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発明の名称 ダイバーシチ受信機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−6264(P2007−6264A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−185369(P2005−185369)
出願日 平成17年6月24日(2005.6.24)
代理人 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
発明者 松岡 秀浩 / 笠見 英男 / 鶴田 誠 / 村上 康
要約 課題
回路規模を効果的に削減可能なポストFFTダイバーシチ方式によるダイバーシチ受信機を提供する。

解決手段
OFDM信号を受信する複数(N)のアンテナ11〜14と、各アンテナからの受信信号に対して遅延広がりを低減させるためのフィルタ処理を施すディジタルフィルタ15〜18、ディジタルフィルタ15〜18の出力信号に対してビーム合成処理を行うK個(K≦N)のビーム合成部31,32、ディジタルフィルタ15〜18の出力信号に対して固有値分解を行い、N個の固有値を得る固有値分解部38、N個の固有値から大きい順に選択したK個の固有値にそれぞれ対応する固有ベクトルをビーム合成部31,32に対して合成ウェイトとしてそれぞれ設定するウェイト設定部39、ビーム合成部39の出力信号に対してフーリエ変換を施すK個のFFTユニット41,42、及びFFTユニットの出力信号を合成して復調を行うダイバーシチ合成部43を有する。
特許請求の範囲
【請求項1】
直交周波数分割多重信号を受信して受信信号を出力する複数(N)のアンテナと、
前記受信信号に対して遅延広がりを低減させるためのフィルタ処理を施すN個のディジタルフィルタと、
前記ディジタルフィルタの出力信号に対して合成ウェイトを用いてビーム合成処理を施すK個(K≦N)のビーム合成部と、
前記ディジタルフィルタの出力信号に対して固有値分解を行い、N個の固有値を得る固有値分解部と、
前記N個の固有値から大きい順にK個の固有値を選択し、該K個の固有値にそれぞれ対応する固有ベクトルを前記ビーム合成部に対して前記合成ウェイトとしてそれぞれ設定するウェイト設定部と、
前記ビーム合成部の出力信号に対してフーリエ変換を施すK個のFFTユニット、及び
前記FFTユニットの出力信号を合成して復調を行うダイバーシチ合成部を具備するダイバーシチ受信機。
【請求項2】
前記ディジタルフィルタは、該ディジタルフィルタの出力信号の信号対雑音比を最大化するように構成される請求項1記載のダイバーシチ受信機。
【請求項3】
前記ディジタルフィルタは、該ディジタルフィルタの出力信号の信号対干渉波比を最大化するように構成される請求項1記載のダイバーシチ受信機。
【請求項4】
前記ウェイト設定部は、前記N個の固有値のうち予め定められた第1閾値を上回る固有値を前記K個の固有値として選択する請求項1記載のダイバーシチ受信機。
【請求項5】
前記ディジタルフィルタは、前記受信信号を遅延させる少なくとも一つのタップを有するタップ付き遅延線と、前記受信信号及び前記タップの出力信号を設定されたフィルタ係数に従って重み付け加算する重み付け加算部と、前記フィルタ係数を設定するフィルタ係数設定部とを有する請求項1記載のダイバーシチ受信機。
【請求項6】
前記ディジタルフィルタは、前記受信信号を遅延させる複数のタップを有するタップ付き遅延線と、前記受信信号及び前記複数のタップの出力信号を設定されたフィルタ係数に従って重み付け加算する重み付け加算部と、前記受信信号のチャネル応答を推定することにより前記受信信号に含まれる遅延波の遅延時間と振幅レベルを求めるチャネル応答推定部と、前記遅延時間と振幅レベルに従って前記重み付け加算部に対して有効なタップの数を変化させ、前記複数のタップの出力信号のうち該有効なタップの出力信号に対してみ前記フィルタ係数を設定するフィルタ係数設定部とを有する請求項5記載のダイバーシチ受信機。
【請求項7】
