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発明の名称 温度定点セル、温度定点装置および温度計校正方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−108048(P2007−108048A)
公開日 平成19年4月26日(2007.4.26)
出願番号 特願2005−300011(P2005−300011)
出願日 平成17年10月14日(2005.10.14)
代理人 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
発明者 山田 善郎
要約 課題
定点物質を換えることにより広い温度域で定点を実現することが可能で、かつ使用時において定点物質が汚染されることなく、るつぼの亀裂発生を防止することが可能な温度定点セルを提供する。

解決手段
炭素を成分とするるつぼと、
特許請求の範囲
【請求項1】
炭素を成分とするるつぼと、
前記るつぼの内に封入され、金属、金属と炭素との共晶または金属炭化物と炭素との共晶からなる定点物質と、
前記るつぼと前記定点物質との間に介在される不純物量が10ppm以下の黒鉛繊維の織布と
を含むことを特徴とする温度定点セル。
【請求項2】
前記黒鉛繊維の織布は、複数枚を積層した積層物であることを特徴とする請求項1記載の温度定点セル。
【請求項3】
前記金属は、ガリウム、インジウム、錫、亜鉛、アルミニウム,銀、金または銅のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の温度定点セル。
【請求項4】
前記炭素との共晶に用いられる金属は、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、レニウム又はオスミウムのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の温度定点セル。
【請求項5】
前記金属炭化物は、ホウ素、モリブデン、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タングステン、または希土類元素の炭化物のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の温度定点セル。
【請求項6】
請求項1記載の温度定点セルと、
前記温度定点セルが内部に設置され、その温度定点セルの周囲温度を上昇または下降させる炉と
を具備することを特徴とする温度定点装置。
【請求項7】
請求項1記載の温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの温度変化を温度計にて測定し、測定された温度変化状態から前記温度計を校正することを特徴とする温度計校正方法。
【請求項8】
前記温度計は、放射温度計、熱電対、抵抗温度計であることを特徴とする請求項7記載の温度計校正方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放射温度計や熱電対のような温度計の校正等に用いる温度定点セル、温度定点装置および温度計校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度計を校正する際、常温域以上では金属の凝固点もしくは融点が温度の定義定点として採用され、その実現方法として温度定点セルが用いられる。これらは通常、黒鉛製のるつぼを用い、その中に定点物質として純金属を鋳込んだものであり、その内部の温度を温度計で測定し、温度定点セルを温度可変の炉の内部に置き環境温度を昇温・降温させたときのセルの温度変化を観測、定点物質の液相・固相が共存する状態では融解の潜熱により温度変化がなくなることを利用して温度計の校正を行うものである(非特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には炭素を成分とするるつぼと、このるつぼ内に封入され、炭素と金属との共晶組織の定点物質とを備えた温度定点セルが開示されている。また、特許文献2には炭素を成分とするるつぼと、このるつぼ内に封入され、炭化物と炭素の共晶組織、または炭素固溶体と炭素の共晶組織の定点物質とを備えた温度定点セルが開示されている。
しかしながら、前記非特許文献1、特許文献1,2の温度定点セルにおいて、温度計校正の目的のためにそのるつぼを温度可変電気炉の内部に置き、環境温度を昇温・降温させると、定点物質が膨張・収縮することによりるつぼにストレスが加わって亀裂を生じる虞があった。
