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発明の名称 原子炉格納容器および沸騰水型原子力プラント
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−10457(P2007−10457A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−191062(P2005−191062)
出願日 平成17年6月30日(2005.6.30)
代理人 【識別番号】100103333
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 治
発明者 佐藤 崇
要約 課題
想定される過酷事故に対して、より安全な原子炉格納容器を提供する。

解決手段
原子炉格納容器は、原子炉圧力容器2を格納する原子炉一次格納容器36と、原子炉一次格納容器36の上方に設置された上部二次格納容器42と、原子炉一次格納容器36と上部二次格納容器42の間を、隔離連通切替手段45を介して連結する気相ベント管44と、を有する。気相ベント管44は、原子炉一次格納容器36および上部二次格納容器42の内側でも外側でもよい。また、壁に埋め込むこともできる。上部二次格納容器42内にイグナイターを設置してもよい。上部二次格納容器42内の空気を窒素で置換してもよい。上部二次格納容器42内に重力落下式冠水系プールを配置し、プール内の冷却水を原子炉一次格納容器36内に導くようにしてもよい。
特許請求の範囲
【請求項1】
炉心と、
この炉心を収容する原子炉圧力容器と、
この原子炉圧力容器を格納する原子炉一次格納容器と、
前記原子炉一次格納容器の上方に設置された上部二次格納容器と、
前記原子炉一次格納容器と前記上部二次格納容器の間を連結する気相ベント管と、
を有することを特徴とする原子炉格納容器。
【請求項2】
前記気相ベント管は隔離連通切替手段を介して前記原子炉一次格納容器と前記上部二次格納容器の間を連結することを特徴とする請求項1に記載の原子炉格納容器。
【請求項3】
前記隔離連通切替手段は前記原子炉一次格納容器および前記上部二次格納容器の外側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の原子炉格納容器。
【請求項4】
前記気相ベント管および隔離連通切替手段はすべてが前記原子炉一次格納容器または前記上部二次格納容器の内側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の原子炉格納容器。
【請求項5】
前記気相ベント管の少なくとも一部が前記原子炉一次格納容器の壁に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の原子炉格納容器。
【請求項6】
前記上部二次格納容器は、運転床とその運転床を取り囲む天井および側壁を含み、
前記原子炉一次格納容器の上部に原子炉一次格納容器上蓋があって、この原子炉一次格納容器上蓋によって前記原子炉一次格納容器と前記上部二次格納容器とが仕切られていること、
を特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の原子炉格納容器。
【請求項7】
前記上部二次格納容器内にイグナイターが設置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の原子炉格納容器。
【請求項8】
前記上部二次格納容器内の雰囲気が、窒素により置換されて酸素濃度が通常の空気よりも低い雰囲気に保持されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の原子炉格納容器。
【請求項9】
前記上部二次格納容器内に配置されて冷却水を貯蔵する重力落下式格納容器冠水系プールと、
前記重力落下式格納容器冠水系プール内の冷却水を前記原子炉一次格納容器内に導く注入配管および注入弁を有する注入配管システムと、
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の原子炉格納容器。
【請求項10】
前記重力落下式格納容器冠水系プールは、前記原子炉一次格納容器上蓋の上方に設置された水遮蔽プールであることを特徴とする請求項9に記載の原子炉格納容器。
【請求項11】
前記原子炉一次格納容器は、前記原子炉圧力容器を収容するドライウェルと、圧力抑制プールを収容してベント管を介して前記ドライウェルに連通するウェットウェルとを有し、
前記注入配管システムの前記注入配管は、前記重力落下式格納容器冠水系プール内の冷却水を前記ドライウェルに導くドライウェルドレン配管であって、
このドライウェルドレン配管に、逆止弁およびU字シールが取り付けられていること、
を特徴とする請求項9または10に記載の原子炉格納容器。
【請求項12】
前記注入配管システムの前記注入配管は、前記重力落下式格納容器冠水系プール内の冷却水を原子炉圧力容器に導く原子炉圧力容器注入配管であって、
この原子炉圧力容器注入配管に、逆止弁およびU字シールが取り付けられていること、
を特徴とする請求項9または10に記載の原子炉格納容器。
【請求項13】
前記原子炉一次格納容器は、前記原子炉圧力容器を収容するドライウェルと、圧力抑制プールを収容してベント管を介して前記ドライウェルに連通するウェットウェルとを有し、
前記注入配管システムの前記注入配管は、前記重力落下式格納容器冠水系プール内の冷却水を前記ウェットウェルに導くウェットウェルドレン配管であることを特徴とする請求項9または10に記載の原子炉格納容器。
【請求項14】
前記原子炉一次格納容器および前記上部二次格納容器の外部を覆うコンクリート製の外部事象防護壁をさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項に記載の原子炉格納容器。
【請求項15】
原子炉圧力容器と、
この原子炉圧力容器を格納する原子炉一次格納容器と、
前記原子炉一次格納容器の上方に設置された上部二次格納容器と、
前記原子炉一次格納容器と前記上部二次格納容器の間を連結する気相ベント管と、
を有することを特徴とする沸騰水型原子力プラント。
【請求項16】
前記気相ベント管は隔離連通切替手段を介して前記原子炉一次格納容器と前記上部二次格納容器の間を連結することを特徴とする請求項15に記載の沸騰水型原子力プラント。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも安全性を向上させた原子炉格納容器および沸騰水型原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型軽水炉(BWR)は非常用炉心冷却系などの安全系がポンプなどの動的機器により構成されているものは動的安全炉と呼ばれ、これに対し、安全系がタンクなどの静的機器で構成され、内部に貯蔵された冷却水を重力などにより原子炉内に注入する方式のものを静的安全炉と呼んでいる。