前記フィルタ係数設定部は、前記複数のタップのうち前記振幅レベルが予め定められた第2閾値以下の遅延波の持つ遅延時間に対応するタップの出力信号に対するフィルタ係数を0にする請求項6記載のダイバーシチ受信機。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交周波数分割多重(OFDM)の無線通信システムで用いられるダイバーシチ受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の地上ディジタルテレビジョン放送では、変調方式にOFDMを採用することによって、情報伝送速度の高速化を実現すると同時に、ゴースト波などの遅延干渉波に対してロバストとしている。OFDMでは、周波数軸上で互いに直交する複数のサブキャリアにデータを割り当てて変調を行う。OFDM無線通信システムの送信側では、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換するための逆高速フーリエ変換(IFFT)処理を行い、受信側では時間領域の信号を周波数領域の信号に戻すための高速フーリエ変換(FFT)処理を行う。
【0003】
OFDMにおいて、各サブキャリアの変調には任意の変調方式を用いることが可能であり、例えば同期検波による伝送や遅延検波による伝送が可能である。同期検波においては、送信側で周波数軸上及び時間軸上の所定位置に振幅及び位相が既知のパイロット信号を挿入する。受信側ではパイロット信号を抽出して振幅及び位相を測定し、既知の振幅及び位相との誤差を求める。この誤差検出結果に応じて、受信信号の振幅及び位相の等化をサブキャリア単位で行う。遅延検波においては、送信側で差動符号化された信号に対し、受信シンボル間で差動復号を行うことにより、受信信号を復調する。
【0004】
OFDMにおいて受信品質を改善するために、複数のアンテナを用いる空間ダイバーシチは非常に有効である。空間ダイバーシチの一つとして、各アンテナで受信した信号を同相にして合成する合成ダイバーシチがある。このような空間ダイバーシチを行う場合、非特許文献1に記載されているように、ダイバーシチ合成をFFTの前、すなわち時間領域で行う方法(プリFFT合成ダイバーシチという)と、FFTの後すなわち周波数領域で行う方法(ポストFFT合成ダイバーシチという)がある。非特許文献1では合成ダイバーシチをアダプティブアレー処理と称しているが、これらは同義である。
【0005】
非特許文献1に開示されているプリFFT合成ダイバーシチでは、遅延広がりがあるマルチパス伝搬路モデルでは、固有ベクトルの持つ信号空間による合成結果は必ずしも信号対雑音比(SNR)最大とならないため、ダイバーシチ利得が十分に得られない。非特許文献1に開示されているポストFFT合成ダイバーシチによると、高いダイバーシチ利得により受信性能が向上する。
【0006】
一方、非特許文献2ではポストFFT合成ダイバーシチにおいて回路規模の低減と、ダイバーシチウェイトを求める際のトレーニング信号のサンプル数が少ないことによる特性劣化を改善する方法を提案している。FFT後の信号を使ってダイバーシチウェイトを計算するとき、干渉波を抑圧するためにどのような適応アルゴリズムを適用した場合にも、受信信号と既知信号との相関計算を行う必要がある。従って、トレーニング信号のサンプル数が少ないと十分な平均化を行うことができず、ダイバーシチウェイトは最適値にまで収束しない。
【0007】
非特許文献2によると、FFT前に固有値分解を行い、最大固有値を含むK個(K≦N)の固有値を用いてそれぞれ異なる固有ベクトルビームを形成する。K個の固有ベクトルビームの出力をFFTユニットに入力し、Kブランチのサブキャリアダイバーシチ合成を行う。K個の固有値として、予め定められた閾値を上回る固有値を選択する。到来信号の到来角度広がりが大きいときは、2番目以下の固有値が大きくなることがある。従って、最大固有値のみでなく2番目以下の固有値も用いることによって電力の有効活用を行い、通常のポストFFT合成ダイバーシチと同程度の性能を維持することができる。
【非特許文献1】H. Matsuoka and H. Shoki, “Comparison of Pre-FFT and post-FFT processing adaptive arrays for OFDM systems in the presence of co-channel interference”, IEEE PIMRC2003, vol.2, pp.1603-1607, Sept. 2003.
