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発明の名称 センサー用基板
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−51886(P2007−51886A)
公開日 平成19年3月1日(2007.3.1)
出願番号 特願2005−235625(P2005−235625)
出願日 平成17年8月16日(2005.8.16)
代理人 【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
発明者 齋藤 祐弘 / 都築 博彦 / 久保 利昭
要約 課題
基板と薄膜との密着性を向上させ、プラスチック基板から薄膜が剥離することなく生理活性物質を固定化でき、生体分子間の相互作用分析時の非特異吸着の少ないセンサー用基板または容器を提供すること。

解決手段
プラスチック基板上に薄膜層を有し、薄膜成膜前にプラスチック基板が有機プライマー処理されていることを特徴とするセンサー用基板または容器。
特許請求の範囲
【請求項1】
プラスチック基板上に薄膜層を有するセンサー用基板であって、薄膜成膜前にプラスチック基板が有機プライマー処理されていることを特徴とするセンサー用基板。
【請求項2】
有機プライマー処理が、成型したプラスチック基板にプライマー剤を塗布することにより行われる、請求項1に記載のセンサー用基板。
【請求項3】
有機プライマー処理が、予めプラスチック材料に対して0.1質量%から10質量%となる量のプライマー剤を混錬した後にプラスチック基板を成型することにより行われる、請求項1に記載のセンサー用基板。
【請求項4】
有機プライマーが式:R1−X−R2
(式中、R1及びR2は互いに独立に、HまたはCn2n+1(nは1から30の整数)を示し、Xは、−C(=O)O−、−O−、−C=O−、−N(R)−(ここでRは水素原子又は低級アルキル基を示す)、又は−N(R2)N(R1)−(ここで、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)を示す。)
で示される化合物である、請求項1から3の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項5】
nが10から20の整数である請求項4に記載のセンサー用基板。
【請求項6】
薄膜の材料が金属または金属酸化物である請求項1から5の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項7】
薄膜の材料が、金、銀、銅、白金又はアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなるものである、請求項6に記載のセンサー用基板。
【請求項8】
バイオセンサー用基板である、請求項1から7の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項9】
非電気化学的検出に使用される請求項1から8の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項10】
表面プラズモン共鳴分析に使用される、請求項1から9の何れかに記載の基板。
【請求項11】
生理活性物質を固定化できる官能基を有するリンカー分子が真空成膜層表面に化学結合により結合している、請求項1から10の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項12】
生理活性物質を固定化できる官能基を有する高分子膜が真空成膜層表面に成膜されている、請求項1から10の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項13】
生理活性物質を固定化することができる官能基が、−OH、−SH、−COOH、−NR12(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−CHO、−NR3NR12(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基である、請求項11又は12に記載のセンサー用基板。
【請求項14】
プラスチック基板が実質的に透明である請求項1から13の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項15】
基板を構成するプラスチック材料がノルボルネン骨格を有する材料である、請求項1から14の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項16】
生理活性物質が共有結合により表面に結合している、請求項1から15の何れかに記載のセンサー用基板。
【請求項17】
プラスチック基板上に薄膜層を有する容器であって、薄膜成膜前にプラスチック基板が有機プライマー処理されていることを特徴とする容器。



発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に薄膜を有するプラスチック基板を用いたセンサー用基板及び容器、特に表面プラズモン共鳴分析バイオセンサーに用いるためのセンサー用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。SPR測定技術はチップの金属膜に接する有機機能膜近傍の屈折率変化を反射光波長のピークシフト又は一定波長における反射光量の変化を測定して求めることにより、表面近傍に起こる吸着及び脱着を検知する方法である。QCM測定技術は水晶発振子の金電極(デバイス)上の物質の吸脱着による発振子の振動数変化から、ngレベルで吸脱着質量を検出できる技術である。また、金の超微粒子(nmレベル)表面を機能化させて、その上に生理活性物質を固定して、生理活性物質間の特異認識反応を行わせることによって、金微粒子の沈降、配列から生体関連物質の検出ができる。
【0003】
