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発明の名称 微小薄膜可動素子および微小薄膜可動素子アレイ並びに微小薄膜可動素子アレイの駆動方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−33787(P2007−33787A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−215925(P2005−215925)
出願日 平成17年7月26日(2005.7.26)
代理人 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平
発明者 望月 文彦 / 荻窪 真也 / 中村 博親
要約 課題
プルイン時に発生する振動を低減して、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮できる微小薄膜可動素子および微小薄膜可動素子アレイ並びに微小薄膜可動素子アレイの駆動方法を提供し、微小薄膜可動素子動作の高速化を図る。

解決手段
弾性変位可能に支持され少なくとも一部に可動電極28を有する可動部と、可動部に対峙して配置された固定電極とを有し、可動電極28と固定電極35a、35bに印加する電圧に応じた静電気力によって可動部27を変位させる微小薄膜可動素子100であって、可動電極28と固定電極35a、35bに印加する電圧を、静的プルイン電圧と等しくまたはそれより小さく、かつ最小動的プルイン電圧と等しくまたはそれより大きい範囲に設定した。
特許請求の範囲
【請求項1】
弾性変位可能に支持され少なくとも一部に可動電極を有する可動部と、該可動部に対峙して配置された固定電極とを有し、前記可動電極と前記固定電極に印加する電圧に応じた静電気力によって前記可動部を変位させる微小薄膜可動素子であって、
前記可動部を変位させる際に印加する電圧が、前記可動部の変位量に応じて発生する抵抗力に抗して前記可動部を前記固定電極側に接触させる静的プルイン電圧以下であり、かつ、前記可動部の動作に応じて発生する慣性力と併せて前記可動部を前記固定電極側に接触させる最小動的プルイン電圧以上の範囲にあることを特徴とする微小薄膜可動素子。
【請求項2】
前記固定電極が基板に設けられ、前記可動電極が該基板に間隙を有して支持された薄膜状の前記可動部に設けられ、該可動部が前記基板に対して略平行に接近及び離反動作されることを特徴とする請求項1記載の微小薄膜可動素子。
【請求項3】
前記固定電極が基板に設けられ、前記可動電極が該基板に間隙を有しかつ支持部を介して支持された薄膜状の前記可動部に設けられ、該可動部が前記支持部を中心に回動されることを特徴とする請求項1記載の微小薄膜可動素子。
【請求項4】
前記可動部が反射面を有し、該可動部の反射面に入射された光が変調されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の微小薄膜可動素子。
【請求項5】
前記可動部が短絡接点を有し、該可動部の短絡接点が前記基板に設けられた入力端子と出力端子とを開閉して高周波信号の接続および切換を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の微小薄膜可動素子。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の微小薄膜可動素子を1次元または2次元配列したことを特徴とする微小薄膜可動素子アレイ。
【請求項7】
請求項6記載の微小薄膜可動素子アレイの駆動方法であって、
配列される全ての前記微小薄膜可動素子の前記可動部を、前記電圧に応じた静電気力によって一律に前記固定電極に引き寄せた後、個々の前記微小薄膜可動素子を任意に動作させることを特徴とする微小薄膜可動素子アレイの駆動方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動電極と固定電極に印加する電圧に応じた静電気力によって可動部を変位させる微小薄膜可動素子および微小薄膜可動素子アレイ並びに微小薄膜可動素子アレイの駆動方法に関し、例えば光通信、露光装置、プロジェクター、光スイッチ、スキャナー、RFスイッチ、アクチュエータ、マルチプレクサ等に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS技術(MEMS;Micro-Electro Mechanical Systems)の急速な進歩により、μmオーダーの微小薄膜を電気的に変位・移動させる微小薄膜可動素子の開発が盛んに行われている。この微小薄膜可動素子には、例えばマイクロミラーを傾けて光の偏向を図るデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)や、光路を切り換える光スイッチなどがある。DMDは、光学的な情報処理の分野において、投射ディスプレイ、ビデオ・モニター、グラフィック・モニター、テレビおよび電子写真プリントなど用途が広い。また、光スイッチは、光通信、光インタコネクション(並列コンピュータにおける相互結合網など光による信号接続技術)、光情報処理(光演算による情報処理)などへの応用が期待されている。
【0003】
微小薄膜可動素子は、一般的に弾性変位可能に支持され双方向に変位する可動部を備え、この可動部が主にスイッチング動作を担う。したがって、可動部の制動制御は、良好なスイッチング動作を行う上でも特に重要となる。
【0004】
例えば、下記特許文献1に開示されるマイクロミラー装置は、一対の駆動電極のうち一方の電極に電圧を印加し、これら電極間にヒンジ接続により配置されたミラーを有する可動部を、駆動電極との間の電位差および静電容量に応じた静電引力により回転させる構成としている。
【0005】
また、下記特許文献2に開示される光スイッチの切替制御方法は、制御電圧のオン、オフにより変位する振動部材と、この振動部材の先端に振動部材が変位することにより伝搬光を反射または遮断するエレメントを備えた光スイッチにおいて、上記の制御電圧をオンする前に、振動部材の固有振動周期より短い第1の予備電圧パルスを振動部材に印加し、制御電圧をオフにした後に、振動部材の固有振動周期より短い第2の予備電圧パルスを振動部材に印加している。
【0006】
一般的に光スイッチでは、制御電圧をオン、オフして振動部材が変位するとき、チャタリングと呼ばれる現象が生じる。このチャタリングは、制御電圧をオンまたはオフにした後に、振動部材が直ちにその制御電圧に対応した変位量分、変化するのではなく、大きな減衰振動をしながら、最終的に制御電圧に対応した変位量分、変位する現象である。したがって、この振動が減衰し、光出力が一定レベルになるまでは、光路を切り換えたことにならず、光スイッチの切り換え速度が制限されてしまう問題があった。これに対し、本従来例による光スイッチの切替制御方法では、振動部材の固有振動周期より短い予備電圧パルスを、制御電圧をオンする前とオフにした後に振動部材に印加することで、チャタリングを制御し、光スイッチの切り換え速度の向上を図っている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−334709号公報
【特許文献2】特開平2−7014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるマイクロミラー装置では、駆動電極のうちの一方に電圧を印加し、可動部と駆動電極との間の電位差および静電容量に応じた静電引力を発生させ、可動部を回転させる。このため、図32(a)に示すように、電圧Vaの印加によってマイクロミラーが接触位置へ遷移して、接触位置に着地した直後、接触部材からの反力を受けることで振動が生じた。そして、振動が生じれば、光が制御媒体である場合、揺らぎが生じる。このため、静電動作によって立ち上がりの速い微小薄膜可動素子であっても、振動が収まるまで待つ必要があり、結局動作速度が遅くなる問題があった。また、マイクロミラーが接触位置に着地しない非接触構造の場合であっても、図32(b)に示すように、所望の回転角度(収束位置)を超えてオーバーシュートが発生することで、振動の鎮静化までに時間を要した。これらの振動やオーバーシュートは、微小薄膜可動素子のスイッチング動作における高速化の妨げとなっていた。
【0009】