【非特許文献2】S. Hara, M. Budsabathon and Y. Hara, “A pre-FFT OFDM adaptive antenna array with eigenvector combining”, IEEE International Conference on Communications 2004, vol.4, pp.2412-2416, June 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に開示されているようなポストFFT合成ダイバーシチは、受信性能に優れる反面、アンテナ数の増加に伴ってFFT及びその後段のビーム合成部での合成ウェイト数が増加する。このため、地上ディジタル放送のように数千本ものサブキャリアを使用する無線通信システムにおいては、受信機の回路規模が膨大なものになってしまう。
【0009】
非特許文献2では、角度広がりや遅延広がりに依存して閾値を上回る固有値の個数が変化し、それに伴ってサブキャリアダイバーシチのブランチ数を選択する。従って、最大でアンテナ数と同数のFFTユニット及びダイバーシチ合成部を備える必要があり、加えてFFT前の固有値分解を含むウェイト合成処理を必要とする。このため、非特許文献1に開示されたような通常のポストFFT合成ダイバーシチに比べて、回路規模が必ずしも小さくなるとはいえない。
【0010】
本発明の目的は、回路規模を効果的に削減可能なポストFFTダイバーシチ方式によるダイバーシチ受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの観点によると、直交周波数分割多重信号を受信して受信信号を出力する複数(N)のアンテナと、前記受信信号に対して遅延広がりを低減させるためのフィルタ処理を施すN個のディジタルフィルタと、前記ディジタルフィルタの出力信号に対して合成ウェイトを用いてビーム合成処理を施すK個(K≦N)のビーム合成部と、前記ディジタルフィルタの出力信号に対して固有値分解を行い、N個の固有値を得る固有値分解部と、前記N個の固有値から大きい順にK個の固有値を選択し、該K個の固有値にそれぞれ対応する固有ベクトルを前記ビーム合成部に対して前記合成ウェイトとしてそれぞれ設定するウェイト設定部と、前記ビーム合成部の出力信号に対してフーリエ変換を施すK個のFFTユニット、及び前記FFTユニットの出力信号を合成して復調を行うダイバーシチ合成部を具備するダイバーシチ受信機が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ディジタルフィルタにより受信信号の遅延広がりを等価的に低減することができ、これによって全固有値の大小差を大きくできる。すなわち、最大固有値と第2固有値のビームに含まれる所望信号のエネルギーを最大化することができるので、Kの値をなるべく小さくしたまま、ダイバーシチ利得を大きくすることができる。これによって、小さな回路規模で良好な受信性能を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイバーシチ受信機であり、この例ではN=4個のアンテナを用いている。アンテナ11〜14は、OFDM信号を受信して受信信号を出力する。アンテナ11〜14からの受信信号は、それぞれ図示しない高周波回路やアナログ/ディジタル変換器によりディジタル信号に変換された後、ディジタルフィルタ15〜18に入力される。
【0015】
ディジタルフィルタ15〜18は、受信信号の遅延広がりを低減させてSNRあるいは信号対干渉波比(signal to interference ratio:SIR)を高くするためのフィルタ処理を行う。ディジタルフィルタ15〜18は、図1の例ではタップ付き遅延線(tapped delay line:TDL)20、乗算器21A,21B、加算器22及びフィルタ係数設定部23をそれぞれ有する。乗算器21A,21Bと加算器22からなる部分は、重み付け加算部と呼ばれる。このようなディジタルフィルタは、有限長インパルス応答(finite impulse response:FIR)フィルタ、トランスバーサルフィルタあるいは整合フィルタとも呼ばれる。
【0016】
乗算器21A,21Bでは、アンテナ11〜14からの受信信号及びTDL20のタップからの出力信号に対して、フィルタ係数設定部23により設定されたフィルタ係数を乗じる。乗算器21A,21Bの出力信号は加算器22によって加算され、加算器22の出力信号がディジタルフィルタ15〜18から出力される。フィルタ係数設定部23は、アンテナ11〜14からの受信信号及びTDL20の出力信号からフィルタ係数を計算により求め、そのフィルタ係数を乗算器21A,21Bに与える。フィルタ係数設定部23では、アンテナ11〜14毎に独立にフィルタ係数が計算される。フィルタ係数の計算方法については、後に詳しく説明する。