上記した技術においては、いずれの場合も、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、当技術分野で最も使われている表面プラズモン共鳴(SPR)を例として、説明する。
【0004】
一般に使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)、蒸着された金属膜、及びその上に生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜からなり、その官能基を介し、金属表面に生理活性物質を固定化する。該生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
【0005】
生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜としては、金属と結合する官能基、鎖長の原子数が10以上のリンカー、及び生理活性物質と結合できる官能基を有する化合物を用いて、生理活性物質を固定化した測定チップが報告されている(特許文献1を参照)。また、金属膜と、該金属膜の上に形成されたプラズマ重合膜からなる測定チップが報告されている(特許文献2を参照)。
【0006】
一方、プラスチック基板上に薄膜を形成し、薄膜表面に生理活性物質を固定化できる処理を行う場合、プラスチック基板と薄膜との密着強度が不足し、基板から薄膜が剥離し、センサー製造時および生体分子間の相互作用分析時に、生体分子の基板への非特異的吸着が発生しやすいという問題があった。特に薄膜を水溶液、有機溶剤に接触させるとトラブルが多発する問題があった。
【0007】
【特許文献1】特許第2815120号
【特許文献2】特開平9−264843号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した問題を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、基板と薄膜との密着性を向上させ、プラスチック基板から薄膜が剥離することなく生理活性物質を固定化でき、生体分子間の相互作用分析時の非特異吸着の少ないセンサー用基板及び容器を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、プラスチック基板表面を有機プライマー処理した後に形成した薄膜表面に、生理活性物質を固定化できる処理を行うことで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、プラスチック基板上に薄膜層を有するセンサー用基板であって、薄膜成膜前にプラスチック基板が有機プライマー処理されていることを特徴とするセンサー用基板が提供される。
【0011】
好ましくは、有機プライマー処理は、成型したプラスチック基板にプライマー剤を塗布することにより行われる。
好ましくは、有機プライマー処理は、予めプラスチック材料に対して0.1質量%から10質量%となる量のプライマー剤を混錬した後にプラスチック基板を成型することにより行われる。
【0012】
好ましくは、有機プライマーは式:R1−X−R2
(式中、R1及びR2は互いに独立に、HまたはCn2n+1(nは1から30の整数)を示し、Xは、−C(=O)O−、−O−、−C=O−、−N(R)−(ここでRは水素原子又は低級アルキル基を示す)、又は−N(R2)N(R1)−(ここで、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)を示す。)
で示される化合物である。
【0013】
好ましくは、nは10から20の整数である。
【0014】
好ましくは、薄膜の材料は金属または金属酸化物である。
好ましくは、薄膜の材料は、金、銀、銅、白金又はアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなるものである。
【0015】
好ましくは、本発明のセンサー用基板は、バイオセンサー用基板である。
好ましくは、本発明のセンサー用基板は、非電気化学的検出に使用され、さらに好ましくは表面プラズモン共鳴分析に使用される。
【0016】
好ましくは、生理活性物質を固定化できる官能基を有するリンカー分子が真空成膜層表面に化学結合により結合している。
好ましくは、生理活性物質を固定化できる官能基を有する高分子膜は真空成膜層表面に成膜されている。
【0017】
好ましくは、生理活性物質を固定化することができる官能基は、−OH、−SH、−COOH、−NR12(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−CHO、−NR3NR12(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基である。
【0018】
好ましくは、プラスチック基板は実質的に透明である。
好ましくは、基板を構成するプラスチック材料はノルボルネン骨格を有する材料である。
好ましくは、本発明のセンサー用基板には、生理活性物質が共有結合により表面に結合している。
【0019】
本発明の別の側面によれば、プラスチック基板上に薄膜層を有する容器であって、薄膜成膜前にプラスチック基板が有機プライマー処理されていることを特徴とする容器が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、基板と金膜との接着性を向上させ、プラスチック基板から薄膜が剥離することなく生理活性物質を固定化でき、生体分子間の相互作用分析時の非特異吸着の少ない基板を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の基板は、有機プライマー処理したプラスチック基板上に真空成膜層を有する基板であって真空成膜後に液体と接触することを特徴とする基板から成ることを特徴とする。
【0022】