【0003】
動的安全炉のBWRで実用されている代表的なものには新型BWR(ABWR)がある。最近では、さらにABWRに原子炉格納容器の冷却などに一部静的安全系を取り入れた炉概念も検討されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−333357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の動的安全BWRでは、設計基準を大幅に越えるような過酷事故を考えると原子炉格納容器の健全性が損なわれるおそれがあった。原子炉一次格納容器の健全性が損なわれた場合、その外部を取り囲む原子炉建屋には耐圧性がなく二重格納容器としての積極的な安全機能は期待できない設計となっていた。原子炉一次格納容器の健全性を維持するために原子炉一次格納容器ベントなどの対策を実施すると放射性物質を環境に一部放出するおそれがあった。
【0005】
また、従来の静的安全炉のBWRの設計では、動的システムが存在せず、システムコストは安いものの、原子炉一次格納容器ベントなどの対策をとらないため炉心損傷事故時の原子炉一次格納容器圧力は炉心からの大量水素の発生により高くなり原子炉一次格納容器の漏洩率が高く維持される可能性があった。
【0006】
また、事故時に水素を機器室内に放出するため、水素爆轟により原子炉一次格納容器が破損する可能性があった。放射能汚染により、また、水素爆轟を回避するため下部の機器室を窒素で置換すると事故後の復旧対応で運転員が機器室に立ち入ることが困難になるという課題があった。こうした課題を解決する目的で新たに鋼製二次格納容器を設置し、その中に水素と放射性物質を放出する概念は、極めて安全性は高いが、新たに鋼製の二次格納容器を追加設置しなければならないという課題があった。
【0007】
次世代の安全性を標榜する新型BWRの原子炉格納容器の設計は、炉心損傷事故時の圧力が低く、水素爆轟もなく、必要な場所には運転員の立ち入りが自由に行なえるものであることが望ましい。本発明は、上記課題を解決するものであって、想定される過酷事故に対しても、より安全な原子炉格納容器およびこれを利用した沸騰水型原子力プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る原子炉格納容器は、炉心と、この炉心を収容する原子炉圧力容器と、この原子炉圧力容器を格納する原子炉一次格納容器と、前記原子炉一次格納容器の上方に設置された上部二次格納容器と、前記原子炉一次格納容器と前記上部二次格納容器の間を連結する気相ベント管と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る沸騰水型原子力プラントは、原子炉圧力容器と、この原子炉圧力容器を格納する原子炉一次格納容器と、前記原子炉一次格納容器の上方に設置された上部二次格納容器と、前記原子炉一次格納容器と前記上部二次格納容器の間を連結する気相ベント管と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過酷事故時に炉心から発生する大量の水素による原子炉一次格納容器の圧力上昇を、気相ベント管を介して上部二次格納容器内に放出し、圧力上昇を低く抑えることが可能になり、過酷事故時の原子炉格納容器圧力を設計圧力内に制限可能となる。すなわち、過酷事故を原子炉格納容器の設計基準以内にコントロールできる炉概念を提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の種々の実施形態を、図1〜図12を参照して説明する。ここで、実施形態相互に同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0012】
図1により本発明に係る原子炉格納容器の第1の実施形態を説明する。炉心1を収容する原子炉圧力容器2は、ドライウェル11の内部に設置され、原子炉圧力容器サポート12により原子炉圧力容器スカート13を介して固定される。ドライウェル11の原子炉圧力容器サポート12よりも上部の空間を上部ドライウェル14、下部の空間を下部ドライウェル15と呼ぶ。下部ドライウェル15の床上には耐熱性の部材から成るコアキャッチャー46が設置されており、下部ドライウェル15の床面は放射性物質の漏洩および浸食に対して特別に強化されている。なお、下部ドライウェル15の壁面で原子炉圧力容器サポート12を支持しているが、この部分をペデスタル62と呼ぶ。
【0013】
上部ドライウェル14には重力落下式炉心冷却系プール37が設置され、重力落下式炉心冷却系プール37と原子炉圧力容器2は爆破弁16を介して配管17により連結されている。図では重力落下式炉心冷却系プール37は左上だけに示しているが、実際は水量を確保するため、上部ドライウェル14の床面積の2/3程度を占める範囲に設置されている。
【0014】
また、上部ドライウェル14の下に円周状にウェットウェル18が設置され、この内部にプール水を保有し同じく円周状に圧力抑制プール19が配置されている。ドライウェル11と圧力抑制プール19は多数本存在するベント管20を介して連結される。圧力抑制プール19の高さは炉心1の高さ以上の位置に設置されている。
【0015】
また、圧力抑制プール19と原子炉圧力容器2は、爆破弁21を介して配管22で接続されている。これは圧力抑制プール19内の水を重力により原子炉圧力容器2内に注水する際に使用される。重力落下式炉心冷却系プール37および圧力抑制プール19から原子炉圧力容器2内に重力で冷却水を注入する際に原子炉圧力容器2を急速に減圧する必要があり、この目的で減圧弁23が多数設けられている(図には1個のみを示す)。この減圧弁23も爆破弁である。
【0016】
ドライウェル11の上部には、原子炉隔離時コンデンサープール24と静的格納容器冷却系プール25が設置され、それぞれ冷却水を貯えている。原子炉隔離時コンデンサープール24内には原子炉隔離時コンデンサー熱交換器26が設置され隔離弁27を介して配管28により原子炉圧力容器2と連結されている。同じく静的格納容器冷却系プール25内には静的格納容器冷却系熱交換器29が設置され、熱交換器29は吸込み配管30によりドライウェル11の気相部分に接続されている。
【0017】
原子炉一次格納容器36は、原子炉圧力容器2を収容するドライウェル11と、圧力抑制プール19を収容するウェットウェル18により構成される。原子炉一次格納容器36の外壁部分は鉄筋コンクリート製で気密性を維持するために、内面に鋼製のライナー(図示せず)が張られている。原子炉一次格納容器36内の気相部は酸素濃度を低く抑えるため、通常運転時は窒素雰囲気により置換されている。これは、事故時に原子炉から放出される水素の爆燃および爆轟を回避するためである。
