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バイオセンサー - 富士フイルム株式会社
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発明の名称 バイオセンサー
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−57458(P2007−57458A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−245442(P2005−245442)
出願日 平成17年8月26日(2005.8.26)
代理人 【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
発明者 久保 利昭 / 江副 利秀 / 都築 博彦 / 池田 森人
要約 課題
生理活性物質と相互作用する被験物質の回収量を向上させたバイオセンサーを提供すること。

解決手段
基板上に形成された流路であって、生理活性物質と被験物質との相互作用を検出するための検出面、及び上記相互作用を検出しない非検出面から構成される流路を有するバイオセンサーにおいて、上記の検出面及び非検出面の表面が、生理活性物質を固定化できるように修飾されていることを特徴とするバイオセンサー。
特許請求の範囲
【請求項1】
基板上に形成された流路であって、生理活性物質と被験物質との相互作用を検出するための検出面、及び上記相互作用を検出しない非検出面から構成される流路を有するバイオセンサーにおいて、上記の検出面及び非検出面の表面が、生理活性物質を固定化できるように修飾されていることを特徴とするバイオセンサー。
【請求項2】
流路の検出面及び非検出面の表面の修飾が、高分子化合物による修飾である、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
高分子化合物が疎水性高分子である、請求項2に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
高分子化合物が親水性高分子である、請求項2に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
生理活性物質と相互作用する物質を回収する機構をさらに有する、請求項1から4の何れかに記載のバイオセンサー。
【請求項6】
基板が金属表面又は金属膜である、請求項1から5の何れかに記載のバイオセンサー。
【請求項7】
金属表面あるいは金属膜が、金、銀、銅、白金、及びアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなるものである、請求項1から6の何れかに記載のバイオセンサー。
【請求項8】
非電気化学的検出に使用される、請求項1から7の何れかに記載のバイオセンサー。
【請求項9】
表面プラズモン共鳴分析に使用される、請求項1から8の何れかに記載のバイオセンサー。
【請求項10】
流路の検出面及び非検出面の表面を、生理活性物質を固定化できるように修飾する工程を含む、請求項1から9の何れかに記載のバイオセンサーの製造方法。
【請求項11】
流路の検出面及び非検出面の表面を、高分子化合物によって修飾する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
高分子化合物が疎水性高分子である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高分子化合物が親水性高分子である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から9の何れかに記載のバイオセンサーと生理活性物質とを接触させて、該バイオセンサーの流路の検出面及び非検出面の表面に該生理活性物質を共有結合により結合させる工程;及び生理活性物質が共有結合により流路の検出面及び非検出面の表面に結合しているバイオセンサーと被験物質とを接触させる工程;を含む、該生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する方法。
【請求項15】
生理活性物質をバイオセンサーに結合させる工程と、被験物質をバイオセンサーに接触させて生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する工程とを、異なる装置で行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生理活性物質と相互作用する物質を非電気化学的方法により検出または測定する、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
生理活性物質と相互作用する物質を表面プラズモン共鳴分析により検出または測定する、請求項14から16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1から9の何れかに記載のバイオセンサーを用いて生理活性物質と相互作用する物質を同定及び回収し、回収された物質の構造を質量分析器を用いて決定することを含む、生理活性物質と相互作用する物質の分析方法。