【0017】
TDL20は、図1ではタップ数Lを1としているが、Lは複数であってもよい。狭帯域通信システムでは、実測に基づいて遅延パスモデルを擬似的に作る場合、2パスフェージングモデルを想定することが多い。この理由は、信号帯域の制限に伴う時間分解能が粗いこと、さらに複数の遅延パスの近似は2波で十分可能であるからである。従ってL=1とすることにより、必要最小限の回路規模で、遅延広がりを低減する整合フィルタとしてのディジタルフィルタ15〜18を実現することができる。
【0018】
ディジタルフィルタ15〜18の出力信号は、この例では第1及び第2のビーム合成部31,32に入力される。ディジタルフィルタ15〜18の出力信号は、ビーム合成部31,32において乗算器33〜36により合成ウェイトによる複素重み付けがなされた後、加算器37により加算される。ビーム合成部31,32からは、指向性の異なる複数の受信ビーム(固有ビームともいう)に対応した出力信号(ビーム出力)が得られる。ビーム合成部31,32における合成ウェイトは、以下のようにして設定される。
【0019】
ディジタルフィルタ15〜18の出力信号に対して、固有値分解部38により固有値分解が施される。固有値分解部38は、例えばディジタルフィルタ15〜18の出力信号によって与えられる受信信号ベクトルの相関行列を求め、4個の固有値λ1〜λ4(λ1>λ2>λ3>λ4)および固有値λ1〜λ4に対応する固有ベクトルを求める。ウェイト計算部39は、最大固有値λ1に対応する固有ベクトルを第1のビーム合成部31に対して合成ウェイトとして設定する。さらに、ウェイト設定部39は2番目に大きい固有値λ2に対応する固有ベクトルを第2のビーム合成部32に対して合成ウェイトとして設定する。
【0020】
ビーム合成部31,32の出力信号は、それぞれFFTユニット41,42によりフーリエ変換が施されることにより、周波数領域の信号すなわちサブキャリア信号に変換される。FFTユニット41,42の出力信号はダイバーシチ合成部43に入力され、ここでサブキャリア毎にダイバーシチ合成が行われることによって、送信されてきたOFDM信号に乗っているデータ44が再生される。
【0021】
図2は、ダイバーシチ合成部43の具体例を示している。FFTユニット41,42からの出力信号に対して、サブキャリア単位で乗算器51,52によりウェイト設定部54で設定されたウェイトが乗じられる。乗算器51,52の出力信号は加算器53により加算され、加算器53の出力信号は復調器55によって復調される。復調器55から再生されたデータ44が出力される。
【0022】
本実施形態に係るダイバーシチ受信機では、ディジタルフィルタ15〜18によりアンテナ11〜14毎に受信信号中の遅延パス成分のエネルギーをかき集めることで、SNRを高めた出力信号を生成する。次に、ビーム合成部31,32において最大固有値と2番目に大きい固有値にそれぞれ対応する2つの固有ベクトルを合成ウェイトとして、ディジタルフィルタ15〜18の出力信号を重み付け合成することで、さらにSNRを改善した受信ビームを張る。ビーム合成部31,32からの各受信ビームに対応する出力信号に対して、FFTユニット41,42及びダイバーシチ合成部43によって、ポストFFTサブキャリア合成ダイバーシチを行う。
【0023】
従って、ビーム合成部31,32以降のFFTユニット41,42及びダイバーシチ合成部43内の乗算器51,52はそれぞれ2個と、アンテナ11〜14の数より少ない構成で、4個のアンテナからの受信信号に対して直接ポストFFT合成ダイバーシチを行う場合と同等の性能を実現できる。すなわち、回路規模を大幅に削減しつつ高いダイバーシチ利得を有する良好な受信性能を得ることができる。さらに、場合によっては消費電力の低減と、アルゴリズムの簡易化などの改善も可能である。図1の例では、アンテナ11〜14の数Nが4、ビーム合成部31,32の数が2の場合について示したが、要求される品質改善度に応じてアンテナ数及びビーム合成部の数を変えてもよい。
【0024】
次に、ディジタルフィルタ15〜18内のフィルタ係数設定部23におけるフィルタ係数の計算方法について説明する。ディジタルフィルタ15〜18として、例えば受信信号の相関処理を用いた整合フィルタを実現する。図3(a)に示すように2つのパス成分201,202を有するマルチパス伝搬モデルを想定したとき、以下のように受信信号x(t)の複素共役x*(t)とx(t)を時間τだけ遅延させた信号とを乗算した値の集合平均をとる。