【0018】
ウェットウェル18は下部ドライウェル15の床よりも高い位置に設置されており、ウェットウェル18の下部空間を利用して機器室40が設置されている。機器室40は原子炉一次格納容器36には含まれていない。
【0019】
原子炉一次格納容器36の上部には原子炉一次格納容器ヘッド38が設置されている。原子炉一次格納容器ヘッド38は炉心1の燃料を交換する場合などに取り外すことが可能なように鋼製としている。原子炉一次格納容器ヘッド38が鋼製であるため、原子炉運転時には一部の放射線が貫通して上部に漏れ出るが、これを遮蔽する目的で、水遮蔽43を設置している。水遮蔽43は水プールにより放射線を安全上問題がないレベルにまで減衰させることが可能である。
【0020】
なお、従来のBWRでは、水遮蔽の代わりにコンクリート製の遮蔽プラグをこの部分に設置したものが多い。本実施形態で遮蔽プラグを用いずに水遮蔽43を用いているのは、燃料交換時などに遮蔽プラグを取り外す手間と遮蔽プラグをオペフロ(運転床)47の上に置くスペースが無駄となることを避けたものである。水遮蔽43の機能は原子炉が運転されている場合に必要とされるが、原子炉が停止した後は、事故時も含めてこの部分の遮蔽は不要となる。原子炉が停止した後の炉心燃料などからの放射線および仮に事故が発生した場合であっても原子炉一次格納容器36内に放出された放射性物質からの放射線も原子炉一次格納容器ヘッド38により十分に遮蔽される。
【0021】
また、図示はしていないが、燃料交換時にドライヤーとセパレーターと呼ばれる炉内構造物を取り外し、保管するためにドライヤー・セパレーター・ピットと呼ばれるプール状の空間が水遮蔽43に隣接して設置されている。ドライヤー・セパレーター・ピットは通常時は空で、ドライヤーおよびセパレーターを保管する際には放射線を遮蔽する目的で水を張ったプール状にして使用される。さらに、水遮蔽43に隣接して燃料交換時の使用済み燃料の移送用にバッファー燃料プール(図示せず)が設置されている。使用済み燃料を保管する使用済み燃料プール(図示せず)自体は別途設けた燃料プール建屋(図示せず)の内部に設置されており、前記バッファー燃料プールを経て使用済み燃料プールに使用済み燃料を移送する方式が採用されている。これにより原子炉格納容器の小型化が可能となっている。
【0022】
本実施形態にあっては、非常用炉心冷却系のポンプや非常用の電源である非常用ディーゼル発電機などの動的機器が存在せず、重力などの自然の力により事故時の炉心冷却および原子炉一次格納容器冷却が可能であり、仮に冷却材喪失事故などの発生を仮定してみても動的機器の故障がないためその後に炉心溶融事故に発展する可能性は極めて低くなるという優れた特性を有している。重力落下式炉心冷却系および圧力抑制プールからの注水が重力により行なわれるため動的安全炉のように事故後長時間経って非常用炉心冷却系のポンプが故障して炉心損傷に到る可能性が排除されている点も動的安全炉に比べて優れている。
【0023】
原子炉圧力容器2の減圧が急速に可能な大破断冷却材喪失事故の場合に特に冷却が容易に行なえる特性がある。ただし、非常用炉心冷却系である重力落下式炉心冷却系と圧力抑制プール19から冷却水を重力で注水するためには、爆破弁16、21を作動させる必要があり、これが、共通原因故障ですべて故障すると炉心損傷に至る。また、小破断冷却材喪失事故時には原子炉圧力容器2の減圧が急速に行なわれないため、原子炉圧力容器2を急速減圧するため減圧弁23を作動させる必要がある。この減圧弁23がやはり共通原因故障ですべて故障すると炉心損傷に至る。
【0024】
静的安全炉は、安全系の設計が静的機器で構成されており系統の単純化と合理化に寄与するが、動的安全系が多重かつ多様に設けられている動的安全炉に比べて格段に安全性が高いというわけではない。したがって、上記のような原因である一定の極めて低い確率で、炉心損傷事故が発生することを前提に、万全の安全性を確保するため原子炉一次格納容器36を設置し、公衆の被曝線量を低く抑える設計としてある。このため原子炉一次格納容器36内で炉心溶融事故が発生したことをあえて想定しても、それでもなお、原子炉一次格納容器36の健全性を維持し、放射性物質の環境への放出がほとんど発生しないように設計されている。
【0025】
具体的には、炉心溶融事故時に発生する水蒸気については吸込み配管30より静的格納容器冷却系熱交換器29に導かれて冷却凝縮することにより、炉心溶融事故時の水蒸気による原子炉一次格納容器36の加圧と加温を安全上問題がない範囲に緩和することが可能な設計となっている。
【0026】
本実施形態では、原子炉一次格納容器36の上部にさらに耐圧性の上部二次格納容器42を設け、ウェットウェル18の気相部と上部二次格納容器42の気相部を気相ベント管44により連結したことに一つの特徴がある。さらに本実施形態では、気相ベント管44は、隔離連通切替手段45を介してウェットウェル18の気相と上部二次格納容器42の気相部を連結してもよい。また、本実施形態では、上部二次格納容器42が原子炉一次格納容器36の上部に載る形で接合されている。このように上下に接合された原子炉一次格納容器36と上部二次格納容器42とから原子炉格納容器41が構成されている。原子炉一次格納容器36に内蔵する原子炉は静的安全炉のBWRの場合の例を示している。
【0027】
隔離連通切替手段45としては、ラプチャーディスク、真空破壊弁、自動隔離弁などが利用可能である。ラプチャーディスクは設定した圧力差で配管内に設置した円盤状の仕切り板を破壊して雰囲気を連通可能とするものである。作動後の隔離閉鎖機能はない。したがって、作動後は、順方向にも逆方向にも差圧に応じて流れることが可能である。
【0028】
真空破壊弁は高信頼度の気相逆止弁である。設定した圧力差で作動して雰囲気を連通可能とするが圧力差が低下すると再び閉鎖し流路を隔離する。雰囲気は順方向には流れるが逆方向には流れることはない。順方向への連通機能も逆方向への隔離機能も高信頼度で実施する必要がある場合などに使用されている。
【0029】
自動隔離弁は電動弁や空気作動弁などで設定した圧力差で自動的に開閉する。一度開状態にした後は開状態を維持することも再び閉鎖状態に戻すことも可能である。電動弁の場合には作動に若干時間がかかる。一方、空気作動弁は、作動時間は早いがアキュムレーターの設置が必要になる。
【0030】
隔離連通切替手段45を設置するか、また、設置する場合はどの構造のものを選択するかは設計上の選択事項となる。これらの隔離連通切替手段45に共通した機能は、通常時は隔離状態にあり、設定した差圧に達すると順方向に雰囲気を流すことである。したがって、これらの隔離連通切替手段は、原子炉が通常の運転中は隔離状態にあり、原子炉一次格納容器36と上部二次格納容器42は空間としては分離され独立している。ウェットウェル18気相部の圧力上昇を伴わない過渡事象や小規模な冷却材喪失事故の場合も、これらの隔離連通切替手段45は隔離状態に維持される。
