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原子炉およびその運転方法ならびに原子炉の検査装置およびその検査方法 - 株式会社東芝
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発明の名称 原子炉およびその運転方法ならびに原子炉の検査装置およびその検査方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−147397(P2007−147397A)
公開日 平成19年6月14日(2007.6.14)
出願番号 特願2005−341112(P2005−341112)
出願日 平成17年11月25日(2005.11.25)
代理人 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久
発明者 荒木 義雄 / 原 昭浩 / 渡辺 順子 / 桑子 彰 / 加藤 昌代
要約 課題
燃料集合体等の検査対象物の部材に機械的、物理的損傷を与えることなく、非破壊にて部材中の水素濃度を検出し、分析評価する。

解決手段
本検査装置は、原子炉の炉水中あるいは燃料プール21の水中に立設状態で設置された照射済みの燃料集合体11等の検査対象物と、この検査対象物に対向して設置される筒状密閉容器22と、パルスレーザ光を出力させるレーザ装置23と、パルスレーザ光aを筒状密閉容器22内を通して前記検査対象物の部材表面に集光照射させる照射光学系24と、パルスレーザ光aの照射により検査対象物の部材表面に生成されたプラズマの原子・イオンから放出される蛍光bを案内し、集光させる蛍光集光光学系25と、この蛍光bの波長毎の光強度検出信号を出力する分光手段26と、蛍光波長と波長毎の光強度信号を入力して元素の種類と濃度を計算してレーザプラズマ分光法により分析するコンピュータ27とを有する。
特許請求の範囲
【請求項1】
原子炉炉心に装荷される4体1組の燃料集合体により構成される炉心ユニットと、この炉心ユニットの中央部に形成される空間に長手方向に昇降自在に設けられる横断面十字型制御棒とを有し、前記炉心ユニットには、水素濃度分析が行われ水素脆化の懸念がないと判定された燃料集合体が継続して装荷され、多数の炉心ユニットで原子炉炉心が構成されたことを特徴とする原子炉。
【請求項2】
原子炉の炉心に4体1組の燃料集合体を装荷して炉心ユニットを構成し、この炉心ユニットの中央部に形成される十字型空間に横断面十字状の制御棒を長手方向に昇降自在に収納させる一方、前記炉心ユニットを基本単位として多数の炉心ユニットを平面視円形に近い配置構造に配設し、前記炉心ユニットに、水素分析されて水素脆化の懸念のない燃料集合体を継続使用し、前記制御棒を昇降移動させて原子炉炉心の出力制御を行なうことを特徴とする原子炉の運転方法。
【請求項3】
前記燃料集合体の部材をレーザプラズマ分光法を用いて部材の水素濃度あるいは水素濃度分布を非破壊検査し、前記燃料集合体の部材の水素濃度が所定値以下である場合に、上記燃料集合体またはこの燃料集合体に代表されるグループの燃料集合体を継続使用させることを特徴とする請求項2に記載の原子炉の運転方法。
【請求項4】
前記燃料集合体の部材をレーザプラズマ分光法を用いて部材の水素濃度あるいは水素濃度分布を非破壊検査し、前記燃料集合体の部材の水素濃度が所定値以上である場合に、上記燃料集合体またはこの燃料集合体に代表されるグループの燃料集合体を新規燃料集合体に交換し、
前記燃料集合体の水素濃度が設定値以下である場合は、前記燃料集合体またはこの燃料集合体に代表されるグループの燃料集合体を継続使用させ、原子炉の運転を再開させることを特徴とする請求項2に記載の原子炉の運転方法。
【請求項5】
原子炉の炉水中あるいは燃料プールの水中に立設状態で設置された照射済みの燃料集合体等の検査対象物と、
この検査対象物に対向して設置される筒状密閉容器と、
パルスレーザ光を出力させるレーザ装置と、
このレーザ装置から出力されたパルスレーザ光を筒状密閉容器内を通して前記検査対象物の部材表面に集光照射させる照射光学系と、
パルスレーザ光の照射により検査対象物の部材表面に生成されたプラズマの原子・イオンから放出される蛍光を案内し、集光させる蛍光集光光学系と、
この蛍光集光光学系を案内された蛍光を入射させ、波長毎に分けるとともに波長毎の光強度検出信号を出力する分光手段と、
分光手段からの蛍光波長と波長毎の光強度信号を入力して元素の種類と濃度を計算してレーザプラズマ分光法により分析する演算手段とを有することを特徴とする原子炉の検査装置。
【請求項6】
前記筒状密閉容器に、燃料集合体等の検査対象物の部材表面周辺を気密空間に形成可能な真空容器と、この真空容器内に水素原子の発光に適した負圧あるいは陽圧のガス雰囲気を形成させる排気装置とを備え、前記真空容器内で検査対象物の部材表面にレーザ光を集光照射させ、真空容器内でプラズマを発生させ、このプラズマから蛍光中の水素固有波長の蛍光を測定するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の原子炉の検査装置。
【請求項7】
前記筒状密閉容器の下部側方に設けられた真空容器に、真空容器内を負圧のガス雰囲気を形成する排気装置と、上記真空容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、前記真空容器内の気体の排気と不活性ガスの供給を切換制御可能なガス置換制御機構とを備えたことを特徴とする原子炉の検査装置。
【請求項8】
前記筒状密閉容器は、燃料集合体等の検査対象物の長手方向に昇降自在に設けられ、
前記筒状密閉容器の昇降により、レーザ装置から出力されるパルスレーザ光の照射位置をレーザ光のパルス毎に又は複数のパルス毎に移動させ、検査対象物の対象部位表面との水素濃度分析を長手方向に分析可能としたことを特徴とする請求項5に記載の原子炉の検査装置。
【請求項9】
前記筒状密閉容器は固定設置され、検査対象物の対象部位に照射されるパルスレーザ光の照射位置を固定し、パルスレーザ光の照射によって生成されたプラズマからの蛍光を、パルスレーザ光照射位置を変えずに連続して取得することにより、燃料集合体等の検査対象物の部材深さ方向の水素濃度分布を分析可能としたことを特徴とする原子炉の検査装置。
【請求項10】
前記分光手段は、検査対象物の対象部位に照射されたパルスレーザ光により生成されたプラズマの発光から水素固有の波長の蛍光を区別する蛍光分光部と、水素固有の波長とその蛍光の強度を検出する蛍光検出部とを有する請求項5に記載の原子炉の検査装置。
【請求項11】
