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発明の名称 ケーブル状圧電素子とその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−17421(P2007−17421A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−314069(P2005−314069)
出願日 平成17年10月28日(2005.10.28)
代理人 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄
発明者 藤井 優子 / 福田 祐 / 橋田 卓 / 野村 幸生 / 伊藤 修治 / 佐々木 隆宏
要約 課題
従来のケーブル状圧電素子は高温高湿環境下で使用されると、ケーブル状圧電素子を構成する圧電組成物感圧体が水を吸収し、電気抵抗や静電容量、圧電特性が変化し、耐久性、信頼性に劣るという課題を有していた。

解決手段
芯電極1と、粒子の表面に撥水材料の被覆層8を形成した圧電セラミック粉末5と、可撓性を有する有機高分子6とチタンカップリング剤を混合してなる圧電組成物感圧体2と、外電極3と、保護層4で構成することにより、高温高湿下で使用されても圧電組成物感圧体2への水の浸透を抑制し、圧電組成物感圧体2の軟化を防止するとともに、圧電セラミック粉末5の成分の溶出を防止することができるので電気抵抗や静電容量などの電気的特性の変化、圧電特性の変化、機械的強度の低下を防止することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
内側電極としての芯電極と、前記芯電極に周設された圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを含む圧電組成物感圧体と、前記圧電組成物感圧体に周設され、前記芯電極とは絶縁された外電極と、前記圧電セラミック粉末の外側に設けられ、前記圧電セラミックス粉末および前記圧電組成物感圧体への水分の吸収を抑制する被覆層とを備えたケ−ブル状圧電素子。
【請求項2】
被覆層は、撥水材料で構成される請求項1に記載のケ−ブル状圧電素子。
【請求項3】
被覆層は、圧電セラミック粉末の表面に設けられた請求項1または2に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項4】
被覆層は、圧電組成物感圧体の少なくとも表面の一部を覆っている請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項5】
外電極または被覆層のいずれかを覆う保護層をさらに備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項6】
圧電組成物感圧体は芯電極を覆い、外電極は前記圧電組成物感圧体を覆い、被覆層は少なくとも前記外電極の一部を覆い、少なくとも前記被覆層を覆う保護層をさらに備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項7】
被覆層は、蒸留水に対する接触角が125°以上180°未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項8】
被覆層は、単分子層で形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項9】
圧電セラミック粉末は、周期表第1族の元素、周期表第2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項10】
圧電セラミック粉末は、主成分がチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの少なくとも1種を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項11】
芯電極は、複数の金属線を収束した請求項1〜10のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項12】
芯電極は、多数のポリエステル繊維の収束線に金属線または金属箔を巻回した請求項1〜10のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項13】
外電極は、電気絶縁性の高分子フィルムの両面に導電性材料の箔が接着された導電性フィルムを圧電組成物感圧体に巻回した請求項1〜12のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項14】
外電極は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末の導電層である請求項1〜12のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項15】
外電極は、主成分が導電性粉末と有機高分子に混合物である導電塗料もしくは導電ペーストの塗布膜である請求項1〜12のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項16】
外電極は、導電性材料の蒸着膜で構成した請求項1〜12のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項17】
導電性材料または導電性粉末は、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種を含むものである請求項13〜16のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項18】
有機高分子は、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む請求項1〜17いずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項19】
熱可塑性エラストマーは、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンの少なくとも1種を含む請求項18に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項20】
圧電組成物感圧体は、チタンカップリング剤をさらに含む請求項1〜19のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項21】
圧電組成物感圧体は、イソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、イソプロポキシトリス・ジオクチルパイロフォスフェート・チタネートの少なくとも1種をさらに含む請求項1〜19のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項22】
保護層は、電気絶縁性の熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む請求項1〜21のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項23】
圧電セラミック粉末の比誘電率が0より大きく1000以下である請求項1〜22のいずれか1項に記載のケーブル状圧電素子。
【請求項24】
(A)圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを混合して圧電組成物感圧体を形成するステップと、(B)芯電極に前記圧電組成物感圧体を設けるステップと、(C)前記圧電組成物感圧体に接続される外電極を、前記芯電極と絶縁するように設けるステップと、(D)前記圧電セラミック粉末への水分の吸収を抑制する被覆層を、少なくとも前記圧電セラミック粉末の外側に設けるステップとを備えたケーブル状圧電素子の製造方法。
【請求項25】
ステップDにおいて、圧電セラミック粉末の表面に被覆層を設け、前記ステップDの後に前記ステップAを行う請求項24に記載のケーブル状圧電素子の製造方法。
【請求項26】
ステップAの後、ステップDにおいて圧電組成物感圧体の少なくとも表面の一部に被覆層を設ける請求項24に記載のケーブル状圧電素子の製造方法。
【請求項27】
ステップDにおいて、少なくとも外電極の表面に被覆層を設け、少なくとも前記被覆層を覆う保護層を設けるステップをさらに備えた請求項24に記載のケーブル状圧電素子の製造方法。
【請求項28】
ステップDにおいて、少なくとも外電極の表面の一部に被覆層を設け、少なくとも前記被覆層を覆う保護層を設けるステップをさらに備えた請求項24に記載のケーブル状圧電素子の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は有機高分子中に圧電セラミック粉末を配合してなる圧電組成物感圧体を用いた可撓性のあるケーブル状圧電素子とその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧電組成物感圧体は、チタンカップリング剤と、圧電セラミック粉末と、塩素化ポリエチレンまたはクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも一方とを含んだ材料を混合、混練して構成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この圧電組成物感圧体は上記材料をニーダーやロールなどの加工機械を用い、均一に分散混合及び混練して得られるものであり、塩素化ポリエチレンなどの熱可塑性エラストマーを含んでいるため可撓性を有し、シート状やケーブル状に加工されて圧電素子として用いられている。
【0004】
シート状の圧電素子は、先ずカップリング剤と圧電体粉末と塩素化ポリエチレンをロールで混合、混練した圧電組成物感圧体をホットプレスでシート状に成型し、このシートの両面に銀ペーストを塗布処理もしくはゴムにカーボンを分散させた導電シートを融着させることにより1対の電極が形成され、その後、圧電性を発現させるために数十kVの直流電圧を両電極間に印加しポーリング処理を行うことによって得ることができる。この電極面の一部あるいは全面に圧力が印加されると、その部分の圧電組成物感圧体が歪み、その結果両電極間に電圧が誘起され、この誘起電圧を利用して圧力を検出することができるので圧力センサとして応用されている。
【0005】
また、上記のような圧電組成物感圧体において、鉛を含む圧電セラミック粉末に被覆層を形成し、これを有機高分子に分散混合させたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この被覆層は、鉛を含む圧電セラミックを含む圧電組成物感圧体が廃棄され、酸性雨などの環境に暴露されても圧電セラミック粉末からの鉛の溶出を抑制し、環境汚染を防止しようとするものである。
【0007】
この被覆層の材料は、無機系、有機系化合物による被膜、有機系の単分子膜から構成され、いずれの材料でも圧電セラミック粉末からの鉛の溶出防止の効果が得られるとしている。
【特許文献1】特開平11−201835号公報
【特許文献2】特開2003−106910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で示した従来の圧電素子を高温高湿環境下で使用した場合、水蒸気が電極を通過し、圧電素子を構成する圧電組成物感圧体に到達する。圧電組成物感圧体の内部の温度が外側よりも低い状態や、圧電組成物感圧体の表面で水蒸気が過飽和状態になると、拡散した水蒸気は凝縮して水を生成し、圧電組成物感圧体を構成する圧電セラミック粉末の成分や不純物が水によって溶出する現象が発生する。その結果、圧電素子の静電容量が増加するとともに、電気抵抗が減少するなどの電気的特性が変化するという問題が起こり、耐久性が劣ると課題があるとともに、感圧センサとして用いる場合、検知や制御のための回路が複雑になるという課題があった。
【0009】
また、圧電素子が水を吸収すると圧電組成物感圧体自体が軟化し、圧力と感圧センサの歪みの関係が変化するため、圧電素子の柔らかさの変化に応じた信号処理が必要となり、誤検知の可能性があるため複雑な検知回路になるという課題があった。
【0010】
また、圧電素子が軟化することにより圧電素子の引っ張り強度が低下するため、耐久性が劣るという課題があった。
【0011】
特に、周期表の1族、2A族のアルカリ金属、アルカリ土類金属を含む圧電セラミック粉末は固有抵抗が低く、かつ水に溶出し易いため、電気抵抗の低下が課題となる。
【0012】
なお、上記課題はシート状圧電素子に対して述べたが、ケーブル状の場合や、他の形状でも同様の課題を有する。
【0013】
一方、特許文献2で示した圧電セラミックの粉末に被覆層を形成した圧電素子は、酸性雨などの環境に暴露された場合、被覆層によって圧電セラミックの粉末から鉛などの溶出が抑制され、溶出した金属イオンが原因で起こる電気抵抗の変化は防止されるが、水の圧電体組成物感圧体への吸収は抑制できず、圧電体組成物感圧体の軟化による圧電特性の変化、機械的引っ張り強度の低下、水の吸収によって起こる静電容量の変化は防止できず、上述の課題は解決できるものではなかった。
【0014】
特許文献2の圧電組成物感圧体が水を吸収している理由は次のように考えられる。圧電セラミック粉末から鉛の溶出を抑制する材料として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、リチウムシリケートの無機化合物を用いているが、これらは親水性を示すものであり、撥水性のもつ水を弾く作用はない。したがって、これら材料の被覆層はバリア層としての作用、すなわち、水と圧電セラミック粉末の接触を妨げるように作用する。これにより、鉛の溶出を抑制することができるが、被覆層が撥水性を有さないため、圧電組成物感圧体自身は水を吸収するものと考えられる。