一方、本発明者は非特許文献2において、るつぼと多孔質体からなる定点物質の隙間に複数枚の熱分解黒鉛シート(pyrolitic graphite sheet)の積層物を介挿した温度定点セルを発表した。
【0004】
しかしながら、本発明者は温度定点セルを継続して研究している過程で前記熱分解黒鉛シートは純化が難しく、0.1%前後のリンを不純物として含有するため、この熱分解黒鉛シートを積層した黒鉛支持体を介挿した温度定点セルを温度計校正の目的で温度可変電気炉の内部に置き、環境温度を昇温・降温させると、熱分解黒鉛シートに接する定点物質にリンが拡散して汚染し、温度計校正の再現性が著しく低下することを究明した。
【特許文献1】特許第2987459号
【特許文献2】特許第3404531号
【非特許文献1】(社)日本電気計測器工業界編「新編温度計の正しい使い方」、第7章、日本工業出版社(1997)
【非特許文献2】Y. Yamada, P. Bloembergen "High-Temperature Metal-Carbon Eutectic Fixed-Point Cells with Improved Robustness", SICE Annual Conference in Sapporo, August 4-6, 2004, pp. 1027-1030
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、定点物質を換えることにより広い温度域で定点を実現することが可能で、かつ使用時において定点物質が汚染されることなく、るつぼの亀裂発生を防止することが可能な温度定点セルを提供するものである。
本発明は、前記特性の温度定点セルを備えた温度定点装置を提供するものである。
本発明は、前記特性の温度定点セルを用いて放射温度計、熱電対、接触温度計等を広い温度域で校正することが可能な温度計校正方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、炭素を成分とするるつぼと、
前記るつぼの内に封入され、金属、金属と炭素との共晶または金属炭化物と炭素との共晶からなる定点物質と、
前記るつぼと前記定点物質との間に介在される不純物量が10ppm以下の黒鉛繊維の織布と
を含むことを特徴とする温度定点セルが提供される。
さらに本発明によると、前記温度定点セルと、
前記温度定点セルが内部に設置され、その温度定点セルの周囲温度を上昇または下降させる炉と
を具備することを特徴とする温度定点装置が提供される。
さらに本発明によると、前記温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの温度変化を温度計にて測定し、測定された温度変化状態から前記温度計を校正することを特徴とする温度計校正方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、定点物質を換えることにより広い温度域で定点を実現することが可能で、かつ使用時において定点物質が汚染されることなく、るつぼの亀裂発生を防止することができる長寿命の温度定点セルを提供できる。
また、本発明によれば前記特性の温度定点セルを備え、放射温度計、熱電対、その他の温度計の校正が内挿で行うことが可能な長寿命の温度定点装置を提供することができる。
【0008】
さらに、本発明によれば前記特性の温度定点セルを用いることによって、温度計の校正操作を長期間にわたって安定的に実施し得る温度計校正方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る温度定点セル、温度定点装置および温度校正方法を詳細に説明する。
図1は、この実施形態に係る温度定点セルを示す断面図である。
【0010】
温度定点セル1は、炭素を成分とする、例えば黒鉛からなるるつぼ2を備えている。このるつぼ2は、片封じ円筒状のるつぼ本体3と、この本体3の片封じ部から内部に向かって突出させることにより形成された空洞4と、前記本体3の開口部に気密に取り付けられた黒鉛からなる円板状蓋体5とから構成されている。定点物質6は、前記るつぼ2内に前記黒体空洞4が位置する突起部を覆うように封入されている。リン、カルシウムのような不純物量が10ppm以下の黒鉛繊維の織布(例えばこの織布を複数枚積層した積層物)7は、前記るつぼ2を構成する円筒状のるつぼ本体3と定点物質6の間に介挿されている。また、不純物量が10ppm以下の黒鉛繊維の織布を複数枚積層した積層物8はるつぼ2を構成する黒鉛からなる円板状蓋体5と定点物質6の間に介挿されている。