また、特許文献2に開示される光スイッチの切替制御方法は、制御電圧をオン、オフする前に、第1の予備電圧パルス、第2の予備電圧パルスを振動部材に印加し、1つの可動部電極と1つの固定電極により静電気力を単一方向に働かせ、可動支持部の弾性力および慣性力との力のつり合いにより可動部駆動時の振動を抑えようとするものであり、可動部遷移方向に働く順方向のみの静電気力(電位差)を変化させるため、振動抑制効果が小さい問題があった。一般的に、光通信用の光スイッチにおいては、DMDと異なり、任意の角度で位置だしされるために自由振動の収束までに非常に時間がかかる。また、レーザ光などの光情報を出射側のファイバに反射させて入射させるため、高い制御精度が求められるが、可動部(ミラー部)の振動が上記したチャタリングとしてノイズの原因となる。このように、特に光スイッチの場合、振動の影響はDMDもより大きく、重大な課題となっていた。
【0010】
さらに、微小薄膜可動素子には、可動部が短絡接点を有し、この可動部の短絡接点が基板に設けられた入力端子と出力端子とを開閉してRF(高周波)信号の接続および切換を行うRFスイッチがある。このRFスイッチにおいても、可動部の動作速度が、数十secではバウンドは生じないが、5μsec程度になると可動部にバウンドが生じる。そして、可動部にバウンドが生じると、上記同様のチャタリングが発生し、動作不良を起こす原因となった。このため、より小さく、確実な動作が高速で可能となるRFスイッチの要請があった。
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、プルイン時に発生する振動を低減して、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮できる微小薄膜可動素子および微小薄膜可動素子アレイ並びに微小薄膜可動素子アレイの駆動方法を提供し、もって、微小薄膜可動素子動作の高速化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 弾性変位可能に支持され少なくとも一部に可動電極を有する可動部と、該可動部に対峙して配置された固定電極とを有し、前記可動電極と前記固定電極に印加する電圧に応じた静電気力によって前記可動部を変位させる微小薄膜可動素子であって、前記可動部を変位させる際に印加する電圧が、前記可動部の変位量に応じて発生する抵抗力に抗して前記可動部を前記固定電極側に接触させる静的プルイン電圧以下であり、かつ、前記可動部の動作に応じて発生する慣性力と併せて前記可動部を前記固定電極側に接触させる最小動的プルイン電圧以上の範囲にあることを特徴とする微小薄膜可動素子。
【0013】
この微小薄膜可動素子では、静的プルイン電圧より大きい電圧が印加されることにより生じる過剰な静電気力が発生せず、また、最小動的プルイン電圧より小さい電圧が印加されることにより生じる静電気力不足が発生せず、必要最小限の静電気力が可動部に作用することになる。これによって従来可動部が大きな速度で最終変位位置へ到達することで生じていた衝突による振動が抑止可能となる。したがって、構造は従来のままで、振動鎮静化時間を無くし或いは大幅に短縮することが可能となる。
【0014】
(2) 前記固定電極が基板に設けられ、前記可動電極が該基板に間隙を有して支持された薄膜状の前記可動部に設けられ、該可動部が前記基板に対して略平行に接近及び離反動作されることを特徴とする(1)記載の微小薄膜可動素子。
【0015】
この微小薄膜可動素子では、可動部と基板とによって所謂、平行平板型の素子が構成され、可動電極と固定電極とに電圧が印加されると、静電気力によって可動部が基板へ接近する方向へ平行移動され、最終変位位置で基板へ接触する。この際、過剰な静電気力が発生せず、衝突による可動部の振動が抑止され、振動鎮静化時間をなくし或いは大幅に短縮して、可動部の高速変位が可能となる。
【0016】
(3) 前記固定電極が基板に設けられ、前記可動電極が該基板に間隙を有しかつ支持部を介して支持された薄膜状の前記可動部に設けられ、該可動部が前記支持部を中心に回動されることを特徴とする(1)記載の微小薄膜可動素子。
【0017】
この微小薄膜可動素子では、基板の上面に、支持部を中央とした一対の固定電極が設けられ、可動部に可動電極が設けられる。一対の固定電極、可動電極に電圧が印加されると、静電気力によって可動部が支持部を中心に揺動変位され、最終変位位置で基板へ接触する。この際、過剰な静電気力が発生せず、衝突による可動部の振動が抑止され、振動鎮静化時間をなくし或いは大幅に短縮して、可動部の高速変位が可能となる。
【0018】
(4) 前記可動部が反射面を有し、該可動部の反射面に入射された光が変調されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の微小薄膜可動素子。
【0019】
この微小薄膜可動素子では、固定電極、可動部へ電圧が印加されると、可動部が揺動変位され、可動部の反射面に入射した光の反射方向が偏向される。この際、過剰な静電気力が発生せず、衝突による可動部の振動が抑止され、振動鎮静化時間をなくし或いは大幅に短縮して、可動部の高速変位が可能となり、その結果、高速の光変調が可能となる。
【0020】
(5) 前記可動部が短絡接点を有し、該可動部の短絡接点が前記基板に設けられた入力端子と出力端子とを開閉して高周波信号の接続および切換を行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の微小薄膜可動素子。
【0021】
この微小薄膜可動素子では、可動電極、固定電極に電圧が印加されると、静電気力によって可動部が変位され、最終変位位置で可動部の短絡接点が基板の入力端子と出力端子とに同時に接触し、入力端子と出力端子とを閉じる。この際、過剰な静電気力が発生せず、衝突による可動部の振動が抑止され、振動鎮静化時間をなくし或いは大幅に短縮して、可動部の高速動作が可能となり、その結果、RF(高周波)信号の高速接続および高速切換が可能となる。
【0022】
(6) (1)〜(5)のいずれか1項記載の微小薄膜可動素子を1次元または2次元配列したことを特徴とする微小薄膜可動素子アレイ。
【0023】
この微小薄膜可動素子アレイでは、個々の微小薄膜可動素子が必要最小限の静電気力で作動され、振動が低減されてアレイ全体の高速動作が可能となる。また、例えば光通信用の光スイッチアレイでは高精度が求められるため、個々の素子のばらつきに起因する作動誤差の補正が必要となるが、本微小薄膜可動素子アレイでは、補正に対応させて個々の微小薄膜可動素子の印加電圧が変更可能となる。
【0024】
(7) (6)記載の微小薄膜可動素子アレイの駆動方法であって、配列される全ての前記微小薄膜可動素子の前記可動部を、前記電圧に応じた静電気力によって一律に前記固定電極に引き寄せた後、個々の前記微小薄膜可動素子を任意に動作させることを特徴とする微小薄膜可動素子アレイの駆動方法。
【0025】
この微小薄膜可動素子アレイの駆動方法では、電圧非印加時に生じている個々の素子の個体差による可動部の変位バラツキが除去可能になる。これにより、可動部がバラツキの無い状態からの一律に制御可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る微小薄膜可動素子によれば、可動電極と固定電極に印加する電圧に応じた静電気力によって可動部を変位させる微小薄膜可動素子において、可動電極と固定電極に印加する電圧が、静的プルイン電圧と等しくまたはそれより小さく、かつ最小動的プルイン電圧と等しくまたはそれより大きい範囲にあるので、静的プルイン電圧より大きい電圧が印加されることにより生じる過剰な静電気力が発生せず、必要最小限の静電気力を可動部に作用させることができる。したがって、構造は従来のままで、プルイン時に発生する振動を低減することができる。この結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、微小薄膜可動素子を高速動作させることができる。
【0027】
本発明に係る微小薄膜可動素子アレイによれば、請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の微小薄膜可動素子を1次元または2次元配列したので、個々の微小薄膜可動素子を必要最小限の静電気力で作動させ、振動を低減してアレイ全体の高速動作が可能となる。これにより、例えば高速な感光材露光や、より高画素数のプロジェクタ表示等が可能となる。また、光通信用の光スイッチアレイでは高精度が求められるため、個々の素子のばらつきに起因する作動誤差の補正が必要となるが、本微小薄膜可動素子アレイによれば、補正に対応させて個々の微小薄膜可動素子の印加電圧を変えることで、作動誤差の補正を容易に行うことができる。
【0028】
