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発明の名称 光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−52108(P2007−52108A)
公開日 平成19年3月1日(2007.3.1)
出願番号 特願2005−235804(P2005−235804)
出願日 平成17年8月16日(2005.8.16)
代理人 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平
発明者 伊藤 洋士
要約 課題
環境湿度によるレターデーションの変動、画面周辺部の光漏れが少ない光学補償フィルム、該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置を提供すること。

解決手段
セルロースアシレートフィルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層を塗設してなり、該セルロースアシレートフィルムのセルロースを構成するグルコース単位の水酸基が、炭素原子数2以上のアシル基で置換され、グルコース単位の2位の水酸基の該アシル基による置換度をDS2、3位の水酸基の該アシル基による置換度をDS3、6位の水酸基の該アシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(I)および(II)を満たし、該セルロースアシレートフィルムの厚みが40〜85μmである光学補償フィルム。これを用いた偏光板及び液晶表示装置。
特許請求の範囲
【請求項1】
セルロースアシレートフィルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層を塗設してなる光学補償フィルムであって、該セルロースアシレートフィルムのセルロースを構成するグルコース単位の水酸基が、炭素原子数2以上のアシル基で置換され、グルコース単位の2位の水酸基の該アシル基による置換度をDS2、3位の水酸基の該アシル基による置換度をDS3、6位の水酸基の該アシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(I)および(II)を満たし、さらに該セルロースアシレートフィルムの厚みが40〜85μmであることを特徴とする光学補償フィルム。
(I) :2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
(II) :DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
【請求項2】
該セルロースアシレートフィルムのReレターデション値、Rthレターデーション値がそれぞれ、以下の式(V)及び(VI)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
(V):20nm≦Re(550)≦50nm
(VI):160nm≦Rth(550)≦250nm
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける面内レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項3】
該セルロースアシレートフィルムが棒状または円盤状化合物からなるレターデーション発現剤を少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光学補償フィルム。
【請求項4】
該セルロースアシレートフィルムの25℃10%RHにおけるRe(550)値と25℃80%RHにおけるRe(550)値の差ΔRe(Re10%RH−Re80%RH)が12nm以下であり、25℃10%RHにおけるRth(550)値と25℃80%RHにおけるRth(550)値の差ΔRth(Rth10%RH−Rth80%RH)が32nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける面内のレターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける厚さ方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項5】
前記液晶性化合物が、円盤状液晶性化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の光学補償フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学補償フィルムと偏光子とを有する偏光板。
【請求項7】
液晶セルと、請求項1〜5のいずれかに記載の光学補償フィルムあるいは請求項6に記載の偏光板とを有する液晶表示装置。
【請求項8】
液晶表示装置がOCBモードであることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償フィルム、それを用いた偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能など様々な利点からパーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は液晶セル内の液晶の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流であった。
一般に液晶表示装置は、液晶セル、光学補償フィルム、偏光子から構成される。光学補償フィルムは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許第2587398号公報ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償フィルムをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。特にOCBモードは応答速度が速く、動画適正が高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。
【0003】
セルロースアシレートフィルムは、他のポリマーフィルムと比較して、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)との特徴がある。従って、光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板には、セルロースアセテートフィルムを用いることが普通である。
一方、液晶表示装置の光学補償フィルム(位相差フィルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。特にOCB用の光学補償フィルムでは20〜100nmの面内レターデーション値(Re)、70〜400nmの厚さ方向レターデーション値(Rth)が必要とされる。
従来、光学材料の技術分野では、ポリマーフィルムに光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される場合には合成ポリマーフィルムを使用し、光学的等方性(低いレターデーション値)が要求される場合にはセルロースアセテートフィルムを使用することが一般的な原則であった。
【0004】
特許文献1には、従来の一般的な原則を覆して、光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアセテートフィルムが開示されている。該特許ではセルローストリアセテートで高いレターデーション値を実現するために、少なくとも2つの芳香環を有する芳香族化合物、中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物を添加し、延伸処理を行っている。
一般にセルローストリアセテートは延伸しにくい高分子素材であり、複屈折率を大きくすることは困難であることが知られているが、添加剤を延伸処理で同時に配向させることにより複屈折率を大きくすることを可能にし、高いレターデーション値を実現している。このフィルムは偏光板の保護膜を兼ねることができるため、安価で薄膜な液晶表示装置を提供することができる利点がある。
特許文献2には炭素数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をAとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をBとしたとき、式2.0≦A+B≦3.0及び式A<2.4を同時に満たすセルロースエステルを含有する光学フィルムであって、更に、波長590nmにおける遅相軸方向の屈折率Nx及び進相軸方向の屈折率Nyが式0.0005≦Nx−Ny≦0.0050を満たすことを特徴とする光学フィルムが開示されている。
特許文献3〜4にはOCBモード液晶表示装置に用いられる偏光板において、液晶性化合物からなる層を有する光学補償フイルムを適用し、広視野角を実現している。
【0005】
上記特許文献に記載の方法は、安価でかつ薄い液晶表示装置が得られる点で有効である。しかしながら、近年、液晶表示装置が各種環境下で使用されることが多くなり、上記技術を用いたセルロールセステルフィルムではその環境下で光学補償機能が変化するという問題があった。特に、液晶セルと貼り合せる際に、セルロースセステルフィルムが環境の変化、特に湿度の影響を受け、そのReレターデーション値、Rthレターデーション値が変化し、光学補償能が変わるという問題があった。この問題の解決が要望されていた。
また、液晶表示装置の大型化に伴い、環境変化による表示画面周辺における光漏れに対する改善要望も強くなり、上記環境による光学特性変化とともに大きな問題となっていた。この光漏れに対しては、特許文献5、6に関連の記載がある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第911656号明細書
【特許文献2】特開2002−71957号公報
【特許文献3】特開平9−211444号公報
【特許文献4】特開平11−316378号公報
【特許文献5】特開2002−139621号公報
【特許文献6】特開2002−169023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、面内及び厚さ方向レターデーションの発現性に優れたセルロースアシレートフィルムを用いた、環境湿度によるレターデーションの変動、および画面周辺部の光漏れが少ない光学補償フィルム、該フィルムを用いた偏光板を提供することである。
本発明の別の目的は、視野角特性変化の少ない液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は以下の手段によって達成された。
(1)セルロースアシレートフィルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層を塗設してなる光学補償フィルムであって、該セルロースアシレートフィルムのセルロースを構成するグルコース単位の水酸基が、炭素原子数2以上のアシル基で置換され、グルコース単位の2位の水酸基の該アシル基による置換度をDS2、3位の水酸基の該アシル基による置換度をDS3、6位の水酸基の該アシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(I)および(II)を満たし、さらに該セルロースアシレートフィルムの厚みが40〜85μmであることを特徴とする光学補償フィルム。
(I) :2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
(II) :DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
(2)該セルロースアシレートフィルムのReレターデション値、Rthレターデーション値がそれぞれ、以下の式(V)及び(VI)を満たすことを特徴とする前記(1)に記載の光学補償フィルム。
(V):20nm≦Re(550)≦50nm
(VI):160nm≦Rth(550)≦250nm
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける面内レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
(3)該セルロースアシレートフィルムが棒状または円盤状化合物からなるレターデーション発現剤を少なくとも1種含むことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の光学補償フィルム。
(4)該セルロースアシレートフィルムの25℃10%RHにおけるRe(550)値と25℃80%RHにおけるRe(550)値の差ΔRe(Re10%RH−Re80%RH)が12nm以下であり、25℃10%RHにおけるRth(550)値と25℃80%RHにおけるRth(550)値の差ΔRth(Rth10%RH−Rth80%RH)が32nm以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける面内のレターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける厚さ方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
(5)前記液晶性化合物が、円盤状液晶性化合物である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルムと偏光子とを有する偏光板。
(7)液晶セルと、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルムあるいは前記(6)に記載の偏光板とを有する液晶表示装置。
(8)液晶表示装置がOCBモードであることを特徴とする前記(7)に記載の液晶表示装置。
【0008】
また本発明では、以下の形態も好ましい。