【0015】
一方、被覆層材料として、有機化合物や単分子膜を用いたものは親水性こそないが、鉛の溶出の抑制効果を無機化合物と比較すると、鉛の溶出量は同等かむしろ劣る結果を示していることから、無機化合物も有機化合物も単分子膜も前述のバリア層としての作用によって鉛の溶出を抑制していると考えられる。したがって、特許文献2の被覆層を設けた構成は被覆層の材料に関係なく、圧電組成物感圧体は同等の水を吸収し、軟化していると考えられる。
【0016】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高温高湿環境下で使用されても電気的特性の変化や軟化を抑制し、常に安定した圧電特性や強度を実現するとともに、複雑な回路を必要としないケーブル状圧電素子とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記従来の課題を解決するために、本発明のケーブル状圧電素子は、内側電極としての芯電極と、芯電極に周設された圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを含む圧電組成物感圧体と、圧電組成物感圧体に周設され、芯電極とは絶縁された外電極と、圧電セラミック粉末の外側に設けられ、圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体への水分の吸収を抑制する被覆層とからなる構成としている。
【0018】
これによって、ケーブル状圧電素子が高温高湿環境下で用いられても、圧電セラミック粉末の外側に設けられた撥水材料からなる被覆層が形成されているので圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体へ水の吸収が抑制される。その結果、ケーブル状圧電素子の静電容量の増加、電気抵抗の減少、及び圧電組成物感圧体の軟化が抑制され、軟化が原因で
起こる圧電特性の大きな変化を防止することができ、初期の圧電特性を維持することができる。
【0019】
また、外電極または被覆層のいずれかを覆う保護層が水蒸気の拡散を妨げ、圧電組成物感圧体への水の浸透を抑制し、ケーブル状圧電素子の電気的特性、圧電特性の変化をさらに低減することができる。さらに、圧電組成物感圧体の軟化を抑制することもできるので引っ張り強度の低下が防止され、初期の強度を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のケーブル状圧電素子とその製造方法は、圧電セラミック粉末、圧電組成物感圧体、外電極を撥水材料で処理して被覆層を形成することによって圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体への水の浸透を抑制することができるので初期の電気的特性、圧電特性、機械的引っ張り強度などの特性を維持し、時間経過による変化を防止することができ、優れた耐久性、信頼性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第1の発明は、内側電極としての芯電極と、芯電極に周設された圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを含む圧電組成物感圧体と、圧電組成物感圧体に周設され、芯電極とは絶縁された外電極と、圧電セラミック粉末の外側に設けられ、圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体への水分の吸収を抑制する被覆層とを備えた構成とすることにより、圧電素子が高温高湿環境下で使用され、圧電素子を構成する圧電組成物感圧体で水蒸気が凝縮して水を生成しても、圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体への水の吸収が抑制され、ケ−ブル状圧電素子の静電容量の増加、電気抵抗の減少を防止することができる。その結果、ケ−ブル状圧電素子の初期の電気的特性を維持して、時間経過による変化を防止することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
【0022】
また、圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体が水を吸収しないので圧電組成物感圧体の軟化が抑制され、軟化が原因で起こる圧電特性の大きな変化を防止することができ、常に初期の圧電特性を維持することができる。その結果、同じ印加圧力でも圧電特性の変化に応じた信号処理を必要としないので誤検知を防止できる信頼性の高い検知、制御回路を設計することができる。
【0023】
第2の発明は、特に、第1の発明の被覆層を撥水材料で構成することにより、撥水作用を薄膜の被覆層とすることができ、圧電セラミック粉末および圧電組成物感圧体への浸透を防止することによる圧電特性の変化を防止することができるとともに、圧電性を発現するために行うポーリング処理において、印加電圧のロスを少なくすることができ、低い電圧でも優れた圧電特性を発現させることができる。
【0024】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の被覆層を圧電セラミック粉末の表面に形成した構成とすることにより、撥水材料の被覆層が圧電セラミック粉末の粒子一つ一つに施されているので水との接触を極めて少なくし、水の吸収を抑制することができ、圧電セラミック粉末の成分が水に溶出することが原因で起こる電気抵抗の減少を防止する効果は大なるものである。
【0025】
また、被覆層を形成した圧電セラミック粉末が圧電組成物感圧体の表面に多数存在することにより、圧電組成物感圧体の表面に優れた撥水性を発現させることができ、圧電組成物感圧体への水の浸透を抑制することができるので圧電組成物感圧体の軟化が抑制され、軟化が原因で起こる圧電特性の大きな変化を防止することができ、常に初期の圧電特性を維持することができる。その結果、同じ印加圧力でも圧電特性の変化に応じた信号処理を必要としないので誤検知を防止できる信頼性の高い検知、制御回路を設計することができ
る。
【0026】
また、圧電セラミック粉末に撥水処理を施すことにより、圧電セラミック粉末表面が疎水性を示すので可撓性を有する有機高分子との馴染みが良好になり、両者の混練性が向上し、混練加工時間を短縮化することができ、生産性を向上させることができる。
【0027】
また、予め圧電セラミック粉末に撥水処理を施すことにより、ケーブル状圧電素子の形状、大きさが変わってもそれに対応した撥水処理工程が必要なく、ケーブル状圧電素子の生産性を高くすることができるとともに、圧電素子の形状、大きさによらず、常に安定した撥水効果をもたせることができる。
【0028】
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明の被覆層が物感圧体の少なくとも表面の一部を覆った構成とすることにより、圧電組成物感圧体の内部への水の浸透を防止することができるのでケ−ブル状圧電素子の初期の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
【0029】
第5の発明は、特に、第1〜第4の発明の外電極または被覆層のいずれかを覆う保護層をさらに備えた構成とすることにより、圧電素子が高温高湿環境下で使用される場合、保護層は水蒸気が圧電組成物感圧体に拡散するのを防止することができるので、初期の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を一層低減することができ、優れたれ耐久性、信頼性を実現することができる。
【0030】
第6発明は、特に、第1〜第5の発明のケーブル状圧電素子が、圧電組成物感圧体は芯電極を覆い、外電極は圧電組成物感圧体を覆い、被覆層は少なくとも外電極の一部を覆い、少なくとも被覆層を覆う保護層をさらに備えた構成とすることにより、圧電組成物感圧体の内部への水の浸透を防止することができるのでケ−ブル状圧電素子の初期の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。
【0031】
第7の発明は、特に、第1〜6の発明の撥水材料が蒸留水に対する接触角が125°以上180°未満の材料を用いることにより、特に優れた撥水性を実現することができるので初期のケ−ブル状圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、より優れた耐久性、信頼性を実現することができる。
【0032】
第8の発明は、特に、第1〜第7の発明の撥水処理を施して成した被覆層を単分子層で構成することにより、被覆層の厚みを数nmレベルの単分子層にすると圧電特性を発現させるために高い直流電圧を印加するポーリング処理の際に単分子層で起こる電圧降下が低減され、ポーリングの効率を向上させることができる。また、ポーリング処理時間の短縮化または優れた圧電特性を実現することができる。
【0033】
また、被覆層を単分子層とすることで撥水材料の使用量を少なくすることができるので低コスト化が図れる。
【0034】
第9の発明は、特に、第1〜第8の発明の撥水材料を被覆した圧電セラミック粉末を周期表第1族の元素、周期表2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物とすることにより、本来、周期表第1族の元素、周期表2A族の元素のアルカリ金属やアルカリ土類金属は水により溶出しやすいが、圧電セラミック粉末に含有するこれらアルカリ成分の溶出を抑制することができるため、電気抵抗の大幅な低下を抑制することができる。特に、アルカリ成分を含む圧電組成物感圧体は固有抵抗が低く、さらに電気抵抗値が低くなるとケーブル状圧電素子として使用できない場合もあり、アルカリ成分
を含むケーブル状圧電素子の電気抵抗の低下を防止することは高い実用性を有する。
【0035】
第10の発明は、特に、第1〜第9の発明の圧電セラミック粉末を主成分がチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの少なくとも1種を含む化合物とすることにより、ケーブル状圧電素子が廃棄処理され酸性雨などの環境に曝されても鉛の溶出がなく、環境汚染の可能性がない。また、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を設け、圧電セラミック粉末成分の溶出を防止しているので鉛以外の金属の溶出も抑制され、安全性を一層向上させることができる。
【0036】
第11の発明は、特に、第1〜第10の発明の芯電極を複数の金属線を収束したことにより、芯電極に周設される圧電組成物感圧体が芯電極の複数の金属線の間に入り込み、芯電極と圧電組成物感圧体の間に空気層の介在を少なくすることができるのでポーリング処理の際の芯電極と圧電組成物感圧体間の電圧降下を抑制することができ、ポーリング処理の実効電圧を高くすることができる。
【0037】
第12の発明は、特に、第1〜第11の発明の芯電極を多数のポリエステル繊維の収束線に金属線または金属箔を巻回したことにより、芯電極に周設される圧電組成物感圧体がポリエステル繊維の収束線の間、巻回した金属線または金属箔の間に入り込むので芯電極と圧電組成物感圧体の密着性が向上し、第9の発明の作用、効果に加えて圧電組成物感圧体の引っ張り強度を高くすることができる。
【0038】
第13の発明は、特に、第1〜第12の発明の外電極を電気絶縁性の高分子フィルムの両面に導電性材料の箔が接着された導電性フィルムを圧電組成物感圧体に巻回したことにより、優れた導電性を発現させることができ、電極としての機能を向上させることができるとともに、外電極として優れた機械的強度と可撓性を実現することができるのでセンサの折り曲げが繰り返されても外電極の切断による導電性の低下が防止され、高い耐久性を実現することができる。
【0039】
第14の発明は、特に、第1〜第12の発明の外電極を熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末の導電層とすることにより、伸びのある可撓性に優れた外電極とすることができるので優れた耐屈曲性を実現することができる。
【0040】
第15の発明は、特に、第1〜第12の発明の外電極を主成分が導電性粉末と有機高分子に混合物である導電塗料もしくは導電ペーストの塗布膜とすることにより、圧電組成物感圧体と外電極の密着性を高くすることができとともに、外電極と圧電組成物感圧体の間に空気層の介在を少なくすることができるのでポーリング処理の際の芯電極と圧電組成物感圧体間の電圧降下を抑制することができ、ポーリング処理の実効電圧を高くすることができる。
【0041】
第16の発明は、特に、第1〜第12の発明の外電極を導電性材料の蒸着膜とすることにより、外電極を薄膜で形成することができるので圧電組成物感圧体の優れた可撓性を維持することができ、圧電組成物感圧体の有する圧電特性の低下を防止することができる。
【0042】
第17の発明は、特に、第13〜第16の発明の導電性材料または導電性粉末を、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種を含むものとすることにより、特に優れた導電性と耐食性を実現することができる。
【0043】
第18の発明は、特に、第1〜第17の発明の可撓性を有する有機高分子を熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料とすることにより、圧電組成物感圧体に優