発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサー、及びそれを用いて生体分子間の相互作用を分析し、相互作用する物質を回収する方法に関する。特に、本発明は、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに用いるためのバイオセンサー、及びそれを用いて生体分子間の相互作用を分析し、相互作用する物質を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。SPR測定技術はチップの金属膜に接する有機機能膜近傍の屈折率変化を反射光波長のピークシフト又は一定波長における反射光量の変化を測定して求めることにより、表面近傍に起こる吸着及び脱着を検知する方法である。QCM測定技術は水晶発振子の金電極(デバイス)上の物質の吸脱着による発振子の振動数変化から、ngレベルで吸脱着質量を検出できる技術である。また、金の超微粒子(nmレベル)表面を機能化させて、その上に生理活性物質を固定して、生理活性物質間の特異認識反応を行わせることによって、金微粒子の沈降、配列から生体関連物質の検出ができる。
【0003】
上記した技術においては、いずれの場合も、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、当技術分野で最も使われている表面プラズモン共鳴(SPR)を例として、説明する。
【0004】
一般に使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)、蒸着された金属膜、及びその上に生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜からなり、その官能基を介し、金属表面に生理活性物質を固定化する。該生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
【0005】
生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜としては、金属と結合する官能基、鎖長の原子数が10以上のリンカー、及び生理活性物質と結合できる官能基を有する化合物を用いて、生理活性物質を固定化した測定チップが報告されている(特許文献1を参照)。また、金属膜と、該金属膜の上に形成されたプラズマ重合膜からなる測定チップが報告されている(特許文献2を参照)。
【0006】
測定チップ上の生理活性物質と相互作用する物質の同定及び構造情報を取得するために、SPRと他の分析手法を組み合わせるシステムが開発されている。その有力な分析法の一つに、質量分析法とSPRを組み合わせた表面プラズモン共鳴質量分析法が報告されている(特許文献3を参照)。これは測定チップ上で相互作用解析を行った後、測定チップ上にマトリックスを直接滴下し、結晶化した後レーザーを照射してチップ上相互作用した分子の質量を測定するものである。もしくは、測定チップの表面から生理活性物質と相互作用する物質を回収し、質量分析器を用いて分析する。しかし、これらの手法を被験物質の解析に用いるには問題点がある。測定チップ上に補足される被験物質の量が特定の質量分析器には十分でない場合がある。即ち、生理活性物質と相互作用する物質の検出、測定、同定を容易に行うことを可能とするため、被験物質の回収量が高い分析系の構築が求められていた。
【0007】
【特許文献1】特許第2815120号
【特許文献2】特開平9−264843号
【特許文献3】特表平11−512518号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、生理活性物質と相互作用する被験物質の回収量を向上させたバイオセンサーを提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、流路の検出面及び非検出面の表面に、生理活性物質を固定化するための修飾を行うことによって生理活性物質と相互作用する物質の回収量が向上したバイオセンサーを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、基板上に形成された流路であって、生理活性物質と被験物質との相互作用を検出するための検出面、及び上記相互作用を検出しない非検出面から構成される流路を有するバイオセンサーにおいて、上記の検出面及び非検出面の表面が、生理活性物質を固定化できるように修飾されていることを特徴とするバイオセンサーが提供される。
【0011】
好ましくは、流路の検出面及び非検出面の表面の修飾は、高分子化合物による修飾である。
好ましくは、高分子化合物は疎水性高分子又は親水性高分子である。
好ましくは、本発明のバイオセンサーは、生理活性物質と相互作用する物質を回収する機構をさらに有する。
【0012】
好ましくは、基板は金属表面又は金属膜である。
好ましくは、金属表面あるいは金属膜は、金、銀、銅、白金、及びアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなるものである。
好ましくは、本発明のバイオセンサーは、非電気化学的検出に使用され、さらに好ましくは表面プラズモン共鳴分析に使用される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、流路の検出面及び非検出面の表面を、生理活性物質を固定化できるように修飾する工程を含む、本発明のバイオセンサーの製造方法が提供される。
好ましくは、流路の検出面及び非検出面の表面を、高分子化合物によって修飾する。