【0031】
一方、万一、大破断冷却材喪失事故や過酷事故が発生した場合は、ウェットウェル18の気相部の圧力が上昇し、隔離連通切替手段45の作動設定差圧に達すると隔離連通切替手段45が作動しウェットウェル18の気相部と上部二次格納容器42の気相部が気相ベント管44を介して連通される。これによりウェットウェル18気相部に蓄積する水素および窒素などの非凝縮性ガスによる原子炉一次格納容器36の過大な圧力上昇を上部二次格納容器42の内部に放出し、原子炉一次格納容器36の圧力上昇を緩和できる。
【0032】
あるいは、逆に隔離連通切替手段45の作動圧をより高く設定し、大破断冷却材喪失事故時にも作動しないようにすることも考えられる。この場合には、隔離連通切替手段45は大量の水素による過圧が発生する過酷事故時にのみ作動し、設計基準事故時には作動しないようにすることが可能となる。これにより設計基準事故時には圧力を原子炉一次格納容器36内に留め、さらに過圧が発生する過酷事故時には原子炉一次格納容器36と上部二次格納容器42の両方で過酷事故の圧力に耐える設計とすることが可能となる。
【0033】
上部二次格納容器42の材質の一例としてはコンクリート構造がある。ただし、耐圧性と機密性が確保されれば材質は問わない。さらに、放射性物質の漏洩を抑制するため鋼製のライナーもしくは樹脂コーティングによるライナーを設置することも考えられる。図では、気相ベント管44と隔離連通切替手段45は一対のみを示したが実際には円周上に複数設置してもよい。なお、上部二次格納容器42の内部には、事故後に原子炉の安全性を確保するための機器は存在しないので、運転員が事故後に上部二次格納容器42の内部に立ち入る必要はない。
【0034】
このように構成された本実施形態では、まず、隔離連通切替手段の有無にかかわらず、過酷事故時の圧力上昇に対する圧力障壁の機能を原子炉一次格納容器36だけで受け持つのではなく、上部二次格納容器42と分担することにより原子炉格納容器41の圧力を低く維持することが可能となる。従来の原子炉格納容器は過酷事故が発生した場合には、圧力は設計圧力を超えてしまうが、本実施形態によれば過酷事故時の圧力を設計圧力の範囲に抑えることが可能となる。
【0035】
上部二次格納容器42の空間自由体積は、たとえばウェットウェル18の空間自由体積のおよそ5倍から6倍となる。したがって、過酷事故時の原子炉格納容器圧力を従来の1/5から1/6とすることが可能となり、容易に設計圧力以下に抑制することが可能となる。従来の動的安全炉では、過酷事故時に原子炉格納容器の圧力が設計圧の2倍程度に達してしまい、格納容器ベンティングを実施する必要があった。これにより原子炉格納容器内の放射性ガスを大気中に放出し周辺住民の放射線被曝のリスクを低減するために事前に周辺の住民を避難させる必要があった。しかし、本実施形態によればこのような格納容器ベンティングを行なうことなく原子炉格納容器の圧力を十分低く維持することが可能となる。
【0036】
また、このように構成された本実施形態によれば、隔離連通切替手段45を設置した場合には、さらに、小口径配管破断や過渡事象のように原子炉一次格納容器36内部の大幅な圧力上昇を伴わない事象の場合には、隔離連通切替手段45は作動しないので、原子炉一次格納容器36の内部のみに事象を閉じ込めることが可能となる。一方、大口径配管破断事故や過酷事故のように原子炉一次格納容器36の圧力が大幅に上昇するおそれのある事象の場合には、隔離連通切替手段45が作動して、非凝縮性ガスを上部二次格納容器42内部に放出することにより原子炉一次格納容器36の圧力上昇を防止することが可能となる。
【0037】
過渡事象は比較的発生頻度の高い事象であるから、その度に主蒸気逃がし弁(図示せず)が作動して炉蒸気が圧力抑制プール19に移行して凝縮し、その際、主蒸気中の放射性物質もわずかにウェットウェル18の気相部に移行することが想定される。本実施形態では、この過渡事象時の放射性物質の移行をウェットウェル18気相部までにとどめることが可能となる。その結果、過渡事象時に放射性物質が上部二次格納容器42内に移行し上部二次格納容器42が汚染することを防止可能となる。過渡事象の度に上部二次格納容器42の内部が放射能で汚染すると、定期検査や燃料交換時に運転員が上部二次格納容器42内に入ってオペフロ(運転床)47上で作業を行なう際に放射線被曝を受ける。本実施形態ではこの問題を排除可能である。
【0038】
次に、図2により、本発明に係る原子炉格納容器の第2の実施形態を説明する。本実施形態においては、気相ベント管44aは原子炉格納容器41の外部に設置されるのはなく、ドライウェル11を貫通する形で直接ウェットウェル18と上部二次格納容器42を連通している。隔離連通切替手段45aは、ウェットウェル18の気相部に設置される構成としている。このように構成される本実施形態にあっては、気相ベント管44aが原子炉格納容器41の外部に露出しないため、気相ベント管44aから事故時に放射性物質が環境に漏洩することを回避できる。
【0039】
次に、図3により、本発明に係る原子炉格納容器の第3の実施形態を説明する。本実施形態においては、上部二次格納容器42と原子炉一次格納容器36は構造物として一体をなし、原子炉格納容器41を構成している。また、気相ベント管44bは原子炉格納容器41の壁面の内部に埋め込まれて設置される。このように構成される本実施形態においては、原子炉格納容器41が一体構造となり、より強度が増す効果が得られる。また、気相ベント管44bが壁面に埋め込まれることにより、よりコンパクトな設計が可能となっている。隔離連通切替手段45bは、ウェットウェル18の気相部に位置するため保守が可能であるが、壁面に開口部を設けて埋め込むことも可能である。
【0040】
次に、図4により、本発明に係る原子炉格納容器の第4の実施形態を説明する。本実施形態においては、気相ベント管44bの上部二次格納容器42内の出口近傍にイグナイター48を設置した構成としている。イグナイター48はバッテリー電源などを用いた着火装置である。自動車のエンジンの点火プラグと同様の構造のものでもよい。イグナイター48を設置する意図は、過酷事故時に、ウェットウェル18の気相部において加圧された大量の水素がその圧力により隔離連通切替手段45bを作動させ、気相ベント管44bを通り上部二次格納容器42内に放出された場合に、積極的にイグナイター48により着火させて燃焼させることにある。
【0041】
気相ベント管44bから放出されるガスは大部分が水素で、残りはほとんどが窒素である。酸素濃度は低く制限されている。これは、原子炉一次格納容器36内の雰囲気を通常運転時から窒素で置換して酸素濃度を低くするように管理されていて、事故時に大量の水素が発生しても燃焼することがないように制御しているためである。したがって、この水素濃度の高い混合ガスが上部二次格納容器42内に放出され、そのまま放置されると、上部二次格納容器42内の水素濃度が高くなり、上部二次格納容器42内の酸素と反応して爆轟が発生しその衝撃波により上部二次格納容器42を破壊するおそれがある。