チャンネルボックス内に複数の燃料棒を収容し、内部を冷却材が通過するように配置された複数の燃料集合体と、この燃料集合体間の空間に長手方向に移動可能に配置された制御棒とを有し、前記燃料集合体等の検査対象物の部材の水素濃度を分析する原子炉の検査方法において、
前記原子炉の定期検査時に、前記検査対象物の部材の水素濃度を、レーザプラズマ分光法により非破壊にて分析することを特徴とする原子炉の検査方法。
【請求項12】
レーザ装置から出力されるパルスレーザ光を検査対象物の部材表面に集光照射させ、
照射されたパルスレーザ光のエネルギーにより検査対象物の元素を含むプラズマを生成し、
生成されたプラズマからの発光する蛍光の波長とその光強度を分析することにより、検査対象物の元素組成を分析するレーザプラズマ分光法を用いて、前記検査対象物の水素濃度を分析することを特徴とする請求項11に記載の原子炉の検査方法。
【請求項13】
前記レーザプラズマ分光法で使用されるパルスレーザ光の照射位置をパルス毎に、または複数のパルス毎に検査対象物の長手方向に移動させ、前記検査対象物の対象部位表面上の水素濃度分布を分析することを特徴とする請求項12に記載の原子炉の検査方法。
【請求項14】
前記レーザプラズマ分光法で使用されるパルスレーザ光の照射位置を変えずに、パルス毎に連続して取得することにより、パルスレーザ光の照射により検査対象物の部材表面が薄く削れていくことに伴い、検査対象物の部材の深さ方向の水素濃度分布を分析することを特徴とする請求項12に記載の原子炉の検査方法。
【請求項15】
前記検査対象物の部材表面の周辺に気密空間を形成可能な真空容器を設け、上記真空容器内に供給される不活性ガスをヘリウムまたはアルゴンガスとすることを特徴とする請求項12に記載の原子炉の検査方法。
【請求項16】
前記検査対象物の部材表面にパルスレーザ光を集光照射させて生成されるプラズマにより発生する水素固有の波長の蛍光だけでなく、ジルコニウム、鉄、クロムおよび酸素のうち少なくとも1つの元素の固有波長の蛍光を蛍光検出部で検出可能とする請求項12に記載の原子炉の検査方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の平均取出し燃焼度を増加させ、原子炉の燃料経済性を向上させた原子炉およびその運転方法ならびに原子炉の検査装置およびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(以下、BWRという。)や加圧水型原子炉(以下、PWRという。)、低減速軽水炉(以下、PMWRという。)、超臨界圧軽水冷却高速増殖炉(以下、SCFBRという。)等の原子炉は、冷却材に水が用いられる。この原子炉の燃料集合体部材には、ジルコニウムの合金であるジルカロイ材料が一般的に使用されている。
【0003】
ジルカロイは、中性子吸収ロスが少ないという燃料集合体の部材材料として優れた性質を有するが、燃料集合体が高温・高圧の水中に置かれることにより、ジルカロイ材料中に水素を吸収し、蓄積し易い性質を有するジルカロイ材料に蓄積される水素濃度が固溶限度を超えるような高濃度になると水素化物として析出し、水素化物が連なって組織化すると、機械的・物理的強度が低下し、いわゆる水素脆化と呼ばれる現象が表われることが知られている。
【0004】
商業的に運転されている沸騰水型原子炉(BWR)や加圧水型原子炉(PWR)においては燃料集合体が原子炉の炉心に装荷され、発電に使用される期間が短かい。原子炉の炉心に装荷されて発電に使用された燃料集合体は、その後、原子炉から取出され、新規燃料集合体と交換されるまでの積算発熱量である取出し燃焼度が小さいため、燃料集合体部材の水素脆化現象は起こりえない。これらの原子炉において燃料集合体の燃焼期間や取出し燃焼度の大きさは、主に燃料集合体内の核分裂によりエネルギーを発生するウラン235の濃縮度の上限によって決まっている。
【0005】
しかし、将来型の原子炉として研究されている低減速軽水炉(PMWR)、超臨界圧軽水冷却高速増殖炉(SCFBR)においては、沸騰水型原子炉や加圧水型原子炉における取り出し燃焼度の数倍の取出し燃焼度実現を目指して高い取り出し燃焼度を目標としており、原子炉の炉心に燃料集合体が装荷されて発電に供されている時間も長くなるため、燃料集合体の部材の候補であるジルカロイの水素脆化が問題になってくる可能性がある。
【0006】
将来型原子炉では、長期にわたる発電により水素濃度が少しずつ高くなり、燃料集合体の部材が固溶限度を超えるような高濃度になって水素脆化が進行してくる可能性がある。水素濃度が固溶限度を越えて高濃度化する現象が顕著になってくると燃料集合体の健全性が担保できなくなる可能性があり、水素脆化は一体の燃料を使って発電しうる発電電力量、即ち燃料経済性を制限する要因の一つになる可能性があると考えられる。
【0007】
超高燃焼度を目指し開発中の将来型の原子炉においては、超高燃焼度実現のため燃料内のウラン濃縮度の制限は緩和されているはずなので、燃料集合体の健全性に関する要因として重要なのは燃料集合体部材の水素脆化と燃料被覆管の内圧の増加である。
【0008】
低減速軽水炉(PMWR)、超臨界圧軽水冷却高速増殖炉(SCFBR)等の将来型の原子炉においては、原子炉で所定の期間使用した燃料であっても、燃料集合体の部材を燃料集合体の健全性の観点から検査し、水素脆化と燃料内圧の観点から問題ないことが分かれば原子炉に再装荷してさらに発電に使える場合も多いと考えられる。
【0009】
燃料集合体の燃料健全性に係わる2つの要因の中で燃料被覆管の内圧増加は核分裂生成物放出に係わるものである。この燃料の内圧の評価技術としては燃料集合体のプレナム部で放射性同位体Kr−85を測定することにより、核分裂生成物(FP)ガス放出率を評価する技術が燃料の非破壊分析手法として既に確立している。
【0010】
また、従来の燃料集合体の部材の水素濃度を分析する方法としては、使用した燃料を燃料プールにて一定期間冷却した後、燃料集合体を解体し、部材を試料片に切断し、高温炉にて溶解し出てきた水素をガス分析器や質量分析器で検出する方法等が特許文献1〜3で知られている。
【特許文献1】特開平6−289181号公報
【特許文献2】特開平10−185843号公報
【特許文献3】特開2002−181795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の燃料集合体の部材の水素濃度分析技術では、部材の水素濃度分析後に、水素脆化の観点から問題のないことが分かり、燃料健全性が担保されることが判明しても、燃料集合体の部材が試料片に切断されているために、再組み立てして原子炉に戻すことができなかった。
