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発明の名称 測距・通信複合システム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−240511(P2007−240511A)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
出願番号 特願2006−111599(P2006−111599)
出願日 平成18年4月14日(2006.4.14)
代理人 【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
発明者 青柳 靖 / 上村 和孝
要約 課題
測距機能と通信機能とを一体化して処理可能な測距・通信複合システムを提供する。

解決手段
本発明の測距・通信複合システム1は、送信部2と受信部3から構成されており、測距と通信の2つの機能を統合化している。送信部2は、送信回路4、搬送波変調手段5、及び送信アンテナ6から構成されており、受信部3は、受信回路7、検波器8、低雑音増幅器(LNA)9、及び受信アンテナ10から構成されている。送信回路4で行われるデータ変調は、PPM方式を用いている。また、受信回路7は測距と通信の復調処理を並列して行えるよう、測距回路11と通信回路12を別々に設けている。
特許請求の範囲
【請求項1】
所定のインパルス信号を生成する信号生成手段と、
前記インパルス信号を所定の搬送波でアップコンバートして送信信号を生成する搬送波変調手段と、
前記送信信号を送信する送信アンテナと、
前記送信信号が対象物で反射されて再び到着した信号を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信した受信信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段の出力からインパルス信号を検波する検波手段と、
前記検波手段で検波された前記インパルス信号を入力して所定の処理を行う受信回路とを備え、
前記受信回路は測距手段と通信手段とを有している
ことを特徴とする測距・通信複合システム。
【請求項2】
前記受信回路は、
前記測距手段と前記通信手段とを並行して処理できるようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の測距・通信複合システム。
【請求項3】
前記信号生成手段は、
パルス幅が1nsec程度の超広帯域ベースバンドインパルスを生成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測距・通信複合システム。
【請求項4】
前記信号生成手段は、
PPM(Pulse Position Modulation)インパルスを用いてデータを変調する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の測距・通信複合システム。
【請求項5】
前記インパルス信号のパルス繰り返し周期は、
前記PPM変調のための時間スロットの内最大の遅延時間と、前記信号生成手段の最小パルス繰り返し周期の和より大きく、且つ、前記最小パルス繰り返し周期より前記時間スロットの最大遅延時間が小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測距・通信複合システム。
【請求項6】
前記信号生成手段は、
前記データを変調するのに先立って、所定の個数のインパルス列からなるプリアンブル信号を生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の測距・通信複合システム。
【請求項7】
前記測距手段は、アナログ・ディジタル変換器と複数のレンジビンを備え、
前記検波手段で検波された前記インパルス信号の振幅を、所定のタイミング毎に前記アナログ・ディジタル変換器によりディジタル値に変換して前記各レンジビンにサンプリングし、前記レンジビンのサンプリング値のうち最大となる前記レンジビンから距離を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測距・通信複合システム。
【請求項8】
前記アナログ・ディジタル変換器は、
前記検波手段で検波された前記インパルス信号の振幅を離散多値データ(多ビットディジタル信号)に変換する
ことを特徴とする請求項7に記載の測距・通信複合システム。
【請求項9】
前記測距手段によるサンプリングは、前記PPM変調による遅延時間だけ遅らせて開始され、前記レンジビンに蓄積される振幅データの分解能を補完するよう決定された所定の時間幅(オフセット)ずつ、タイミングをずらしながら行われる
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の測距・通信複合システム。
【請求項10】
前記通信手段は、高速比較器とDACを備え、
前記検波手段で検波された前記インパルス信号を、前記高速比較器で前記DACの出力と比較して2値化することによりデータ復調を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測距・通信複合システム。
【請求項11】
前記通信手段は、
前記プリアンブル信号に基づいて前記データ復調を開始する
ことを特徴とする請求項10に記載の測距・通信複合システム。
【請求項12】
前記信号生成手段は、連続する2つのインパルスを1組として第二番目のインパルスに対して前記データ変調を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測距・通信複合システム。
【請求項13】
前記連続する2つのインパルスの第一番目のインパルスは、直前の前記1組のインパルスの第二番目のインパルス乃至は、該第二番目のインパルスの次に生成されるパルスであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測距・通信複合システム。
【請求項14】
前記信号生成手段は、前記インパルス信号を生成すると同時にトリガパルスを生成して前記測距手段に送出する
ことを特徴とする請求項12に記載の測距・通信複合システム。
【請求項15】
前記通信手段は、
前記測距手段で算出された前記距離に基づいて前記送信信号の反射波を検知し、前記反射波を除いて前記データ復調を行う
ことを特徴とする請求項10に記載の測距・通信複合システム。
【請求項16】
前記通信手段は、
前記高速比較器からの出力の立ち上がり間隔が適切となるよう前記高速比較器の閾値を制御する
ことを特徴とする請求項10に記載の測距・通信複合システム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距・通信複合システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を用いた距離測定、すなわちレーダ機能は既に多くの技術が開示されている。例えば、測距機能として単調に繰り返し送信されるパルスを用いたレーダ等が知られている。