(9)該セルロースアシレートフィルムのアシル基がアセチル基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(10)該セルロースアシレートフィルムが可塑剤、紫外線吸収剤、及び剥離促進剤のうち少なくとも1種含む前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(11)該セルロースアシレートフィルムに添加する添加剤の含有量が該セルロースアシレートフィルム質量の10質量%以上30質量%以下である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(12)該セルロースアシレートフィルムの25℃80%RHにおける平衡含水率が3.4%以下である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(13)該セルロースアシレートフィルムの60℃、95%RH、24hrの透湿度(膜厚80μm換算)が、400g/m2・24hr以上2300g/m2・24hr以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(14)該セルロースアシレートフィルムの80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(15)該セルロースアシレートフィルムの60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(16)該セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgが80〜180℃である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(17)該セルロースアシレートフィルムの弾性率が、1500〜5000MPaであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(18)該セルロースアシレートフィルムの光弾性係数が、50×10-13dyne/cm2(5×10-13N/m)以下である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(19)該セルロースアシレートフィルムのヘイズが0.01〜2%である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(20)該セルロースアシレートフィルムが2次平均粒子径0.2以上1.5μm以下の二酸化珪素微粒子を有する前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償フィルム。
(21)液晶性化合物が、円盤状液晶性化合物である(1)〜(16)のいずれかに記載の光学補償フイルム。
(22)偏光板の25℃60%RH条件下で測定した単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CT、偏光度Pが下記式(a)〜(d)の少なくとも1つ以上を満たす前記(6)に記載の偏光板。
(a)40.0≦TT≦45.0
(b)30.0≦PT≦40.0
(c)CT≦2.0
(d)95.0≦P
(23)波長λにおける直交透過率をCT(λ)としたときに、CT(380)、CT(410)、CT(700)が下記式(e)〜(g)の少なくとも1つ以上を満たす前記(6)に記載の偏光板。
(e)CT(380)≦2.0
(f)CT(410)≦0.1
(g)CT(700)≦0.5
(24)60℃95%RHに500時間静置させたときの直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(j)、(k)の少なくとも1つ以上を満たす前記(6)に記載の偏光板。
(j)−6.0≦ΔCT≦6.0
(k)−10.0≦ΔP≦0.0
(ただし、変化量とは試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値を示す)
(25)偏光板の液晶セルと反対側に配置される保護膜の表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けた前記(6)に記載の偏光板。
(26)防湿処理を施した袋に包装されており、包装した状態での袋内の湿度が25℃で43%RH〜65%RHであることを特徴する前記(6)に記載の偏光板。
(27)防湿処理を施した袋に包装されており、包装した状態での袋内の湿度が偏光板を液晶パネルに貼り合せる際の湿度に対して15%RH以内の差である前記(6)に記載の偏光板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面内及び厚さ方向レターデーションの発現性に優れたセルロースアシレートフィルムを用いた、環境湿度によるレターデーションの変動、および画面周辺部の光漏れが少ない光学補償フィルム、該フィルムを用いた偏光板が提供される。
また本発明によれば、視野角特性変化の少ない液晶表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
(セルロースアシレート)
まず、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
本発明で用いられるセルロースアシレートは、全アシル置換度、即ち、DS2+DS3+DS6が2.00〜3.00であり、好ましくは2.22〜2.90であり、より好ましくは2.40〜2.82である。また、D6S/(DS2+DS3+DS6)は0.315以上であり、好ましくは0.322以上、より好ましくは0.324〜0.340である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。
【0011】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.2〜2.86であり、特に好ましくは2.40〜2.80である。また、DSBは1.50以上であり、特には1.7以上である。さらにDSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートフィルムもあげることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
【0012】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはアセチル、プロピオニル、ブタノイルである。
【0013】
(セルロースアシレートの合成方法)
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他,「木材化学」,共立出版,1968年,180〜190頁に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0014】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5mm〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1mm〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは粘度平均重合度250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105頁〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0015】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5質量%〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
【0016】
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0017】
(添加剤)
本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。剥離促進剤としてはクエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これら添加剤の種類や添加量の選択によって、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgを80℃〜180℃に、引張試験機で測定する弾性率を1500MPa〜3000MPaすることが好ましい。
さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁以降に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0018】
(可塑剤)
本発明のフィルム中には可塑剤を含むことが好ましい。用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のセルロースアシレートよりも疎水的なものを単独あるいは併用するのが好ましい。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0019】
(レターデーション発現剤)
本発明ではレターデーション値を発現するため、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。レターデーション発現剤は、ポリマー100質量部に対して、0.05質量部〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1質量部〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2質量部〜5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5質量部〜2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250nm〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0020】
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
【0021】
レターデーション発現剤が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結
合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0022】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
【0023】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0024】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0025】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0026】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有してい
てもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0027】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0028】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
レターデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0029】
本発明では、レターデーション発現剤として、棒状化合物および円盤状化合物から選択された少なくとも1種使用するのが好ましいが、1,3,5−トリアジン環を用いた化合
物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
【0030】
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(1)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0031】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ウレイド、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N,N,N'−トリメチルウレイド)、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、s−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、アルケニル基(例、ビニル、アリル、ヘキセニル)、アルキニル基(例、エチニル、ブチニル)、アシル基(例、ホルミル、アセチル、ブチリル、ヘキサノイル、ラウリル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウリルオキシ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ)、アリールチオ基(例、フェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル)、アミド基(例、アセトアミド、ブチルアミド基、ヘキシルアミド、ラウリルアミド)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル、ピラジニル)が含まれる。
【0032】
なかでも、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が挙げられる。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
【0033】
一般式(1)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
【0034】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレンまたはエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
【0035】
一般式(1)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記式一般式(2)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(2):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(2)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基の定義および例は、一般式(1)のAr1およびAr2と同様である。
【0036】
一般式(2)において、L2およびL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
【0037】
一般式(2)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。
【0038】
【化1】