本発明に係る微小薄膜可動素子アレイの駆動方法によれば、配列される全ての微小薄膜可動素子の可動部を、電圧に応じた静電気力によって一律に固定電極に引き寄せた後、個々の微小薄膜可動素子を任意に動作させるので、電圧非印加時に生じている個々の素子の個体差による可動部の変位バラツキを除去することができ、バラツキの無い状態からの一律の制御が可能となる。この結果、個々の微小薄膜可動素子の作動誤差を無くすことができ、全ての微小薄膜可動素子を均一に作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る微小薄膜可動素子および微小薄膜可動素子アレイ並びに微小薄膜可動素子アレイの駆動方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る微小薄膜可動素子の第1の実施の形態を(a),(b)で表す概念図、図2は図1に示した微小薄膜可動素子の静的プルイン電圧印加時の動作過程を(a),(b),(c)で表した動作説明図、図3は静的プルイン電圧印加時の可動部に作用する変位量と駆動電圧の相関を表した説明図、図4は図1に示した微小薄膜可動素子の動的プルイン電圧印加時の動作過程を(a),(b),(c)で表した動作説明図である。
【0030】
本実施の形態による微小薄膜可動素子100は、基本的な構成要素として、基板21と、基板21に空隙23を介して平行に配置される小片状の可動部27と、可動部27の両縁部から延出される支持部であるヒンジ29、29と、このヒンジ29、29を介して可動部27を基板21に支持するスペーサ31、31とを備える。このような構成により、可動部27は、ヒンジ29、29の捩れによって回転変位が可能となっている。
【0031】
微小薄膜可動素子100は、可動部27の上面が光反射部(マイクロミラー部)となる。この他、本発明に係る微小薄膜可動素子は、可動部27の材質を適宜選択し、或いは短絡接点等を付設することにより、音波、流体、熱線のスイッチング、或いはRF信号のスイッチングも可能にすることができる。
【0032】
本実施の形態において、可動部27は、特定方向の変位の最終位置に到達するに際し、基板21や図示しない停止部材に接触して停止する。つまり、接触型の微小薄膜可動素子を構成している。
【0033】
基板21の上面には、ヒンジ29、29を中央として両側に固定電極である第1アドレス電極35aと第2アドレス電極35bが設けられる。また、可動部27にもその一部に可動電極28が設けられている。微小薄膜可動素子100には基板21中に駆動回路37が設けられ、駆動回路37は可動部27と第1アドレス電極35aとの間、可動部27と第2アドレス電極35bとの間に電圧を印加する。微小薄膜可動素子100は、基本動作として、第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35b、可動部27へ電圧を印加することによって、ヒンジ29、29を捩り中心として可動部27を揺動変位させる。つまり、可動部27がマイクロミラー部であることにより、光の反射方向がスイッチングされる。
【0034】
微小薄膜可動素子100では、可動部27に対し、第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35bに電位差を与えると、それぞれの電極と、可動部27との間に静電気力が発生し、ヒンジ29、29を中心に回転トルクが働く。この際に発生する静電気力は、真空中の誘電率、可動部27の面積、印加電圧、可動部27とアドレス電極の間隔に依存する。
【0035】
したがって、真空中の誘電率、可動部27の面積、可動部27とアドレス電極の間隔、ヒンジ29、29の弾性係数が一定である場合、可動部27は、それぞれの電極の電位を制御することにより、左右に回転変位可能となる。例えば、Va>Vbのときには、第1アドレス電極35aと可動部27に発生する静電気力が、第2アドレス電極35bと可動部27に発生する静電気力より大きくなり、可動部27が左側に傾く。逆に、Va<Vbのときは、第2アドレス電極35bと可動部27に発生する静電気力が、第1アドレス電極35aと可動部27に発生する静電気力より大きくなり、可動部27がは右側に傾く。
【0036】
このように、可動部27の可動電極、第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35bは、可動部27を回転変位させる駆動源となっている。このような駆動源から可動部27へ加えられる物理的作用力が、静電気力となることで、高速な回転変位が可能となっている。
【0037】
なお、可動部27に作用させる物理的作用力は、静電気力以外の物理的作用力であってもよい。その他の物理的作用力としては、例えば、圧電体による効果や電磁力を挙げることができる。この場合、駆動源としては、圧電素子を用いた圧電型アクチュエータや、マグネット・コイルを用いた電磁型アクチュエータが採用される。
【0038】
このように、微小薄膜可動素子100は、双方向に変位する可動部27を備え、この可動部27がスイッチング機能を有する。可動部27は、物理的作用力を加える複数の駆動源(可動部27の可動電極28、第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35b)によって回転変位される。本実施の形態による微小薄膜可動素子100は、物理的作用力として静電気力が作用する。この静電気力が可動部27を、重力、ヒンジ29、29の弾性力に抗して基板21側へと引き付ける。このようにして静電気力によって可動部27が揺動変位して、揺動先端が基板21へと吸着される(張り付く)状態をプルイン(Pull-in)と称す。即ち、可動部27は、可動電極28、第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35bに印加されるPull-in電圧によって発生する静電気力で変位される。
【0039】
ここで、Pull-in電圧は、後に詳述するように、静的Pull-in電圧と、動的Pull-in電圧とに分けることができる。図2(a)に示すように、静電気力が作用していない場合、可動部27は平衡状態となる。静電気力が作用し、静電トルクT1がヒンジ29、29の捩りトルクTmより小さい場合(Tm>T1)には、可動部27は図2(b)に示すように傾斜するが吸着には至らない。一方、静電トルクT1が捩りトルクTmを上回った瞬間(Tm<T1)、可動部27は図2(c)に示すように基板21へ吸着されるPull-in状態となる。このときの電圧が静的Pull-in電圧となる。
【0040】
ここで、図3に示すように、静的Pull-in電圧Vpに達する前は、アナログ制御領域と言われ、2値では制御されない。即ち、無段階的なアナログ制御が可能な領域となる。また、Pull-in状態での変位量をε2,Pull-in電圧印加時の変位量をε1とすると、ε1≒ε2/3の関係が成り立つ。即ち、可動部27は、変位の1/3までは吸着されない。これは1/3則と呼ばれる。
【0041】
したがって、静的Pull-in電圧Vpを印加すれば、可動部27は、ヒンジ29、29の捩りトルクTmに静電トルクT1が打ち勝って、基板21側へ張り付く。このため、静的Pull-in電圧Vpより大きな電圧の印加は不要であり、これを超える過剰な電圧を印加すれば、可動部27が基板21側へ衝突した際の反力が増大し、振動が増加することとなる。
【0042】
また、図4(a)に示すように、静電気力が作用していない場合、可動部27は平衡状態となる。静電気力が作用し、静電トルクT1と慣性力Tkとの和が、ヒンジ29、29の捩りトルクTmより小さい場合(Tm>T1+Tk)には、可動部27は図4(b)に示すように傾斜するが吸着には至らない。一方、静電トルクT1と慣性力Tkとの和が捩りトルクTmを上回った瞬間(Tm<T1+Tk)、可動部27は図4(c)に示すように基板21へ吸着されるPull-in状態となる。このときの電圧が動的Pull-in電圧となる。
【0043】
動的Pull-in電圧は、慣性力が考慮されているため、静的Pull-in電圧より小さい値となる。但し、慣性力は、印加電圧によっても変化するし、可動部27等の寸法、質量によっても変化する。つまり、動的Pull-in電圧は、素子毎、駆動方法毎によっても変化する。さらに、動的Pull-inは、ブレーキ力として作用する空気抵抗等の影響もあるが、その作用は僅かなことから無視できる程度である。
【0044】
静的Pull-in電圧と動的Pull-in電圧とは、慣性力Tkの分、常に静的Pull-in電圧>動的Pull-in電圧の関係が成り立つ。ここで、駆動電圧が動的Pull-in電圧より小さければ可動部27は相手側(基板21側)に張り付かない。また、動的Pull-in電圧より駆動電圧が大きくなると、可動部27が基板21側へ接触する際の振動が駆動電圧の増大に伴って徐々に大きくなる。さらに、可動部27が停止状態では、駆動電圧が静的Pull-in電圧以下であると、可動部27は基板21側へは張り付かない。