【0003】
また、近年新しいコンセプトの無線通信技術として、数GHzの帯域を利用した超広帯域無線システムであるUWB(Ultra Wide Band)無線システムが注目されている。
【0004】
UWBは、パルス幅がナノ秒程度かそれ以下の超短パルス波を利用したインパルス無線方式である。該インパルスの位置や、位相、振幅などに情報を変調することで通信が可能となる。
【0005】
さらに、UWB無線システムではインパルスの送信した時間と該送信波が所定の物体表面で反射し、再び送信源で受信されるまでの時間を計測することによって、所定の物体とUWB波送信源間の測距が高精度に可能であるという特徴がある。
【0006】
一方、測距機能と通信機能を同時に実現する装置の開発も進められており、例えば特許文献1では両機能を同じ装置で実現している。特許文献1では、無線通信装置を用いたデータ通信を行うにあたって、他の無線通信等との干渉を回避するために、予め測距機能を用いて通信範囲を決定し、それに基づいて送信出力を決定するようにしている。
【特許文献1】特開2003−174368号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、測距機能と通信機能を同時に実現する従来の装置では、測距機能を有する装置と通信機能を有する装置を別々に用意して組み合わせていた。あるいは、両機能を持つ装置を一体化しているが、両機能を同時に使用可能とするのではなく、切り替えて用いるようにしていた。
【0008】
そのため、装置を小型・軽量化するのが困難という問題があった。また、両者の機能を同時に使うことができないために、たとえば通信中に通信相手の移動を知る、といったより高度な利用方法が実現できなかった。
【0009】
また、測距機能に用いる周波数帯と通信機能に用いる周波数帯とが異なるため、それぞれの送受信機能が必要になるといった問題もあった。
【0010】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、測距機能と通信機能とを一体化して処理可能な測距・通信複合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の測距・通信複合システムの第1の態様は、所定のインパルス信号を生成する信号生成手段と、前記インパルス信号を所定の搬送波でアップコンバートして送信信号を生成する搬送波変調手段と、前記送信信号を送信する送信アンテナと、前記送信信号が対象物で反射されて再び到着した信号を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナで受信した受信信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段の出力からインパルス信号を検波する検波手段と、前記検波手段で検波された前記インパルス信号を入力して所定の処理を行う受信回路とを備え、前記受信回路は測距手段と通信手段とを有していることを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0012】
第2の態様は、前記受信回路が、前記測距手段と前記通信手段とを並行して処理できるようにしたことを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0013】
第3の態様は、前記信号生成手段が、パルス幅が1nsec程度の超広帯域ベースバンドインパルスを生成することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0014】
第4の態様は、前記信号生成手段が、PPM(Pulse Position Modulation)インパルスを用いてデータを変調することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0015】
第5の様態は、前記インパルス信号のパルス繰り返し周期が、前記PPM変調のための時間スロットの内最大の遅延時間と、前記信号生成手段の最小パルス繰り返し周期の和より大きく、且つ、前記最小パルス繰り返し周期より前記時間スロットの最大遅延時間が小さいことを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0016】
第6の態様は、前記信号生成手段が、前記データを変調するのに先立って、所定の個数のインパルス列からなるプリアンブル信号を生成することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0017】
第7の態様は、前記測距手段が、アナログ・ディジタル変換器と複数のレンジビンを備え、前記検波手段で検波された前記インパルス信号の振幅を、所定のタイミング毎に前記アナログ・ディジタル変換器によりディジタル値に変換して前記各レンジビンにサンプリングし、前記レンジビンのサンプリング値のうち最大となる前記レンジビンから距離を算出することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0018】
第8の態様は、前記アナログ・ディジタル変換器が、前記検波手段で検波された前記インパルス信号の振幅を離散多値データ(多ビットディジタル信号)に変換することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0019】
第9の態様は、前記測距手段によるサンプリングが、前記PPM変調による遅延時間だけ遅らせて開始され、前記レンジビンに蓄積される振幅データの分解能を補完するよう決定された所定の時間幅(オフセット)ずつ、タイミングをずらしながら行われることを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0020】
第10の態様は、前記通信手段が、高速比較器とDACを備え、前記検波手段で検波された前記インパルス信号を、前記高速比較器で前記DACの出力と比較して2値化することによりデータ復調を行うことを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0021】
第11の態様は、前記通信手段が、前記プリアンブル信号に基づいて前記データ復調を開始することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0022】
第12の態様は、前記信号生成手段が、連続する2つのインパルスを1組として第二番目のインパルスに対して前記データ変調を行うことを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0023】
第13の態様は、前記連続する2つのインパルスの第一番目のインパルスが、直前の前記1組のインパルスの第二番目のインパルス乃至は、該第二番目のインパルスの次に生成されるパルスであることを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0024】