【0039】
【化2】


【0040】
【化3】


【0041】
【化4】


【0042】
【化5】


【0043】
【化6】


【0044】
【化7】


【0045】
【化8】


【0046】
【化9】


【0047】
具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
【0048】
【化10】


【0049】
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0050】
その他、好ましい化合物を以下に示す。
【0051】
【化11】


【0052】
【化12】


【0053】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を使用するこが好ましい場合もあり、二種類以上併用してもよい。
【0054】
次に、本発明のセルロースアシレートが溶解される有機溶媒について記述する。
(塩素系溶媒)
本発明のセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される非塩素系有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい非塩素系有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
【0055】
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
本発明の好ましい主溶媒である塩素系有機溶媒の組合せとしては以下を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/5/5/7、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
【0057】
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65
/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
などをあげることができる。
【0058】
(非塩素系溶媒)
次に、本発明のセルロースアシレートの溶液を作製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0059】
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、本発明のセルロースアシレートの好ましい溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれ、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールである。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合液であってもよい。
【0060】
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0061】
以上の3種類の混合溶媒は、第1の溶媒が20質量%〜95質量%、第2の溶媒が2質量%〜60質量%さらに第3の溶媒が2質量%〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30質量%〜90質量%であり、第2の溶媒が3質量%〜50質量%、さらに第3のアルコールが3質量%〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30質量%〜90質量%であり、第2の溶媒が3質量%〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3質量%〜15質量%含まれることが好ましい。なお、第1の溶媒が混合液で第2の溶媒を用いない場合は、第1の溶媒が20質量%〜90質量%、第3の溶媒が5質量%〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30質量%〜86質量%であり、さらに第3の溶媒が7質量%〜25質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて12頁〜16頁に詳細に記載されている。本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/5/5/7、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/14/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘ
キサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
【0063】
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・1、3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)
などをあげることができる。
更に下記の方法でセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加
【0064】
(セルロースアシレート溶液特性)
本発明のセルロースアシレート溶液は、有機溶媒に10質量%〜30質量%溶解していることが好ましいが、より好ましくは13質量%〜27質量%であり、特には15質量%〜25質量%溶解していることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを調製する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるようにしてもよく、また予め低濃度溶液(例えば9質量%〜14質量%)として調製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法であっても、本発明のセルロースアシレートは上記溶液濃度範囲になるように調製されていれば特に問題ない。
【0065】
次に、本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1質量%〜5質量%にした希釈溶液のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが好ましい。さらに好ましくは、会合体分子量が18万〜900万である。この会合体分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10nm〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20nm〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜2×10-4である。
【0066】
ここで、上記会合体分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定した。測定は装置の都合上希薄領域で測定したが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製した。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行った。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施した。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過した。そして、ろ過した溶液を静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定した。得られたデータをBERRYプロット法にて解析した。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定した。
【0067】
(ドープ調製)
次に本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号公報、特開昭61−106628号公報、特開昭58−127737号公報、特開平9−95544号公報、特開平10−95854号公報、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463号公報、特開平04−259511号公報、特開2000−273184号公報、特開平11−323017号公報、特開平11−302388号公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で行うことができる。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0068】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度(n*、単位:Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率(G’、単位:Pa)を求めた。
尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1Pa・s〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上が好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10Pa・s〜200Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が100万〜100万が好ましい。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万Pa〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万Pa〜500万Paが好ましい。
【0069】
セルロースアシレート溶液の濃度は前述のごとく、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒
蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
【0070】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1μm〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.5μm〜25μmであるフィルタを用いることが好ましく用いられる。フィルタの厚さは、0.1mm〜10mmが好ましく、更には0.2mm〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は16kgf/cm2以下(1.57MPa以下)、より好ましくは12kgf/cm2(1.18MPa以下)以下、更には10kgf/cm2(0.98MPa以下)以下、特に好ましくは2kgf/cm2(0.20MPa以下)以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。
セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5℃〜70℃であり、より好ましくは−5℃〜55℃である。
【0071】
(製膜)
セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製される際に、ドープはドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5質量%〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10℃〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。
さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平3−193316号、特開平5−086212号、特開昭62−037113号、特開平2−276607号、特開昭55−014201号、特開平2−111511号、および特開平2−208650号の各公報に記載の技術を本発明では応用できる。
【0073】
(重層流延)
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。
また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更にまた、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことにより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0074】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1%〜50%であることが好ましく、より好ましくは2%〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。また、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0075】
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10℃〜55℃が好ましくより好ましくは25℃〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0076】
(乾燥)
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1度〜10度低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0077】
(延伸処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするためには、製造したフィルムが延伸される。
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。延伸は1%〜200%の延伸が行われる。好ましくは1%〜100%の延伸が、特に好ましくは1%から50%延伸を行う。光学フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量が2%〜30%で好ましく延伸することができる。
【0078】
本発明の出来上がり(乾燥後)のセルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、環境による光漏れ防止の観点から、85μm以下であることが好ましい。また、生産工程のハンドリング適性から、40μm以上であることが好ましい。一方、フィルムの膜厚は65μm以上にすることも好ましい。この範囲とすることで、水を通しにくくなり、60℃95%RH500時間の偏光板耐久性試験などで有利であり、好ましい。光学特性の大きさは膜厚に比例し、透湿度も膜厚に反比例して減少するため、膜厚を大きくすることで透湿度は小さくなるためと考えられる。以上の観点から、65〜83μmであることが最も好ましい。
フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られたセルロースアシレートフィルムの幅は0.5m〜3mが好ましく、より好ましくは0.6m〜2.5m、さらに好ましくは0.8m〜2.2mである。長さは1ロールあたり100m〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500m〜7000mであり、さらに好ましくは1000m〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mm、より好ましくは5m〜30mm、高さは0.5μm〜500μmであり、より好ましくは1μm〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。全幅のRe値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。透明感を保つためヘイズは0.01%〜2%が好ましい。ヘイズを小さくするためには、添加する微粒子マット剤の分散を十分に行い凝集粒子の数を少なくしたり、添加量を少なくするためにスキン層だけにマット剤を使用したりする。
【0079】
(セルロースアシレートフィルムの光学特性)
本発明のセルロースアシレートフィルムの光学特性は、Reレターデション値、Rthレターデーション値がそれぞれ、以下の式(V)及び(VI)を満たすことが好ましい。
(V):20nm≦Re(550)≦50nm
(VI):160nm≦Rth(550)≦250nm
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける面内レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力しKOBRAにより算出された。
さらに好ましくは、下記式(VII)及び(VIII)を満たすことである。
(VII) :30nm≦Re(550)≦50nm
(VIII) :170nm≦Rth(550)≦220nm
本明細書では、特に断りの無い場合、λは550nmである。
【0080】
湿度変化や高温経時による質量変化や寸法変化に伴いRe及びRthの光学特性値が変化する。Re及びRthの値が変化は少ないほど好ましい。湿度による光学特性変化を少なくするために6位アシル置換度の大きなセルロースアシレートを使用するほかに、疎水性の各種添加剤(可塑剤、レターデーション発現剤、紫外線吸収剤など)を用いることによって、フィルムの透湿度や平衡含水率を小さくする。本発明では、セルロースアシレー
トフィルムの25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値の差ΔRe(Re10%RH−Re80%RH)が12nm以下であり、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値の差ΔRth(Rth10%RH−Rth80%RH)が32nm以下であること好ましい。透湿度は60℃、95%RH24時間で1平方メートル当たり400gから2300gである。好ましい平衡含水率は25℃、80%RHにおける測定値が3.4%以下である。25℃における湿度を10%RHから80%RHに変化させた時の光学特性の変化量がRe値で12nm以下、Rth値で32nm以下であることが好ましい。好ましい添加剤の量はセルロースアシレートの質量に対して10質量%から30質量%であり、12質量%から25質量%がより好ましく、14.5質量%から20質量%が特に好ましい。添加剤に揮発性や分解性があってフィルムの質量変化や寸法変化が発生すると光学特性変化が起こる。従って80℃90%RHで48時間経時した後のフィルムの質量変化量は5%以下であることが好ましい。同様に60℃95%RHで24時間経時後の寸法変化量は5%以下であることが好ましい。さらに90℃5%RHで24時間経時後の寸法変化量は5%以下であることが好ましい。また寸法変化や質量変化が少々あっても、フィルムの光弾性係数が小さいと光学特性の変化量は少なくなる。従ってフィルムの光弾性係数が50×10-13dyne/cm2(5×10-13N/m2)以下であることが好ましい。また、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgは、80℃〜180℃であるのが好ましい。さらに、セルロースアシレートフィルムの弾性率は、1500MPa〜5000MPaであるのが好ましい。さらにまた、セルロースアシレートフィルムが、2次平均粒子径が0.2μm以上1.5μm以下の二酸化珪素微粒子を有するのが好ましい。
【0081】
[光学異方性層]
光学異方性層は、液晶性化合物から形成する。光学異方性層は、透明支持体(sルロースアシレートフィルム)の表面に直接形成することができる。透明支持体の上に配向膜を形成し、配向膜上に光学異方性層を形成してもよい。また、別の基材の上に液晶性化合物から光学異方性層を形成し、次に、光学異方性層を透明支持体に転写することで、光学補償フイルムを作製することもできる。光学異方性層を転写する透明支持体には、粘着性層を設けておいてもよい。
液晶性化合物は、棒状液晶性化合物および円盤状(ディスコティック)液晶性化合物が好ましい。棒状液晶性化合物および円盤状液晶性化合物は、高分子液晶であってもよい。光学異方性層の形成において、液晶性化合物が重合または架橋することにより、液晶性を示さなくなってもよい。
【0082】
棒状液晶性化合物には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。さらに、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物に相当する分子構造を繰り返し単位に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物はポリマーと結合して、液晶ポリマーを形成していてもよい。
棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
【0083】
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7であることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
【0084】
円盤状(ディスコティック)液晶性化合物は、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルを含む。
【0085】
円盤状液晶性化合物は、一般に、分子中心の母核に対して、側鎖(例、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基)が放射線状に置換した構造を有する。円盤状液晶性化合物は、分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
円盤状液晶性化合物から光学異方性層を形成する場合、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。例えば、低分子の円盤状液晶性化合物が熱または光で反応する基を有しており、熱または光によって重合反応または架橋反応し、高分子量化することによって光学異方性層が形成することができる。円盤状液晶性化合物が高分子量化すれば、液晶性が失われることが普通である。好ましい円盤状液晶性化合物は、特開平8−50206号公報に記載されている。円盤状液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0086】
円盤状液晶性化合物を重合により固定するためには、円盤状液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有する円盤状液晶性化合物は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−Q)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
【0087】
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0088】
【化13】


