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発明の名称 像加熱装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−3886(P2007−3886A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−184844(P2005−184844)
出願日 平成17年6月24日(2005.6.24)
代理人 【識別番号】100086818
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸雄
発明者 鈴木 仁 / 小倉 時彦 / 浪 泰夫 / 山本 直之 / 中瀬 貴大 / 近藤 敏晴 / 吉村 康弘
要約 課題
定着ローラ1の材料として整磁合金を用いた誘導加熱方式の定着装置(加熱装置)の場合に電力低下点にて投入できる電力が低下してしまいウォームアップタイムが長くなることを抑制することにある。

解決手段
電力低下点において定着ローラ以外の伝熱量を減少させるような回転制御を行う。
特許請求の範囲
【請求項1】
励磁コイルを有する磁束発生手段と、前記磁束発生手段からの磁束により発熱し、前記励磁コイルを装置に装着した状態での前記励磁コイルの抵抗の温度依存性が所定の像加熱可能温度よりも低い温度で極大点をもつ回転発熱体と、前記回転発熱体に対してニップを形成し加圧する回転加圧体と、を有し、像加熱処理を行うために前記回転発熱体を前記所定の像加熱可能温度まで昇温させるウォームアップ期間において前記回転発熱体と前記回転加圧体を接触回転させる加熱装置において、前記ウォームアップ期間中での前記回転発熱体の回転速度を低温側では速く回転させ、高温側で遅くなるように制御することを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記回転加熱体の温度が所定温度に到達したら前記回転発熱体の回転速度を遅くする、もしくは前記ウォーミングアップ期間中の加熱時間が所定時間経過したときに前記回転発熱体の回転速度を遅くするように制御することを特徴とする請求項1記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記所定温度は前記温度特性の極大となる温度以下であることを特徴とする請求項2記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記回転発熱体のキュリー温度が前記像加熱可能温度以上装置の耐熱温度よりも低いことを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の像加熱装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式によって画像形成を行う複写機・プリンター等の画像形成装置において、記録材上に形成担持させた未定着トナー画像を加熱定着する定着装置として用いて好適な像加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、OA機器の省エネルギー動向から、定着装置としては、省エネルギーおよびクイックスタート性を両立させるために、定着ローラを誘導発熱体(導電性磁性材)製のローラにし、磁束発生手段(誘導加熱コイル)の発生磁束により該定着ローラを発熱させて所定の定着可能温度に加熱する誘導加熱方式の定着装置が提案されている。
【0003】
誘導加熱方式の定着装置において、従来では例えば、誘導発熱体として鉄やニッケルを用いていた。また、キュリー温度をコントロールした材料(整磁合金)も提案されている。定着ローラ材料(誘導発熱体)として整磁合金を用いキュリー点を定着温度以上でかつホットオフセット以下に設けたものがある(特許文献1)。
【0004】