好ましくは、高分子化合物が疎水性高分子又は親水性高分子である。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、本発明のバイオセンサーと生理活性物質とを接触させて、該バイオセンサーの流路の検出面及び非検出面の表面に該生理活性物質を共有結合により結合させる工程;及び生理活性物質が共有結合により流路の検出面及び非検出面の表面に結合しているバイオセンサーと被験物質とを接触させる工程;を含む、該生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する方法が提供される。
【0015】
好ましくは、生理活性物質をバイオセンサーに結合させる工程と、被験物質をバイオセンサーに接触させて生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する工程とを、異なる装置で行う。
【0016】
好ましくは、生理活性物質と相互作用する物質を非電気化学的方法により検出または測定することができ、さらに好ましくは表面プラズモン共鳴分析により検出または測定することができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、本発明のバイオセンサーを用いて生理活性物質と相互作用する物質を同定及び回収し、回収された物質の構造を質量分析器を用いて決定することを含む、生理活性物質と相互作用する物質の分析方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、生理活性物質と相互作用する被験物質の回収量が向上したバイオセンサーを提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のバイオセンサーは、基板、及びその上に形成された流路から構成されている。本発明で言うバイオセンサーとは最も広義に解釈され、生体分子間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出するセンサーを意味する。通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
【0020】
本発明で言う流路は、液を流すことができるように基板上に形成されたものであればその構造は特に限定されない。本発明における流路は、生理活性物質と被験物質との相互作用を検出するための検出面と、上記相互作用を検出しない非検出面とから構成されている。また、流路の断面の形状は特に限定されず、正方形、長方形、台形、円、半円、楕円など任意の形状とすることができる。
【0021】
本発明で言う流路は、薬品やタンパク質を注入するためのシリンジ、ピペットを含まない。但し、コンタミネーション防止の観点からはディスポーザブルなピペットを使用して薬品やタンパク質を注入することが好ましい。本発明の流路の一例を図1に示す。
【0022】
図1の左図においては、液を注入する領域と、検出面を含む領域と、液を排出する領域の3個の領域から形成されており、液を注入する領域と液を排出する領域は、検出面を含む領域に対してほぼ直角方向に形成されている。図1の左図の場合、液を注入する領域と液を排出する領域については、当該流路の内面は全て非検出面となり、検出面を含む領域については、流路の底面が検出面となり、流路の側面と上面は非検出面となる。
【0023】
また、図1の右図においては、流路は直線上に形成されている。この場合、流路の底面が検出面となり、流路の側面と上面は非検出面となる。
【0024】
本発明で用いる流路部材は特に限定されないが、ポリジメチルシクロへキサン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0025】
本明細書で言う検出面とは、流路の内表面のうち、生理活性物質と被験物質との相互作用が検出される表面と意味する。また、本明細書で言う非検出面とは、流路の内表面のうち、上記相互作用を検出しない表面を意味する。
【0026】
本発明のバイオセンサーには好ましくは、生理活性物質と相互作用する物質を回収する機構をさらに設けることができる。当該機構としては、ピペットなどを使用することができる。
【0027】
本発明では、上記した検出面及び非検出面の表面は、生理活性物質を固定化できるように修飾されている。ここで言う修飾は、高分子化合物による修飾であることが好ましい。高分子化合物としては、疎水性高分子又は親水性高分子を使用することができる。以下、本発明で用いることができる高分子化合物について説明する。
【0028】
本発明で用いる疎水性高分子化合物は、吸水性を有しない高分子化合物であり、水100gへの溶解度(25℃)が10g以下、より好ましくは1g以下、最も好ましくは0.1g以下である。
【0029】
疎水性高分子化合物を形成する疎水性単量体としては、ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、オレフィン類、スチレン類、クロトン酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アリル化合物類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類等から任意に選ぶことができる。疎水性高分子化合物としては、1種類のモノマーから成るホモポリマーでも、2種類以上のモノマーから成るコポリマーでもよい。
【0030】
本発明で好ましく用いられる疎水性高分子化合物としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリビニルクロライド、ポリメチルメタクリレート、ナイロンなどが挙げられる。もっとも好ましくは、スチレンを含む疎水性高分子化合物である。
【0031】