第14の態様は、前記信号生成手段が、前記インパルス信号を生成すると同時にトリガパルスを生成して前記測距手段に送出することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0025】
第15の態様は、前記通信手段が、前記測距手段で算出された前記距離に基づいて前記送信信号の反射波を検知し、前記反射波を除いて前記データ復調を行うことを特徴とする測距・通信複合システムである。
【0026】
第16の態様は、前記通信手段が、前記高速比較器からの出力の立ち上がり間隔が適切となるよう前記高速比較器の閾値を制御することを特徴とする測距・通信複合システムである。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、測距機能と通信機能とを一体化して処理可能な測距・通信複合システムを提供することできる。その結果、測距機能によって通信相手を検知すると同時に通信を開始することが可能となる。
【0028】
またこの発明によれば、通信中に通信相手が移動した場合にも、測距機能で通信相手の移動を直ちに検知することが可能となり、通信を適切に処理させることが可能となる。
【0029】
さらにこの発明によれば、測距機能に使われる電力の面において、通信のためのPPM変調により一種のディザー効果(電力がランダムに周波数拡散される)が得られることから、単調に繰り返し送信されるパルス方式に比べて、ピーク電力の平均値を下げることができ、スペクトルマスクの厳しい(許容される電力値が低い)UWBには有効な方法となる。
【0030】
さらにこの発明によれば、パルス生成器の最小繰り返し周期が比較的長い場合においても、データ変調を高速に行うことが可能となる。
【0031】
さらに、本発明の信号生成手段により、連続する2つのインパルスを1組として第二番目のインパルスに対してデータ変調を行わせるようにする場合には、低繰り返し周期のインパルスレーダにおいても、高速データレートに対応させた通信を実現することが可能となる。また、インパルスを変調することによりレーダパルスのスクランブル効果が得られ、その結果レーダセンサ間の干渉を低減できるといった効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態における測距・通信複合システムの構成について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係る測距・通信複合システムの概略の構成を示すブロック図である。本発明の測距・通信複合システム1は、送信部2と受信部3から構成されており、測距と通信の2つの機能を統合化している。送信部2は、送信回路4、搬送波変調手段5、及び送信アンテナ6から構成されており、受信部3は、受信回路7、検波器8、低雑音増幅器(LNA)9、及び受信アンテナ10から構成されている。
【0034】
本発明の測距・通信複合システム1では、超広帯域インパルス方式で送受信を行う。送信回路4において、所定のタイミングで0.5〜1ns程度のベースバンドインパルスを生成し、これを搬送波変調手段5において所定の高周波数帯域、例えば24GHzの搬送波でアップコンバートして送信アンテナ6から送信する。
【0035】
一方、受信アンテナ10で受信された受信信号は、低雑音増幅器(LNA)9で増幅され、検波器8、例えばダイオード検波器に入力される。検波器8で検波されたインパルス信号は、受信回路7において測距と通信の復調処理が行われる。
【0036】
本発明の測距・通信複合システム1では、測距と通信の復調処理を並列して行えるようにしている。これを実現するために、受信回路7では測距回路11と通信回路12を別々に設けている。
【0037】
送信回路4で行われるデータ変調は、PPM(Pulse Position Modulation)方式を用いて行っている。PPM方式により生成されるインパルス信号の例を図2に示す。PPM方式のインパルス信号は、所定の基本周期Tでインパルス(a)を生成、あるいは基本周期Tより微小時間dTだけ遅らせてインパルス(b)を生成している。ここで、微小時間dTは基本周期Tより十分短い時間である。
【0038】
さらに、基本周期Tは、「PPM変調のための時間スロットdT(2値の場合。多値ではdTの整数倍)」と、パルス送信から次のパルス送信までの信号生成手段として定義できる、「最小パルス繰り返し周期」の和よりも大きい。
【0039】
PPM方式では、図2に示す通り、基本周期Tで生成されるインパルス(a)と、基本周期TよりdTだけ遅れて生成されるインパルス(b)の2種類があり、例えば前者のインパルス(a)に“0”、後者のインパルス(b)に“1”を割り当てている。送信回路4では、前記所定のタイミングで、変調するデータに応じてインパルス(a)かインパルス(b)のいずれかを割り当てる。
【0040】
PPM方式のインパルス信号は、図2に示す“0”か“1”の2値だけでなく、dT単位で多値化することも可能である。例えば、2桁のディジタル符号を送付する場合は、符号”00”、”01”、”10”、”11”にそれぞれ、送信タイミングn×T、n×T+dT、n×T+2×dT、n×T+3×dT、を割り当てることで多値化できる。
【0041】
この場合、時間スロットの最大値は3dTとなり、このときの基本周期Tは、3dTと最小パルス繰り返し周期の和よりも大きい。
【0042】
T≧{3dT+[最小パルス繰り返し周期]}
また、3dT≪Tである。
【0043】
また、通信回路12がプリアンブルを認識するよう構成されている場合には、通信データ送信時に、該通信データに先立って周期Tで同期補足用パルスを所定の回数送信する。
【0044】
次に測距回路11について、図3を用いて以下で説明する。本発明の測距・通信複合システム1では、送信部2から送信された前記インパルス信号が、対象物13で反射されて受信部3で受信されるまでの所要時間を検知し、該所要時間から対象物13までの距離を判定している。図3は測距回路の一実施形態を示すブロック図であり、タイミング設定手段21、アナログ・ディジタル変換器(ADC)22、レンジビン23、及び距離検知手段24とを備えている。
【0045】
タイミング設定手段21は、送信部2からインパルスが送信される時刻を0として、所定のサンプリング周期でADC22に対しサンプリングを行わせるためのクロック信号を出力する。但し、送信回路4によるデータ変調において、dT の遅延が付加された場合には、サンプリング開始時刻をdTだけ遅延させる。これによって、パルス毎のPPMデータ変調の影響を除去することができる。
【0046】
ADC22は、タイミング設定手段21から前記サンプリング周期毎に出力されるクロック信号に従って、検波器8からインパルス検波結果を入力してアナログからディジタルに変換する。ADC22は、高速、広帯域のアナログ・ディジタル変換器であり、該広帯域としては送信回路4で生成されるインパルスのベースバンド帯域と同程度を有している必要がある。