【0042】
本実施形態にあっては、気相ベント管44bから水素ガスが放出されると直ちにイグナイター48により順次安定的に水素ガスを燃焼させてしまうことが可能となり、上部二次格納容器42内の水素濃度の上昇を抑え、その爆轟を防止し、上部二次格納容器42の破壊を防止することが可能となる。これは、都市ガスのコンロに火をつけて安定的に燃焼させても何ら問題ないのに、ガスを室内に充満させてその濃度を十分に高くてしまってから何らかの理由でそのガスに着火すると爆発してしまうのと同様の理由である。
【0043】
次に、図5により、本発明に係る原子炉格納容器の第5の実施形態を説明する。本実施形態では、窒素ガス供給系49から窒素ガスを上部二次格納容器42内に供給し、プラントの通常運転中にあらかじめ上部二次格納容器42内の酸素濃度を低くして運転することを特徴としている。窒素ガス供給系49は、原子炉一次格納容器36内の酸素濃度を低く維持するためにも使用してもよい。
【0044】
本実施形態の意図するところは以下の通りである。過酷事故時に隔離連通切替手段45bが作動すると、大量の水素ガスが上部二次格納容器42内部に移行してくる。原子炉一次格納容器36の内部は、従来のBWRにおいても、事故前から常に窒素ガスで置換し酸素濃度を低減している。これにより、炉心燃料などから大量の水素ガスが発生しても水素爆轟の発生がないように設計されている。これは、BWRの優れた安全性の一つである。しかるに、隔離連通切替手段45bの作動により大量の水素が上部二次格納容器42内に放出されると、上部二次格納容器42内の雰囲気が空気で酸素濃度が十分に高い場合は、水素爆轟が発生する可能性が生じてくる。これは、原子炉格納容器内の雰囲気を窒素で置換せずに空気雰囲気のまま運転している加圧水型軽水炉(PWR)の場合に一般に存在する過酷事故時の主要なリスクの一つである。
【0045】
前記第4の実施形態のようにイグナイターで積極的に水素ガスを安定的に燃焼させることによりある程度のリスクは回避されるが、水素ガスの発生が大量、かつ、急激に起きるとイグナイターで燃焼しきれずに爆轟にいたるおそれがある。このようなリスクの高い設計を排除するためには、前述のとおり、上部二次格納容器42の内部も常時窒素で置換して酸素濃度を低減して運転することがより確実で安全である。前記PWRの場合には原子炉格納容器の自由空間体積が約8万mと大きく窒素ガスで置換することは困難であった。しかし、上部二次格納容器42の自由空間体積は約2万m程度であり、従来の原子炉一次格納容器36と同程度であるから雰囲気を窒素で置換することは容易である。
【0046】
このように構成された本実施形態では、上部二次格納容器42内を常時窒素で置換して酸素濃度を低減して運転することが現実的に可能となり、過酷事故時の水素爆轟のリスクを皆無にすることが可能となる。なお、窒素ガス供給系49による窒素ガスの供給は、窒素アキュムレーターなどの作動により事故後に行なっても良い。炉心損傷事故が発生しても炉心から大量の水素が発生するには時間遅れがあるため、このような対応も可能である。
【0047】
次に、図6により、本発明に係る原子炉格納容器の第6の実施形態を説明する。本実施形態においては上部二次格納容器42の内部に重力落下式格納容器冠水系プール50、50aを設けたことを特徴とする。重力落下式格納容器冠水系プール50,50aは円周状に連結して1体のプールとしても良いし、別々に独立して設置しても良い。重力落下式格納容器冠水系プール50,50aには冷却水が蓄えられており、ドライウェル11とはドライウェルドレン配管51により連結され、また、ウェットウェル18とはウェットウェルドレン配管52によって連結されている。
【0048】
ドライウェルドレン配管51は順次ストレーナー53,元弁54、逆止弁55,U字シール56、爆破弁57を介して、重力落下式格納容器冠水系プール50内の貯留水を重力によってドライウェル11内に導くものである。しかし、事故時の原子炉一次格納容器36内の圧力は冷却材喪失事故時には約3.5気圧、過酷事故時には約8気圧程度にも達するため、従来は原子炉一次格納容器36の外部から重力により冷却水を注入することは非現実的(事実上不可能)であった。8気圧もの内部圧力に打ち勝って重力だけで注水するためには最低でもプールの位置を原子炉一次格納容器36よりも80mほど高く位置させる必要がある。これは原理的には可能であっても、実際の設計としては、原子炉建屋の全高が150mにも達してしまい極めて非現実的で困難であった。
【0049】
しかし、本実施形態では、事故時にウェットウェル18内の圧力が上昇し、隔離連通切替手段45bが作動し、ウェットウェル18内の非凝縮ガスが気相ベント管44bを経て上部二次格納容器42内に放出される。これにより、上部二次格納容器42内の圧力が上昇しウェットウェル18内の圧力とほぼ均圧化されるので、上部二次格納容器42と原子炉一次格納容器36の圧力差はほとんどなくなる。その結果、重力落下式格納容器冠水系プール50内の貯留水を、容易に原子炉一次格納容器36内に重力により注入することが可能となる。これにより過酷事故時に下部ドライウェル15内に落下した損傷炉心の冷却が可能となる。
【0050】
しかし、冷却材喪失事故あるいは過酷事故が原子炉一次格納容器36内部で発生すると炉心の残留熱により水蒸気が発生するため、ドライウェル11内の圧力はウェットウェル18内の圧力よりも若干高く維持される。その差圧はベント管20の水没水深により決定され、事故後の圧力が静定した状態では0.1気圧程度である。
【0051】
隔離連通切替手段45bが作動した後は、ウェットウェル18と均圧化した上部二次格納容器42とドライウェル11との差圧もほぼ0.1気圧程度となる。重力落下式格納容器冠水系プール50から貯留水を落下させる際にはこの差圧が抵抗として働くが、重力落下式格納容器冠水系プール50の位置はドライウェル11よりも十分高い(注入点との高低差は20m以上)ため、位置のエネルギーによりドライウェル11内に重力による注水が可能となる。0.1気圧の差圧に打ち勝つためには、1m程度の高低差が確保されていれば良い。したがって、重力落下式格納容器冠水系プール50内の貯留水は重力により全量原子炉一次格納容器36内に注入される。
【0052】
しかし、重力落下式格納容器冠水系プール50内の貯留水が全量落下してしまうと、ドライウェルドレン配管51がベント管(気相管)となり、まず上部二次格納容器42とドライウェル11が均圧化してしまう。その結果さらに、気相ベント管44bで上部二次格納容器42と連結しているウェットウェル18がドライウェル11と均圧化してしまうという現象が発生する。もしもこのような現象が起きると、静的格納容器冷却系はドライウェル11とウェットウェル18の差圧を作動差圧として静的に格納容器の冷却を行なうのでその作動差圧が消失し、冷却機能を喪失してしまう。