疎水性高分子化合物の検出面への修飾は常法によって行うことができ、例えば、スピン塗布、エアナイフ塗布、バー塗布、ブレード塗布、スライド塗布、カーテン塗布、さらにはスプレー法、蒸着法、キャスト法、浸漬法等によって行うことができる。
【0032】
疎水性高分子化合物の修飾厚さは特に限定されないが、好ましくは0.1nm以上500nm以下であり、特に好ましくは1nm以上300nm以下である。
【0033】
本発明の疎水性高分子化合物で修飾した流路から成るバイオセンサーにおいては、流路の検出面及び非検出面の最表面に生理活性物質を固定化することができる官能基を有する。ここで言う「流路の検出面及び非検出面の最表面」とは、「流路の検出面及び非検出面から最も遠い側」という意味であり、さらに具体的には、「流路の検出面及び非検出面上に修飾した高分子化合物中の流路の検出面及び非検出面から最も遠い側」という意味である。
【0034】
生理活性物質を結合するための官能基の具体例としては−COOH、−NR12(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−OH、−SH、−CHO、−NR3NR12(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基などが挙げられる。ここで、低級アルキル基における炭素数は特に限定されないが、一般的にはC1〜C10程度であり、好ましくはC1〜C6である。
【0035】
本発明で用いることができる親水性高分子としては、生体適合性多孔質マトリックス、例えばヒドロゲルなどが挙げられる。生体適合性多孔質マトリックスの厚さは、数nm〜数百nmであり、好ましくは10〜500nmである。本発明で用いることができるヒドロゲルとしては、Merrill等(1986年)、Hydrogels in Medicine and Pharmacy,III巻、Peppas NA編集、1章、CRCにより定義されているヒドロゲルなどを挙げることができる。本発明で用いることができるヒドロゲルとしては、例えば多糖類、例えばアガロース、デキストラン、カラゲナン、アルギン酸、澱粉、セルロース、又はこれらの誘導体、例えばカルボキシメチル誘導体、又は水膨潤性有機ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールなどを使用することができる。特にポリエチレングリコール誘導体、デキストラン誘導体は、好ましく用いられる。最も好ましくは、カルボキシメチルデギストランである。
【0036】
本発明では、検出面上に自己組織化膜を形成してから、その上に、親水性高分子化合物を修飾することができる。本発明で言う自己組織化膜とは、外からの細かい制御を加えていない状態で、膜材料そのものがもつ機構によって形成される一定の秩序をもつ組織をもった単分子膜やLB膜などの超薄膜のことを言う。この自己組織化により、非平衡な状況で長距離にわたって秩序がある構造やパターンが形成される。
【0037】
例えば、自己組織化膜は、含硫黄化合物により形成することができる。含硫黄化合物によって金表面に自己組織化膜を形成することは、例えば、Nuzzo RG等(1983年)、J Am Chem Soc、105巻、4481〜4483頁、Porter MD等(1987年)、J Am Chem Soc、109巻、3559〜3568頁、Troughton EB等(1988年)、Langmuir、4巻、365〜385頁などに記載されている。
【0038】
本発明の親水性高分子化合物で修飾した流路から成るバイオセンサーにおいては、流路の検出面及び非検出面の最表面に生理活性物質を固定化することができる官能基を有する。
【0039】
生理活性物質を結合するための官能基の具体例としては−COOH、−NR12(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−OH、−SH、−CHO、−NR3NR12(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基などが挙げられる。ここで、低級アルキル基における炭素数は特に限定されないが、一般的にはC1〜C10程度であり、好ましくはC1〜C6である。特に−COOH、−NH2、−CHO、−NHNH2、エポキシ基、またはビニル基であることが好ましい。
【0040】
本発明において、流路の非検出面を修飾する方法は、例えば、流路の非検出表面に金蒸着を施し、特開2005−189222号公報又は特開2004−271514号公報などに記載の浸漬吸着法を用いて疎水性高分子膜を形成させたり、検出面と同様に自己組織化膜を形成させて親水性高分子を結合するなどの方法が用いられる。また、非検出面のみシランカップリング剤を使用して表面に水酸基を発生させ、その後の処理のみ検出面と同様の処理をすることも可能である。
【0041】
浸漬吸着法は、基板を疎水性高分子化合物溶液に接触させた後に、前記疎水性高分子化合物溶液を含まない液に接触させる方法でコーティングを行う。好ましくは、疎水性高分子化合物溶液の溶剤と疎水性高分子化合物を含まない液の溶剤とは、同一の溶剤である。
【0042】
浸漬法では、疎水性高分子化合物のコーティング用溶剤を適切に選択することで、基板の凹凸、曲率、形状などに依らず基板表面に均一なコーティング厚みの疎水性高分子化合物層が得られる。
【0043】