【0047】
検波器8からADC22に入力される前記インパルス検波結果は、受信したインパルスの振幅値であり、該振幅値をADC22でディジタル値に変換している。ディジタル変換された振幅値は、所定のビット数に離散化された離散多値振幅データ(多ビットディジタル信号)である。
【0048】
ADC22のサンプリング速度が十分でない場合には、タイミング設定手段21で設定されるサンプリングクロックに周期的なオフセットを付加することにより、等価的なサンプリングを行わせることが可能である。図4に、前記サンプリングクロックに前記オフセットを付加してサンプリングを行わせる一実施例を示す。
【0049】
図4において、第1回目のサンプリングクロック31に対し、第2回目のサンプリングではクロック32をクロック31よりオフセット分33だけ遅らせている。以下同様に、所定の回数だけサンプリングクロックをオフセット分33ずつ遅らせてサンプリングを行う。これにより、ADC22のサンプリング速度を考慮してサンプリングクロックの間隔を長くした場合でも、受信したインパルス信号を適切に検知することが可能となる。
【0050】
レンジビン23は、受信したインパルス信号を前記サンプリング周期でサンプリングする所定のサンプリング回数分だけ設けられている。該所定のサンプリング回数は、これにサンプリング周期をかけて得られる時間長が、測距範囲とする最大距離に対応するように決められる。サンプリングが開始されると、ADC22でディジタル化された振幅値を先頭のレンジビンから順に記憶させていく。
【0051】
複数のインパルス信号を受信して測距を行う場合には、各インパルス信号のサンプリングを開始する度に、レンジビン23の先頭から順に前記振幅値を加算していく。そして、前記振幅値の加算を所定の回数実施すると、各レンジビン23に蓄積された前記振幅値の各々の加算値を前記所定の回数で除することでレンジビン23毎の平均値を算出し、これを同じレンジビン23に記憶させる。前記振幅値の加算を行う前記所定の回数を、レンジビン23毎に個別に設定してもよい。
【0052】
上記の通り各レンジビン23に記憶させた前記振幅値あるいは前記振幅値の平均値は、距離検知手段24においてそれぞれ所定の閾値と比較され、該閾値を超える振幅値あるいは振幅値の平均値が検知されると、検知されたレンジビン23の位置から距離が判定される。
【0053】
距離検知手段24による別の測距方法として、レンジビン23に保存された振幅値あるいは振幅値の平均値の中から前記閾値を超えるものが検知されると(該レンジビンを23aとする)、該振幅値あるいは該振幅値の平均値の大きさから対象物13までの距離を推定することが可能である。すなわち、対象物13までの距離が大きくなるにつれて、前記振幅値あるいは前記振幅値の平均値は小さくなることから、前記振幅値あるいは前記振幅値の平均値から対象物13aまでの距離を推定することが可能となる。
【0054】
よって、上記の検知されたレンジビン23aの位置から推定される対象物13までの距離と、レンジビンン23aに保存されている振幅値から推定される距離とを比較することにより、推定された距離が適切か否かを判定することが可能となる。推定された距離が適切と判断されると、分解能の高い方の距離を用いるのが望ましい。
【0055】
本発明の測距・通信複合システム1では、上記のようにして検知されたレンジビンン23aの位置は、通信回路12に送出されて同期確立のための基礎データとして利用される。
【0056】
次に、通信回路12について、図面を用いて以下で説明する。図5は、通信回路12の概略構成を示しており、高速比較器(コンパレータ)41と演算処理器42、及びDAC43から構成されている。高速比較器41は、受信信号をアナログ値のまま直接入力し、これをDAC43の出力である、所定の閾値と比較することによって、1か0の2値化を行っている。ここで用いられる前記閾値はDAC43を制御することで可変としており、前記演算処理器42により容易に変更できるようにしている。
【0057】
通信の場合には、プリアンブル信号を用いて同期検出を行う追尾復号モードと、同期検出を行わない逐次復号モードがある。以下では、まず同期検出を行わない逐次復号モードを説明し、その後に同期検出を行う追尾復号モードを説明する。
【0058】
同期検出をしない逐次復号モードを用いた場合、演算処理器42では図6に示すような処理が所定の周期(T'とする)で行われる。以下では、図6を用いて演算処理器42における処理の流れを説明する。
【0059】
所定の周期T'に達すると、ステップS1ではまず「カウント開始トリガ」がすでに設定されているか否かを判定する。「カウント開始トリガ」がすでに設定されている場合には、ステップS6以降のデータ変調の処理に進む一方、「カウント開始トリガ」が未設定の場合にはステップS2以降の「カウント開始トリガ」の設定処理に進む。
【0060】
まず、「カウント開始トリガ」が未設定の場合には、ステップS2において、高速比較器41から入力した2値化されたデータ(以下では"1"を"H"で表し、"0"を"L"で表すものとする)が”H”か否かを判定する。”H”でない場合は、処理を終了して次のデータの入力を待つ。
【0061】
”H”が入力された場合には、ステップS3においてこの時のパルス立ち上がりタイミングを「カウント開始トリガ」として記憶する。
【0062】
ステップS5では、「周期カウンタ」(以下ではMとする)を0に初期化することにより、カウントを開始する。ここでのカウントは、ステップS6で周期T’毎に毎回実施される。
【0063】
次に、「カウント開始トリガ」がすでに設定されている場合には、まずステップS6で「周期カウンタ」Mに1を加算してカウントする。
【0064】
続いてステップS7では、カウント値Mが周期Tに相当する回数であるか否かを判定する。即ち、M×T’=Tが成立するか否かを判定し、成立する場合にはステップS8へ、また成立しない場合にはステップS12へ進む。
【0065】
ステップS8では、「周期カウンタ」Mを再び0に初期化する。これは、一周期T分のサンプリングを終了し、次の周期のサンプリングを開始するためである。
【0066】
ステップS9では、高速比較器41から入力した2値化されたデータが”H”か否かを判定する。そして、入力データが”H”の場合には、次のステップS10において受信データとして“0”を復調する。
【0067】
一方、ステップS9において入力データが”H”でないと判定された場合には、ステップS11で「データ識別カウンタ」(以下ではNとする)を0に初期化する。これは、dT後のインパルス、すなわち図2(b)のPPM信号をサンプリングするために設定するものである。
【0068】
次に、ステップS7においてM×T’=Tが成立しない場合には、ステップS12においてまず、通信相手、すなわち対象物13の移動が検知され、且つカウント開始トリガがdTよりも小さな範囲のずれを生じたか否かを判定する。