特に整磁合金は、加熱されてキュリー点を越えると磁性が失われるので、整磁合金中の磁場が減少し渦電流が減少、発熱が抑制される。定着ローラの材料として、キュリー温度が定着に必要な温度の整磁合金を使用すれば、ローラ温度がキュリー点となる定着温度近傍に自己温度制御とすることもできる。また、連続した小サイズ通紙により生じる非通紙部昇温に対しても通紙領域外においてキュリー点を超えた時点で部分的に発熱量が減る作用がある。
【特許文献1】特開2000−39797号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように整磁合金は利点があるが、図10に示すように温度がキュリー点以下にて、誘導加熱コイルに一定電流を流していても電気抵抗が減少し始め熱量も減少し始めるため、(図8)常温から定着ローラを温度上昇させた場合に所望の電力を連続して投入できなくなる問題がある。これは、発熱体としての定着ローラの温度がキュリー点近傍まで昇温すると、発熱に寄与する定着ローラの抵抗値が、磁性の性質を失うことで減少し、定着温度に達する前に抵抗値が減少し始め、発熱効率が低下するためである。従来使用していた鉄やニッケルのキュリー点は、非常に高温領域にあるため問題はなかったが、整磁合金では温度上昇の傾きが小さくなる点(図8の定着ローラにコイルを装着した状態でのコイルの抵抗値の温度特性が極大となる温度、以下電力低下点とも呼ぶ)以降で緩くなるので、定着温度近傍にキュリー点の設定を行うと、ウォームアップタイムが長くなりクイックスタートの障害となる。
【0006】
また、定着温度近傍にキュリー点を設定した定着ローラを用いた場合に、定着ローラを所定の定着温度まで昇温させるウォームアップ期間において、定着ローラと加圧ローラを接触させながら一定回転速度で回転させながら定着ローラ及び加圧ローラを加熱する場合、以下のような問題がある。即ち、定着ローラの温度が電力低下点を超えた後では、上述したような定着ローラの発熱効率の低下に加えて、加圧ローラ側に熱を奪われる(加圧ローラ側に熱を与えなくてはならない)ため、より一層のウォーミングアップタイムが長くなってしまう。
【0007】
よって従来の構成では、キュリー点の温度設定を定着温度より高くすることでウォームアップタイムを短くしていた。しかし、キュリー点が定着温度に設定された場合において対応できず、記録材上のトナーが定着ローラに再び付着するホットオフセット温度を上限とし、実際にはできるだけキュリー点をホットオフセット温度に近づけるしかなかった。この場合設定温度は必然的に高くなってしまい、必要以上に高い温度設定は省エネの観点から、または安全面から考えても望ましい構成ではないことは明らかである。更に、キュリー点を高く設定すると小サイズ記録材の連続通紙により生じる非通紙部昇温現象にて通紙域に比べ、非通紙域は高く設定したキュリー点まで温度が上昇する。この場合、長手方向での定着ローラ温度差が大きくなり、小サイズ記録材を通紙後すぐに大サイズ記録材を通紙すると画像不良を生じることがある。
【0008】
本発明は、回転発熱体の材料として像加熱温度近傍にキュリー点を設定することにより、定着温度近傍での回転発熱体の発熱効率の低下(励磁コイルを回転発熱体に装着した状態で測定された励磁コイルの抵抗値の温度特性が像加熱可能温度よりも低い温度に極大点を有すること)する誘導加熱方式の像加熱装置の場合において、像加熱処理を行うために前記回転発熱体を所定の像加熱可能温度まで昇温させるウォームアップ期間中に前記回転発熱体と前記回転加圧体を接触回転させる像加熱装置におけるウォーミングアップタイムを可及的に短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の構成を特徴とする像加熱装置である。
【0010】
励磁コイルを有する磁束発生手段と、前記磁束発生手段からの磁束により発熱し、前記励磁コイルを装置に装着した状態での前記励磁コイルの抵抗の温度依存性が所定の像加熱可能温度よりも低い温度で極大点をもつ回転発熱体と、前記回転発熱体に対してニップを形成し加圧する回転加圧体と、を有し、像加熱処理を行うために前記回転発熱体を前記所定の像加熱可能温度まで昇温させるウォームアップ期間において前記回転発熱体と前記回転加圧体を接触回転させる加熱装置において、前記ウォームアップ期間中での前記回転発熱体の回転速度を低温側では速く回転させ、高温側で遅くなるように制御することを特徴とする像加熱装置。