れた弾性と可撓性を付与することができるので圧電組成感圧体は印加された圧力に対して大きな反発力と変位量を得ることができ、圧電特性を向上させることができる。
【0044】
第19の発明は、特に、第18の発明の熱可塑性エラストマーを塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンの少なくとも1種の材料とすることにより、圧電組成物感圧体中の圧電セラミック粉末の含有量を多くすることができるのでケーブル状圧電素子としての圧電特性を向上させることができる。
【0045】
第20の発明は、特に、第1〜第19の発明の圧電組成物感圧体にチタンカップリング剤を含有させることにより、圧電セラミック粉末表面に疎水性を発現させることができるので可撓性を有する有機高分子との馴染みがさらに良好となり、両者の混練性が向上し、混練加工時間を短縮化することができ、生産性を向上させることができる。また、混練時間を従来と同じとした場合は、混練を向上させるために用いるチタンカップリング剤の量を減らすことができ、材料のコストを下げることができる。
【0046】
第21の発明は、特に、第1〜第19の発明の圧電組成物感圧体にイソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、イソプロポキシトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネートの少なくとも1種を含む材料とすることにより、圧電セラミック粉末と有機高分子との混練性(混合・分散)を向上させることができるので混練加工時間の短縮化、圧電特性の向上、圧電特性の安定化、可撓性の向上を実現することができるとともに、任意の形状に容易に成型することができる。
【0047】
第22の発明は、特に、第1〜第21の発明の保護層を電気絶縁性の熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料とすることにより、圧電組成物感圧体と外電極の密着性を向上させることができるのでセンサの感度を向上させることができるとともに、外部からの機械的な力によるケーブル状圧電素子の破損を防止することができる。
【0048】
第23の発明は、特に、第1〜第22の発明の圧電セラミック粉末の比誘電率が0より大きく1000以下のものを用いることにより、ケーブル状圧電素子に圧電性を発現させるために直流高電圧を印加してポーリング処理した場合、圧電セラミック粉末に印加される電圧の割合を大きくすることができるのでケーブル状圧電素子の電圧出力定数を高くすることができ、圧電素子の感度を高くることができる。
【0049】
第24の発明は、(A)圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とを混合して圧電組成物感圧体を形成するステップと、(B)芯電極に圧電組成物感圧体を設けるステップと、(C)圧電組成物感圧体に接続される外電極を、芯電極と絶縁するように設けるステップと、(D)圧電セラミック粉末への水分の吸収を抑制する被覆層を、少なくとも圧電セラミック粉末の外側に設けるステップとを備えたケ−ブル状圧電素子の製造方法に関するものである。
【0050】
第25の発明は、特に、第24の発明のステップDにおいて、圧電セラミック粉末の表面に被覆層を設け、ステップDの後にステップAを行うケ−ブル状圧電素子の製造方法に関するものである。
【0051】
第26の発明は、特に、第24の発明のステップAの後、ステップDにおいて圧電組成物感圧体の少なくとも表面の一部に被覆層を設けるケ−ブル状圧電素子の製造方法に関するものである。
【0052】
第27の発明は、第24の発明のステップDにおいて、少なくとも外電極の表面に被覆層を設け、少なくとも被覆層を覆う保護層を設けるステップをさらに備えたケ−ブル状圧
電素子の製造方法に関するものである。
【0053】
第28の発明は、第24の発明のステップDにおいて、少なくとも外電極の表面の一部に被覆層を設け、少なくとも被覆層を覆う保護層を設けるステップをさらに備えたケ−ブル状圧電素子の製造方法に関するものである。
【0054】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0055】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるケーブル状圧電素子の一部断面図である。図1において、ケーブル状圧電素子は芯電極1の外表面に可撓性の圧電組成物感圧体2を周設し、この圧電組成物感圧体2の外表面に外電極3を周設し、さらに電気絶縁性の弾性体からなる保護層4を備えている。
【0056】
図2は、圧電組成物感圧体2の一部断面を示す模式図である。図2において、ケーブル状圧電素子を構成する圧電組成物感圧体2は撥水処理された圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子6とチタンカップリング剤(図示せず)から構成され、撥水処理された圧電セラミック粉末5が可撓性を有する有機高分子6とチタンカップリング剤に均一に分散した状態にある。
【0057】
図3は、撥水処理された圧電セラミック粉末5の1つの粒子の断面を示す模式図である。図3において、撥水処理された圧電セラミック粉末5は圧電セラミック粉末7の表面に撥水材料の被覆層8が形成されている。
【0058】
芯電極1は、複数の金属線、あるいは多数のポリエステル繊維の収束線に銅などの金属を巻回した構成のものが用いられ、外電極3は、ポリエチレンテレフタレ−トなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着した導電性フィルムをケーブル状の圧電組成物感圧体2に巻回して形成され、保護層4は、圧電組成物感圧体2や外電極3の可撓性を損なわないように電気絶縁性の弾性体である熱可塑性エラストマー、ゴム材料が用いられる。
【0059】
第1の実施の形態におけるケーブル状圧電素子は図4に示すようにして製造される。先ず、圧電セラミック粉末7を適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して乾燥するか、融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬して冷却するか、または圧電セラミック粉末7を所定量の撥水材料の粉末と混合することによって圧電セラミック粉末7に撥水材料の被覆層8を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末5を作製する(S1)。次に、撥水処理された圧電セラミック粉末5と可撓性を有する有機高分子6とチタンカップリング剤をニーダーやロールなどの加工機を用い、撥水処理された圧電セラミック粉末5が可撓性を有する有機高分子6に均一に混合・分散された状態となるように混練を行ない(S2)、ロールの加工機でシート状の圧電組成物感圧体を作製し(S3)、このシート状の圧電組成物感圧体をペレタイザーなどの加工機を用いてペレット状に加工する(S4)。次に、芯電極1を芯材とし、ペレット状の圧電組成物感圧体を押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極1の周囲に圧電組成物感圧体2を周設する(S5)。その後、前述の導電性フィルムを圧電組成物感圧体2の外表面に巻回し、外電極3を形成する(S5)。さらに、前述の電気絶縁性の弾性体を押出成型の加工機を用いて押し出し、保護層4を形成する(S7)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で芯電極1と外電極3の間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S8)、ケーブル状圧電素子を作製する。なお、ポーリング処理(S8)は、保護層4を形成(S6)した後行っているが、芯電極1の周囲に圧電組成物感圧体2を形成(S4)
した後、芯電極1と外電極に該当する疑似電極を用いて行ってもよいし、外電極1を形成(S6)した後、行ってもよい。
【0060】
このようにして作製されたケーブル状圧電素子は、その一端の保護層4と圧電組成物感圧体2を取り除き、芯電極1と外電極3を露出させることにより制御回路に接続され、例えば感圧センサとして使用される。
【0061】
以上のように構成されたケーブル状圧電素子について、以下その動作、作用を説明する。
【0062】
ケーブル状圧電素子の圧電性は、芯電極1と可撓性の外電極3の間に直流電圧を印加し、圧電組成物感圧体2をポーリング処理することにより発現する。圧電組成物感圧体2に圧電性を発現させることにより、ケーブル状圧電素子の一部あるいは全面に時間的に変化する圧力が印加されたとき、芯電極1と可撓性の外電極3の間には、その部分のケーブル状圧電素子に生じる加速度に応じた振動電圧が誘起される。この誘起電圧を利用して圧力を検出することができる。したがって、本発明のケーブル状圧電素子は自動車ドアに設置して挟み込みを防止するセンサ、ドアハンドルに設置して解錠を制御するタッチセンサ、介護ベッドなどに設置して体動を検知するセンサ、ベランダの手すり等に配置して外部からの侵入を検知するセンサなど感圧センサとして利用することができる。
【0063】
前述のような感圧センサは、屋外で使用される場合や自動車用に搭載される場合であれば梅雨時や夏場の雨天による高温水蒸気環境、介護ベッドに搭載される場合であれば失禁や汗による多湿環境、また寝具に搭載される場合であれば衛生保持するための洗濯などによる高温高湿環境の下で使用される可能性が高い。
【0064】
このような高温高湿環境下で感圧センサとして従来のケーブル状圧電素子が使用されると、水蒸気が電極を通過し、ケーブル状圧電素子の内部に拡散する。圧電組成物感圧体の温度が外側よりも低い状態や、圧電組成物感圧体の表面で水蒸気が過飽和状態になると、拡散した水蒸気が凝縮して水を生成し、この水によって圧電組成物感圧体を構成する圧電セラミック粉末の成分や不純物が溶出する現象が発生する。その結果、ケーブル状圧電素子の静電容量が増加するとともに、電気抵抗が減少するなどの電気的特性が変化するという問題が発生し、耐久性が劣るとともに、センサとして用いる場合、検知や制御のための回路を初期の電気特性の変化に対応できるようにする必要があり、回路構成が複雑になる。
【0065】
本実施の形態のケーブル状圧電素子が高温高湿環境下で使用される場合、保護層4が存在するため、水蒸気の圧電組成物感圧体2への拡散量を少なくすることができるが、高温高湿環境下で使用される時間が長くなると、保護層4の材料である有機高分子の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに比べて大きいため、保護層4は水蒸気の拡散を完全に防止することはできず、可撓性の外電極3を通過し、圧電組成物感圧体2表面で水蒸気が凝集して水が生成する。しかしながら、本発明のケーブル状圧電素子は圧電組成物感圧体2を構成する圧電セラミック粉末7に撥水材料の被覆層8を形成しているので圧電組成物感圧体2の部位で水が生成しても、被覆層8の撥水作用により圧電組成物感圧体2には水が浸透せず、水の浸透による圧電セラミック粉末7の成分や不純物の溶出が抑制され、ケーブル状圧電素子の静電容量の増加、電気抵抗の減少を防止することができる。その結果、ケーブル状圧電素子の初期の電気的特性を維持することができ、優れた耐久性と信頼性を実現することができる。また、初期の電気特性の変化を防止できることにより、電気特性の変化を補正する回路構成を必要とせず、信頼性の高い感圧センサを実現することができる。
【0066】
圧電組成物感圧体2は、圧電セラミック粉末5と有機高分子6とチタンカップリング剤とから構成され、優れた圧電特性を発現させるために、圧電セラミック粉末5の含有量を多くした組成としている。この構成により、圧電組成物感圧体2は撥水材料の被覆層8が形成された圧電セラミック粉末5が多数存在するので優れた撥水性を有する表面とすることができるので、圧電組成物感圧体2への凝縮した水の浸透を抑制し、圧電組成物感圧体2の軟化を防止することができる。圧電感圧組成物2が優れた撥水性を発現させるため、圧電セラミック粉末5の表面に形成する被覆層8は撥水性に優れた材料が必要となる。
【0067】
なお、特許文献2で開示されているように、鉛を含む圧電セラミック粉末に被覆層を形成し、これを有機高分子に分散混合させて造られた圧電組成物感圧体がある。この被覆層の材料は、無機系、有機系化合物による被膜、有機系の単分子膜から構成され、いずれの材料でも圧電セラミック粉末からの鉛の溶出防止の効果が得られるものであるが、圧電組成物感圧体自身は水の吸収は防止できるものではない。その理由は次のように考えられる。
【0068】
特許文献2において、被覆層の材料は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、リチウムシリケートの無機化合物を用いているが、これらは親水性を示すものであり、撥水性のもつ水を弾く作用はなく、水と圧電セラミック粉末の接触を妨げるというバリア層としての作用である。これにより、鉛の溶出を抑制することができるが、被覆層が撥水性を有さないため、圧電組成物感圧体自身は水を吸収するものと考えられる。
【0069】
また、被覆層の材料として、有機化合物や単分子膜を用いたものは親水性こそないが、鉛の溶出の抑制効果を無機化合物と比較すると、鉛の溶出量は同等かむしろ劣る結果を示していることから、無機化合物も有機化合物も単分子膜も前述のバリア層としての作用によって鉛の溶出を抑制していると考えられる。また、有機化合物としてアクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などの材料、単分子膜として有機珪素化合物、有機チタン化合物の記述があるが、特許文献2で用いている有機化合物、単分子膜は本願発明のように優れた撥水性を有するものでななく、異なる組成や分子構造を持つ化合物であるか、被覆層の性状が異なっていると推定される。