浸漬法のコーティング用溶剤は特に限定されず、疎水性高分子化合物の一部を溶解するものであれば任意の溶剤を用いることができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等のホルムアミド系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤、フェノキシエタノール等のアルコール系溶剤、2−ブタノン等のケトン系溶剤、トルエン等のベンゼン系溶剤などを使用することができるが、これらに限定されない。
【0044】
基板に接触させる疎水性高分子化合物の溶液は、疎水性高分子化合物が完全に溶解しても、疎水性高分子化合物の不溶解成分を含む懸濁液でもよい。液温は、疎水性高分子化合物の一部が溶解する液体状態であれば特に制限はないが、−20℃以上100℃以下が好ましい。基板を疎水性高分子化合物の溶液に接触させている間に液温を変動させても良い。溶液の疎水性高分子化合物濃度に特に制限はないが、好ましくは0.01%以上30%以下、さらに好ましくは0.1%以上10%以下である。
【0045】
固体基板を疎水性高分子化合物溶液に接触させる時間は特に制限されないが、好ましくは1秒以上24時間以下、さらに好ましくは3秒以上1時間以下である。
【0046】
疎水性高分子化合物を含まない液としては、溶剤自身のSP値(単位:(J/cm3)1/2)と疎水性高分子化合物のSP値との差が、1以上20以下であることが好ましく、3以上15以下であることがさらに好ましい。SP値は、分子間の凝集エネルギー密度の平方根で表され、溶解度パラメーターとも呼ばれる。本発明では、SP値δは下記式で算出した。各官能基の凝集エネルギーEcohとモル容積Vは、Fedorsが規定した値を使用した(R.F.Fedors、Polym.Eng.Sci.、14(2)、P147、P472(1974))。
δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2
例として、疎水性高分子化合物および溶剤のSP値を挙げると、ポリメチルメタクリレート-ポリスチレンコポリマー(1:1):21.0に対する溶剤2−フェノキシエタノール:25.3、ポリメチルメタクリレート:20.3に対する溶剤アセトニトリル:22.9、ポリスチレン:21.6に対する溶剤トルエン:18.7である。
【0047】
基板を、疎水性高分子化合物を含まない液に接触させる時間は特に制限されないが、好ましくは1秒以上24時間以下、さらに好ましくは3秒以上1時間以下である。液温は、溶剤が液体状態であれば特に制限はないが、−20℃以上100℃以下が好ましい。基板を溶剤に接触させている間に液温を変動させてもよい。揮発させにくい溶剤を使用する場合、溶剤を除去する目的で、該溶媒に接触させた後、互いに溶解する揮発性溶剤で置換してもよい。
【0048】
本発明の流路の非検出面は、検出面と同一な修飾がなされていても、異なった修飾がなされていてもかまわない。但し、同一な修飾がされていることが好ましい。
【0049】
本発明のバイオセンサーは、金属表面又は金属膜を疎水性高分子化合物又は親水性高分子化合物で修飾したものであることが好ましい。金属表面あるいは金属膜を構成する金属としては、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。それらの金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
【0050】
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、0.1nm以上500nm以下であるのが好ましく、特に1nm以上200nm以下であるのが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上、10nm以下であるのが好ましい。
【0051】
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。
【0052】
金属膜は好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。本発明で使用することができる基板としては例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、一般的にはBK7等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
【0053】
本発明の流路の検出面及び非検出面に固定される生理活性物質としては、測定対象物と相互作用するものであれば特に限定されず、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいはリガンド結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。
【0054】
免疫蛋白質としては、測定対象物を抗原とする抗体やハプテンなどを例示することができる。抗体としては、種々の免疫グロブリン、即ちIgG、IgM、IgA、IgE、IgDを使用することができる。具体的には、測定対象物がヒト血清アルブミンであれば、抗体として抗ヒト血清アルブミン抗体を使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を抗原とする場合には、例えば抗アトラジン抗体、抗カナマイシン抗体、抗メタンフェタミン抗体、あるいは病原性大腸菌の中でO抗原26、86、55、111 、157 などに対する抗体等を使用することができる。
【0055】
