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発明の名称 選択的結合性物質固定化基材
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−171030(P2007−171030A)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
出願番号 特願2005−370319(P2005−370319)
出願日 平成17年12月22日(2005.12.22)
代理人 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
発明者 野村 修 / 信正 均 / 薙野 邦久
要約 課題
本発明は、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を安定して検出することができ、且つ、検体溶液の撹拌効率の高い選択結合性物質結合基材およびその用途を提供する。

解決手段
選択結合性物質がその表面に固定される基材であって、該基材表面のうち、選択結合性物質が固定化される領域以外の少なくとも一部が、粗面化されてなることを特徴とする選択結合性物質固定化基材;前記基材を含む分析チップ;前記基材又は分析チップを用いた被検物質の分析方法;前記基材又は分析チップを含む分析キット。
特許請求の範囲
【請求項1】
選択結合性物質がその表面に固定される基材であって、該基材表面のうち、選択結合性物質が固定化される領域以外の少なくとも一部が、粗面化されてなることを特徴とする選択結合性物質固定化基材。
【請求項2】
前記基材は、凹部及び凸部からなる凹凸部を表面に有し、凹部底面又は凸部上面のいずれか一方が粗面化されてなることを特徴とする請求項1に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項3】
前記凹凸部のうち、凹部底面が粗面化されてなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項4】
前記凹凸部のうち、凸部上面に選択結合性物質が固定化されてなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項5】
前記基材表面の表面粗さは、Ra値(中心線平均粗さ)が0.01μm以上、1μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項6】
前記基材表面の表面粗さは、Rz値(最大高さ)が0.1μm以上、30μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項7】
前記基材は、少なくとも一部が黒色であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項8】
前記凹凸部の凹部に移動可能に格納された微粒子を更に含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項9】
前記選択結合性物質が、DNA、RNA、蛋白質、ペプチド、糖、糖鎖または脂質であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材の表面を覆い前記基材と接着されたカバー部材を更に備え、前記基材と前記カバー部材との間に空隙を有することを特徴とする分析チップ。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材に、被検物質を接触させて選択的に結合させ、前記選択結合性物質固定化基材上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することを特徴とする、被検物質の分析方法。
【請求項12】
前記選択結合性物質固定化基材に被検物質を接触させるにあたり、前記基材と被検物質が含まれる溶液とを撹拌することを特徴とする、請求項11に記載の分析方法。
【請求項13】
請求項10に記載の分析チップに、前記貫通孔から被検物質をアプライし、前記カバー部材に封止部材を貼付して前記貫通孔を封止し、前記被検物質を前記分析チップを構成する選択結合性物質固定化基材に選択的に結合させ、更に前記選択結合性物質固定化基材上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することを特徴とする、被検物質の分析方法。
【請求項14】
前記貫通孔から被検物質をアプライするにあたり、被検物質が含まれる溶液を貫通孔から注入するとともに、前記被検物質を前記分析チップを構成する選択結合性物質結合基材に選択的に結合させるにあたり、前記注入された溶液を撹拌することを特徴とする、請求項13に記載の分析方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材と、前記選択結合性物質固定化基材の表面を覆い前記選択結合性物質固定化基材と接着されたカバー部材と、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むことを特徴とする分析キット。
【請求項16】
請求項10に記載の分析チップと、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むことを特徴とする分析キット。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的結合性物質固定化基材に関し、詳しくは、被検物質と選択的に結合する物質(本明細書において「選択結合性物質」という。)を固定化した基材を備え、被検物質が含まれる溶液と選択結合性物質との反応による分析を行う際に用いうる分析チップ、並びに当該分析チップを用いた分析方法及び分析キットに関する。
【背景技術】
【0002】
各種生物の遺伝情報解析の研究が始められている。ヒト遺伝子をはじめとして、多数の遺伝子とその塩基配列、また遺伝子配列にコードされる蛋白質およびこれら蛋白質から二次的に作られる糖鎖に関する情報が急速に明らかにされつつある。配列の明らかにされた遺伝子、蛋白質、糖鎖などの高分子体の機能は、各種の方法で調べることができる。主なものとして、核酸は、ノーザンブロッティング、あるいはサザンブロッティングのような、各種の核酸/核酸間の相補性を利用した方法により、各種遺伝子とその生体機能発現との関係を調べることができる。一方、蛋白質は、ウエスタンブロッティングに代表される蛋白質/蛋白質間の反応を利用し蛋白質の機能および発現について調べることができる。
【0003】
近年、多数の遺伝子発現を一度に解析する手法として、DNAマイクロアレイ法(DNAチップ法)と呼ばれる新しい分析法が開発され、注目を集めている。これらの方法は、いずれも、核酸/核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法である点で原理的には従来の方法と同じである。これらの方法は、蛋白質/蛋白質間あるいは糖鎖/糖鎖間や糖鎖/蛋白質間の特異的な反応に基づく蛋白質や糖鎖検出・定量に応用が可能である。これらの技術は、マイクロアレイ又はDNAチップと呼ばれるガラスの平面基材片上に、多数のDNA断片や蛋白質、糖鎖が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。DNAチップの具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基材片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸(DNAあるいはRNA)同士を結合させ、その箇所を高解像度検出装置(スキャナー)で高速に読み取る方法や、電気化学反応にもとづく電流値等の応答を検出する方法が挙げられる。このようして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。また、DNAチップの応用分野は、発現遺伝子の量を推定する遺伝子発現解析のみならず、遺伝子の一塩基置換(SNP)を検出する手段としても大きく期待されている。
【0004】
核酸等の選択結合性物質を基材上に固定化する技術として、スライドガラス等の平坦な基材の上に、ポリ−L−リシン、アミノシラン等をコーティングして、スポッターと呼ばれる点着装置を用い、各核酸を固定化する方法などが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、最近は、DNAチップに用いられる選択結合性物質としての核酸プローブ(基材上に固定化された核酸)として、従来の数百〜数千塩基の長さのcDNAおよびその断片に代わり、被検物質とのハイブリダイゼーション時のエラーを下げうるという点、及び合成機で容易に合成できるという点から、オリゴDNA(オリゴDNAとは塩基数が10〜100塩基までのものをいう)が用いられるようになっている。この際、オリゴDNAとガラス基材とは共有結合にて結合しうる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