【0025】
y=E[x*(t)x(t−τ)] (1)
このとき、ベクトルh=[1,y]がマルチパス伝搬路に対するディジタルフィルタ15〜18のフィルタ係数を表す。ここで乗算器21A,21Bに与えるウェイトをh/|h|とすることにより、図3(b)に示すような遅延パス合成がなされる。ここで|h|はベクトルhのノルムである。すなわち、図3(a)中のパス成分201を先行波成分、パス成分202を遅延波成分とすると、ディジタルフィルタ15〜18によってパス成分202のエネルギーの一部をパス成分201の遅延時間の位置、すなわち図3(b)のパス成分204の位置に集める。図3(b)中のパス成分204を所望波成分とし、それ以外のパス成分203,205を不要波成分とすると、パス成分204の電力/(パス成分203+パス成分205)の電力を所望波成分のSNRとみなすことができるので、ディジタルフィルタ15〜18によってSNRは改善される。
【0026】
符号分割多重(code division multiple access;CDMA)では、受信側において各遅延パス成分だけが抽出され、これらの遅延パス成分が遅延補償を受けた後に同相で合成されるため、遅延パス成分は完全に除去される。一方、本実施形態のようにOFDMを対象とする場合、受信側でサンプル間(遅延)干渉成分が残留する。しかし、OFDMでは元来、遅延干渉成分はFFT後にサブキャリア毎に補償されるため影響がない。従って、アンテナ11〜14から遅延広がりを持つ受信信号が出力される場合に、アンテナ毎の受信信号に含まれる遅延波成分のエネルギーをディジタルフィルタ15〜18によって一定の遅延時間の部分にかき集めることで、所望波のSNRを増大させることができる。
【0027】
図1に示した例のようにTDL20が1タップの場合、残留干渉波成分が比較的大きくなるとN個の固有値間の大小差が縮まる。このため、最大の固有値と2番目に大きい固有値に対応する固有ベクトルビームだけでサブキャリアダイバーシチを行うと、ダイバーシチ利得が若干失われる。しかし、そもそも1ブランチによる受信から2ブランチの合成受信にすることによるダイバーシチ利得の増加に比べて、2ブランチの合成受信から4ブランチの合成受信にすることによる利得の改善度は小さいため、回路規模と性能のトレードオフの観点から優位性は保たれる。
【0028】
広帯域の無線通信システムでは、ディジタルフィルタ15〜18の前段のアナログ/ディジタル変換でのサンプリングレートが高いため、遅延波の時間分解能も高くなり、見かけ上多くの遅延パスが入射するように見える。このような場合、ディジタルフィルタ15〜18のタップ数Lを大きくすることで、受信信号の分散した信号エネルギーをかき集めることができる。時間分解能が同じで、遅延時間の大きい遅延波が入射する場合にも同様に有効である。
【0029】
図4は、ディジタルフィルタ15の他の例を示している。他のディジタルフィルタ16〜18についても、同様である。図1ではタップ数Lが1であったのに対して、図4ではLを2以上としている。この場合、フィルタ係数は以下にようにして求められる。
【0030】
受信信号x(t)の複素共役x*(t)とx(t)をiτ(i=1, … ,L−1)だけ遅延させた信号とを乗算した値の集合平均をとる。
【0031】
i =E[x*(t)x(t−iτ)]
このとき、ベクトルh=[1, y1, …, yL-1]がマルチパス伝搬路の整合フィルタ係数を表し、ディジタルフィルタ15〜18の乗算器21に与えるウェイトはh/|h|として求まる。このようにタップ数Lを2以上とすることで、2つ以上の複数パスに渡る遅延波成分を効率よくかき集めることができる。
【0032】
図5は、ディジタルフィルタ15の別の例を示している。他のディジタルフィルタ16〜18についても、同様である。図4に示したようにタップ数Lが2以上であっても、遅延パスがL個存在しない場合、またはP個(P<L)の遅延パスが支配的であって、それ以外の遅延パスはレベルが小さい場合がある。このような場合、図5のようなディジタルフィルタが有効である。図5では、チャネル応答推定部24が追加されている。
【0033】
チャネル応答推定部24は、チャネル応答(受信信号の遅延プロファイル)を推定することで、遅延波の持つ遅延時間とおおよその振幅レベルを観測する。フィルタ係数設定部23は、チャネル応答推定部24により観測された遅延波の持つ遅延時間τ’pに対応するタップのフィルタ係数のみを設定する。遅延プロファイルの推定には様々な手法が提案されており、例えば既知信号と受信信号を時間的にずらしながら相関をとるスライディング相関法が知られている。FFTによる周波数領域でサブキャリア毎のチャネル応答を求め、周波数領域のチャネル応答に対してIFFTを施すことで遅延プロファイルを推定する方法を用いることもできる。このとき