【0089】
【化14】


【0090】
【化15】


【0091】
【化16】


【0092】
【化17】


【0093】
【化18】


【0094】
【化19】


【0095】
【化20】


【0096】
【化21】


【0097】
前記式において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。前記アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。前記アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。前記アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0098】
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0099】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0100】
前記式の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)は、不飽和重合性基またはエポキシ基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが最も好ましい。
前記式において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0101】
液晶性化合物の配向は、光学異方性層の分子対称軸の平均方向が、長手方向に対して43°〜47°となることが好ましい。
ハイブリッド配向では、液晶性化合物の分子対称軸と支持体の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ支持体の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。
角度は、全体として増加または減少していれば、角度が変化しない領域を含んでいてもよい。角度は連続的に変化することが好ましい。
【0102】
液晶性化合物の分子対称軸の平均方向は、一般に液晶性化合物もしくは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。透明支持体の遅相軸と光学異方性層の遅相軸が互いに直交でも平行でもない光学補償フイルムの場合、透明支持体の遅相軸と異なる方向にラビング処理をすることで、光学異方性層の遅相軸方向を調整することが出来る。
光学異方性層の表面側(空気側)における液晶性化合物の分子対称軸方向は、一般に、液晶性化合物または液晶性化合物と併用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。液晶性化合物と併用する添加剤の例は、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーを含む。分子対称軸の配向方向の変化の程度は、同様に、液晶性化合物と添加剤との選択により調整できる。界面活性剤に関しては、塗布液の表面張力制御機能との関係を調整することが望ましい。
【0103】
液晶性化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーは、円盤状液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物の添加量は、液晶性化合物に対して、1質量%〜50質量%の範囲が好ましく、5質量%〜30質量%の範囲がさらに好ましい。なお、重合性官能基の数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層との密着性を高めることが出来る。
【0104】
液晶性化合物として円盤状液晶性化合物を用いる場合、円盤状液晶性化合物とある程度の相溶性を有し、円盤状液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられるポリマーを、光学異方性層に添加することが好ましい。
ポリマーは、セルロースエステルおよびセルロースエーテルが好ましく、セルロースエステルがさらに好ましい。セルロースエステルの例は、セルロースアセテート、セルロー
スアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートを含む。セルロースエーテルの例は、ヒドロキシプロピルセルロースを含む。ポリマーの添加量は、円盤状液晶性化合物の配向を阻害しないように調整する。ポリマーの添加量は、円盤状液晶性化合物に対して0.1質量%〜10質量%の範囲が好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲がさらに好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲が最も好ましい。
【0105】
円盤状液晶性化合物におけるディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70℃〜300℃が好ましく、70℃〜170℃がさらに好ましい。
光学異方性層の厚さは、0.1μm〜20μmであることが好ましく、0.5μm〜15μmであることがより好ましく、1μm〜10μmであることがさらに好ましい。
【0106】
[配向膜]
透明支持体と光学異方性層との間に配向膜を設けることが好ましい。
配向膜は、架橋されたポリマーからなる層であるのが好ましい。架橋可能なポリマーを使用できる。例えば、架橋可能な官能基を有するポリマーを、光、熱またはPH変化により、ポリマー間で反応させて架橋させることができる。また、架橋剤を用いてポリマーを架橋してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いて、ポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋する。
【0107】
架橋されたポリマーからなる配向膜は、通常、架橋可能なポリマーまたはポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布した後、光、熱またはPH調整のような処理を行なうことにより形成することができる。
ラビング工程において、配向膜の発塵を抑制するために、架橋度を上げておくことが好ましい。塗布液中に添加する架橋剤の量(Mb)に対して、架橋後に残存している架橋剤の量(Ma)の比率(Ma/Mb)を1から引いた値(1−(Ma/Mb))を架橋度と定義すると、架橋度は50%〜100%が好ましく、65%〜100%がさらに好ましく、75%〜100%が最も好ましい。
【0108】
配向膜に使用するポリマーの例は、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリマレインイミド、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびこれらのコポリマー(例、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)を含む。シランカップリング剤もポリマーとして利用できる。ポリマーは、水溶性であることが好ましい。
ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0109】
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、70%〜100%が好ましく、80%〜100%がより好ましく、85%〜95%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールにおける変性基の導入は、共重合変性、連鎖移動変性、ブロック重合変性のいずれでもよい。共重合で導入する変性基の例は、−COONa、−Si(OX)3(Xは、水素原子またはアルキル基)、−N(CH33・Cl、−C919、−COO、−SO3Na、−C1225を含む。連鎖移動で導入する変性基の例は、−COONa、−SH、−C1225を含む。ブロック重合で導入する変性基の例は、−COOH、−CONH2、−COOR(Rはアルキル基)、−C65を含む。また、アルキルチオ基も、好ましい変性基である。
変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号公報に記載がある。
【0110】
配向膜にポリビニルアルコールのような親水性ポリマーを使用する場合、硬膜度の観点から、含水率を制御することが好ましい。含水率は、0.4%〜2.5%が好ましく、0.6%〜1.6%がさらに好ましい。含水率は、市販のカールフィッシャー法の水分率測定器で測定することができる。
配向膜は、10μm以下の膜厚を有することが好ましい。
【0111】
[光学補償フィルムの製造]
光学補償フィルムは、一般に、ロール状で製造される。ロール状光学補償フィルムは、下記(1)〜(4)の工程を連続して実施することにより製造することが好ましい。
(1)長手方向に搬送される長尺状の透明支持体の表面または該透明支持体上に形成された配向膜の表面に、ラビングローラによりラビング処理を施す工程;
(2)液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する工程;
(3)塗布された塗布液を乾燥するのと同時にまたは乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶性化合物を配向させ、その配向を固定して光学異方性層を形成する工程;および
(4)前記光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る工程。
【0112】
(3)の工程において液晶転移温度以上の温度で液晶性化合物を配向させる間に、ラビング処理された方向以外の方向に吹く液晶性化合物表面の膜面風速が、下記数式を満たすことが好ましい。最も好ましくは、Vが0〜2.5×10-3×ηである。
0<V<5.0×10-3×η
式中、Vは液晶性化合物表面の膜面風速(m/sec)であり、ηは液晶性化合物の配向温度での光学異方性層の粘度(cp)である。
【0113】
(1)〜(4)の工程によれば、液晶性化合物の分子対称軸の透明支持体面への正射影の平均方向(光学異方性層の分子対称軸の平均方向)と、透明支持体の面内遅相軸(透明支持体の長手方向)とが異なり、さらに分子対称軸の平均方向とラビング方向の間の角度が−2°〜2°、好ましくは−1°〜1°、実質的に0°である光学補償フィルムを連続的に安定に製造することができる。すなわち、(1)〜(4)の工程からなる製造方法は、大量生産に適している。
OCBモードの液晶表示装置に光学補償フィルムを適用する場合は、分子対称軸の平均方向と透明支持体の面内遅相軸(透明支持体の長手方向)との角度が、実質的に45°であることが好ましい。
【0114】
(2)の工程において、液晶性化合物として架橋性官能基を有する重合性液晶性化合物を用い、(3)の工程において、連続的に塗布層を光照射して重合性液晶性化合物を重合により硬化させて配向状態に固定し、その後、連続的に(4)の工程を実施できる。
(1)の工程において、透明支持体または配向膜の表面を除塵しながら、ラビングローラでラビング処理することができる。
(2)の工程の前に、ラビング処理した透明支持体または配向膜の表面を除塵する工程を実施してもよい。
(4)の工程の前に、形成した光学異方性層の光学特性を連続的に測定することにより検査する検査工程を実施してもよい。
(1)〜(4)の各工程は、特開平9−73081号公報に記載されている。
【0115】
(1)の工程に用いるラビングローラの直径は、ハンドリング適性、および布寿命の観点から、100mm〜500mmであることが好ましく、200mm〜400mmであることがさらに好ましい。ラビングローラの幅は、搬送するフイルムの幅よりも広いことが必要であり、フイルム幅×√2以上であることが好ましい。ラビングローラの回転数は、発塵の観点から低く設定することが好ましく、液晶性化合物の配向性に応じて、100rpm〜1000rpmであることが好ましく、250rpm〜850rpmであることがさらに好ましい。
【0116】
ラビングロールの回転数を低くしても液晶性化合物の配向性を維持するため、ラビング時に透明支持体または配向膜を加熱することが好ましい。加熱温度は、透明支持体または配向膜表面の膜面温度で、(素材のガラス転移温度−50℃)〜(素材のガラス転移温度+50℃)の範囲内であることが好ましい。ポリビニルアルコールからなる配向膜を使用する場合は、ラビングの環境湿度も制御することが好ましい。25℃の相対湿度は、25%〜70%が好ましく、30%〜60%がさらに好ましく、35%〜55%が最も好ましい。
【0117】
透明支持体の搬送速度は、生産性の観点と液晶の配向性の観点から、10m/分〜100m/分であることが好ましく、15m/分〜80m/分であることがさらに好ましい。搬送は、従来からフイルムの搬送に用いられる種々の装置を用いることができる。搬送方式について、特に制限はない。
【0118】
配向膜は、ポリビニルアルコールのような素材を水または有機溶媒に溶解した塗布液を、透明支持体の表面に塗布して、乾燥することによって形成することができる。配向膜の作製は、上記一連の工程の前に行うことができる。搬送される長尺状の透明支持体の表面に配向膜を連続的に形成してもよい。
【0119】
(2)の工程では、液晶性化合物を含む塗布液をラビング処理面に塗布する。塗布液の溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0120】
均一性の高い光学異方性層を形成するためには、塗布液の表面張力は、25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることがさらに好ましい。