現在、DNAチップは、チップ上に数万から数千種類の多数の遺伝子を載せ、一度に大量の遺伝子の発現を調べる研究用として用いられていることが多い。一方、今後は、診断用途においても、DNAチップが使用されることが期待されている。そのため、従来のものより、簡便に被検物質の溶液(以下、単に「検体溶液」ということがある。)のアプライを行うことができ、且つ感度の高いDNAチップが求められている。
【0007】
DNAチップを用いる検出は、一般に、検体物質を蛍光物質等で標識しておいた後に、チップ上の核酸プローブに結合反応させて、チップ表面に測定用のレーザー等の照射光(実線の矢印)を照射して検体物質に標識した蛍光物質を励起し、その蛍光を受光して行うことが多い。しかし、従来のDNAチップは平滑な表面にプローブが固定されていることから、チップ表面で反射したレーザー照射光がそのまま受光部に届いてしまい、バックグラウンドが高くなるという問題があった。
【0008】
また、DNAチップによる検出の際は、調製した検体溶液を、DNAチップ上の選択結合性物質と反応させることが必要であるが、このような反応を促進させる方法も開発されている。例えば、特許文献3には、DNA溶液上にビーズ状の微粒子を検体DNA溶液に添加しておいた微粒子分散溶液をDNAチップにアプライして、ビーズを用いて前記溶液を撹拌しながらハイブリダイゼーションを行う方法が記載されている。
しかしながら、特許文献3記載の方法では、DNAチップの表面が平滑であるため、微粒子は直線的な動きをするにとどまり、検体溶液の撹拌効率が低いという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特表平10−503841号公報
【特許文献2】特開2001−108683号公報
【特許文献3】特許第3557419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するものであり、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を安定して検出することができ、且つ、検体溶液の撹拌効率の高い選択結合性物質結合基材およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明によれば、下記のものが提供される:
〔1〕 選択結合性物質がその表面に固定される基材であって、該基材表面のうち、選択結合性物質が固定化される領域以外の少なくとも一部が、粗面化されてなることを特徴とする選択結合性物質固定化基材。
〔2〕 前記基材は、凹部及び凸部からなる凹凸部を表面に有し、凹部底面又は凸部上面のいずれか一方が粗面化されてなることを特徴とする前記〔1〕に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔3〕 前記凹凸部のうち、凹部底面が粗面化されてなることを特徴とする、前記〔1〕又は〔2〕に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔4〕 前記凹凸部のうち、凸部上面に選択結合性物質が固定化されてなることを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔5〕 前記基材表面の表面粗さは、Ra値(中心線平均粗さ)が0.01μm以上、1μm以下であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔6〕 前記基材表面の表面粗さは、Rz値(最大高さ)が0.1μm以上、30μm以下であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔7〕 前記基材は、少なくとも一部が黒色であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔8〕 前記凹凸部の凹部に移動可能に格納された微粒子を更に含むことを特徴とする、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔9〕 前記選択結合性物質が、DNA、RNA、蛋白質、ペプチド、糖、糖鎖または脂質であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材。
〔10〕 前記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材の表面を覆い前記基材と接着されたカバー部材を更に備え、前記基材と前記カバー部材との間に空隙を有することを特徴とする分析チップ。
〔11〕 前記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材に、被検物質を接触させて選択的に結合させ、前記選択結合性物質固定化基材上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することを特徴とする、被検物質の分析方法。
〔12〕 前記選択結合性物質固定化基材に被検物質を接触させるにあたり、前記基材と被検物質が含まれる溶液とを撹拌することを特徴とする、前記〔11〕に記載の分析方法。
〔13〕 前記〔10〕に記載の分析チップに、前記貫通孔から被検物質をアプライし、前記カバー部材に封止部材を貼付して前記貫通孔を封止し、前記被検物質を前記分析チップを構成する選択結合性物質固定化基材に選択的に結合させ、更に前記選択結合性物質固定化基材上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することを特徴とする、被検物質の分析方法。
〔14〕 前記貫通孔から被検物質をアプライするにあたり、被検物質が含まれる溶液を貫通孔から注入するとともに、前記被検物質を前記分析チップを構成する選択結合性物質結合基材に選択的に結合させるにあたり、前記注入された溶液を撹拌することを特徴とする、前記〔13〕に記載の分析方法。
〔15〕 前記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の選択結合性物質固定化基材と、前記選択結合性物質固定化基材の表面を覆い前記選択結合性物質固定化基材と接着されたカバー部材と、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むことを特徴とする分析キット。
〔16〕 前記〔10〕に記載の分析チップと、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むことを特徴とする分析キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明の選択結合性物質固定化基材によれば、核酸等のハイブリダイゼーションに代表される、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を安定して検出することができ、且つ、検体溶液を高効率で撹拌し反応を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の選択結合性物質固定化基材は、選択結合性物質がその表面に固定される基材であって、該基材表面のうち、選択結合性物質が固定化される領域以外の少なくとも一部が、粗面化されてなることを特徴とする。
【0014】
粗面化とは、基材表面に所望の粗さを付与する処理を意味する。本発明において、基材表面の選択結合性物質が固定化される領域以外の少なくとも一部が、粗面化されてなることにより、被検物質の結合量を検出する際に、レーザーが乱反射してバックグラウンドが下がり、S/Nを向上させることができる。また、後述のように、基材に微粒子を格納した構成とする場合には、被検物質を基材に結合させる際に、本基材に回転または振動等を加えて微粒子を上下左右に運動させることにより被検物質を含む溶液を攪拌することができるが、基材表面に所望の粗さを付与することで微粒子の動きを乱して高めることができるため、基材の撹拌効果を向上させることができる。
【0015】
本発明の選択結合性物質固定化基材の一例を図1に、従来の表面が平滑化された基材の一例を図2に示す。図1に示す例において、基材1の表面は、凹部10及び凸部11からなる凹凸部により構成されている。凹部10表面は粗面化されており、凸部11の上面には、選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。一方、図2の従来の基材においては、基材1の表面に凹部10及び凸部11からなる凹凸部により構成されている点および、凸部11の上面には、選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている点では図1に示す例と同様であるが、凹部10の表面が平滑である(粗面化されていない)点で、図1に示す例とは相違する。
【0016】
図2においては、検出装置D1から基材の表面に測定用のレーザー等の照射光(実線の矢印)を照射すると、凹部10では表面が平滑であることによりレーザー光が良く反射して反射光(破線の矢印)が受光部に届くため、バックグラウンドが高く、結果的に凸部11の選択結合性物質に結合した被検物質を明瞭に検出することが困難である。これに対し、図1において、検出装置D1から基材の表面に測定用のレーザー等の照射光(実線の矢印)を照射すると、凹部10では表面が粗であることによりレーザー光が乱反射して反射光(破線の矢印)が受光部に届かないため、バックグラウンドが低下し、結果的に凸部11に結合した被検物質の分析が容易である。