【0045】
本実施の形態による微小薄膜可動素子100では、可動部27を変位駆動させるための電圧が、静的Pull-in電圧と等しくまたはそれより小さく、かつ最小動的Pull-in電圧と等しくまたはそれより大きい範囲にある。
即ち、静的Pull-in電圧≧駆動電圧≧最小動的Pull-in電圧の式を満たす。このような範囲に駆動電圧を設定することで、必要以上の静電気力を発生させないようにし、プルイン時における可動部27の振動を低減している。つまり、必要最小限の電圧印加で振動発生を防止している。これは、図3に示したアナログ制御領域を超えたε1からε2までの変位領域での駆動電圧を調整して行われる。
【0046】
次に、微小薄膜可動素子100の駆動シーケンスを具体的に説明する。
図5は本発明に係る駆動方法の可動部の挙動を表した説明図、図6は本発明に係る駆動方法の駆動シーケンスの説明図である。
図5(A)に示すように、微小薄膜可動素子100は、初期状態において例えば可動部27が左側(図5の左側)に傾斜している。このとき、可動電極28には図6に示すように、一定の共通電圧Vb(+20V)が印加されている。一方、第1アドレス電極35aに印加されるアドレス電圧Va1(0V)は、第2アドレス電極35bに印加されるアドレス電圧Va2(+5V)より小さく設定されている(Va1<Va2)。したがって、可動部27の左側の電極間電圧(|Vb−Va1|=ΔV1=20V)が、右側の電極間電圧(|Vb−Va2|=ΔV2=15V)より大きくなる(ΔV1>ΔV2)。これにより、可動部27は静電気力による右回りの静電トルクTR2とヒンジ29、29の弾性復元力TReの総和より、左回りの静電トルクTR1が大きくなって左側へ傾く。
【0047】
次いで、図5(B)、図6に示すように、共通電圧Vbはそのままで、第1アドレス電極35aと第2アドレス電極35bとに印加される電圧が反転される(Va1>Va2)。即ち、第1アドレス電極35aにアドレス電圧Va1(5V)を印加し、第2アドレス電極35bにアドレス電圧Va2(0V)を印加して、次の変位信号の書込みTwを行う。この際、電極間電圧は(ΔV1=15V)<(ΔV2=20V)となって右側が大きくなるが、ラッチ状態に保持されたままとなる。
【0048】
この状態から例えば可動部27を右傾斜へ遷移させる駆動シーケンスでは、まず、第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35bへのアドレス電圧(Va1>Va2)はそのままにして、図6の符号(C)位置に示すように、共通電圧Vbのみを下げる(例えばVb=5V)。すると、可動部27の左側での静電気力が消失し(ΔV1=0)、右側では僅かな静電気力が働き(ΔV2=5V)、これにヒンジ29、29の弾性復元力が加わって、図5(C)に示すように、可動部27の左側が浮上し、左傾斜の保持が解除された状態となる。
【0049】
次いで、図6の符号(D)位置に示すように、共通電圧Vbを元の一定値(Vb=20V)に戻した後、共通電圧Vbを減少させる(例えばVb=5V)共通制御を行う。即ち、可動部27が最終変位位置である右側の着地サイト39に到達する前に、可動電極28と第2アドレス電極35bとの間の電極間電圧の絶対値を減少させる(ΔV2=5V)。これにより、可動部27が着地サイト39へ到達する直前の速度が減速される。
【0050】
次いで、共通電圧Vbを元の一定値(Vb=20V)に戻すと、可動部27の右側の電極間電圧(ΔV2=20V)が左側の電極間電圧(ΔV1=15V)より大きくなり、図5(D)に示すように、可動部27が右傾斜へと遷移する。可動部27は、右傾斜へ遷移すると、第2アドレス電極35bとの距離が短くなることで、静電気力が相乗的に大きくなり、今度は右側が着地サイト39に着地した状態に保持される。
【0051】
可動部27は、右側が着地した直後、着地サイト39からの反力を受けることで振動が生じる。そのため、次の書込みは、スイッチ時間Trの経過の後、さらに振動鎮静化時間Tsを待った後行われる。共通電圧Vbの減少から次の書込みまでの時間(Td=Tr+Ts)は、微小薄膜可動素子100に依存する固有の時間となる。また、図6中、Tbは、前の書込みが終って次の書込みが始まる時間を示す。したがって、微小薄膜可動素子100では、書込み時間Twと、前の書込みが終って次の書込みが始まる時間Tbとの総和時間(駆動サイクル)Tc=Tw+Tbが繰り返されることで、1ブロック分(1行分)の書込みが行われる。
【0052】
ここで、可動部27は、右側が着地する際、速度が必要最小限に減速されるため、着地サイト39からの大きな反力を受けることがなく、振動を生じさせずに、図5(E)に示す状態でのラッチが可能となる。この状態で、駆動回路37が次の変位信号を固定電極35へ出力し、図6の符号(E)位置に示すように、次の変位信号の書込みTwを行う。
【0053】
次に、静的Pull-in電圧、動的Pull-in電圧について詳細に説明する。
可動部27の振動は、一般的な運動方程式に従う。なお、ここでは説明を簡単にするため直線運動系を中心に記述することとする。変位量をxとしたときの運動方程式は(1)式で表せる。
m・d2x/dt2+c・dx/dt+k・x=F ・・・(1)
但し、
m:質量、c:粘性減衰係数、k:弾性定数、F:外力(静電気力)
回転運動系では、(1)式の各項を回転モーメントとして考えればよい。
【0054】
(I)静的Pull-in電圧
可動部27が時間的な変化を持たない為、慣性力・粘性力は共にゼロとおくことができる。その場合に、変位量xがとれる範囲内で、(1)式における k・x=F が成立しなくなる電圧を静的Pull-in電圧という。
図7は静的Pull-in電圧を説明するための電圧と変位の関係を概念的に示すグラフである。図7に示すように、電圧の増加に伴って変位が漸増し、ある電圧値に達したときに一気に最大変位位置まで変位して可動部27が相手側部材に接触する。この電圧値が静的Pull-in電圧となる。
【0055】
(II)動的Pull-in電圧
前述の動的Pull−in電圧のうち、可動部27が時間的変化を持つ移動時の場合、可動部27が最大変位位置に達して慣性力・粘性力がゼロとなる点において、(1)式における k・x=F が成立しなくなる電圧が動的Pull-in電圧の中で最も低い電圧(最小動的Pull−in電圧)となる。即ち、最小動的Pull-in電圧とは、慣性力と粘性力が共にゼロとなる可動部27の最大変位時に、可動部27がPull-in動作をする電圧である。
【0056】
図8は最小動的Pull-in電圧を説明するための変位量の時間変化を概念的に示すグラフでる。図8に示すように、可動部27の変位量が最大となるt1においては、慣性力・粘性力が共にゼロとなる。このときに、接触位置へ向いた力Ftが、反対向きの力Fx1より大きくなるときの電圧が最小動的Pull-in電圧となる。
【0057】
(III)シミュレーションによる具体例
a)静的Pull-in電圧Vsの導出
可動部27に働く静電気力Fは、次式によっても表せる。
F=1/2・{ε0・S/(d−x)2}・V2 ・・・(2)
但し、
ε0:真空の誘電率
S:電極面積
d:初期ギャップ
V:電圧

静電気力Fをk・xとおき、(2)式を変数分離すると、(3)式となる。

x・(d−x)2 =1/2・ε0・S・V2/k ・・・(3)
【0058】
ここで、(3)式の左辺を変位による力F(x)、右辺を電圧による力F(V)とおいて、双方の関係を表すと図9(a)に示すようになる。図9(a)は変位量に対する外力Fの変化の様子を示すグラフである。電圧による力F(V)は、電圧値Vによって力の絶対値が変化する。
【0059】
ところで、静的Pull-inを生じる変位量xsは、dF(x)/dt=0を満たす変位量xsであり、図9(b)に示すようになる。図9(b)は図9(a)のF(V)を静的Pull-in電圧Vsとした場合のグラフである。
(3)式より、静的Pull-inを生じる変位量xsを求めると、

dF(x)/dt=(x−d)・(3x−d)=0 ・・・(4)

(4)式より、静的Pull-inを生じる変位量xsは、xs=d/3となる。
このときの静的Pull-in電圧Vsは、

Vs={8・k・d3/(27・ε0・S)}1/2 ・・・(5)

で求められる。
【0060】
b)最小動的Pull-in電圧Vdの導出
ここでは計算の簡単化のため、時間t=0のとき、変位量x=0として、初期状態の変位量をゼロとする。また、粘性を表す項C・dx/dt=0とおいた。
可動部27に電圧V(静的Pull-in電圧Vs以下)を印加した場合の可動部の振動波形を図10、静的な電圧−変位の相関を図11に示した。