【0011】
前記定点物質は、金属、金属と炭素との共晶または金属炭化物と炭素との共晶からなる。
【0012】
前記金属としては、例えばガリウム、インジウム、錫、亜鉛、アルミニウム,銀、金または銅等を挙げることができる。
【0013】
前記炭素との共晶に用いられる金属としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、レニウム、オスミウム等を挙げることができる。
【0014】
前記金属炭化物としては、例えばホウ素、モリブデン、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タングステン、または希土類元素の炭化物を挙げることができる。
黒鉛繊維の織布は、例えば表面に高純度の黒鉛膜がコーティングされることを許容する。このような黒鉛膜がコーティングされた黒鉛繊維の織布としては、例えば東洋炭素社製商品名;C/CシートTCC−019を用いることができる。なお、黒鉛繊維の織布(例えばこの織布を複数枚積層した積層物)は、るつぼ本体3の空洞4の開口側内面にも配置することを許容する。
【0015】
前述した温度定点セルは、例えば次のような方法により製造される。
まず、黒体空洞を有する黒鉛製のるつぼ本体内に不純物量が10ppm以下の黒鉛繊維の織布を複数枚積層した積層物を挿入し、その内側面に配置する。このとき、積層物はるつぼ本体の開口部から数十mm程度突出するように挿入することが好ましい。また、後述する定点物質の充填に先立って、積層物が内側面に配置された空のるつぼ本体を例えば真空雰囲気下、1500〜2000℃で加熱処理することが好ましい。
【0016】
次いで、前記積層物が内側面に配置されたるつぼ本体内に、高純度の金属粉末(または金属ペレット)、高純度の金属と高純度の炭素の混合粉末を充填する。ひきつづき、このるつぼ本体の開口部を開放した状態で縦型電気炉内に設置し、前記炉内をアルゴンガスのような不活性ガスで置換して不活性ガス雰囲気にするか、または炉内を真空引きして高真空状態にした後、前記金属粉末(または混合粉末)の融点より高い温度まで加熱して前記金属粉末等を融解する。さらに、るつぼ本体内に前記金属粉末(または混合粉末)を充填し、加熱、融解する操作を2回以上繰り返し、るつぼ本体内を定点物質で満たす。つづいて、るつぼ本体の開口部に露出する定点物質上に不純物量が10ppm以下の黒鉛繊維の織布を複数枚積層した積層物を配置し、黒鉛製の蓋体をるつぼ本体の開口端に固定して定点物質を封止することにより温度定点セルを製造する。
なお、本発明に係る温度定点セルを構成するるつぼは、前述した図1に示す構造に限定されない。例えば、円筒状の黒鉛製るつぼ本体と、このるつぼ本体の開口に取り付けられ、空洞が一体化された蓋体とからるつぼを構成してもよい。
【0017】
次に、前述した温度定点セルを備えた温度定点装置を図2を参照して説明する。
この温度定点装置は、縦型可変電気炉21を有する。この可変電気炉21は、円筒状の断熱材22と、この断熱材22の内部に配置された円筒状に捲回したヒータエレメント23を備えている。このヒータエレメント23は、図示しない制御器を有するヒータ電源に接続されている。
上端にフランジ24を有するアルミナ製の有底筒状炉心管25は、前記円筒状の断熱材22の上端側からその外周面が前記ヒータエレメント23に囲まれるように挿入、支持されている。前述した図1に示す温度定点セル1は、前記炉心管25内にその空洞4が上方に向くように装填されている。黒鉛製フェルト(またはブロック)26は、前記炉心管25内に前記温度定点セル1の上面に位置するように装填されている。
【0018】
アルミナ製保護管27は、前記炉心管25のフランジ24中心および黒鉛製フェルト26を貫通して前記温度定点セル1の空洞4内に挿入されている。アルゴンのような不活性ガスを導入するためのガス導入管28は、前記炉心管25のフランジ24を貫通してその炉心管25内に挿入されている。排気管29は、一端が前記炉心管25のフランジ24に連結され、他端が図示しない真空ポンプのような排気部材に連結されている。
モニタ用熱電対30は、前記断熱材22の下端側からその先端が前記炉心管25の底部に近接するように挿入されている。このモニタ用熱電対30は、前記ヒータ電源の制御器に接続され、温度測定結果が前記制御器に入力される。温度測定結果が制御器に入力されると、その制御器から前記ヒータ電源に制御信号が出力されて、前記ヒータエレメント23の発熱温度を制御する。
このような図2に示す構成の温度定点装置による定点校正方法を説明する。