本発明で言う有機プライマーは、プラスチック基板表面と真空成膜薄膜との密着性を向上させる有機物を示す。樹脂系の有機プライマーとしては、エポキシ/フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、レゾルシノール系樹脂とゴムラテックス混合物などが挙げられる。また、低分子化合物も有機プライマーとしては使用することができる。低分子化合物の有機プライマーの場合、プラスチック基板に塗布するだけでなく、成型前のプラスチック材料と混練し成型することで基板表面にプライマー層を形成させることができる。好ましい低分子有機プライマー剤は、R1−X−R2で示すことができる。
【0023】
ここで、R1及びR2は互いに独立に、HまたはCn2n+1(nは1から30の整数)を示し、Xは、−C(=O)O−、−O−、−C=O−、−N(R)−(ここでRは水素原子又は低級アルキル基を示す)、又は−N(R2)N(R1)−(ここで、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)を示す。
【0024】
本明細書で言う低級アルキル基は、通常、炭素数1〜10程度のアルキル基を示し、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基を示し、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を示す。R1及びR2は互いに独立に、HまたはCn2n+1(nは10から20の整数)であることが特に好ましい。炭素鎖の場合、分岐がない直鎖構造のみで構成されていることが好ましい。
【0025】
有機プライマーを構成する炭素鎖が直鎖構造を有することで、プラスチック基板と薄膜との間で応力が加えられた場合も、剥離を緩和することができる。有機プライマー材料として好ましい例として、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級脂肪酸族アルコール類、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸などの高級脂肪酸類、ミリスチン酸nブチルなどの高級脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0026】
プライマー処理の方法としては塗布法を用いることができる。塗布は常法によって行うことができ、例えば、スピン塗布、エアナイフ塗布、バー塗布、ブレード塗布、スライド塗布、カーテン塗布、さらにはスプレー法、蒸着法、キャスト法、浸漬法等によって行うことができる。予めプラスチック材料に対して0.1質量%から10質量%となる量のプライマー剤を混錬した後にプラスチック基板を成型することも基板表面の有機プライマー処理として好ましい。この場合、プライマー剤が少ないとプラスチック基板と真空成膜層との接着強度が低下し、プライマー剤が多すぎるとプラスチック基板の光学特性、強度が低下するなどの問題が生じる。
【0027】
プラスチック基板は、実質的に透明であることで非電気化学的検出が可能で好ましい。好ましいプラスチック材料は、吸湿および吸水性が低く透明性の高い材料である。具体的にはノルボルネン骨格を有する材料である。
【0028】
プラスチック基板として好ましい例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。特にノルボルネン骨格を有する炭化水素系ポリマーが好ましい。
【0029】
薄膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、メッキ法等によって行うことができる。薄膜材料は金属または金属酸化物、半導体、有機物から選ばれる。好ましくは、薄膜材料は金属または金属酸化物であり、さらに好ましくは、金、銀、銅、白金又はアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなるものである。例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。それらの金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
【0030】
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、0.1nm以上500nm以下であるのが好ましく、特に1nm以上200nm以下であるのが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上10nm以下であるのが好ましい。
【0031】
薄膜成膜後、基板表面に生理活性物質を固定化することができるよう化学修飾することで、生体分子間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出することが可能となり有用である。この化学修飾は常法により、水溶液中または、有機溶剤中で基板表面に生理活性物質と共有結合を生成しうる官能基を導入できる。
【0032】
生理活性物質と共有結合を生成しうる好ましい官能基としては−OH、−SH、−COOH、−NR12(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−CHO、−NR3NR12(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基などが挙げられる。ここで、低級アルキル基における炭素数は特に限定されないが、一般的にはC1〜C10程度であり、好ましくはC1〜C6である。
【0033】
本発明で好ましく用いられるリンカー分子としては、アルブミン、カゼインなどの蛋白質、寒天、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体などの糖誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース化合物、キチン、キトサンなどの多糖類、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸などの合成親水性高分子などが挙げられる。親水性高分子化合物の基板へのコーティングは常法によって行うことができ、例えば、スピン塗布、エアナイフ塗布、バー塗布、ブレード塗布、スライド塗布、カーテン塗布、さらにはスプレー法、蒸着法、キャスト法、浸漬法等によって行うことができる。