【0069】
ステップS12の判定が成立する(Y)場合には、ステップS13で「周期カウンタ」Mをリセット(0に初期化)して終了する。また、ステップS12の判定が成立しない(N)場合には、ステップS14以降の処理に進み、図2(b)に示すPPM信号のサンプリング処理を行う。
【0070】
ステップS14では、「周期カウンタ」M及び「データ識別カウンタ」Nをそれぞれカウントする。そして、ステップS15において「データ識別カウンタ」NがdTの時間に相当する回数であるか否かを判定する。即ちM×T’=dTが成立するか否かを判定する。
【0071】
ステップS15で判定が成立する場合には、次にステップS16で高速比較器41からの入力データが”H”か否かを判定する。そして、入力データが”H”の場合にはステップS17において受信データとして“1”を復調する。また、入力データが”H”でない場合には、図2(b)に示すPPM信号が検知されなかったと判断して、ステップS19で「カウント開始トリガ」をクリアする。
【0072】
一方ステップS15で判定が成立しなかった場合には、ステップS18でサンプリング時間がdTを経過しているか否かを判定し、経過している場合にはステップS19で「カウント開始トリガ」をクリアする。「カウント開始トリガ」がクリアされると、再びステップS2で高速比較器41からの入力データが”H”となり、ステップS3で「カウント開始トリガ」が設定されるのを待つ。
【0073】
通信方式として、プリアンブル信号を用いて同期検出を行う追尾復号モードの場合について、図7を用いて演算処理器42における処理の流れを説明する。
【0074】
図7に示す処理の流れは、基本的には図6の処理の流れと同じであるが、本通信方式では受信側で同期検出を行うためにプリアアンブルを利用している。プリアンブルを用いる場合、所定の信号を所定回数以上受信したことが確認できたときに、同期を確立したものと判断する。
【0075】
また本通信方式の場合には、同期を確立した後T+dTを超えてデータが検出されない場合であっても直ちに周期カウンタ等のリセットは行わず、データとして“”(NULL)を記録して同期を保持する。そして、NULLの記録が所定回数続いた場合にはじめて、同期が外れたものと判断する。
【0076】
図7に基づく本通信方式の説明として、以下では図6の同期検出をしない逐次復号モードと異なる点を中心に説明する。
【0077】
カウント開始トリガの設定が行われるステップS2以下の処理では、ステップS5に代えてステップS21の処理を行う。すなわち、周期カウンタの開始(初期化)に加えて、パルス数カウンタ(Pとする)及びNULLカウンタ(NCとする)を開始する(初期化する)。パルス数カウンタは、上記のプリアンブルの信号をカウントするためのものであり、NULLカウンタはNULLの記録回数をカウントするためのものである。
【0078】
また、ステップS7で周期カウンタMが周期Tに相当する回数であり、ステップS9で"H"が検知されたと判断した場合には、ステップS22でパルス数カウンタを加算し、ステップS23でパルス数カウンタが所定の回数(PXとする)超えたときに受信データとして“0”を復調するようにしている。
【0079】
同様に、ステップS15でデータ識別カウンタNがdTに相当する回数であり、ステップS16で"H"が検知されたと判断した場合には、ステップS24でパルス数カウンタを加算し、ステップS25でパルス数カウンタが所定の回数(PX)超えたときに受信データとして“1”を復調するようにしている。
【0080】
さらに、ステップS18でデータ識別カウンタNがdTに相当する回数を超えてデータが検出されない場合には、NULLカウンタを加算するとともにデータとして“”(NULL)を記録する。そして、ステップS27でNULLカウンタが所定の回数(NCXとする)を超えたと判断されたときに、ステップS19でカウント開始トリガをクリアするようにしている。
【0081】
本発明の測距・通信複合システム1は、PPM変調方式を適用することにより、測距機能と通信機能を一体化して持たせるようにしている。その結果、測距機能によって通信相手を検知すると同時に通信を開始することが可能となる。
【0082】
また、通信中に通信相手が移動した場合には、測距機能で通信相手の移動を直ちに検知することが可能となり、通信を適切に処理させることが可能となる。
【0083】
同期検出を行わない逐次復号モードを用いた場合について、演算処理器42における処理の別の実施例を以下に説明する。本実施例は、前記データ識別カウンタNを用いることなく、周期カウンタMのみでデータ復調を行わせるようにしたものである。本実施例によるデータ復調の一例を図8に示す。図8において、高速比較器41からの出力信号が”H”となった時点61をカウント開始トリガとし、該時点から周期カウンタMのカウントを開始させる。
【0084】
本実施例では、前記基本周期Tに対応するカウント数Xを基準カウント数として用いており、前記入力信号が”H”となってから次に再び”H”となるまでの間のカウント数Mが、基準カウント数Xより小さい場合には(例えば時点62)復調データ65を”0”とし、基準カウント数Xより大きい場合には(例えば時点63)復調データ65を”1”としている。また、カウント数Mが基準カウント数Xと一致する場合には(例えば時点64)、復調データ65を前回と同じ値としている。
【0085】
本実施例では、同じ値の通信データを連続して受信する場合には、前回と同じ値を復調させるようにしている。高速比較器41は、同じ値(例えば”0”)の入力信号が長期間続いた場合には、次に異なる値(例えば”1”)を連続して入力したときに最初の値の判定に失敗してしまう恐れがある(例えば”0”と判定してしまう)。本実施例では、最初の値の判定に失敗してしまうと、以降の連続して同じ値の信号を前記失敗したときの値に復調してしまう(例えば”0”と判定してしまう)。
【0086】
そこで、送信回路4で同じ値の送信信号が長期間生成されることのないよう、例えば送信回路4で処理される通信データが8ビットの場合には、8B10B方式を用いて10ビットの送信信号に変換して出力させるようにすることができる。8B10B方式による信号変換の例を表1に示す。
【0087】
表1 8B10B方式による信号変換の例


【0088】
本実施例における演算処理器42の処理の流れを図9に示す。演算処理器42においてデータ復調の処理を開始すると、まずステップS101で高速比較器41からの出力信号が最初に”H”となるのを待ち続ける。そして、ステップS101で”H”を検知した後は、周期カウンタMのカウントを開始するために、ステップS113で周期カウンタMをリセットして終了する。以降の処理周期T’では、ステップS102から処理が開始される。
【0089】
ステップS102でまず周期カウンタMをカウントし、ステップS103で前記インパルス信号が検知されないまま所定の時間2Tを超過したか否かの判定を行う。その結果、所定の時間2Tを超過したと判定された場合には、ステップS104で周期カウンタMをリセットした後、以降の処理周期T’では、再びS101の処理から開始する。