ここで、xは最終変位量であり、最大変位量x2は、粘性力をゼロとおいたためx2=2・x1とおける。
【0061】
図11に示すように、Pull-in曲線(PIC曲線)よりも変位が大きい領域がPull-in領域Spiであり、印加する電圧によりPull-inする変化量は異なってくる。前述した変位量x1、x2は共に慣性力=粘性力=ゼロとなり、図11の静的な電圧−変位図に当てはめて考えることができる。最小動的Pull−in電圧は、前述したように慣性力、粘性力が共にゼロで、最大変位時にPull−inする電圧のことである為、最大変位x2がPIC曲線に乗る電圧が最小動的Pull−in電圧である。
【0062】
収束時(時間t→∞)のときの変位量x、最大変位量xとすると、次の(6)式〜(8)式を満たす電圧が動的Pull-in電圧Vdとなる。

k・x=1/2・{ε0・S/(d−x2}・V2 ・・・(6)
k・x=1/2・{ε0・S/(d−x2}・V2 ・・・(7)
=1/2・x ・・・(8)
【0063】
(8)式では、粘性による影響が少ないため、前述の(1)式における慣性項と粘性項は省略している。(6)式〜(8)式よりx,x,Vdを求めると、次のようになる。
=(3−√2)・d/7 ・・・(9)
=2/(3−√2)・d/7 ・・・(10)
Vd={2・k・(3−√2)・(4+√2)2・d3/(73・ε0・S)}1/2 ・・・(11)
ただし、(11)式はx=2xとした場合である。
【0064】
c)シミュレーション
ここで、可動部27が回転運動系となるDMD素子を用いて、静的Pull-in電圧Vsをシミュレーションにより求めた。
図12に本シミュレーションに用いたDMD素子の概略図を示した。図12に示すように、DMD素子41は、ミラーである可動部27と、下部電極である第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35bと、ヒンジ29と、ギャップ間隔である空隙23と、ミラー支柱43と、ヨーク45と、着地サイト39とからなる。可動部27は、回転軸Lを中心に回転動作する。
【0065】
図13に図12のA−A断面とその動作を(a),(b)で示した。図13(a)は可動部27が傾斜せずにいるイニシャル状態、図13(b)は第1アドレス電極35aと可動部27との間に静電気力を発生させて、可動部を傾斜させた状態を示している。
【0066】
シミュレーション条件
DMD素子の主な寸法
ヒンジ厚さ :0.08μm
ヨーク厚さ :0.35μm
ミラー平面寸法:12.6×12.6μm
ミラー厚さ :0.46μm
ミラー支柱高さ:2.0μm
ギャップ間隔 :1μm
その他の寸法L1〜L9は図14に示した通りである。
【0067】
図15にDMDの静的Pull-in電圧のシミュレーション結果を示した。
これによれば、アドレス電圧を0Vから2V毎に増加させて印加し、そのときの可動部27の回転角を調べると、印加電圧18Vの手前までは電圧の上昇に伴い回転角が緩やかに漸増した。さらに、18Vを超えて印加すると、回転角が急激に変化し、可動部27が最終変位位置に達する。
実際のDMD素子41は、駆動方法にもよるが、23Vで駆動されることが多い。即ち、静的Pull-in電圧以上の電圧で駆動されている。
【0068】
図16は、実際の駆動波形であり、静的平衡状態では、図16(a)に示すように、一定の駆動電圧となるが、可動部27が振動している場合は、図16(b)に示すように、動的Pull-in電圧が制御に支配的となり、より低い電圧を印加することになる。駆動の途中では、可動部27が移動を繰り返しているときがあり、その場合は、動的Pull-in電圧に基づいた駆動制御がなされる。即ち、駆動途中の電圧を低くすることができる。
【0069】
次に、微小薄膜可動素子を実際に製作して、駆動電圧と変位との相関を調べた結果を説明する。
図17は試作可動部を(a)、電極構成を(b)に表した説明図、図18は電圧と変位との相関を電圧別に(a),(b),(c)で表したグラフである。試作に用いた可動部27は、矩形状薄膜の左右の長辺中央部に、直交方向のヒンジ29、29を延出させて構成した。空隙23は、約0.8μmに設定した。
【0070】
図18(a)に示すように、駆動電圧として最小動的Pull-in電圧以下の電圧Vaを印加した場合、プルインしない状態のまま可動部27の振動が減衰して停止した。
図18(b)に示すように、最小動的Pull-in電圧を少し超えた電圧Vbを印加した場合、小さな振動が減衰して停止した。
図18(c)に示すように、静的Pull-in電圧以上の電圧Vcを印加した場合、大きな振動が発生し、長時間の減衰を経て停止した。
【0071】
したがって、微小薄膜可動素子100によれば、可動電極と固定電極とに印加する電圧に応じた静電気力によって可動部27を変位させる微小薄膜可動素子100において、印加する電圧が、静的Pull-in電圧以下であり、且つ、最小動的Pull-in電圧以上の範囲にあるので、静的Pull-in電圧より大きい電圧が印加されることにより生じる過剰な静電気力が発生せず、必要最小限の静電気力を可動部27に作用させることができる。したがって、構造は従来のままで、プルイン時に発生する振動を低減することができる。この結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、微小薄膜可動素子100を高速動作させることができる。
【0072】
図19は2軸にて揺動される可動部を備えた3次元微小薄膜可動素子の例を表した斜視図である。
微小薄膜可動素子100は、図1に示したヒンジ29、29を捩れ中心とする基本構成となる1軸の2次元微小薄膜可動素子の他、図19に示すヒンジ29a、29a、ヒンジ29b、29bを捩れ中心とする2軸の3次元微小薄膜可動素子100Aであってもよい。この場合、3次元微小薄膜可動素子100Aは、第1アドレス電極35aと第2アドレス電極35bに加え、第3アドレス電極35cと第4アドレス電極35dが設けられることになる。そして、第1アドレス電極35a、第2アドレス電極35bと、可動部27とへの電圧印加によって可動部27がX方向に駆動され、第3アドレス電極35c、第4アドレス電極35dと、可動部27とへの電圧印加によって可動部27がY方向に駆動される。
【0073】
このような3次元微小薄膜可動素子100Aの場合においても、必要最小限の静電気力を可動部27に作用させることができ、構造は従来のままで、プルイン時に発生する振動を低減することができる。この結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、微小薄膜可動素子100Aを高速動作させることができる。
【0074】
次に、本発明に係る微小薄膜可動素子の第2の実施の形態を説明する。
図20は本発明に係る微小薄膜可動素子の第2の実施の形態を表す概念図である。
本実施の形態による微小薄膜可動素子200は、可動部51の一端がヒンジ29、29、スペーサ31、31を介して基板21に支持固定されている。つまり、可動部51は、他端が自由端となった片持ち梁状に構成される。そして、基板21上には可動部51の自由端に対向して第1アドレス電極35aが設けられ、可動部51を挟んだ第1アドレス電極35aの反対側には図示しない対向基板に形成される第2アドレス電極35bが設けられている。
【0075】
このような構成の微小薄膜可動素子200においても、第1アドレス電極35aと可動部51との間、または、第2アドレス電極35bと可動部51との間に印加する電圧Va,Vbが、静的Pull-in電圧以下であり、且つ、最小動的Pull-in電圧以上の範囲にあるので、静的Pull-in電圧より大きい電圧が印加されることにより生じる過剰な静電気力が発生せず、必要最小限の静電気力を可動部51に作用させることができる。したがって、プルイン時に発生する振動を低減することができる。この結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、微小薄膜可動素子100を高速動作させることができる。
【0076】
次に、本発明に係る微小薄膜可動素子の第3の実施の形態を説明する。
図21は本発明に係る微小薄膜可動素子の第3の実施の形態を表す概念図である。
本実施の形態による微小薄膜可動素子300は、所謂、平行平板型の素子であって、導電性と可撓性を有する平板状の可動部61の両端が基板21上に形成した絶縁膜63に所定の空隙23を有して固定されている。この基板21の可動部61の下方には、絶縁膜63を介して、第1アドレス電極35aが配設されており、また、可動部61の上方には絶縁膜65を介して第2アドレス電極35bが配設されている。つまり、可動部61は、第1アドレス電極35aと第2アドレス電極35bとの間で両端が支持された両持ち梁状に構成されている。