【発明の効果】
【0011】
誘導加熱を用いた像加熱装置において、回転加熱体の材料として被加熱材加熱温度近傍にキュリー点を設定したもの(整磁合金)を用いて加熱開始させた場合に、励磁コイルを回転発熱体に装着した状態で測定された励磁コイルの抵抗値の温度特性が極大となる温度以降で回転加熱体の発熱効率が低下し、回転加熱体の昇温速度が低下することによるウォームアップの遅延を低減もしくは防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
【実施例1】
【0013】
(1)画像形成装置例
図1は画像形成装置の一例の概略構成模式図である。本例の画像形成装置は転写式電子写真プロセス利用、レーザー走査露光方式の装置(複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機能機等)である。
【0014】
20は画像形成装置本体(以下、装置本体と記す)である。21は原稿読取装置(イメージスキャナ)、22は領域指定装置(デジタイザー)であり、何れも装置本体20の上面側に配設してある。原稿読取装置21は該装置の原稿台上に載置した原稿面を走査照明系により走査し、原稿面からの反射光をCCDラインセンサ等の光センサにより読取ることにより画像情報を時系列電気デジタル画素信号に変換する。領域指定装置22は原稿の読取領域等の設定を行ない、信号を出力する。23は制御部(CPU)である。制御部23は、原稿読取装置21、領域指定装置22、プリントコントローラ24等から信号を受けて、作像機構の各種プロセス機器に指令を送る信号処理や所定の作像シーケンス制御を司る。
【0015】
25は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。感光ドラム25は矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。感光ドラム25はその回転過程で、帯電装置26により所定の極性・電位の一様な帯電処理を受ける。そして、その一様帯電面に対して画像書き込み装置27による像露光Lがなされる。これにより一様帯電面の露光明部の電位が減衰して感光ドラム面に露光パターンに対応した静電潜像が形成される。画像書き込み装置27は本例の場合はレーザースキャナーであり、制御部23において信号処理された画像データに従って変調したレーザー光Lを出力し、回転する感光ドラム25の一様帯電面を走査露光して画像情報に対応した静電潜像を形成する。
【0016】
次いで、その静電潜像が現像装置28によりトナー画像として現像される。そのトナー画像が、感光ドラム25と転写装置29との対向部である転写部Tに給紙機構部側から所定の制御タイミングにて給送された被加熱材である紙やOHP等の記録材(以下、転写材と記す)Pの面に順次に静電転写される。給紙機構部は、本例の場合は、給紙カセット31から所定の制御タイミングにて転写材Pを1枚分離給送する。その転写材Pをレジストローラ33を含む転写材搬送路32により転写部Tに所定のタイミングにて搬送する。
【0017】
転写部Tを通った転写材Pは感光ドラム25の面から分離されて、定着装置Fへ搬送される。定着装置Fは転写材P上の未定着トナー画像を永久固着画像として熱圧定着処理する。そして画像定着を受けた転写材Pは画像形成物(コピー、プリント)として装置本体外部の排紙トレイ34上に排紙される。
【0018】
また、転写材分離後の感光ドラム25はクリーニング装置30により転写残りトナー等の付着汚染物の除去を受けて清掃されて繰り返して作像に供される。
【0019】
(2)定着装置F