【0017】
一方、本発明の選択結合性物質固定化基材に微粒子を格納した構成とする場合の一例を図3に、従来の平滑化された基材の一例を図4に示す。図3に示す例においては、前述の図1の基材において、更に微粒子2が格納されている。一方、図4の従来例においては、図3に示す例と凹部10の表面が平滑である(粗面化されていない)点においてのみ相違する。
【0018】
図4においては、凹部10の表面が平滑であることにより微粒子が直線的な動き(図4中の矢印参照)をするにとどまるので、被検物質を含む溶液と気体を接触させた際の撹拌効率に限界があるのに対し、図3の基材においては、凹部10の表面が粗であることにより微粒子2がランダム方向に運動し(図3中の矢印参照)、結果的に撹拌効率を上昇させることができる。
【0019】
粗面化の程度は、表面粗さを表す各種のパラメータで測定することができ、特に、JIS B0601:2001で規定された粗さ曲線の算術平均粗さであるRa値(中心線平均粗さ)、JIS B0601:2001で規定された粗さ曲線の最大高さであるRz値(最大高さ)またはJIS B0601:2001で規定された粗さ曲線の十点平均粗さであるRZJIS値(10点平均粗さ)で以下のように表すことができる。
【0020】
Ra値(中心線平均粗さ)は0.01μm以上、1μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、0.7μm以下であることがより好ましく、特に0.01μm以上、0.1μm以下であることが好ましい。Ra値がこの範囲より小さいと、レーザーの乱反射によって反射光が受光部に届かなくなるため、バックグラウンドが上昇してしまう。この範囲より大きいと、微粒子の動きをかえって妨げ、攪拌効果が低下してしまう。
【0021】
Rz値(最大高さ)は、0.1μm以上、30μm以下であることが好ましく、0.1μm以上、20μm以下であることがより好ましく、特に0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。Rz値がこの範囲より小さいと、微粒子の動きが不規則になることによる攪拌効果が十分得られず、この範囲より大きいと、微粒子の動きを妨げてしまい、攪拌効果が不十分になってしまう。
【0022】
ZJIS値(10点平均粗さ)は、0.05μm以上、30μm以下であることが好ましく、特に0.05μm以上、10μm以下であることが好ましい。RZJIS値がこの範囲より小さいと、微粒子の動きが不規則になることによる攪拌効果が十分得られず、この範囲より大きいと、微粒子の動きを妨げてしまい、攪拌効果が不十分になってしまう。
本発明においては、Ra値、Rz値及びRZJIS値がいずれも上述の数値範囲の範囲内であることがもっとも好ましい。
【0023】
尚、上記Ra値、Rz値及びRZJIS値は、JIS B 0601:2001に規定されている表面粗さパラメータであり、以下のように触針法により測定されることが規定されている。測定には、触針電気式表面粗さ測定機が使用される。本装置は、JIS B0651 2001に従って作られている。本装置は、測定する対象面と触針先端との接触に関係する機械的各要素(位置決め装置、対象物の固定具、測定スタンド、送り装置、プローブ)から成る。測定は対象表面をプローブ先端の触針で曲線的になぞり、触針が対称面の粗さに従って曲線に対して上下方向に動くことを電気信号に変換し、「粗さ曲線」を描くことから始まる。このとき、測定距離(曲線の長さ)はJIS B0651 2001によって規定されており、それを基準長さl(エル)と呼称する。粗さ曲線の算術平均粗さRa値は、基準長さl内の任意の位置xにおける粗さ曲線の高さZ(x)の絶対値の平均である。同じく規定された粗さ曲線の最大高さRz値は、「粗さ曲線」の基準長さl内の最低谷底と最大山頂との高低差によって求められる。粗さ曲線の十点平均粗さRZJIS値は、基準長さl内の山頂の高い方から5点、谷底の低い方から5点を選らび、その平均値によって求められる。
【0024】
本発明の選択結合性物質固定化基材において、粗面化される領域は、選択結合性物質が固定化される領域以外の少なくとも一部であることが必要である。すなわち、選択結合性物質が固定化される領域以外であれば、基材のいずれの部分が粗面化されてなるものであっても良い。特に、基材表面のうち、選択結合性物質が固定化される領域が存在するのと同じ面であることが望ましい。当該選択結合性物質が固定化される領域は、後述のように基材表面に凹部及び凸部からなる凹凸部が設けられている場合には、凸部上面とすることが好ましい。尚、選択結合性物質の定義については、後述する。
【0025】
基材表面を粗面化する方法としては、基材材質が樹脂である場合には、例えば射出成型金型に対する機械加工による方法、X線リソグラフィと電鋳およびモールディングを組み合わせてアスペクト比の大きな形状を作る製法であるLIGA(Lithographie, Galvanoformung, Abformung)プロセスによる方法など公知の方法を用いることができ、所望の粗さを有する金型から基材を成型する方法が挙げられる。基材材質がガラスまたは樹脂の場合は、サンドブラスト法などの公知の方法を用いることができる。
【0026】
本発明の選択結合性物質固定化基材は、その表面に、凹部及び凸部からなる凹凸部を有することが好ましい。このような構造をとることにより、検出の際、非特異的に吸着した被検物質を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的によりS/Nが良好な結果を得ることができる。ノイズが小さくなる具体的な理由は、以下の通りである。すなわち、凸部上面に選択結合性物質を固定化した基材をスキャナーと呼ばれる装置を用いてスキャンすると、凹凸部の凸部上面にレーザー光の焦点が合っているため、凹部では、レーザー光がぼやけ、凹部に非特異的に吸着した被検物質の望まざる蛍光(ノイズ)を検出しがたいという効果があるためである。
【0027】
凹凸部の凸部の高さに関しては、それぞれの凸部の上面の高さが略同一であることが好ましい。ここで、高さが略同一とは、多少高さの違う凸部の表面に選択結合性物質を固定化し、これと蛍光標識した被検物質とを反応させ、そして、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの強度差が問題とならない高さをいう。具体的に高さが略同一とは、高さの差が50μm以下であることをいう。高さの差は30μm以下であることがより好ましく、高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。最も高い凸部上面の高さと、最も低い凸部上面の高さの差が50μmより大きいと、高さのずれた凸部上面でのレーザー光がぼやけてしまい、この凸部上面に固定化された選択結合性物質と反応した被検物質からのシグナル強度が弱くなる場合があるため好ましくない。
また、凸部分の上面は、実質的に平坦であることが好ましい。ここで凸部上面が実質的に平坦とは、20μm以上の凹凸がないことを意味する。
【0028】
本発明において、粗面化される領域は、選択結合性物質が固定化される領域以外の少なくとも一部であれば良い。具体的には、上述した凹凸部のうち凹部底面又は凸部上面のいずれか一方が粗面化されてなることが好ましく、中でも、凹部底面が粗面化されてなることが特に好ましい。
【0029】
本発明の選択結合性物質固定化基材において、選択結合性物質(プローブ)が固定化される領域は、該基材の表面であり、上述のような粗面化がなされていない領域であれば、特に限定されないが、具体的には、上述した凹凸部のうち凸部の上面(上端面)であることが好ましい。選択結合性物質の固定化は、予めなされるものであっても良いし、固定化しないで基材のみを用意しておき、被検物質の分析の際に所望の被検物質に応じた選択結合性物質を適宜選択し固定することもできる。
凸部の上面に固定化できる選択結合性物質(例えば核酸)は、データとして必要なものを適宜選択することができるが、単なるダミーの選択結合性物質であっても良い。また、すべての凸部上面に選択結合性物質を結合する必要は無く、何も固定化していない凸部上面を有していても良い。
【0030】
本発明の基材において、凸部上面に選択結合性物質が固定化される場合、当該凸部の上面の面積は略同一であることが好ましい。凸部の上面の面積が略同一であることにより、多種の選択結合性物質が固定化される部分の面積を同一にできるので、後の解析に有利である。ここで、凸部の上部の面積が略同一とは、凸部の中で最も大きい上面面積を、最も小さい上面面積で割った値が1.2以下であることを言う。
【0031】
選択結合性物質が固定化された凸部の上面の面積は、特に限定されるものではないが、選択結合性物質の量を少なくすることができる点とハンドリングの容易さの点から、1mm2以下、10μm2以上が好ましい。
【0032】
本発明の基材において、さらに好ましくは、その基材における選択結合性物質が固定化された領域を有する面の周囲がさらに凹凸部の凸部上端と略同一の高さの平坦部で囲まれていることが好ましい。このような構造とすることにより、凹凸部に被検物質を含む溶液をアプライすることが容易となり、攪拌用の微粒子を選択結合性物質に接触させること無く凹部に保持することが可能となる。
凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部の高さは、略同一であることが好ましい。すなわち、平坦部の高さと凸部上面の高さの差は、50μm以下であることが好ましい。凸部上面の高さと平坦部の高さの差が50μmを超えると、検出できる蛍光強度が弱くなる場合があるため好ましくない。平坦部の高さと凸部上面の高さの差は、より好ましくは30μm以下であり、最も好ましくは、平坦部の高さと凸部の高さは同一である。
【0033】
本発明で好ましく用いられる基材の凹凸部における凸部の高さ、即ち凸部上面と凹部底面との高さの差は、10μm以上、500μm以下が好ましく、50μm以上、300μm以下が特に好ましい。凸部の高さが10μmより低いと、スポット以外の部分の非特異的に吸着した検体試料を検出してしまうことがあり、結果的にS/Nが悪くなることがあるため好ましくない。また、凸部の高さが500μmより高いと、凸部が折れて破損しやすいなどの問題が生じる場合があり好ましくない。
【0034】
本発明の選択結合性物質固定化基材の具体例を、図5及び図6に例示する。
図5及び図6に示す例において、基材1の表面には、複数の凸部11を含む凹凸部12により構成されており、その周りに平坦部13が設けられている。凸部11の上面には、選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。この平坦部を使って、容易にスキャナーの励起光等の測定用の光線の焦点を凸部の上面に合わせることが可能となる。より具体的に説明すると、基材の表面に測定用のレーザー等の照射光(実線の矢印)を照射するにあたり焦点を合わせる際には、図7に示すように、バネ40で付勢して治具41に基材1を突き当て、この治具の突き当て面42の高さにレーザー光44が合焦するようレンズ43等により予め焦点を調整しておくことが多い。本発明の分析チップの基材の平坦部を治具の面23に突き当てることにより、容易に基材の凸部上面にスキャナーのレーザー光の焦点を合わせることが可能となる。なお、図7の例においては、基材1は、選択結合性物質が固定化された面が下側になるよう固定されている。
【0035】
本発明の基材は、上記凹凸部の凹部に移動可能に格納された微粒子を更に含むことが好ましい。当該微粒子を含むことにより、被検物質が含まれる溶液をアプライした後に分析チップを揺動、回転等させることで、空隙内で微粒子を運動させ、検体溶液と本発明の選択結合性物質固定化基材との十分な撹拌を達成し、より精密な分析を行うことができる。
【0036】
前記微粒子の形状は、特に限定されず、球状の形状以外に、多角形でも良く、円筒形、角柱形などのマイクロロッド状(微細な棒状)など任意の形状とすることができる。また、微粒子のサイズも特に限定されないが、例えば球状の微粒子の場合、0.1〜300μmの範囲とすることができ、また、円筒形の微粒子の場合、長さ50〜5000μm、底面直径10〜300μmの範囲とすることができる。前記微粒子の材質も、特に限定されないが、ガラス、セラミック(例えばイットリウム部分安定化ジルコニア)、金属(例えば金、白金、ステンレス)、プラスチック(例えばナイロンやポリスチレン)等を用いることができる。
上述の微粒子は、本発明の選択結合性物質固定化基材に予め格納した態様とすることができるが、被検物質が含まれる溶液に微粒子を混入させて該溶液のアプライと同時に微粒子を格納してもよく、または被検物質が含まれる溶液のアプライの前又は後に、微粒子を別途格納してもよい。
【0037】
本発明の分析チップの基材の材質は、特に限定されないが、ガラス、セラミック、シリコンなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンゴム等のポリマーなどを挙げることができる。この中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー、ガラス及びシリコンを特に好ましく用いることができる。
【0038】
本発明の選択結合性物質固定化基材は、少なくとも一部が黒色であることが好ましい。このようにすることにより、基材からの自家蛍光を低減することができる。基材の黒色にする部分としては、凹凸部が設けられた基材の本体でも良いし、凸部の側面、凹部に設けられた疎水的な材料や絶縁層でも良いし、これらの全部でも良い。
【0039】
ここで、基材が黒色であるとは、可視光(波長400nm〜800nm)において、基材の黒色部分の分光反射率が特定のスペクトルパターン(特定のピークなど)を持たず、一様に低い値であり、かつ、基材の黒色部分の分光透過率も、特定のスペクトルパターンを持たず、一様に低い値であることを意味する。
この分光反射率、分光透過率の値としては、可視光(波長400nm〜800nm)の範囲の分光反射率が7%以下であり、同波長範囲での分光透過率が2%以下であることが好ましい。尚、ここで言う分光反射率は、JIS Z 8722の条件Cに適合した、照明・受光光学系で、基材からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率を言う。
【0040】
黒色にする手段としては、本発明の選択結合性物質固定化基材に黒色物質を含有させることにより達成しうる。この黒色物質は、光を反射したり透過し難いものであれば、特に制限はないが、好ましいものを挙げると、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、およびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物などの黒色物質が使用できる。
【0041】
これらの黒色物質は単独で含有させる他、2種類以上を混合して含有させることもできる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂などのポリマーの場合は、この中の黒色物質の中でも、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラックを好ましく含有させることができ、特にカーボンブラックを好ましく用いることができる。ガラス、セラミックの無機材料の場合は、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、およびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物を好ましく含有させることができる。
【0042】
本発明の選択結合性物質固定化基材は、各種製法にて製造することができる。例えば、材質がポリマー等の場合、射出成形法、ホットエンボス法、鋳型内で重合させる方法等により成型することができる。また、材質がガラスやセラミック等の無機物の場合、サンドブラスト法、シリコンの場合は公知の半導体プロセスなどで成型することができる。
成型した基材は、選択結合性物質をその表面に固定化するのに先立ち、必要に応じて各種の表面処理を施すことができる。かかる表面処理としては、具体的には例えば特開2004−264289号公報に記載されるものなどを挙げることができる。
【0043】
本発明の基材は、被検物質を分析するための分析チップとして用いることができる。
本発明において、分析チップとは、被検物質が含まれる溶液を当該チップにアプライし、被検物質の存在の有無や、被検物質の量や、被検物質の性状等を測定するために用いるチップをいう。具体的には、基材表面に固定化された選択結合性物質と被検物質との反応により、被検物質の量や、被検物質の有無を測定するバイオチップが挙げられる。より具体的には、核酸を基材表面に固定化したDNAチップ、抗体に代表されるタンパク質を基材表面に固定化したタンパク質チップ、糖鎖を基材表面に固定化した糖鎖チップ、及び基材表面に細胞を固定化した細胞チップ等が挙げられる。
【0044】
本発明において、選択結合性物質とは、被検物質と直接的又は間接的に、選択的に結合し得る各種の物質を意味する。基材の表面に結合しうる選択結合性物質の代表的な例としては、核酸、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質を挙げることができる。
核酸としては、DNAやRNAでも良く、またPNAでも良い。特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう「選択結合性物質」に該当する。
核酸は、生細胞等天然物由来のものであっても良いし、核酸合成装置により合成されたものであっても良い。生細胞からのDNA又はRNAの調製は、公知の方法、例えばDNAの抽出については、Blinらの方法(Blin et al., Nucleic Acids Res. 3: 2303 (1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法(Favaloro et al., Methods Enzymol.65: 718 (1980))等により行うことができる。固定化する核酸としては、更に、鎖状若しくは環状のプラスミドDNAや染色体DNA、これらを制限酵素により若しくは化学的に切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA、又は化学合成したオリゴヌクレオチド等を用いることもできる。