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、燃料集合体等の検査対象物の部材に機械的、物理的な損傷を与えることなく、非破壊にて部材の水素濃度を分析できる原子炉およびその運転方法ならびに原子炉の検査装置およびその検査方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、照射済み燃料集合体の部材の溶解・切断等の破壊的分析を行なうことなく、水素脆化と燃料の内圧管理が可能となって燃料の健全性を担保し、高い燃焼度の原子炉炉心の実現が容易で燃料の経済性を向上させた原子炉およびその運転方法を提供するにある。
【0014】
本発明の別の目的は、照射済み燃料集合体等の検査対象物の中で水素脆化し易い燃料被覆管、スペーサ等の部材表面の水素含有率の変化を簡単に精度よく検出することができる原子炉の検査装置およびその検査方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る原子炉は、上述した課題を解決するために、原子炉炉心に装荷される4体1組の燃料集合体により構成される炉心ユニットと、この炉心ユニットの中央部に形成される空間に長手方向に昇降自在に設けられる横断面十字型制御棒とを有し、前記炉心ユニットには、水素濃度分析が行なわれ、水素脆化の懸念のないと判定された燃料集合体が継続して装荷され、多数の炉心ユニットで原子炉炉心が構成されたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る原子炉の運転方法は、上述した課題を解決するために、原子炉の炉心に4体1組の燃料集合体を装荷して炉心ユニットを構成し、この炉心ユニットの中央部に形成される十字型空間に横断面十字状の制御棒を長手方向に昇降自在に収納させる一方、前記炉心ユニットを基本単位として多数の炉心ユニットを平面視円形に近い配置構造に配設し、前記炉心ユニットに、水素分析されて水素脆化の懸念のない燃料集合体を継続使用し、前記制御棒を昇降移動させて原子炉炉心の出力制御を行なうことを特徴とする運転方法である。
【0017】
さらに、本発明に係る原子炉の検査装置は、上述した課題を解決するために、原子炉の炉水中あるいは燃料プールの水中に立設状態で設置された照射済みの燃料集合体等の検査対象物と、この検査対象物に対向して設置される筒状密閉容器と、パルスレーザ光を出力させるレーザ装置と、このレーザ装置から出力されたパルスレーザ光を筒状密閉容器内を通して前記検査対象物の部材表面に集光照射させる照射光学系と、パルスレーザ光の照射により検査対象物の部材表面に生成されたプラズマの原子・イオンから放出される蛍光を案内し、集光させる蛍光集光光学系と、この蛍光集光光学系を案内された蛍光を入射させ、波長毎に分けるとともに波長毎の光強度検出信号を出力する分光手段と、分光手段からの蛍光波長と波長毎の光強度信号を入力して元素の種類と濃度を計算してレーザプラズマ分光法により分析する演算手段とを有することを特徴とするものである。
【0018】
またさらに、本発明に係る原子炉の検査方法は、上述した課題を解決するために、チャンネルボックス内に複数の燃料棒を収容し、内部を冷却材が通過するように配置された複数の燃料集合体と、この燃料集合体内の空間に長手方向に移動可能に配置された制御棒とを有し、前記燃料集合体等の検査対象物の部材の水素濃度を分析する原子炉の検査方法において、前記原子炉の定期検査時に、前記検査対象物の部材の水素濃度を、レーザプラズマ分光法により非破壊にて分析することを特徴とする検査方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低減速軽水炉や超臨界圧軽水冷却増殖炉等の超高燃焼度実現を目指す原子炉において、定期検査時に燃料集合体等の検査対象物の部材を切断したり、溶融することなく、検査対象物の燃料集合体の健全性を、検査対象物の部材に物理的・機械的な損傷を与えずに非破壊にて水素濃度を分析できる。
【0020】
燃料集合体の部材の水素濃度を分析した結果、その部材の水素濃度が水素脆化状態の判定基準である所定の水素濃度より低いことが分れば、従来の技術に記載の方法で燃料の内圧上昇が問題ないことが評価できるので、燃料集合体の健全性が担保されることになり、継続使用して燃料集合体の原子炉への装荷期間の延長または、照射済み燃料集合体の取り出し燃焼度を大幅に増加させることができ、従来に比べ原子炉の燃料経済性を著しく向上させることができる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る原子炉およびその運転方法ならびに原子炉の検査装置およびその検査方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0022】
本発明に係る原子炉は、原子炉の炉心に複数の燃料集合体が装荷され、冷却材に水を用い、この水が燃料集合体の間を冷却材として流れるタイプの低減速軽水炉(PMWR)や超臨界圧水軽水冷却高速環境炉(SCFBR)等に好適に適用される原子炉である。この原子炉では、4体1組の燃料集合体が多数組原子炉の炉心に装荷され、平断面円形の炉心構造に構成される。4体1組の燃料集合体間に囲まれる空間を、横断面十字型制御棒が往復する構造となっている。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係る原子炉の炉心10に装荷される燃料集合体11を示す斜視図である。
【0024】
原子炉としての軽水炉やSCFBRの炉心10には、4体1組の燃料集合体11が多数組碁盤目状に配列されて装荷され、2行2列、4体1組の燃料集合体11から炉心ユニット12が構成される。炉心ユニット12の中央部に形成される十字型空間13に横断面十字型制御棒14が制御棒駆動手段15にて長手方向の上下方向に往復動するようになっている。燃料集合体11は角筒状のチャンネルボックス内に多数の燃料棒が収納される。
【0025】
制御棒駆動手段15は制御棒14の上端(あるいは下端)に結合される制御棒駆動軸16を有し、この制御棒駆動軸16にて4体1組の燃料集合体11間の空間13を長手方向に沿って昇降せしめられる。
【0026】
原子炉の炉心10に装荷される2行2列、4体1組の燃料集合体11は、制御棒駆動手段15により昇降せしめられる制御棒14の位置により、制御棒3の中性子吸収率が変化する。原子炉の運転中は、燃料集合体11からの発熱が所要の発熱量となるように、制御棒14の昇降位置が常に制御される。
【0027】
原子炉の状態は、発電のための運転を行なっている運転状態と、不測の要因(事態)により一時運転を停止している一時停止状態と、原子炉を停止し、保守点検を行なっている定期検査状態に大別される。原子炉の状態が運転状態又は一時停止状態にある期間を運転期間、定期検査状態にある期間を定期検査期間という。原子炉は、運転期間と定期検査期間が交互に繰り返すように運転が計画される。