この定着装置Fは、励磁コイルを有する磁束発生手段と、磁束発生手段の発生磁束の作用により電磁誘導加熱されかつ回転可能な誘導発熱体(回転加熱体)と、加圧部材(回転加圧体)とで加熱圧接することで記録材にトナーを定着する誘導加熱方式の像加熱装置において、誘導発熱体は定着温度近傍にキュリー点を有した整磁合金であり、前記誘導発熱体もしくは周辺の温度を検知する温度検知手段とを有しており、前記誘導発熱体及び前記加圧部材は回転しており、前記温度検知手段により前記誘導発熱体の温度が、誘導発熱体と励磁コイルを装置に組み込んだ状態での励磁コイルの両端にかかるインピーダンスの温度特性が極大となる温度(以下電力低下点と呼ぶ)に上昇したことを検知して、立ち上げ開始時に比べ前記誘導発熱体の回転を遅くする制御を行い、前記温度検知手段により前記誘導発熱体の温度が定着温度に到達したことを検知して、電力低下点にて遅くした回転制御に比べ前記誘導発熱体の回転を速くする制御を行うことを特徴とする加熱装置である。
【0020】
(2−1)定着装置Fの全体的な概略構成
図2は定着装置Fの要部の拡大横断面模型図、図3は要部の正面模型図である。この定着装置Fは、加熱ローラ型で、電磁誘導加熱方式の加熱装置である。
【0021】
1は加熱回転体としての定着ローラ(熱ローラ)である。この定着ローラ1は誘導発熱体(導電性磁性材)製の円筒状ローラである。外周面にはフッ素樹脂等の離型層を形成してある。
【0022】
2は加圧回転体としての加圧ローラである。この加圧ローラ2は、軸芯2aと、該軸芯に同心一体にローラ状に形成具備させたシリコンゴム層等の弾性体層2bとからなる弾性ローラである。
【0023】
上記の定着ローラ1と加圧ローラ2は上下に並行に配列して、定着装置フレームの手前側と奥側の側板41間にそれぞれ軸受42を介して回転自在に保持させるとともに、加圧ローラ2を定着ローラ1の下面に対して不図示の付勢手段により弾性体層2bの弾性に抗して所定の押圧力にて圧接させてローラ回転方向に関して所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。定着ローラ1を加圧ローラ2に対して圧接させる構成にすることもできる。
【0024】
Gは定着ローラ1の一方側の端部に固着させたドライブギアである。このドライブギアGに駆動源Mから伝達系を介して回転力が伝達されることで、定着ローラ1が図2において矢印aの時計方向に所定の周速度にて回転駆動される。加圧ローラ2はこの定着ローラ1の回転駆動に従動して矢印の反時計方向に回転する。
【0025】
3は磁束(磁場)発生手段としてのコイル・アセンブリであり、定着ローラ1の中空部内に挿入して配設してある。
【0026】
コイル・アセンブリ3は、ボビン4、磁性コア5、励磁コイル(誘導加熱コイル)6、絶縁材製のステー7等の組み立て体である。磁性コア5はボビン4に形成した通孔に挿入してある。励磁コイル6はボビン4の周囲に銅線を巻回して形成してある。このボビン4、コア5、励磁コイル6のユニットをステー7に固定支持させてある。そして、このコイル・アセンブリ3を定着ローラ1の中空部内に挿入して、ステー7の両端部をそれぞれ定着装置フレーム側の固定部材43に不動に支持させることで、定着ローラ1の中空部内に非接触の状態で所定の位置・姿勢にて配設してある。
【0027】
磁性コア5としては、透磁率が大きく自己損失の小さい材料がよく、例えばフェライト、パーマロイ、センダスト等が適している。ボビン4は、磁性コア5と励磁コイル6とを絶縁する絶縁部としても機能している。
【0028】
励磁コイル6は加熱に十分な交番磁束を発生するものでなければならないが、そのためには抵抗成分が低く、インダクタンス成分を高くとる必要がある。励磁コイル6の芯線としてφ0.1〜0.3の細線を略80〜160本ほど束ねたリッツ線を用いている。細線には絶縁被覆電線を用いている。また磁性コア5を周回するようにボビン4の形状に合わせて横長舟型に複数回巻回して励磁コイルとしてある。励磁コイル6は定着ローラ1の長手方向に巻かれている。6a・6bは上記励磁コイル6の2本の外方引出しリード線であり、駆動電源(励磁回路)35に接続してある。
【0029】
8は定着ローラ1の温度を検出するサーミスタ等の温度センサ(温度検知手段)であり、定着ローラ1に接触させて、又は非接触に近接させて配設してある。9は定着ローラ1に接触させて、又は非接触に近接させて配設したサーモスタット等の安全素子である。10は分離爪であり、定着ニップ部Nを出た転写材Pが定着ローラ1に巻き付くのを抑え、定着ローラ1から分離させる役目をする。