【0045】
また、蛋白質としては、抗体及びFabフラグメントやF(ab´)2フラグメントのような、抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。抗体やその抗原結合性断片は、対応する抗原と選択的に結合し、抗原は対応する抗体と選択的に結合するので、「選択結合性物質」に該当する。
糖類としては、各種単糖のほか、オリゴ糖や多糖などの糖鎖を挙げることができる。
脂質としては、単純脂質の他、複合脂質であっても良い。
更に、上記核酸、蛋白質、糖類、脂質以外の抗原性を有する物質を固定化することもできる。また、選択結合性物質として、基材の表面に細胞を固定化してもよい。
これらの選択結合性物質のうち特に好ましいものとして、DNA、RNA、蛋白質、ペプチド、糖、糖鎖または脂質を挙げることができる。
【0046】
本発明の基材を分析チップとして用いる場合には、該基材の表面を覆い前記基材と接着されたカバー部材を更に備えるものであっても良い。カバー部材を備えることにより、被検物質が含まれる溶液を簡便に密閉保持することができ、その結果、被検物質と、基材の領域(図6中の12)に固定化された選択結合性物質との反応を、安定して行うことができる。また、特に本発明の基材が、前記したような微粒子を更に含む場合には、前記基材とカバー部材とが接着され一体となっていることにより、予め微粒子を封入しておくことができ、検体溶液をアプライする作業を容易に行うことが可能である。そして、検体溶液をアプライした後の貫通孔を塞ぐ作業においてもテープやシール剤が検体溶液と接触することがないので、バックグラウンドノイズが上昇しないという利点もある。
【0047】
図8は、前記基材に加え、更にカバー部材、接着部材、貫通孔及び液面駐止用チャンバーを有する本発明の分析チップの概略的な態様の例を示す斜視図であり、図9は図8の分析チップを矢印A1に沿った面で切断した断面図である。図8及び図9に示す例においては、基材1が、接着部材30を介してカバー部材3で覆われ、選択結合性物質が固定化された領域R1を含む空隙31を形成している。空隙31は、複数の貫通孔32を介して外部と連通する他は、外部と連通しない閉じた空間である。
【0048】
前記カバー部材は、前記基材の表面の少なくとも一面の一部を覆い、基材と、カバー部材との間に空隙を有するよう接着されることができる。そして、基材は、好ましくはその表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有する。即ち、好ましくは、前記選択結合性物質が固定化された領域が、当該空隙内に存在するように、前記カバー部材は前記基材に接着される。前記カバー部材は、前記空隙が形成される限りにおいて、どのような態様で接着されてもよいが、好ましくは、両面テープ、樹脂組成物等の接着部材を介して接着される。
【0049】
前記カバー部材は、前記空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有するものとすることができ、複数の貫通孔を有することが好ましい。より具体的には、貫通孔は、一つの空隙に対して複数あることが好ましく、中でも3個から6個とすることにより、被検物質が含まれる溶液の充填が容易となるので特に好ましい。なお、後述するように、空隙が、互いに連通しない複数の空間に分かれている場合は、各空間あたりに複数個、より好ましくは3〜6個の貫通孔を有することが好ましい。カバー部材が複数の貫通孔を有する場合、それらの孔径は、同一でも異なっていてもよいが、複数の貫通孔のうちの一つをアプライ口とし、他の貫通孔を空気の抜け口として機能させる場合、検体溶液のアプライの容易さ及び該溶液の密閉保持性の点から、アプライ口のみをアプライに必要な広い孔径としその他の貫通孔をより狭い孔径とすることが、好ましい。具体的には、アプライ口の貫通孔サイズは上記の通り直径0.01から2.0mmの範囲内とし、その他の貫通孔の直径を0.01〜1.0mmとすることが好ましい。
【0050】
貫通孔32は、その少なくとも1つが、その径を変化させて、上端に径の広い部分、いわゆる液面駐止用チャンバー33を備えるものとしても良い。液面駐止用チャンバーを備えることにより、貫通孔32からアプライされ空隙31に充填された検体溶液7の液面の上昇を抑え、貫通孔を封止部材34で封止する際の封止を容易かつ確実に行うことが可能となるとともに、検体溶液の中に多数の気泡が入ったり、検体溶液の流出を防ぐことができるので好ましい。液面駐止用チャンバーの形状は特に限定されるものではなく、円柱形、角柱形、円錐形、角錐形、半球形、又はこれに近似した形状とすることができる。これらのうち、製造の容易さ及び検体溶液の上昇を抑制する効果の高さ等の観点から、円柱形が特に好ましい。
【0051】
貫通孔の孔径サイズについては特に限定されるわけではないが、図10に示す縦断面形状の円筒形の貫通孔32及び液面駐止用チャンバー33との組み合わせの場合を例に挙げると、貫通孔32の孔径サイズ(直径)は、0.01から2.0mmが好ましく、0.3から1.0mmがより好ましい。孔径を0.01mm以上とすることにより、検体溶液のアプライを容易に行うことができる。一方、貫通孔32の直径を1.5mm以下とすることにより、アプライ後封止前の検体溶液の蒸発などをより効果的に抑制することができる。液面駐止用チャンバー33の孔径サイズ(直径)については、1.0mm以上が好ましい。1.0mm以上とすることにより、貫通孔32とのサイズの差を十分に得ることができ、十分な液面駐止効果が得られ好ましい。液面駐止用チャンバー33の直径の上限は、特に限定されないが、10mm以下とすることができる。また、液面駐止用チャンバー33の深さは、特に限定されないが、0.1〜5mmの範囲内とすることができる。
【0052】
このようなカバー部材は、前述の基材に、脱離可能に接着されていることが好ましい。本発明の分析チップをDNAチップとして用いる場合、通常、DNAチップを専用スキャナーで読み取ることが必要であるが、カバー部材が接着された状態では、専用スキャナーにセットすることが難しく、セットされたとしてもスキャン操作を実施するとカバー部材とスキャナーの光学系部品が接触し、故障の原因となることがある。また、カバー部材を介しての読み取りが可能であっても、読み取り値が不正確となりうる。そのため、読み取りの工程においてカバー部材を取り外せるよう、カバー部材が脱離可能であることが好ましい。
【0053】
カバー部材を基材に脱離可能に接着する態様は、特に限定されないが、カバー部材と基材が損傷されることなく脱離することが可能である態様が好ましい。例えば、両面テープ、樹脂組成物等の接着部材を介して接着することができる。
【0054】
接着部材として両面テープを用いる場合、両面で接着力の異なる両面テープを用いることが好ましく、具体的には、該両面テープの接着力の弱い面を基材側に接着し、接着力の強い面をカバー部材側に接着することが好ましい。このような態様とすることにより、カバー部材を剥離する際に、両面テープがカバー部材に接着した状態で同時に基材より脱離し易く、それにより、基材上への接着部材の残存による読み取りの工程における不都合を回避することができる。このような両面テープとしては、日東電工株式会社製の製品番号No.535A、住友スリーエム株式会社製の製品番号9415PC及び4591HL、並びに株式会社寺岡製作所製の製品番号No.7691等が挙げられる。
【0055】
接着部材として樹脂組成物を用いる場合、当該樹脂組成物としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含む樹脂組成物等を用いることができる。これらの樹脂組成物を利用することにより、両面テープに比べて密閉性を高めることが可能となるとともに、両面テープに比べて、長期間のインキュベーションに対しても安定であるため、そのような長期間のインキュベーションが必要な分析系においては特に好ましい。特に、接着部材としてシリコーン系のエラストマーを用いると、密閉性が良好であり、しかも、容易に脱離が可能な状態でカバーを接着することができる。このようなエラストマーとしては、具体的には、シルガード(シルガードはダウコーニング社の登録商標)や、信越化学工業社製の二液型RTVゴム(型取り用)を挙げることができる。
【0056】
上記カバー部材の形状は、前記基材の表面の少なくとも一面の一部を覆い、基材と、カバー部材との間に空隙を有するよう接着されうるものであれば特に限定されないが、その外周部分において、基材に近い部分より基材に遠い部分において突出した部分を有する構造、すなわちオーバーハング構造が設けられたものとすることができる。オーバーハング構造を設けることにより、基材を損傷せずにカバー部材を脱離することが容易となるので、好ましい。
【0057】