【0053】
したがって、従来、ウェットウェル18およびこれと均圧化している空間から液相配管で冷却水をドライウェル11内に注水する場合には、貯留水が全量注入し終わった後に液相配管が気相配管化して、ドライウェル11とウェットウェル18の圧力差が喪失してしまわないように十分留意して設計する必要があった。
【0054】
本実施形態では、この問題をU字シール56と逆止弁55を組み合わせて設置することにより解決している。仮に重力落下式格納容器冠水系プール50内の貯留水が全量落下してしまっても、U字シール56の部分に冷却水が残り水封状態を維持するため、ドライウェルドレン配管51が完全に気相配管化してしまうことを回避することができる。さらに、ドライウェル11の圧力が過渡的に上昇してU字シール56内の水封水を逆流させて重力落下式格納容器冠水系プール50に向けて押し上げた場合には、逆止弁55が直ちに閉鎖して水封水の逆流を防止することが可能である。
【0055】
したがって本実施形態による重力落下式格納容器冠水系プールの設置により、事故時に圧力が上昇してしまったドライウェル11内部に安全に重力だけで冷却水を注入でき、かつ、冷却水を全量注入し終わった後でも、ドライウェル11とウェットウェル18の差圧を維持し静的格納容器冷却系の安全機能を確保し得る。
【0056】
また、ドライウェルドレン配管51の先端を原子炉圧力容器2に連結した場合(図示せず)には、減圧弁23を作動させて原子炉圧力容器2を減圧した後、重力落下式格納容器冠水系プール50から冷却水を原子炉圧力容器2内に注水して、炉心燃料の冷却を行なうことが可能である。
【0057】
一方、ウェットウェルドレン配管52により、同様に、重力落下式格納容器冠水系プール50a内の貯留水をウェットウェル18内にドレンすることも可能である。この場合には、すでに隔離連通切替手段45bの作動により均圧化した同士の空間での冷却水の注入であるので、U字シールによる水封機能は不要である。
【0058】
本実施形態による上部二次格納容器42と重力落下式格納容器冠水系プール50,50aとU字シール56と逆止弁55の設置により、事故時に圧力が上昇してしまった原子炉一次格納容器36内部に重力だけで冷却水を注入でき、原子炉圧力容器2内の炉心1の燃料の冷却、下部ドライウェル15内に落下した損傷炉心の冠水冷却、圧力抑制プール19への水源補給、重力落下式炉心冷却系プール37への水源補給などを原子炉一次格納容器36の外部から静的に行なうことができる。
【0059】
さらに、重力落下式格納容器冠水系プール50から水源補給が行なえるため原子炉一次格納容器36内部に設置されている重力落下式炉心冷却系プール37の容量を小さくすることができる。現状の重力落下式炉心冷却系プール37は上部ドライウェル14のほとんどの部分を占めており上部ドライウェル14内部の機器配置を困難にさせていたが、本実施形態により重力落下式炉心冷却系プール37を小さくできるため、上部ドライウェル14内機器配置が容易になる。
【0060】
次に、図7により、本発明に係る原子炉格納容器の第7の実施形態を説明する。本実施形態においては重力落下式格納容器冠水系プール50,50aの代わりに水遮蔽43を水源として使用する構成としたことを特徴とする。気相ベント管44bにより上部二次格納容器42内の圧力が原子炉一次格納容器36内の圧力とほぼ等しくなった後は、1m以上の高低差があれば重力により上部二次格納容器42内の水源から原子炉一次格納容器36内に注水することが可能である。したがって、原子炉一次格納容器ヘッド38の上部に位置する水遮蔽43からも原子炉一次格納容器36内に注水することが可能である。水遮蔽43の底部にストレーナー53,53aを設置し、ドライウェルドレン管51およびウェットウェルドレン管52を介して、それぞれドライウェル11およびウェットウェル18内に水遮蔽43の水源を重力により注水可能となる。
【0061】
ドライウェルドレン配管51には元弁54,逆止弁55,U字シール56、爆破弁57を設置して水の逆流を防止しつつ下部ドライウェル15もしくは原子炉圧力容器2内に直接注水可能な構成とする。また、ウェットウェルドレン配管52には元弁54aと逆止弁55aと爆破弁57aを設け水遮蔽43の水源の水を圧力抑制プール19などに補給可能な構成とする。
【0062】
図示していないが、水遮蔽43の水源の代わりに、これと隣接して存在するドライヤー・セパレーター・ピットに常時水を張り、これを水源とすることも可能である。また、同様に図示していないが、燃料交換用のバッファー燃料プールを水源とすることも可能である。
【0063】
このように構成される本実施形態により、新たに重力落下式格納容器冠水系プールを設けなくても事故時に原子炉一次格納容器36内に冷却水を重力により落下させて炉心燃料1や原子炉一次格納容器36の冷却を行なうことが可能となる。上部二次格納容器42のドーム天井部分にオーバーハングさせて重力落下式炉心冷却系プールを設置することは構造的にも、また、耐震設計上からも厳しい設計となるので、すでに存在している水遮蔽43などの水源を利用して同様の安全上の機能を得ることができる効果が得られる。
【0064】
次に、図8により、本発明に係る原子炉格納容器の第8の実施形態を説明する。本実施形態においては原子炉格納容器41の外部にさらにコンクリート性の外部事象防護壁59を設けたことを特徴とする。
【0065】
このように構成された本実施形態においては、旅客機などの大型の航空機の落下を想定しても原子炉格納容器41およびその内部の設備の健全性を維持することが可能となる。本実施形態では、原子炉格納容器41は、上部二次格納容器42部分の壁厚と原子炉一次格納容器36部分の壁厚がともにたとえば1.5mとしてあり、これだけで戦闘機などの小型の航空機の落下事故に耐えられる設計となっている。これは一般に小型の航空機の落下に対しては1.3m厚のコンクリート壁で対応可能とされていることによっている。一方、旅客機などの大型の航空機の落下に対しては1.8mの壁厚が必要とされている。本実施形態では、外部事象防護壁59の壁厚をたとえば0.6mとして、原子炉格納容器41の壁厚1.5mと合計して2.1mの壁厚を確保することにより、大型の航空機の落下事故に耐えられる設計としている。
【0066】
たとえば、原子炉格納容器41の壁厚自体を2.1mとすることにより同様の効果は期待できるが、本実施形態のように外部事象防護壁59を別途設けることにより、格納容器が事実上二重構造となり、若干の放射能漏洩防止効果の向上が期待される。また、より軽微な外部事象、たとえばガス爆発などでは外部事象防護壁59だけで対応可能であり、その場合には安全上より重要な原子炉格納容器41に全く衝撃を与えることなく健全性を維持することが可能となる。さらに、燃料交換などの作業のために作業員がエレベーターでオペフロ47上にアクセス可能な設計とする必要があるが、外部事象防護壁59の内部にエレベーターを設置することが可能となる。