【0034】
本発明で好ましく用いられる高分子膜材料としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられる。これらの高分子材料は、化学薬品、カップリング剤、界面活性剤、表面蒸着などを使用した化学処理、加熱、紫外線、放射線、プラズマ、イオンなどを使用した物理的処理から、表面修飾することが可能である。
【0035】
表面にそれらの官能基を導入する方法としては、それらの官能基の前駆体を含有する疎水性高分子を金属表面あるいは金属膜上にコーティングした後、化学処理により最表面に位置する前駆体からそれらの官能基を生成させる方法が挙げられる。例えば−COOCH3基を含有する疎水性高分子化合物であるポリメチルメタクリレートを金属膜上にコーティングした後、その表面をNaOH水溶液(1N)に40℃16時間接触させると、最表面に−COOH基が生成する。また、例えばポリスチレンコーティング層に、UVオゾン処理すると最表面に−COOH基および−OH基が発生する。
【0036】
通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
【0037】
上記のようにして得られたバイオセンサー用表面において、上記の官能基を介して生理活性物質を共有結合させることによって、金属表面又は金属膜に生理活性物質を固定化することができる。
【0038】
本発明のバイオセンサー用表面上に固定される生理活性物質としては、測定対象物と相互作用するものであれば特に限定されず、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいはリガンド結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。
【0039】
免疫蛋白質としては、測定対象物を抗原とする抗体やハプテンなどを例示することができる。抗体としては、種々の免疫グロブリン、即ちIgG、IgM、IgA、IgE、IgDを使用することができる。具体的には、測定対象物がヒト血清アルブミンであれば、抗体として抗ヒト血清アルブミン抗体を使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を抗原とする場合には、例えば抗アトラジン抗体、抗カナマイシン抗体、抗メタンフェタミン抗体、あるいは病原性大腸菌の中でO抗原26、86、55、111 、157 などに対する抗体等を使用することができる。
【0040】
酵素としては、測定対象物又は測定対象物から代謝される物質に対して活性を示すものであれば、特に限定されることなく、種々の酵素、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。具体的には、測定対象物がグルコースであれば、グルコースオキシダーゼを、測定対象物がコレステロールであれば、コレステロールオキシダーゼを使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を測定対象物とする場合には、それらから代謝される物質と特異的反応を示す、例えばアセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。
【0041】
微生物としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物を使用することができる。
核酸としては、測定の対象とする核酸と相補的にハイブリダイズするものを使用することができる。核酸は、DNA(cDNAを含む)、RNAのいずれも使用できる。DNAの種類は特に限定されず、天然由来のDNA、遺伝子組換え技術により調製した組換えDNA、又は化学合成DNAの何れでもよい。
低分子有機化合物としては通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられる。
【0042】
非免疫蛋白質としては、特に限定されることなく、例えばアビジン(ストレプトアビジン)、ビオチン又はレセプターなどを使用できる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインAあるいはプロテインG、リウマチ因子(RF)等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。
脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
【0043】
生理活性物質が抗体や酵素などの蛋白質又は核酸である場合、その固定化は、生理活性物質のアミノ基、チオール基等を利用し、金属表面の官能基に共有結合させることで行うことができる。
【0044】
上記のようにして生理活性物質を固定化したバイオセンサーは、当該生理活性物質と相互作用する物質の検出及び/又は測定のために使用することができる。
【0045】
即ち、本発明によれば、生理活性物質が固定化された本発明のバイオセンサーを用いて、これに被験物質を接触させることにより、該バイオセンサーに固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出及び/又は測定する方法が提供される。
被験物質としては例えば、上記した生理活性物質と相互作用する物質を含む試料などを使用することができる。
【0046】
本発明のセンサー用基板の好ましい用途としては、水溶液または有機溶剤に接触するセンサー用基板および容器である。接触する液体は、真空成膜層の表面修飾および生体活性物質の固定のめたpH8以上が好ましく、脱水反応、脱酸反応を実現させる目的で、接触する液体はpH10以上であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明における容器としては、液体(例えば、蛋白質等の生理活性物質や低分子化合物などの薬物などを含む液体など)を収容できる容器であればその形態は特に限定されないが、例えば、チューブ、又はプレート(例えば、96穴プレートなど)などを挙げることができる。