低表面張力を実現するには、光学異方性層の塗布液に、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤は、フッ素系界面活性剤が好ましく、フッ素含有ポリマーからなる界面活性剤がさらに好ましく、フルオロ脂肪族基含有ポリマーからなる界面活性剤が最も好ましい。フッ素含有ポリマーは、フッ素を含む繰り返し単位と、他の繰り返し単位(例えば、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートから誘導される繰り返し単位)との共重合体であってもよい。
【0121】
フッ素含有ポリマーの質量平均分子量は、3000〜100000が好ましく、6000〜80000がさらに好ましい。フッ素含有ポリマーの添加量は、液晶性化合物を主とする塗布組成物(溶媒を除いた塗布成分)に対して0.005質量%〜8質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がさらに好ましく、0.05質量%〜0.5質量%が最も好ましい。
【0122】
塗布液のラビング処理面への塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施することができる。塗布量は、光学異方性層の厚みに基づいて、適宜決定することができる。
【0123】
(3)の工程では、塗布された塗布液を乾燥するのと同時にまたは乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶性化合物を配向させ、その配向を固定して光学異方性層を形成する。液晶性化合物は、乾燥時の加熱によってもしくは乾燥後の加熱によって、所望の配向となる。乾燥温度は、塗布液に用いた溶媒の沸点ならびに透明支持体および配向膜の素材を考慮して決定することができる。液晶性化合物の配向温度は、用いる液晶性化合物の液晶相−固相転移温度に応じて決定することができる。液晶性化合物として、円盤状液晶性化合物を用いる場合は、配向温度は、70℃〜300℃が好ましく、70℃〜170℃がさらに好ましい。
【0124】
液晶状態の粘度は、10cp〜10000cpであることが好ましく、100cp〜1000cpであることが更に好ましい。粘度が低すぎると、配向時の風の影響を受けやすく、連続生産のために、非常に高精度の風速/風向制御が必要となる。一方、粘度が高いと風の影響は受けにくいが、液晶の配向が遅くなり、生産性が非常に悪化することとなる。
液晶層の粘度は、液晶性化合物の分子構造によって制御できる。また、光学異方性層の添加剤(特に、セルロース系のポリマー)、およびゲル化剤を適量使用することでも、粘度を調整できる。
加熱は、所定の温度の温風を送風することによって、または所定の温度に維持された加熱室内を搬送することによって実施できる。
【0125】
配向させた液晶性化合物を、配向状態を維持して固定し、光学異方性層を形成する。液晶性化合物の固定は、固相転移温度まで冷却することによって、または重合反応により実施することができる。重合反応により固定することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜5質量%の範囲がさらに好ましい。
【0126】
液晶性化合物の重合を進行させて固定するための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲が好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲がさらに好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲が最も好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射は、光学異方性層の塗布液を塗布した塗布した透明支持体を、光源が上下および左右のいずれかの位置に配置された搬送路を通過させることによって実施することができる。
【0127】
(4)の工程に移行する前に、(3)の工程で作製した光学異方性層の上に、保護層を設けることもできる。例えば、あらかじめ作製した保護フィルムを、長尺状に作製された光学異方性層の表面に連続的にラミネートしてもよい。
【0128】
(4)の工程では、光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る。巻き取りは、例えば、連続的に搬送される光学異方性層を有する支持体を、円筒状の芯に巻きつけることによって行ってもよい。
(4)の工程により得られる光学補償フィルムは、ロール形態であるので、大量に製造した場合にもその取り扱いが容易である。そのままの形態で保管および搬送できる。
【0129】
(偏光板)
偏光板は、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、本発明の光学補償フィルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の光学補償フィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた光学補償フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0130】
本発明の光学補償フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板の評価を行ったところ、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じることがわかった。この場合、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られないことになる。したがって、本発明のセルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
【0131】
本発明の偏光板は、25℃60%RHにおける単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CT、偏光度Pが下記式(a)〜(d)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(a)40.0≦TT≦45.0
(b)30.0≦PT≦40.0
(c)CT≦2.0
(d)95.0≦P
単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTはこの順でそれぞれ、より好ましく
は、40.5≦TT≦45、32≦PT≦39.5、CT≦1.5であり、さらに好ましくは41.0≦TT≦44.5、34≦PT≦39.0、CT≦1.3である。偏光度Pは95.0%以上であることが好ましく、より好ましくは96.0%以上、さらに好ましくは97.0%以上である。
本発明の偏光板は、波長λにおける直交透過率をCT(λ)としたときに、CT(380)、CT(410)、CT(700)が下記式(e)〜(g)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(e)CT(380)≦2.0
(f)CT(410)≦1.0
(g)CT(700)≦0.5
より好ましくはCT(380)≦1.95、CT(410)≦0.9、CT(700)≦0.49であり、さらに好ましくはCT(380)≦1.90、CT(410)≦0.8、CT(700)≦0.48である。
本発明の偏光板は、60℃95%RHの条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(j)、(k)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(j)−6.0≦ΔCT≦6.0
(k)−10.0≦ΔP≦0.0
(ただし、変化量とは試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値を示す)
より好ましくは−5.8≦ΔCT≦5.8、−9.5≦ΔP≦0.0、更に好ましくは、−5.6≦ΔCT≦5.6、−9.0≦ΔP≦0.0である。
本発明の偏光板は、60℃90%RHの条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(h)、(i)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(h)−3.0≦ΔCT≦3.0
(i)−5.0≦ΔP≦0.0
本発明の偏光板は、80℃の条件下に500時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(l)、(m)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(l)−3.0≦ΔCT≦3.0
(m)−2.0≦ΔP≦0.0
偏光板の単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTは、UV3100PC(島津製作所社製)を用い、380nm〜780nmの範囲で測定し、TT、PT、CTともに、10回測定の平均値(400nm〜700nmでの平均値)を用いる。偏光度Pは、偏光度(%)=100×[(平行透過率−直交透過率)/(平行透過率+直交透過率)]1/2で求めることができる。偏光板耐久性試験は(1)偏光板のみと(2)偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた、2種類の形態で次のように行う。偏光板のみの測定は、2つの偏光子の間に本発明のセルロースアシレートフィルムが挟まれるように組み合わせて直交、同じものを2つ用意し測定する。ガラス貼り付け状態のものはガラスの上に偏光板を本発明のセルロースアシレートフィルムがガラス側にくるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作成する。単板透過率測定ではこのサンプルのフィルムの側を光源に向けてセットして測定する。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を単板の透過率とする。
【0132】
(防湿処理された袋)
本発明において「防湿処理された袋」はカップ法(JIS−Z208)に基づいて測定した透湿度によって規定する。40℃90%RHでの透湿度が30g/(m2・Day)以下である材料を用いることが好ましい。30g/(m2・Day)以上になると袋外の環境湿度の影響を防止することができなくなる。10g/(m2・Day)以下であることが更に好ましく、5g/(m2・Day)以下であることが最も好ましい。
防湿処理された袋の材料は、前記記載の透湿度を満足する材料であれば特に制限は無く、公知の材料を用いることができる〔(「包装材料便覧」、日本包装技術協会(1995年);「包装材料の基礎知識」、(社)日本包装技術協会(2001年11月);「機能性包装入門」、21世紀包装研究境界(2002年2月28日 初版第1刷)等参照〕。本発明では、透湿度が低く、軽量で扱いやすい材料が望ましく、プラスチックフィルム上にシリカやアルミナ、セラミックス材料等を蒸着したフィルムやプラスチックフィルムとアルミ箔の積層フィルム等の複合材料を特に好ましく用いることができる。アルミ箔の厚さとしては、環境湿度に袋内の湿度が変化しない厚さであれば特に制限はないが、数μm〜数100μmの厚さであることが好ましく、10μm〜500μmであることが更に好ましい。本発明に用いる防湿処理を施した袋内の湿度は、以下のいずれかを満たすことが好ましい。
偏光板を包装した状態で25℃において43%RH〜70%RHであること、より好ましくは45%〜65%、さらに好ましくは45%〜63%であること。
偏光板を包装した状態での袋内の湿度が液晶パネルに偏光板を貼り合せる際の湿度に対して15%RH以内の差であること。
【0133】
(反射防止層)
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層または透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。
【0134】
透明保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
本発明の光散乱層にはマット粒子が分散しており、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明においては光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0135】
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08μm〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1μm〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0度〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値が0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。
また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0136】
本発明の反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値(比)が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
【0137】
(低屈折率層)
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(IX)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(IX):(mλ/4)×0.7<n1d1<(mλ/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