p=E[x*(t)x(t−τ’p)] (p=1, 2 , …, P)
で示されるτ’pの相関値に対して、ベクトルh=[1, y1, y2, …, yP ]とすると、h/|h|というフィルタ係数が得られる。
【0034】
遅延パスとして認識するために振幅レベルに対する閾値Athを設け、遅延プロファイルの振幅レベルがAthを上回る場合のみ、当該遅延プロファイルの遅延時間の位置にパスが存在すると見なして、対応するタップに対する相関処理及びフィルタ係数の計算を行い、それ以外のタップには0をフィルタ係数として与えてもよい。または対応する処理回路及び乗算器が動作しないように、すなわち電流を流さないように、スイッチ処理を行ってもよい。
【0035】
このようにディジタルフィルタの有効なタップ数を可変にすることにより、時間と共に伝搬路が変動し、遅延パス数が変化するような通信環境下においても、消費電力を抑えつつ、有意なすべての遅延波成分を効率よくかき集めることができる。
【0036】
フィルタ係数の別の計算方法として、最小平均二乗誤差(minimum mean square error:MMSE)アルゴリズムを用いて、受信信号と参照信号との誤差を最小化するようにフィルタ係数を決定することもできる。参照信号は、例えばパイロット信号やプリアンブル信号であり、これらは受信側で既知の信号である。MMSEアルゴリズムを用いると、アンテナ毎に遅延広がりを持つ受信信号が入射する際、アンテナ毎に各遅延パス成分を抑圧し、先行波成分だけを同相で合成することができる。これによってアンテナ毎に周波数選択性フェージングを受けた信号の歪みを、一様フェージングを受けた信号の歪みと同等にすることができるので、全固有値の大小差を大きくすることができる。すなわち、最大固有値と第2固有値のビームに含まれる信号エネルギーを最大化することができ、サブキャリア合成のダイバーシチ利得を増やすことができる。これは図3(a)の遅延プロファイルを図3(c)に示すような遅延プロファイルとする、というようなイメージととらえることができる。MMSEの具体的なアルゴリズムとしては、例えばsample matrix inversion(SMI)やleast mean square(LMS)等がある。
【0037】
前述のように多少の遅延パスが残留する場合にも、OFDM受信性能は変化しない。このため、遅延パス成分を完全に除去して所望波のエネルギーをなくしてしまうよりは、エネルギーの大きい遅延パス成分も取り込む方が有利な場合がある。これは複数の遅延パス成分も含んだ形の参照信号に対して、MMSEアルゴリズムによるトレーニングを行うことで達成される。例えば図6に示すような遅延広がりの大きいマルチパス環境下において遅延時間の小さい遅延波を取り込むような参照信号を用いた等化によりMMSE合成を行い、図7に示すような遅延プロファイルとする、というようなイメージである。このとき参照信号は、既知のシンボル系列を利用して遅延プロファイルを推定し、得られた各パスの遅延時間と減衰量及び位相回転量などを用いて、既知信号を合成したレプリカとして作成される。
【0038】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るダイバーシチ受信機であり、M個(M>2)のビーム合成部31〜3Jを備えている点が図1と異なる。すなわち、ディジタルフィルタ15〜18の出力信号はビーム合成部31〜3Mに入力される。ビーム合成部31〜3Mは、図1中のビーム合成部31,32と同様に、乗算器33〜36及び加算器37をそれぞれ有する。
【0039】
ウェイト設定部39は、固有値分解部38により求められた固有値λ1〜λ4(λ1>λ2>λ3>λ4)に対応する固有ベクトルを求め、最大固有値λ1に対応する固有ベクトルを第1のビーム合成部31に対し合成ウェイトとして設定する。さらに、ウェイト設定部39は2番目に大きい固有値λ2に対応する固有ベクトルを第2のビーム合成部32に対し合成ウェイトとして設定し、以下同様にJ番目に大きい固有値λJに対応する固有ベクトルを第Jのビーム合成部3Jに対して合成ウェイトとして設定する。
【0040】
ビーム合成部31〜3Mの出力信号は、それぞれFFTユニット41〜4Mによりフーリエ変換が施されることにより、周波数領域の信号すなわちサブキャリア信号に変換される。FFTユニット41〜4Mの出力信号に対して、ダイバーシチ合成部43によりサブキャリア毎にダイバーシチ合成が行われることによって、データ44が再生される。
【0041】