【0077】
このような平行平板型の微小薄膜可動素子300においても、第1アドレス電極35aと可動部61との間、または、第2アドレス電極35bと可動部61との間に印加する電圧Va,Vbが、静的Pull-in電圧以下であり、且つ、最小動的Pull-in電圧以上の範囲にあるので、静的Pull-in電圧より大きい電圧が印加されることにより生じる過剰な静電気力が発生せず、必要最小限の静電気力を可動部61に作用させることができる。したがって、プルイン時に発生する振動を低減することができ、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、微小薄膜可動素子300を高速動作させることができる。
【0078】
次に、本発明に係る微小薄膜可動素子の第4の実施の形態を説明する。
図22は本発明に係る微小薄膜可動素子をRFスイッチに応用した第4の実施の形態を表す平面図、図23は図22に示したRFスイッチのオフ状態のD−D断面を(a)、オン状態のD−D断面を(b)に表した説明図、図24は図22に示したRFスイッチのオフ状態のE−E断面を(a)、オン状態のE−E断面を(b)に表した説明図である。
本発明に係る微小薄膜可動素子は、その基本構成によりマイクロミラー部を備えないRFスイッチ400に応用することができる。RFスイッチ400は、カンチレバー式のRF(radio frequency)スイッチを構成している。即ち、RFスイッチ400は、基板21に空隙23を介して平行に配置される可動部であるカンチレバー71と、カンチレバー71の基端を基板21に支持するスペーサ31と、第1電極35eおよび第2電極35fと、入力端子73と、出力端子75と、短絡接点79とを備える。
【0079】
このような構成により、第1電極35eおよび第2電極35fに電圧が印加されることで、静電気力によってカンチレバー71が上下に弾性変位し、入力端子73と出力端子75とを開閉して、RF(高周波)信号の接続および切換を行うRFスイッチを実現している。このRFスイッチ400は、1つのスイッチで、例えば送信/受信時の低周波と高周波の信号経路を切換可能にできる。また、2つの入力端子73、出力端子75で構成する接点は、1つのメカニカル素子を使って接続し、閉路を形成できる。これにより、信号経路を接続する直列接続モードと、信号経路を接地に落とす短絡モードの両方が実現可能となる。
【0080】
ここで、スイッチやルーター、RF信号処理に本発明に係る微小薄膜可動素子の構成を活用すれば、通常の電子部品を使った場合に比べて、はるかに良好な性能を実現できる。即ち、可動部の振動をアクティブに減少させることができることから、スイッチング動作を高速化できる。また、伝送損失を低減でき、オフ状態での絶縁性を高められる。インダクターやコンデンサーに適用すれば、通常の半導体プロセスを使って作成した場合に比べて、はるかに高いQ値を有する同調(チューニング)回路を実現できる。帯域通過フィルターや位相シフターを構成すれば、SAW素子を上回るこれまでにない高いレベルの性能を得られる。可変容量コンデンサーを構成すれば、バラクター・ダイオードよりも理想に近い同調特性を有する回路を実現できる。さらに、オフ状態の絶縁性は通常で40dB以上と高く、オン状態での挿入損失は1dBの数分の1とすることが可能となり、ダイオードやFETスイッチとは異なり、ほぼ理想的なRF特性を得ることができる。
【0081】
上記の各実施の形態に開示した微小薄膜可動素子100、200、300、400のそれぞれは、1次元又は2次元配列することによって微小薄膜可動素子アレイを構成することができる。
この微小薄膜可動素子アレイでは、高速なスイッチング動作の可能となった微小薄膜可動素子100、200、300、400がアレイ化され、振動の鎮静化する時間の短縮が可能となり、従来より早いアドレス電圧の書込みが可能となる。
即ち、個々の微小薄膜可動素子を必要最小限の静電気力で作動させ、振動を低減してアレイ全体の高速動作が可能となる。これにより、例えば高速な感光材露光や、より高画素数のプロジェクタ表示等が可能となる。また、例えば光通信用の光スイッチアレイでは高精度が求められるため、個々の素子のばらつきに起因する作動誤差の補正が必要となるが、本微小薄膜可動素子アレイによれば、補正に対応させて個々の微小薄膜可動素子の印加電圧を変えることで、作動誤差の補正を容易に行うことができる。
【0082】
また、光通信用の微小薄膜可動素子アレイでは高精度が求められるため、個々の素子のばらつきに起因する作動誤差の補正が必要となる。したがって、微小薄膜可動素子アレイにおいては、各素子ごとにこの補正を行わなければならない。これに対し、本実施の形態による微小薄膜可動素子アレイによれば、この補正に対応させて個々の微小薄膜可動素子100、200、300、400における印加電圧を変えることで、作動誤差の補正を容易に行うことができる。
【0083】
図25は微小薄膜可動素子アレイにおける駆動方法の手順を(a),(b),(c)で表した動作説明図である。
微小薄膜可動素子アレイ500は、配列される全ての例えば微小薄膜可動素子100の可動部27を、図25(a)に示す平衡な状態から、図25(b)に示すように、静電気力によって一律に固定電極(例えば第1アドレス電極35a)に引き寄せた後、個々の微小薄膜可動素子100を任意に動作させることができる。このような微小薄膜可動素子アレイ500の駆動方法では、電圧非印加時に生じている個々の素子100の個体差による可動部27の変位バラツキが除去可能になる。
【0084】
したがって、この微小薄膜可動素子アレイ500の駆動方法によれば、電圧非印加時に生じている個々の素子100の個体差による可動部27の変位バラツキを除去することができ、バラツキの無い状態からの一律の制御が可能となる。この結果、個々の微小薄膜可動素子100の作動誤差を無くすことができ、配列された全ての微小薄膜可動素子100を均一に作動させることができる。
【0085】
図26は微小薄膜可動素子のそれぞれがメモリ回路を含む駆動回路を有した構成を示す説明図である。
微小薄膜可動素子アレイ500は、微小薄膜可動素子100のそれぞれがメモリ回路81を含む駆動回路37(図1参照)を有することが好ましい。このようなメモリ回路81が備えられることで、メモリ回路81に対して予め素子変位信号の書き込みが可能となる。つまり、メモリ回路81には予め素子変位信号が書き込まれる。微小薄膜可動素子100のスイッチングのとき、各々の微小薄膜可動素子100のメモリ回路81に記憶された素子変位信号と、微小薄膜可動素子100への印加電圧を制御する駆動電圧制御回路83により、本発明の駆動電圧で微小薄膜可動素子100の信号電極(第1アドレス電極、第2アドレス電極)85に出力する。このとき、共通電極(可動電極)87に対しても所望の電圧が出力される。
このように、メモリ回路81を用いて微小薄膜可動素子100を駆動すると、複数の微小薄膜可動素子100のそれぞれを任意の駆動パターンで動作させることが容易にでき、より高速なアクティブ駆動が可能となる。なお、ここでは、図1の微小薄膜可動素子100の構成を示したが、これに限らず、他の構成の微小薄膜可動素子200、300、400であってもよい。
【0086】
微小薄膜可動素子アレイ500には、それぞれの可動部27をスイッチング駆動させる制御部としての制御回路83が設けられることが好ましい。
このような制御回路83が備えられた微小薄膜可動素子アレイ500では、可動部27が制御回路83によって駆動制御されることで、プルイン時に発生する振動を低減することができ、その結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、可動部27を高速動作させることができる。
【0087】
図27は本発明に係る微小薄膜可動素子を用いて構成したDMDの分解斜視図である。
本発明に係る微小薄膜可動素子は、図27に示したDMD600に適用することができる。図中、93はマイクロミラーであり、マイクロミラー支持ポスト95によりヨーク97の支持ポスト接続部99に接続されている。ヨーク97はヒンジ101に保持されている。またヒンジ101はポストキャップ103に保持されている。ポストキャップ103はヒンジ支持ポスト105によって共通バス107のヒンジ支持ポスト接続部109に接続されている。つまり、マイクロミラー93は、ヒンジ101、ポストキャップ103及びヒンジ支持ポスト105を介して共通バス107に接続されている。マイクロミラー93には、共通バス107を介して共通電圧が供給される。共通バス107は停止部材である着地サイト111を有している。着地サイト111は絶縁性を有しているか、マイクロミラー93と同じ電位に保たれている。