まず、温度定点セル1の空洞4に挿置された保護管27内に被校正熱電対31を挿入する。図示しない真空ポンプを作動して炉心管25内の空気を排気管29を通して排気すると共に、例えばアルゴンガスのような不活性ガスをガス導入管29を通して前記炉心管25内に導入することにより炉心管25内を不活性ガス雰囲気にする。このように炉心管25内を不活性ガス雰囲気にすることにより、その炉心管25内の装填された温度定点セル1の黒鉛るつぼの酸化焼失を防ぐと共に、同セルに封入された定点物質の酸化を防止する。
前記炉心管25内が不活性ガスで十分に置換された後、図示しないヒータ電源からヒータエレメント23に通電して所望の速度で前記断熱材1の炉心管25内を昇温する。炉心管25の温度がその内部に装填された図1に示す温度定点セル1の定点物質(例えば金属からなる定点物質)6の融点近傍に達すると、その融点近傍で温度を上下動させる。このとき、前記金属が融点を超えると、融解し、その温度より下がると凝固する。
【0019】
このような温度定点セル1の定点物質の溶融・凝固において、温度定点セル1の空洞4に保護管27を介して挿入された被校正熱電対31で温度定点セル1の温度を測定する。この被校正熱電対31の出力と温度定点セル1の融点を対応させることにより校正を行う。
したがって、熱電対の定点校正において、定点物質の融点(例えば常温から1500℃)の温度域で定点の校正を実現できる。
また、前記温度定点セル1は図1に示すように黒鉛るつぼ2と定点物質6の間に緩衝材として機能する黒鉛繊維の織布(例えば織布を複数枚積層した積層物)8、9が介在されているため、定点校正後の冷却過程でのるつぼ2と定点物質6との間の熱膨張差に起因するるつぼ2へのストレス発生を前記積層物8、9で吸収できる。特に、複数枚の黒鉛繊維の織布を積層した積層物8、9を用いることによって、熱膨張差に起因するるつぼ2へのストレス発生をより効果的に吸収することが可能になる。このため、るつぼ2の亀裂発生を防止できる。しかも、前記黒鉛繊維の織布はリン等の不純物量が10ppm以下であるため、定点校正に際しての定点物質の融解時に前記織布からの不純物拡散による定点物質の汚染を防止できる。したがって、定点校正の再現性が良好で長寿命の温度定点セルを得ることができる。
【0020】
さらに、黒鉛るつぼ2と定点物質6の間に介在した黒鉛繊維の織布(例えば織布を複数枚積層した積層物)8、9は厚さ方向に優れた断熱性を示し、面方向に優れた熱伝導性を示すため、外部から定点物質6への熱の流入を遅らせ、るつぼ内部の定点物質6の温度の均一化を進行させることが可能になる。このため、縦型可変電気炉21での温度分布の影響を受けることなく、定点物質6を均一に加熱することが可能になる。
【0021】
すなわち、温度定点セルを内部に装填される縦型可変電気炉のような温度定点炉は、定点物質を均一に加熱する目的で、均一な温度分布を示すことが求められている。このため、ヒートポンプを備えた炉、3ゾーンまたは5ゾーンで温度を制御する炉が多く用いられている。しかしながら、これらの炉は高価であり、かつ大型化する。
【0022】
このようなことから、黒鉛るつぼ2と定点物質6の間に厚さ方向に優れた断熱性を示し、面方向に優れた熱伝導性を示す黒鉛繊維の織布(例えば織布を複数枚積層した積層物)8、9を介在させることによって、縦型可変電気炉21での温度分布の影響を受けることなく、定点物質6を均一に加熱することが可能になるため、安価な炉を用いても再現性が良く融解・凝固温度を示す温度定点セル1を得ることが可能になる。
【0023】
なお、図2に示す温度定点装置の定点校正において被校正温度計としては熱電対を用いたが、この他に抵抗温度計、ファイバー温度計等の接触温度計を用いることができる。
次に、前述した温度定点セルを備えた別の温度定点装置を図3を参照して説明する。なお、図3では温度定点セルを構成する黒鉛繊維の織布の積層物および蓋体を省略している。
【0024】
この温度定点装置は、横型可変電気炉41を有する。この可変電気炉41は、横置きにされた矩形状断熱材42を備えている。この矩形状断熱材42は、内部に矩形空間43を有し、かつ左右端に例えばアルミナからなる炉心管44が挿通される円形穴45a,45bを有する。3つのゾーン(右側から前段ゾーン、中央ゾーンおよび後段ゾーン)に分割された棒状のSiCヒータエレメント46,47,48は、前記矩形空間43内に前記炉心管44に対して上下に位置すると共に、その炉心管44の長手方向に対して直交するように並べて配置されている。3本の制御用熱電対49は、前記矩形状断熱材42を貫通して前記矩形空間43内に前記各ヒータエレメント46,47,48にそれぞれ対応して挿入されている。これらの制御用熱電対49は、前記ヒータエレメント46,47,48のヒータ電源の制御器に接続され、温度測定結果が前記制御器に入力される。温度測定結果が制御器に入力されると、その制御器から前記ヒータ電源に制御信号が出力されて、前記各ヒータエレメント46,47,48を設定した発熱温度を制御する。