【0070】
したがって、特許文献2の被覆層を設けた構成は被覆層の材料に関係なく、圧電組成物感圧体は同等の水を吸収し、軟化していると考えられ、さらに特許文献2には被覆層が撥水性を有するという記述もないことから、本発明のように撥水作用によって圧電セラミック粉末の成分の溶出を防止するものではない。また、特許文献2の被覆層は、圧電体組成物感圧体の軟化による圧電特性の変化、機械的引っ張り強度の低下、水の吸収によって起こる静電容量の変化は防止できず、本発明の課題は解決できるものではないと考えられる。
【0071】
また、従来のケーブル状圧電素子は水を吸収すると圧電組成物感圧体2自体が軟化し、圧力と圧電素子の歪みの関係が変化するため、ケーブル状圧電素子の柔らかさの変化に応じた信号処理が必要となり、誤検知の可能性があるが、本実施の形態のケーブル状圧電素子を感圧センサとして使用した場合は、圧電セラミック粉末7を被覆している撥水材料の被覆層6によって圧電組成物感圧体2への水の浸透を防止することができるので圧電組成物感圧体2の軟化が抑制され、常に初期の圧電特性を維持することができる。その結果、同じ印加圧力でも圧電特性の変化に応じた信号処理を必要としないので誤検知を防止できるなど信頼性の高い検知、制御回路を設計することができる。
【0072】
また、被覆層8を撥水材料で構成することにより、薄膜とすることができるので圧電組成物感圧体2への浸透を防止することによる圧電特性の変化を防止することができるとともに、圧電性を発現するために行うポーリング処理において、印加電圧のロスを少なくす
ることができ、低い電圧でも優れた圧電特性を発現させることができる。また、予め圧電セラミック粉末に撥水処理を施すことにより、圧電素子の形状、大きさが変わってもそれに対応した撥水処理工程が必要なく、ケーブル状圧電素子の生産性を高くすることができるとともに、圧電素子の形状、大きさによらず、常に安定した撥水効果をもたせることができる。
【0073】
また、保護層4が水蒸気の拡散の抵抗となるため圧電組成物感圧体2へ到達する水蒸気の量を少なくすることができ、ケーブル状圧電素子の電気的特性、圧電特性の変化を一層低減することができる。
【0074】
また、ケーブル状圧電素子を構成する圧電組成物感圧体2の軟化を抑制することができるので、圧電組成物感圧体2自身の引っ張り強度の低下が防止され、初期の強度を維持することができ、優れた耐久性を実現することができる。
【0075】
また、圧電セラミック粉末7に撥水材料の被覆層8を形成することにより、圧電セラミック粉末7の表面に疎水性を発現させることができるので疎水性を有する有機高分子との馴染みが良好となり、両者の混練性が向上し、混練加工時間の短縮化など生産性を向上させることができる。また、混練時間を従来と同じとした場合は、混練を向上させるために用いるチタンカップリング剤の量を減らすことができ、材料のコストを下げることができる。
【0076】
本実施の形態の被覆層8の撥水材料としては、主成分が有機脂肪酸塩、有機脂肪酸アミド、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、シラン化合物が挙げられる。
【0077】
特に、有機脂肪酸塩としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデンカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸の各脂肪酸とカルシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、銅、鉛の各金属元素の化合物が挙げられ、これらの少なくとも1種の脂肪酸塩が挙げられる。
【0078】
また、有機脂肪酸アミドとしては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデンカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸の各脂肪酸の水素基をアミノ基に置換したものが用いられる。
【0079】
また、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルキルエチルアクリレート、シリコン系樹脂としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、シリコン−アクリルブロック共重合体、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルの重合体が挙げられる。
【0080】
また、シラン化合物としては、圧電セラミック粉末5の表面に少なくともシロキサン結合を有し、かつ少なくともアルキル基またはフルオロアルキル基を有するシアルキルシラン化合物、フルオロシラン化合物が挙げられる。
【0081】
なお、本発明のシラン化合物としては、次のものが有効である。
【0082】
・ SiX
・ SiX−O−SiX
さらに具体的な化合物としては
・ Si(OC
・ Si(OCH−O−Si(OCH
・ Si(OC−O−Si(OCH
・ Si(OC−O−Si(OC
・ Si(NCO)
・ Si(NCO)−O−Si(NCO)
・ SiCl
(10)SiCl−O−SiCl
が挙げられる。
【0083】
また、本実施の形態で用いることができるシラン化合物としては、下記のものを例示することができる。
【0084】
(11)SiYpCl4−p
(12)CH(CHO(CHSiYqCl3−q
(13)CH(CH−Si(CH(CH−SiYCl3−q
(14)CFCOO(CHSiYCl3−q
但し、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数、rは1〜25の整数、sは0〜12の整数、tは1〜20の整数、uは0〜12の整数、vは1〜20の整数、wは1〜25の整数を示す。また、Xは、ハロゲン、Yは、水素、アルキル基、アルコキシル基、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基である。
【0085】
さらに、具体的なシラン系化合物として下記に示す(15)−(21)が挙げられる。
【0086】
(15)CHCHO(CH15SiCl
(16)CH(CHSi(CH(CH15SiCl
(17)CH(CHSi(CH(CHSiCl
(18)CHCOO(CH15SiCl
(19)CF(CF−(CH−SiCl
(20)CF(CF−(CH−SiCl
(21)CF(CF−C−SiCl
また、上記クロロシラン系化合物の代わりに、全てのクロロシリル基をイソシアネート基に置き扱えたイソシアネート系化合物、例えば下記に示す(22)−(26)を用いてもよい。
【0087】
(22)SiY(NCO)4−p
(23)CH−(CHSiY(NCO)3−p
(24)CH(CHO(CHSiY(NCO)q−P
(25)CH(CH−Si(CH(CH−SiY(NCO)−q
(26)CFCOO(CHSiY(NCO)3−q
但し、p、q、r、s、t、u、v、wおよびYは前述と同様である。
【0088】
前述のシラン系化合物に代わりに、下記(27)−(33)に具体的に例示するシラン系化合物を用いてもよい。
【0089】
(27)CHCHO(CH15Si(NCO)
(28)CH(CHSi(CH(CH2)15Si(NCO)
(29)CH(CHSi(CH(CH2)Si(NCO)
(30)CHCOO(CH15Si(NCO)
(31)CF(CF−(CH−Si(NCO)
(32)CF(CF−(CH−Si(NCO)
(33)CF(CF−C−Si(NCO)
また、シラン系化合物として、一般に、SiY(OA)4−k(Yは、前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2または3)で表される物質を用いることが可能である。中でも、CF−(CF−(R)−SiY(OA)3−q(nは1以上の整数、好ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、シリコンもしくは酸素原子を含む置換基、lは0または1、Y、Aおよびqは前記と同様)で表される物質を用いると、より優れた防汚性の被膜を形成できるが、これに限定されるものではなく、これ以外にも、 CH−(CH−SiY(OA)3−qおよびCH−(CH−0−(CH−SiY(OA)3−q、CH−(CH2)−Si(CH−(CH−SiY(OA)3−q、CFCOO−(CH−SiY(OA)3−q
などが使用可能である。
【0090】
但し、q、r、s、t、u、v、w、YおよびAは、前述と同様である。
【0091】
さらに、より具体的なシラン系化合物としては、下記に示す(34)−(57)を挙げることができる。
【0092】
(34)CHCHO(CH15Si(OCH
(35)CFCHO(CH15Si(OCH
(36)CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH
(37)CH(CHSi(CH(CHSi(OCH3)
(38)CHCOO(CH15Si(OCH
(39)CF(CF(CHSi(OCH
(40)CF(CF−C−Si(OCH
(41)CHCHO(CH15Si(OC
(42)CH(CHSi(CH(CH15Si(OC
(43)CH(CHSi(CH(CHSi(OC
(44)CF(CHSi(CH(CHSi(OC
(45)CHCOO(CH15Si(OC
(46)CFCOO(CH15Si(OC
(47)CFCOO(CH15Si(OCH
(48)CF(CF(CHSi(OC
(49)CF(CF2)(CH2)Si(OC
(50)CF(CF2)(CH2)Si(OC
(5l)CF(CFSi(OC
(52)CF(CF(CH)2Si(OCH
(53)CF(CF(CHSi(OCH
(54)CF(CF(CHSiCH(OC
(55)CF(CF(CHSiCH(OCH
(56)CF(CF(CHSi(CHOC
(57)CF(CF(CHSi(CHOCH
(22)−(57)の化合物を用いた場合には、塩酸が発生しないため、装置保全およ
び作業上のメリットもある。
【0093】
前述のシラン化合物は撥水材料による被覆層8を単分子の層で形成することができる。単分子の層はその厚みが数nmレベルの超薄膜であるので圧電組成物感圧体2を作製後、圧電特性を発現させるために行うポーリング処理において高圧の直流電圧を印加した際、単分子層での電圧降下を少なくすることができるのでポーリングの効率を向上させることができ、処理時間の短縮化が可能であるとともに、優れた圧電特性を実現することができる。また、撥水材料の被覆層8を単分子層とすることで撥水材料の使用量を著しく少なくすることができるのでケーブル状圧電素子の低コスト化を図ることができる。
【0094】
本実施の形態によれば、撥水材料の被覆層8は圧電セラミック粉末の表面に形成している。圧電組成物感圧体2への水の浸透を抑制し、高温高湿環境下での圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を著しく少なくするためには圧電組成物感圧体2全体に優れた撥水性を発現させる必要があり、そのためには被覆層8の撥水性を著しく高くする必要がある。そのために被覆層8は蒸留水に対する接触角が125°以上の撥水材料がよい。言い換えれば、被覆層8の蒸留水に対する接触角が125°以上であれば、圧電組成物感圧体2全体が温度の高い環境下でも凝縮した水に対して高い撥水性を得ることができ、圧電組成物感圧体2への水の浸透を抑制する効果を高くできるということである。なお、接触角はその定義上、180°未満であるので、蒸留水に対する接触角が125°以上180°未満の撥水材料が好ましい。望ましくは蒸留水に対する接触角が150°以上の超撥水材料がよい。
【0095】
特に、撥水材料の被覆層8の蒸留水に対する接触角が150°以上の撥水材料としては、前述の脂肪酸塩、脂肪酸アミド、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、シラン化合物が挙げられる。
【0096】
また、脂肪酸塩に関しては特に、カルシウムを含むものが撥水性に優れている。この理由は明確ではないが以下のように考察される。
【0097】
脂肪酸カルシウムの撥水材料を用いて作製した圧電組成物感圧体2はカルシウム以外の脂肪酸塩からなる撥水材料を用いたものよりも柔らかいことから、同じ混練条件でも混練性に優れていると言える。混練性に優れていることは、可撓性を有する有機高分子6中に圧電セラミック粉末が均一に分散していることであり、圧電セラミック粉末は撥水材料の被覆層8だけでなく、可撓性を有する有機高分子6にも均一に被覆された状態にあり、このことがより優れた撥水性を実現していると考えられる。
【0098】
なお、S1においては撥水材料の被覆層8は、撥水材料を加熱して溶融させた後、圧電セラミック粉末7を浸漬するか、撥水材料に適合した溶媒に撥水材料を入れ、適切な濃度に調整した溶液に圧電セラミック粉末7を浸漬し、その後乾燥処理を行うか、撥水材料が固体の場合には破砕材料の粉末と圧電セラミック粉末5を混合することのいずれかの方法で形成される。また、撥水材料は前述した1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