また、本発明の選択結合性物質固定化基材には、カバー部材及び任意に接着部材を含む構造により規定される空隙を有するが、当該空隙は、1つの空間でもよく、複数の仕切られた空間であってもよい。複数の仕切られた空間は、例えば図11に示すような仕切り構造により設けることができる。図11に示す例においては、カバー部材の凸部3A及び基材1が接着部材30Aを介して接着することにより、複数の仕切られた空間31を設けている。複数の仕切られた空間を設ける別の例として、例えば図12に示すような仕切り構造を設けることもできる。図12に示す例においては、基材の凸部14及びカバー部材3が接着部材30Bを介して接着することにより、複数の仕切られた空間31を設けている。また、さらに別の例として、図13に示すように、基材及びカバー部材に特に仕切り構造を設けるための凸部を設けず、接着部材30Aのみで空隙を仕切り、複数の仕切られた空間を設けることもできる。これらの例においては、空間31は、互いに連通せず、それぞれが別々に、1以上の貫通孔32及び液面駐止用チャンバー33を有することになる。このように、複数の仕切られた空間を設けることによって、1枚の分析チップに複数種の検体溶液をアプライすることが可能となり、従って複数種の被検物質を同時に1枚の分析チップで測定することができる。
【0058】
本発明の分析チップは、一枚の基材あたり一枚のカバー部材を有していてもよく、二枚以上のカバー部材を有していてもよい。具体的には、図14及び図15に示す通り、一枚の基材1上に、複数のカバー部材3Bを有することができる。複数のカバー部材3Bのそれぞれは、それぞれ別の接着部材30Cを介して基材1上に設けることができる。好ましくは、複数のカバー部材3Bのそれぞれが、基材1との間に空隙31を有し、且つ各空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有することができ、そして、各カバー部材3Bがそれぞれ別の、選択結合性物質が固定化された領域12を有することができる。このような態様をとることによって、上記複数の仕切られた空間を有する態様と同様に、複数種の被検物質を同時に1枚の分析チップで測定する等の効果を得ることができる。さらに、このような態様をとることにより、それぞれの領域12についてカバー部材を独立して脱離させることができるので、例えば一つの領域12について分析を行った後に他の領域R1を用いて分析を行うといった、独立した使用を行いうる。
【0059】
本発明の分析チップを構成するカバー部材の材料としては、特に限定されるものではないが、検体溶液をアプライした際に、溶液の様子を観察可能とするために、透明な材料が好ましい。そのような材質としては、ガラス又はプラスチックが挙げられる。特に、貫通孔や液面駐止チャンバー等の構造を容易に作製可能という点から、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の透明樹脂を好ましく用いることができる。カバー部材の作製方法も特に限定されるものではなく、切削加工や射出成型法による加工が可能である。大量生産が可能という観点から、射出成型法を好ましく用いることができる。
【0060】
本発明の分析チップにおける、凹凸部、カバー部材及び微粒子の関係の好ましい例を、図16を参照して説明する。図16に示した例では、DNA等の選択結合性物質45は、基材1の凸部上面10上に固定化されている。そして、微粒子(この場合は球状のビーズ)2は、基材1の凹部の空隙内に載置されている。選択結合性物質45及び微粒子2は、被検物質であるDNAが含まれる溶液(図示せず)に触れることになる。検体溶液は、基材1、接着部材30及びカバー部材3により規定される空隙内で保持されることになる。図16の例においては、基材の凸部上面11とカバー部材3との間隔の最短距離が、微粒子2の直径未満となっている。それにより、微粒子が凸部上面11に接触できなくなり、凸部上面11上の選択結合性物質45を傷つけることを防ぐことができる。微粒子が、例えば楕円形等の非球状の形状である場合は、凸部上面と容器との最短距離が微粒子の最小径未満であれば、同様に凸部上面11と微粒子との接触を防ぎ、選択結合性物質45の損傷を防ぐことが可能となる。
【0061】
このような本発明の選択結合性物質が固定化された基材は、各種被検物質の分析に利用することができる。
すなわち、本発明の選択結合性物質固定化基材に、被検物質を接触させて選択的に結合させ、前記選択結合性物質固定化基材上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することにより、被検物質を分析することができる。
【0062】
本発明の基材を用いた測定方法に供せられる被検物質としては、測定すべき核酸、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分、抗原性を有する各種生体成分、病原菌やウイルス等に対する抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの被検物質が含まれる検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、各種組織液等の体液や、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、被検物質となる核酸は、血液や細胞から常法により抽出した核酸を標識してもよいし、該核酸を鋳型として、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよい。後者の場合には、測定感度を大幅に向上させることが可能である。核酸増幅産物を被検物質とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオシド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。また、被検物質が抗原又は抗体の場合には、被検物質である抗原や抗体を常法により直接標識してもよいし、被検物質である抗原又は抗体を選択結合性物質と結合させた後、基材を洗浄し、該抗原又は抗体と抗原抗体反応する標識した抗体又は抗原を反応させ、基材に結合した標識を測定することもできる。
【0063】
本発明の被検物質の分析方法においては、まず、前記本発明の選択結合性物質固定化基材に被検物質を接触させて選択的に結合させる。すなわち、本発明の選択結合性物質固定化基材に上述のような標識、増幅等を施した被検物質を水溶液や適当な緩衝液等に溶解させた溶液とし、基材に接触させれば良い。
選択結合性物質結合基材への接触は、マイクロロッドが上記選択結合性物質固定化基材の凹凸部に検体を水溶液や適当な緩衝液等の溶液とし、ピペット等の通常の器具で注入することにより行うことができる。
【0064】
また、本発明の分析チップを利用する場合には、前記カバー部材の貫通孔から検体をアプライし、前記カバー部材に封止部材を貼付して前記貫通孔を封止し、前記検体を前記分析チップを構成する前記基材に選択的に結合させることができる。
貫通孔からの検体のアプライは、例えば、前記貫通孔からピペット等の通常の器具で注入して行うことができる。
【0065】
カバー部材への封止部材の貼付は、貫通孔の一部又は全て、好ましくは全てを封止する態様にて行うことができる。前記封止部材としては、例えばカプトン(商標、ポリイミドフィルム、東レ・デュポン社製)、ポリエステル、セロハン、又は塩化ビニル製の粘着テープ等の可とう性のテープを好ましく挙げることができるが、これに限らず、非可とう性の板状の接着可能な任意の部材を用いることもでき、非定型のシーリング剤を用いることもできるが、液面駐止用チャンバーによる本発明の効果をより良好に得るという観点からは、可とう性のテープ及び板状の部材が好ましく、操作の簡便性などの観点から、可とう性のテープがさらに好ましい。封止部材としてテープ又は板状の部材を用いる場合、その使用枚数は任意である。具体的には、カバー部材上の全ての貫通孔を一枚の封止部材で封止してもよく、複数の封止部材を用いてそれぞれで複数の貫通孔の一部を封止してもよい。また、前記の通り一枚の基材上に複数のカバー部材が設けられている場合、カバー部材のそれぞれに別々の封止部材を用いてもよく、複数のカバー部材上の貫通孔をまとめて一枚の封止部材で封止してもよい。通常は、一枚のカバー部材あたり一枚の封止部材を用いることが、簡便且つ確実な封止を達成しうることから好ましい。
【0066】
封止の具体例を、再び図16を参照して説明する。図16の例では、検体溶液(図示せず)を貫通孔32よりアプライした後、可とう性の粘着テープ34を、液面駐止用チャンバー33の全面を覆うように貼付し、貫通孔を封止している。このような態様により、簡便で且つ検体溶液の漏出や測定誤差を招かない封止を達成できる。
【0067】
本発明の分析方法において、選択的な結合とは、選択結合性物質と検体とを相互作用させ、前記検体を前記選択結合性物質を介して前記選択結合性物質固定化基材に結合させることを意味する。本発明の選択結合性物質固定化基材や分析チップの場合には、前記基材又はチップを揺動、回転させることにより、重量、振動、遠心力によってマイクロロッドが検体溶液中を移動するので、選択的結合を効率よく進めることができる。
選択的結合の際の反応温度及び時間は、ハイブリダイズさせる検体の核酸の鎖長や、免疫反応に関与する抗原及び/又は抗体の種類等に応じて適宜選択されるが、核酸のハイブリダイゼーションの場合、通常、50℃〜70℃程度で1分間〜十数時間、免疫反応の場合には、通常、室温〜40℃程度で1分間〜数時間程度である。また、必要に応じて、選択結合性物質固定化基材を揺動、回転等させ、選択的結合を促進することができる。
選択的結合が終了した後、通常はカバー部材を脱離させた後、次の工程に供することができる。
【0068】