【0030】
前記のボビン4、ステー7、分離爪10は、例えば液晶ポリマー、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの耐熱および電気絶縁性エンジニアリング・プラスチックから形成されている。
【0031】
画像形成装置本体のメイン電源スイッチは投入されているが、画像形成装置本体が画像形成開始信号の入力待ちをしている待機状態時において、定着装置Fは定着ローラ1の回転駆動は停止されており、また励磁コイル6への通電も停止されている。画像形成開始信号が入力すると、制御部23は装置本体の所定の前回転動作を実行する。定着装置Fについては、所定の制御タイミングにおいて、定着ローラ1の回転駆動を開始させると共に、駆動電源35から励磁コイル6への電力供給を開始する。加圧ローラ2は定着ローラ1の回転駆動に従動して回転する。そして、励磁コイル6に生じる高周波磁界で定着ローラ1が電磁誘導作用により加熱されて、所定の定着可能温度まで温度立ち上げがなされる。定着ローラ1の温度が温度センサ20により検出され、その検出温度情報が制御部23に入力する。制御部23は入力する温度情報により駆動電源35を制御し定着ローラ1の温度を所定の定着可能温度に制御する。そして、温度制御された定着ローラ1と加圧ローラ2の定着ニップ部Nに、作像機構部側から未定着トナー画像tを担持した転写材Pが導入されて、定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。転写材Pが定着ニップ部Nを挟持搬送されていく過程において、定着ローラ1の熱と、定着ニップ部Nの圧力により未定着トナー画像tが転写材Pの面に永久固着画像として定着される。
【0032】
サーモスタット等の安全素子10は定着装置の熱暴走時に駆動電源35から励磁コイル6への給電回路を緊急遮断する。
【0033】
(2−2)定着ローラ1の温度立ち上げ過程時の制御
定着ローラ1を構成させた誘導発熱体の材質は、Ni−Fe、Ni−Fe−Co、Ni−Fe−Crなどで構成される整磁合金であり、定着温度近傍にてキュリー点を持つよう設定している。
【0034】
図4と図5及び図7により、定着ローラ1を像加熱するために昇温開始してから所定の像加熱可能温度まで加熱するウォーミングアップ期間(加熱過程時)における、定着ローラ温度、励磁コイル供給電力、定着ローラ回転数(回転速度)の関係と、制御動作の概略シーケンスを説明する。
【0035】
図4は、従来例としてウォーミングアップ期間の定着ローラの回転速度を一定速度で回転させた場合と、本実施例として途中まで定着ローラの回転速度を速くし、途中から回転速度を遅くした場合の温度上昇プロファイルの比較である。
【0036】
記録材への加熱を行なわない待機状態から時点T1において、定着ローラ1を回転させながら励磁コイル6への電力投入を開始すると、定着ローラ1の温度は上昇し始める。ところが、定着ローラ1を構成させた誘導発熱体として整磁合金を用いた場合定着温度近傍にキュリー点を設定すると、時点T2の電力低下点近傍において定着ローラ1の磁性が消失し始めるため、定着ローラ1のインピーダンスもそれに伴い変化し電力が投入しづらくなっていく。電力低下点とは、配合した材料にもよるが、設定したキュリー点に対しおおよそ50〜60℃下の温度以上の温度域(所定の像加熱温度(ここでは定着温度)よりも低い温度で昇温速度が低下する温度領域)にある。
【0037】
本実施例では、キュリー温度(透磁率が1となる温度)は定着温度以上装置の耐熱温度よりも小さくしている。よって、この作用により加熱開始当初から一定の回転スピードのままでは所望の温度まで到達するのにかかる時間が長くなってしまう(時間T1→T4:破線の温度勾配による立ち上がり時間)。
【0038】
また、加圧ローラ2の温度も定着プロセス上大きく影響するため、ある程度の加熱(必要最低加圧ローラ温度)は必要である。
【0039】