【0088】
113aは一方の固定電極(第1アドレス電極)であり、113bは他方の固定電極(第2アドレス電極)である。第1アドレス電極113aは電極支持ポスト115によって、第1アドレス電極パッド117aの電極支持ポスト接続部119に接続されている。また第2アドレス電極113bも電極支持ポスト115によって、第2アドレス電極パッド117bの電極支持ポスト接続部119に接続されている。
【0089】
第1接続部121aから第1アドレス電極パッド117aに入力されるデジタル信号は、第1アドレス電極113aに入力される。第2接続部121bから第2アドレス電極パッド117bに入力されるデジタル信号は、第2アドレス電極113bに入力される。第1アドレス電極113aと第2アドレス電極113bにデジタル信号が入力されることによって、マイクロミラー93が傾き、白表示または黒表示が選択される。マイクロミラー93が傾くことで、ヨーク片123の一部が着地サイト111に接触しても良い。
【0090】
このような構成を有するDMD600においても、第1アドレス電極113aとヨーク片123との間、または、第2アドレス電極113bとヨーク片123との間に印加する電圧が、静的Pull-in電圧以下であり、且つ、最小動的Pull-in電圧以上の範囲にあるので、静的Pull-in電圧より大きい電圧が印加されることにより生じる過剰な静電気力が発生せず、必要最小限の静電気力をヨーク片123に作用させることができる。したがって、プルイン時に発生する振動を低減することができる。この結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、DMD600を高速動作させることができる。
【0091】
次に、上記微小薄膜可動素子100を用いて構成した画像形成装置について説明する。ここでは、画像形成装置の例として、まず、露光装置700について説明する。図28は本発明に係る微小薄膜可動素子アレイを用いて構成した露光装置の概略構成を示す図である。露光装置700は、照明光源131と、照明光学系133と、上述した実施の形態の微小薄膜可動素子100を同一平面状で2次元状に複数配列した微小薄膜可動素子アレイ500と、投影光学系135とを備える。
【0092】
照明光源131は、レーザ、高圧水銀ランプ、及びショートアークランプ等の光源である。照明光学系133は、例えば、照明光源131から出射された面状の光を平行光化するコリメートレンズである。コリメートレンズを透過した平行光は微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に垂直に入射する。照明光源131から出射された面状の光を平行光化する手段としては、コリメートレンズ以外にも、マイクロレンズを2つ直列に配置する方法等がある。また、照明光源131としてショートアークランプ等の発光点が小さいものを使用することで、照明光源131を点光源とみなし、微小薄膜可動素子アレイ500に平行光を入射するようにしても良い。また、照明光源131として微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に対応するLEDを有するLEDアレイを使用し、LEDアレイと微小薄膜可動素子アレイ500とを近接させて光を発光させることで、微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に平行光を入射するようにしても良い。なお、照明光源131としてレーザを用いた場合には、照明光学系133は省略しても良い。
【0093】
投影光学系135は、画像形成面である記録媒体137に対して光を投影するためのものであり、例えば、微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に対応したマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイ等である。
【0094】
以下、露光装置700の動作を説明する。
照明光源131から出射された面状の光が照明光学系133に入射し、ここで平行光された光が微小薄膜可動素子アレイ500に入射する。微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に入射される光は、画像信号に応じてその反射が制御される。微小薄膜可動素子アレイ500から出射された光は、投影光学系135により記録媒体137の画像形成面に撮影露光される。撮影光は記録媒体137に対して相対的に走査方向に移動しながら投影露光され、広い面積を高解像度で露光することができる。このように、コリメートレンズを微小薄膜可動素子アレイ500の光の入射面側に設けることで、各変調素子の平面基板に入射する光を平行光化することができる。なお、図中139はオフ光を導入する光アブソーバーを表す。
【0095】
この露光装置700は、照明光学系133としてコリメートレンズを用いることに限らず、マイクロレンズアレイを用いて構成することができる。この場合、マイクロレンズアレイの各マイクロレンズは、微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に対応し、マイクロレンズの光軸と焦点面が各光変調素子の中心に合うように設計、調整される。
【0096】
この場合、照明光源131からの入射光は、マイクロレンズアレイにより、微小薄膜可動素子100の一素子よりも面積が小さい領域に集光され、微小薄膜可動素子アレイ500に入射する。微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に入射される光は、入力される画像信号に応じて反射が制御される。微小薄膜可動素子アレイ500から出射された光は、投影光学系135により記録媒体137の画像形成面に投影露光される。投影光は記録媒体137に対して相対的に走査方向に移動しながら投影露光され、広い面積を高解像度で、露光することができる。このように、マイクロレンズアレイによって照明光源131からの光を集光することができるため、光利用効率を向上させた露光装置を実現することができる。
【0097】
なお、マイクロレンズのレンズ面形状は、球面、半球面など、特に形状は限定されず、凸曲面であっても凹曲面であってもよい。さらに、屈折率分布を有する平坦形状なマイクロレンズアレイであってもよく、フレネルレンズやバイナリーオプティクスなどによる回折型レンズがアレイされたものであってもよい。マイクロレンズの材質としては、例えば、透明なガラスや樹脂である。量産性の観点では樹脂が優れており、寿命、信頼牲の観点からはガラスが優れている。光学的な観点上、ガラスとしては石英ガラス、溶融シリカ、無アルカリガラス等が好ましく、樹脂としてはアクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリカーボネイト系、スチレン系、塩化ビニル系等が好ましい。なお、樹脂としては、光硬化型、熱可塑型などがあり、マイクロレンズの製法に応じて適宜選択することが好ましい。
【0098】
次に、画像形成装置の他の例として、投影装置について説明する。
図29は本発明の微小薄膜可動素子アレイを用いて構成した投影装置の概略構成を示す図である。図28と同様の構成には同一符号を付し、その説明は省略するものとする。
投影装置としてのプロジェクタ800は、照明光源131と、照明光学系133と、微小薄膜可動素子アレイ500と、投影光学系141とを備える。投影光学系141は、画像形成面であるスクリーン143に対して光を投影するための投影装置用の光学系である。照明光学系133は、前述したコリメータレンズであってもよく、マイクロレンズアレイであってもよい。
【0099】
次に、プロジェクタ800の動作を説明する。
照明光源131からの入射光は、例えばマイクロレンズアレイにより、微小薄膜可動素子100の一素子よりも面積が小さい領域に集光され、微小薄膜可動素子アレイ500に入射する。微小薄膜可動素子アレイ500の各微小薄膜可動素子100に入射される光は、画像信号に応じてその反射が制御される。微小薄膜可動素子アレイ500から出射された光は、投影光学系141によりスクリーン143の画像形成面に投影露光される。このように、微小薄膜可動素子アレイ500は、投影装置にも利用することができ、さらには、表示装置にも適用可能である。
【0100】