【0028】
原子炉では、一定の期間発電に使用した燃料集合体11はこの定期検査期間中に取り出され、燃料プールに移され所定期間冷却され、原子炉には新しい燃料集合体11が装荷される。
【0029】
従来の原子炉であるBWRやPWRでは、燃料集合体は所定の運転期間経過後無条件に取り出され、新しい燃料集合体と交換されることになるが、本発明の実施形態によれば、検査対象物としての燃料集合体11の部材の水素濃度分析により水素脆化の懸念が無いことが示されて、なおかつ燃料の内圧の増加も問題なければ、燃料集合体11をさらに継続して使用することが可能となる。従って、継続使用可能な燃料集合体11を原子炉の炉心10へ再装荷したり、そのまま継続使用することによって、燃料集合体11全体の使用期間を延ばすことができ、燃焼度の向上を図ることができる。この実施形態では、継続使用可能な燃料集合体を炉心10に再装荷して原子炉を運転させることで、所定の発電量に必要な燃料の使用数量を低減し、燃料経済性を向上させることが可能となる。
【0030】
この原子炉では、燃料集合体11の水素脆化診断による燃料健全性の担保を図り、燃料の健全性を確保しつつ燃焼度の向上を図ることができる。
【0031】
図2は、原子炉の炉心10に配置される燃料集合体11と制御棒14の配置例を示す平面図である。この原子炉の炉心配置構造は、2行2列、4体1組の燃料集合体11と制御棒14の配置を基本単位として、多数単位、例えば32単位を配置した例を模式的に示したものである。図2に示された原子炉の炉心10は、燃料から発生した中性子を効率よく利用可能とするため、平面視円形に近い配置構造とした例であり、この炉心配置構成例では、原子炉の炉心10に燃料集合体11を配置可能なスペースが4×32=128体分あることになる。
【0032】
[第2の実施形態]
図3は、原子炉の炉心に装荷される燃料集合体の部材水素濃度を分析する原子炉の検査方法の実施形態を示す原理図である。
【0033】
この実施形態は、検査対象物としての燃料集合体11を構成する部材、例えば燃料被覆管、スペーサ等のジルカロイ製部材の水素含有率を分析するレーザプラズマ分光法の原理を示すもので、燃料集合体11を構成する部材の表面に所要のパルス幅、例えば100ナノ秒程度以下のパルスレーザ光aを集光照射させ、部材表面のミクロン単位の薄い層を瞬間的に加熱蒸発、原子化させ、数万度のプラズマ状態を生成する。
【0034】
生成されたプラズマ18におけるプラズマ状態の原子やイオンは高エネルギーな励起状態にある。レーザ光はパルスレーザ光であり、レーザパルス幅の時間を繰返してレーザ光aのエネルギーが照射されない時間帯では、プラズマ18における原子やイオンは光の放出等を行なってエネルギーを失い安定した基底状態に戻る。低いエネルギー状態に戻っていくときに放出する蛍光bをレーザプラズマ分光法で波長分析を行なうものである。
【0035】
蛍光aの波長は、原素の種類やエネルギー状態によって異なる。また、プラズマ18中に存在する同じ元素の原子数が多いと、その元素固有の蛍光の強度も強くなる。
【0036】
したがって、パルスレーザ光aを燃料集合体11の部材表面に照射してプラズマ18を生成し、このプラズマ18における原子の種類やイオンから放出される蛍光bの波長とその蛍光強度を測定し、分析することで、蛍光波長から元素の種類と蛍光強度を非破壊で特定でき、その蛍光aの波長毎の強度から元素の濃度を分析することができる。
【0037】
このように、燃料集合体11の部材表面に、パルスレーザ光を集光照射させ、そのレーザエネルギーにより部材表面の構成原子をプラズマ化し、このプラズマ18から放出される蛍光bの発光スペクトルの波長と波長毎の蛍光強度から、燃料集合体11の部材の材料組成を分析することができる。この材料組成の分析方法をレーザプラズマ分析法という。
【0038】
[第3の実施形態]
図4は、燃料集合体11の部材の水素濃度を分析する原子炉の検査装置およびその検査方法の第1実施形態を示すものである。
【0039】
図4に示された原子炉の検査装置20は、原子炉の炉中あるいは燃料プール21の水中に立設状態で設置された照射済みの燃料集合体12と、この燃料集合体12の長手方向に沿って昇降可能な角筒状あるいは円筒状の筒状密閉容器22と、パルスレーザ光aを出力させるレーザ装置23と、このレーザ装置23から出力されたパルスレーザ光aを燃料集合体11の部材表面に集光照射させる照射光学系24と、パルスレーザ光aの照射により部材表面が瞬間的に加熱蒸発、原子化されて数万度のプラズマ状態となり、発生したプラズマ状態の原子やイオンから放出される蛍光bを案内する蛍光集光光学系25と、この蛍光集光光学系25を案内され、集光された蛍光bを波長毎に分け、内蔵された光センサで蛍光強度を検出する分光手段26と、この分光手段26で測定された蛍光の波長と波長毎の光強度信号が入力される演算手段としてのコンピュータ27とを有する。
【0040】
分光手段26は、プラズマの発生から水素固有の波長の蛍光を区別する蛍光分光部と、水素固有の波長とその波長強度を検出する光センサ等の蛍光検出部とを有する。コンピュータ27内では、蛍光の波長と波長毎の強度とから水素等の元素の種類と相対的な元素濃度が計算され、計算結果は図示しない表示手段に表示される。表示手段は、演算手段としてのコンピュータに付設されたディスプレイであったり、また、無線あるいは有線を介して遠隔のディスプレイに接続され、このディスプレイに表示させるようにしてもよい。
【0041】
筒状密閉容器22は、頂部にレーザ装置23からのパルスレーザ光aや蛍光bを透過させる透過窓30を有する一方、筒状密閉容器22内の底部には全反射ミラー31が設置される。全反射ミラー31で向きが変えられて直角方向に反射されたパルスレーザ光aは密閉容器22の側部に設けられた集光レンズ32により集光されてエネルギー密度が高められ、検査対象物である燃料集合体11の部材表面に集光照射されるようになっている。また、筒状密閉容器22の上方には穴あきミラー34が斜設され、この穴あきミラー34の穴34aからレーザ装置23から発振されたパルスレーザ光aを筒状密閉容器22内に案内している。
【0042】
照射光学系24は穴あきミラー34の穴部、透過窓、全反射ミラー32および集光レンズ33から構成され、レーザ装置23から発振されたパルス幅100ナノ秒以下のパルスレーザ光aを水中に設置された検査対象物である照射済み燃料集合体11の部材表面に集光照射させるようになっている。
【0043】