【0090】
ステップS103の判定で所定の時間2Tを超過していないと判定された場合には、次にステップS105で”H”が検知されたかを判定し、”H”が検知されないと判定された場合には処理を終了して次の処理周期T’を待つ。一方、ステップS105で”H”が検知されたと判定された場合には、ステップS106以降でデータ復調を行う。
【0091】
まず、ステップS106で周期カウンタMが基準カウント数Xより小さいと判定された場合には、ステップS107で”0”を復調する。また、ステップS108で周期カウンタMが基準カウント数Xより大きいと判定された場合には、ステップS109で”1”を復調する。さらにステップS108で周期カウンタMが基準カウント数Xと等しいと判定された場合には、ステップS111あるいはS112で前回と同じ値を復調する。
【0092】
ステップS106〜S112でデータ復調を終了すると、ステップS113で周期カウンタMをリセットして終了する。ステップS113で周期カウンタMをリセットして終了した場合には、次回の処理周期T’ではステップS102から処理が開始される。
【0093】
次に、プリアンブル信号を用いて同期検出を行う追尾復号モードの場合について、演算処理器42における処理の別の実施例を図10を用いて説明する。本実施例においても、図7に示した実施例と同様に、所定時間内に前記インパルス信号が検出されない場合にはNULLを記録させ、NULL の記録が所定回数続いた場合に同期が外れたと判断させるようにしている。
【0094】
以下では、図9に示す逐次復号モードの場合と相違する処理のみを説明する。ステップS105で”H”を検知したと判定された場合、ステップS121でパルス数カウンタPが所定の回数PXを超えたと判定されるまではデータ復調を行わず、ステップS122でのパルス数カウンタPのカウントとステップS123での周期カウンタMのリセットのみを行う。そして、ステップS121でパルス数カウンタPが所定の回数PXを超えたと判定されると、ステップS106以降でデータ復調を行う。
【0095】
また、ステップS103で前記インパルス信号が検知されないまま所定の時間2Tを超過したと判定された場合には、ステップS124でNULLカウンタNCをカウントし、ステップS125でNULLカウンタNCが所定回数NCXを超えたと判定されるまでは、ステップS105以降の処理を継続させる。そして、ステップS125でNULLカウンタNCが所定回数を超えたと判定されると、ステップS126でNULLカウンタNC及びパルス数カウンタPをリセットした後、以降の処理周期T’では再びS101の処理から開始させる。
【0096】
本発明の別の実施形態を図11に基づいて以下に説明する。本実施形態では、通信方式として、連続する2つのインパルスを1組として第二番目のインパルスに対してPPM方式でデータ変調を行うようにしている。図11は、送信回路4において行われるデータ変調の1実施例を示す図である。
【0097】
第一の実施形態と同様に本実施形態でも、0.5〜1ns程度のパルス幅のインパルスを、所定のパルス繰り返し周波数(PRF)で送信するようにしている。また、2つのインパルスを1組としてデータ変調を行っており、以下では、第1番目のインパルス51を基準インパルスと呼び、第2番目のインパルス52を変調インパルスと呼ぶこととする。
【0098】
本実施形態における測距手段について、以下に説明する。本実施形態の測距手段は、上記の基準インパルス51あるいは変調インパルス52が送信されてから、対象物で反射された反射波を受信するまでの時間を計測して該対象物までの距離を求めるインパルス型レーダである。
【0099】
測距回路11において対象物までの距離を検知するためには、送信部2からインパルスが送信される時刻を知る必要があるが、本実施形態では上記の基準インパルス51及び変調インパルス52をそれぞれ送信するのと同時に、トリガパルスを測距回路11に出力するようにしている。該トリガパルスは、送信回路4で基準インパルス51または変調インパルス52が生成されるのと同時に生成され、所定のタイミングで測距回路11に出力させるようにすることができる。
【0100】
測距回路11では、送信部2から入力した前記トリガパルスを基準として、基準インパルス51または変調インパルス52の反射波を受信するまでの時間を求めている。
上記のように、前記トリガパルスを用いて測距する方法は、第一の実施形態においても適用できるのは言うまでもない。
【0101】
第一の実施形態と同様に、測距回路11は、タイミング設定手段21でクロックを制御してレンジビン23毎に積分動作を行わせるアクティブ受信回路としている。通信方式として、2つのインパルスを1組としてデータ変調を行わせるようにしたが、測距手段としては、前記2つのインパルスをそれぞれ個別に処理しており、レンジビン23において2回の積分を行ったことに相当する。
【0102】
本実施形態では、測距機能を最優先するものとしており、通信機能を付加するために測距機能による検知範囲を縮小することは、最小限にとどめるものとしている。すなわち、検知範囲を広くするためにはレンジビン23における積分回数を増やす必要がある一方、通信に用いるシンボル(符号)数を増やすためにはインパルス間の間隔を大きくする必要がある。通信機能を高めるためにインパルス間の間隔を大きくすると、所定の時間内でのレンジビン23における積分回数が減少してしまうことになる。
【0103】
そこで、本実施形態では、レンジビン23での積分回数が必要回数だけ得られるようにインパルス間の間隔を決めるのを最優先としている。但し、通信が成立する範囲は、測距機能の検知範囲とは独立に設定することが可能である。
【0104】
なお、ADC22のサンプリング頻度はアプリケーションにより異なるが、限られたデータ更新時間内に積分回数を増やし、検知距離や検知物体ダイナミックレンジを拡大したい場合には、1回のパルス送出に対する評価レンジビンを並列処理する必要がある。
【0105】
次に、本実施形態における通信機能について、以下に詳細に説明する。
本実施形態の通信は、送信部を有する他車とは常に対面することがないコネクションレス型を前提とし、ACK、NACK等のパケットを受信しないものとしている。そして、自車の情報を放送する形で送信し、受信した他車輌がそれらの情報を元にアクションを決定するものとしており、これらの前提は第一の実施形態の場合でも同様である。
【0106】
一般に、通信には同期動作が必要となるが、本実施形態では、第一の実施形態と同様、同期回路やトラッキング回路を特に有さず、逐次得られたパルスからデータを解読できる方式としている。
【0107】
通信波はいつ来るかわからない上、送受信間の動作クロックは非同期であり、送受信間でクロックオフセットやジッタによる誤差を修正する必要がある。しかし、コネクションレス型通信ではこのような修正は困難であり、且つ、インパルスとインパルスの間でクロックを保持することは困難である。このため本実施形態は、クロックでサーチするようなアクティブ復調ではなく、受信パルスをトリガに動作するパッシブな復調方式としている。