黒鉛製円筒体50は、前記炉心管44内の中央付近に挿入されている。
【0025】
前述した図1に示す温度定点セル1は、前記黒鉛製円筒体50内にそのセル1の空洞4が右端側に位置するように挿入されている。円錐穴51を有する黒鉛製の第1ブロック52は、前記黒鉛製円筒体50内に前記温度定点セル1の右端側に隣接するように、かつその円錐穴51が前記定点温度セル1の空洞4と合致するように配置されている。左端面に開口した円形凹部53を有する黒鉛製の第2ブロック54は、前記黒鉛製円筒体50内に前記温度定点セル1の左端側に隣接するように配置されている。
【0026】
複数の円環状の断熱体55は、前記黒鉛製円筒体50を中心にしてその左右の炉心管44内周面に固定されている。
【0027】
窓穴56が開口された第1フランジ57は、前記矩形状断熱材42の右端面から突出した前記炉心管44の開口端に嵌合されている。
【0028】
第2フランジ58は、前記矩形状断熱材42の左端面から突出した前記炉心管44の開口端に嵌合されている。アルミナ製保護管59は、第2フランジ58中心を貫通して前記炉心管44の第2ブロック54の円形凹部53内に挿入されている。参照用熱電対60は、外部から前記アルミナ製保護管59内に挿入されている。アルゴンのような不活性ガスを導入するためのガス導入管61は、前記炉心管44の第2フランジ58に挿着されている。
このような図3に示す構成の温度定点装置による定点校正方法を説明する。
まず、横型可変電気炉41の外部に被校正放射温度計62を温度定点セル1の黒体空洞4が向いた右端側の第1フランジ57の窓穴56に対向するように配置する。例えばアルゴンガスのような不活性ガスを第2フランジ58のガス導入管61を通して炉心管44内に導入し、前記第1フランジ57の窓穴56から流出させて炉心管44内を不活性ガス雰囲気にする。このように炉心管44内を不活性ガス雰囲気にすることにより、その炉心管44内の装填された温度定点セル1の黒鉛るつぼの酸化焼失を防ぐと共に、同セル1に封入された定点物質6の酸化を防止する。
前記炉心管44内が不活性ガスで十分に置換された後、図示しないヒータ電源から3つのゾーン(右側から前段ゾーン、中央ゾーンおよび後段ゾーン)に分割された棒状のヒータエレメント46,47,48に通電して発熱させて炉心管44内の温度を所望の速度で昇温させる。このようなヒータエレメント46,47,48の昇温によって、装填された図1に示す温度定点セル1の定点物質(例えば金属)6の融点近傍に達すると、その融点近傍で温度を上下動させる。このとき、前記金属が融点を超えると、融解し、その温度より下がると凝固する。
【0029】
このような温度定点セル1の定点物質6の溶融・凝固において、横型可変電気炉41の外部に配置した被校正放射温度計62により第1フランジ57の窓穴56および第1ブロック52の円錐穴51を通して温度定点セル1の空洞(黒体空洞)4の放射光を捉え、温度定点セル1の温度を測定する。この被校正放射温度計62の出力と温度定点セル1の定点物質(例えば金属)の融点を対応させることにより校正を行う。
したがって、前記放射温度計の定点校正において、定点物質の融点(例えば常温から1500℃)の温度域で定点の校正を実現できる。
また、前記温度定点セル1は図1に示すように黒鉛るつぼ2と定点物質6の間に緩衝材として機能する黒鉛繊維の織布(例えば織布を複数枚積層した積層物)8、9が介在されているため、定点校正後の冷却過程でのるつぼ2と定点物質6との間の熱膨張差に起因するるつぼ2へのストレス発生を前記積層物8、9で吸収できる。特に、複数枚の黒鉛繊維の織布を積層した積層物8、9を用いることによって、熱膨張差に起因するるつぼ2へのストレス発生をより効果的に吸収することが可能になる。このため、るつぼ2の亀裂発生を防止できる。しかも、前記黒鉛繊維の織布はリン等の不純物量が10ppm以下であるため、定点校正に際しての定点物質の融解時に前記織布からの不純物拡散による定点物質の汚染を防止できる。したがって、定点校正の再現性が良好で長寿命の温度定点セルを得ることができる。
【0030】