燃料集合体11の部材表面を集光照射させることにより部材表面にプラズマを生成し、生成されたプラズマによる測定対象元素からの蛍光bが発生する。発生した蛍光は、蛍光検査光学系25を通って分光器26に案内される。蛍光集光光学系25は、集光レンズ33、全反射ミラー32、透過窓31、穴あきミラー34および集光レンズ35により構成される。
【0044】
燃料集合体11の部材表面に集光照射されて生成されるプラズマからの蛍光は、集光レンズ33により平行光となって、全反射ミラー32で反射され、筒状密閉容器22内を通り、透過窓31から穴あきミラー34のミラー面で大部分が反射し、反射した蛍光bは集光レンズ35で集光されて分光手段26に入射され、この分光手段26にて蛍光bの波長と波長毎の蛍光強度が検出される。この検出信号はコンピュータ27に送られてレーザプラズマ分光法により分析処理され、元素の種類と相対的な元素濃度が計算され、その計算結果は表示手段に表示されるようになっている。
【0045】
次に、原子炉の検査装置の作用を説明する。
【0046】
この原子炉の検査装置20は、レーザ装置23から発振されたパルスレーザ光aを斜設された穴あきミラー34の穴34aを通り、筒状密閉容器22内に形成される照射光学系24に案内され、筒状密閉容器22の下部側面に配置された集光レンズ33にて分析対象となる検査対象物の照射済み燃料集合体11の部材表面に集光照射される。
【0047】
ここで、レーザ装置23から出力されるレーザ光aは、パルス幅100ナノ秒以下、例えば数ナノ秒から100ナノ秒のパルス幅を有するパルスレーザ光である。このパルスレーザ光aを燃料集合体11の部材表面に集光照射させると、部材表面のミクロン単位の薄い層が瞬間的に加熱蒸発、原子化されて数万度のプラズマ状態となり、プラズマ18を生成する。
【0048】
燃料集合体11の部材表面が局所的(ポイント的)にプラズマ状態となり、生成されるプラズマ18により、プラズマ状態の原子やイオンから蛍光bが放出される。この蛍光bはパルスレーザ光aの照射経路(進行経路)とは逆に走査され、集光レンズ33で平行光となり、この蛍光bは全反射ミラー32にて進行方向が変えられ、筒状密閉容器22内を上昇し、この密閉容器22上面の透過窓31を通過し、大部分は穴あきミラー34で反射して向きが横方向に変えられて集光レンズ35で集光され、分光手段26に入射される。
【0049】
分光手段26では、入射された蛍光bが波長毎に分けられ、さらに、分光手段26に内蔵された光センサにより波長毎の蛍光強度が測定される。分光手段26にて測定された蛍光の波長と、波長毎の光強度信号は検出信号となってコンピュータ27に伝送される。コンピュータ27内では、蛍光の波長と波長毎の光強度から元素の種類と相対的な元素濃度が計算され、その計算結果が表示手段(図示せず)に表示される。
【0050】
また、コンピュータ27は、内蔵されるプログラムの働きにより、周期的にトリガー信号cをレーザ装置23に送ることで、レーザ装置23から出力されるレーザパルスの発射タイミングを制御することができる。また、コンピュータ27は、プラズマ18からの蛍光bを分光手段26で測定するタイミングを分析対象元素、ここでは水素原子の蛍光発生寿命に合わせ、測定(分析)対象元素の発光に無関係なバックランド発光と区別し易い最適な条件にタイミング制御することで、プラズマ18からの測定対象元素の蛍光信号のみを精度よく、効率的に測定することができる。
【0051】
また、筒状密閉容器22を図4の上下方向の矢印Aで示すように昇降させ、上下方向に図示しない昇降駆動装置で動かすことで、燃料集合体11を固定したまま、燃料集合体11を構成する部材表面の異なる場所にプラズマ18を生成し、その移動プラズマからの発光(蛍光)を常に分光手段26に入射され、蛍光の波長と光強度の情報をコンピュータ27で計算処理することで、燃料集合体11の部材表面の異なる場所の水素濃度を測定することができる。
【0052】
この水素濃度測定操作を、連続したレーザパルス毎に、または、複数のレーザパルス毎に連続的に実施することによって、燃料集合体11の部材表面における水素濃度の上下方向(長手方向)分布を測定することができる。
【0053】
図4に示す原子炉の検査装置20の変形例では、筒状密閉容器22を上下方向Aに動かすことで、パルスレーザ光aの照射位置、即ちプラズマ生成位置を上下方向に動かして水素濃度の上下方向分布を測定する例を説明したが、筒状密閉容器22を水平方向に移動させる水平移動機構(水平走査光学系)を設けて、パルスレーザ光aの照射位置を水平方向に移動させて水素濃度の水平方向分布を測定できるようにしてもよい。さらに、原子炉の検査装置20では、レーザ光の照射位置を上下方向と水平方向の2つの移動方向の組み合せとして、燃料集合体11の部材表面の水素濃度の2次元的な分布測定を行なうことができるようにしてもよい。
【0054】
また、この原子炉の検査装置20では、レーザ装置23から燃料集合体11を構成する部材の表面に、図5に示すように、パルス幅が数ナノ秒から10数ナノ秒、例えば10ナノ秒程度のパルスレーザ光を集光照射させ、燃料集合体11の部材表面のミクロン単位の薄い層が瞬間的に加熱蒸発、原子化し、数万度のプラズマ状態のプラズマを生成させてもよい。
【0055】
燃料集合体11の部材表面に形成されるプラズマ状態の原子やイオンは高エネルギ状態により、パルスレーザ光aは、レーザパルス幅の間の時間帯の期間には、エネルギが存在しないので、レーザパルス幅の間の時間帯では、プラズマ中の原子やイオンは光(蛍光)の放出等を行なうことで、エネルギーを失なって低エネルギ状態(安定したエネルギ準位)に戻っていく。
【0056】
このとき、プラズマを構成する原子から放出される蛍光の波長は、原子の種類やエネルギー状態によって異なっており、この蛍光の波長と光強度を測定することで構成元素の種類と濃度を分析評価することができる。
【0057】
図6は、パルスレーザ光aの照射によって生成されたプラズマ18およびその周辺を拡大した図である。
【0058】
1パルスのパルスレーザ光の照射によって、燃料集合体11の部材表面37の極薄い層(ミクロンオーダの薄層)が加熱蒸発、原子化されてプラズマ18が生成される。部材表面37が加熱蒸発、原子化されて空間中に飛散した原子の大部分は、燃料集合体11の部材表面37に戻ることは無いので、パルスレーザ光aの照射を受けた部分は図6に示すように極わずかであるが減肉することになる。
【0059】
パルスレーザ光aの照射により燃料集合体11の部材材料が減肉した表面層38は、レーザ光aのパルス毎に部材表面37から薄い層として削られていくことになるので、部材表面37の同じ位置にレーザ光aのパルス照射を繰り返すと、極わずかであるが、部材表面37から少しづつ深い部分の表面が露出してくる。したがって、レーザ光aのパルス毎に、プラズマ18からの蛍光の波長と光強度を測定することによって、水素の濃度の深さ方向の変化を測定することができる。