ここでJは、閾値Rを上回る大きさを持つ固有値の個数であり、J≦Mの可変の整数である。ウェイト設定部39は、第1〜第Jのビーム合成部31〜3Jに対して計J個の合成ウェイトを設定し、他のビーム合成部3(J+1)〜3Mに対する(M−J)個の合成ウェイトは0に設定する。(M−J)個の合成ウェイトを0に設定する代わりに、ビーム合成部3(J+1)〜3Mをオフ状態、すなわちビーム合成部3(J+1)〜3Mへの電源をオフにしてもよい。
【0042】
上述した第2の実施形態によると、固有値の分散が大きい場合などにJ個の固有ビームを使うことで、K個選択した場合に比べカバーできるエネルギーのロスを抑えることができる。
【0043】
上述の実施形態では、ダイバーシチ受信機を受信端末用として適用することを想定してきたが、中継装置にも適用ができる。ビーム合成部31〜3Mの各々の出力信号は、アンテ11〜14から出力される受信信号に比較してSNRがより高いOFDM信号となっているからである。地上ディジタル放送における中継方法の一つとして、受信と送信に同じ周波数を使って中継を行う単一周波数ネットワーク(Single Frequency Network:SFN)という形態がある。SFN中継装置では、上位局(親局)から送信されてきたOFDM信号及び中継装置の送信アンテナからの回り込み信号が受信アンテナを介して入力されるため、回り込み信号の成分を除去した後に送信アンテナから送信信号を出力して再送信を行うことが望ましい。すなわち、中継装置において一旦SNRを高める操作を行ってから再送信を行う。
【0044】
回り込み信号の影響を除去するために、受信されるOFDM信号に対してOFDM復調を行い、さらに必要に応じて誤り訂正復号を行った後、再度OFDMを施して再送信を行う方法がある。この方法は復調時にISDB−T(integrated service digital broadcasting)のFFTサイズに対応する有効シンボル長程度の大きな遅延(数百μsecから1msec程度)が発生する。従って再送信信号が中継されずに届く信号と干渉するため、この方法はSFNでは採用できない。そこで、OFDM復調処理、特にFFT処理を行わずに時間領域だけで、しかもなるべく処理遅延や処理量の小さい方法でSNRを改善できることが要求される。上記実施形態で説明した受信機のFFTユニットより前の部分をそのままSFN中継装置として使用することにより、このような要求に応え、品質の良い中継増幅を可能とすることができる。
【0045】
上述の実施形態で説明したダイバーシチ受信機は、地上ディジタル放送システム用の受信機のみでなく、OFDMを用いる様々な無線通信システム、例えば無線LAN規格であるIEEE 802.11a,IEEE 802.11n、無線メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network:MAN)の規格として標準化作業が進められているIEEE 802.16、マルチキャリアCDMAシステム等にも適用することが可能である。いずれの応用においても、受信品質の改善と回路規模の削減を実現することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイバーシチ受信機のブロック図
【図2】図1中のダイバーシチ合成部の詳細なブロック図
【図3】マルチパス環境下の遅延プロファイル例、ディジタルフィルタを通した後の遅延プロファイル及びMMSE合成後の遅延プロファイルを示す図
【図4】本発明の他の実施形態におけるディジタルフィルタのブロック図
【図5】本発明の別の実施形態におけるディジタルフィルタのブロック図
【図6】遅延広がりが大きいマルチパス環境下の遅延プロファイル例を示す図
【図7】遅延時間の小さい遅延波をとりこむ参照信号を用いた場合のMMSE合成後の遅延プロファイル例を示す図
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係るダイバーシチ受信機のブロック図
【符号の説明】
【0048】
11〜14・・・アンテナ;
15〜18・・・ディジタルフィルタ;
20・・・タップ付き遅延線;
21A,21B・・・乗算器;
22・・・加算器;
23・・・フィルタ係数設定部;
24・・・チャネル応答推定部;
31,32・・・ビーム合成部;
33〜36・・・乗算器;
37・・・加算器;
38・・・固有値分解部;
39・・・ウェイト設定部;
41,42・・・FFTユニット;
43・・・ダイバーシチ合成部;
44・・・受信データ;
51,52・・・乗算器;
53・・・加算器;
54・・・ウェイト設定部;
55・・・復調器




 

 


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