【0138】
本発明の低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
本発明の低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含む。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90°〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0139】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0140】
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0141】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0142】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(ア
クリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0143】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0144】
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
【0145】
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生及び脆性の悪化の抑制の観点から、1μm〜10μmが好ましく、1.2μm〜6μmがより好ましい。
【0146】
散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
【0147】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0148】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0149】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
【0150】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
【0151】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0152】
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1μm〜10μm、好ましくは1.5μm〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0153】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
【0154】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0155】
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10mg/m2〜1000mg/m2、より好ましくは100mg/m2〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0156】
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およ
びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10%〜90%であることが好ましく、より好ましくは20%〜80%であり、特に好ましくは30%〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0157】
光散乱層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0158】
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を防眩層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0159】
次に透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層について述べる。
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい(例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等参照)。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0160】
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−1661042001−310432号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
【0161】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及び/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個有する多官能性化合物含有組成物と、加水分解性基を有する有機金属化合物及びその部分縮合体を含有する組成物とから選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
【0162】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10mμであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
【0163】
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35質量%〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
【0164】
架橋または重合性基を有する含フッ素及び/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0165】
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1nm〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜150nmであることがさらに好ましく、60nm〜120nmであることが最も好ましい。
【0166】
(反射防止層の他の層)
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0167】
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けた透明保護膜に物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2μm〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少な
いほど好ましい。
【0168】
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属としてZn、Ti、Sn、Al、In、Si、Mg、Ba、Mo、W、またはVをあげることができ、これを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。具体的な例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、WO3、V25等、あるいはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2、及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加物、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用しても良い。尚、体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10-8(Ωcm-3)以下の導電性を確保するためには、該導電層が概ね10-10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく更に好ましくは10-8(Ω/□)である。導電層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、本特許に記載の積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
【0169】
(液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルム、該フィルムからなる光学補償フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはTNモードに好ましく用いることができる。
【0170】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置である。OCBモードの液晶セルは、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【実施例】
【0171】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
[測定法]
以下、セルロースアシレートフィルムの諸特性は以下の方法で測定して実施した。
(レターデーション)
Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレター
デーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出した。尚、特に断りの無い限り、ReおよびRthの測定波長は550nmとした。
【0172】
(含水率)
試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0173】
(熱収縮率)
試料30mm×120mmを90℃、5%RHで24、120時間経時させ、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mm間隔に開けて、間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。さらに60℃、95%RHあるいは90℃、5%RHにて24時間静置してパンチ間隔の寸法(L2)を測定。そして、熱収縮率を{(L1−L2)/L1}×100により求めた。
【0174】
(ガラス転移温度Tg)
フィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
【0175】
(光弾性係数)
フィルム試料10mm×100mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のReレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
【0176】
(ヘイズ)
試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K6714に従って測定した。
(透水率の測定方法)
透水率(透湿度)の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(重量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することが出来る。本明細書の実施例においては、JIS規格JISZ0208、B条件に従い、温度を40℃、湿度を90%RHとして測定を行った。
【0177】
[実施例1]
1.セルロースアシレートフィルムの製膜
(1)セルロースアシレート
表1に記載のアシル置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、カルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。その後、硫酸触媒量、水分量及び熟成時間を調整することで全置換度と6位置換度を調整した。熟成温度は40℃で行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(2)ドープ調製
表1に記載のセルロースアシレートに可塑剤(トリフェニルホスフェイトとビフェニルジフェニルフォスフェイトの2対1の混合物)、下記構造のレターデーション発現剤を次の混合溶剤、ジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に固形分の質量濃度が19質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解させた。このとき、同時にセルロースアシレート100質量部に対してそれぞれ微粒子〔二酸化ケイ素(一次粒径20nm、モース硬度 約7)〕0.05質量部、紫外線吸収剤B(TINUVIN327 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)0.375質量部、紫外線吸収剤C(TINUVIN328 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)0.75質量部を投入し、加熱しながら攪拌した。 可塑剤とレターデーション発現剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で表2に示した。このようにしてできたドープから下記方法でF1からF5までのフィルムを作成した。
レターデーション発現剤
【0178】
【化22】