【0067】
次に、図9により、本発明に係る原子炉格納容器の第9の実施形態を説明する。本実施形態においては原子炉圧力容器2の下部にインターナルポンプ60を約10台程度設置することを特徴とする。このように構成された本実施形態においては、冷却水を炉心1に強制的に供給できるため、原子炉の出力をたとえば170万KWeと極めて高くすることが可能となる。その際、炉心燃料の装荷量を増やした場合、過酷事故時に発生する水素の量もこれに比例して増大してしまう。従来の静的安全炉型BWRでは大量水素の発生は原子炉一次格納容器36の健全性を脅かす最大の要因であって、これが原子炉出力の上限が決める制約条件の一つになっていた。
【0068】
本実施形態の原子炉格納容器41の圧力は上部二次格納容器42の存在により大幅に低減されるため、原子炉出力の上昇にとっては、原子炉格納容器圧力は制約条件とはならない。その結果、インターナルポンプ60を設置することにより原子炉出力を障害なく上昇させることが可能となる。これにより、発電単価を大幅に低減することができる。
【0069】
静的安全炉型BWRは重力落下式炉心冷却系を用いるため原子炉圧力容器の長さを非常に長くして原子炉内の冷却水を大量に保持している必要がある。このため建設コストがこの部分では上昇せざるを得ない。一方、本実施形態によればプラント出力を増大しても原子炉圧力容器や原子炉一次格納容器は全く大きくする必要はない。したがって、本実施形態によりインターナルポンプ60を設置しプラント出力を大きくできることは経済性上の効果が非常に大きい。
【0070】
また、インターナルポンプ60により冷却材の炉心流量を容易に制御可能となり、炉心の出力制御を簡便に行なえるようになり、制御棒による出力制御をあまり行なう必要がなくなる。これにより制御棒駆動系はステップ幅の大きい従来型のロッキングピストン方式が採用可能となりコストの大幅な低減が図れる効果も生じる。静的安全炉型BWRではよりステップ幅が小さいファインモーション型の制御棒駆動系を用いる必要がありコスト上昇の問題があり、制御棒本数を低減するなどの炉心設計上困難な設計を選択する必要があったが、本実施形態ではこのような困難な設計を回避できる効果が得られる。
【0071】
次に、図10により、本発明に係る原子炉格納容器の第10の実施形態を説明する。本実施形態においては、重力落下式格納容器冠水系プール50,50aを上部二次格納容器42内に設置し、原子炉圧力容器注水配管58およびドライウェルドレン配管51を介して原子炉圧力容器2への注水およびドライウェル11への注水を行なうことを特徴とする。
【0072】
このように構成される本実施形態においては、ドライウェル11内に重力落下式炉心冷却系プール37(図1参照)を設置する必要がなくなり、これを削除することが可能となる。これによりドライウェル11内部の空間をより有効に利用することが可能となる。従来の静的安全炉型BWRでは上部ドライウェル14の空間は2/3程度が重力落下式炉心冷却系プールによって占められており、主蒸気配管(図示せず)などの配置を極めて狭隘な空間で行なうことを余儀なくされていたが、本実施形態により重力落下式炉心冷却系プールが不要となり、上部ドライウェル14内の配置設計を現実的なものとすることが可能となる。
【0073】
次に、図11により、本発明に係る原子炉格納容器の第11の実施形態を説明する。本実施形態においては、原子炉格納容器の内部に動的安全炉であるABWRと同様の原子炉圧力容器2と原子炉一次格納容器36を設置したことを特徴とする。圧力抑制プール19は原子炉一次格納容器36の最下部にある点は従来のABWRの場合と同じである。圧力抑制プール19の冷却水は動的非常用炉心冷却系の水源となっており、冷却材喪失事故時などに原子炉圧力容器2およびドライウェル11内に注入される。
【0074】
本実施形態が従来の動的安全炉であるABWRと異なる点は、原子炉圧力容器2がABWRのものより約2m程度長く、これにより炉心1の上端がダイアフラムフロア61よりも低い位置にあり、動的非常用炉心冷却系により冷却水を注入し下部ドライウェル15およびペデスタル62の内部を冠水すると炉心1を上端まで冠水できる点にある。ペデスタル62内の冷却水は破断口もしくは爆破弁(図示せず)を介して原子炉圧力容器2内に侵入し、炉心1を冠水させる。
【0075】
本実施形態が従来のABWRと異なるもう一つの点は、重力落下格納容器冠水系プール(重力落下式格納容器冠水系プール)50を上部二次格納容器42のドーム部に設置したことである。これにより、原子炉圧力容器注水配管58を介して冷却水を原子炉圧力容器2内に注水し、炉心1の冷却が可能となっている。さらに、水遮蔽43からもドライウェルドレン配管51を介して下部ドライウェル15へ注水し、過酷事故時にコアキャッチャー46へ落下した溶融炉心を冷却することが可能となっている点も従来のABWRと異なる。
【0076】
従来のABWRでは、冷却材喪失事故時などには原子炉一次格納容器36の圧力が高くなり、仮に重力落下式格納容器冠水系プール50を設置したとしても、原子炉一次格納容器36の外部から重力で原子炉一次格納容器36の内部に圧力に打ち勝って注水することは不可能であった。しかし、本実施形態では、隔離連通切替手段45bが作動し、ウェットウェル18の内圧と上部二次格納容器42の内圧はほぼ均圧化されている。ドライウェル11の内圧とウェットウェル18の内圧の差は、ベント管20の水没水深(数m)で決まっており、最大でも0.5気圧程度の差圧しかない。したがって、重力落下式格納容器冠水系プール50および水遮蔽43と注入箇所の高低差を数mとれば水頭差により冷却水がドライウェル11内部に注入可能となる。
【0077】
このように構成された本実施形態においてはABWRのような動的安全炉の場合であっても、仮に非常用炉心冷却系が故障して停止してしまっても、炉心の冷却を維持することが可能である。すなわち、本実施形態による原子炉格納容器により、静的に安全性の維持が可能となる。このようなプラント概念にあっては、動的非常用炉心冷却系は重力落下式格納容器冠水系プール50や水遮蔽43による静的冷却系と独立かつ多重(深層)に構成され、原子炉の深層防護による安全性が極めて高くなるという効果が得られる。
【0078】
次に、図12により、本発明に係る原子炉格納容器の第12の実施形態を説明する。本実施形態においては、ウェットウェル18は原子炉一次格納容器36の最上部に位置する。この種の圧力抑制プールを便宜的に上部圧力抑制プール(レイズド圧力抑制プール)63と呼ぶ。上部圧力抑制プール63では水位を炉心1よりも高く維持することが可能となり、配管70および爆破弁71を介してレイズド圧力抑制プール63内の水を原子炉圧力容器2内に導くことにより炉心1を常に冠水することが可能となる。