酵素としては、測定対象物又は測定対象物から代謝される物質に対して活性を示すものであれば、特に限定されることなく、種々の酵素、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。具体的には、測定対象物がグルコースであれば、グルコースオキシダーゼを、測定対象物がコレステロールであれば、コレステロールオキシダーゼを使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を測定対象物とする場合には、それらから代謝される物質と特異的反応を示す、例えばアセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。
【0056】
微生物としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物を使用することができる。
核酸としては、測定の対象とする核酸と相補的にハイブリダイズするものを使用することができる。核酸は、DNA(cDNAを含む)、RNAのいずれも使用できる。DNAの種類は特に限定されず、天然由来のDNA、遺伝子組換え技術により調製した組換えDNA、又は化学合成DNAの何れでもよい。
低分子有機化合物としては通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられる。
【0057】
非免疫蛋白質としては、特に限定されることなく、例えばアビジン(ストレプトアビジン)、ビオチン又はレセプターなどを使用できる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインAあるいはプロテインG、リウマチ因子(RF)等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。
脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
【0058】
生理活性物質が抗体や酵素などの蛋白質又は核酸である場合、その固定化は、生理活性物質のアミノ基、チオール基等を利用し、金属表面の官能基に共有結合させることで行うことができる。
【0059】
上記のようにして生理活性物質を固定化したバイオセンサーは、当該生理活性物質と相互作用する物質の検出及び/又は測定のために使用することができる。
【0060】
更に、流路の検出面及び非検出面の表面に結合した生理活性物質と相互作用する物質を回収することができる。
【0061】
即ち、本発明によれば、生理活性物質が固定化された本発明のバイオセンサーを用いて、これに被験物質を接触させることにより、該バイオセンサーに固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出及び/又は測定及び/又は回収する方法が提供される。
【0062】
被験物質としては例えば、上記した生理活性物質と相互作用する物質を含む試料などを使用することができる。
【0063】
本発明では、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用を非電気化学的方法により検出及び/又は測定することが好ましい。非電気化学的方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術などが挙げられる。
【0064】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオセンサーは、例えば、透明基板上に配置される金属膜を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとして用いることができる。
【0065】
表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるバイオセンサーであって、該センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。
【0066】
本発明のバイオセンサーを表面プラズモン共鳴分析に使用する場合、特開2004-271514の段落番号0041から0054に記載されたような各種の表面プラズモン測定装置の一部として適用することができる。
【0067】
さらにまた、本発明のバイオセンサーを用いて生理活性物質と相互作用する物質を同定及び回収した後に、回収された物質の構造を質量分析器を用いて決定することができる。質量分析器としては、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法))などの質量分析器を使用することができる。また、回収された物質は、プロテアーゼで消化した後にペプチドの質量分析スペクトルを取得し、既に測定した既知のタンパクの質量分析スペクトルやゲノム情報から予測した質量分析スペクトルと認証して、生理活性物質と相互作用した蛋白質を同定することも可能である。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
実施例1:親水性表面で被覆した本発明のバイオセンサーの作製
以下の方法で、本発明のセンサチップおよび流路を作成した。
ポリシクロオレフィン製プリズム及びポリプロピレン製流路(図1の左図)に金蒸着を行った上で親水性化合物で被覆した。
【0069】
(1)金蒸着
