除去したろ液をそのままマスク剤として使用することができる。
【0080】
マスク剤として有機酸塩を用いることにより、マスク剤元素の対イオンである有機酸イオンが分解するため、無機酸塩を用いる場合と比較して廃液中の塩分量が低減し、中和塩の処理費用を低減することができる。
【0081】
また、排水を環境放出する場合には環境への負荷が低減される。併せて、除染や廃棄物溶解液に有機酸を用いると、更に中和塩分量の低減効果が大きい。
【実施例6】
【0082】
次に、本発明のウラン廃棄物の処理方法の実施例6について、図11及び図12に基づいて説明する。
【0083】
実施例6では、マスク剤としてアルミニウム化合物を用いるとともに、マスク剤分離工程5において、中和工程4で生成する中和塩を酸溶液あるいはアルカリ溶液でアルミニウム成分を溶解・分離し、再利用する。
【0084】
マスク剤元素としてアルミニウムを用いた場合、中和工程4でマスク剤元素は水酸化アルミニウムとしてフッ化カルシウムと共に沈殿する。ここで、図11に、アルミニウムの各pHにおける溶解濃度を示している。アルミニウムは両性元素であり、図11に示すように、酸にもアルカリにも溶解する。
【0085】
一方、フッ化カルシウムはアルミニウムと比較して溶解し難い塩である。従って、アルミニウムは溶解するがフッ化カルシウムが溶解し難いpH条件の溶液に浸漬することで、アルミニウムのみを溶解しアルミニウムのみを回収することができる。
【0086】
しかし、フッ化カルシウムも強い酸性条件下では溶解が進むため、酸性条件で溶解する場合はpH条件を最適化する必要がある。
【0087】
図12に、フッ化カルシウムと塩化アルミニウムを酸性溶液に添加した場合の各pHに対するカルシウム沈殿率及びアルミニウム溶解率を示す。カルシウム及びアルミニウムの添加濃度は0.5Mである。
【0088】
図12によると、カルシウムは、溶液pHが4以下の領域で沈殿率が低下し、溶解し易くなる。アルミニウムはpH4以上では溶解率が極端に低下し沈殿する。フッ化カルシウムが溶解し難く、アルミニウムが溶解し易い最適pH点は図の曲線の交点であるpH3.5付近となる。
【0089】
アルミニウムの総濃度によりこの交点のpHは変動するため、その変動幅を考慮してpH3〜4前後がアルミニウムの分離に適正なpH範囲であると考えられる。図12における最適pHの3.5付近では、アルミニウムは80%以上が溶解しており、このアルミニウムをマスク剤として80%以上を回収・再利用することができる。
【0090】
この時、アルミニウムを溶解するための酸性溶液として、除染液や廃棄物溶解液と同一の酸溶液を用いると、残留したフッ化カルシウムをろ過除去したろ液をそのままマスク剤として添加することが可能であり、作業が容易となる。
【0091】
アルカリ側では、フッ化カルシウムの溶解度は極めて低いため、アルミニウムが溶解するpH条件のみを考慮すればよい。マスク剤として用いるのに適正と考えられる0.5M以上のアルミニウム濃度ではpH11以上で溶解するため、アルカリ側ではpH11〜14が適切な条件である。
【0092】
ただし、アルカリでアルミニウムを溶解した場合は、残留したフッ化カルシウムをろ過したろ液をそのままマスク剤として使用することはできない。よって、アルカリでアルミニウムを溶解する場合には、ろ液のpHを酸性側に再調整しマスク剤溶液とするか、ろ液を中和しアルミニウムを再び水酸化物として沈殿させて回収しマスク剤として使用する必要がある。
【0093】
実施例6によると、中和工程4から生じた中和塩から、マスク剤成分のみを溶解・回収し、再利用することが可能となり、マスク剤起源の二次廃棄物量を低減することができる。
【0094】
酸性側条件でのアルミニウム分離では、80%以上のマスク剤が再利用可能であり、マスク剤起源の二次廃棄物を、再利用をしない場合の1/5以下に低減することが可能である。
【実施例7】
【0095】
次に、本発明のウラン廃棄物の処理方法の実施例7について、図13に基づいて説明する。
【0096】
実施例7では、中和工程4において、カルシウムの有機酸塩を添加することにより溶液中に含まれるフッ素をフッ化カルシウムとして沈殿させる。
【0097】
中和工程4では、プロセス溶液中に含まれるフッ素を、カルシウムの添加と中和により難溶性のフッ化カルシウムとして沈殿除去する。カルシウム添加剤として、有機酸カルシウムを用いると、カルシウムの対イオンである有機酸イオンは、その後に過酸化水素などの酸化剤により二酸化炭素と水に分解することができ、二次廃棄物源にはならない。
【0098】
図13に、フッ素を含んだ溶液にカルシウムの有機酸塩であるギ酸カルシウムを添加し中和を行った場合の溶液中フッ素濃度を示す。ギ酸カルシウムの添加と中和によりフッ素は99%以上が沈殿しており、実施例7のフッ素除去方法が有効であることが確認された。
【0099】
実施例7によると、カルシウムの対イオンである有機酸イオンが分解可能なため、無機酸塩を用いる場合と比較して廃液中の塩分量が低減でき、塩の処理費用を低減することが可能となる。
【0100】
また、排水を環境放出する場合にも、環境への負荷を低減することが可能となる。
【0101】
その上、中和剤と併せて除染液や廃棄物溶解液に有機酸を用いると、さらに塩分量の低減効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係るウラン廃棄物の処理方法の手順を示すフローチャート。
【図2】過酸化ウラン沈殿生成による溶液中ウラン濃度を示す図。
【図3】ギ酸系で陰イオン交換樹脂に吸着させたウランの、純水通水時の、通水量と溶離液中ウラン濃度との関係、及び通水料と溶離率との関係を示す図。
【図4】陰イオン交換樹脂の繰り返し利用の際の、繰り返し数とウラン吸着量との関係を示す図。
【図5】マスク剤を用いた場合と用いていない場合とにおける廃イオン交換樹脂及び中和塩の処分費用を示す図。
【図6】マスク剤(アルミニウム)の添加した場合と添加しない場合とにおけるフッ素沈殿率を示す図。
【図7】マスク剤を添加した場合と添加しなかった場合とにおけるウラン廃棄物重量比を示す図。
【図8】マスク剤元素の一つであるアルミニウムの金属をギ酸やシュウ酸に溶解した場合の溶解濃度と溶解速度との関係を示す図。
【図9】マスク剤元素の一つであるアルミニウムの水酸化物を、室温で40時間ギ酸溶液に浸漬した溶液中の、ギ酸濃度とアルミニウム濃度との関係を示す図。
【図10】10Mギ酸に水酸化アルミニウムを2時間浸漬した溶液中の温度とアルミニウム濃度との関係を示す図。
【図11】アルミニウムの各pHにおける溶解濃度を示す図。
【図12】フッ化カルシウムと塩化アルミニウムを酸性溶液に添加した場合の各pHに対するカルシウム沈殿率及びアルミニウム溶解率を示す図。
【図13】フッ素を含んだ溶液にカルシウムの有機酸塩であるギ酸カルシウムを添加し中和を行った場合の溶液中フッ素濃度を示す図。
【符号の説明】
【0103】
1 マスク剤添加工程
2 主ウラン除去工程
3 残留ウラン除去工程
4 中和工程
5 マスク剤分離工程
6 ウラン溶離・樹脂再生工程
7 ウラン固定化工程
8 最終廃液処理工程




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013