【0179】
(流延)
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が25から35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて15%〜23%の延伸率(表2)で幅方向に延伸して、セルロースアシレートフィルムを製造した。テンターでは熱風を当てて乾燥をしながら、幅方向に延伸した後、約5%収縮させ、その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に乾燥し、ナーリングし巻き取った。延伸率はテンター入口のフィルム幅とテンター出口のフィルム幅から算出した値を表2に示した。作製したセルロースアシレートフィルム(光学補償フィルム)について、25℃60%RHで波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。また、フィルムを25℃10%RH、25℃80%RHに2時間以上調湿して2枚のガラス板間にシリコーンを介してサンプルフィルムを挟み込み密閉した状態で測定した。このときの80%RHから10%RHへのセルロースアシレートフィルムのレターデーションの変化量(Re(10%RH)−Re(80%RH)、Rth(10%RH)−Rth(80%RH)
)をΔRe、ΔRthとして表2に示す。
【0180】
【表1】


【0181】
【表2】


【0182】
作成したフィルムは更にガラス転移温度(Tg)、25℃80%RH調湿後の含水率及び、60℃95%RHで24時間の水分透過率(透水率)を測定し、表2に示した。またこれらのフィルムのヘイズは全て0.1〜0.9、マット剤の2次平均粒子径が1.0μm以下、引っ張り弾性率は4GPa以上であり、80℃90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化は0%〜3%であった。また、60℃95%RH及び90℃5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化は0%〜4.5%であった。さらに、どのサンプルも光弾性係数は50×10-13dyne/cm2以下(5×10-13N/m以下)であった。
【0183】
上記セルロースアシレートフィルム(F1〜5)のバンド面側に、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10cc/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除した。
その後、100℃で15秒間乾燥した。
アルカリ処理面の純水に対する接触角を測定したところ、42°であった。
【0184】
(配向膜の形成)
セルロースアシレートフィルム(F1〜5)のアルカリ処理面に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥し、配向膜を形成した。
【0185】
配向膜塗布液組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
クエン酸エステル(AS3、三協化学(株)製) 0.35質量部
【0186】
【化23】


【0187】
(ラビング処理)
配向膜を形成した透明支持体を速度20m/分で搬送し、長手方向に対して45°にラビング処理されるようにラビングロール(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、透明支持体の配向膜設置表面にラビング処理を施した。ラビングロールと透明支持体の接触長は、18mmとなるように設定した。
【0188】
(光学異方性層の形成)
102Kgのメチルエチルケトンに、下記の円盤状液晶性化合物41.01Kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06Kg、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.35Kg、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35Kg、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45Kgを溶解した。溶液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日
本インキ(株)製)0.1Kgを加え、塗布液を調製した。塗布液を、#3.2のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている透明支持体(F3〜F5)の配向膜面に連続的に塗布した。
【0189】
【化24】


【0190】
室温から100℃に連続的に加温し、溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾーンで円盤状光学異方性層の膜面風速が、2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、円盤状液晶性化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、円盤状液晶性化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、ロール状光学補償フィルム(KH−3〜5)を作製した。
【0191】
(光学異方性層の形成)
上記塗布液を、#4.0のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている透明支持体(F1、およびF2)の配向膜面に連続的に塗布した。
【0192】
室温から100℃に連続的に加温し、溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾーンで円盤状光学異方性層の膜面風速が、2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、円盤状液晶性化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、円盤状液晶性化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、ロール状光学補償フィルム(KH−1〜2)を作製した。
【0193】
127℃の膜面温度で光学異方性層の粘度を測定したところ、695cpであった。粘度は、光学異方性層と同じ組成の液晶層(溶媒は除く)を加熱型のE型粘度系で測定した結果である。
作製したロール状光学補償フィルムの一部を切り取り、サンプルとして用いて、光学特性を測定した。波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は38nmであった。また、光学異方性層中の円盤状液晶性化合物の円盤面と支持体面との角度(傾斜角)は、層の深さ方向で連続的に変化し、平均で28゜であった。さらに、サンプ
ルから光学異方性層のみを剥離し、光学異方性層の分子対称軸の平均方向を測定したところ、光学補償フィルムの長手方向に対して、45°となっていた。
【0194】
(偏光子の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償フィルム(KH−1〜4)を透明支持体面が偏光膜側になるように貼り付けた。また、厚さ80μmの市販のトリアセチルセルロースフイルム(TD−80U:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
偏光膜の長手方向、透明支持体の長手方向、市販のトリアセチルセルロースフイルムの長手方向は、全て平行になるように配置した。このようにして、光学補償フィルムを有する偏光子を作製した。
また、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償フィルムを透明支持体面で偏光膜の片側に貼り付けた。また、反射防止フィルム(富士フイルムCVクリアビューUA、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
偏光膜の長手方向、透明支持体の長手方向、市販のトリアセチルセルロースフイルムの長手方向は、全て平行になるように配置した。このようにして、光学補償フィルムと反射防止フィルムとを有する偏光子を作製した。
分光光度計(UV3100PC)を用いて、偏光子の内側に実施例で作成したセルロースアシレートフィルムがくるように組み合わせて、25℃60%RHにおける380nm〜780nmの偏光板の単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTを測定し、400〜700nmの平均値、及び偏光度Pを求めたところ、TTは40.8〜44.7、PTは34〜38.8、CTは1.0以下、Pは99.98〜99.99であった。また、波長380nm、410nm、700nmにおける直交透過率CT(380)、CT(410)、CT(700)はそれぞれ、1.0以下、0.5以下、0.3以下であった。また60℃95%RH500時間の偏光板耐久性試験では−0.1≦ΔCT≦0.2、−2.0≦ΔP≦0の範囲にいずれも入り、60℃90%RHでは−0.05≦ΔCT≦0.15、−1.5≦ΔP≦0であった。
【0195】
このようにして作製した偏光板A1からA5を、その一部はそのまま防湿袋に入れて保管し、もう一部は25℃60%RHで2時間調湿後に防湿袋に入れて保管した。防湿袋はポリエチレンテレフタレート/アルミ/ポリエチレンの積層構造からなる包装材であり、透湿度は0.01mg/m2(24時間)以下であった。
【0196】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.5μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。液晶セルの大きさは20インチであった。ラビングは液晶セルの長辺に対して45°方向にした。
【0197】
(液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、光学補償フィルム(のみ)を有する偏光子と、光学補償フィルムと反射防止フィルムとを有する偏光子を貼り付けた。光学補償フィルムと反射防止フィルムとを有する偏光子が視認側である。偏光子の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0198】
(液晶表示装置の評価)
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。また、正面コントラスト(CR:白表示の輝度/黒表示の輝度)を求めた。
さらに、25℃80%RH、25℃10%RHに1週間放置した状態での視角特性、および80℃の環境に3日間放置した光漏れを調査した。
結果を表3に示す。
【0199】
【表3】






 

 


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