【0079】
このようなレイズド圧力抑制プールタイプの原子炉一次格納容器は従来から考案されていたが、主蒸気配管などをレイズド圧力抑制プール63の下部から外部に導出する構造となるため、下部ドライウェル15の空間体積が大きくなる傾向があった。その結果、冷却材喪失事故時に下部ドライウェル15を冠水するだけの圧力抑制プール水量を確保するために、圧力抑制プール水深を深くとる必要がある。これは、ドライウェル11内部をベント管20の入り口部分まで冠水しないとレイズド圧力抑制プール63に冷却水が還流しない構造となるため、最初からレイズド圧力抑制プール63の水量を大量に保有しておく必要があるからである。
【0080】
その結果、ウェットウェル18の気相部体積が低減し、事故時の原子炉一次格納容器圧力が許容できないほど高くなってしまう。これを回避しようとすると、圧力抑制プール水深を浅くして水量を確保するために、原子炉一次格納容器36の内径を大きくする必要がある。その結果、経済的に成立しないものになってしまうという問題があった。冷却水を別途、外部から注入する方法もあるが、原子炉一次格納容器内圧が高いため、非常用炉心冷却系とは別に専用ポンプが必要になり、経済性および信頼性が低下するという問題があった。このような事情から実際にレイズド圧力抑制プールを用いた実炉は存在していない。
【0081】
上記ように構成された本実施形態にあっては、ウェットウェル18気相部の圧力は隔離連通切替手段45bおよび気相ベント管44bを介して上部二次格納容器42内に放出されるので、ウェットウェル18の気相部体積を確保するためにウェットウェル気相部高さを高くとる必要がなくなり、レイズド圧力抑制プール63の水位を十分高くとり圧力抑制プール水量を多量に確保することが可能となる。また、同様の理由により、ウェットウェル18内の圧力と上部二次格納容器42内の圧力が均圧化されるために、上部二次格納容器42内に設置した重力落下式格納容器冠水系プール50aより重力によりレイズド圧力抑制プール63に冷却水を補充することも容易に可能である。その結果、レイズド圧力抑制プール63の水量を最小限度に抑えることも可能である。
【0082】
また、重力落下式格納容器冠水系プール50から重力により原子炉圧力容器注水配管58を介して原子炉圧力容器2内に注水することにより、炉心1を冷却しつつ事故時の原子炉圧力容器2の破断口から冷却水を流出させ、ドライウェル11内をベント管20の入り口部分まで冠水してしまうことが可能である。本実施形態では、ドライウェル11が冠水してレイズド圧力抑制プール63に冷却水が還流した後は、動的非常用炉心冷却系の動作を継続する必要はなくなる。
【0083】
本実施形態では炉心上端部とレイズド圧力抑制プール水との高低差が上記第11の実施形態に比べてより大きく取れるため、炉心の冠水維持がより高信頼度で実施できる利点が得られる。また、ドライウェル11はベント管20の入り口部分までほぼ完全に冠水してしまうので、原子炉圧力容器2はほぼ2/3が冠水し、炉心1は冠水する。その結果、過酷事故時に原子炉圧力容器2の下部が溶融貫通することを防止し、溶融炉心を原子炉圧力容器2内に留めることが可能となる。
【0084】
さらに、インターナルポンプ60が原子炉圧力容器2から抜け落ちるような極めて希な極限事象に対しても、なんら問題なく炉心1の冠水冷却が可能となる。さらに、過酷事故時に原子炉圧力容器2内に残存した溶融炉心からの輻射熱により従来の原子炉では原子炉格納容器が加温破損するおそれがあったが、本実施形態では、炉心1および原子炉圧力容器2がほとんど冠水してしまうため、このような加温破損が回避可能となる。このように本実施形態では、原子炉一次格納容器36の内部を外部動力や外部水源に頼らず静的安全機能だけでほぼ冠水してしまうことが可能となり、従来の軽水炉概念では到達し得ない極めて高いレベルの安全性を実現できる。
【0085】
なお、第4ないし第12の実施形態においては、第3の実施形態に示される気相ベント管44bおよび隔離連通切替手段45bを適用するものとして説明したが、第1または第2の実施形態で示される気相ベント管および隔離連通切替手段を適用してよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る原子炉格納容器の第1の実施形態を示す立断面図である。
【図2】本発明に係る原子炉格納容器の第2の実施形態を示す立断面図である。
【図3】本発明に係る原子炉格納容器の第3の実施形態を示す立断面図である。
【図4】本発明に係る原子炉格納容器の第4の実施形態を示す立断面図である。
【図5】本発明に係る原子炉格納容器の第5の実施形態を示す立断面図である。
【図6】本発明に係る原子炉格納容器の第6の実施形態を示す立断面図である。
【図7】本発明に係る原子炉格納容器の第7の実施形態を示す立断面図である。
【図8】本発明に係る原子炉格納容器の第8の実施形態を示す立断面図である。
【図9】本発明に係る原子炉格納容器の第9の実施形態を示す立断面図である。
【図10】本発明に係る原子炉格納容器の第10の実施形態を示す立断面図である。
【図11】本発明に係る原子炉格納容器の第11の実施形態を示す立断面図である。
【図12】本発明に係る原子炉格納容器の第12の実施形態を示す立断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1…炉心、2…原子炉圧力容器、11…ドライウェル、12…原子炉圧力容器サポート、13…原子炉圧力容器スカート、14…上部ドライウェル、15…下部ドライウェル、16…爆破弁、17…配管、18…ウェットウェル、19…圧力抑制プール、20…ベント管、21…隔離弁、22…配管、23…減圧弁、24…原子炉隔離時コンデンサープール、25…静的格納容器冷却系プール、26…原子炉隔離時コンデンサー熱交換器、27…隔離弁、28…配管、29…静的格納容器冷却系熱交換器、30…吸込み配管、31…気相部戻り配管、36…原子炉一次格納容器、37…重力落下式炉心冷却系プール、38…原子炉一次格納容器ヘッド、40…機器室、41…原子炉格納容器、42…上部二次格納容器、43…水遮蔽、44,44a,44b…気相ベント管、45,45a,45b…隔離連通切替手段、46…コアキャッチャー、47…オペフロ、48…イグナイター、49…窒素ガス供給系、50,50a…重力落下式格納容器冠水系プール、51…ドライウェルドレン配管、52…ウェットウェルドレン配管、53…ストレーナー、54…元弁、55…逆止弁、56…U字シール、57…爆破弁、58…原子炉圧力容器注水配管、59…外部事象防護壁、60…インターナルポンプ、61…ダイアフラムフロア、62…ペデスタル、63…上部圧力抑制プール(レイズド圧力抑制プール)、70…配管、71…爆発弁




 

 


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