【0108】
本実施形態のデータ変調方式について、図12を用いて以下でさらに詳細に説明する。図11に示すように、基準インパルス51が送信されると、それから所定の時間経過後に変調インパルス52が送信される。図12は、この変調インパルス52を送信するタイミングを決定するためのアルゴリズムを示す流れ図であり、送信回路4で実行される。
【0109】
上記の基準インパルス51が送信されてから変調インパルス52が送信されるまでの時間は、前記データ、すなわち図12に示すシリアルデータビット列54に基づいて決定される。ステップS31でまず、シリアルデータビット列54をパラレル変換し、ステップS32で各ビットを並列処理して符号化する。
【0110】
ステップS33では、ステップS32で符号化されたデータを発生タイミング選択回路に入力して変調インパルス52の発生タイミングを決定する。そして、ステップS33で決定された発生タイミングを基に、ステップS34で変調インパルス52を発生させるようにしている。
【0111】
上記で説明した変調インパルス52の発生タイミングは、少なくともパルス繰り返しの基本周期Tが経過した後の図11に示す期間53の範囲としており、T、T+dT、T+2dT、…、T+Nd・dTのいずれかである。ここで、dT (<<T)はデータ変調のための時間スロット、Ndは送信シンボル(符号)数である。また、Nd=2N (N;自然数)であり、N=1のときは2種類、N=2のときは4種類のポジション設定(PPM)が可能である。
【0112】
上記の通り、基準インパルス51と変調インパルス52の2つを1組として送信するようにすると、基準インパルス51が送信されてから時間2T後に、再び基準インパルス51が送信される。以下同様にして、基準インパルス51と変調インパルス52とが交互に送信されていく。
【0113】
尚、基準インパルスは51は、直前の変調インパルス52としての動作も可能であることは明らかであり、かつ、このような情報変調により、情報速度の高速化の実現、及び、ランダム性の強化による、電力スペクトルの平均値のピーク低減の実現が可能である。この様な場合、基準インパルス51の送信タイミングは直前の変調インパルス52に変調されるデータにより変化するため、2Tとはならない。また、基準インパルス51と、変調インパルス52の間隔はT、T+dT、T+2dT、…、T+Nd・dTのいずれかであることは変わりないが、基準インパルス51の直前の変調インパルスとの間隔もT、T+dT、T+2dT、…、T+Nd・dTのいずれかであることとなる。
【0114】
次に、本実施形態の通信受信アルゴリズムについて、図13を用いて以下に詳細に説明する。図13は、通信回路12の演算処理器42で行われる処理の流れを示す図である。
【0115】
本実施形態では、基準インパルス51と、変調インパルス52の間隔が所定の時間間隔内であるかを検知させるようにする必要がある。そこで、ステップS41において最初にデータ識別カウンタNcを0に設定しておく。
【0116】
ステップS42では、高速比較器41の出力がHIGH(または1)か否かを判定し、HIGHの場合にはステップS47でデータ識別カウンタNcが次式を満たすか否かを判定する。
【0117】
int(T/ Cclk)≦Nc≦int{(T+Nd・dT)/ Cclk} (式1)
データ識別カウンタNcが上式を満たす場合には、変調インパルス52を受信したと判定して、次にステップS48でNcに応じたデータ復調の処理を行う。
ステップS49でデータ識別カウンタNcを0にリセットする。
【0118】
2回目以降の処理は、サンプリング周期(カウントの周期)Cclkごとに図13に示すSの地点から開始する。そして、ステップS42で再びHIGHが検知されるまでは、Cclkごとに、ステップS46でデータ識別カウンタNcを加算していく。
【0119】
一方、ステップS42で再びHIGHが検知された場合には、次にステップS47に進む。
【0120】
ステップS47では、データ識別カウンタNcが(式1)を満たすか否かを判定する。
データ識別カウンタNcが(式1)を満たす場合には、変調インパルス52を受信したと判定して、次にステップS48でNcに応じたデータ復調の処理を行う。
【0121】
ステップS48でデータ復調を行った後、ステップS49でデータ識別カウンタNcを0にリセットし、再び基準インパルスの受信を待つようにする。
【0122】
一方、ステップS47においてデータ識別カウンタNcが(式1)を満たさないと判定した場合には、正常なインパルスではないと判定してステップS43設定のみを行う。
【0123】
上記説明の図13に示す処理の流れにより、本実施形態においてもPPMインパルスを用いた通信を実現することができる。そして、連続する2つのインパルスを1組として第二番目のインパルスに対してデータ変調を行わせるようにしたことにより、低繰り返し周期のインパルスレーダにおいても、高速データレートに対応することが可能となる。
【0124】
さらに、基準インパルスまたは、変調インパルスのいずれかのインパルスに対してデータ変調を行わせる場合には、同じデータ復調手続きで、さらに、高速なデータレートに対応することができる。
【0125】
また、PPM方式によるによるインパルスの変調により、レーダパルスのスクランブル効果が得られ、その結果レーダセンサ間の干渉を低減できるといった効果も得られる。
【0126】
さらに、基準インパルスまたは、変調インパルスのいずれかのインパルスに対してデータ変調を行わせる場合には、インパルスの変調により、さらなるレーダパルスのスクランブル効果が得られる。
【0127】
なお、高速比較器41においてインパルスを受信したときのHIGHの維持時間は、所定の回路により調整可能とすることができる。そのため、例えば演算処理器42の処理が遅い場合には、HIGHの維持時間を長くして演算処理器42の処理が間に合うようにすることができる。前記所定の回路としては、例えばローパスフィルタを用いることができ、あるいは高速比較器41のヒステリシス等の特性を変更して実現することも可能である。
【0128】
上記実施形態の測距・通信複合システム1では、送信部2から送信された所定のインパルス信号が、対象物13で反射されて受信部3で受信されるまでの所要時間を検知することで、対象物13までの距離を判定させるようにしている。対象物13で反射されて受信部3で受信される前記インパルス信号(以下では、反射インパルス信号と記す)は、測距回路11だけでなく通信回路12にも入力される。そのため、前記反射インパルス信号を通信用信号と混同してしまう恐れがある。
【0129】
そこで、前記反射インパルス信号を通信信号としてデータ復調しないよう、通信回路12における処理から除去するようにした一実施例を図14に示す。本実施例では、通信回路12に自局干渉波除去手段71を追加している。自局干渉波除去手段71は、対象物13までの距離を測距回路11から入力し、前記距離から前記反射インパルスの受信タイミングを推定している。そして、前記受信タイミングには、高速比較器41への入力を遮断させるようにしている。