【0060】
[第4の実施形態]
図7は、本発明に係る原子炉の検査装置およびその検査方法の他の実施形態を示す図である。
【0061】
この実施形態の原子炉の検査装置20Aを説明するに当り、図4に示された原子炉の検査装置20と同じ構成には、同一符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。
【0062】
図7に示された原子炉の検査装置20Aは、筒状密閉容器22の集光レンズ33付近の下部側面を囲むように外側方に突出する筒状の間隔保持スペーサ40が設けられる。間隔保持スペーサ40は、水中設置の燃料集合体11の部材表面に対向し、かつその部材表面に密着するようにゴムパッキン等の密封パッキン41が備えられ、この間隔保持スペーサ40および密封パッキン41により、筒状密閉容器22と燃料集合体11の部材表面との間に、集光レンズを覆う真空容器43が構成される。
【0063】
筒状の真空容器43には、水(水蒸気)やガス等の流体を排出できるように排出(排気)配管44が接続され、この排出配管44の先には排気装置45が設けられる。
【0064】
図7に示された原子炉の検査装置20Aは、レーザ装置23を作動させてパルスレーザ光aを照射して水素測定を非破壊にて行なう前に、排気装置45により、筒状真空容器43内の水(水素等)やガス等の流体を排出し、真空容器43内の空間に水蒸気及び水素が充分に少なくなるように予めセットする。
【0065】
筒状の真空容器43内を真空引きして水蒸気及び水素が充分に少なくなるように負圧あるいは真空状態にセットした後、検査対象物である燃料集合体11の部材表面の水素含有率の変化を測定する作業が行なわれる。
【0066】
次に、原子炉の検査装置20Aの作用を説明する。
【0067】
この原子炉の検査装置20Aでは、筒状密閉容器22を燃料集合体11の部材表面に燃料プール21等の水中に立設状態で対向配置した後、筒状真空容器43の密封パッキン41を燃料集合体11の部材表面に密着させる。
【0068】
その後、排出装置45を作動させて筒状真空容器43内の水蒸気や水素を排気配管44を通して排気し、真空容器43内を負圧あるいは真空状態にセットする。このセット状態で集光レンズ33と燃料集合体11の部材表面との間隔が所要の値に保持される。
【0069】
筒状真空容器43内を負圧あるいは真空状態にセットした後、レーザ装置23を作動させてパルスレーザ光aを出力させる。出力されたパルスレーザ光aは、斜設された穴あきミラー34の穴34aから筒状密閉容器22の透過窓31を通過して筒状密閉容器22内を進み、この密閉容器22内に斜設された全反射ミラー32によって方向が変えられ、集光レンズ33にて分析対象となる燃料集合体11の部材表面に集光照射される。
【0070】
すなわち、レーザ装置23から出力されるパルスレーザ光aは、照射光学系24を通って走査され、燃料集合体11の部材表面に集光照射され、エネルギー密度が高められる。レーザ装置23から出力されるレーザ光aは、パルス幅の100ナノ秒以下、好ましくは数ナノ秒から10数ナノ秒、例えば10ナノ秒程度のパルスレーザ光が用いられる。レーザ装置23から発振されたパルスレーザ光が燃料集合体11の部材表面に集光照射されると、エネルギ密度が高められ、部材表面の薄い層が瞬間的に加熱蒸発し、原子化され、数万度のプラズマ状態となる。
【0071】
プラズマ状態の部材表面では、生成されたプラズマ18状態の原子やイオンから蛍光bが放出されており、放出された蛍光bはレーザ光aの進行経路とは逆に蛍光集光光学系25内を進む。
【0072】
燃料集合体11の部材表面のプラズマから生成された原子やイオンの蛍光は、集光レンズ33で平行光となり、全反射ミラー32にて進行方向を変えられ、筒状密閉容器22内を上昇し、密閉容器22上面の透過窓31を通過し、大部分の蛍光bは穴あきミラー34で反射されて横方向に進み、集光レンズ35にて集光され、分光手段26に入射される。
【0073】
分光手段26では、入射した蛍光bが波長毎に分けられ、さらに分光手段26内蔵の光センサにより波長毎の蛍光の光強度が測定される。分光手段26にて測定された蛍光の波長と波長毎の光強度の検出信号はコンピュータ27に伝送される。コンピュータ27内では蛍光の波長と波長毎の強度からレーザプラズマ分光法を用いて元素の種類と相対的な濃度が計算され、その計算結果が表示手段(図示せず)に表示される。
【0074】
また、コンピュータ27はレーザ装置23にトリガー信号を送ることでレーザパルスの発射のタイミングを制御するとともに、プラズマ18からの蛍光bを分光手段26で測定するタイミングを最適な条件に制御することで、プラズマ18からの各元素の蛍光信号のみを精度良く正確に測定できるようにする。
【0075】
この原子炉の検査装置20Aは、このときレーザ照射対象の燃料集合体11の部材表面は筒状の真空容器43に囲まれており、水蒸気及び水素の残留は十分少ないので、レーザ光aのパルス照射により生成したプラズマ18中の水素は燃料集合体11の部材内部から部材の材料の構成元素とともにレーザ光aにより加熱・蒸発・原子化され、プラズマ化される。このプラズマ18からの蛍光には水分等由来の水素によるバックグラウンド蛍光信号が少ないため精度良く材料中の水素濃度を測定することができる。
【0076】
[第1変形例]
図8は、本発明の原子炉の検査装置の他の実施形態における第1変形例を示すものである。
【0077】
図8は、図7に示された原子炉の検査装置20Aにおける筒状真空容器43の周辺を拡大した領域を示すもので、他の構成は図7に示された検査装置20Aと異ならないので同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
図8に示された拡大図は、筒状真空容器43に排気装置45を接続するとともに、不活性ガス供給装置46を接続し、排気と給気を開閉弁47,48,49の開閉操作により切り換え得るようにしたものである。
【0079】
排気配管44の途中に給気配管50が接続され、この給気配管50の他端に不活性ガス供給装置46が接続される。
【0080】
第1変形例においては、レーザ装置23を作動させてレーザ光aを照射し、水素測定を行なう前に開閉弁47,48を開き、開閉弁49を閉じた状態で排気装置45により筒状真空容器43内の水およびガスを排出(排気)し、真空容器43内の水蒸気及び水素が充分少なくなるようにセットする。
【0081】
その後、開閉弁48を閉じて開閉弁49を開き、真空容器43内に不活性ガスを導入する。
【0082】