シラン化合物に適した溶媒としては、活性水素を含まない非水系溶媒を用いるのが好ましく、水を含まない炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコン系溶媒などが用いられる。なお、石油系の溶剤の他に具体的に使用可能なものは、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン、ジメチルシリコン、フェニルシリコン、アルキル変性シリコン、ポリエステルシリコンなどを挙げることができる。また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、パーフロロオクタン、トリスパーフルオロn−ブチルアミン系などが
ある。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、よく混合するものなら2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
なお、圧電セラミック粉末7と可撓性を有する有機高分子6とチタンカップリング剤に撥水材料を添加してニーダーやロールなどの加工機を用いて混合・分散しても圧電セラミック粉末7の粒子一つ一つを完全に撥水材料で被覆することができないため、優れた撥水性を得ることができない。したがって、優れた撥水性を実現するためには圧電セラミック粉末の粒子一つ一つの表面に撥水材料の被覆層8を設ける必要がある。
【0101】
本実施の形態に用いられる圧電セラミック粉末7の化合物は、チタン酸鉛、ジルコン鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸アルカリなどのペロブスカイト構造を有する化合物、ビスマス層状構造を有する化合物、タングステンブロンズ構造を有する化合物などポーリング処理によって圧電性を発現するセラミック材料が挙げられる。
【0102】
これら圧電セラミック粉末7は水などの電解質と接触すると、圧電セラミック粉末7の成分や圧電セラミック粉末7に含有される不純物が溶出する。特に、周期表第1族の元素、周期表第2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物、中でもチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの化合物は水に溶出し易いアルカリ成分を含むため、高温高湿下の環境ではアルカリ成分の溶出が大きく、電気的特性の変化が大きくなる。さらに、アルカリ成分を含む圧電セラミックは固有抵抗は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛に比べ、低い値を示すのでアルカリ成分が溶出すると電気抵抗の絶対値がより低くなり、ケーブル状圧電素子に常に一定電圧を印加して圧力を検知する回路構成では感圧センサとして使用することができなくなる可能性がある。
【0103】
本実施の形態では、アルカリ成分を含む周期表第1族の元素、周期表第2A族元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物や主成分がチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの少なくとも1種を含む化合物からなる圧電セラミック粉末7に撥水材料の被覆層8を形成しているのでアルカリ成分の溶出を抑制することができ、電気抵抗の大幅な低下を防止することができるとともに、ケーブル状圧電素子に常に一定電圧を印加して圧力を検知する回路構成でも感圧センサとして使用でき、高い実用性を有する。
【0104】
また、圧電セラミック粉末7として周期表第1族の元素、周期表第2A族の元素の少なくとも1種を含むペロブスカイト構造を有する化合物や主成分がチタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムの少なくとも1種を含む化合物を用いることにより、ケーブル状圧電素子が廃棄処理され、酸性雨などの環境に曝されても鉛の溶出がなく、環境汚染の可能性がない。また、圧電セラミック粉末7に撥水材料の被覆層8を設け、圧電セラミック粉末7の成分の溶出を防止しているので鉛以外の金属の溶出も抑制され、安全性を一層向上させることができる。
【0105】
また、圧電特性は両電極間に高圧の直流電圧を印加しポーリング処理することで発現するが、本実施の形態のケ−ブル状圧電素子を感圧センサとして用いる場合、重要となる圧電特性は発生電圧の指標となる電圧出力定数である。
【0106】
本実施の形態のケ−ブル状圧電素子を構成する圧電組成物感圧体2は、圧電セラミック粉末7と可撓性を有する有機高分子6の複合体からなり、圧電セラミック粉末7の比誘電率(材料の誘電率/真空の誘電率)が数百から数千であるのに対し、可撓性を有する有機高分子6の比誘電率は数十程度である。ポーリング処理の際に印加された直流電圧は、圧
電セラミック粉末7と可撓性を有する有機高分子6の誘電率の比に反比例して分配されるので、直流電圧は誘電率の低い可撓性を有する有機高分子6に高い電圧が印加されることになる。換言すれば、可撓性を有する有機高分子6として同じものを用いた場合、圧電セラミック粉末7の誘電率が高いほど可撓性を有する有機高分子6に高い電圧が印加されることになる。
【0107】
したがって、圧電組成物感圧体2の圧電セラミック粉末7として比誘電率が約2000のチタン酸ジルコン酸鉛と、比誘電率が約600のチタン酸ビスマス・ナトリウムを用いた場合、両者の圧電組成物感圧体2に一定の直流電圧を印加すると、比誘電率の低いチタン酸ビスマス・ナトリウムの方がチタン酸ジルコン酸鉛よりも高い電圧が印加され、ポーリングの効率を高くすることができるので電圧出力定数が大きくなる。その結果、ケ−ブル状圧電素子を感圧センサとして用いた場合には、印加される圧力に対するセンサの出力電圧を高くすることができるので感度を向上させることができるとともに、ケ−ブル状圧電素子の高感度化により検知回路の増幅率を低くすることができるので電気的ノイズに対し強い感圧センサを得ることができる。
【0108】
圧電セラミック粉末7の比誘電率は低ければ低いほど良いが、1000以下であればチタン酸ジルコン酸鉛の圧電セラミック粉末を用いる場合よりも3倍以上の優れた電圧出力定数が得られる。その点から、有用な圧電セラミック粉末7は、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムを主成分とするものが挙げられる。すなわち圧電セラミック粉末5の比誘電率は0より大きく1000以下であることが好ましい。ただ、実用的に最も比誘電率が低いのはニオブ酸ナトリウム(比誘電率が120)であるので、圧電セラミック粉末5の比誘電率は120以上1000以下であることが好ましい。このような比誘電率の好ましい範囲は、後述する他の実施の形態でも同様である。
【0109】
また、チタン酸ビスマス・ナトリウムやチタン酸バリウムからなる圧電セラミック粉末7はニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムからなる圧電セラミック粉末7よりも残留するフリーのアルカリ成分が少ないため、撥水材料の被覆層8を通して溶出するアルカリ成分の量をより少なくすることができ、電気的特性の変化をより少なくすることができる。
【0110】
一方、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウムからなる圧電セラミック粉末7はチタン酸鉛、ジルコン鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸バリウムからなる圧電セラミック粉末7よりも比誘電率が低いため、可撓性を有する有機高分子6とチタンカップリング剤を含む圧電組成物感圧体2を作製し、圧電性を発現させるために行うポーリング処理の際、圧電セラミック粉末7に印加される直流電圧を高くすることができ、電圧出力定数を高くすることができる。
【0111】
したがって、圧電セラミック粉末7はケ−ブル状圧電素子の使用される環境や、必要とする感度に応じて適宜選択されるものである。
【0112】
本実施の形態は、芯電極1として複数の金属線を収束したものを用いることにより、芯電極1に周設される圧電組成物感圧体2が芯電極1を構成する複数の金属線の間に入り込み、芯電極1と圧電組成物感圧体2の間に空気層の介在を少なくすることができるのでポーリング処理の際の芯電極1と圧電組成物感圧体2の間の電圧降下を抑制することができ、ポーリング処理の実効電圧を高くすることができる。
【0113】
また、芯電極1として多数のポリエステル繊維の収束線に金属線または金属箔を巻回したものを用いる場合は、芯電極1に周設される圧電組成物感圧体2がポリエステル繊維の収束線の間、巻回した金属線または金属箔の間に入り込むので芯電極1と圧電組成物感圧
体2の密着性が向上し、複数の金属線を収束した芯電極1の作用、効果に加えて圧電組成物感圧体2の引っ張り強度を高くすることができる。
【0114】
また、芯電極1に用いられる金属線または金属箔の材料としてC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種を含むものを用いることにより、特に優れた導電性と耐食性を実現することができる。
【0115】
本実施の形態に用いられる可撓性を有する有機高分子6としては、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料が挙げられる。これらの可撓性を有する有機高分子6は、ケーブル状圧電素子に優れた弾性と可撓性を付与することができるので、印加された圧力に対して大きな反発力と変位量を得ることができ、圧電特性を向上させることができる。
【0116】
特に、前述の熱可塑性エラストマーとして、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンは圧電組成物感圧体2中の圧電セラミック粉末5の含有量を多くすることができるのでケーブル状圧電素子の圧電特性を向上させることができる。
【0117】
本実施の形態に用いられるチタンカップリング剤は、撥水処理された圧電セラミック粉末5を覆い、外側に疎水性の側鎖有機官能基をもたせることにより、可撓性を有する有機高分子6との馴染み(濡れ性)を改善し、全体の粘度を下げ、加工性、可撓性、さらに撥水処理された圧電セラミック粉末5の分散性が向上することにより、圧電性の発現を顕著に改善することができる。
【0118】
なお、有機高分子6に加え、チタンカップリング剤を用いてもよい。チタンカップリング剤としては、イソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、イソプロポキシトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、可撓性を有する有機高分子6として塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンを用いた場合は、圧電セラミック粉末3との馴染みが一層改善されるので混練加工時間の短縮化、圧電特性の向上、圧電特性の安定化、可撓性の向上を実現することができるとともに、任意の形状に容易に成型することができる。
【0119】
なお、上記の馴染みが良い理由は、イソプロポキシトリイソステアロイルチタネート、イソプロポキシトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネートのSP値(溶解性パラメーター)が8〜9の値を有し、一方塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレンのSP値は9〜9.5の値であり、類似したSP値を有していることにあると考えられる。
【0120】
また、可撓性の外側電極3を電気絶縁性の高分子フィルムの両面に導電性材料の箔が接着された導電性フィルムで構成することにより、一定でかつ低い電気抵抗を有する電極を得ることができるので常に安定した圧電特性を実現することができるとともに、電気絶縁性の高分子フィルムによって可撓性の外側電極3の引っ張り強度を高くすることができるので圧電組成物感圧体2に強い張力で巻回しても外側電極3が切断されることがなく、圧電組成物感圧体2と外側電極3の密着性を向上させることができ、圧電特性を高めることができる。また、外電極3として優れた機械的強度と可撓性を実現することができるのでセンサの折り曲げが繰り返されても外電極の切断による導電性の低下が防止され、高い耐久性を実現することができる。
【0121】
また、電気絶縁性の高分子フィルムは、芯電極1と圧電組成物感圧体2の構成物の機械的インピ−ダンスに比べ、低い機械的インピ−ダンスを有するので圧電組成物感圧体2に巻回してもセンサ全体の機械的インピ−ダンスの増加を抑制することができ、外部からの
圧力に応じて容易に変形させることが可能となり、低い印加圧力下においても荷重を検出することができる。また、高分子フィルムの厚さはできるだけ薄い方が機械的インピ−ダンスも低くなるので好ましいが、工業的に多く利用されている数十μm以下の厚さが入手の容易性や価格の点でも好ましい。
【0122】
また、高分子フィルムの中でも特にポリエチレンテレフタレ−トは最高使用温度が約150℃と他の高分子フィルムに比べ、耐熱性が高いので耐熱性に優れたケ−ブル状圧電素子を実現することができる。
【0123】
また、電気絶縁性の高分子フィルムの両面に設けられた導電性材料の箔は、アルミニウム、銅、ニッケルが挙げられるが、これらの中でも特にアルミニウムは銅に比べ熱的に酸化され難く、またニッケルに比べ柔らかいので機械的インピ−ダンスが低いことから最も適している。
【0124】
また、この導電性フィルムは高分子フィルムと導電材料の箔の構成に限定されるものではなく、できるだけ薄い方が好ましいことから、高分子フィルムに形成されたアルミニウムなどの金属の蒸着膜、導電性塗料を塗布した塗膜も適用可能である。