【0048】
本発明では、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用を非電気化学的方法により検出及び/又は測定することが好ましい。非電気化学的方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術などが挙げられる。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオセンサーは、例えば、透明基板上に配置される金属膜を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとして用いることができる。
【0050】
表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるバイオセンサーであって、該センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。
【0051】
表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
【0052】
表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置としては、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6−167443号公報参照)。上記の系を用いる表面プラズモン測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料液などの被測定物質に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
【0053】
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
【0054】
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
【0055】
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角(θSP)より表面プラズモンの波数が分かると、被測定物質の誘電率が求められる。この種の表面プラズモン測定装置においては、全反射減衰角(θSP)を精度良く、しかも大きなダイナミックレンジで測定することを目的として、特開平11−326194号公報に示されるように、アレイ状の光検出手段を用いることが考えられている。この光検出手段は、複数の受光素子が所定方向に配設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設されたものである。
【0056】
そしてその場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の配設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて全反射減衰角(θSP)を特定し、被測定物質の屈折率に関連する特性を求めることが多い。
【0057】
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
【0058】
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
【0059】
なおこの漏洩モード測定装置においても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段を用いることができ、またそれと併せて前述の微分手段が適用されることも多い。
【0060】
また、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置は、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモン測定装置の場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置の場合はクラッド層および光導波層)上に上記被測定物質としてセンシング物質を固定し、該センシング物質上に種々の被検体が溶媒に溶かされた試料液を添加し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角(θSP)の角度を測定している。
【0061】
試料液中の被検体が、センシング物質と結合するものであれば、この結合によりセンシング物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角(θSP)を測定し、該全反射減衰角(θSP)の角度に変化が生じているか否か測定することにより、被検体とセンシング物質の結合状態を測定し、その結果に基づいて被検体がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体、あるいは抗体と抗体が挙げられる。具体的には、ウサギ抗ヒトIgG抗体をセンシング物質として薄膜層の表面に固定し、ヒトIgG抗体を特定物質として用いることができる。
【0062】
なお、被検体とセンシング物質の結合状態を測定するためには、全反射減衰(θSP)の角度そのものを必ずしも検出する必要はない。例えばセンシング物質に試料液を添加し、その後の全反射減衰角(θSP)の角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。前述したアレイ状の光検出手段と微分手段を全反射減衰を利用した測定装置に適用する場合であれば、微分値の変化量は、全反射減衰角(θSP)の角度変化量を反映しているため、微分値の変化量に基づいて、センシング物質と被検体との結合状態を測定することができる(本出願人による特願2000−398309号参照)。このような全反射減衰を利用した測定方法および装置においては、底面に予め成された薄膜層上にセンシング物質が固定されたカップ状あるいはシャーレ状の測定チップに、溶媒と被検体からなる試料液を滴下供給して、上述した全反射減衰角(θSP)の角度変化量の測定を行っている。