真空容器43内に不活性ガスが不活性ガス供給装置46から導入された後、開閉弁49を閉じて不活性ガスの供給を停止し、再度、開閉弁48を開いて排気装置45にて真空容器43内のガスを排気する。なお、排気管44と給気管50の接続部に三方切換弁を設け、開閉弁48と49を省略してもよい。
【0083】
真空容器43内の排気と給気とを繰り返し、いわゆるガス置換操作を行なうことで、真空容器43内に残留する水蒸気や水素ガスを極力低減させる。
【0084】
そして、筒状真空容器43内に水蒸気や水素ガスを極力低減させた状態でレーザ装置23を作動させてパルスレーザ光aを燃料集合体11の部材表面に集光照射させ、その蛍光を測定することで、プラズマ18からの蛍光bに含まれる水分等由来の水素となるバックグラウンド蛍光信号をさらに少なくでき、燃料集合体11の材料中に含まれる水素濃度を精度よく、正確に測定することができる。
【0085】
図8に示される原子炉の検査装置20Bにおいては、ガス置換操作の後で、開閉弁48を閉じ、開閉弁49を開いて不活性ガス供給装置46により不活性ガスを供給し、水素濃度測定中の筒状真空容器43内を0.5乃至3気圧の雰囲気条件に維持する。最適な不活性ガス雰囲気圧力となる圧力に達するまで、不活性ガスを供給した後で、パルスレーザ光aの照射による水素蛍光信号の測定を行うことが可能である。
【0086】
なお、筒状真空容器43内に供給される不活性ガスとしては、例えば、入手し易く安価なHeガスあるいはArガスが採用される。不活性ガスは水素濃度測定前のガス置換操作の都度、または測定中も真空容器43内に供給されるため、入手し易いこと、レーザ光aの照射によりプラズマ18が生成された際、不活性ガス自身の発生が強いと、水素の蛍光信号に比べて不溶なバックグラウンド信号が強くなってしまうため、不活性ガス自身の発生が弱いことが重要である。これらの観点から不活性ガスの種類としてはHeまたはArガスを用いると効率よく水素濃度を測定することができる。
【0087】
[第2変形例]
図9は本発明に係る原子炉の検査装置の他の実施形態における第2変形例を示すものである。
【0088】
この第2変形例に示された原子炉の検査装置20Cは、筒状真空容器43内にガスを給排させる構成に特徴を有し、他の構成は、図7に示された原子炉の検査装置20Aと構成を同じくするので、同じ構成には同一符号を付して説明を簡略ないし省略する。
【0089】
図9は、筒状真空容器43の周辺を拡大して示すもので、筒状の真空容器43から水や水蒸気を排気する排気装置45と、真空容器43内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置46と、このガス供給装置46および各開閉弁47,48,49の作動制御を行なう不活性ガス供給制御装置52と、真空容器43内の不活性ガス雰囲気条件を維持するため、真空容器43内のガス圧力を測定するガス圧力計53とを有する。
【0090】
図9に示された原子炉の検査装置20Cは、筒状密閉容器22の下部側方の集光レンズ33を設定した部分を外側から覆うように筒状の間隔保持スペーサ40が配置され、この間隔保持スペーサ40の先端にゴムパッキン等の密封パッキン41が装着される。間隔保持スペーサ40の先端に装着された密封パッキン41が燃料集合体11の部材表面に装着されて筒状の真空容器43が構成される。
【0091】
筒状の真空容器43には、水およびガスを排出する排気管44が接続され、この排気管44は途中にガス圧力計53、開閉弁47,48が設けられ、その先端に排気装置45が接続される。
【0092】
また、排気管44は、両開閉弁47,48の間にガス供給配管50が接続され、このガス供給配管50も途中に開閉弁49を備えて不活性ガス供給装置46に接続される。
【0093】
この不活性ガス供給装置46と開閉弁47,48,49は不活性ガス供給制御装置52によって作動制御され、真空容器43内の気体の排気と不活性ガスの供給を制御するガス置換制御機構54が構成される。一方、ガス圧力計53からの圧力検出信号は、不活性ガス供給制御装置52に入力される構成となっている。
【0094】
図9に示された原子炉の検査装置20Cにおいては、筒状密閉容器22を燃料集合体11に対向設置し、筒状の真空容器43を燃料集合体11の部材表面に装着し、真空容器43内を密封状態にセットする。このセット状態によりレーザ装置23から発振されるレーザ光aを照射光学系24を介して燃料集合体11の部材表面に集光照射して水素測定を行なう前に、開閉弁47,48を開き、開閉弁49を閉じた状態で排気装置45を作動させ、筒状真空容器43内の水やガスを排気し、真空容器43内の水蒸気や水素が充分少なくなるようにする。
【0095】
排気装置45で真空引きを行なって水やガスを排気した後、開閉弁48を閉じ、開閉弁49を開いて、筒状の真空容器43内に不活性ガスを供給する。
【0096】
筒状の真空容器43内に不活性ガスが導入された後、開閉弁49を閉じて不活性ガスの供給を停止し、再度、開閉弁48を開き、排気装置45にて真空容器43内のガスを排気させる。この真空容器43への給排操作は不活性ガス供給制御装置52により制御され、真空容器43へのガスの給排が繰り返される。
【0097】
真空容器43からのガスの排気動作が終了したら、開閉弁48を閉じ、開閉弁49を開き、筒状真空容器43内に不活性ガスを供給する。水素濃度測定中において真空容器43の雰囲気条件を維持する観点から、最適な不活性ガス雰囲気圧力となるまで、ガス圧力計53のガス圧力検出信号に従って不活性ガスを供給するように不活性ガス供給制御装置52により制御する。
【0098】
この真空容器43内の不活性ガス圧力の供給制御は、その後、レーザ光aの集光照射による水素蛍光信号の測定の経過中においても、ガス圧力計53の変化により、真空容器43内から不活性ガスの洩れや、水蒸気侵入による雰囲気圧力の変化を検知して、開閉弁47,49を開いて追加の不活性ガスを供給制御する。
【0099】
不活性ガスの追加の供給制御により、燃料集合体11の部材表面、すなわち測定表面付近の雰囲気を、水素濃度分析に適した雰囲気条件に維持することで、部材表面の分析対象位置や状態が変わっても、常時精度よく燃料集合体11の部材中の水素濃度計測を行なうことができる。
【0100】
図3乃至図9に示す原子炉の検査装置においては、レーザプラズマ分光法により水素原子からの蛍光bの発光を計測して水素濃度分析を行なう例を示したが、図10に示される実施例では、水素濃度分析を行なうだけでなく、検査対象物としての燃料集合体11の部材の構成元素であるジルコニウム、鉄、クロムさらに雰囲気や水に存在する酸素のうち、一種以上の元素からの蛍光bの波長とその光強度を測定することができる。例えば水素原子の固有波長の蛍光bの光強度信号とジルコニウム原子の固有波長の蛍光bの光強度信号の比を計算評価することにより、水素とジルコニウムの相対濃度に対応した分析結果を得ることができる。