本発明の分析方法においては、上述の選択的結合の後、前記基材上に前記選択結合性物質を介して結合した前記検体の質量を測定する。この測定も、従来の分析チップにおける操作と全く同様に行うことができる。例えば、適宜蛍光標識され、選択結合性物質と結合した検体の質量について、公知のスキャナ等により、その蛍光量を読み取ることにより測定することができる。
【0069】
本発明の分析方法において、選択結合性物質として核酸を固定化した場合には、この核酸又はその一部と相補的な配列を有する核酸を測定することができる。また、選択結合性物質として抗体又は抗原を固定化した場合には、この抗体又は抗原と免疫反応する抗原又は抗体を測定することができる。なお、本明細書でいう「測定」には検出と定量の両者の意味が含まれる。
【0070】
本発明の選択結合性物質固定化基材、及び分析チップは、分析用キットとして提供されることも可能である。
すなわち、本発明の分析用キットは、上記選択結合性物質固定化基材と、前記選択結合性物質固定化基材の表面を覆い前記基材と接着されたカバー部材と、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むか、或いは、上記分析チップと、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むことを特徴とする。
本発明の分析用キットにおいて含まれうる前記カバー部材に関しては、本発明の分析チップにおいて述べたとおりである。また、前記封止部材に関しては、前記本発明の分析方法において説明したものと同様のものを含むことができる。
このような本発明の分析用キットは、前記本発明の分析方法に従って使用することができる。
【実施例】
【0071】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。本発明は下記実施例に限定されない。
【0072】
参考例1(基材の作製)
公知の方法を用いて、射出成形用の型を作製し、射出成型法によりPMMA(ポリメチルメタクリレート)製の基材を得た。用いたPMMAの平均分子量は5万であり、PMMA中には1重量%の割合で、カーボンブラック(三菱化学製 #3050B)を含有させており、基材は黒色である。この黒色基材の分光反射率と分光透過率を測定したところ、分光反射率は、可視光領域(波長が400nmから800nm)のいずれの波長でも5%以下であり、また、同範囲の波長で透過率は0.5%以下であった。分光反射率、分光透過率とも、可視光領域において特定のスペクトルパターン(ピークなど)はなく、スペクトルは一様にフラットであった。なお、分光反射率の測定に用いた規格は、JIS Z 8722の条件Cである。この規格に適合した照明・受光光学系を搭載した装置(ミノルタカメラ製、CM−2002)を用いて、基材からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率を測定した。
【0073】
作成した基材の形状は、大きさが縦76mm、横26mm、厚み1mmであり、基材の中央部分を除き表面は平坦であった。基材の中央には、直径10mm、深さ0.2mmの凹んだ部分が設けてあり、この凹みの中に、直径0.2mm、高さ0.2mmの凸部を64(8×8)箇所設けた。凹凸部分の凸部上面の高さ(64箇所の凸部の高さの平均値)と平坦部分との高さの差を測定したところ、3μm以下であった。また、64個の凸部上面の高さのばらつき(最も高い凸部上面の高さと最も低い凸部上面との高さの差)、及び凸部上面の高さの平均値と平坦部上面の高さの差を測定したところ、それぞれ3μm以下であった。さらに、凹凸部凸部のピッチ(凸部中央部から隣接した凸部中央部までの距離)は0.6mmであった。
【0074】
実施例1
<粗面化された基材の作製>
参考例1で得た基材表面を紙やすりで処理して、粗さの調節を行ったものを基材1とした。
基材1の、選択結合性物質固定化面以外の粗さ、すなわち凹部の粗さを測定した。粗さの測定には、触針電気式表面粗さ測定機SURFCOM1400D−64を使用した。該測定機の固定具に基材1を固定し、凹部底面に針径は2μmの触針を触れさせ、触針を触れさせたままで該測定機の固定具を速度0.30mm/sで1.0mm平行移動させた。この平行移動距離1.0mmを基準長さl(エル)とした。基材表面の粗さは、触針の垂直方向の動きとして電気信号により記録され、この記録を用いて「粗さ曲線」を作成した。粗さ曲線の算術平均粗さRa値は、基準長さl内の任意の位置xにおける粗さ曲線の高さZ(x)の絶対値の平均である。同じくRz値(規定された粗さ曲線の最大高さ)は、「粗さ曲線」の基準長さl内の最低谷底と最大山頂との高低差によって求められる。RZJIS値(粗さ曲線の十点平均粗さ)は、基準長さl内の山頂の高い方から5点、谷底の低い方から5点を選らび、その平均値によって求められる。
【0075】
測定の結果、基材1のRa値は0.0374〜0.0830μm、Rz値は0.3100〜2.8129μm、RZJIS値は0.2400〜2.4480μmであった。
【0076】
<粗面化基材のバックグラウンドノイズの測定>
基材1にレーザーを当てて、基材1が発するシグナル強度を上記蛍光測定装置により測定した。ここでは選択結合性物質の固定化前なので、シグナル測定値はバックグラウンドノイズに相当する。蛍光測定装置としてオリンパス製GenePixを使用し、該装置のレーザー波長532nm、レーザー強度を33%、PMT gain値を500として基板1のシグナル強度の測定を行った。測定の結果、基材1のシグナル強度は60であった。この数値が低いほどバックグラウンドノイズが低いことを意味する。該蛍光測定装置は、その測定蛍光範囲が30〜65000であるので、この値はその範囲の下限付近である。
【0077】
実施例2
上記基材1について、粗面化よる攪拌の効果について確認を行った。
【0078】
<選択結合性物質の固定化>
基材1に対し、以下の条件でそれぞれ選択結合性物質としてオリゴヌクレオチドを固定化した。オリゴヌクレオチドとしては、配列番号1で表される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(60塩基)を用いた。該オリゴヌクレオチドを、純水に0.3nmol/μlの濃度で溶かして、ストックソリューションとした。担体に点着する際は、PBS(NaClを8g、Na2HPO4・12H2Oを2.9g、KClを0.2g、KH2PO4を0.2g純水に溶かし1lにメスアップしたものにpH調整用の塩酸を加えたもの、pH5.5)でプローブDNAの終濃度を0.03nmol/μlとし、かつ、担体表面のカルボン酸とプローブDNAの末端のアミノ基とを縮合させるため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mlとした。そして、これらの混合溶液をガラスキャピラリーで担体凸部上面に点着した。次いで、担体を密閉したプラスチック容器入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間程度インキュベートして、純水で洗浄した。
【0079】
<検体DNAの調製>
検体DNAとして、上記DNA固定化担体に固定化されたプローブDNAとハイブリダイズ可能な塩基配列を持つ配列番号4で表される塩基配列を有するDNA(968塩基)を用いた。調製方法を以下に示す。
【0080】
配列番号2で表される塩基配列を有するDNA(以下、配列番号2のDNAと記載することがある)と配列番号3で表される塩基配列を有するDNA(以下、配列番号3のDNAと記載することがある)を合成した。これを純水にとかして濃度を100μMとした。次いで、pKF3 プラスミドDNA(タカラバイオ(株)製品番号;3100)(配列番号5で表される塩基配列を有するDNA:2264塩基、以下、配列番号5のDNAと記載することがある)を用意して、これをテンプレートとし、配列番号2および配列番号3のDNAをプライマーとして、PCR反応(Polymerase Chain Reaction)により増幅を行った。
【0081】
PCRの条件は以下の通りである。すなわち、ExTaq 2μl、10×ExBuffer 40μl、dNTP Mix 32μl(以上はタカラバイオ(株)製 製品番号RR001Aに付属)、配列番号2のDNA溶液を2μl、配列番号3のDNA溶液を2μl、 テンプレート(配列番号5のDNA)を0.2μl加え、純水によりトータル400μlにメスアップした。これらの混合液を、4つのマイクロチューブに分け、サーマルサイクラーを用いてPCR反応を行った。これを、エタノール沈殿により精製し、40μlの純水に溶解した。PCR反応後の溶液の一部をとり電気泳動で確認したところ、増幅したDNAの塩基長は、およそ960塩基であり配列番号4のDNA(968塩基)が増幅されていることを確認した。
【0082】