【0063】
さらに、ターンテーブル等に搭載された複数個の測定チップの測定を順次行うことにより、多数の試料についての測定を短時間で行うことができる全反射減衰を利用した測定装置が、特開2001−330560号公報に記載されている。
【0064】
本発明のバイオセンサーを表面プラズモン共鳴分析に使用する場合、上記したような各種の表面プラズモン測定装置の一部として適用することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1:本発明の基板(1)
ゼオネックス(日本ゼオン社製)のペレットを240℃で溶解し、この溶融物を射出成型器で縦8mm×横120mm×1.5mmの基板を成型した。この基板を縦30mm×横130mm×深さ10mmの密閉構造を有するアルミニウム容器内にセットした。このアルミニウム容器を密閉式インナーカップを有するスピンコート機(MODEL SC408(特)、ナノテック社製)のインナーカップ上に金表面基板が中心から135mmの位置に円弧の接線方向が長軸となるよう固定した。マイクロピペットを用いてこの基板上に0.2%の12−ヒドロキシステアリン酸のエタノール溶液を100μL滴下し、金表面基板全面を塗布液Aで被覆した。アルミニウム容器を密閉し、30秒間静置した後、200rpmで60秒間回転させた。この基板に平行平板型6インチ用スパッタ装置(SH−550、アルバック(株)社製)を用いて基板上に金の厚さが50nmに
なるようにスパッタ製膜を行い、本発明の基板(1)を作製した。
【0066】
実施例2:本発明の基板(2)
12−ヒドロキシステアリン酸の代わりに、パルミチルアルコールを使用したこと以外実施例1と同じ方法で本発明の基板(2)を作製した。
【0067】
実施例3:本発明の基板(3)
ゼオネックス(日本ゼオン社製)のペレットに添加量が1質量%となるよう12−ヒドロキシステアリン酸を添加し、240℃で溶解、混合した。この溶融物を射出成型器で縦8mm×横120mm×1.5mmの基板を成型した。この基板に平行平板型6インチ用スパッタ装置(SH−550、アルバック(株)社製)を用いて基板上に金の厚さが5
0nmになるようにスパッタ製膜を行い、本発明の基板(3)を作製した。
【0068】
比較例:比較例の基板
12−ヒドロキシステアリン酸を添加しないこと以外、実施例3と同じ方法で比較例の基板を作製した。
【0069】
試験例1:金膜密着性評価
本発明の基板(1)、(2)および(3)、比較例の基板について、エタノール/水(80/20)中11−ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールの5.0mM溶液を基板の金膜に接触するように添加し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄を行った。
【0070】
次に、11−ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールで被覆した表面を10質量%のエピクロロヒドリン溶液(溶媒:0.4M水酸化ナトリウム及びジエチレングリコールジメチルエーテルの1:1混合溶液)に接触させ、25℃の振盪インキュベーター中で4時間反応を進行させた。表面をエタノールで2回、水で5回洗浄した。
【0071】
次に、25質量%のデキストラン(T500,Pharmacia)水溶液40.5mlに4.5mlの1M水酸化ナトリウムを添加し、その溶液をエピクロロヒドリン処理表面上に接触させた。次に振盪インキュベーター中で25℃で20時間インキュベートした。表面を50℃の水で10回洗浄した。続いて、ブロモ酢酸3.5gを27gの2M水酸化ナトリウム溶液に溶解した混合物を上記デキストラン処理表面に接触させて、28℃の振盪インキュベーターで16時間インキュベートした。表面を水で洗浄し、その後上述の手順を1回繰り返した。このように作製した基板をデキストラン固定化基板と呼ぶ。
【0072】
作製したデキストラン基板の金膜表面を光学顕微鏡で200倍の倍率で金膜表面を観察した。実施例の基板(1)、(2)および(3)は金膜がゼオネックス基板から剥離は観察されず、密着性は良好であった。一方、比較例の基板は、10μm径程度の金膜の剥離部が1mm2当り10個観察され、接着性不良であった。
【0073】
試験例2:非特異吸着防止性能の評価
バイオセンサー表面に対する非特異的な蛋白質の吸着はノイズの原因となるため、極力少ないほうが好ましい。試験例1で作製したデキストラン固定化基板を用いて、IL8の非特異吸着性を測定した。
【0074】
試験例1で作製したデキストラン固定化基板を特開2001−330560号公報の図22に記載の装置(以下、本発明の表面プラズモン共鳴装置と呼ぶ)に設置した。HBS−Nバッファー(ビアコア社製)を基板に添加し20分間静置後、IL8溶液(1mg/ml、HBS−Nバッファー)を基板に添加し10分間静置した。なお、HBS-Nバッファーの組成は、HEPES(N-2-Hydroxyethylpiperazine-N'-2-ethanesulfonicAcid)0.01mol/l(pH7.4)、NaCl0.15mol/lである。その後、HBS−Nバッファーで洗浄し、3分後の共鳴シグナル(RU値)変化量をIL8の非特異吸着量とした。測定結果を表1に示した。表1の結果から、本発明の基板を用いたバイオセンサーは、蛋白質の非特異吸着が非常に少ないことが表面プラズモン共鳴で確認できた。
【0075】
【表1】


【0076】
本発明の基板は製造時のプラスチック基板上の薄膜の剥離を防止し、生体分子間の相互作用分析時の非特異吸着の少ない基板を提供することができることが実証された。




 

 


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