【0101】
水素原子の固有波長の蛍光bの強度だけから水素濃度を計算評価すると分析対象の燃料集合体11の部材表面の状態、例えば不純物の付着状態によってレーザ光aの吸収の度合いが変わってしまい、同じエネルギーのレーザパルスを照射してもプラズマ18からの水素原子の固有波長の蛍光bの強度が変動してしまう。蛍光強度が変動してしまう場合でも、水素原子と同じようにジルコニウム原子の固有波長の蛍光bの強度も同じに変動しているため、2種の原子固有の蛍光強度比を使うことで、分析対象の表面状態が異なる場合においても精度良く水素濃度を計算し、評価することができる。
【0102】
このように、水素濃度を十分に確保するには水素原子固有波長の蛍光bの信号と比をとる元素の種類としては、水素濃度を分析対象の材料の構成元素の中で、水素濃度より十分高い濃度で存在している元素を選定することが望ましい。
【0103】
図10はレーザ光aのパルスにより生成されたプラズマ18から発光した蛍光について、横軸に蛍光の波長を示し縦軸にその波長の蛍光の強度を模式的に示したものである。水素の蛍光信号ピークPのピーク高さ、またはピーク面積の信号は水素濃度に対応しているが、これだけでは水素濃度しか分析できない。例えば図7おいて分光手段26の分光波長をスキャンすることで図10のような波長P,R,S毎の蛍光信号強度が得られる。
【0104】
これにより、ジルコニウムの蛍光信号の波長の蛍光信号強度、すなわちジルコニウムの蛍光ピークRのピーク高さまたはピーク面積からジルコニウム濃度を評価して、2つの比を計算することで、燃料集合体11の部材中の2つの成分の組成を分析できる。
【0105】
さらに、異なる蛍光波長のピーク、元素Xの蛍光ピークS、元素Xとして例えば酸素の場合、燃料集合体11の部材の酸素との相対濃度を計算評価することが可能である。元素Xとして鉄やクロムを選定した場合も同様である。また元素Xとしてジルコニウムと酸素の2種を同時に測定した場合には、ジルコニウムと酸素の比率、即ち酸化状態を分析することも可能でなる。
【0106】
図11は、原子炉の定期検査の際に、水素濃度の検査および燃料集合体11の新燃料への交換の手順例を示すフロー図である。
【0107】
図11に示された原子炉の検査方法および運転方法では、定期検査中の燃料集合体11の部材の水素濃度検査およびその結果による燃料集合体の新規燃料集合体への交換の手順のフローを示したものである。
【0108】
また、図12に示された原子炉の検査方法および運転方法では、定期検査中の燃料集合体11の部材の水素濃度検査およびその検査結果による燃料集合体の新規燃料集合体への交換の手順のフローを示したものである。
【0109】
本発明の実施形態では、照射済み燃料集合体の中で水素脆化しやすいジルカロイで構成された燃料被覆管、スペーサ等の燃料集合体11の部材表面の水素含有率の変化を簡単に検出するための新たな検査方法およびその検査装置を説明した。
【0110】
この原子炉の検査装置および検査方法では、レーザプラズマ分光法で検査対象物である燃料集合体11の部材材料表面に集光させたパルスレーザを照射してそのレーザエネルギーにより材料表面の構成原子をプラズマ化し、プラズマ18からの発光スペクトル(蛍光b)の波長と及び波長毎の光強度の情報から部材材料の組成分析を行うものである。
【0111】
この原子炉の検査装置および検査方法では、レーザプラズマ分光法を原子炉の炉水中又は使用済み燃料プール21中に設置された照射済み燃料集合体の構成材料、例えば燃料被覆管、スペーサのジルカロイ製の部位の水素含有率の分析に適用する。
【0112】
このレーザ誘起プラズマ分光分析法を使うと従来のように燃料集合体の構成材料の溶解、切断等破壊的な分析を行う必要がなく、その場(オンサイト)にて燃料集合体11の構成部材の機械的、物理的損傷を伴うことなく分析を行うことが可能となる。従って、定期検査時又は使用済み時等に原子炉の炉中又は燃料プール21内におかれた検査対象物を、設置状態のままジルカロイ中の水素濃度を測定検査することができ、非破壊で水素脆化状況を診断することができる。
【0113】
従って、燃料の健全性を担保する上で重要な水素脆化と燃料被覆管の内圧の管理が可能になるため、燃料集合体に高い燃焼度の実現が容易になり、燃料の経済性を向上させた原子炉の運転が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係る原子炉の炉心に装荷される4体1組、2行2列の燃料集合体からなる炉心ユニットの構成を示す斜視図。
【図2】本発明に係る原子炉の一実施形態を示すもので、原子炉炉心に配置される燃料集合体の配置を模式的に示す平面図。
【図3】原子炉炉心に装荷される燃料集合体等の検査対象物の水素濃度を分析する検査原理を説明する原理図。
【図4】本発明に係る原子炉の検査装置およびその検査方法の実施形態を模式的に示す構成図。
【図5】本発明に係る原子炉の検査装置に備えられる検査対象物へのパルスレーザ光照射領域を示す図。
【図6】図5に示されたパルスレーザ光の照射領域を拡大して示す図。
【図7】本発明に係る原子炉の検査装置およびその検査方法の他の実施形態を模式的に示す構成図。
【図8】図7に示された原子炉の検査装置の他の実施形態における第1変形例を部分的に示す図。
【図9】図7に示された原子炉の検査装置の他の実施形態における第2変形例を部分的に示す図。
【図10】パルスレーザ光の照射により生成されたプラズマから発光した蛍光の波長と蛍光強度の関係を示す図。
【図11】原子炉の定期検査の際の水素濃度検査及び新しい燃料集合体への交換の手順を示すフロー図。
【図12】原子炉の定期検査の際の水素濃度検査及び新しい燃料集合体への交換手順例を示すフロー図。
【符号の説明】
【0115】
10 原子炉の炉心
11 燃料集合体
12 炉心ユニット
13 空間
14 制御棒
15 制御棒駆動手段
16 制御棒駆動軸
18 プラズマ
20,20A,20B,20C 原子炉の検査装置
21 燃料プール(原子炉の炉水)
22 筒状密閉容器
23 レーザ装置
24 照射光学系
25 蛍光集光光学系
26 分光手段
27 コンピュータ
31 透過窓
32 全反射ミラー
33 集光レンズ
34 穴あきミラー
35 集光レンズ
37 部材表面
38 表面層
40 間隔保持スペーサ
41 密封パッキン
43 真空容器
44 排出(排気)配管
45 排出装置(排気装置)
46 不活性ガス供給装置
47〜49 開閉弁
50 給気管
52 不活性ガス供給制御装置
53 ガス圧力計
54 ガス置換制御機構




 

 


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