そこで、本実施例では、ウォーミングアップ期間において、定着ローラ1と加圧ローラ2を接触して回転させることで、加圧ローラを温めておき、更に定着ローラ1の回転速度を2段階設ける(複数の回転速度を設ける)。
【0040】
即ち、制御部23は加熱開始から電力低下点までの加熱期間(もしくは定着ローラ1の温度が比較的低温時である加熱期間)では、実線で示したように所定の第一の速度で回転制御し、温度センサ20により検出した信号にて定着ローラ1の温度が電力低下点まで上昇したことを検知すると(時点T2)、定着ローラ4の回転を第一の速度よりも遅い第二の回転速度となるように制御を行う。
【0041】
このように、電力低下点以下の温度であれば定着ローラの発熱効率は高い状態であり、連続して最大電力が投入できるため、電力低下点に到達するまでの回転スピードを速くする(T1→T5)もしくは定着ローラが高温時に比べて回転速度を速くする。これにより加圧ローラへの熱伝導が増し加圧ローラ温度の上昇が早くなる。一方、回転速度を速めることで、加圧ローラとは逆に定着ローラの温度上昇は遅くなり、結果として定着ローラの温度が電力低下点に到達するまでの時間が長くなり最大電力の投入時間を長くすることができる。加圧ローラに温度上昇(供給する熱量)を、定着ローラ1の温度が低く発熱効率が高いときに行い、発熱効率が低下しているときには加圧ローラ側は定着のために必要な温度であるので回転速度を遅くし、定着ローラを重点的に加熱させる。こうすることで加圧ローラと定着ローラを含めてトータル的に見れば一定回転時に比べ電力を多く投入することができ、効率を良くすることが可能となる。
【0042】
よって、電力低下点まで温度上昇し電力が入りづらくなる前に所定の第一の速度で回転させ、定着ローラ1と共に加圧ローラ2の温度も上昇させる。そして、時点T2から定着ローラ1の回転を遅い速度(第二の回転速度)にすることで、逆に定着ローラの温度上昇を速め、加圧ローラ側には極力必要最低限の熱量だけを付与するようにする。このように温度勾配を制御した後、制御部23が定着ローラ1の温度が定着可能となったことを温度センサ20にて検知した時点T3で、定着ローラ1の回転を定着プロセスに応じた所望の速い回転に変化させる。
【0043】
そして、定着温度到達を検知した時点で回転を速くすることにより、遅延することなく通紙を開始する(T3)ことが可能となる。
【0044】
本実施例では一例として定着ローラ(加熱回転体)と加圧ローラ(加圧回転体)による構成にて記載しているが、例えば定着ローラまたは定着ベルトと加圧ベルトの構成などでも同様で、加熱する側が周辺部材と接触している構成においては電力低下に伴う温度勾配の補正効果が得られる。
【0045】
また、図4では、一例として、定着ローラ1の加熱開始時の定着ローラ回転スピードと通紙時の定着ローラ回転スピードは同等として示しているが、図6の(a)に示すように、通紙時の定着ローラ回転スピードに比べ定着ローラ加熱開始時の定着ローラ回転スピードを遅くすればより定着ローラ1の加熱立ち上げ時間は早くなる。逆に、(b)に示すように、通紙時の定着ローラ回転スピードに比べ加熱開始時の定着ローラ回転スピードを速くすればより周辺部材が充分に温まるため連続通紙による温度低下を防ぐ効果が得られる。ここで、第一の回転速度としては、騒音や、耐久的な観点から、最大サイズ(通常サイズ)記録材を加熱時の加熱ローラの回転速度の2倍以下が好ましい。また、第一の回転速度の下限値としては、定着ローラが所定の像加熱温度に達したときに加圧ローラの温度が必要最低加圧ローラ温度になるように加熱ローラを一定速度で回転させた場合の回転速度よりも速い回転速度が必要となる。また、第二の回転速度の下限値としては、温度ムラの観点から最大サイズ記録材を加熱時の加熱ローラの回転速度の1/8程度の回転速度の速度が好ましい。より好ましくは最大サイズ記録材を通紙時の回転速度に比べ1/2〜1/4程度の回転速度が望ましい。また間欠回転制御でも良い。また、第二の回転速度の上限値としては、第一の回転速度より遅ければよい。
【0046】
(2−3)電力低下のメカニズム及び測定方法