さらに、黒鉛るつぼ2と定点物質6の間に介在した黒鉛繊維の織布(例えば織布を複数枚積層した積層物)8、9は厚さ方向に優れた断熱性を示し、面方向に優れた熱伝導性を示すため、外部から定点物質6への熱の流入を遅らせ、るつぼ内部の定点物質6の温度の均一化を進行させることが可能になる。このため、横型可変電気炉41での温度分布の影響を受けることなく、定点物質6を均一に加熱することが可能になり、再現性が良く融解・凝固温度を示す温度定点セル1を得ることが可能になる。
【0031】
なお、前記実施形態では温度定点セルを温度校正方法に適用して説明したが、放射計校正方法にも利用できる。すなわち、この放射計校正方法は温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルからの放射光による照度変化を例えばフィルタ放射計のような分光放射計にて測定し、測定された照度変化状態から前記放射計を校正する方法である。
【0032】
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して説明する。
(実施例1)
まず、図1に示す純化した等方性黒鉛製のるつぼ本体2を用意した。この本体2は、外形24mm、長さ45mm、厚さ4mmの片封じ円筒状をなし、その片封じ部に直径3mm、深さ34mmの円筒状の空洞4を形成した形状を有する。
次いで、厚さ0.5mmで表面が高純度黒鉛膜でコーティングされた黒鉛繊維の織布(東洋炭素社製商品名;C/CシートTCC−019)を切り出し、4枚重ねた積層物を前記るつぼ本体に挿入し、その内側面に配置した。このとき、積層物をるつぼ本体の開口部から20mmの長さで突出させた。つづいて、積層物が配置された空のるつぼ本体を真空高温炉に設置し、真空雰囲気下、2000℃で1時間熱処理した。
【0033】
次いで、前記真空高温炉から前記るつぼ本体を取り出し、このるつぼ本体内に純度99.999%の高純度銅のペレットを充填し、前記真空高温炉に戻し、真空雰囲気下、銅の融点(1085℃)まで加熱して銅のペレットを融解した。さらに高純度銅のペレットをるつぼ本体内に充填し、加熱、融解する操作を2回繰り返すことによって銅の定点物質をるつぼ本体にC/CシートTCC−019の積層物を介して満たした。その後、るつぼ本体から突出した積層物を切り落とし、C/CシートTCC−019を4枚重ねた積層物をるつぼ本体の開口部に配置し、黒鉛製の蓋体をるつぼ本体の開口端に固定して定点物質を封止することにより図1に示す構造の温度定点セルを製造した。このときの銅量は、12.5gであった。
【0034】
(比較例1)
るつぼ本体の内側面および蓋体内面に黒鉛繊維の織布の積層物を配置しない以外、実施例1と同様な方法により温度定点セル(銅量31.8g)を製造した。
【0035】
得られた実施例1および比較例1の温度定点セルを前述した図3の横型可変電気炉41を構成する黒鉛製の第1、第2のブロック51,53にて挟んだ状態で黒鉛製円筒体50内に挿入し、この黒鉛製円筒体50を炉心管44内に中心にセットした。温度測定は、測定波長0.65μmの温度放射計62を視野サイズ約1.5mmで直径3mmの黒体空洞からの放射光を捕らえるように右端側の第1フランジ57の窓穴56に対向するように配置した。
【0036】
3つのゾーン(右側から前段ゾーン、中央ゾーンおよび後段ゾーン)に分割された棒状のヒータエレメント46,47,48に通電して炉心管44内の温度定点セルに故意に温度勾配(第2ブロック54に隣接する側が第1ブロック52に隣接する側より高くなるように温度勾配)を持たせて融解プラトーを測定した。その結果を図4に示す。
【0037】
図4から明らかなように比較例1の温度定点セルは、平坦なプラトーが短く、途中で折れ曲がっていることがわかる。これは、るつぼ内の定点物質(銅)が均一にるつぼ周囲から空洞に向かって融解せず、るつぼの片端(空洞の底部側)から融解が進行したため、空洞底面で融解が終了して温度が上昇したことに起因する。
【0038】
これに対し、実施例1の温度定点セルは平坦なプラトーが長い時間まで維持されることがわかる。これは、C/CシートTCC−019の積層物が厚さ方向に優れた断熱性を示し、面方向に優れた熱伝導性を示すため、外部から定点物質への熱の流入を遅らせ、るつぼ内部の定点物質の温度の均一化を進行させることによって、温度勾配の影響を受けることなく、均一な融解を実現できたことに起因する。
【0039】
また、実施例1の温度定点セルは銅の封入量が比較例1のそれに対して40%と少ないにも拘わらず、プラトーはむしろ長くなった。このことは、銅以外の金、銀のような高価な金属を定点物質として用いる温度定点セルにおいて金属量を半減できるため、コストの低減の上で大きな有益性をもたらすことができる。