【0125】
また、本実施の形態に用いられる保護層4は電気絶縁性の熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む材料とすることにより、圧電組成物感圧体2と外電極3との密着性を向上させることができるのでセンサの感度を向上させることができるとともに、外部からの機械的な力によるケーブル状圧電素子の破損を防止することができる。
【0126】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1で述べた外電極3を他の材料を用いた場合の構成、作用、効果について説明する。図5に、本発明の実施の形態2におけるケーブル状圧電素子の一部断面図を示す。
【0127】
図5のように、本実施の形態のケーブル状圧電素子の外電極9として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末の導電層で構成することができる。この構成では、外電極9を伸びのある可撓性に優れた外電極とすることができるので高い耐屈曲性を有し、耐久性に優れたケーブル状圧電素子を得ることができる。この導電層は熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムの少なくとも1種を含む弾性体と導電性粉末を混練したものを押出機などの加工機を用いて、押し出し成型することによって圧電組成物感圧体2に形成される。
【0128】
また、外電極9として、主成分が導電性粉末と有機高分子との混合物である導電塗料、もしくは導電ペーストの塗布膜で構成することもできる。この構成では、圧電組成物感圧体2と外電極9の密着性を高くすることができるとともに、外電極9と圧電組成物感圧体2の間に空気層の介在を少なくすることができるのでポーリング処理の際の芯電極1と圧電組成物感圧体2との間の電圧降下を抑制することができ、ポーリング処理の実効電圧を高くすることができる。
【0129】
また、外電極9として、導電性材料の蒸着膜で構成することもできる。この構成では、外電極9を薄膜で形成することができるので圧電組成物感圧体2の優れた可撓性を維持することができ、圧電組成物感圧体2の有する圧電特性の低下を防止することができる。この薄膜は真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの装置を用い、圧電組成物感圧体2に蒸着によって形成される。
【0130】
なお、前述の導電性粉末、導電性材料は、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、
Niの少なくとも1種を用いることにより、特に優れた導電性と耐食性を実現することができる。
【0131】
また、実施の形態2で述べた外電極9は、圧電組成物感圧体2との密着性が優れているので第1の実施の形態で述べた外電極3に周設される保護層4を形成しなくてもケーブル状圧電素子として使用することができるが、ケーブル状圧電素子の傷の発生を防止する目的に保護層4を形成してもよい。
【0132】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3におけるケーブル状圧電素子の一部断面図である。図6において実施の形態1と異なるところは、圧電組成物感圧体10中の圧電セラミック粉末に撥水処理を施しておらず、撥水材料の被覆層11を圧電組成物感圧体10の表面に設けた点である。なお、実施の形態1と同一部材は同じ符号を付けている。
【0133】
図6に示すように、実施の形態3におけるケーブル状圧電素子は芯電極1の外表面に可撓性の圧電組成物感圧体10(破水処理されていないもの)を形成し、この圧電組成物感圧体10の外表面に撥水処理を施して成した被覆層11を形成し、この撥水処理を施して成した被覆層11の外表面に外電極3を形成し、さらに電気絶縁性の弾性体からなる保護層4を形成して構成されている。
【0134】
実施の形態3におけるケ−ブル状圧電素子は図7のようにして製造される。先ず、圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とチタンカップリング剤をニーダーやロールなどの加工機を用い、セラミック粉末が可撓性を有する有機高分子に均一に混合・分散された状態となるように混練を行ない(S9)、ロールの加工機でシート状の圧電組成物感圧体を製造し(S10)、このシート状の圧電組成物感圧体をペレタイザーなどの加工機を用いてペレット状に加工する(S11)。次に、芯電極1を芯材とし、ペレット状の圧電組成物感圧体を押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極1の周囲に圧電組成物感圧体10を周設する(S12)。次に適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して乾燥するか、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬するか、または所定量の撥水材料の粉末を付着させることによって圧電組成物感圧体10の表面に撥水処理を施して成した被覆層11を形成する(S13)。次に、ケーブル状の圧電組成物感圧体10に、ポリエチレンテレフタレ−トなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着した導電性フィルムを巻回するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性粉末と有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成型により形成するか、前述の導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)を塗布するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性材料を真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの方法で形成した薄膜を形成するかのいずれかによって外電極3を形成する(S14)。さらに、弾性を有する熱可塑性エラストマーやゴムなどの有機高分子を用い、押出成型により保護層4を形成する(S15)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で芯電極1と外電極3の間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S16)、ケーブル状圧電素子が製造される。なお、ポーリング処理(S16)は、保護層4を形成(S15)した後行っているが、芯電極1の周囲に圧電組成物感圧体10を形成(S12)した後、または撥水処理の被覆層11を形成(S13)した後、芯電極1と外電極に該当する疑似電極を用いて行ってもよいし、外電極1を形成(S14)した後、行ってもよい。
【0135】
このようにして製造されたケーブル状圧電素子は、その一端の保護層4と圧電組成物感圧体10を取り除き、芯電極1と外電極3を露出させることにより制御回路に接続され、感圧センサとして使用される。
【0136】
上記構成のケーブル状圧電素子が第1の実施の形態と同様に高温高湿環境下で使用される場合、保護層4が存在するため、水蒸気の圧電組成物感圧体10へ拡散する量は低減されるが、保護層4を構成する有機高分子の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに比べて大きいため、保護層4の厚みが2mm以下レベルでは水蒸気の拡散を完全に防止することはできず、圧電組成物感圧体10と外電極3の間で水が生成する。しかしながら、圧電組成物感圧体10の表面には撥水処理を施して成した被覆層11を形成しているので圧電組成物感圧体10への水の浸透が抑制されるともに、圧電組成物感圧体10に含まれる圧電セラミック粉末7の成分の溶出を低減することができる。したがって、第1の実施の形態と同様に初期のケーブル状圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、耐久性と信頼性に優れたケーブル状圧電素子を実現することができる。
【0137】
なお、圧電セラミック粉末7と可撓性を有する有機高分子6とチタンカップリング剤に撥水材料を添加してニーダーやロールなどの加工機を用いて混合・分散した場合、撥水処理材料は圧電組成物感圧体10の内部に分散した状態で存在するため、押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極1の周囲に圧電組成物感圧体10の被覆層を形成しても撥水材料は圧電組成物感圧体10の表面を完全に被覆することができず、優れた撥水性を得ることができない。したがって、優れた撥水性を実現するためには圧電組成物感圧体10の表面に撥水材料の被覆層11を設ける必要がある。
【0138】
また、ケーブル状圧電素子の場合は、芯電極1に圧電組成物感圧体10を押し出し成型により被覆した後、ロールに巻き取る必要がある。これらは連続して行う作業であり、圧電組成物感圧体10の押し出しとロールの巻き取り作業の間に撥水処理工程を設け、撥水処理をしながらロールで巻き取り作業を実施することにより、現状の製造工程を大幅に変える必要がなく、圧電組成物感圧体10の表面に撥水材料の被覆層11の形成を連続して行うことができ、生産性を損なうことがない。
【0139】
また、押し出し成型は、圧電組成物感圧体10を加熱して行うため、押し出し成型とロールでの巻き取りの間にケーブル状の圧電組成物感圧体10を冷却する必要があるが、撥水材料が液体で処理温度が低温である場合は、撥水処理工程が冷却工程を兼用することが可能であり、この製造方法は現状の製造方法と同等の生産性を確保することができる。
【0140】
なお、本実施の形態では圧電セラミック粉末7に撥水処理を施さないで圧電体組成物感圧体10を形成したものを説明したが、圧電セラミック粉末7に撥水処理を施したものを用いて第1の実施の形態で説明した圧電組成物感圧体2を設けて本実施の形態のようなケーブル状圧電素子の構成とすると、ケーブル状圧電素子としての撥水性能がより向上するので、これをセンサとして用いた場合、高温多湿環境においてもより安定した性能を得ることが可能である。
【0141】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4におけるケーブル状圧電素子の一部断面図である。図8において実施の形態3と異なるところは、撥水材料の処理の被覆層12を外電極3の表面に設けた点である。なお、実施の形態3と同一部材は同じ符号を付けている。
【0142】
図8に示すように、実施の形態4におけるケーブル状圧電素子は芯電極1の外表面に可撓性の圧電組成物感圧体10を形成し、この圧電組成物感圧体10の外表面に外電極3を形成し、この外電極3の外表面に撥水処理を施して成した被覆層12を形成し、さらに電気絶縁性の弾性体からなる保護層4を形成して構成されている。
【0143】
実施の形態4におけるケ−ブル状圧電素子は以下のようにして製造される。図9でその製造工程を説明する。先ず、圧電セラミック粉末と可撓性を有する有機高分子とチタンカップリング剤をニーダーやロールなどの加工機を用い、セラミック粉末が可撓性を有する有機高分子に均一に混合・分散された状態となるように混練を行ない(S17)、ロールの加工機でシート状の圧電組成物感圧体を製造し(S18)、このシート状の圧電組成物感圧体をペレタイザーなどの加工機を用いてペレット状に加工する(S19)。次に、芯電極1を芯材とし、ペレット状の圧電組成物感圧体を押出成型の加工機を用いて押し出し、芯電極1の周囲に圧電組成物感圧体10を形成する(S20)。次に、ケーブル状の圧電組成物感圧体10に、ポリエチレンテレフタレ−トなどの高分子フィルムの両面にC、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の箔を接着した導電性フィルムを巻回するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性粉末と有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成型により形成するか、前述の導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)を塗布するか、C、Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1種の導電性材料を真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの方法で形成した薄膜を形成するかのいずれかによって外電極3を形成する(S21)。次に適切な溶媒で希釈して所定の濃度に調整した撥水材料を含む溶液に浸漬して乾燥するか、または融解する温度に加熱された撥水材料の溶液に浸漬するか、または所定量の撥水材料の粉末を付着させることによって圧電組成物感圧体10の表面に撥水処理を施して成した被覆層11を形成する(S22)。さらに、弾性を有する熱可塑性エラストマーやゴムなどの有機高分子を用い、押出成型により保護層4を形成する(S23)。その後、圧電性を発現させるために空気中またはシリコンオイル浴中で芯電極1と外電極3の間に直流高電圧を印加してポーリング処理を行い(S24)、ケーブル状圧電素子が製造される。なお、ポーリング処理(S24)は、保護層4を形成(S23)した後行っているが、芯電極1の周囲に圧電組成物感圧体10を形成(S20)した後、芯電極1と外電極に該当する疑似電極を用いて行ってもよいし、外電極1を形成(S21)した後、または被覆層12を形成(S22)した後、行ってもよい。