【0130】
図14に示す実施例では、自局干渉波除去手段71を高速比較器41の入力側に設けるようにしたが、これを高速比較器41の出力側に設けるようにしてもよい。この場合には、前記反射インパルスの受信タイミングに高速比較器41からの出力が、演算処理器41に入力されないよう自局干渉波除去手段71で遮断させることが可能となる。
【0131】
一方、受信アンテナ10は、対象物13以外の他局からも通信信号を受信してしまう恐れがある。そこで、上記実施形態では、高速比較器41で用いられる閾値を制御することで、他局からの干渉波を除去することが可能な構成としている。他局からの干渉波を除去するための前記閾値の制御方法を、図5または図14を用いて以下に説明する。
【0132】
高速比較器41は、アナログ値である受信信号をDAC43から入力した閾値と比較して2値化処理を行っている。そして、前記閾値は演算処理器42で容易に変更可能となっている。そこで、他局からの干渉波を除去するために、演算処理器42において以下のように前記閾値を制御させることが可能である。
【0133】
本実施形態の通信受信アルゴリズムについて、図15を用いて以下に詳細に説明する。図15は、前記演算処理器42で行われる処理の流れを示す図である。先ず、ステップS50において最初に識別カウンタ値N(インパルス間隔が広すぎる場合の回数を計測するカウンタ),及び識別カウンタ値N’(インパルス間隔が狭すぎる場合の回数を計測するカウンタ)を0に設定しておく。また、データ判定の初期値、すなわち、DAC43の設定値VTHに所定の初期値を設定しておく。
【0134】
ステップS51〜S58では、演算処理器42において、高速比較器41から出力が立ち上がった(1となった)タイミングを記憶させ、前記立ち上がりタイミングの間隔に従って前記閾値を制御させる。
【0135】
すなわち、ステップS51において、前記データ識別カウンタ値Ncを計測値とする、前記連続するインパルスの立ち上がりタイミングの間隔が、前記基本周期Tを演算処理器42の前記カウントの周期Cclkで割った値、int(T/Cclk)、に比べて小さい場合には、高速比較器41が他局からの干渉波を処理している可能性があるとして、ステップS52へ進み、識別カウンタ値Nに0が設定されるとともに、識別カウンタ値N’が1加算される。
【0136】
ステップS53で、前記識別カウンタ値N’が所定の値THと比較される。この結果、前記所定の値THを上回る場合、高速比較器41が他局からの干渉波を処理していると判定する。この場合にはステップS54において、前記閾値が前記他局からの干渉波の振幅より大きくなるよう、前記閾値の値VTHを所定の値Δだけ大きくしてDAC43に出力する。
【0137】
これに対し、前記データ識別カウンタ値Ncが、前記基本周期Tとデータ変調時間の和に比べて十分長い期間、すなわちint{(T+Nd・dT)/ Cclk}を上回る値を示す場合には、前記閾値の値が大きすぎる可能性がある、と判断して、ステップS55へ進み、識別カウンタ値Nに0が設定されるとともに、識別カウンタ値N’が1加算される。
【0138】
ステップS56で、前記識別カウンタ値Nが所定の値THと比較される。この結果、前記所定の値THを上回る場合、高速比較器41が他局からの干渉波を処理していると判定する。この場合にはステップS57において、前記閾値の値VTHを所定の値Δだけ小さくしてDAC43に出力する。
【0139】
これらに対し、前記データ識別カウンタ値Ncがデータ復調可能な範囲にある場合、すなわち、前記式1を満たす場合は、適切な前記閾値VTHをDAC43に設定している、と判断して、ステップS58で、識別カウンタN,N’に0を設定する。
【0140】
上記のように、高速比較器41の出力立ち上がりタイミングの間隔に基づいて前記閾値を制御させるようにすることによって、他局からの干渉波を適切に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る測距・通信複合システムの概略の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、PPM方式により生成されるインパルス信号の例を示す図である。(a)は基本周期Tで生成されるインパルスを示す図であり、(b)は基本周期TよりdTだけ遅れて生成されるインパルスを示す図である。
【図3】図3は、測距回路の一実施形態を示すブロック図である。
【図4】図4は、サンプリングクロックにオフセットを付加してサンプリングを行う一実施例を示す図である。
【図5】図5は、通信回路の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、通信回路の演算処理器における処理の流れを説明する図である。
【図7】図7は、通信回路の演算処理器における別の処理の流れを説明する図である。
【図8】図8は、逐次復号モードを用いた場合の演算処理器による処理の別の実施例におけるデータ復調の一例を示す図である。
【図9】図9は、逐次復号モードを用いた場合の演算処理器における処理の流れの別の実施例を示す図である。
【図10】図10は、追尾復号モードの場合の演算処理器における処理の流れの別の実施例を示す図である。
【図11】図11は、別の実施形態の送信回路で行われるデータ変調の1実施例を示す図である。
【図12】図12は、別の実施形態において変調インパルスを送信するタイミングを決定するためのアルゴリズムを示す流れ図である。
【図13】図13は、別の実施形態の通信回路の演算処理器で行われる処理の流れを示す図である。
【図14】図14は、通信回路において反射インパルス信号を除去するようにした一実施例を示す図である。
【図15】図15は、干渉除去のための制御アルゴリズムを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0142】
1・・・測距・通信複合システム
2・・・送信部
3・・・受信部
4・・・送信回路
5・・・搬送波変調手段
6・・・送信アンテナ
7・・・受信回路
8・・・検波器
9・・・低雑音増幅器(LNA)
10・・・受信アンテナ
11・・・測距回路
12・・・通信回路
13・・・対象物
21・・・タイミング設定手段
22・・・アナログ・ディジタル変換器
23、23a・・・ レンジビン
24・・・距離検知手段
31、32・・・サンプリングクロック
33・・・オフセット
41・・・高速比較器
42・・・演算処理器
43・・・DAC
51・・・基準インパルス
52・・・変調インパルス
53・・・期間
54・・・シリアルデータビット列
65・・・復調データ
71・・・自局干渉波除去手段




 

 


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