スパッタ装置の基板ホルダにポリシクロオレフィン製プリズム及びポリプロピレン製流路を取付け、真空(ベースプレッシャー1×10-3Pa以下)に引いてからArガスを導入し(1Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、基板ホルダにRFパワー(0.5kW)を約9分間印加してFETをプラズマ処理(基板エッチング、逆スパッタとも呼ばれる)する。次に、Arガスを止めて真空に引き、Arガスを再び導入し(0.5Pa)、基板ホルダを回転(10〜40rpm)させながら、8inchのCrターゲットにDCパワー(0.2kW)を約30秒間印加して2nmのCr薄膜を成膜する。次に、Arガスを止めて再び真空に引き、Arガスを再び導入し(0.5Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、8inchのAuターゲットにDCパワー(1kW)を約50秒間印加して50nm程度のAu薄膜を成膜する。Auの粒子サイズは、20nm程度である。
【0070】
(2)ヒドロゲル層作成
・調液
SAM液:
11-Hydroxy-1-undecanethiol(同仁化学社製)0.0102g、超純水2ml、及びエタノール8mlを十分に混合して作成した。
【0071】
エピクロロヒドリン液:
エピクロロヒドリン(和光純薬製)500μl、ジエチレングリコールジメチルエーテル4.5ml、超純水3ml、及び1mol/LのNaOH2mlを十分に混合して作成した。
【0072】
デキストラン液:
デキストラン500(アマシャム社製)3g、超純水9ml、及び1mol/LのNaOH1mlを十分に混合して作成した。
【0073】
ブロモ酢酸液:
ブロモ酢酸1.2g、超純水5.4ml、5mol/lのNaOH3.2mlを十分に混合して作成した。
【0074】
・操作
金蒸着したポリシクロオレフィン製プリズム表面及びポリプロピレン製流路表面にSAM液を接触させ、40℃30分反応させた後、室温にて16時間反応させた。洗浄後、エピクロロヒドリン液を接触させ室温で8時間反応させた。その後洗浄を行い、デキストラン液を接触させて室温で16時間反応させた。その後洗浄を行った。さらにブロモ酢酸液を室温で24時間接触させて、洗浄を行った後、再度、ブロモ酢酸液を24時間接触させ、洗浄を行った。
【0075】
実施例2:親水性表面で被覆した本発明のバイオセンサーの性能評価
蛋白質の結合測定及び回収測定
測定表面と本発明の流路の組み合わせにより作成されたバイオセンサーと測定表面と処理をしていない流路の組み合わせにより作成されたバイオセンサーを用いて、結合測定と回収実験を行った。
【0076】
・操作
(1)リガンド溶液の調製:
抗BSA(牛血清アルブミン)抗体(ロックランド社製)0.5mgを酢酸バッファー(pH5.5) 1mlに溶解した。
(2)活性化液の調整:
下記溶液を使用直前に体積比1:1で混合した。0.1M NHS溶液、0.4M EDC溶液
(3)ブロッキング液:1Mエタノールアミン液(pH8.5)
(4)アナライト液:
BSA(シグマ社製)1mgをHBS-EPバッファー1mlに溶解した。なお、HBS-EPバッファーの組成は、HEPES(N-2-Hydroxyethylpiperazine-N'-2-ethanesulfonicAcid)0.01mol/l(pH7.4)、NaCl0.15mol/l、EDTA 0.003mol/l、Surfactant P20 0.005重量%である。
【0077】
チップを装置にセットし、HBS-EPバッファーで流路を満たす。その状態で測定を開始し、測定開始後30秒後の信号値を0とする。測定を続けながら、活性化液100μlを流路に1秒間で注入し、15分放置する。続けて、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、そのあと、リガンド溶液100μlを流路に1秒間で注入し、15分放置する。続けて、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、そのあと、ブロッキング液100μlを流路に1秒間で注入し、15分放置する。続けて、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、続けて、10mM NaOH溶液100μlを流路に1秒間で注入することを2回連続で行い、さらに、HBS-EPに置換して30秒放置し、そのときの信号値をリガンド固定量とした。
【0078】
チップを装置にセットしたまま、アナライトの測定を行った。流路をHBS-EPバッファーで満たし、その状態で測定を開始し、測定開始後60秒後の信号値を0とする。測定を続けながら、アナライト液100μlを流路に1秒間で注入し、3分放置する。3分後の信号値を測定した。さらに、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、その後、50mMのNaOH水溶液で流路を満たし、180秒放置した。放置後、流路中のNaOH水溶液を回収した。回収液は、減圧濃縮して固形分を乾固させた。その後、HBS-EPバッファー10μlで希釈し、ND-1000(ナノドロップ社)にて280nmの吸収を測定して回収蛋白量とした。
【0079】
(2)結果
表1に蛋白質の結合測定及び回収測定の結果を示す。
【0080】
【表1】


【0081】
表1の結果から、本発明のバイオセンサーにより、検出されたサンプルの回収量の飛躍的な増加が可能となった。即ち、回収能の優れた、バイオセンサーを提供することができた。
【0082】
実施例3:疎水性表面で被覆した本発明のバイオセンサーの作製
以下の方法で、本発明のセンサチップおよび流路を作製した。
ポリシクロオレフィン製プリズム及びポリプロピレン製流路に金蒸着を行った上で疎水性化合物で被覆した。
【0083】
(1)金蒸着