したがって、露光装置700やプロジェクタ800等の画像形成装置では、上記の微小薄膜可動素子アレイ500が構成の要部に備えられることで、各微小薄膜可動素子100に、静的Pull-in電圧より大きい電圧が印加されることにより生じる過剰な静電気力が発生せず、必要最小限の静電気力を可動部27に作用させることができる。したがって、プルイン時に発生する振動を低減することができる。この結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、高速な感光材露光や、より高画素数のプロジェクタの表示が可能となる。また、露光光のオン・オフで階調制御がなされる画像形成装置(露光装置700)では、オン・オフ時間の短縮が可能となることで、より高階調の実現が可能となる。この結果、高速な感光材露光や、より高画素数のプロジェクタを表示させることができる。
【0101】
図30は本発明の微小薄膜可動素子アレイを用いて構成したスキャナの概略構成を示す図である。
本発明に係る微小薄膜可動素子アレイは、発光素子から出射した光線を被照射対象に走査するとともに、被照射対象からの戻り光を反射させて受光素子に入射させるビームスキャナ等にも好適に用いることができる。スキャナ900は、光源151からの光をレンズ153で絞り、この光を微小薄膜可動素子100の可動部であるスキャンミラー155で反射し、バーコード157に照射する。バーコード157の全域に亘って光を照射するため、スキャンミラー155を揺動させる。揺動は、不図示の第1電極、第2電極、可動部へ電圧を印加することによって、ヒンジを捩り中心として可動部を揺動変位させる。つまり、可動部がスキャンミラー155であることにより、光の反射方向がスイッチングされる。
【0102】
一方、バーコード157面に照射した光は、乱反射しながらもバーコードの白黒による光量変化をもって再びスキャンミラー155に戻り、そこで反射された光は集光レンズ159により集光され、受光素子161により光量変化を電気的に変換して出力する。なお、読み取り精度向上のため、受光素子161の前面にはバンドパスフィルタ(BPF)を設けて発光光周波数以外の不要な光の採光を防止する。
【0103】
このような微小薄膜可動素子100を用いたスキャナ900においても、可動部を変位駆動させるための電圧が、静的Pull-in電圧と等しくまたはそれより小さく、かつ最小動的Pull-in電圧と等しくまたはそれより大きい範囲にある。即ち、静的Pull-in電圧≧駆動電圧≧最小動的Pull-in電圧の式を満たす。このような範囲に駆動電圧を設定することで、必要以上の静電気力を発生させないようにし、プルイン時における可動部の振動を低減している。この結果、高速なスキャンミラー155の揺動を可能とすることができる。
【0104】
図31は微小薄膜可動素子が用いられたクロスコネクトスイッチの構成を示す説明図である。
さらに、本発明に係る微小薄膜可動素子アレイは、光通信のクロスコネクトスイッチ等にも好適に用いることができる。
このクロスコネクトスイッチ1000は、例えば微小薄膜可動素子100を1次元状に配列した微小薄膜可動素子アレイ500を用いて構成することができる。図示の例では、2つの微小薄膜可動素子アレイ500a、500bが設けられる。このクロスコネクトスイッチ1000では、入力ファイバーボート171の光ファイバ171aからの出射光がマイクロレンズ173を通り一方の微小薄膜可動素子アレイ500aの所定の微小薄膜可動素子100aに入射される。入射光は、微小薄膜可動素子100aのスイッチング動作によって、反射光となって入射側微小薄膜可動素子アレイ500bの所望の微小薄膜可動素子100bに入射する。入射した光は微小薄膜可動素子100bのスイッチングによって所定の出力ファイバーボード175の光ファイバー175aへ入射する。
【0105】
このクロスコネクトスイッチ1000においても、上記の複数の微小薄膜可動素子100からなる微小薄膜可動素子アレイ500が用いられることで、可動部(マイクロミラー部)27に必要以上の静電気力を発生させないようにし、プルイン時における可動部27の振動を低減している。この結果、チャタリングを減少させてノイズを低減し、スイッチング動作を高速化することができる。
【0106】
そして、このクロスコネクトスイッチ1000では、上記のように個々の微小薄膜可動素子100における印加電圧を変えることで、各薄膜可動素子100に対してプルイン時に発生する振動を低減することができ、その結果、振動の鎮静化までの時間を大幅に短縮して、可動部を高速動作させることができる。
【0107】
また、上記のクロスコネクトスイッチ1000では、1軸回動される微小薄膜可動素子100を用いた例で説明したが、微小薄膜可動素子アレイには図19に示した2軸回動される3次元微小薄膜可動素子100Aを用いてもよい。このような構成とすることで、例えば入力ファイバーボート171の光ファイバ171aが1次元配列され、出力ファイバーボード175の光ファイバ175aが2次元配列される場合であっても、可動部27を3次元駆動することによって、光ファイバ171aからの出射光を紙面垂直方向所望の光ファイバ175aへも切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る微小薄膜可動素子の第1の実施の形態を(a),(b)で表す概念図である。
【図2】図1に示した微小薄膜可動素子の静的プルイン電圧印加時の動作過程を(a),(b),(c)で表した動作説明図である。
【図3】静的プルイン電圧印加時の可動部に作用する変位量と駆動電圧の相関を表した説明図である。
【図4】図1に示した微小薄膜可動素子の動的プルイン電圧印加時の動作過程を(a),(b),(c)で表した動作説明図である。
【図5】本発明に係る駆動方法の可動部の挙動を表した説明図である。
【図6】本発明に係る駆動方法の駆動シーケンスの説明図である。
【図7】静的Pull-in電圧を説明するための電圧と変位の関係を概念的に示すグラフである。
【図8】動的Pull-in電圧を説明するための変位量の時間変化を概念的に示すグラフである。
【図9】変位量に対する外力Fの変化の様子を示すグラフである。
【図10】可動部に電圧を印加した場合の可動部の振動波形図である。
【図11】静的な電圧−変位の相関図である。
【図12】シミュレーションに用いたDMD素子の概略図である。
【図13】図12のA−A断面とその動作を(a),(b)で示した説明図である。
【図14】シミュレーションに用いたDMD素子の寸法説明図である。
【図15】DMDの静的Pull-in電圧のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図16】実際の駆動波形を表す説明図である。
【図17】試作可動部を(a)、電極構成を(b)に表した説明図である。
【図18】電圧と変位との相関を電圧別に(a),(b),(c)で表したグラフである。
【図19】2軸にて揺動される可動部を備えた3次元微小薄膜可動素子の例を表した斜視図である。
【図20】本発明に係る微小薄膜可動素子の第2の実施の形態を表す概念図である。
【図21】本発明に係る微小薄膜可動素子の第3の実施の形態を表す概念図である。
【図22】本発明に係る微小薄膜可動素子をRFスイッチに応用した第4の実施の形態を表す平面図である。
【図23】図22に示したRFスイッチのオフ状態のD−D断面を(a)、オン状態のD−D断面を(b)に表した説明図である。
【図24】図22に示したRFスイッチのオフ状態のE−E断面を(a)、オン状態のE−E断面を(b)に表した説明図である。
【図25】微小薄膜可動素子アレイにおける駆動方法の手順を(a),(b),(c)で表した動作説明図である。
【図26】微小薄膜可動素子のそれぞれがメモリ回路を含む駆動回路を有した構成を示す説明図である。
【図27】本発明に係る微小薄膜可動素子を用いて構成したDMDの分解斜視図である。
【図28】本発明に係る微小薄膜可動素子アレイを用いて構成した露光装置の概略構成を示す図である。
【図29】本発明の微小薄膜可動素子アレイを用いて構成した投影装置の概略構成を示す図である。
【図30】本発明の微小薄膜可動素子アレイを用いて構成したスキャナの概略構成を示す図である。
【図31】微小薄膜可動素子が用いられたクロスコネクトスイッチの構成を示す説明図である。
【図32】従来の光スイッチに生じる可動部の振動を表した説明図である。
【符号の説明】
【0109】
21 基板
23 間隙
27 可動部
28 可動電極
29 ヒンジ(支持部)
35a 第1アドレス電極(固定電極)
35b 第2アドレス電極(固定電極)
73 入力端子
75 出力端子
79 短絡接点
100 微小薄膜可動素子
500 微小薄膜可動素子アレイ




 

 


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