次いで、9塩基のランダムプライマー(タカラバイオ(株)製;製品番号3802)を6mg/mlの濃度に溶かし、上記のPCR反応後精製したDNA溶液に2μl加えた。この溶液を100℃に加熱した後、氷上で急冷した。これらにKlenow Fragment(タカラバイオ(株)製;製品番号2140AK)付属のバッファーを5μl、dNTP混合物(dATP、dTTP、dGTPの濃度はそれぞれ2.5mM、dCTPの濃度は400μM)を2.5μl加えた。さらに、Cy3−dCTP(アマシャムファルマシアバイオテク製;製品番号PA53021)を2μl加えた。この溶液に10UのKlenow Fragmentを加え、37℃で20時間インキュベートし、Cy3で標識された検体DNAを得た。なお、標識の際ランダムプライマーを用いたので検体DNAの長さには、ばらつきがある。最も長い検体DNAは配列番号4のDNA(968塩基)となる。なお、検体DNAの溶液を取り出して、電気泳動で確認したところ、960塩基に相当する付近にもっとも強いバンドが現れ、それより短い塩基長に対応する領域に薄くスメアがかかった状態であった。そして、これをエタノール沈殿により精製し、乾燥した。
【0083】
この標識化された検体DNAを、1重量%BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC(5×SSCとは、20×SSC(シグマ製)を純水にて4倍に希釈したものである。また、20×SSCを純水で2倍に希釈したものを10×SSCと表記し、20×SSCの2倍希釈液を10×SSC、100倍希釈液を0.2×SSCと表記する。)、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.01重量%サケ精子DNAの溶液(各濃度はいずれも終濃度)、400μlに溶解し、ハイブリダイゼーション用のストック溶液とした。
【0084】
以下の実施例、比較例において、ハイブリダイゼーションの際の検体溶液は、特に断りのない限り、上記で調製したストック溶液を、1重量%BSA、5×SSC、0.01重量%サケ精子DNA、0.1重量%SDSの溶液(各濃度はいずれも終濃度)で200倍に希釈したものを用いた。なお、この溶液の検体DNAの濃度を測定したところ、1.5ng/μLであった
【0085】
<攪拌用微粒子の調製>
ハイブリダイゼーション反応液を攪拌するための微粒子として、直径150μmのガラスビーズを使用した。該ガラスビーズ10gを10N NaOH溶液に浸漬した後、純水で洗浄した。このガラスビーズに対し、DNAの非特異的吸着を防ぐために、次のように表面処理を行った。
【0086】
APS(3−アミノプロピルトリエトキシシラン;信越化学工業(株)製)を2重量%の割合で純水に溶解した後、上記のガラスビーズを1時間浸漬し、この溶液から取り出した後に110℃で10分間乾燥した。このようにしてガラスビーズ表面にアミノ基を導入した。ついで、5.5gの無水コハク酸を1−メチル−2−ピロリドン335mlに溶解させた溶液と、1Mホウ酸ナトリウム水溶液(ホウ酸3.09gとpH調整用の水酸化ナトリウムを加えて、純水で50mlにメスアップしたもの。pH8.0)50mlとのの混合液に、上記のガラスビーズを20分間浸漬した。浸漬後、純水で洗浄および乾燥した。このようにして、ガラスビーズの表面のアミノ基と無水コハク酸を反応させて、ガラスビーズ表面にカルボキシル基を導入した。
【0087】
<ハイブリダイゼーション反応>
上記で得られたプローブDNAを固定化した担体に上記検体DNAをハイブリダイゼーションさせた。具体的には、マイクロピペットを用いてハイブリダイゼーション用の溶液50μlを貫通孔より注入する。その後、カプトンテープ(アズワン 5−5018−01)で貫通孔を塞ぎ、これをマイクロチューブローテーター(アズワン製、商品番号:1−4096−01)の回転面に設けたプラスチック容器内に固定し、42℃、4時間インキュベートした。さらに担体のプローブDNA固定化面は、ローテーターの回転面に対し直角となるようにした。その際、ローテーターの回転数は3rpmとし、ローテーターの回転面は、水平面と直角となるようにした。インキュベート後、担体からカバー部材と両面テープを脱離後に担体を洗浄、乾燥した。
【0088】
<シグナル強度の測定>
ハイブリダイゼーション反応を行った基材1の表面にレーザーを照射して、基材が発するシグナル強度を上記の蛍光測定装置で測定した。ここでは選択結合性物質の固定化後なので、この測定値からハイブリダイゼーション反応の効率を評価できる。測定の結果、粗面化した基材1のシグナル強度の平均値は約24000であった。該蛍光測定装置は、その測定蛍光範囲が0〜65000であるので、この値はその範囲の中心付近である。上記のバックグラウンドノイズ(N=60)とシグナル値(S=24000)との比率(S/N比)は400となった。
【0089】
比較例1
参考例1で得た射出成型された基材をそのまま表面粗面化の処理を加えず、基材2として使用した。
実施例1と同じ方法で凹部表面の粗さを測定した結果、基材2のRa値は0.0040〜0.0075μm、Rz値は0.0500〜0.0960μm、RZJIS値は0(検出限界値以下)〜0.1280μmであった。
【0090】
実施例1と同様の方法で、選択結合性物質を固定化する前の基材2にレーザーを当てて、基材が発するシグナル値をバックグラウンド値を測定した。測定の結果、シグナル値は75であった。この値は、実施例1よりも25%高いバックグラウンド値であった。
【0091】
比較例2
基材2に対し、実施例2と同じ方法・条件で、同じオリゴヌクレオチドを選択結合性物質として固定化し、同じ標識検体を用い、攪拌用微粒子として同じカラスビーズを用いて攪拌して、同じ条件でハイブリダイゼーション反応を行った。
ハイブリダイゼーション反応させた基材2の表面にレーザーを照射して、基板が発するシグナル強度を上記の蛍光測定装置により測定した。その結果、シグナル強度の平均値は約20000であった。この値は、実施例2に比べて20%低い。ノイズ(N=20000)とシグナル値(S=75)との比率(S/N比)は267となった。
【0092】
以上の結果から、基材表面へ粗さを付与することは、基材のバックグラウンドノイズのシグナル強度低減と、ハイブリダイゼーション反応効率の向上に有効であることが示され、本発明の基材はこれらに優れた選択結合性物質固定化基材であることがわかった。実施例1と比較例1との比較において、25%のバックグラウンドノイズ低減効果、実施例2と比較例2との比較において、20%のハイブリダイゼーション効率増加効果が示された。また、シグナル値とノイズ値の比率(S/N比)は、粗さの付与前の267から付与後の400へと約50%倍増加しており、この基材を用いた測定における検出感度が50%上昇することを示唆するものである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の選択結合性物質固定化基材の一例を概略的に示す斜視図である。
【図2】図2は、従来の基材の一例を概略的に示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の選択結合性物質固定化基材の一例を概略的に示す斜視図である。
【図4】図4は、従来の基材の一例を概略的に示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明の選択結合性物質固定化基材の一例を概略的に示す斜視図である。
【図6】図6は、図5に例示される基材の縦断面図である。
【図7】図7は、本発明の選択結合性物質固定化基材を用いた反応の結果を読み取る治具及びスキャナーの一例を概略的に示す縦断面図である。
【図8】図8は、本発明の分析チップの一例を概略的に示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示される本発明の分析チップを矢印A1に沿った面で切断した部分断面図である。
【図10】図10は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの一例を示す部分断面図である。
【図11】図11は、仕切り構造を有する本発明の分析チップの一例を概略的に示す縦断面図である。
【図12】図12は、仕切り構造を有する本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す縦断面図である。
【図13】図13は、本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す縦断面図である。
【図14】図14は、本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す斜視図である。
【図15】図15は、図14に示される本発明の分析チップを矢印A2に沿った面で切断した部分断面図である。
【図16】図16は、本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 選択結合性物質結合基材
10 凹部
11 凸部
12 選択結合性物質が固定化された領域(凹凸部)
13 平坦部
14 基材凸部
2 微粒子
3、3B カバー部材
3A カバー部材凸部
30、30C 接着層(接着部材)
30A、30B 仕切り構造の接着層(接着部材)
31 空隙(空間)
32、32A、32B 貫通孔
33 液面駐止用チャンバー
34 封止部材(テープ)
35 基材とカバー部材との隙間
40 マイクロアレイを治具に突き当てるためのバネ
41 治具
42 治具突き当て面
43 対物レンズ
44 レーザー励起光
45 基材に固定化された選択結合性物質(DNA)
L1 凸部ピッチ




 

 


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