【0144】
このようにして製造されたケーブル状圧電素子は、その一端の保護層4と圧電組成物感圧体10を取り除き、芯電極1と外電極3を露出させることにより制御回路に接続され、感圧センサとして使用される。
【0145】
上記構成のケーブル状圧電素子が実施の形態1または3と同様に高温高湿環境下で使用される場合、保護層4が存在するため、水蒸気の圧電組成物感圧体10へ拡散する量は低減されるが、保護層4を構成する有機高分子の3次元網目分子構造の隙間は水蒸気1分子の大きさに比べて大きいため、保護層4の厚みが2mm以下レベルでは水蒸気の拡散を完全に防止することはできず、保護層4と外電極3との間で水が生成する。しかしながら、外電極3の表面には撥水処理を施して成した被覆層12を形成しているので圧電組成物感圧体10への水の浸透が抑制されるともに、圧電組成物感圧体10に含まれる圧電セラミック粉末の成分の溶出を低減することができる。したがって、第1や第3の実施の形態と同様に初期のケーブル状圧電素子の電気的特性、圧電特性、機械的強度の変化を低減することができ、耐久性と信頼性に優れたケーブル状圧電素子を実現することができる。
【0146】
また、外電極3も水の浸透を抑制することができるので外電極3の電気抵抗の変化を防止することができ、常に安定した圧電特性を検知回路に伝達することができる。
【0147】
また、ケーブル状圧電素子の場合は、圧電組成物感圧体10に外電極3を周設した後、ロールに巻き取る必要がある。これらは連続して行う作業であり、外電極3の周設とロールでの巻き取り作業の間に撥水処理工程を設け、撥水処理をしながらロールで巻き取り、撥水材料の被覆層12を形成することにより、現状の製造工程を大幅に変える必要がなく、撥水処理を連続して行うことができ、生産性を損なうことがない。
【0148】
なお、本実施の形態では圧電セラミック粉末7に撥水処理を施さないで圧電体組成物感圧体を形成したものを説明したが、第1、第2の実施の形態で説明したように、圧電セラミック粉末7に撥水処理を施したものを用いて圧電組成物感圧体2を設けて本実施の形態のようなケーブル状圧電素子の構成とすると、ケーブル状圧電素子としての撥水性能がより向上するので、これをセンサとして用いた場合、高温多湿環境においてもより安定した性能を得ることが可能である。また、本発明の実施の形態4の構成に加え、第3の実施の形態で説明したように圧電組成物感圧体10に被覆層11を形成しても撥水性能が一層向上し、効果を顕著にすることができる。
【0149】
また、第1〜第4の実施の形態ではケーブル状圧電素子の少なくとも保護層4よりも内側に撥水処理による被覆層を設けることにより、圧電組成物感圧体の内部への水の浸透を抑制し、軟化を防止する効果や圧電セラミックス粉末や不純物の水による溶出を抑制するについて説明した。これらの構成の効果より、撥水材料の被覆層は保護層4よりも内側に設けることにより優れた撥水性能を実現することができるとともに、この被覆層は複数の箇所に形成することにより、より撥水性能を向上させることが可能であることを示している。
【0150】
また、第1〜第4の実施の形態のケーブル状圧電素子において、これらの圧電組成物感圧体の断面が露出するような構成で使用される場合が想定される。その場合、断面に露出する芯電極と圧電組成物感圧体との境界部から水蒸気が侵入し、芯電極側に接する圧電組成物感圧体表面で水蒸気が凝縮することが考えられる。このような場合、図10の一部断面図に示すように、芯電極1と圧電組成物感圧体10との間に撥水材料による第2の被覆層13を設けることにより、圧電セラミック粉末や不純物の水による溶出を抑制することや圧電組成物感圧体10の水の吸収による軟化を防止することが可能である。さらに、圧電組成物感圧体10の切断端面にも撥水材料による第3の被覆層14を形成することが効果的である。なお、図10では第3の実施の形態の構成をベースにしているが、第1、第2、第4実施の形態の構成をベースにする場合も同様である。
【0151】
また、以上の実施の形態では、撥水材料の被覆層を設けることにより、圧電セラミックス粉末や不純物の水による溶出を抑制する効果や圧電組成物感圧体の内部への水の浸透を抑制し、軟化を防止する効果について説明した。これ以外に、それらの効果を他の構成でも実現することができる。
【0152】
すなわち、撥水処理材料による被覆層以外に、保護層4を厚く形成して水蒸気の透過に対する抵抗を大きくすることでも圧電組成物感圧体への水の浸透が抑制され軟化を防止できるとともに、圧電セラミックス粉末や不純物の溶出を抑制することができる。あるいは、物理蒸着(スパッタリング、蒸着)や化学蒸着、化学合成処理により水蒸気の分子が通過し難い緻密な膜を被覆層として形成してもよい。物理蒸着や化学蒸着、化学合成処理による緻密な膜は、水蒸気そのものの侵入を抑制することができるので撥水材料の被覆層とは異なり、ケーブル状圧電素子の最外層にも設けても圧電組成物感圧体の軟化を防止できるとともに、圧電セラミックス粉末、不純物の溶出を防止する効果を実現することができる。
【0153】
ただし、あまり保護層10、14が厚いと、圧電素子の感度が低下するので厳密に設計する必要がある。また緻密な膜はピンホールがあると効果が損なわれるので高い精度で形成する必要がある。
【0154】
本発明の第3または第4の実施の形態においても、第2の実施の形態で説明したように、外電極3を、導電性粉末と有機高分子とを混練して作製した可撓性導電組成物を押出成
型したもの、導電性粉末を有機高分子に分散させた導電性塗料(ペースト)を塗布したもの、導電性材料を真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの蒸着で形成したものは、圧電組成物感圧体10との密着性に優れているのでケーブル状圧電素子を別の部材で保護する手段がある場合は保護層4を形成しなくてもよい。
【0155】
なお、本発明の第1〜第4の実施の形態におけるケーブル状圧電素子は、可撓性を有しかつ形状がケーブル状であるので屈曲した部位を含んだ配設や取り付け幅に制限を有する省スペースの配設に対応可能であり、かつ高温高湿環境下で使用されても初期の電気的特性、圧電特性、機械的強度を維持できるという優れた特性を有している。したがってこのような配設条件や特性が要求される屋外使用の圧力、振動検知用などのセンサとして使用するのに適している。具体的には、特に車のスライドア、ハッチバックドア、トランク、パワーウィンドウなど開閉が伴う機器や部品に設置して挟み込みを検知するセンサや、車のドアハンドルに設置してドアの解錠を制御するタッチセンサが挙げられる。
【0156】
また、介護用ベッドなどに使用される体動センサは大面積の検知を確保する必要があるが、本発明のケーブル状圧電素子は、ベッドの上に蛇行させて配設することにより大面積の検知を可能とすることができ、さらに、失禁や汗などの多湿環境や衛生保持のための洗濯などの使用状況も考慮すると介護ベッド用の体動センサとしても最適な構成である。
【0157】
また、屋外でもマンションや戸建てにおけるベランダの手すりや玄関のドアに配置して外部からの侵入を検知するセンサなど感圧センサとして利用することができる。この場合も屋外であるのでケーブル状圧電素子が高温多湿環境に暴露されるが、このような環境下でも安定した圧電特性を維持することができるので誤動作が防止でき、防犯用センサとしても十分使用することができる。
【実施例】
【0158】
(実施例1)
圧電セラミック粉末として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/20.85Ba0.15TiOを用い、下記に述べる撥水材料を用い、圧電セラミック粉末の表面に以下の撥水材料の被覆層を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末を作製した。
【0159】
撥水材料は、オレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)、ポリテトラフルオロエチレン(フッ素系樹脂)、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)メタクリル酸エステル(アクリル系樹脂)の4種を用い、オレイン酸カルシウムは加熱溶解させた溶液、ポリテトラフルオロエチレンは溶剤メチルエチルケトンで希釈した溶液、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランは溶媒ヘキサメチルシロキサンを含む溶液、メタクリル酸エステルは溶剤キシレンで希釈した溶液に圧電セラミック粉末を浸漬処理し、その後乾燥することで撥水材料の被覆層を形成した。
【0160】
次に、圧電セラミック粉末が約60体積%、塩素化ポリエチレンが約35体積%となるように、4種の撥水処理された圧電セラミック粉末と、可撓性を有する有機高分子として塩素化ポリエチレンと、チタンカップリング剤としてイソプロポキシトリイソステアロイルチタネートをロール機で混練し、圧電組成物感圧体を製造し、ホットプレス機を用いて厚み約0.5mmの圧電組成物感圧体のシートを製造した。
【0161】
次に、塩素化ポリチレンにカーボンを充填し導電性を付与した厚み0.2mmの導電シートを圧電組成物感圧体のシートの両面に融着し、電極を形成し、圧電性を発現させるために100℃の空気中で電極間に5kV/mmの直流高電圧を印加してポーリング処理を行い、幅20mm、長さ120mmのシート状圧電素子を製造した。
【0162】
以上のように4種の撥水材料を用いて製造したシート状の圧電素子について、高温高湿槽を用いて85℃、相対湿度85%の条件で高温高湿試験を実施した。また、比較のため、前述の圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成していないシート状の圧電素子も製造し、同様に試験を実施した。
【0163】
図11は、高温高湿試験を実施した各シート状の圧電素子の電気抵抗の経時変化を示したグラフ、図12は、高温高湿試験を実施した各シート状の圧電素子の静電容量の経時変化を示したグラフである。両図において、電気抵抗、静電容量の変化は初期の電気抵抗値、静電容量に対する変化率で示している。なお、各試験時間経過後の各シート状の圧電素子を取り出し、常温で電気抵抗、静電容量を測定した。また、測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。
【0164】
図11、図12で明らかなように、撥水処理されたシート状の圧電素子は撥水処理をしていないシート状の圧電素子に比べ、電気抵抗の変化、静電容量の変化が小さいことがわかる。また、200時間でも撥水効果を維持していることが確認され、試験時間に対しそれぞれの変化率が飽和傾向にあることから長時間、高温高湿環境下で用いられても撥水効果を維持することができる。これはシート状の圧電素子を構成している圧電組成物感圧体への水の浸透が抑制され、圧電セラミック粉末の成分の溶出が低減していることに起因していると考えられる。
【0165】
以上のように、特性に差があるが圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成することにより、圧電素子の電気的特性(電気抵抗、静電容量)の変化を抑制し、しかも長期に渡りその効果を持続することができるので電気的特性の安定化と耐久性に優れた圧電素子を得ることができる。
【0166】
(実施例2)
撥水材料を被覆した圧電セラミック粉末の撥水効果を調べるため、各種撥水材料の被覆層を実施例1で用いた圧電セラミック粉末に形成した。次に、ガラス板の上に撥水材料が被覆された圧電セラミック粉末の膜を形成し、この膜の上に蒸留水を滴下することによってできた水玉の接触角を測定した。接触角の測定は協和界面科学社製の接触角計CA−DT型を用いた。なお、比較のため、実施例1で用いたチタンカップリング剤で圧電セラミック粉末の表面を処理したものについても接触角を測定している。
【0167】
測定に用いた撥水材料名と接触角の測定結果を(表1)に示す。
【0168】
【表1】


【0169】
この結果より明らかなように、撥水材料で処理された圧電セラミック粉末は大きな接触角を示すことがわかり、この大きな接触角を有することが圧電素子を構成する圧電組成物感圧体への水の浸透を抑制する効果を発現させると考えられる。
【0170】
実施例1の結果を参照すると圧電素子の電気的特性の変化を抑制する撥水材料は、特に蒸留水の接触角が125°以上のものが良好であり、さらには150°以上であることがより好ましい。
【0171】
(実施例3)
実施例1で作製したシート状の圧電素子を実施例1と同条件の高温高湿試験を20時間実施した後、シート状の圧電素子の両端を挟み、引っ張り強度を測定した。引っ張り強度はシート状の圧電素子が2mm伸びる力の値とした。なお、測定器はイマダ社製のデジタルフォースゲージDPS−50を用いた。
【0172】
その結果を(表2)に示す。
【0173】
【表2】


【0174】
この結果より明らかなように、撥水処理されたシート状の圧電素子の引っ張り強度が高く、圧電組成物感圧体への水の浸透を防止することにより、初期の引っ張り強度の低下を防止することができ、機械的強度に優れた圧電素子を実現することができる。
【0175】
(実施例4)
圧電セラミック粉末として平均粒径が約1μmのチタン酸ビスマス・ナトリウムとチタン酸バリウムの固溶体である(Bi1/2Na1/20.85Ba0.15TiOと平均粒子系が約1μmのチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であるPb(Zr・Ti)Oを用い、撥水材料としてオレイン酸カルシウム(脂肪酸塩)とヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(シラン化合物)を用い、実施例1と同様の方法で各圧電セラミック粉末の表面に前述の撥水材料の被覆層を形成し、撥水処理された圧電セラミック粉末を製造した。