【0040】
さらに、実施例1の温度定点セルを4個製造し、そのうちの1個の温度定点セルについて90回の放射温度計の定点校正を実施し、残りの2つの温度定点セルについて放射温度計の定点校正を1回実施して、プラトー形状および定点温度値と比較した。また、放射温度計の定点校正が未実施の残りの1個の温度定点セルと外見を比較した。その結果、90回の放射温度計の定点校正を実施した温度定点セルは、プラトー形状の劣化、定点温度値の変化およびるつぼの亀裂発生等の外見上の劣化が全く認められなかった。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様な寸法およびC/CシートTCC−019を4枚重ねた積層物を内側面に開口部から20mmの長さで突出させるように配置した黒鉛製るつぼ本体を用意した。つづいて、積層物が配置された空のるつぼ本体を真空高温炉に設置し、真空雰囲気下、2000℃で1時間熱処理した。ひきつづき、前記真空高温炉から前記るつぼ本体を取り出し、このるつぼ本体内に純度99.999%の高純度パラジウムと純度99.999%の高純度炭素粉末とを1重量%の亜共晶組成で混合して充填し、前記真空高温炉に戻し、真空雰囲気下、パラジウム−炭素共晶の融点(1492℃)まで加熱して融解した。この融解時にるつぼ本体およびC/CシートTCC−019の積層物から炭素が溶け出し、パラジウム−炭素の共晶組成比で飽和した。さらに、前記亜共晶組成の混合粉末をるつぼ本体内に装填し、加熱、融解する操作を7回繰り返すことによってパラジウム−炭素共晶からなる定点物質をるつぼ本体にC/CシートTCC−019の積層物を介して満たした。その後、るつぼ本体から突出した積層物を切り落とし、C/CシートTCC−019を4枚重ねた積層物をるつぼ本体の開口部に配置し、黒鉛製の蓋体をるつぼ本体の開口端に固定して定点物質を封止することにより図1に示す構造の温度定点セルを製造した。このときのパラジウム−炭素共晶に用いたパラジウム量は、37gであった。
【0042】
同様な方法でパラジウム−炭素共晶を定点物質として封入した3個の温度定点セルを製造した。
【0043】
(比較例2)
るつぼ本体の内側面および蓋体内面に黒鉛繊維の織布の積層物を配置しない以外、実施例2と同様な方法により温度定点セルを製造した。
【0044】
得られた実施例2の温度定点セル(4個)のうちの1個の温度定点セルを前述した図3に示す横型可変電気炉41を有する温度定点装置に組み込み、実施例1と同様な方法により測定波長0.65μmの温度放射計の定点校正を30回実施し、残りの2つの温度定点セルについて放射温度計の定点校正を1回実施して、プラトー形状および定点温度値と比較した。また、放射温度計の定点校正が未実施の残りの1個の温度定点セルと外見を比較した。その結果、30回の放射温度計の校正を実施した温度定点セルは、プラトー形状の劣化、定点温度値の変化およびるつぼの亀裂発生等の外見上の劣化が全く認められなかった。
【0045】
これに対し、比較例2の温度定点セルについて前述した図3の横型可変電気炉41に組み込み、実施例1と同様な方法により測定波長0.65μmの温度放射計の定点校正を複数回実施した。その結果、放射温度計の校正を10回繰り返すと、るつぼの外壁に裂け目がそのるつぼを周回するように生じた。
【0046】
(実施例3)
まず、図1に示す純化した等方性黒鉛製のるつぼ本体2を用意した。この本体2は、外形46mm、長さ300mm、厚さ4mmの片封じ円筒状をなし、その片封じ部に直径9mm、深さ270mmの円筒状の空洞4を形成した形状を有する。すなわち、実施例1に比べて外径および長さがともに大きなるつぼ本体を用意した。
【0047】
次いで、厚さ0.5mmのC/CシートTCC−019を4枚重ねた積層物を前記るつぼ本体に挿入し、その内側面に配置した。このとき、積層物をるつぼ本体の開口部から20mmの長さで突出させた。つづいて、積層物が配置された空のるつぼ本体を縦型シングルゾーン炉に設置し、アルゴンガス雰囲気下、1500℃で3時間熱処理した。
【0048】
次いで、前記炉からるつぼ本体を取り出し、このるつぼ本体内に1mm角の純度99.999%の高純度コバルトショットと純度99.999%の高純度炭素粉末とを1重量%の亜共晶組成で混合して充填し、前記炉に戻し、アルゴンガス雰囲気下、共晶の融点まで昇温して融解した。この融解時にるつぼ本体およびC/CシートTCC−019の積層物から炭素が溶け出し、コバルト−炭素の共晶組成比で飽和した。さらに混合物をるつぼ本体内に充填し、加熱、融解する操作を12回繰り返すことによってコバルト−炭素共晶からなる定点物質をるつぼ本体にC/CシートTCC−019の積層物を介して満たした。つづいて、るつぼ本体から突出した積層物を切り落とし、C/CシートTCC−019を4枚重ねた積層物をるつぼ本体の開口部に配置し、黒鉛製の蓋体をるつぼ本体の開口端に固定して定点物質を封止することにより図1に示す構造の温度定点セルを製造した。このときのコバルト−炭素共晶に用いたコバルト量は、200gであった。