スパッタ装置の基板ホルダにポリシクロオレフィン製プリズム及びポリプロピレン製流路を取付け、真空(ベースプレッシャー1×10-3Pa以下)に引いてからArガスを導入し(1Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、基板ホルダにRFパワー(0.5kW)を約9分間印加してFETをプラズマ処理(基板エッチング、逆スパッタとも呼ばれる)する。次に、Arガスを止めて真空に引き、Arガスを再び導入し(0.5Pa)、基板ホルダを回転(10〜40rpm)させながら、8inchのCrターゲットにDCパワー(0.2kW)を約30秒間印加して2nmのCr薄膜を成膜する。次に、Arガスを止めて再び真空に引き、Arガスを再び導入し(0.5Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、8inchのAuターゲットにDCパワー(1kW)を約50秒間印加して50nm程度のAu薄膜を成膜する。Auの粒子サイズは、20nm程度である。
【0084】
(2)ポリマー層作成
特願2003-405704に記載の方法でポリメチルメタクリレート−ポリスチレンコポリマー(PMMA/PSt)(モル比50対50、平均分子量20000)を金蒸着面上に20nmの膜厚で製膜した。即ち、金ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、金蒸着表面上に1%PMMA/PStを滴下し、15分間静置した。続いて、50mlのN,N−ジメチルホルムアミドで1分間ずつ5回浸漬することにより、金蒸着表面の1%PMMA/PStをN,N−ジメチルホルムアミドに置換した。置換後、ブロック表面のN,N,−ジメチルホルムアミドを窒素ブローで除去し、真空下16時間乾燥した。エリプソメトリー法(In-Situ Ellipsometer MAUS-101、Five Lab製)により膜厚を測定したところ、PMMA/PSt膜の厚さは20nmであった。さらに、特願2003-405704に記載の条件(即ち、NaOH水溶液(1N)に40℃16時間浸漬した後、水で3回洗浄し、窒素ブローで水を除去した)で加水分解してカルボン酸を生成させた。生成したカルボン酸表面を1−エチル−2,3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(400nM)とN−ヒドロキシスクシンイミド(100mM)との混合液に60分浸漬したのち、5-アミノ吉草酸(1mol/l、pH8.5に調整)溶液に16時間浸漬し、洗浄をおこなった。
【0085】
実施例4:親水性表面で被覆した本発明のバイオセンサーの性能評価
蛋白質の結合測定及び回収測定
測定表面と本発明の流路の組み合わせにより作成されたバイオセンサーと測定表面と処理をしていない流路の組み合わせにより作成されたバイオセンサーを用いて、結合測定と回収実験を行った。
【0086】
・操作
(1)リガンド溶液の調製:
抗BSA(牛血清アルブミン)抗体(ロックランド社製)0.5mgを酢酸バッファー(pH5.5) 1mlに溶解した。
(2)活性化液の調整
下記溶液を使用直前に体積比1:1で混合した。0.1M NHS溶液、0.4M EDC溶液
(3)ブロッキング液:1Mエタノールアミン液(pH8.5)
(4)アナライト液
BSA(シグマ社製)1mgをHBS-EPバッファー1mlに溶解した。
【0087】
チップを装置にセットし、HBS-EPバッファーで流路を満たす。その状態で測定を開始し、測定開始後30秒後の信号値を0とする。測定を続けながら、活性化液100μlを流路に1秒間で注入し、15分放置する。続けて、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、そのあと、リガンド溶液100μlを流路に1秒間で注入し、15分放置する。続けて、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、そのあと、ブロッキング液100μlを流路に1秒間で注入し、15分放置する。続けて、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、続けて、10mM NaOH溶液100μlを流路に1秒間で注入することを2回連続で行い、さらに、HBS-EPに置換して30秒放置し、そのときの信号値をリガンド固定量とした。
【0088】
チップを装置にセットしたまま、アナライトの測定を行った。流路をHBS-EPバッファーで満たし、その状態で測定を開始し、測定開始後60秒後の信号値を0とする。測定を続けながら、アナライト液100μlを流路に1秒間で注入し、3分放置する。3分後の信号値を測定した。さらに、HBS-EPバッファー100μlを流路に1秒間で注入し、その後、50mMのNaOH水溶液で流路を満たし、180秒放置した。放置後、流路中のNaOH水溶液を回収した。回収液は、減圧濃縮して固形分を乾固させた。その後、HBS-EPバッファー10μlで希釈し、ND-1000(ナノドロップ社)にて280nmの吸収を測定して回収蛋白量とした。
【0089】
(2)結果
表2に蛋白質の結合測定及び回収測定の結果を示す。
【0090】
【表2】


【0091】
表2の結果から、本発明のバイオセンサーにより、検出されたサンプルの回収量の飛躍的な増加が可能となった。即ち、回収能の優れた、バイオセンサーを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の流路の例を示す。




 

 


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