【0176】
次に、撥水処理された圧電セラミック粉末が約60体積%、塩素化ポリエチレンが約35体積%となるように所定量の各撥水処理された圧電セラミック粉末と、可撓性を有する有機高分子として塩素化ポリエチレンと、チタンカップリング剤としてイソプロポキシトリイソステアロイルチタネートとをロール機で混練し、圧電組成物感圧体のシートを作製した後、ペレタイザーでペレットを製造した。
【0177】
この圧電組成物感圧体のペレットを用い、直径0.45mmの多数のポリエステル繊維の収束線に銅箔を巻回したものを芯電極とし、押出成型機を用いて芯電極の周囲に圧電組成物感圧体を厚さ約0.6mmとなるように被覆処理した。次に、幅3mm、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレ−トの高分子フィルムの両面に幅3mm、厚さ10μmのアルミニウム箔を接着した導電性フィルムを芯電極に被覆した圧電組成物感圧体の表面に導電性フィルムの一部が重なるように巻回して外電極とした。さらに、外電極の周囲に押出成型機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを厚さ約0.5mmとなるように保護層を被覆処理し、ケーブル状圧電素子を製造し、圧電性を発現させるために100℃の空気中で芯電極と外電極に5kV/mmの直流電圧を印加してポーリング処理を行った。
【0178】
以上のように作製した各種のケーブル状圧電素子を有効長さが150mmとなるように調整し、実施例1と同条件の高温高湿試験を20時間実施した。試験後、常温で電気抵抗、静電容量を測定した。測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。なお、比較のため、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成していないケーブル状圧電素子も製造し、同様に試験を実施した。
【0179】
(表3)に高温高湿試験20時間後の電気抵抗の変化率、表4に高温高湿試験20時間後の静電容量の変化率を示す。
【0180】
【表3】


【0181】
【表4】


【0182】
この結果より明らかなように、撥水処理された圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子は電気抵抗の変化、静電容量の変化が小さいことがわかり、形状が異なる圧電素子でもシート状の圧電素子と同様な効果を得ることができた。
【0183】
ケーブル状圧電素子の電気抵抗は高温高湿環境下で減少する。これは、凝縮した水が圧電組成物感圧体に浸透し、圧電セラミック粉末の成分が浸透した水に溶解することが原因と考えられる。また、電気抵抗の変化は、(Bi1/2Na1/20.85Ba0.1TiOの圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の方がPb(Zr・Ti)Oの圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子よりも大きい結果と示しているが、これは圧電セラミック粉末に含有するアルカリ成分が水に溶解しやすいことを示している。
【0184】
一方、初期の両者の固有抵抗は、Pb(Zr・Ti)Oの圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の方が(Bi1/2Na1/20.85Ba0.15TiOの圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子よりも約2倍高いことから、(Bi1/
Na1/20.85Ba0.15TiOの圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子は固有抵抗が低く、かつ高温高湿環境下でさらに低下することがわかる。ケーブル状圧電素子が長くなると電気抵抗がさらに低下することから、圧電素子に常に一定電圧を印加して圧力を検知する回路構成では感圧センサとして使用することができなくなる可能性があり、アルカリ成分を含む圧電セラミック粉末を用いた長尺のケーブル状圧電素子を高温高湿環境下で使用する場合は、アルカリ成分の溶出を防止するために撥水処理が不可欠といえる。
【0185】
また、静電容量の変化も(Bi1/2Na1/20.85Ba0.15TiOの圧電セラミック粉末の方がPb(Zr・Ti)Oの圧電セラミック粉末よりも大きい結果と示しているが、これは圧電セラミック粉末に含まれる成分の水に対する吸湿性に差があるものと考えられる。
【0186】
なお、高温高湿試験を1000時間実施したが、20時間のレベルの電気抵抗、静電容量を維持しており、優れた撥水効果を有することを確認した。
【0187】
このように、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成することにより、ケーブル状圧電素子の電気抵抗、静電容量ともに変化を少なくすることができるが、この現象は圧電組成物感圧体の硬さが変化していないことから、撥水材料で被覆した圧電セラミック粉末によって圧電組成物感圧体の撥水性が高くなり、凝縮した水を圧電組成物感圧体が吸収しないことに起因していると考えられる。また、実施例2で説明した撥水処理されたシート状の圧電素子の引っ張り強度が撥水処理していないシート状の圧電素子のそれよりも高くなっていることから、圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成して造られた圧電組成物感圧体は凝縮した水の吸収が抑制されるので軟化が防止され、初期の硬さを維持していると判断することができ、上記考察が正しいことを示している。
【0188】
(実施例5)
実施例4で試験したケーブル状圧電素子について、圧電特性を評価した。圧電特性はケーブル状圧電素子の中央部に一定の荷重を印加した状態で一定の周波数で荷重を変化させながら加振させ、そのときに発生する電圧と荷重の関係から算出した電荷発生量で評価した。
【0189】
(表5)に高温高湿試験20時間後の電荷発生量の変化率を示す。
【0190】
【表5】


【0191】
この結果より明らかなように、撥水処理されたケーブル状圧電素子の電荷発生量の変化が小さく、高温高湿環境下でも安定した圧電特性を得ることができた。圧電特性は圧電組成物感圧体の弾性率によって変化する。すなわち、圧電組成物感圧体が水を吸収して軟化すれば弾性率は低くなり、圧電特性は高くなる傾向となる。(表5)の撥水処理無しのケーブル状圧電素子において、電荷発生量の変化が高くなっている理由は、ケーブル状圧電素子を構成する圧電組成物感圧体が水を吸収し、軟化することによって弾性が低下し、その結果、電荷発生量が高くなったことにある。一方、撥水処理されたケーブル状圧電素子の電荷発生量は変化が少なく、圧電組成物感圧体に水が吸収されていないことを示している。
【0192】
(実施例6)
ケーブル状圧電素子の各部位に撥水材料の被覆層を形成したときの撥水効果について評価した。
【0193】
撥水材料としてオレイン酸カルシウム、圧電セラミック粉末として(Bi1/2Na/20.85Ba0.15TiOを用い、実施例4のケーブル状圧電素子の製法と同様に圧電素子を製造した。
【0194】
撥水性の効果は、作製した圧電素子を実施例1と同条件で高温高湿試験を20時間実施し、そのときの電気抵抗の変化で評価した。また、比較のため、前述の圧電セラミック粉末に撥水材料の被覆層を形成していない圧電素子、外電極の周囲にオレフィン系熱可塑性エラストマーの保護層の表面に撥水材料の被覆層を形成した圧電素子についても、同様に評価した。測定器は日置電機社製LCRハイテスタ3522を用い、1kHzの周波数で測定した。
【0195】
(表6)に高温高湿試験20時間後の電気抵抗の変化率を示す。
【0196】
【表6】


【0197】
この結果より明らかなように、外電極の周囲にオレフィン系熱可塑性エラストマーの保護層の表面に撥水材料の被覆層を形成した圧電素子以外は撥水処理を施した圧電素子の電気抵抗の低下が抑制されており、良好な結果を得た。
【0198】
外電極の周囲にオレフィン系熱可塑性エラストマーの保護層の表面に撥水材料の被覆層
を形成した圧電素子は、撥水処理されていない圧電素子と同等の電気抵抗の変化率を示しており、撥水処理の効果がないことがわかる。
【0199】
これは、水蒸気が撥水材料の被覆層、保護層を通過することを示しており、圧電素子の内部で拡散した水蒸気が温度勾配や過飽和状態で凝縮し水が生成しないと撥水材料による撥水効果は発揮できないと考えられる。したがって、撥水材料の被覆層は、圧電素子の内部に設ける必要がある。
【0200】
なお、第2の実施の形態で説明したケーブル状圧電センサの構造において、保護層を設けない場合、高温高湿試験における結果は、上記の保護層の上に撥水材料の被覆層を設けた場合と大差がない。この場合も水蒸気は撥水材料の被覆層を通過し、圧電素子の内部に拡散し、水が生成することによって特性が低下する。したがって、外電極を覆うように撥水材料の被覆層を設ける場合、圧電素子内に浸入した水蒸気が凝縮する場としての保護層が必要であり、撥水材料の被覆層は圧電素子の最外層より内側に設ける必要がある。
【0201】
(実施例7)
ケーブル状圧電素子において、比誘電率の異なる圧電セラミック粉末を用い、電圧出力定数を評価した。
【0202】
比誘電率の異なる圧電セラミック粉末として、Pb(Zr・Ti)O、(Bi1/2Na1/20.85Ba0.15TiO、NaNbO、を用い、圧電セラミック粉末が約60体積%、塩素化ポリエチレンが約35体積%となるように実施例4のケーブル状圧電素子の製造法と同様に圧電素子を製造した。次に、製造した圧電素子に圧電性を発現させるために100℃の空気中で芯電極と外電極に5kV/mmの直流電圧を印加し、ポーリング処理を行った。
【0203】
以上にように製造したケーブル状圧電素子を有効長さが150mmとなるように調整し、電圧出力定数を評価した。測定器はPiezotest社製のPiezometerを用いて測定した。
【0204】
(表7)にPb(Zr・Ti)Oを用いたケーブル状圧電素子の電圧出力係数を基準とした時の他の圧電セラミック粉末を用いたケーブル状圧電素子の電圧出力定数の比率を示す。
【0205】
【表7】


【0206】
この結果から明らかなように、圧電セラミック粉末の比誘電率が低いほど電圧出力定数が高くなっており、圧電セラミック粉末の比誘電率が小さいほど大きな電圧が印加され、ポーリングの効率が向上することがわかる。
【0207】
したがって、比誘電率の低いセラミック粉末を用いることにより、圧電素子の電圧出力定数、すなわち感圧センサとしての感度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0208】
以上のように、本発明にかかるケーブル状圧電素子は高温高湿環境下で使用されても圧電組成物感圧体の水の吸収を抑制することができるので初期の電気的特性、圧電特性、機械的引っ張り強度の変化を防止することができ、優れた耐久性、信頼性を実現することができるものである。したがって、高温高湿環境が起こり得るような、屋外にあるベランダの手すりや玄関などに設置して外部からの侵入を防止するセンサ、自動車のスライドドア、ハッチバックドア、パワーウィンドウなど開閉が伴う機器や部品に設置して挟み込みを検知するセンサ、車のドアハンドルに設置してドアの解錠を制御するタッチセンサ、介護ベッドで人の体動を検知して在床を判断する圧力検出装置のセンサなど幅広い用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の実施の形態1におけるケーブル状圧電素子の一部断面図
【図2】本発明の実施の形態1における圧電組成物感圧体の一部断面を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における撥水処理された圧電セラミック粉末の断面を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態1における圧電組成物感圧体を用いたケーブル状圧電素子の製造工程を説明する図
【図5】本発明の実施の形態2におけるケーブル状圧電素子の一部断面図
【図6】本発明の実施の形態3におけるケーブル状圧電素子の一部断面図
【図7】本発明の実施の形態3における圧電組成物感圧体を用いたケーブル状圧電素素子の製造工程を説明する図
【図8】本発明の実施の形態4におけるケーブル状圧電素子の一部断面図
【図9】本発明の実施の形態4における圧電組成物感圧体を用いたケーブル状圧電素子の製造工程を説明する図
【図10】本発明の実施の形態4における他のケーブル状圧電素子の一部断面図
【図11】本発明の実施例における高温高湿試験を実施したシート状圧電素子の電気抵抗の経時変化を示すグラフ
【図12】本発明の実施例における高温高湿試験を実施したシート状圧電素子の静電容量の経時変化を示すグラフ
【符号の説明】
【0210】
1 芯電極
2 圧電組成物感圧体
3、9 外電極
4 保護層
5 撥水処理された圧電セラミック粉末
6 有機高分子
7 圧電セラミック粉末
8、11、12、13、14 被覆層
10 圧電組成物感圧体(圧電セラミック粉末が撥水処理されていないもの)




 

 


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