【0049】
得られた実施例3の温度定点セルを前述した図2に示す縦型可変電気炉21を有する温度定点装置に組み込み、実施形態で説明したのと同様な方法により被校正熱電対31の定点校正を行った。すなわち、温度定点セル1の空洞4内に挿置されたアルミナ製保護管27内に被校正熱電対31である白金/パラジウム熱電対を挿入して融解・凝固のプラトーを観測した。その結果、ヒータエレメントがシングルゾーンであるにも拘わらずプラトー再現性は0.05℃以下であった。
【0050】
また、実施例3の温度定点セルについて白金/パラジウム熱電対の定点校正を20回の実施した後に外見を観察した。その結果、外壁の亀裂発生に起因する金属の漏れ出しが観察されなかった。
【0051】
(実施例4)
まず、図1に示す純化した等方性黒鉛製のるつぼ本体2を用意した。この本体2は、外形24mm、長さ100mm、厚さ4mmの片封じ円筒状をなし、その片封じ部に直径8mm、深さ90mmの円筒状の空洞4を形成した形状を有する。すなわち、実施例1に比べて大口径の黒体空洞を有するつぼ本体を用意した。
【0052】
次いで、厚さ0.5mmのC/CシートTCC−019を4枚重ねた積層物を前記るつぼ本体に挿入し、その内側面に配置した。つづいて、高純度黒鉛リングからなるヒータを備える通電加熱式の超高温炉を用い、実施例2に準じてチタン炭化物−炭素共晶からなる定点物質を封止した図1に示す構造の温度定点セルを製造した。このときのチタン炭化物−炭素共晶に用いたチタン炭化物量は、31gであった。
【0053】
得られた実施例4の温度定点セルを図5に示すように温度定点装置に組み込んでフィルタ放射計の定点校正を実施した。すなわち、温度定点セルの製造に用いた通電加熱式の超高温炉71を横置きにし、この超高温炉71内に温度定点セル1をその黒体空洞4が超高温炉71の窓穴72に対向するように配置した。測定波長0.8μmのフィルタ放射計73は、前記超高温炉71の外部に前記窓穴72と所望距離隔てて配置され、かつ超高温炉71側の面に近接した直径3mmの第1開口74を有する。また、水冷ホルダに取り付けられた直径3mmの第2開口75は、前記超高温炉71の窓穴72と前記第1開口74の間に位置すると共に、窓72と近接するように配置されている。
【0054】
このような温度定点装置において、定点温度セル1の黒体空洞4の開口と第2開口75の距離を250mmとし、第1開口74と第2開口75の距離を500mmとすることで、結像光学系を用いることなく、フィルタ放射計73により温度定点セル1の8mmの黒体空洞4内のみで融解・凝固の照度を測定した。
【0055】
その結果、照度の再現性は0.05%以下であった。また、温度定点セルの外壁の亀裂発生等が認められなかった。さらに、温度定点セルをさらに長くしても温度分布の影響を受けずに再現性が良好な照度測定を行うことができた。このため、超高温炉の寸法を大型化することなく、光放射標準用光源を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る温度定点セルを示す断面図。
【図2】実施形態の温度定点セルが組込まれた縦型可変電気炉を有する温度定点装置を示す断面図。
【図3】実施形態の温度定点セルが組込まれた横型可変電気炉を有する温度定点装置を示す断面図。
【図4】実施例1および比較例1の温度定点セルの融解プラトーを示す図。
【図5】実施例4に用いた超高温炉を有する温度定点装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0057】
1…温度定点セル、2…るつぼ、3…るつぼ本体、4…空洞、5…蓋体、6…定点物質、8,9…黒鉛繊維の織布の積層物、21…縦型可変電気炉、23,46,47,48…ヒータエレメント、25,44…炉心管、27,59…保護管、30…モニタ用熱電対、31…被校正熱電対、41…横型可変電気炉、60…参照用熱電対、62…被校正放射温度計、71…超高温炉、73…フィルタ放射計。




 

 


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