ここで、前記の定着ローラ1の電力低下のメカニズム及び測定方法について説明する。一般に、誘導発熱体である定着ローラ1の抵抗値は式1で表されるとおり、周波数が一定の場合は透磁率μと抵抗率ρで決まり、一般に抵抗率は温度上昇に伴って緩やかに増加する。
【0047】
【数1】


【0048】
図8は本実施例の定着ローラ1に励磁コイルを装着した状態で励磁コイルの抵抗値(以後コイルからみた定着ローラ1のみかけの抵抗値とも呼ぶ)の温度依存性曲線を示した図である。本実施例では、定着ローラ1の材料として所定の温度にキュリー温度を調整した整磁合金を用いることによって、キュリー温度を定着温度以上装置の耐熱温度よりも小さくしている。そのため、加熱ローラの温度がキュリー温度近傍に達すると透磁率が急激に減少し、図8ようにコイルからみた定着ローラ1の抵抗値は、装置の耐熱温度よりも低い温度範囲において減少し発熱量が低下する。即ち、昇温速度が低下する温度は定着ローラ1の抵抗値が極大となる温度である。
【0049】
ここで、定着ローラ1に励磁コイルを装着した状態で励磁コイルの抵抗値が極大をとる点を電力低下点とし、この温度より低い温度では発熱効率がよいため、加圧ローラ2の温度を温める為に回転させ、電力低下点以上ではウォームアップタイムを短縮するため定着ローラ1の回転速度を遅くする。
【0050】
また、従来のように温度と共に抵抗値が上昇する加熱ローラと違って、温度上昇に伴って発熱効率(発熱量)が低減するため非通紙部昇温を低減することができる。また、透磁率の減少に伴い、渦電流量も減少するため、発熱量は急激に低下する。
【0051】
また、所定の定着温度以上装置の耐熱温度よりも低い温度範囲において、キュリー温度となるように設定している。こうすることで定着ローラ1が定着温度以上に達した場合の発熱量を下げることができ、非通紙部昇温を低減することができる。
【0052】
(2−4)定着ローラのみかけの抵抗値及びその温度依存性の測定方法
定着ローラ1のみかけの抵抗値(表皮抵抗)Rsは、磁束発生手段3を定着ローラに装着した状態での励磁コイル6に交流を流したときの励磁コイル6の抵抗値と励磁コイルを定着ローラに装着しない状態で測定したときの抵抗値との差に相当する。
【0053】
このみかけの抵抗値の測定方法、及び抵抗値の温度依存性は以下のように測定する。
【0054】
アジレント社製のLCRメータ(型番HP4194A)を用いて、周波数20kHzの交流を印加した際の定着ローラ1の抵抗値を測定した。このとき、定着ローラ1、磁束発生手段である励磁コイル6、磁性コア5は定着装置(加熱装置)に装着された状態で測定するものとする。このとき定着ローラの温度を変えていき、温度と定着ローラの抵抗値を同時にプロットしていくことで定着ローラの抵抗値の温度特性曲線を得ることができる。
【0055】
また、定着ローラの温度を変えるには、恒温室に定着ローラ1及び磁束発生手段3を装置に装着させた位置関係に保った状態にして定着ローラ1の温度を変化させ、定着ローラ温度を恒温室の温度に飽和させてから上記の測定法で抵抗値を測定する。厳密には、測定値からコイル単体の抵抗分を引いた値が定着ローラのみかけの抵抗値Rsであるが、コイル単体の抵抗は温度によらずほぼ一定とみなせるため、測定値の温度依存性の極大点はRsの温度依存性の極大点とみなせる。
【0056】
(2−5)キュリー温度の測定
また、キュリー温度の測定は以下のように行なう。岩通計測株式会社製のB−Hアナライザー(型番:SY−8232)を用いて測定した。測定試料に装置の所定の一次コイルと二次コイルを巻きつけて周波数20kHzで測定する。測定試料はコイルが巻きつけられる形状であれば構わない。
【0057】
試料にコイルを設定したら、恒温室に試料を入れて温度を飽和させ、その温度における透磁率をプロットする。恒温室の温度を変えてやることで透磁率の温度依存性曲線が得られる。このとき透磁率が1となる温度をキュリー温度とする。ここで、透磁率が1となる温度は以下のように求める。恒温室の温度を上昇させていき、ある温度で透磁率が変化しなくなる。この温度を透磁率が1となった温度(キュリー温度)とみなす。
【実施例2】
【0058】
本実施例の定着装置は、励磁コイルを有する磁束発生手段と、磁束発生手段の発生磁束の作用により電磁誘導加熱されかつ回転可能な誘導発熱体(回転加熱体)と、加圧部材(回転加圧体)とで加熱圧接することで記録材にトナーを定着する像加熱装置において、前記誘導発熱体は定着温度近傍にキュリー点を有した整磁合金であり、前記誘導発熱体及び前記加圧部材は回転しており、時間計測手段を有しており、立ち上げ開始時に比べ一定時間経過後に前記誘導発熱体の回転を遅くする制御を行い、電力低下点にて遅くした回転制御に比べ一定時間経過後に前記誘導発熱体の回転を速くする制御を行うことを特徴とする像加熱装置である。
【0059】
すなわち、前記の実施例1では、定着ローラ1の温度立ち上げ期間時の制御を温度センサ20が検出する定着ローラ温度情報に基づいて行ったが、本実施例2では定着ローラ1の温度立ち上げ期間時の制御を予め定めたタイマー時間に従って制御を行う。
【0060】
定着ローラ1や加圧ローラ2と、励磁コイル6や磁性コア5による磁場発生手段3にて構成される定着装置は、組みあがった状態では機械的な位置のずれなどが非常に小さいため投入する電力は通常同じとなる。よって、電力低下点までの時間(T1→T2)や電力低下点から定着温度までの時間(T2→T3)もおおよそ一定となるため予想ができ、時間での制御が可能である。
【0061】
図9は、本実施例における、定着ローラ1の温度立ち上げ期間時の制御動作の概略シーケンスである。制御部23にはタイマー36(図1・図3)より時間信号が送られる。制御部23は、図4・図8のように、加熱開始時T1から一定時間経過後(T1→T2)に定着ローラ1の回転を遅く制御する。更に一定時間経過後(T2→T3)定着ローラの回転を速く制御することにより通紙が開始(T3)できる。時間はタイマー36より制御部23に信号が送られて定着ローラ1の回転を制御する。特にこの場合では、定着ローラ1がキュリー点になると自己温度制御が働くため時間制御と組み合わせることで温度センサ20なしでも安定した定着が行える。
【0062】
ここで、本発明に係る像加熱装置は、実施例の画像加熱定着装置に限られず、未定着画像を記録材に仮定着する仮定着装置、定着画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する表面改質装置等の像加熱装置として用いても有効である。
【0063】
また、本発明において、被加熱材への加熱を行なわない待機状態から所定の被加熱材加熱可能温度まで前記回転加熱体を加熱する期間には、画像形成装置本体のメイン電源が投入されたときに実行される前多回転動作時の定着装置(加熱装置)のウォームアップ期間も含む。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成図
【図2】実施例1における定着装置の要部の拡大横断面模型図
【図3】同じく要部の正面模型図
【図4】定着ローラの温度勾配図と投入電力と回転数を示した図
【図5】定着ローラ立ち上げ時の概略動作シーケンスを示した図
【図6】定着ローラの回転数を示した図
【図7】定着ローラの温度勾配図と投入電力と回転数を示した図
【図8】定着ローラの抵抗値の温度依存性曲線を示した図
【図9】実施例2における定着ローラ立ち上げ時の概略動作シーケンスを示した図
【図10】従来の構成を示した図
【符号の説明】
【0065】
F・・定着装置(像加熱装置)、1・・定着ローラ(回転加熱体)、2・・加圧ローラ(回転加圧体)、3・・コイル・アセンブリ(磁束発生手段)、5・・磁性コア、6・・励磁コイル、7・・ステー、8・・温度センサ、9・・サーモスタット、10・・分離爪、P・・記録材、t・・トナー、20・・画像形成装置本体、21・・原稿読取装置、22・・デジタイザー、23・・制御部(CPU)、24・・プリントコントローラ、25・・感光ドラム、27・・画像書き込み装置、28・・現像装置、29・・転写装置、35・・駆動電源、36・・タイマー




 

 


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